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元スレ上条「俺がジャッジメント?」
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さて、いざ校門に差し掛かると言った所で。
「あ、あの……………………う、初春さん…………」
「……………………はい?」
「んー?」
気弱そうなそんな声が届いた。
名前を呼ばれた初春と佐天が振り返ると、そこには眼鏡を掛けたクラスメイトの男子がもじもじとしながら立っている姿があった。
「何でしょうか?」
普段話も全くしないその男子。
というか話した事も一回あるかないかくらいの別段仲良くも何でもないクラスメイトだ。
どうしたんだろう? と首を捻っていると、佐天はピーンと来たのか途端にニヤニヤ笑い出した。
「ほう……………………これはこれは」
「あの、その……………………」
そのモジモジとした様子に、初春も段々と怪訝に思ってくる。
何だろう。用事なら出来るだけ早目に済ませてほしい。
彼との時間が、短くなってしまう。
到底恋人達の蜜の時間とは違うが、それでも彼といられる大切な時間。
全然付き合っても何でもないが、気分的にはそれ。
相変わらず佐天はその表情を貫いており、完全に傍観者へと成り代わっていた様だった。
するとそのメガネ君(と名付けておこう)がその重い口を開く。
「う、初春さん! ずっと前から好きでした! 僕と付き合って下さい!」
「ぬお、積極的……………………!」
「え…………………………………………?」
「およ?」
するとそのメガネ君のその言葉と共に、初春にとって何よりも聞きたい人の声が響いていた。
「かかかかかかかかかかかかか上条さん!?」
「あれ、上条さんだ」
「え、誰……………………?」
思いがけない想い人の登場に初春の時計は一瞬止まる。
校門の柱の陰からひょいと姿を現したその人は、正しく初春の頭の中に絶えずいたその彼だ。
佐天もどうしてここに? という表情を見せながら取り合えず挨拶でペこりと頭を下げると、上条も負けじとこんにちはとぺこり頭を下げた。
「いやーはは、第一七七支部に行く途中でここを通ったら初春さん達の姿が見えまして」
「ほえ、そうなんですか」
こりゃまた変なタイミングで見つけちまったなと苦笑いを見せる上条。
初春の思考は勿論止まりっぱなしで、ぽーっとただ上条の顔を見つめていた。
そそそと上条に近付き、同じく第三者として行方を見守ろうと佐天は続きを促す事にする。
「ってどうしてまた第一七七支部に?」
「今日が初出勤です、はい」
「え、それって………………?」
「上条さん、今日からジャッジメントなんですよ」
「わ、試験受かったんですか!? おめでとうございます!」
「はは、ありがとう…………えーと、とりあえずどういう状況なんだ? これ」
「初春、告白されたんですよー。メガネ君に」
「メガネ君にか」
「メガネ君にです」
本人達よりも第三者の方が盛り上がるとはこれやいかに。
まあそんな会話をしつつも上条もその行方を見守る事にした。
───……………………何で上条さんは睨まれているんでせうか。
見守る事にしたのだが。
メガネ君の方からまるで親の敵かという様な恨みの視線を感じる。
また初春の方からも視線を感じるのだが、とりあえずメガネ君の視線の感情がやたら黒かったのでそちらに意識を向けた。
「えー、初春言ってくれてもよかったじゃーん。っていうか通りで機嫌が良かったのか…………」
「えっ?」
「まあこちらは気にしないで。という訳で、続きどうぞー」
佐天のその言葉に慌ててメガネ君が初春の方に向き直る。
視線が外れた事にとりあえずほっとした上条は、んーと思案顔をする。
「……………………」
「……………………」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
「………………………………………………………………」
「………………………………………………………………」
沈黙が場を包む。
メガネ君はもじもじ時々こちら睨みだし、初春もチラチラとこちらを窺っていた。
なかなか動かない状況に、どうしたもんだかと考える。
メガネ君が初春に告白、らしいのだが。
「!」
そこで上条が閃く。
とりあえず変な空気になってしまった。いや、してしまったというのが正しいか。
という事は仕切り直したい筈だ。
仕切り直したいという事は告白し直したいという事。
しかし状況が動かないという事は何かが邪魔をしているという事。
つまりこの場で邪魔と言うのが。
───俺じゃねえか!
