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元スレ上条「俺がジャッジメント?」初春「2です!」
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首しめたんじゃなくて、そういう性質の気体か何かを造ったんじゃないかな
むしろその未元物質の応用までほぼ完璧にできる研究者は何だよ
乙
乙
研究者「俺に常識は通用しねぇ」 初春「アナタの常識は私の非常識です!」
>>496
「頭突く」じゃなくて「続く」って言おうとしたのか?
「頭突く」じゃなくて「続く」って言おうとしたのか?
神裂「日本古来より在りし怪奇な伝記。どの国にもその地ごとの言い伝えはあるのですが、この日本という国ならではの風習に倣って呼び出したものなのでしょう」
上条「呼び出した? 『黄泉がえり』させられて別の姿に変えられただけなんじゃないのか?」
五和「はい、大体その認識で合っていると思います。ただ他のものに姿を変えるとは言っても、その別の姿の元となる媒体がなければ具現化は難しいかと思われるんですよ」
インデックス「魔術は想像力が肝心かも。私が怪我しちゃったあの時も、こもえが回復魔術を使うときに天使を想像して具現化させたんだけど、可愛い天使、可愛い天使ってありったけの想像力を働かせたみたいなんだよ」
上条「想像力、か。つまりは頭の中にあるイメージがそのまま現出するって事か?」
神裂「ええ。『黄泉がえり』を行使した人物が海外の者か日本の者かはわかりませんが。
それに土地の地脈というものがありますので、無理に遠い異国の地のものを呼び出すよりもその地に馴染んだものの方が遥かに呼び出しやすいのでしょう」
巨大な図書施設の一角で、ヒソヒソと話し合う上条達。
日本に伝えられているオカルトチックな怪奇現象を纏められた本が机の上で開かれ、一同は熱心にそれを熟読していた。
そのような書物がこの学園都市にあるという事には上条としては少々驚きであったが、まあ運がよかったと考える事にしよう。
んー、と上条は考える。
魔術にも様々な形があり、また様々な効果がある。
学園都市で開発される能力は、使い方によっては一つの能力で様々な効果が扱えるのだが、基本は一辺倒である。
しかし魔術は、法則にさえ乗っ取れば火も出せ、また水も出せる。
『必要悪の教会』所属のステイルは炎術師として知られているが、火以外のものは出せないのか、と問われればそうではない。
ただ、火の魔術を最も得意とし、忍び寄る脅威を退けるのにそれが一番彼にとって理に適っているからであった。
とはいっても、上条は自身が持つ力故に能力も魔術も使った経験がなく、その辺りの塩梅はよくわからない。
わからないが、ただ今まで散々能力や魔術の厄介事に首を突っ込んできており、その度にどうすればいい、どうなしなきゃいけない、と他人に聞いてばかりであった。
無知故に解決に時間が掛かったり、更なる被害が出てしまう事だってこれからでも十二分に危惧ができる。
───様々な事。これからもっと知っていかなきゃなんねぇな…………
守るべき者達を思い浮かべては、そう身に染みていた。
ふぅ、と天井を見上げる。
天井には有名な絵画らしきものが描かれていた。
布切れ一枚を纏った半裸の女性が描かれているが、官能的で扇情的なものではなくあくまで美術的なもの。
吹き抜けの上階の奥にもまだまだ何かありそうだった。
───それにしても綺麗なとこだなー。今度初春さんと来てみっかな。
何やらシアタールームやら資料館やら、なぜかプラネタリウムまで完備されている様だ。
初春を連れてってあげたら喜ぶ顔が見られるのではないか。
喜んだ顔、嬉しそうな顔。
手を繋いで、歩いて。
ふう、と再び天井を見上げる。
描かれている絵画の女性と彼女を重ねて────
上条「って何考えてんの俺!?」チガウチガウ
インデックス「どうしたの?」
神裂「どうしました?」
五和「?」
上条「い、いや何でもない、はは…………ってあれ、オルソラは?」
インデックス「あれ、あれ? ホントだ、いないんだよ」
