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元スレ上条「俺がジャッジメント?」
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>>746
ヤムチャさん上条さんが目じゃないレベルで不幸すぎワロタ
ヤムチャさん上条さんが目じゃないレベルで不幸すぎワロタ
黒子・初春どちらも頑張れ!で、次に落ちるのは佐天かな?美琴は・・・別にいいかな?
次回はどんな展開が!
次回はどんな展開が!
>>1に上条×初春って書いてあるからやっぱそうなるのかな?
俺は初春も好きだけど黒子大好きだからふられて悲しむ黒子はみたくないけどみたい複雑
俺は初春も好きだけど黒子大好きだからふられて悲しむ黒子はみたくないけどみたい複雑
黒子は上条を認めただけで恋愛感情はないんじゃないかと思いつつ>>1に期待
黒子「ふぅ……………………」
自然と溜息が出る。
上条の治療に自身も付いて行き、それからアンチスキルの詰め所へと事情聴取に赴き事後処理が終わった後の廊下で黒子は窓から外を眺めていた。
目に映るは街灯り月明かり、綺麗に光るネオンは学園都市の栄えを余す事なく主張している。
この街には様々な人、学生達がいる。
能力者でしかり、無能力者でしかり。
この街で培ったそれを元に、何をして何になって生きるのかは千差万別だがその目的は結局は皆同一。
『自分だけの現実』を持ち、望み、高める。
演算能力をそれに加えて手に入れた能力は──────今日、何一つ活かせなかった。
大事な友人、同僚が危険に晒され今日ほどそれを奮うべきだとわかっていたのに。
たかだか演算を狂わせられるものに、自分の特性は封じ込められてしまっていて。
結局、彼の力がなければ大事な友人は救えなかったのであろう。
『助かったんだし、それでいいじゃねえか』
自身は跡に残るという傷を負いながらも、他人の為、彼女の為なら傷付くのも厭わないその言葉。
なかなかに言える言葉でもない、と黒子は思う。
見返りを求めない彼の優しさ、強さ。
守ると決めたら一貫して、守り抜く。
助けると決めたらどんな困難な状況だとしても、守り抜く。
付き合いはさほど長くない。
なのに、なのに。
黒子「……………………羨ましい、かもしれませんの…………」
先程、搬送中にずっと目にしていた彼と彼女の距離の近さ。
彼の身体に縋り付く彼女と、そして彼女の肩に腕を回して引き寄せる彼と。
それを見ていると、胸が痛んだ。
何故、こんな気持ちになるのか。
この胸の痛みは、何なのだろうか。
自分がかつて類人猿と罵っていた彼を、自分は────────。
元々、上条に対しては自身の言動ほど嫌っている訳でもなかった。
いや、寧ろ興味があった方だ。
なぜ自分の憧れのお姉様があれほど熱心に熱い視線を向けるのか、彼にだけ素の自分をさらけ出しているのか。
なぜ彼は憧れのお姉様から憧れの視線を向けられているのか。
その理由が、黒子は知りたかった。
『俺にも、守りたいものがあるんだ。信じてみたい、己の正義ってやつを』
彼が掲げる正義とは、守りたいものを守り抜く事。
弱者の為に立ち上がり、大切な者の為に戦う。
今まで接してきた中で、その熱い思いの節々は感じてきていた。
その無条件の優しさ、暖かさ。
強さ、信念。
あれは反則だろう。
それに直に触れた初春なんて…………いや恐らく、美琴もそのはず。
直に触れていない自分にさえ、心を開けさせられるかの様だった。
なぜ彼に初春や美琴は惹かれたのか。
それは理解した。…………しかし。
それを理解するという事は──────つまり。
黒子「どうなのでしょう、かね………………………」
まだ、この気持ちに名付けるのは時期尚早なのかもしれない。
憧れか、恋慕か。
答えを出すのはまだ早いだろう。