そう思うと行動は早い。
「はは、えと、とりあえず時間もないと思うから俺行くな。それじゃお邪魔しましたー」
時間がないとかそういうのは教えて貰わねば全然分からないのだが、とりあえずの理由付けとしてはいいだろと自己完結して踵を返す。
さいならーと上条は立ち去る事にした。
その様子を見ていた佐天も少し思案し、何かが閃いた様に表情を輝かせた。
「あっ、上条さん待ってくださーい、私も行きます! それじゃ初春、先行ってるから。頑張って! …………初春の答えはとっくに分かってるけど」
「えっ、か、上条さん、佐天さん……………………っ」
最後の方は初春だけに聞こえる様に耳元で囁く。
そんな佐天に初春もバッと視線をそちらの方に向けた。
彼の背中が遠ざかっていく。
そしてそれについていく様に、佐天の背中も遠ざかる。
あ、隣に並んだ。
それはまるで、とても仲が良さそうに。
そして自分がどうしてもなりたいポジションの様に。
そう、初春の目には写っていた。
「だ、ダメです────────────当麻さんっ!!」
「ん?」
「えっ、下の名前だと…………?」
「ちょ待ってういはr────────ぬおっ!?」
初春は、気付けば自分の声に振り返った上条の胸に飛び込んでいた。
「え、ちょ、初春さん!?」
胸にしがみつく初春に狼狽しながら声を掛ける。
ガッチリ背中まで初春の腕がホールドされた為、華奢だとはいえ解くのは困難を極めるだろう。
というか、いきなり抱き着かれるという状況に上条も驚き半分かなり激しく動悸がしていた。
「ほ、ほら、ここ道端だし、皆見てるし」
「…………………………………………ヤデス」ギュウ
「更に強く!?」
「…………………………………………」ギュウウウウ
「ぬお…………! これは俺がジャッジメントされかねん…………!」
「…………………………………………ワタシガハナシマセンカラ」ギュウウウウウウ
「ごめん、ちょっと、息苦しい、かも」ケホケホ
「! ご、ごめんなさい!」バッ
上条のその言葉に初春はハッとなり、回していた腕を離した。
ふう、と一息つきながら初春の顔を見てみる。
「ごめんなさい…………………………………………」ウル
「いや、大丈夫だから…………って初春さん! 泣かないで!」
「う、初春……………………?」
目尻に涙を溜めはじめた初春を見て、上条と佐天はオロオロし始めた。
俯いた初春のその顔。
心なしか頭に乗ったその花飾りも萎れている様な気がした。
「ほら、もう大丈夫だって」
その言葉と共に、今度は自分からは初春の肩を抱き寄せて初春の頭を撫でる。
「ふぁ………………………………///」
これで泣き止んでくれればいいと、上条は無意識でその行動を取っていた。
周りの目か、それとも泣いている目の前の女の子か。
どっちを優先するかなど、上条にとって天秤に掛けるまでもない問題だ。
泣いている人がいれば、全力で救う。
常にそのスタンスを取っている上条にとって、最早周りの目など些細な事であった。
また味わう事が出来た彼の匂い、温かい温もり。
今の自分の、何よりも効く涙と悲しみに対する特効薬だ。
触れている肩と顔と身体と頭と。
全身が今彼に触れられていると思うと、どうしようもない喜びと幸福感が初春を支配していく。
いつまでも、触れていたい温もり。
今まで味わう事のなかったその温かさに、ずっと触れていたい。
そんな気分だ。もう涙など、出てはいなかった。
「ん……………………」
また目元を指で拭ってくれた。
大切に扱ってくれるかの様な彼の優しさが、初春を満たしていく。
うん、もう大丈夫だ。
そのまま彼の手が自分の頬に当てられると────────
そのまま、横に引っ張られた。
「ったく。本当にさっきはちょっと苦しかったんだぞー」
「ひあ、ひっはらないふぇくらはぁい///」
びょーんと伸びている自分の頬のせいで、うまく喋れない。
でも彼の手は離したくないし、痛くもない。