青ピ「ええで~、ええで~! 図書館に外国の綺麗なお姉さん! 映えるで~!」パシャ パシャ
オルソラ「こ、困るのでございますよ……」
上条「」
職員「館内での写真撮影はご遠慮ください」スッ
青ピ「か、返してや! ボクのマイライフ!」
上条「何がマイライフだボケ!」バシッ
青ピ「いたっ! てあらー、カミやん?」
オルソラ「怖かったのでございますっ」ダキッ
上条「ちょ、オルソラ、タイム! 柔らかい感触がががが!」
神裂「」イラッ
五和「」イラッ
インデックス「」イラッ
青ピ「カミやんんんんんんん!」
つーか何で青ピがいるんだおい。
空中で拳を叩き込み、コンクリートの地面にクレーターを作って倒れ伏す垣根を一瞥する。
溜息を吐きながらチョーカーの電極のスイッチを切った。
一方通行「チッ、やっぱあン時とどめを刺しておくべきだったぜ」
打ち止め「あなた!」
一方通行「打ち止めァ、怪我ねェか?」
打ち止め「うん、大丈夫だよってミサカはミサカはあなたに飛びついてみる!」
一方通行「やめろみっともねェ、うっとォしィ」
垣根が再び立ち上がる事のないくらいの一撃を浴びせたつもりなのだが、それでも注意を払いながら打ち止めの身体を抱き留める。
口ではそう言いながらも、彼の手は打ち止めの頭を乱暴にくしゃくしゃと撫でていた。
打ち止め「えへへーっ、そう言いながらも撫でてくれるあなたの優しさにミサカはミサカは甘えてみたり!」
あと少し、自分が遅れていたらどうなっていたかは想像に難くない。
この小さな守るべき存在が、どうなっていたのか。
一方通行「………………」
自分の胸の辺りにまでいかない大きさの少女。
何度、この小さな存在が危険に晒されればいいのだろうか。
何故、危険に晒されねばいけないのか。
苦虫を噛んだような表情をしながらも、一方通行は打ち止めの頭を撫で回していた。
ふと、美琴と目が合った。
美琴「……………………」
一方通行「……………………」
互いに言葉はない。
別に掛ける道理はないし、話したくなければ話さなくていい。
それに今更何を話せばいいのか。
難しい表情を貼り付けて思案していると、初春達から声が掛かった。
初春「あ、一方通行さん」
方通行「おォ、お前らも無事だったか?」
佐天「あ、はい、ありがとうございました」
黒子「助かりましたの、何とお礼を申し上げればよいのか……アンチスキルには通知しておきましたので、恐らくそろそろ到着する時間かと」
一方通行「そォかい」
一同揃って告げられた礼に対して別に気にするなという意図を混ぜて一方通行は返す。
彼女達は巻き込まれただけだ。
そして自分はクソッタレをぶっ潰しただけ、ただそれだけの事。
あいつならどう返したんだろうな、と三下ヒーローの事を頭に掠めながらすぐに消した。
一方通行「オイ、戻ンぞ。準備は出来てる」
打ち止め「うん! ってミサカはミサカはあなたの手を引っ張ってみる!」
御坂妹「了解しました、とミサカは返答します」
美琴「……………………」
一方通行「……………………」
打ち止め「お姉様、また遊ぼうねってミサカはミサカは手を振ってみたり!」
御坂妹「それでは失礼します、とミサカはペコリと頭を下げます」
美琴「あ、う、うん…………」
何か言いたそうな美琴の表情が心の僅かな引っ掛かりに指一本でぶら下がる。
しかし一方通行はそれを解き落とした。
垣根共々、自分みたいなこんなクソッタレの人間に関わる事など。
もう、なくていい。
その後、黄泉川率いるアンチスキル部隊が現場に到着し、黒子が代表して応対していた。
重傷者とまではいかなくとも怪我人も出ていたが為に『KEEP OUT』と書かれた侵入禁止を促す黄色いテープのバリケードが張られ、現場検証に訪れたアンチスキルの隊員達が忙しなく入出している。
野次馬達もなんだなんだ、と言わんばかりに増えていて軽い人だかりが出来ていた。
「いや、突然お店の目の前で爆発の様な音と悲鳴が聞こえたので何事かと思い飛び出してみたら…………」
「ふむふむ、なるほどね」
災難だったな、と黒子は思う。
本日オープンしたばかりの雑貨屋の店長と思わしき人物が複雑な顔をして聴取を受けており、どことなく残念というか憂いを秘めたというか、物悲しい雰囲気を纏っていた。