しかし、彼に抱きしめられていた初春が─────羨ましく思ったのも、また事実だった。
窓に置いた手は冬の外気に触れて水滴を作り、一線地面に向かって流れ落ちていく。
それは、涙の様にも見えたのかも知れない。
「あら」
「ん?」
ふとそこで、上品さを押し出した様な声と、野太い野生の色を感じる声が響き渡った。
黒子「浜面さんと麦野さん、でしたか………………先刻はどうも、お世話になりましたの」
麦野「気にしないで。いい暇潰しになったわ」
浜面「おう、助かってよかったじゃねえか」
麦野「あんたもそんな殊勝なコト言えるのね」
浜面「俺は気遣いを知らない男じゃねえし」
麦野「誰と比較しての言葉かにゃーん?」キュイーン
浜面「そんな意味合い含めた訳じゃねえ! つかこんな所でそんなん撃つんじゃねえよ!」
麦野「いつからそんな偉そうな口叩けるようになったのかしら?」キュウウウゥゥ
浜面「すいません! 謝るから勘弁して下さい!」ガバッ
黒子「……………………………………ぷっ」
浜面「白井っつったか!? 笑ってないで助けてくれぇ!」
ついには土下座をし始めた浜面を見て、黒子は笑顔を見せ始めていた。
麦野とのやり取りがまるで息の合った漫才の様に思えて、本当に仲がいいのだなと感じさせている。
まあ黒子は知らない事だが、あれほどの屈強を乗り越えまた結束した仲なのだ、それが例え恋仲でなくとも二人のやり取りからそう思わせらていた。
黒子「まるでコンビ組んでるみたいですの。美女と野獣とかいう名前でテレビに出てもおかしくないかもしれませんわね」
麦野「浜面とコンビってのは気に食わないけど、美女って言ったのは認めるわ」
浜面「…………………………麦野一人でどっちも体言してるだろうがよ」ボソッ
麦野「あぁん!? なんつったはまーづらぁ? ブチコロシカクテイネ」
浜面「ひいぃっ地獄耳!? まじすんませんっした! 何でもするからどうかお許しをっ!!」
麦野「……………………何でも?」ピク
浜面「何でもしますぅ! だからそのかざした手をどうかお静め下さりませええええぇぇぇっ……………………ってはっ!?」
麦野「……………………何でも……………………ウフフ」
───……………………何やらいけないスイッチでも入れてしまったようですの。
麦野から発せられる圧倒的なオーラと抑圧的なもう一つの顔に、これから彼女と接する機会がある場合絶対彼女を怒らせないようにしようと深く心に刻みながら黒子は尋ね事をする事にした。
黒子「後のお二人は?」
麦野と浜面がここにいる理由として、事情聴取等があったからなのだろう。
だが先程同じ車中にいた残りの二人の姿がない事に疑問を感じていた。
確か、滝壺さん、と絹旗さん、という二人だったろうか。
浜面「ん、まあ絹旗は小さいし滝壺はまだ身体が心配なんでな。黄泉川ももういいって言ってたし、二人とも先に帰した」
麦野「ま、事情聴取なら私達だけでも十分だしね」
黒子「そうでしたの」
身体が心配、という言葉に気になった部分はあるのだが、つい先程知ったばかりの人間だ、事情を聞くのも野暮だろうと黒子は追求はしなかった。
それよりも聞きたい事は色々ある。
麦野、浜面、滝壺、絹旗の四人は一体どんな間柄なのか。
そして浜面と彼の関係は、一体何なのか。
こう言っては失礼なのだが。
黒子から見た浜面は一端のスキルアウトの様で、先程共にいた場所を案内してくれたあのスキルアウトの男と同じ雰囲気を漂わせている。
ジャッジメントの自分からしてみれば、スキルアウトはまさに敵のようなものだ。
黒子が検挙してきた数々の暴力事件、窃盗事件、その他諸々の犯行はほとんど彼らの出。
そんな雰囲気を持つ浜面は、上条と一体どんな間柄を持つのだろうか。
知りたい、聞きたい。
しかし。
───まあ、それも野暮ってものなのでしょうね。
