私的良スレ書庫
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元スレ上条「俺がジャッジメント?」初春「2です!」
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姉「弟からのメールがSSだった」
弟「死にたい……」
というSSはよ
弟「死にたい……」
というSSはよ
アンタ、知ってんだろ。大切な姉弟にSSを誤送する痛みを。焦ったはずだ。辛かったはずだ。苦しかったはずだ。痛かったはずだ。恐かったはずだ。震えたはずだ。叫んだはずだ。涙が出たはずだ。
……だったら、それはダメだ。
誰もがニヤけて萌え続けられる、そんな世界を望んだ筈だ。さあ始めようぜ>>1…!
……だったら、それはダメだ。
誰もがニヤけて萌え続けられる、そんな世界を望んだ筈だ。さあ始めようぜ>>1…!
あれから随分と経つけど今>>1は姉ちゃんに必死に言い訳してるに違いない。
目の前の男をキッと睨む。
今、この男が現出させたモノは一体何かはわからない。
男の目は虚ろでどこを見ているのかもわからない、敵意も明確ではないのだが咄嗟に出した電撃は間違いではなさそうだった。
初春「み、御坂さん!」
打ち止め「お姉様っ」
美琴「二人とも後ろに下がってて。こいつは何だか危険よ」
初春と打ち止めの斜め前で腕を横に広げて二人を制する様に立ち塞がる。
その男から発せられる妙な雰囲気は、危険信号を点しており美琴の前髪を帯電させていく。
パチ、パチという音が響いていた。
「第三位、超電磁砲か。レベル5の電撃能力者最高峰にして…………そしてシスターズの素体」
美琴「!」
「相手にとって不足はないな?」
白衣を着た男の言葉に美琴の肩が揺れる。
あの実験の事を知っているのか。
服装から研究者という事を感じ取らせていたのだが、その男も関わっていたのだろうか。
美琴「………………っ」
苦虫を噛む。
ある程度時間が経ったとはいえ、今だあの実験の事は深く美琴の深層心理に潜んでいる。
忘れようにも到底忘れる事などできる代物ではなかった。
しかし、今はそれよりも。
この目の前の危険分子をどうにかする事が先だ。
目の前の男の様子が気にかかるが、その研究者の号令の元でこちらに牙を向けるという以上敵である事は間違いない。
「……………………」
何も語らない、そして何も映っていないような瞳がこちらに向く。
見てくれは時々自分に絡んでくる、身の程知らずのこの街の不良のそれと大差ないように見えるのだが。
先ほど出した、この男の得体の知れない力が妙に引っ掛かる。
溜息を吐くように美琴は手を頭に当てて頭をかく。
しかし警戒を解く事はなく、常に意識は目の前の男に向けていた。
美琴「相手にとって不足はない、ですって? あんたの言うレベル5、電撃使い最高峰を捕まえておいてよく言うわね」
「随分威勢がいいようだね。君の目の前に立つ男がわかっていないのかな?」
初春「み、御坂さん………………この人は…………」
打ち止め「お、お姉様…………」
美琴「……………………学園都市、230万人の中の頂点に位置するレベル5の第二位、って所かしら?」
「ほう? これはこれは察しがいいのか元々顔が知られていたのか」
やはりか。
確証はなかったが、自分が呟いた言葉には否定はなかった。
学園都市、レベル5の第二位、『未元物質』の能力者。
『書庫』によると、「この世に存在しない素粒子を生み出し、操作する」能力と記されてあった。
この世の物質にはないものを生み出し、操作するという事は。
従来の戦い方は通用しない、と考えるのがベターか。
となると戦い方を考えねばならない。
レベル5の頭脳を持つ美琴の思考がフル回転する。
美琴「それで。その第二位と研究者が何の用?」
気を引き締めながら美琴は尋ねる。
まずは守るべき者達の位置取りを確認した。
自分の後ろには初春、そして打ち止め。
更に5m程下がった位置に研究者、黒子。
その脇に佐天、御坂妹が控えているのだが。
「ふん、別に君には関係はないのだがね」
美琴「関係ないですって? 私の友達を手に掛けようとしながらよくその言葉が吐けるわね」
