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    元スレ上条「その幻想を!」 仗助「ブチ壊し抜ける!」

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    みんなの評価 : ★★
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    401 = 1 :



    「まるで。幽霊でも見たような顔をする」

    「いやいやいやいや!!」


    ブンブン顔を振りつつ姫神秋沙の肩をつかんだところで、上条当麻は我に返った。
    顔を寄せてトーンダウンする。


    「……おッ前」


    姫神秋沙は驚いたような顔をして少し顎を引いた。


    「大丈夫なのかよ、ッつーかなんで帰ってきてんだ」

    「方々を回って。魔術師相手ならここが一番安全とわかった」

    「確かに魔術師はまず入って来れないけどよ、学園都市だってお前らは敵に回してんだろうが」

    「ぶっちゃけ。『 黄金錬成 』 があればどこにいても変わらない」


    あ、と上条当麻は気が付いた。


    「そっか。『 自分たちは見つからない 』 って思えば絶対見つかることはねぇんだもんな」

    「そう。でも。あの人時々不安定になるから。私がついてあげないと」

    「はは……」

    「そうしたら。なら私が一番居たいところに住もうと」

    「それで……」

    「うん。ここは私が通ってた学校もあるし。それに……」


    そこで僅かに俯いた姫神秋沙を見て、上条当麻は首をかしげた。

    402 = 1 :



    「えーと、それでアウレオルスの奴は?」

    「顔を変えて近くに住んでいる。悪いけど。場所は教えられない」

    「いいっていいって。それより仗助たちにも会っていかねえか? きっと喜ぶぜ」

    「ごめん。用があるから」

    「あ、そう……」

    「その代わり。少し一緒に歩いても。いい?」

    「……? 構いませんが」


    相変わらず、突飛なことを言い出す奴だ。と上条当麻は思った。
    そしていや何か話したいことでもあるのかもしれんと思い直した。

    二人並んで歩き始め、十分経過。
    姫神秋沙は何も言わない。
    雑踏を抜け、居住地区に出ると辺りは人払いでも敷いたのかと思うほど人気がない。
    BGMといえばお互いの靴が砂利を踏む音だけだ。
    結論。息が詰まる。
    これはもういっそ自分から切り出したほうがいいだろうか。
    いやでも俺のくだらねー雑談でタイムアップしたら申し訳ありませんし、いやしかしでも


    「彼」

    「はぁい!?」

    「彼」

    403 = 1 :



    「彼って……ああ、仗助のことか」

    「そう。彼って。『 置き去り 』 出身?」

    「はぁ?」


    なるほどなかなか切り出さないわけだ、と上条当麻は納得した。
    『 置き去り<チャイルドエラー> 』。
    原則、入学した生徒に住居を提供する学園都市の制度を利用し、入学費のみを払って子供を寮に入れるや姿をくらますはた迷惑な親の行為のことだ。
    学園都市内では社会現象と言ってもおかしくない。


    「なんで仗助が 『 置き去り 』 出身なんだよ」

    「なんとなく。違うならいい」

    「あらっ」


    まともに受け取って損をした。
    上条当麻は強く思った。


    「なんだって……そんなこと思ったんだ?」

    「彼。なんというか。……『 あの人 』 と似てる気がしたから」

    「あの……人?」

    「いつでもニコニコ笑ってるとことか」

    「ニコニコというか……あいつの場合はへらへらだろうが」

    「つらくても。困ってても。ニコニコ笑ってる」

    「!」


    いきなり核心に踏み込まれた気がした。
    つまるところ、そういう 『 無理して周りを安心させようという態度 』 が、彼女にあらぬ疑いを持たせたのだろう。

    404 = 1 :



    「彼が明るい人なのは。きっと寂しがり屋の裏返し。誰かにそばにいて欲しいと思っている。きっと。いつも。
    そのくせなにがどうなってもどうでもいいよ。って顔をして。
    何にも執着してないふりをしてる。そういうところも同じ。」