それよりも彼が自分にそんな事をしてくれる────態度が軟化したのだろうか。
それがとてつもなく、嬉しかった。
随分と落ち着けたし、初春は体勢を整えてメガネ君と視線を合わせる。
彼にも気付いてもらえる様に、メガネ君に言い放つ。
「………………ごめんなさい。そういう事ですので、あなたとは付き合えません」
メガネ君の視線がじっとこっちを見ているのがわかる。
それはもう恨みや憎しみ、そういう視線だというのは肌で感じている。
様々な死線をくぐり抜けてきた上条だから、そういう視線には鋭い。
そりゃそうだろ、告白した好きな子が別の男とこんな事している所を見せ付けられているのだから。
勿論悪いとは思っている。
ただ、目の前で初春が泣いた、それだけで上条は放っておける訳もなかった。
でも、どうしてだろうか。
「………………ごめんなさい。そういう事ですので、あなたとは付き合えません」
初春がそう言った言葉に、心底安堵感を覚えたのは。
「お、お前には絶対負けないからな!」
という捨て台詞と共に涙の咆哮を上げて走り去ったメガネ君の背中を見て、上条はそう思っていた。
乙
佐天さんも良い味出してるねー
佐天さんにはフラグは立たんのかね?
佐天さんも良い味出してるねー
佐天さんにはフラグは立たんのかね?
乙
初春が半角カナでしゃべると本体が喋ってるように錯覚してしまう俺はVIPに侵食されすぎているようだ
初春が半角カナでしゃべると本体が喋ってるように錯覚してしまう俺はVIPに侵食されすぎているようだ
ちょっと緊張している。
それはこれからの初仕事のせいなのか、それともここ───第一七七支部に来るまでの道中の経緯のせいなのか。
「まだ白井さんと固法先輩は来ていないみたいですね」
と鞄を下ろした少女が、ここに来るまでつかず離れず僅か数cmといった距離で隣を歩いていたせいなのだろうか。
歩く時の動作でちょこちょこ触れちゃう感触がどうにも気になって、だからとはいえ「近いからもうちょい離れて」とは言えなかった自分が情けない。
まあ恐らくその全てが原因なのだろうが、それよりも仕事に集中だ、と上条は考えるのをやめる事にした。
「んー、とりあえず何したらいいのかな」
自分の机やら荷物の置場やら全く勝手がわからなく、ポリポリと頭をかいて初春に確認した。
以前来た時も思ったが、積み重なっている書類やら棚にビッシリと整理されているファイルやら見るに、これは相当な激務が予想される。
覚えなければならない事が思ったよりも多そうで。
身体を使う事になんら問題はないのだが、頭を使う業務が多そうな事に上条はこりゃ大変だ、と一息入れていた。
「んじゃとりあえずお茶でも煎れようかな」
一方では、佐天がそんな事言いながら手際よくお茶を準備している様子が目に入り、風紀委員でもない彼女がここで何故ゆえ手慣れた作業が出来るのかが気になったのだがそれはまあいいのだろう。
彼女がいる風景が当たり前、といった具合に初春も気にしてないみたいだし。
「あ、固法先輩が来るまでとりあえずのんびりしてて下さい……………………あ、そうだ」
「ん?」
初春が何かを思い出した様に手を合わせる。
上条が初春の方を見ると、初春はおもむろにコンピュータを起動させ、マウスに手を当てはじめた。
パソコンを使った業務もあんのかなと上条はそっちの方を見ていたのだが、起動中のモニターに表示された『wiharus177』というロゴを見て表情を引き攣らせた。
「……………………『wiharus177』? 何これ新種のOS?」
「!!」
その言葉に初春がバッと上条に振り返る。
何故だろうか、その顔は赤くなっていた。
「…………………………………………見ました?」
「う、うん」
「…………………………………………ぇぅ///」
初春の言葉に上条が頷くと、初春は恥ずかしそうに俯いた。
何で赤くなってんだろうと上条は考えるが、先程自分が呟いた言葉をもう一度反芻する。