オープン初日に突然こんな事件に巻き込まれるのなんて何と言う不幸なのだろうか。
店にとっては特別な記念日、この日のためにどれくらいの準備をしてきたのだろうか、考えるだけで不憫な気持ちになってくる。
彼に負けないくらいの不幸とも言えるのであろう。
黒子「……………………」
黄泉川「白井ー、ちょっといいかじゃん?」
黒子「あ、はいですの」ブンブン
黄泉川に呼ばれ無意識の内に思い浮かべていた彼の顔を頭を振って消し去り、黄泉川の下へと赴く。
事件が起きた、という事で彼を呼び出すのも考えたが。
まあ、明日慰めてもらえばいいかな、と考えを打ち消した。
オルソラ「そういえば、もう食材が尽きかけているのでございますよ」
上条「お、そうだった。んじゃ帰り道がてらスーパーでも寄って帰るかー」
五和「(上条さんと…………お買い物……ふふ……)」
神裂「五和、何を考えているのです?」
インデックス「おっかいっものー」
すっかり日も暮れた時間帯。
調べ物も一段落つき、一同は図書施設から場所を移していた。
土御門の予測の言葉を裏付ける様な情報も収集でき、後は対応策を練るだけの段階に移った。
現在土御門は別件があるらしく姿を見せていないのだが、夜にでもなればひょっこり上条の部屋を訪れるのだろう。
冬の季節がは日が落ちるのが早い。
現在時刻はそろそろ夕方五時を回ろうとしているところであるのだが、段々ともう赤みから青、そして黒の色へと空は向かっている所である。
より冷たい風が吹き抜け、肌を刺すような寒さは身を震わせていた。
上条「寒いな、早めに戻ろうぜ」
オルソラ「そうでございますね」
神裂「これくらいの寒さなど鍛えればどうとでもなります」
上条「…………脳筋」ボソッ
神裂「…………七閃」ギラッ
上条「ひっ、な、なんでもないですっ!」
聖人なる者は聴覚まで敏感に研ぎ澄まされているのだろうか、神裂が目を光らせる。
とまあそんな事は置いておいていいだろう。
買い物も済ませ、上条行きつけのスーパーから寮まで戻る。
この人数分の量ともなると上条の両手で持てる範囲を超え、神裂、五和も一袋ずつの計4つもの荷物になった。
自分達も食べるから、という理由で食材の代金を割り勘した時は情けなく思いながらも感謝し、感涙を流していたのはここだけの秘密だ。
インデックス「おるそら、今日のご飯は何かな?」
オルソラ「今日はシチューでございますよー」
インデックス「シチュー! 食べた事ないかも! 楽しみなんだよ!」
上条「う…………これも俺が情けないばっかりに……」
神裂「…………あなたには苦労かけさせてしまっていますね」
五和「か、上条さん…………」ウルウル
お涙頂戴の事情がありにしろ、そう言った所でまあ突然劇的に生活が変わる訳でもない。
インデックスも自分も育ち盛りだ、もっと食生活には気をつけなければなるまいと考えていて…………いや、インデックスには相当の量を与えている気がする、うん。
それでも何とか生活できているし、まあいいか、なんて自己解決した様にうんうんと頷いていると。
「……………………」
上条「……………………ん?」
そろそろ学生寮も近付いてきた辺りの道端でフラフラと歩く男の姿が見えた。
足取りも不安定、歩き方も不自然。
年の功は自分と同じくらいか、ほんの少しだけ上か。
着用しているスーツの様な服も所々破れており、この学園都市では見る事のない浮浪者の様であった。
神裂「どうしたのでしょうか?」
インデックス「なんだか苦しそうにも見える、かも」
五和「上条さん、知っている方ですか?」
上条「いや、知らない」
壁にぶつかり、手を壁に置く。
そうして体勢を整え、また壁にぶつかる。
それを繰り返している内に、男はその場に倒れ込んだ。
上条「おいおい…………おーい、アンタどうした? 大丈夫か?」
困っている者を放っておける人間ではないのが上条である。
酔っ払いかな、なんて思いながら倒れ込んだ男の肩を揺すって起こそうとする。
上条「おーい、こんなとこで寝ると死んじまうぞ」
「……………うー………」
何を写しているのかわからないくらい焦点も定まってない目。