    「そう、なのか……?」


    上条当麻にはいまいちピンとこなかった。
    言われてみればそういう面もあるかもな、という程度である。


    「だから。悩んでるようだったらよく話を聞いてあげて」

    「……はい」


    有無を言わせぬというか、真実を見透かすような瞳に見つめられ、上条当麻は気圧されるままうなずいた。


    「『 あの人 』 も。私がしつこく聞かなければ悩みを一人で背負ってた」

    「……穿ったこと聞くようだけど、その人の悩みって?」

    「こども」

    「?」

    「ずっと知らなかったけど子どもがいたんだって。その子とどうやって接すればわからないって」


    言い難いこともあるらしい。
    上条の目には、姫神はずいぶん言葉を選んでるように見えた。


    「私は言った。今までの分を取り返したいなら。いっぱいの愛情で接してあげなければって。
    あの人は言った。その通りだ。仲良くなりたいものだ。一緒に散歩したり。カフェに行ったり。お小遣いをあげたり。
    普通の親子とは言わないが。普通の親戚みたいな関係になりたいものだ。って。
    私は言った。きっとなれる」


    姫神秋沙の話は、そこで終わった。

    405 = 1 :



    その後「不安定になってる。戻ってあげなきゃ」と言い残し、姫神秋沙は去って行った。
    誰が何がとはもう聞くまい。
    おそらくまた会えるだろう。ここに住んでる限り。そのはずである。

    一人になった帰り道、上条当麻は東方仗助のことを考えていた。
    仗助は明るい奴である。少し変わっているが、優しい奴である。面倒見のいい奴である。
    上条当麻はそう思っている。
    しかし、姫神のあの深海のような瞳は 『 それだけでない 』 と告げた。
    自分はどうだろう。
    あの話に納得できたということは、薄々感づいていたのだろうが……。
    そもそもそんなに深刻にとるべき問題なのだろうか。
    いや、自分が懸念しているのはそんなことではなく。
    俺は、そこまで深入りしていいのだろうか――……?





    「――と、上条さんがこーんなシリアスに思い悩んでたっていうのに……」


    上条当麻はドアを開けた先の光景に憤慨し、脱力した。


    「わはははははーー!!」
    「きゃあぁぁ~~~!!」


    仗助がインデックスを 『 たかいたかい 』 したままグルゥングルゥン回転している。
    説明は簡単だ。ただ意味が分からない。

    406 = 1 :



    「おお!? 当麻!」

    「おかえりなんだよとうまー!」

    「……はい。でわ、説明をお願いできますかね」

    「そうだよ~聞けよ~当麻ァ!」


    そう叫んで東方仗助は 『 裏も表もまっしろな封筒 』 を鼻先に突き付けてきた。


    「承太郎さんが来るんだよォォ!!」

    「…………誰?」


    それしか言えなかったのは、自分の責ではあるまい。
    だから「オォイッ!」「なんだよっ!」とか意味不明のどつき付きツッコミを受けるいわれはないはずだ。
    三和土に突っ伏しながら上条当麻は確信した。
    不幸の神はこいつらだった、と。

    407 = 1 :





       →TO BE CONTINUED....




    409 :

    乙!ついに承太郎さんが出てきちゃいますかww

    410 = 1 :


    遅くなってしまって待ってた方申し訳ない
    次回からは男陣が活躍する予定です
    それでは

    411 :

    あの人ってもしかして……あの人か?

    412 :

    乙乙

    413 :


    JOJOが禁書を! 禁書がJOJOを引き立てるッ!
    『ハーモニー』っつーんですかあ~(以下略)

    ヘタ錬のスティール化にやられた!と思ったら、まさかの承り登場予告とか月までブッ飛ぶ衝撃ってぐらい次回が楽しみすぎる

    414 :

    承太郎・・・・!
    三部主人公のくせに五部までしつこく登場するあのヒトデ大好き承太郎・・・!

    415 :

    うおお更新されてるッ!
    姫神かわいいよ姫神

    416 = 415 :

    新鯖ですってなんだよ……
    忘れてた、乙でした

    417 :

    あ、じょじょたろーが出るのは六部までか ますますしつこい!

    418 :

    >>417
    うるさい

    419 :

    ここも止まったな

    420 :

    某ゲームで仗助ルートやりながら待ってる

    そういや仗助はスタンド知らなかったからスタプラのことも知らないのか
    でもこの反応から察するに、原作みたいに一緒にいると「誇り高い気持ち」になれると思ってるのかな

    421 :

    もう、だめなのね

    422 :

    あきらめんなよ!

    423 :

    題名決まったら投下する

    424 :

    お帰り!

    425 = 1 :







      第十四話「鏡の中のワナ」






    426 :

    マインミラークルー?