「『wiharus177』…………………………………もしかして」
「…………………………………………///」
あ、作ったんだ、OS。
「えっ」
「わあああああああああああああああぁぁぁぁぁ!?///」
「ど、どうしたの!?」
そんな初春の叫び声に給湯室に引っ込んでいた佐天が飛び出してきたのも仕方のない事だったのだろう。
この学園都市では外界とは違い、科学的に数十歩先に進んでいる。
上条の通う学校も例にもれなく、学食を購入する時を例に取ってみるが、券売機でのチケット前買い方式なのだがそれもタッチパネル方式の他では一歩先に進んだ技術が垣間見える。
それでもこの学園都市の中では遅れている方だと言うからもう凄い。
上条も機械に疎い訳でもなく、課外提出の際に纏めるレポートもパソコンを使用したりしていた。
OSというのが何かをわかっているし、それを構築するにとてもでは言い表せない程のプログラミング技術を要するのは知っていて。
それを目の前の小さな女の子が作ったのか、というのがわかると上条は驚きを隠せないでいた。
「ぇぅ…………………………………………」
ただその上条の反応を、初春はどう感じたのだろうか。
───変な子って、思われちゃった…………………………………
初春の最も得意とする分野、コンピュータ。
その能力は超一流のハッカーでさえも彼女が構築したセキュリティを突破出来ない程。
『守護神』の異名を取り、その道ではその名を知らぬ者はいないとも言われ畏れられている。
ただ、そんな事を言われようが初春としてはどうでもよかった。
それよりも今懸念すべきは、上条からの見る目。
いや懸念すべきという言葉どころの問題ではなく、それが彼女にとって全てだ。
初春が上条に見せたい『女の子』っぽいところとは、日本とブラジルの距離くらい掛け離れているところ。
自分の見せたい所はそんな所ではなかった。
寧ろ逆だ。
ネーミングセンスだってない。
というかそれどころの話ではない。
こんな気持ち悪い所を見せてしまった。
変な子だって思われてしまった。
上条の顔を見る事が出来ない。
彼は今、どんな表情をしているのだろうか。
視線はどこに向けているのだろうか。
何を感じ、何を思っているのだろうか。
彼に嫌われるという初春にとって、何よりも耐えがたい恐怖が初春を襲いかk
しかし。
「すげえ!」
「…………………………………………へ?」
ポンと頭に乗せられた手とその言葉が初春の元に届いた時、初春の思考は止まっていた。
「え、え」
「いや、こりゃすげえよ! OS作るなんて頭良くなきゃ出来ないだろ? こんなの作れる人、上条さんは尊敬しちゃいますよ!」
ぐりぐりと頭を撫で回されながら、どういう事か未だによく把握出来ずにいる初春。
触れてくれた上条の手の感触をじっくり味わう余裕もなく、いつの間にか見ていた上条の顔がその動きに合わせて揺れた。
「俺、頭悪いからなー。いっつもいっつも補習、補習ばっかでさ。小萌先生にも「上条ちゃんのバカさにはさすがの先生も苦笑いですよー」なんて言われてるしさ………………あれ、なんだ、自分で言ってて涙で前が見えねえ」
よっぽどの事なのか、自分の言葉に勝手に傷付いてるーと涙を流しはじめてしまっては始末に困る。
しかし上条には怪我をしては入院コースの為、授業に遅れてしまう、という理由もあるのだがそれを抜きにしてもお世辞にも成績はいいとは言えない。
上条にとってはそこまでの頭の良さというのはある意味羨望でもあり、何故こんな頭脳なんだろうと嘆くばかりだ。
まあ全ては自分の責任であるのだから、誰も責められはしない。
「変な子だって……………………思わないんですか?」
内心恐怖を感じながら怖ず怖ずと初春は上条に尋ねた。
いつしか頭にあった彼の手を、ギュッと両手で握り締めていて、指を絡ませる様に動かしていて。
「それは思わない。だってそこまでなれたって事は凄い頑張ったからって事だろ?