それに怪訝な表情を浮かべながらも何とか身を起こさせ、立たせようとする。
上条「おっと…………大丈夫か…………」
首がカクッとなり、その頭に自身の右手を添えた瞬間──────
バチンッ──────
異能が消える、あの感触が響いた。
上条「!?」
インデックス「え、い、今のって」
神裂「何かが消えた、音…………?」
「……………………っ」
上条「お、おい! アンタ、しっかりしろ!」
フラフラとしていた男の様子が一変し、男はその場に倒れ込んでいた。
インデックス「とうま、その人大丈夫そう?」
上条「んー…………どうだろうな……」
自分が使っている布団の中で時折苦しそうに顔を歪める男に目をやりながら上条は答える。
あのまま放っておける訳もなくとりあえず自室に連れ込み、横にならせたのはいいのだが。
当然病院へ連れていくという選択肢もあったのだが、頭を支えた瞬間に幻想殺しが働いた事が妙に引っ掛かる。
何かがこの男にかけられていたのかどうかはわからないが、とりあえずはこうする事にしていた。
もしかしたら、自分達が追っている例の魔術の件にこの男も絡んでいるのかもしれない。
危険もあったのだが、もしそうであるのならば色々と聞き出す好機でもあったりする。
当然神裂と五和の二人は男の動向に細心の注意を払っており、いざとなればの準備は出来ている。
上条としても少しも気は緩めないまま男の目が開くのを待っていた。
「うっ………………」
上条「!」
神裂「!」
五和「!」
うめき声を上げ、男の目がゆっくりと開かれる。
その様子に臨戦体勢を整えながら、上条達は息を飲んだ。
「ここは……………………」
上条「…………目が覚めたか?」
右手を軽く握りしめながら声を掛ける。
いまだはっきりしていない様子で男は視線を動かしていた。
「う…………頭が痛ぇ」
上条「………………水でも飲むか?」
「ん…………ああ、悪いな、もらっていいか……?」
上条「………………」
男が身をゆっくりと起こしたのを確認し、あらかじめテーブルの上に置いた水が注がれたコップを手渡す。
ゆっくりとした動作でそれを受け取ると、コク、コクとそれを喉に流し込んだ。
「ふぅ…………」
上条「……………………」
「…………悪いな、助かった」
上条「ああ」
時間を掛けて飲み干したコップを上条に返す。
礼を告げたその様子に少し警戒心を薄めるのだが、それでもまだまだ完全には解かない。
そうしたまま上条は男の言葉を待った。
「………………俺はどうなったんだっけか」
上条「あん?」
「………………思いだせねえ……」
上条「………………記憶がないのか?」
「いや…………確かあん時…………俺は…………死んで、ないのか?」
上条「…………どういう事だ?」
「…………っ、だめだ、頭が痛ぇ」
苦しそうに表情を歪めながら頭を押さえる。
無理をさせるでもなく上条はただじっと男の言葉を待った。
「すまん、もう少し横になってていいか?」
上条「ん? あ、ああ、いいけど」
「悪いな。助かる」
再びゆっくりと横になり、腕で顔を覆うように被せる。
考え事でもしているのだろうか、男はそれっきり少し押し黙った。
この男が例の件に関係あるのかどうかはまだわからない。
しかしはっきりとしないその様子はどうやら演技でもなさそうだ。
すると上条の後ろからひょっこりインデックスが顔を出し、上条に耳打ちをしだした。
インデックス「(とうま、この人から魔力は何にも感じられないんだよ)」
上条「(やっぱそうなの、か?)」
インデックス「(うん)」
後ろを向き、神裂と五和とも顔を合わせる。
二人もインデックスの言葉を肯定するように頷いており、ふう、と一息ついていた。
「…………名前は?」
上条「ん? ああ、上条当麻って言うんだ」
インデックス「インデックスって言うんだよ」
「外人さんなんて久しぶりに見たぜ。しかし日本語うまいな」
インデックス「ありがとなんだよ」
上条「アンタは?」
「俺か? 俺はな、垣根帝督って名前だ」
男は覆い被せていた腕を下げ、そう名乗った。
右手が反応→繋ぎ合わせていた脳がバラバラにor洗脳(守護神プログラムによる洗脳)の打ち消し?