    427 = 1 :



     ――『 スタンド 』 について


     1.この世界には 『 スタンド 』 と呼ばれる 『 能力 』 がある
     2.スタンドを持つ人間は 『 スタンド使い 』 と呼ばれ、スタンドはスタンド使いの意思で動き、動かされる
     3.スタンド能力は個人によって違う
     4.スタンドが傷付けば、その 『 スタンド使い――本体 』 も体の同じ箇所に同じ傷(ダメージ)がつく
     5.スタンドのヴィジョンはスタンド使いにしか見えない
     6.スタンドはスタンドでしか攻撃できない

     7.はずなのだが、上条当麻は例外として知覚できる
     8.上条当麻の 『 右手 』 で触れると 『 スタンド 』 のヴィジョンは消える。ただし 『 スタンド 』 が死ぬわけではない
     9.参考として……
       上条当麻の 『 右手 』 は 『 異能力 』 を無効化する



     以下、調査中――。

    428 = 1 :



     上条当麻はふと我に返った。
    目の前ではシスター服の少女が、包丁片手に 『 左手 』 を凝視している。
    『 右手 』 は一・二世代のギャップを感じるルックスの男子がしっかと握っていた。
    級友に見られたら、またも誤解を深めそうな状況だ。


    「とうま、いくよ、いい?」

    「あ、おお」


    と答えてから上条当麻はしまったと思った。
    思うと同時、インデックスが刃物を握りなおしたため、上条当麻は慌てて二人の手を振り払った。


    「ストーーップ! ちょっと待ってもらっていいですかね!」

    「なにかな?」

    「なんだよ」


    状況を整理しよう、と内なる上条。
    アウレオルスの件以来、仗助は自身の力に興味を持つようになった。
    便利な道具としてでなく、身の内に宿る可能性として。
    この力は何なのか? なぜ自分がこの力に目覚めたのか? 超能力や魔術と関係あるのか? 奴ら以外にも、この力を持つ者はいるのか?
    何より気になるのは、『 能力 』 はどの程度 『 右手 』 の干渉を受けるのかということだ。
    というわけで、手始めに 『 右手 』 に触れたまま 『 なおして 』 みようということになったのだが――


    「なんでナチュラルに俺が刺されることになってんだ!」

    「じゃあ私にやれって言うのかな?」

    「それに俺は自分の傷は治せねえしよォ~」

    「そうじゃねぇぇえ! 『 なおせる 』 のはケガに限ったことじゃねーだろ? モノでもさぁ……」

    「おっ」

    「ああ! 頭いいんだよとうま!」


    と、インデックスは刃物片手に手を打った。


    「ぎゃあ!」

    「え? むぅ……ちょっとおおげさかも」

    「いやいやいや! そこに殺意はないとわかってても、己に向かって刃物を振り上げられ、切っ先を突きつけられれば怯みもします!」


    そうでなくとも女性プラス刃物はスプラッタな予感をかきたてられるのだ。
    じりじり後退りする上条。インデックスは腑に落ちない顔で距離を詰める。


    「インデックスゥ~、こいつァいったんしまっとけ」


    声とともに、ひょい、と背後から刃物を取り上げられる。
    インデックスはむうと頬を膨らませ、仗助の背中にかじりつく。いや、文字どおりの意味でなく。


    「気持ちはわかるけど、とうまはオーバーすぎるんだよ。ねぇじょうすけ」

    「そうやって外堀から埋めてくんのやめてもらえますかねッ」

    「そう怒ってやんなよォー、お互い悪気があったわけじゃねぇーんだろ」


    仗助はやけに慎重に包丁を置き、再び上条の 『 右手 』 をとった。

    429 = 1 :



    「つかよォー、『 透明の腕 』 が出るかどうかだけ確認すりゃいいんじゃねえ? 『 なおす 』 のは 『 透明の腕 』 なんだしよ~」

    「それにッ、もうちょっと早く気付いてほしかったッ!」

    「えー、でも私は 『 腕 』 が見えないから、どうせなら 『 なおして 』 ほしいかも」

    「ちょっと黙ってようかインデックスさん!」

    「なんで? 見たいって言ってるだけなのに、なんでとうまはそんなイジワル言うのかな?」

    「許可するって言った途端俺のものが壊されそうな予感がひしひしとすんだよ!」

    「予感がするって何!? 『かもしれない』ってだけなのになんでそんなこと言うのかな! とうまは私がそんな非常識なことすると思ってるのかな!?」


    思っています、大いに。とはさすがに言えず、上条当麻は絶句した。
    その反応がますますトサカにきたのか、インデックスは今にも噛みつきそうな顔で口を開き――閉じた。
    見れば、仗助が人差し指を口の前に立て 『 静かに 』 のポーズをとっている。