自分の好きな事を見つけて、自分で自分を伸ばして。それの何処が変に思うところがあるんだ?」
「……………………………………上条、さん」
「初春さんくらいの年齢の時って、ほら、多分俺おちゃらけてただけだと思うしさ。
だから初春さんくらいの時でそこまで自分を奮い立たせてさ、なりたいもの、やりたい事。
そういうものに向かって精進して頑張るって、なかなか出来る事じゃないと思うぞ?」
「………………………………………………」
「だからさ。誇っていいと思うぞ」
彼のその言葉が温かい。
まるで絶望の底から引き上げてくれるかの様で。
自分のやって来た事を、彼は認めてくれた。
それが何よりも、嬉しかった。
完全に指は絡めていて、もう離さない、といった具合にキュッときつく握り締める。
彼もまた握り返してくれて、自分を元気付けようとしてくれているのがわかった。
もうダメだ。
完全に自分は彼に堕ちている。
話せば話すほど、触れば触るほど。
彼を好きだという気持ちが、大きくなっていく。
込み上げて来る何かをなんとか抑えるのにも、一苦労で。
いや、抑える必要もないのかもしれない。
でも、まだだ。
もっと自分に自信が持てる様になるまで。
時が来たら、思い切り彼にぶつけよう。
だから今は、思い切りの笑顔の花を咲かせていよう。
「上条さん……………………ありがとうございます」
「ああ」
そして二人の指は、佐天がニヤニヤしながら煎れたお茶を持ってくるまでしばらく繋がっていたらしい。
つか、何でこんな話になってたんだっけ?
ああそう、『wiharus177』というOSから派生した話なんだった。
壁殴り代行を頼みたくなる会話を中断させた佐天にGJを入れつつ、話を戻す事にした。
まあそんな俺の出来損ないの地の文などどうでもいい。
字数稼ぎにしか過ぎない。
「何言ってるんだ? こいつ」
「何なんでしょうね?」
「さあ?」
「それよりも、お茶美味しいな」
「美味しいですねー」
「あはは、ありがとうございます」
ズズッという音が支部内に響き渡る。
冬の季節にこの温かいお茶はより美味しく感じられ、暖房を点けたとはいえまだそこまで暖まってない室温の中では三人をまったりとした気分にさせるのは十分だった。
「でもそれで、初春さん何しようとしてたんだ?」
「あ、そうでした!」
上条の言葉に初春がハッと気付いた様な反応を見せると、バッとパソコンの前に戻った。
カタタタタタタタという一人では到底出せない様なスピードのキーボードを叩く音を響かせると、ターン! という音と共にあるウィンドウを表示させた。
「上条さん、こっち来てもらえますか?」
「ほいほい」
「これに手を置いて下さい」
「ん? これか」
椅子に座る初春の斜め後ろに立つと、初春と共にモニターを覗き込んだ。
表示されていたのは四隅にカギ括弧、真ん中に十字の記号がある真っさらなウィンドウ。
初春が小型のスキャナーの様なものに上条の手を引き、それに乗せる。
手が乗ったのを確認すると、初春はマウスをポチッとクリックしていた。
「これは?」
ウィーンという音がして、画面には上から点の様な記号の様なものが順番に映し出されていく。
何だろう、指紋採取の様なもんかな? なんてちょっぴり犯人気分を味わった上条であったが、そんな彼の質問に初春が答えた。
「はい、支部に入るのにはジャッジメントを証明する生体認証がないとロックが開かない様になっているんですよ。それで上条さんのを登録してるんですよ」
「へえ、そうなんだなー」
「私もジャッジメントじゃないですけど、初春に無理言って登録しちゃいましたー」
「……………………だから色々と手慣れてたのね」
「あは」