「手荒な真似はするつもりはないんだがね」
眉間に自然とシワが寄るのがわかった。
その研究者の言う事と第二位のやろうとしていた事は実に違い、美琴の違和感をより働かせていく。
やはり気を割くべきは、第二位か。
研究者と問答をしながら第二位の対処法を考える。
口と思考はまるで違う方向を向いているのだが、その動作を美琴は苦にしない。
これくらいの事が出来なければ、レベル5など名乗れはしないのだ。
研究者の言葉に食いつく仕草を見せながら、美琴は微かに視線を動かして更に周りを見た。
しかし、ギャラリーが多い。
守るべき友人達に加え、場は何事かと状況を見守る学生達でいっぱいであった。
溢れ返っている、と言ってもいいほどの人数。
まるで道端でパフォーマンスをする人気の大道芸人を囲うほどの人の多さだ。
それもそうなのかもしれない。
本日オープンしたばかりの雑貨屋の目の前だ。
ましてや日曜日であり、いつもよりも賑わいが増しているのも仕方のない事であろう。
そこで、研究者のくつくつと噛み殺した笑いが耳に届いた。
「用があるのはそちらの小さなお嬢さんでね」
打ち止め「っ!」
初春「打ち止め、ちゃん…………っ」
美琴「………………妹に、何の用なのよ」
「なに、その子さえ渡してくれればこちらとしても手は上げないさ」
研究者は歩き、第二位の傍まで寄る。
第二位の肩に手をかけると、ニヤッとその口元を吊り上げた。
またか。
また妹達に危害が降り懸かろうとしているのか。
あの実験から、妹達の間で何が起きていたのかは美琴は知らない。
しかし、
『お姉様は、何も知らないんだね』
と自分に吐き捨てた番外個体の言葉から、妹達に何かがあったのかは悟っていた。
それもあの第一位を交えた、何かが。
それはきっと、楽しいなにかではない。
妹達が苦しむ、悲しむ何かで。
だからこそ、あの子達のオリジナルとして…………いや、姉として。
これ以上、思い出を悲しみで塗り潰させる訳にはいかない。
打ち止め「……………………っ」
初春の手を握る、誰が見てもいまだ幼い少女の姿を視界に収める。
それは、恐怖で震えている様にも見えて。
美琴「…………いいわ、妹達に何かをしようっていうのなら、私が相手になってやる」
「やれやれ、こんな所で一悶着起こす気はなかったのだがね」
黒子「お姉様! ご助勢致しますの!」
美琴「ううん、それよりも黒子は他に被害が及ばないか、見てて」
黒子の申し出を振り向きもせず手で制し、美琴は再び前髪に電気を宿らせる。
「………………ちっ。やれ」
研究者がそう言った瞬間、突如閃光と爆音が場に轟いた。
インデックスの頭の中にある『魔道図書館』
その10万3000冊の中の一つに、それはあった。
『おいでませ、おいでませ
死道より出でし輪廻の廻道よ
こりゃまた狭き門 幅広げ
滅せしその身をこの世にと
また一つ おいでませ おいでませ』
黄泉がえり────死者を蘇らせるという、秘匿された『禁術』
術式の手順は、死道を通る鞋を死人に掃かせ、円形に紙、純度の高い水、そして血を等間隔に置く。
紙には生命を示す難解な絵図を描かれ、命の鼓動を指し示す。
水は純粋な人体の構成に必要なもので、そして血は活力を示す。
死人を円形の真ん中に、一定のリズムを刻んだ詠唱を詠み上げる。
幾度となくそれを繰り返した後、黄泉から魂が呼び戻される。
その方法が記された書物は、今は存在しないというのは魔術師達の間で知られていた事であった。
コピーも、原典も。
インデックス「…………………………」
一体、何処からそれが出てきたのか。
それが他にも存在していたか、それか知らぬ内に自分の中から取り出されていたのか。
神裂「インデックス……………………」
インデックス「………………あ、う、うん。なに?」
神裂の自分を心配するような瞳が写る。
周期的に自分の記憶を消していた彼女も、実はいつもそんな目をしていたのかもしれない。
自分を救い出した彼に出会うまでは、騙されていたとしてもずっとそんな目をさせていたのかもしれない。
でも、今は状況が違う。
いや、自分を心配する献身的な彼女の心境的には一緒なのだろう。