前者怖い…gkbr
前者怖い…gkbr
>>1姉ちゃん元気?
>>1乙
ていとクン合流か?
ていとクン合流か?
姉ちゃんの所為で>>1が逝った可能性あるな。
上条「それで、さっきまでの事は覚えてないのか?」
垣根「さっきまでの事だ?」
上条「ああ、さっきの道端での事だが」
垣根「ああ……………………」
身を起こし、垣根と名乗った男が答える。
上条の質問に考え込んだ素振りを見せ、視線が足元で留まっていた。
まだ完全にその男に気を許した訳ではないのだが、魔術の件に絡んでいるという線は薄く見える。
というかまあ突然目の前で倒れた者に対してそんな警戒心を剥き出しにして突っ掛かるのもどうだろうな、という上条の良心が働いてもいた。
垣根「………………つっ」
上条「大丈夫か? ……すまん、思い出すのが無理ならいいんだ」
頭を押さえ、痛そうに堪え出す。
その様子に上条は無理をしないように告げると垣根は押さえた方と逆の手を上条の前に突き出した。
垣根「いや…………俺も思い出さなきゃいけねえと思うし…………つっ」
インデックス「無理はしないほうがいいかも」
垣根「ああ…………」
額に滲んできた汗を見てインデックスも心配そうな表情を見せる。
目を瞑り、息を整える様にふぅと一息吐いた。
一同の視線が垣根に集中している。
疑心も勿論含まれているが、大部分は大丈夫かという様な目。
不思議とその内心部分も感じ取れているような、そんな落ち着きでさえも見せていた。
自分自身、記憶喪失というモノを経験し、その際には実は相当焦っていたりもしていたのだが、心配掛けじと冷静を取り繕って周りと接している。
この垣根という男も今同じ気分に浸っているのだろうか。
垣根「…………」
グゥ。
垣根「んあ」
少しの間の静寂を破って聞こえたのは、誰かの声ではなく気の抜けるような音。
人間であるならば条件下で誰しも鳴る空腹を訴える腹の虫の音だった。
少し緊迫した空気の中でそれが唐突に鳴らされた事に、上条の口元はほんの少し緩む。
垣根は恥ずかしそうに頬をポリポリとかいていた。
上条「ぷ、腹減ったのか?」
垣根「恥ずかしながら」
上条「ん、俺も腹減ってきたし飯にすっか」
オルソラ「それでは夕餉の用意でもしてくるのでございますよ」
上条「悪い、オルソラ」
垣根「すまん、迷惑掛ける」
オルソラ「いいのでございますよ」
一方通行「あァン? 病院から姿を消しただァ?」
黄泉川『そうじゃんよ。ちょっと目を離した隙に一瞬の内にいなくなったらしいじゃん』
一方通行「アンチスキルの人間は何をしてやがったンだよ……」
黄泉川『その件についてはすまん。こっちも事情聴取やら何やで聞き込みしてたじゃんよ。そいつも動く気配もなくて少し気が緩んだ矢先に一瞬の内に姿を消してたみたいじゃん』
一方通行「はァ……ったくよォ。やっぱあン時ぶっ殺しとくべきだったぜェ……。で、足取りは掴めてンのか?」
黄泉川『いや、全然。こっちも厳戒態勢でしいといたんだが、目撃情報はナシ……今日はどうにも家に帰れそうにないじゃん』
一方通行「……チッ。まァ何かわかったらすぐ連絡しろ」
黄泉川『あぁ、わかったじゃん。だがくれぐれもやり過ぎはするなじゃん?』
一方通行「そンぐらいじゃねェとあのクソッタレには意味ねェんだよ。はァ……切るぞ?」
黄泉川『家の事は任せたじゃん』
一方通行「ケッ」ピッ
苛立った様子を隠しもせず舌打ちをしながら電話をポケットにしまう。
隣では同居人の二人がやいのやいの話し合っており、こっちとの状況の温度の差を著しく感じた。