    「とりあえず 『 腕 』 出してみるからよォ、チコッと静かにしといてくれ」

    「うん」


    なんだッ! そのしおらしい態度はッ!
    上条当麻は愕然とした。
    同じ注意なのにこの差は何だ。
    飼い犬は家族にランク付けをするというが、今ッ! それと全く同じ現象がこの空間で起こっているというのか?
    そうだとするならこの上条当麻はッ、彼女の中でどのような位置づけを与えられているというのかッ?
    『 同じ家に住んでるおじさん 』 ポジションとか言わないでくれよ?
    そんな役職はせめて就職して結婚して仮面夫婦になってから欲しいものである。
    いやいや、今問題なのはそんなことではなく……ッ!
    『 なぜ 』 こうも差ができているかということだ……ッ!
    そこまで思考がいたって、上条当麻は過去を振り返る。
    だが答えは見つからなかった。
    上条は仗助と対等な友人関係を築いてきたし、インデックスにもそれは伝わっているはずだ。
    逆にインデックスをないがしろにした記憶もない。と、思いたい。
    ここ最近補習で日中かまってやれないことだけは引っかかるといえば引っかかるが……と、そこまで考えて上条当麻はハッとした。

    まさか、何か 『 あった 』 のか?
    自分が補習で家を空けている間に、インデックスが仗助に懐くだけの 『 何か 』 が?


    「……当麻よぉ」
    「はい!?」
    「俺も、壊してまで 『 なおす 』 気はねぇーから安心しろや」


    言われて、上条は自分の右手が汗ばんでいることに気づき、赤面した。
    アホか俺は、まさかだろ。
    と下種な方向へ突っ走りかけた思考を振り払う。
    それとも、こんなイカした方向へ思考が飛んでいくのは自身がそっち方面に飢えているからなのか。
    いやもういい。この話はもうたくさん、と上条当麻は今度こそおピンクな話題を振り切った。

    430 = 1 :



    「じょうすけぇー、もう出たかな?」


    床に腹ばいになり、両手で頬杖をついて上目使い。そこに白人ロリパワーも加わり倍率ドン。
    本性さえ知らねば 『 かわいい 』 と言ってやって差支えない、と上条は思った。


    「う~~~ん、出せそうは出せそうなんだけどよォー、なんつーか妨害電波っつーか、
    真剣にドラマの内容追ってる時に横から母親に話しかけられてる時みてぇな感じだぜ……」

    「要は集中できないと」

    「あぁ~~ちょっと待て、頑張ってっから」


    言うなり仗助は難しい顔をして沈黙した。
    沈黙の中、インデックスが暇そうに足をパタパタやる、その衣擦れの音だけが聞こえる。
    いち早く耐えかねたのはやはりインデックスだった。


    「ねーねーとうま」

    「はいはい何です」

    「えっとね……」


    明らかに今話題を探していることは突っ込まないでやろう、と上条当麻は紳士に思う。


    「ほら、じょうすけの知り合いっていつ来るんだったかな」

    「あさって」


    と仗助が即答した。


    「けっこう急だな」

    「だよなぁ~、承太郎さんもわざわざ来ねーでもよォ~~用なら手紙で済ましゃいいだろーに」


    と、どうでもよさげに言う友人に上条は失笑しかけた。
    上条『 承太郎さん 』 とか言う人の名を聞くのは、これで二回目だ。
    転入初日に 『 叱られる 』 とおののいていた。
    その尋常じゃない様子に 『 承太郎さん 』 とやらはよっぽど怖い方なのだろうと思っていたが、どうも微妙に違うらしい。

    あれは恐怖というより畏怖だ。
    仗助にとって 『 承太郎さん 』 は、それこそ父親か何かのように尊敬すべき対象なのだろう。
    そんな人がわざわざやってきてくれるのだ、うれしくないはずがない。

    431 = 1 :



    「おやおや、スカしちゃって仗助さん? 先日の狂喜乱舞っぷりはどちらへ行ったんですかねぇ~」

    「……」

    「あだぁ!」


    右手を握りつぶされた。


    「ちょ、お前仗助ッ! 骨! 骨をゴリゴリはやめて痛いから! あーッやめろって! やめて! 
    おっ前仗助ッ、気に入らないからってインデックスみたいにすぐ手を出すんじゃありません! 上条さんそんな子に育てた覚えはないですよ! 
    それとも身内ネタには過剰反応するタイプですか!? 恥ずかしくってついつい手が出ちゃうタイプですかァ~!?」