守られているのはわかっている。
どんな時でも、こうして仲間達は自分を心配してくれる。
頭の中の『魔道図書館』の流出の危惧とは別に、自分という人間を彼女らは心配をしてくれていた事は今となっては肌で感じ取れるのだ。
だからこそ、いつも迷惑を掛けてなどいられない。
有事の時にははるばるイギリスという遠い地から駆け付けてもくれる。
頭の中にそれがあるだけで、大して力もない事に歯痒さをも感じていた。
神裂「あなたが今、何をどう感じているのかは何となくわかります。しかし、それを一人で背負おうとはしないでください」
インデックス「かおり………………」
神裂「あなたは一人ではないのですから。私達が、います」
インデックス「……………………うん」
『聖人』と呼ばれる彼女の力は強大だ。
肉体的にも、頭脳的にも──────まあ一部例外はあるのだが、それはいいとして。
心強さは、とてつもなく感じられる。
神裂「………………上条当麻も、あなたの傍にいます。周りにいる皆が皆、あなたの味方なのですよ」
インデックス「…………うん」
そこだけ聞かれないようにボソッと自分に耳打ちをする。
土御門と五和とオルソラを交えて話をしている彼は、それに気付きもせずに真剣に話を聞いていた。
インデックス「でも、味方でいてくれるから」
神裂「はい」
インデックス「私も…………力になりたいんだよ」
神裂「………………ですが」
事情により、魔力を練る事が出来ない自分を気遣ってくれるのはわかる。
ただ、いつもこの部屋で事を見守るだけというのはもうしたくはない。
直接的ではなくとも、自分だって戦える。
力になれる。
インデックス「もう、とうまやかおり達だけが傷ついてくのを見るのはいやなんだよ。私だって前線に立つ事は出来なくても。皆と一緒に、戦えるんだよ」
神裂「インデックス………………っ」
力強く、神裂の目を見据える。
やがて彼女はそれに折れるようにして目を下に移し、ゆっくりと頷いた。
インデックス「それに。最近じゃとうまは気にかけてる子が出来たかも」
神裂「……………………はい?」
インデックス「かざりって言う子なんだけどね。あの時、セブンスミストで会った時にとうまの横にいた女の子なんだけどね」
上条「」ピク
神裂「……………………」フルフル
インデックス「ずーっとね、手なんか繋いじゃって。昨日も帰りが遅かったし、何かあったのかn「イーンデーックス!!」あれま」
神裂「……………………ほう?」ジャキ
上条「いや何刀に手をかけていらっしゃるんでしょうか神裂サン!?」
神裂「これから何かが起きるかもしれないという時にあなたと言う男は………………」
上条「いやそれを知る前! しかも先にそっち約束してたし!」
神裂「余所から余所へと手を出して…………」スゥッ
上条「出してねえ! 寧ろ出されてうれしかっt違ああああぁぁうう!!」
インデックス「えっ」
五和「えっ」
オルソラ「あら」
土御門「ほう? 詳しく聞かせてもらおうかカミやーん?」
神裂「………………きょ、今日という今日は赦せません…………上条当麻! そこに直りなさいっ!!」ミシミシ
上条「ちょちょっと待て神裂刀をしまえテーブルがめきめき言ってる家具があああああああ! インデックス何を言い出してんだよおおおおおおおぉぉぉぉ!!」
インデックスは上条に向かってベーッと舌を出す。
とうまからしてみれば理不尽かもしれないけど、ちょっとは私の気持ちをわかってほしいかも!
伏せていた顔を上げ、腕を下げ場を見る。
土埃が立ち込め、視界を遮っている。
突然巻き起こった爆音から、少々耳の高鳴りがするのだが少し時間が立てばすぐに戻るだろう。
しかし、その狭くなった聴覚に悲鳴が響いてきた。
「な、なに!?」
「痛い…………痛い……!」
「だ、誰か救急車!」
「大丈夫!? しっかりして!」
その爆発の様な事象に巻き込まれたか、周りのギャラリー達の痛々しげな声が耳に届いた。
美琴「………………っ!」
美琴は苦虫を噛むが、纏う土埃もそのままに静かに歩み寄ってきた第二位の姿が美琴の思考を中断させる。
咄嗟に腕を突き出し、瞬時に電撃を飛ばしたのだが。
バヂッ──────!