しかしその様子から別段怖がらせる必要もない。
有事の時には今度こそ一瞬の内に片をつければいいのだ。
打ち止め「ねーねー、ヨミカワは何だってー?」
一方通行「今日は仕事で帰れねェンだとよ」
番外個体「ええ、じゃあ今日の晩御飯はどうするのさ?」
一方通行「まだ鮭が残ってンだろ。それでも食っとけだとよ」
番外個体「また鮭? はぁ、もう飽きたよ」
打ち止め「ハンバーグが食べたいってミサカはミサカは駄々をこねてみたり!」
一方通行「ンなもン明日だ明日。今日はそれで我慢しとけェ」
番外個体「はぁ、誰かさんが釣りまくってくるから」
一方通行「ンな事言う奴は晩飯抜きだ」
番外個体「はいはい、わかりましたよ今日は我慢しますよっと」
この時には一方通行にでも予想出来なかっただろう。
まさかあのヒーローの所に渦中の第二位がなだれ込んでいるとは。
キーンコーンカーンコーン。
上条「ふぅ、やっと終わったぜ。っと、今日はジャッジメントだったな」
放課後のチャイムが鳴ると同時に生徒達は開放感に満ち溢れた様子でこの日一番のいい顔をそれぞれに出しながら立ち上がる。
上条も壁に掛かった時計に目をやりながら席を立つと、クラスメイト達に挨拶を交わしながら教室を後にした。
本来なら『補習』という名目でもう少しその場にいなければならないのだが今はもうその必要もない。
担任のロリ教室の何かを訴えかける目と行かないでという抱擁もそこそこにしてもらって上条は校門へと向かった。
その際のクラスメイト達の目線は妙に痛々しいものであったが気にしたら負けである。
とりあえず、と考えるはこれからの事。
朝、垣根は学校へ通う上条と共にあの部屋を出ていた。
記憶を戻す手掛かりはまだないが、じっとしてもいられないとの事でどこに行くのかも告げずにフラッと出ていった。
女の子だけの部屋にいるのも何か滅入るしな、とも言っておりもしかしたら彼は紳士的な人間なのかもしれないと上条は含み笑いを漏らしていた。
記憶の件は自身が何とかする、とも言っており何やら手を貸すのも拒むまではいかないのだがやんわりといいとだけ返され、それは求めたら、というスタンスでいたいようだ。
魔術の件。それをどうにかせねばなるまい。
この学園都市で事件が起きた以上、上条の周りにも危害が及ぶ恐れがある。
いや、十中八九及ぶものだと考えてもいいのかもしれない。
自身があれだけ魔術の件に首を突っ込み、『幻想殺し』の存在を疎ましく思う輩も膨れ上がっている、とも土御門は言っていた。
それもそうだな、とまるで他人事の様に笑った上条であるのだが、こうして自分の近くにまでその脅威が忍び寄って来るという事を考えると、やはり早急に手を打たねばならない。
もし、彼女に魔の手が…………と考えた所で、上条の聞き慣れた声が耳に届いた。
初春「当麻さぁんっ」
上条「おー、初春さん」
校門を過ぎた所で斜め後ろから声が掛かり、上条は振り向く。
すると突然、その声の主が上条の胸元に飛び込んできた。
初春「当麻さんっ、当麻さんっ」
上条「えっ、えっ、ど、どうした?」
ギュッと背中に回された腕に力が込められるのが感じ取れた。
その小さな感触、今まで何度か味わった感触だがまだまだ慣れる事のない上条は最大限の胸の動悸を何とか沈めようと深呼吸をしながら恐る恐る声を掛けるのだが。
黒子「う、う、う、初春っ! は、離れなさいっ!」
佐天「ああ、初春! こーなったら私も! 上条さーんっ」ギュ
上条「さ、佐天さん!? ちょ、ちょっ」
上条の真正面は初春が占領しており、佐天は上条の後ろに飛びつく。