    「あーあー聞こえネェ~~~集中してっから黙ってろよォスケコマシ」

    「レトロレトロォッ!」


    そもそも俺のどこにスケをコマす要素が、と言いかけ、上条当麻は背後の気配に口をつぐんだ。


    「とうま……『 私みたいに 』……何かな?」

    「あっあー、いやなんというか言葉のあやで……」

    「とうまぁぁぁーー!!」

    「あだぁぁーー!!」

    「だあーーーッ!! ウルセーッおめぇらァァ~~!!」


    と、キレたところで仗助の左腕からズギューンッと何かが飛び出した。

    432 = 1 :



    それを誰よりも早く目にした上条当麻はまず目を剥き、まばたきして、幻覚でないと知るや額を押さえた。


    「あのー……俺の勘違いでなければ言わせていただきたいんですが」

    「なにかな?」

    「なんだよ」

    「 『 透明の腕 』 のアイデンティティが崩壊してるように見えるのですが……」


    仗助の視線が 『 腕 』 に向く。
    数瞬の沈黙、


    「うおおおォェェーー!?」

    「びっくりしたんだよ!」


    ガタァァンと仗助が腰を浮かし、ビクゥッとインデックスが身をすくめる。


    「な、何? い、いったい何が起こったのか説明してほしいかも」
    「とっ……『 透明の腕 』 が……!」


    仗助は驚愕の声で叫んだ。




    「 『 腕 』 になってるッッ!!」




    「日本語でオッケーなんだよ」

    「 『 腕 』 が透明じゃなくなってんだよぉぉ~~!」


    上条は愕然とする仗助から 『 右手 』 を離す。途端、ごく自然な勢いで 『 戦士 』 が飛び出してきた。
    『 透明の戦士 』 ではなく、『 戦士 』。


    「な、なんで? わけわかんねぇーぞオイ」

    「し、進化したとかじゃねえか? ほら、アウレオルス戦で経験値たまったし……」

    「そ……そうなのかよォー?」


    問えども 『 戦士 』 は答えない。
    無表情に仗助を見るだけだ。
    その外人色の瞳と、はっきりした輪郭は誰かに似ている。と、上条当麻は思った。


    「そうかも」


    と口を挟んだのはインデックスである。

    433 = 1 :



    「じょうすけに存在を認めてもらったからパワーアップしたんじゃないかな。
     ほら、よくわからないけど、その子はじょうすけの分身みたいなものなんだよね?」

    「そー言われっと納得できるようなできねぇーような……」


    うむゥ、と悩んだ末、仗助は、


    「ま、ンなこたぁどうでもいいか」


    考えるのが面倒臭くなったようである。


    「まァー、なんだ、前回はアリガトウな。これからもー……よろしく?」


    と、東方仗助は 『 スタンド 』 に手を差し出した。
    『 スタンド 』 はじっとその手の平を見つめ、おずおずと(上条当麻にはそう見えた)握り返す。すると、


    「ウゲェェ~~ッ変な感じィ~!」


    どうやらこれもフィードバックしているらしい。
    今の仗助は握手をしつつもされているという感覚を味わっていることになる。
    なるほど、変な感じだろう。
    上条当麻は左手で 『 スタンド 』 の背をなぞってみた。案の定、ギャーと仗助が叫びだす。


    「当麻! てめえ! 当麻ァ!」

    「なるほど、こういう弱点があったわけだな。今後参考にしとこう」

    「殴るぞテメェ~~……!」

    「ねえ」


    インデックスがコロコロしながら首をかしげた。


    「その子、これからなんて呼ぶのかな?」

    「なんてって……なんにすんだ、仗助?」

    「ああ~~もう 『 透明 』 じゃなくなったしなぁー」

    「考えてないならさ、名前付けてあげようよっ」


    シスターの満面の笑みが引き金となり、ここに 『 超局地的スタンド命名委員会 』 が設立したのであった。

    434 = 1 :