美琴「!?」
電撃を当てた感触が、いつもと違った。
当たった感触は確かにあったが、妙な感触だ。
弾き飛ばされた様な、そんな手応え。
「ふふふ………………あーっはっはっは! 第二位に君の電撃が通用するとでも思ったのかね!?」
美琴「…………っ」
研究者の高笑いがこだまする。
第三位の自分の力はまるで届くはずもないという絶対的な自信。
どういう理由、手段でかはわからないが最強の男を使役しているという絶対的な自信か。
初春「み、御坂さん!」
打ち止め「お姉様!」
佐天「なに、あの翼…………!?」
段々と土埃が晴れ、視界も通常に戻って来る。
どうやら初春、打ち止め達は無事な様で安堵するが、それよりも。
電撃が、効かなかった。
第一位の反射とは違う、また別の方法で攻撃を逸らされた。
第二位の背中に現出した白い翼の様なものに目を見張る。
あれもこの第二位の能力と関係しているものなのか。
美琴「くっ!」
地面すれすれに電撃をはべらせ、四方から第二位へと襲い掛かる。
しかしそれは第二位に当たった瞬間、音が鳴り逸らされる。
まるで防護膜でも張ってられているかの様だ。
「効かないねえ、効かないねえ!」
研究者の愉快そうな声。
その様子にも全く反応もせず、第二位はただじっと立っている。
どうする、超電磁砲を使うか。
スカートのポケットに手を入れ、そこにあったコインを掴む。
どういう理屈で電撃を逸らされるのかは知らないが、法則に寄って飛ばされた物体ならどうか。
弾数はまだ数枚残っている。
美琴は瞬時にコインを持った手をかざし、容赦なく第二位へと自身の全力を叩き込んだ。
美琴「飛べええぇっ!!」
ズガン──────!
………………という音がするはずだった。
しかし、コインを弾き飛ばした音だけが鳴り、それ以外の音は皆無。
それもそうなのかもしれない。
第二位の目の前で、コインが宙に浮いていた。
美琴「なっ!?」
「ふふ。超電磁砲、かね」
仕組み的には速度の限界がない美琴の持つ代名詞の能力。
音速の速さでも手加減しているというほどの凄まじい能力も、今回は全力に近い威力で撃ったはず。
それをいとも簡単に止め、尚も無表情を貫く第二位に戦慄を感じた。
美琴「………………っ」
焦燥感が美琴を包む。
電撃という異能がダメなら、コインという物体を通じた物理攻撃なら或いは、と考えていた。
しかしそれをも防ぐのにまるで苦にした様子もなく、第二位は止めてしまった。
チャリン、というコインが地面に落ちた音が響く。
周りを見ても、うめき声を上げる学生達で埋め尽くされている。
位置的なものからか、今はまだ負傷していない自分の友人、妹達が目に写る。
そこで美琴はハッとし、黒子に檄を飛ばした。
美琴「黒子! 妹達を連れてどこかに逃げて!」
黒子「わ、わかりましたの!」
「ん──────? ふん、空間移動能力者か? やれ」
黒子「むぐっ────────!?」
美琴「く、黒子……………………?」
突然、その場で苦しみ出した黒子が写る。
まるで首でも締められたかのように首元に手をやり、膝をつくのが目に飛び込んできた。
美琴「黒子ッッ!?」
黒子「ぐ………………ぐぅ…………っ」
美琴「ああああっっ!!」
その黒子の姿で、美琴は特大の電撃を現出させた。
大きさ、質量は人一人を優に包み込めるほどで当たればどうなるかは想像に難くない。
あの鉄橋を崩壊させた時以上に、美琴の激情と共に膨れ上がらせていた。
美琴「うああああああぁぁッッ!!」
バヂッ────!!
美琴「っ!?」
しかしそれもまた、第二位に当たる直前で止められてしまった。
初春「白井さんっ!!」
佐天「白井さん!! な、なに、これ………………うぐっ!?」
美琴「佐天さん!」
初春「!? 佐天さんっ!!」
黒子の傍まで駆け寄った佐天。
しかし彼女も黒子と同じ様に苦しみだし、その場に倒れ込んでしまった。
一体何が起きた。
これも、この第二位の能力だというのか。
未元物質、それは美琴にとってでさえも到底理解のしうるものではなかった。
この世にない物質を生み出し──────第二位が狙ってやっているのかは知らないが、がこの世の物理法則をも組み換えてしまう。
美琴の常識が、通用しなかった。
「くふっ、あーっはっはっは!! 跪け! 己の無力さを歎くがいい!! 私達の前には敵はない!」
そして研究者は指を差す。
美琴を、絶望へと導かせる。
第二位の背中に、六枚の白い翼が映える。
手を突き出しており、美琴に死を覚悟させた。
初春「御坂さんっ!!」
打ち止め「お姉様!!」
「残念だったなぁ、超電磁砲?