支部の入室には指紋、静脈、指先の微振動パターンのチェックが必要だ。
先程、初春がこの支部に入る際に扉の横に設置されたパネルの様な機械に手を当てていた事を思い出し、頑丈なセキュリティなんだなーなんて感想を覚えたのを思い出していた。
ガチャリ──────。
「こんにちは……………………ってあら」
「ごきげんよう……………………げっ、類人猿」
するとその扉が開き、二人の人物が入ってきた。
固法と黒子の第一七七支部所属のジャッジメントの二人だった。
固法の反応はまあいいが、黒子の反応は嫌そうな顔をしており、上条も苦笑いを見せていた。
「まあそんな顔せんでくれ、白井が俺を嫌っているのはわかってるけど」
「……………………まあいいですの」
跳び蹴りか何かを予想して身構えたのだが、黒子は首を一回縦に振るという会釈か挨拶かわからない仕草を見せる。意外な展開に上条は首を捻った。
「あれ。てっきり殴られるか何かされると思ったんだが」
「あなたを傷付けると初春が怒りますから抑えてあげてるんですの」
「ん? 何でだ?」
「えぅ……………………///」
「「あらあら、まあまあ」」
まあ黒子としても上条に傷付けると美琴に告げ口されるからという理由もあったりするのだが、言った言葉に嘘偽りはない。
はぁ、と意味深な溜息を吐き自分の持ち場の所に鞄を置くと、ちょこんと腰を掛けた。
「全く白井さんったら、少しは年上の人に敬意を持ったらどうかしら?」
「生憎この殿方にその様な配慮など無用だと心得ておりますの」
「はは……………………白井らしいや」
「白井さんと上条さんと知り合いだったの?」
「そうみたいですよ」
苦笑いをしながら黒子を咎める固法だったが、黒子はいくら尊敬すべき固法の言葉だとはいえ上条に対する態度は変える事はしない様だ。
そんなやりとりを見ていた佐天がそんな素朴な疑問を抱いていると、黒子を恨めしい様に視線を向けていた初春が答えていた。
「これで皆揃った感じ?」
上条が初春にそう尋ねると、初春は頷いて返事をする。
全員が椅子に座ったのを確認すると、上条は立ち上がりコホンと一回咳ばらいをした。
「それじゃ、改めて自己紹介をば」
「あ、そうね。私達もやっておいて方がいいわね?」
「あ、そうしてくれると嬉しいです」
「ん。上条くんからお願い」
「了解っす」
ビシッと敬礼をする様な仕草を見せると、上条は一度全員に視線を寄越した。
何だか期待に満ちた表情をした初春と心底どうでもよさそうな黒子の様子に何やら温度差を感じたが気にしない事にする。
「高校一年の上条当麻です。えと、色々至らない所もあると思うけど、よろしくお願いしまっす!」
「よよよよろしくお願いします!///」
「はい、よろしくね」クスクス
「…………まあ、宜しく、ですの」
「私も一応返事した方がいいのかな…………よろしくお願いしまーす!」
ペこりと一礼すると、パチパチという拍手が起こった。
人数が少ないせいでいかんせん迫力に掛けるのだが、別にそんなのを求めていなかった上条は照れ笑いを見せる。
ここが職場になるのか、と感慨深げにしみじみと感傷に浸っていた。
「それじゃ私も改めて、高校生の固法美偉です。上条くんより年上だけど、年齢は聞かないでね。能力はレベル3の透視能力持ちです。一応ジャッジメント第一七七支部の支部長やらせてもらってます。よろしくね」
「(そういえば固法先輩ってどこの高校か知ってます?)」
「(いえ、聞いた事ありませんの、何年生かっていうのも、知りませんの……………………恐らく、三年生辺りではないのかt)」
「ふふ、初春さんと白井さんは何の内緒話をしているのかしらね」ニタァ
「「 」」ゾクゥゥ!!