    「じゃあ俺こと上条当麻から……『 直し屋<フィクサー> 』 とかどうだよ。能力的に」

    「なら 『 治し屋<ヒーラー> 』 じゃないかな」

    「なぁーんかどれもいまいちパッとしねーなァ」

    「じゃあ仗助くん。君のアイデアは」

    「ねーよ。ねーです」

    「……」


    そして 『 超局地的スタンド命名委員会 』 の活動は早くも行き詰った。


    「うーん……」

    「あー……」

    「……パッと思いつくものじゃないかも」


    沈黙とうめきが流れるばかりの室内に、インデックスのつぶやきが落ちる。


    「他の人はどうやって名前付けたんだろーね」

    「他の……」


    うぬぬ……と東方仗助は頭を抱えた。







     『私の「恋人<ラバーズ>」』

     『エボニーデビル!』







    「あいつらァ何であんなそこはかとなくカッコいい名前が思いつくんだよォォ~~!」

    「センス欲しいよセンス! なんだよ!」


    コロコロするインデックスとゴロゴロする仗助。


    「ま、この件は保留だな」


    を、見ながら上条当麻も考えることを放棄した。
    とにもかくにも今日の収穫はここまでである。上条当麻は頭の中のメモを更新した。


     ――10.スタンドは成長する

    435 :

    おおきたか そろそろ死んだかと思ってた

    436 = 1 :




     ~~~



    「いいなぁ~~、私もとうまみたいに 『 見る目 』 が欲しいんだよ」

    「はあ?」


    仗助も帰り、さて一息というところでまたシスターが意味不明なことを言いだした。


    「ずるいんだよぉー。私もじょうすけの 『 スタンド 』 見たいなぁ~~『 スタンド使い 』 じゃないのに見れて触れるなんて、とうまだけずるい、ずるいー」

    「って言われてもなぁ。俺だってその辺はわかってねえんだ。愚痴られても困ります」


    むう、とインデックスは冬眠前のリスのような顔になる。


    「魔術で見えるようにならないかな?」

    「さあなーほらほら、いい加減床転がるのやめなさい」

    「せめてどんな姿してるか教えてほしいんだよ、そしたら名前のアイデアも浮かぶかもしれないし」

    「あー? そうだなあ……」


    『ふざッッッけんなッ!!!』


    突如、壁の向こうから怒声とドゴンッという鈍い音が響き、上条とインデックスは飛び上がった。
    ふたりは呆然として壁を凝視する。
    今もなお、くぐもった争い声の聞こえてくるそこは、東方仗助がいるはずの部屋だ。


    「と、とうま……じょうすけが……、どうしたんだろ」

    「……見てくる」


    上条当麻は嫌な予感がした。
    見てくるとは言ったものの、今隣の部屋に行けば果てしなく気分の悪いものを見そうな気がしたのだ。


    「ま、待って、私も行くんだよ!」


    だから正直、彼女がこう言ってくれたときホッとした。

    437 = 1 :



    「仗助? いるかー?」


    いるのはわかっているがドアに呼びかけてみる。応答はない。
    募る不安に尻込みしながらも、上条当麻は思い切ってドアノブに手をかけた。
    鍵は……かかっていない。


    「入るぞ……仗助ー?」
    「じょうすけー……」


    中はさっきとうってかわって静かだった。
    それが逆に緊張を煽る。
    不意に、後ろからきゅっと袖を握られた。
    上条は特に何も突っ込まず靴を脱いだ。彼女の怯えが伝わったからかもしれない。


    「仗助……?」


    リビングに、彼はいた。
    部屋は上条が最後に訪れた時と同じ、全然片付いていなかった。
    段ボールの乱立する室内に背の低いテーブルが、これだけ生活感を持っていてやけに浮いている。
    仗助は上条らに背を向ける形で座っていた。
    再び声をかけようとして、上条はテーブルに鏡が置かれていることに気づいた。仗助はそれを覗き込んでいる。
    鏡に映った仗助はやけに無表情だった。


    「……だからッ……!」


    怒りを押し殺したような声で、仗助がうなる。鏡の顔は変わらない。



    「承太郎さんがいる間だけ出てこねーでくれって頼んでんだろォーがッッ!!」



    仗助が卓を殴り、鏡が 『 拒否します 』 と答える。
    そこで上条は自分の嫌な予感が的中したことを悟った。

    438 = 1 :