死ね 」
美琴「…………………………っ!!」
「戻ってくンのが遅ェと思ったら…………随分とやっかいな状況になってやがンじゃねェか」
「………………!? ちっ、おまえは!!」
打ち止め「あ! あなた!」
一方通行「……………………生きてやがったのかァ? 垣根くンよォォォォォォ!?」
美琴「一方、通行………………!!」
場に現れた第一位のその顔は。
とてつもなく、怒っているように見えた。
最高の言い訳考えたぜ
「友達から回ってきた」
最高だろ?もう大丈夫やwwww
「友達から回ってきた」
最高だろ?もう大丈夫やwwww
>>475
本人が報告しちゃった時点でアウト
本人が報告しちゃった時点でアウト
美琴「一方、通行………………!」
憎き第一位の姿が目に映る。
憤怒の様な表情を撒き散らし、左手で自分に襲い掛かってきた得体の知れない物質を捩じ曲げて叩き落とし。
あの時は頭に血が上って気付かなかったが、首元には何やら見慣れないチョーカーの様なものが掛けられていて。
今、一方通行が第二位の攻撃を止めてくれた。
一方通行「……………………」
美琴「………………っ」
一瞬だけ、こちらに視線を寄越しては第二位の方へと戻す。
その時見えた感情の揺らぎは、一体何を意味しているのだろうか。
黒子「う……っ、ごほっ、ごほっ…………!」
佐天「けほっ、けほっ…………!」
美琴「! 黒子! 佐天さん!」
初春「白井さん、佐天さんっ!」
黒子達の咳込む声が美琴の耳に届き、美琴は駆け寄る。
どうやら窒息の苦しみから解放された様子で、二人とも無事の様だ。
ホッと一息つき、黒子と佐天の手を取った。
美琴「よかった………………」
初春「よかったです…………」
初春と打ち止めも黒子達の傍まで駆け寄ると、安堵の表情を見せる。
黒子と佐天を苦しませたのは第二位による能力か、一方通行が姿を現した途端にそれは掻き消えた。
一方通行「打ち止め」
打ち止め「うんっ」
一方通行「超電磁砲達と下がってろ。片が付いたらさっさと病院に戻るぞ」
打ち止め「うんっ!」
美琴「………………………………」
美琴の耳に届いた打ち止めの声は、無条件の信頼を一方通行に寄せているかの様な声だった。
打ち止めの表情も笑顔に近い。
心配の色も滲ませているのだが、もう一方通行が来てくれたのならば安心だ、という感情が手に取るようにわかる。
自分のした事が間違いだった、焦心苦慮だったと。
打ち止めを心配する一方通行の姿が、一方通行を信頼する打ち止めの姿が。
そう、美琴に感じ取らせていた。
───なンだ、コイツは。
垣根の様子がおかしい事に気付く。
自分の姿を見ても大した反応を示さない、それ以前に目がこちらを向いてもいない。
前方の下の方に視線を向けたまま、静止している様にも見える。
一方通行「オイ、テメェ。『これ』はなンだ?」
怪訝な表情を垣根の横に着いている白衣を着た男に向ける。
見る限り、垣根の様子は自我を保ってはいない。
垣根が操られる、などと言う考えにくい予想だったのだが垣根の様子を見るにそう思わずにはいられなかった。
「……ふん、まあいい、答えてやろう。お前にやられた後の事だ。三分割されていた脳みそと身体をかき集め、クローンの培養技術を基にこの私が復活させたのだよ」
一方通行「……………………」
「尤も、その方法には特別な構築プログラムが必要だったのだがね」
一方通行「あァ?」
「『守護神』を名乗る者の特殊な構築プログラム────何やら、個人用で開発されたOSだったらしいが」
初春「え────────」
美琴「『守護神』…………って…………」
後方の方で、研究者が吐いた言葉に反応を示す少女がいた。
信じられない、まさか、という様な声色。
『守護神』とやらが彼女達とどう関係しているのかは知らない。
一方通行「意図はなンだ?」
「…………最終信号を手繰り、シスターズの全征服、武力増強だ。脳波リンクが繋がっている一万ものシスターズの力は、使い方によっては無敵の軍隊にもなるのさ」
美琴「なっ!?」
打ち止め「…………っ」
御坂妹「………………」
一方通行「……………………テメェ……」
その研究者の言葉を聞いた瞬間、拳を握った。
────打ち止めを利用した妹達による軍隊だ?