結局は浜面達とも先程知り合ったばかりで、それを聞くのはなかなかに躊躇われてしまう事であった。
麦野「白井さん、だったわね。あの小さいコが助かったっていうのにあまり元気ないわね」
黒子「あ、いえ。その……………………」
麦野「ま、私が気にする事でもだろうけど」
浜面「……………………意外だ、麦野がそんな事を気にかけるとは」ボソッ
麦野「はまづらぁ?」
浜面「何で俺は口が滑るんだ…………………………」ヒクヒク
麦野の言葉に黒子は取り繕う。
自分のそんな雰囲気を察せられて、少々気まずく苦笑いを浮かべた。
黒子「初春が助かったのは勿論喜ばしい事ですの。いえ、助けなければ初春は………………と考えるとゾッとするほど、初春は大事に思っているのですが…………」
麦野「うん」
黒子「結局、わたくしの力では救えなかったというのが悔しく思っておりまして…………」
麦野「うん」
黒子「能力がなければわたくしはただの力なき女子中学生、という事にわたくし自身に憤りと情けなさを感じておりますの」
麦野「そうなんだ」
黒子「ええ……………………」
情けない。
後輩となった彼の力がなければ、初春は。
ジャッジメントの先輩として、手本になるべき所だったのかもしれない。
いや、それを抜きにして大事な友人がこの手で救えなかった、ただ見ているだけしか出来なかったという悔しさはあった。
能力を封じられた時の対策用としても、血反吐が出るほど訓練したと言うのに。
なのに、友人を盾に取られて身動きが出来なかった。
それが、悔しかった。
情けなかったのだが。
浜面「うーん……………………何か違う気がする」
黒子「え……………………?」
しかし、その浜面が呟いた言葉に黒子は反芻するように聞き返していた。
黒子「………………と、おっしゃいますと?」
浜面「元気がない理由。それじゃねえと思うんだよな」
麦野「やっぱり浜面もそう思う?」
黒子「っ」
浜面が言ったその何気なさそうな言葉に、黒子は核心をつかれた様な思いを感じた。
自分の元気がない、その理由。
それは黒子が先程言った事に嘘偽りはない。
だが、それだけではなかった。
浜面「あん時の取り乱しを見りゃその初春ってコをどれだけ大事に思っているのかはわかってるさ。それでそのコが助かった事にさ、白井さん…………何か言いにくいな、白井でいいか?」
黒子「構いませんの」
浜面「あのコが助かって白井が本当に喜んでいるのはさっきの様子でわかったさ。その時能力が使えたか使えなかったってのはわからねえし、知る由もねえけどさ」
黒子「………………………………」
浜面「でもな、大事な友達が助かったっつー事に、今はもっと嬉しそうな表情をするべきなんじゃねえかと俺は思うんだよ……………………あー、俺自分で何言ってるかわかんねえ」
黒子「つまりわたくしは初春が助かった事を望んでいなかったと……………………?」
浜面「ちg「ううん、そうじゃない」ぬぉ」
黒子「……………………………………」
一体、何が言いたいのだろうか。
自分の今の本当の気持ちが感じ取られているのだろうか。
この二人に心を見透かされた様な思いに駆られた不安を押し殺し、黒子は続きを促した。
浜面「……………………麦野、タッチ」
麦野「そのつもりで口を挟んだ。それで白井さん。浜面も言ってたけど、あなたがそのコが助かった事を喜んでいるのは間違いないわ。でも、今あなたが気にかけているのはその事じゃないはず」
黒子「………………………………」
麦野「そうね……………………大方、『上条』とかいう男の事じゃないかしら?」
黒子「っ」
浜面「そうそれ! それが言いたかった!」
麦野が口にした彼の名前に、ほんの一瞬だけ肩が跳ねる。
それは、まさに黒子が考えていたワードであり、今現在黒子の心境を覆うものであった。
しかし、何故。
何故この二人には、それがわかった?