    「おいインデックス……鏡が喋ってるけど、あれも魔術か?」

    「うーん……どっちかっていうと 『 技術 』 かも……。鏡の客観性を利用して、じょうすけの虚像を借りてるんだよ」

    「どう違うんだよ」

    「魔力を使ってないし、『 自動書記 』 に肉体がないからできることかも。ユーレイが鏡に映るってやつ、日本でもよく言うよね」

    「なるほど……あのお約束にも一応仕組みはあったんだな」


    と、言っている間にも二人で一人の議論はヒートアップしていく。


    「だ、か、らッ! 承太郎さんがいる時だけでいーんだよォー! 引っ込んでてくれるのはァー!」

    『 保証しかねます 』

    「なんでだよォッ」

    『 ――三分前の説明をもう一度。あなたが気絶等した場合、あなたの肉体を防衛する必要があります 』

    「いらねぇーっつってんだろォーがッ!」

    『 その要望を満たしても、この自動書記に利がありません 』

    「間借りさせてるだけでジューブンだろォー? なぁ~~こんな時くらい言うこと聞けってぇー」

    『 拒否します 』

    「ドラァッ!」


    ガシャン、と鏡が割れて元に戻った。
    鏡の仗助は涼しい顔だが、実像の仗助はウーウーうなって頭を抱えてしまう。
    上条はこのまま何も見なかったことにしようかとチョッピリ迷ったが、結局仗助の肩をたたいた。


    「うおぉっ!? ……な、なんだ当麻かよ……どうした?」

    「こっちのセリフだ。まあ、大体の事情は分かったけどさ」

    「いつからいんだよッ」

    「私もいるんだよ」

    「マジかよォーッ!」


    仗助は額を打ちつけるようにしてテーブルに突っ伏した。


    「そこまで落ち込むことないかも」

    「だってよォー……」

    『 補足。彼はみっともない場面を見られたことに対して羞恥を 』

    「ドラァ!」


    ガシャンッ

    439 = 1 :



    「まああれだ、お前 『 承太郎さん 』 と 『 自動書記 』 を会わせたくねーわけだな」

    「ったりめえだろ~~なんて説明すんだよォー」


    確かに。科学と魔術が交差して後天性二重人格になりました、とは言えまい。


    『 ――前文を踏まえての逆接。不特定期間の拘束は不快に感じます。また、それを強要されるだけの理由があるとも思えません 』

    「だからッ! 困ンだよッ! 俺がッ!」

    『 この自動書記の関知するところではありません 』

    「……!!」

    「仗助、どうどう」


    とうとうテーブルの裏に手をかけた仗助を、上条はあわててなだめる。
    このままでは星一徹クラッシュが行われるのは必至である。


    「つーか 『 自動書記 』 よ。お前、以前仗助の許可なしに出てこないって約束しなかったっけか? その契約まだ有効だよな? ならダダこねんなよ」

    『 …… 』


    自動書記は上条を見て、一度まばたきすると、あからさまに目をそらした。


    『 ――警告。第二十二章第五節。第三者の乱入による精神の微弱な障害を確認。自己修復…………完了 』


    要するに仗助の味方が増えたので動揺してるのだな、と上条当麻は解釈した。


    『 ――上条当麻に対する回答。確かにそのような契約はしましたが、彼の肉体に危機が訪れる場合はその限りではありません 』

    「お前の 『 危機 』はハードルが低すぎんだよォー! 熱湯とか針とか油とかよォーッ」


    自動書記は涼しく言い返す。


    『 本件に関してはあなたも許可を出しました 』

    「特例を前例にすんなっつってんだ!」

    「えーっと、すまん……どういうこと?」


    微妙についていけない上条たちにされた説明はこうだ。
    先のアウレオルスとの戦いで、仗助が強制的に意識を落とされ、自動書記とバトンタッチするという場面があった。
    その際の二人の会話を要約すると、

    『 危機が迫っているので対処します。許可を 』
    『 オッケー 』

    その会話が拡大解釈され、今の自動書記は 『 危機ならいつでも出てきていいんですね! ヤッター! 』 状態らしい。
    ようするに。



    「……ハメられたわけね」

    「だってよぉ~~フツーそんな時に騙されるとは思わねーじゃねぇーか~」

    『 訂正。騙してなどいません 』

    「ウッセー、無理やり言質とりやがって。一度許したら出放題かよこの野郎ォ~」

    『 逐一許可を取れ、と言われた覚えはありませんが 』


    しれっと言う自動書記は悪徳政治家を彷彿とさせた。

    440 = 1 :



    「屁理屈こねてんじゃあねぇーよぉ~~……なぁ頼むぜぇー、チョットの間だけでいいんだよぉ~~」


    とうとう泣きが入る。


    『 私はあなたの危機に対処するという役割を与えられました。今回の依頼は「危機が訪れた場合でも」現出してはならないという内容を含み、横暴であるといわざるを得ません。よって拒否します 』