以前にも打ち止めにウィルスコードを打ち込まれ、そうなりかけた経緯がある。
自身の命を賭してあの時は守りきったのだが。
その時の怒りが蘇る。
不可思議な右手を持つある無能力者によって悲惨なる運命が切り開け、造られたと言えどもようやく人並みの幸せを掴みかけた矢先の事だった。
『これ以上は、一人だって死んでやる事は出来ない』
力強い目で一番小さく、そして一番大きい存在は言った。妹達だって生きるという意味を理解し、人生というものを謳歌していくべきだった。
それを、この研究者は私利私欲の為だけに利用しようとしているのか。
『守護神』の構築プログラムがそれを手助けしたと言うが、それは今知ったこっちゃないし、一方通行にとって別段気にかける事でもない。
「ふはは! お前がシスターズにはもう手を出せない事くらいは掴んでいるさ! 使えるモノは使う、それだけなんだよ!」
美琴「………………っ」
一方通行「黙れ」
憎むべきは、その研究者が垣根を通じて自分が守るべき存在を危険に晒そうとしている事、ただそれだけ。
一方通行の顔が歪む。
全身で怒りをあらわにしながら、再び首元のチョーカーに手を掛けた。
一方通行「……死以上の苦しみを覚悟しておけ」
守るべきものを脅かす存在には、容赦などしない。
「やれ!」
学園都市最強の二人が、今ここにて激突する──────。
『未元物質』は、並の人間であるならば到底理解しえれないもの。
ファミレスに置いてあるドリンクバーの機械を例に例えてみると。
中身は何が入っているのかはわからない、どんな組み合わせで出て来るのかはわからない。
そしてその混合によってどんな味のジュースが出来るのかは傍目からはわからない。
変則に変則を重ねた、常識、法則など何も通用しない本来存在しないはずの物質。
それを垣根は狙って出しているのかどうかもわからない。
副次的な効果は意図的かランダムか。
独自の物理法則、ベクトルには以前手こずった。
しかし、一方通行という男は学園都市第一位の男である。
学園都市からした利用価値にて順列は決められているのだが、一方通行はその名に恥じない力を有する。
第一位、それは一重に明快なる頭脳をも表しており、以前に解析した事のあるものならば彼には二度と通用しない。
「gutkぎsuせaig────」
垣根の背中に白い翼が現出する。
さて、どんな攻撃が飛んで来るか……………………。
一方通行「ッ!?」
しかし、垣根の能力によって見知らぬ法則と化した太陽光線は一方通行ではなく。
守るべき者達にへと向けられた。
美琴「っ!」
打ち止め「!?」
一方通行「チッ!」
バチッ────────!!
瞬時に彼女達の前に身を立たせ、それを弾く。
反射の設定もままならないまま空中へと逸らし、弾かれた光線は道路の向かい側にそびえ立つビルの最上階付近に穴を空けた。
美琴「い、今のは………………」
打ち止め「あなた!」
一方通行「…………随分と汚ェ真似をしてくれるじゃねェか」
後ろ手の存在を気にかけながら、目の前の研究者に最上級の唾棄の睨みを利かせる。
間に合った事に一先ず安堵をしておきながらも一方通行は気を緩めない。
言葉を投げかけるが、問答など必要ない。
「君相手には相応の戦い方をせねばね。後ろのシスターズ共を守りながらならば君のベクトル解析も困難を極めるだろう?」
一方通行「クソが」
ズガン―――――――!!
チョン、と地面を踏んだ。
一方通行が爪先で地面に軽く触れるような軽い動作とは裏腹に、轟音と共にたちまちコンクリートに亀裂が走り、垣根と研究者が立つ地面に地割れが起きたのだが。
白い翼がはためき、垣根は研究者を抱えて空中へとかわしていた。
「ふう、危ない危ない」
「……………………」
相変わらず面倒臭い野郎だ。
一方通行としても、こんな攻撃で垣根がやられるとも思っていなかったし、小手調べのつもりであった。
問題は、自我のない垣根がどうやって能力を行使しているのか、だろう。
能力を使うには、量子力学に基づく演算が必要になる。
それも、レベル5の『未元物質』なるものは相当に脳の回転させるのだろう。
ただ火を出す、水を出すのとは訳が違う。
そんな難しいものをこの自我のない垣根がどういう風にして『自分だけの現実』を吐き出しているのかがわからない。
打ち止め「あなた……………………」
一方通行「………………あァ」