初春はまだしも佐天とそんな事をした事はない。
また違った一段階上の柔らかさが上条の焦心ポイントを更につっつく。
黒子「な! 佐天さん!? な、何をしてらっしゃるんですの!?」
上条「し、しらい…………ど、どうしたんだ二人は……」
黒子「ぐぬぬ…………」
上条「し、白井サン……?」
黒子「こ、こうなったら!」
まずい。
黒子の顔が歪んでいる。
あれは以前自分と美琴が接している時の愛するお姉様に類人猿は近づけさせませんの顔付きだ。
愛するお姉様ではなくとも、初春も佐天も黒子の大事な友人。
その友人達が黒子が敵対心を持つ男と零距離で引っ付いているのだ、当然自分には空間移動&踵落としの鈍痛ダメージが来るものだと思っていた。
しかし、予想は大きく外れた。
黒子「ここですの!」シュン パッ ギュ
上条「何──────────!?」キャッチ
上条の横顔僅か数cm上という距離で黒子の顔が浮かぶ。
当然自分と同じ目線の高さという事は黒子は少なくとも空中に身を投げ出しており、後は落下という運動に身を委ねるだけ。
当然上条としては瞬時の内にだが咄嗟に黒子の身体を支えねばならない。
空いていた腕は黒子の背中に回し、落下運動を妨げる。
シュン パッ ギュッ という擬音もそのままであった。
上条「ちょ、ちょ、一体何なの何ですか何なんですかーっ!?」
初春「し、白井さん当麻さんに何をしてるんですかー!」ギュッ
黒子「わ、わたくしは道端での不純異性交遊を止めようとしただけですの! と、当麻さんが動きにくそうにしていますの! 離れなさいな!」ギュギュ
佐天「だっこみたいな恰好の白井さんが一番説得力ないですよー?」ギュギュギュ
初春「さ、佐天さんも離れて下さい!」ギュギュギュギュ
黒子「わ、わたくしはテレポートが失敗してこうなっただけですの! それに今当麻さんの右手がわたくしに触れているのでどうしようもありませんの!」ギュギュギュギュギュ
初春「明らかに狙いましたよねそれ!? 当麻さんが抱き止めてくれるのを明らかに狙いましたよね!?」ギュギュギュギュギュギュ
上条「…………これは景気付けに一発叫んでおいた方がいいのではないでせうか」
何とも羨ましいJCサンドイッチ状態の中でも上条はお決まりの台詞が喉まで出かかる。
しかも場所は上条の通う学校の校門を出たばかりの所。
放課後間もない最も人通りが多いこの時間帯は、その四人の周りに見物客の人だかりを作るのも当然と言えよう。
出来るだけ学校生活は平穏に暮らしたい。
だがこの状況を見られたのなら、とてもそうはいけないのだろうと頭のどこかで察知していた。
ナンダナンダー? JCサンドイッチダッテヨ
メチャメチャカワイイコタチジャネーカ アノセイフクッテトキワダイ!?
チョウオジョウサマモガアンナオトコノ… マタカミジョウカ
ワタシノカミジョウクンガッ! アンカデカミジョウヲタオス>>5
カミジョウイイカゲンニシロ ウ、ウラヤマシクナンカナインダカラネッ
上条「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!11」ダダダダ
初春「わっ」
黒子「あっ」
佐天「ひゃっ」
やはり上条は人間離れしているのかもしれない。
まだ少女達とは言えども三人の人間を身体に引っ付けながらも100m世界記録保持者も真っ青な脚力でその場から脱兎の如く逃げ出していた。
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