    が、自動書記はにべもない。


    「 『 自動書記 』、あなたちょっとガンコなんだよ!」


    すると今まで背景に溶け込んでいたシスターがずずいと前に出てきた。


    「そもそもあなた、私のとこにいた時はほとんど出てこなかったよね。結構命の危機はあったと思うんだけど?」

    『 ――回答。もともと私は魔道図書館、正式名称 Index-Librorum-Prohibitorum を防衛するための魔術でした 』

    「私の肉体は二の次ってこと」

    『 いいえ。私に課せられた役割はあなたの「必要最低限」の安全を守ることであり、迎撃は十万三千冊を守る最終手段ゆえ傍観を余儀なくされただけです 』

    「結局魔道図書館が第一なんじゃないっ、何が違うっていうのかなっ」

    『 ――あなたと私の価値観でしょうか 』

    「むぎぃ~~!!」


    地団太踏みだすインデックスを横目に自動書記は続ける。


    『 これ以上の議論は不要と判断しました。それでは失礼します 』

    「あーちょっと待ってくれ」

    『 はい 』


    引き留めたはいいものの、どうしようかと上条当麻はうなった。
    自動書記の理屈は確かに、法の抜け穴を探す悪徳商人のそれに近い。
    だが魔術仕掛けのスピリットを持つこいつのことだ、悪気ナシの本気で言ってる可能性も十分ある。
    その場合、また新たな約束を結ぶか、こいつの論理の穴を指摘してやるかしかないわけだが……
    と、悶々とする上条に、自動書記がふと思いついたように声をかけた。


    『 ――提案します。では、負担を等分してはどうでしょう 』

    「等分?」


    と問い返す上条に、自動書記は語りだした。

    441 = 1 :



    『 ――はい。現在まで私は「スタンド」を解析させてもらう代わりに本体の安全を守ってきました。
    九万八千冊の魔道書をフルに活用しての防衛です。精神と肉体の一部をシェアしている点を考慮しても十分等価の契約と言えるでしょう。
    しかし精神の裏に「引っ込んで」いる状態では、その役割を果たせなくなります。
    結果として本体に負担が偏ることになりますが、それは私にとって非常に不本意です 』

    「なるほど……つまりお前はー……体を借りてる以上、平等にいきたいわけだ?」


    過剰とも思える危機管理はそのためか。
    こいつなりにプライドってものがあるのだな、と上条は少し自動書記の認識を改めた。


    「それで、負担の等分ってのは……?」

    『 ――読んで字のごとく。私が本体を防衛する時間を増やしてほしいのです 』

    「なるほど、『 承太郎さん 』 がいる間と等価の時間を防衛に……ってん? なんかおかしくねーか?」

    「あれ? でもあなたの防衛って……」

    「あん? だけどよォーそりゃ……」


    何か釈然としないものを感じた三人の視線が鏡に集まる。
    自動書記はつと顔をそむけ、


    『 ――警告。第四章第十五節。自他に誠実であれ。
     端的に言い直すならば――本体が私抜きで活動するのならば、私も本体抜きで活動する時間を要求します 』

    「……」

    「……」

    「……おい」

    『 ――プレッシャーによる精神の障害を確認。自己修復。成功 』


    目元に影を作る三人に自動書記は悪びれぬ無表情を向けた。


    『 わかりました。今なら特別サービス、明日一日分の時間をいただければ、本体の要求を呑みます――――以上 』


    『 以上 』 の 『 う 』 が終わるや否や、



    「テメェーッ! ハナッからそれが狙いかよォーーッッ!!」



    今度こそ東方仗助による星一徹クラッシュが炸裂した。

    442 = 1 :


    >>426
    タイトル詐欺でごめん

    今日は閑話休題的なあれなんです
    次回くらいから本題に入ってきますんでェー

    443 = 1 :




       →TO BE CONTINUED....





    445 = 435 :

    だが!ウィルスは許可しないいいィーーーッ!の人かとおもた まあ乙

    446 :


    なぜかペンさんのことをすっかり忘れてた
    ペンさんとインさんの会話って新鮮だな、自動書記の姿が仗助だからサーフィス的な脳内再生になるけどww

    447 :

    まさか!って感じだなぁー
    自動書記がこーゆー、ナンつーの?
    『したたか』?『打算的』?
    そんな『キャラ付け』になるとはよォ~
    ま、なんだ、ひとまずは『>>1乙』

    448 :

    おっつー!待ってた甲斐があったねー

    449 :

    乙!!
    自動書記かわいい

    450 :

    待ってた甲斐があった!


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