しかし、そんな事も今は関係ない。
ただ目の前のクソッタレ共を、ぶっ飛ばすだけだ。
非常にシンプルな答え。
小難しい事など興味もないし、関係ない。
太陽が雲に隠れ、そして再び陽が射しかける。
機が来たか。
一方通行「空中に上がったのが運の尽きだったなァ」
「………………なんだ?」
「ggroujだmyいkos────」
操作するは、垣根の周りに限定した光と影のベクトル。
極限まで展開した影の闇で垣根を包み込み。
そして陽が射したその瞬間、極限まで高めた光の量でまた垣根と研究者を包み込んだ。
それは、光も全くない真夜中に突然レーザーライトを直視してしまった感覚。
いや、実際にはその何倍、何十倍もの負荷が眼球にかけられたのだろう。
「ぐあっ…………!? 目がぁ…………!!」
「ぐatdh────!」
一方通行「意識のないテメェでも、目で見てモノを判断してンだろ?」
「ぐ……クソ…………!? お、おい……! お、落ちる!」
5m程上がった垣根の手から研究者が滑り落ちる。
建物にすると2階半くらいか。
だが能力も体術も何も得ていない研究者には、その高さからの落下時の身のこなしなど会得している訳もなく。
無造作に、頭だけは守ろうと背中から地面と激突した。
「グハッ!!」
肺の中の空気が全て吐き出されたか、呼吸も困難そうにもがきはじめる。
それを一瞥し、一方通行は再び垣根を見た。
「あgtrせsitらkmnvsnab──────!!」
聞き取る事の出来ない、ノイズが混じった雄叫びが轟く。
いまだ空中にいる垣根の周りに翼の白い羽が散りばめられ、花火の如く乱雑に至る所へと突き刺そうとした。
初春「っ!!」
美琴「!!」
打ち止め「あなた!」
一方通行「悪あがきも無駄だぜェェッ!」
自身の運動量のベクトルを操作し、白い羽をかい潜って一方通行は飛ぶ。
右手に作った握りこぶしを、垣根に目がけ。
垣根の目の前に展開された『未元物質』ごと、拳を振り抜く。
一方通行「オラァァァッッ!!」
「ぬgrwtk────ッッ!!」
一方通行の拳が、垣根の頬に突き刺さった。
上条達は第七学区の学舎の園の傍に併設されている、学園都市最大の図書施設へと足を伸ばしていた。
どの学区にも様々な文献の書物が収められた図書館は存在してはいるのだが、学園都市の中央部に位置する第七学区のそれは他の学区のものよりも規模が違う。
三階建ての近代の文明を思わせる建物は、他の施設の例に漏れることなくハイテク機能を詰め込んでおり、神裂がヒクヒクと顔を引き攣らせているのが容易に想像できる。
インデックス「とうまとうま、すごいねここ」
五和「ここには一体何冊もの本があるんでしょうか」
オルソラ「あら、欧州諸国の文献もございますのですね」
上条「ほえー……俺も初めて来たんだけどこれは驚いた」
神裂「あ、遊びに来たのではないのですよ」
上条「ん、わかってるって」
それにしても、でかい。でかすぎる。
三階建ての建物なのだが、奥行きや幅がかなり広い。
まるでコンサートホールの様な大きさでもまだ足りないくらいかもしれない。
と、受付窓口に置いてあったフロアガイドを手に取り、簡単に目を通すと上条はその目を丸くした。
この学園都市最大のこの図書施設には、地図やら冊子やら何やら丸ごとひっくるめて計算してみると、その数実に3,000万冊は超える書物が収められているらしい。
考えるだけでもクラッと来るような数なのだが。
神裂「さて、探してみましょうか」
上条「おおい! どこ行く神裂!?」
と、目当ての品を手当たり次第探そうとする神裂を後ろから引き止める。
神裂「? 何処、とは決まっているのではないですか」
上条「こん中から適当に探すの無謀すぎんだろ! こういう所には便利なコンピューターがあるっての!」
神裂「こんぴゅうたあ、ですか…………」
ピッピッと上条が備え付けの書物検索専用のパソコンに指を差すと、ハイカラな横文字のものが如何にも苦手だと言わんばかりに神裂は反芻した。
苦笑いの表情を浮かべる。
いくら発達した科学に疎い神裂とあれど、これくらいの事はイギリスでの生活の中でも触れているのだろうと思ったのだが。
神裂「……………………」
五和「……………………」
オルソラ「……………………」
インデックス「……………………」
上条「えっ」
と思ったら、この場にいる全員?