(なんか怖ぇ……………………)ブルブル
(参加しなくてよかった…………)プルプル
固法のとっっっっても優しそうな笑顔を見た一同は、その裏に何かを見たという。
上条の固法だけには逆らわない様にしようと決めた瞬間であった。
「そ、それじゃ次は私ですわね。常盤台中学一年生、白井黒子ですの。殿方さんも皆さんもご存知の通り、レベル4の空間移動能力者ですの。まあよろしくお願い致しますの」
固法の迫力に押されてか、若干早口で一気に自己紹介を終えた黒子。
下手な事を口走れば色々危ないと、これだけ言ったら後は余分に口を開いたりはしなかった。
「そ、それでは。柵川中学一年生、初春飾利です。能力はレベル1の定温保存です。か、上条さん是非是非よろしくお願いします!」
「う、うんよろしく……………………ってかサーマルハンド?」
「あ、はい、私の能力で…………持ってるものの温度を一定に保てるっていう能力なんですけど」
「何それ便利そう。飲み物とか、弁当とかの保存に良さそうだなー」
「その代わりずっと持ってなきゃダメなんですけどねー」
「あー、なるほど……………………そりゃ大変そうだ」
「わかってくれますか? この前佐天さんなんて持っててーなんて言ってずっとお茶を持たされて」
「ちょ、ちょっと初春ー、変な事言わないでよー」
「話が脱線してきましたわね」
「初春さん、話を脱線させないの。佐天さん、友達にそういうのさせちゃダメよ」
「「す、すみません……………………」」
「すげえ」
「(固法先輩を怒らせない方が身の為ですの、上条さんも気をつけて下さいまし…………)」
「(ああ、その様だな…………)」
「そこ、何の話をしているのかしらね?」
「「 」」ゾク
「むぅ…………なんか仲良さそうに話してる…………」
「初春、大丈夫だよ。御坂さんハンターのあの白井さんだよ? 万に一つもないって」
余計な事を口走ったパターンだとこうなるな、と深く心に刻み込んだ上条達。
もう余談はしないぞとここぞとばかりに力を入れて沈黙する事にした。
「あれ、これは私も自己紹介した方がいいのかな? ま、一応って事で、柵川中学一年生、初春とはクラスメイトの佐天涙子です。無能力者ですけど、よろしくお願いしまーす!」
元気よく挨拶を済ませた所で佐天もこれ以上は何も言うまいと口を堅く閉じた。
実際に初春と黒子が制裁を受けている所を目の前で見た事がある佐天としては、下手に彼女を怒らせない手段を心得ているという事は佐天が世渡り上手というのを示しているからであろうか。
全員の挨拶が終わった所で、固法が口を開いた。
「そういえば上条くんは何か能力を持っているの? あ、ちょっと待ってね、当ててみる…………………………………………って、ええっ!!??」
「「「「?」」」」
ジーッと上条を見つめた固法が途端に驚きの叫び声を上げると、全員が何事かと一斉に固法を見ていた。
固法はまるで信じられないという表情を見せる。
透視能力というのは、眼球を頼らずに視覚情報を得る能力だ。
つまり陰に隠れていようが、遠くにいようが彼女が能力を使えば一発でどこにいるのか、何をしているのかがわかってしまう。
ただ彼女としては多用をしてしまうと、とても疲れてしまうとの事。
それで必要時以外は能力を全く使用しようとはしないのだが、たまには訓練しないと衰えてしまうらしい。
透視能力の質が上がれば、ものの内部の解析なども出来る様になる。
情報を正に『視る』能力で、固法レベルの能力だと対象が何の能力者かというのも僅かにわかってくるレベルであったりもした。
そこで固法が興味本位、訓練がてらで上条を透視しようとしたのだが。
おかしい。
「透視だと、上条くんが見えない……………………」
「「「ええっ!?」」」
「あー……………………」
能力を使うと、上条の姿が全く消えてしまうのだ。
初春、黒子、佐天の三人がそれに驚いた様な表情で上条に視線を向けるのだが、上条は理由を把握しており苦笑いを見せていた。
「な、何で……………………?」
「それはなんて言うかですね……………………」
「あー。そいつはね、特別なのよ。ね?」
その疑問に上条が口を開こうとしたのだが、この場に姿を現した人物に全員の視線が集まり。
「「御坂さん!?」」
「お姉様!?」
「あれ、御坂」
「あら、御坂さん」
異口同音に一斉に揃った声を向けられた先には。
学園都市第三位の超電磁砲、御坂美琴の姿があった。
俺の中でのメガネ君のイメージはイナズマイレブンに出てくるあのメガネ君
わかり辛いよカス
また次回!
わかり辛いよカス
また次回!
wiharus177――汝れが頭(こうべ)を花苑と為す……初春さんのPCを科学に疎い魔術師が見たら、新約二巻の神裂みたいな反応するのかな?
>>493
ハッキングしているはず(超電磁砲より)
ハッキングしているはず(超電磁砲より)
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