神裂「……………………」
五和「……………………」
オルソラ「……………………」
インデックス「……………………」
上条「えっ、えっ」
まじかよ。
っつーかインデックス、おまえもかよ。
上条「この辺か」
五和「す、すみません上条さん」
上条「いや、はは…………大丈夫だ」
数分後、一行は目的の場所へと移動する。
案の定上条がパソコンを操作し、目的のものと関連しそうな書物の一角を弾き出す。
特に難しい事でもない操作をしただけなのだが、神裂達から尊敬のキラキラした眼差しが飛んできて苦笑いしか出なかった。
目的のモノ。
一同が今は席を外している土御門と共に立てた、ある仮説に確証を持つ為の情報であった。
それは魔術についての本ではない。
この科学の街にそんなものが置いてあるとは思えないし、あったとしても『恋の魔法』などという少女向けのおまじない的なものだろう。
まあそれはいい。
探すは、この国日本古来より伝わりし奇伝。
最初はこの科学の街にそんな事があるのか、と半信半疑であった。
だが、現場に残された『動物の様な毛』がその憶測を導き出している。
上条「妖怪、ねえ…………」
自身の右手によって掻き消えてしまったものだったが、それを思い出しながら上条は呟く。
神裂「あなたは信じていないのですか?」
上条「んー、どうだろうな。この街の学生達は科学で全て立証されているってのがモットーに教育されててな」
しかし上条は口には出さないが、『記憶がない』という事が自身の吐いた言葉とは裏腹に実在するのではないか、と感じてもいる。
上条以外の学園都市の学生達ならば、口を揃えてそんなものありえるはずがない、と答えるだろう。
上条はそんな学園都市の教育以上にオカルトに首を突っ込んでいて、様々な事柄を実際に目にしてきている。
上条「ただなあ、魔術ってもんがある以上否定できないのも事実なんだよな」
ぶっちゃけ、そこまでどっぷり教育されているわけでもないしな、と内心で付け足しながら上条は続けた。
学業に対する情熱がそこまでない事がここでは柔軟な思考を持つ傾向の良い部分であるかもしれなかった。
それでも、学業を疎かにする事で上条の成績は悪い一方なのだがな。
上条「黙ってくれ」
勉強しろよ、上条。
まあ頭がいい上条など上条などではないがな。
上条「うるせえええええええええええええええええ!!」
神裂「!?」ビク
五和「!?」ビク
インデックス「わっ」ビク
オルソラ「突然どうしたのでございますか?」
職員「館内ではお静かにお願いします」
上条「んあっ……………………何でもないす、すんません」ペコリ
「はぁ…………っ、はぁ………………っ!」
白衣を揺らし、ビルの間を研究者は走る。
視界がハッキリしていないようで、時折建物に身体をぶつけながらも何かから逃げるようにして研究者は走っていた。
「やられた…………、やられた………………!! クソ、あの忌々しい第一位があそこで現れなければ………………!! ぐおっ!?」
ゴミ箱に足を引っ掛け、盛大に転ぶ。
入れられたゴミが散乱し、その上に研究者は倒れこむのだがそんな事は気にせず研究者は後ろを振り向いた。
人通りの少ない狭い路地だ、人の姿や気配も何もなく研究者はひとまずほっと一息ついた。
おもむろに胸ポケットからタバコを取り出し、それを咥えはじめた。
カチッ、カチッ―――――。
「クソっ!!」
うまくライターの火がつかず、思い切り地面にそれを叩きつける。
量産型の安物ライターは割れ、中の液体が染み出した。
「立て直しだ…………垣根を取り戻さねば…………」
ぶつぶつと言いながら、研究者は立つ。
ふらふらとしながらも確かに二本の足で立ち上がると、抜け道へと足を動かそうとしたのだが。
「………………ん? なんだ、これは………………」
狭い路地に、何やら不思議な紋様が描かれている。
スキルアウト共が殴り描きする落書きとはまた違う、精巧にも見えるそれ。
左手の建物、地面、そして右手の建物にまでそれは及んでおり、見えにくい目を何とかこらして見ようとする。
足が、その紋様を踏んでいた。
カッ――――――――!!
「な、なんだ………………!?」
その瞬間、紋様は真っ赤な光を放ち。
そして、研究者の身体を貫いた。
「う、うぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
最期の断末魔を上げ、研究者の意識はそこで失う。
紋様から出された赤い光と研究者の血の赤が混じり合い、一斗缶の赤色のペンキがぶちまけられた如く。
その路地裏は、死の色に染まった。
ってか改めてみて思ったけどジャッジメントからどんどんかけ離れていってる気がするわひゃ
乙!
大丈夫、物語のタイトルに名前がのってるのにどんどん蚊帳の外に追いやられてるシスターのメインヒロインだっているんだぜ?
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>>496
吹寄「ガタッ」
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