心の内を読み取られたか焦燥感の様な動悸が、黒子を襲っている。
確かに彼の事を考えていた。
認めざるをえない彼の力、心の強さ。
行動力、判断力も優れていてそれはもう戦いを知った男の動きでありもした。
なのに。
それをおくびにも出さず、虚栄する事なく、慢心する事なく、謙虚さとそして暖かさを持って接する優しさ。
人の為になるとその力を遺憾無く本領発揮する彼の本質というのを触れて────────それもきっと、彼のほんの一部分なだけなのだろう。
その優しさを向けられる初春が、羨ましい。
そう感じてもいたりしたのだ。
麦野「当たり、でしょ?」
黒子「なぜ……………………」
麦野「あの車の中で。その男を庇う様な事言ってたじゃない? それでなんとなく、ね」
ああ、あの時か。
つい自分の口から自然に出た言葉。
『上条さんを変に言わないで下さいまし』
それに、心の機微を感じ取られていたのか。
参ったな、と苦笑いを作る。
ここで否定しようにも、意味もないし麦野に口で勝てるとも思わない。
たったあれだけの事でそんな自分の抱え込む複雑な感情を読み取られていたとは、これは参った。
恐らく、彼女にも何かあったのだろう。
それは多分、横にいる浜面という男も交えた、何かが。
それも自分では想像つかない、様々な事が複雑に絡み付いた事情を乗り越えてきたのであろう。
黒子「正解、ですの」クス
麦野「ようやく笑ったわね」
浜面「(麦野にビビっただけなんじゃねえの?)」
麦野「壁のシミ決定ね」
浜面「何も言ってねえじゃねえか!」
本当に息の合った二人だと思う。
それに、女性に言い寄られて……………………とは少し違うか。
からかわれて本気でたじろぐ浜面の姿に、少し彼の姿がダブって見えたりもしていた。
上条「んあ、白井?」
黒子「ふぇ」
浜面「おう、上条」
麦野「あら」
噂をすれば影というものなのだろうか。
思わぬ人物の登場に一瞬心臓が止まった様な気もした。
上条「何してんだ? こんな所で。それに浜面も」
不思議そうな目で黒子を見つめる。
その視線に黒子は戸惑った様でも、また恥ずかしくもあったりしていた。
黒子「い、いえ、その………………」
浜面「いや、事情聴取も終わったし立ち話を少し、な」
上条「そうか。白井も終わったのか?」
黒子「あ、はい…………」
麦野「」ニヤニヤ
上条「と。そちらはさっき車に乗ってた──────」
麦野「あなたが上条くんね? 麦野沈利って言います」
上条「これはご丁寧にどうも。上条当麻と申します」
浜面「(キャラが違ぇ)」
ペコリと頭を下げる上条と麦野。
そんな様子(麦野)に浜面はまるで見た事がないものを見たかのような表情をしていたのだが、そこは麦野に感付かれなかっただけでも彼は運がよかったと言えよう。
とまあそれは置いておいて、上条には気になった事が一つ。
上条「つか、さっき何だか白井が泣きそうに見えたんだが…………」
黒子「っ!?」
上条の言葉に黒子はたじろぐ。
何があった? と心配そうに見つめる視線に黒子は戸惑った。
上条「はっ、まさか! おい、浜面。てめえが白井を泣かせたんじゃねえだろうな…………?」
浜面「何でそうなるんだよ!? 何もしてねえよ!」
麦野「そうなのよ。実はね、さっきね」
黒子「ちょ、ちが」
上条「オーケー浜面、歯ぁ食いしばれ。俺の拳はちっとばかし響くぞ」
浜面「だから違ぇって! それにお前のパンチなんざもう二度と食らいたくねえ!!」
黒子「お、お待ちになって下さいまし! そうじゃありませんの!」
上条「ん? そうなのか?」
黒子「ええ、浜面さんは別に何もしていませんの」
浜面「助かったああぁぁ~」
麦野「もう二度とって…………どういう事よ、浜面?」
黒子の説得で握った拳を緩める上条を見て、ホッと一息つく浜面。
まあ自分の思わず呟いた一言でまた麦野から質問責めをされるだろう事は予定調和か。
上条「それならいいけどなー、はは」
クシャ────────
黒子「なっ!?///」
ふと黒子は頭に暖かい感触を覚えた。
それを辿ると、学生服の腕の部分が見える。
それは彼の方から伸びていて、つまり今自分の頭を撫でているのは。
考えさせられていた、彼の手であった。
黒子「ちょ、ちょ、かみ、じょうさん!///」
上条「んー?」
髪に触れられているその感触は暖かく。
傷付かない様に、癒す様に。
まるで、ゆりかごを優しく揺さぶられているかの様な、優しい感触。
少し前までは異性に身体を触られる事すら嫌だったというのに。
でも彼にだけ、触れてほしいと思うこの感情は一体。
しかし、やはり気恥ずかしさが先行してしまうのは仕方のない事なのだろう。
黒子「あ、頭を撫でないで下さいましっ!!///」ガバッ
上条「あ……………………すまん、そうだよな」
払いのける様に振り返った自分の照れ隠しの言葉に、上条は気まずそうに苦笑いを浮かべその手を離す。
本当に悪く思ったのか、彼は次第に真剣な表情になっていた。
上条「そりゃそうだよな、直接じゃなくてもあんな場面見ちまったんだし。男に嫌悪感を持つのもしょうがねえよな」
黒子「ぁ…………………………」
何て事してるんだ、という様な上条の自分で自分を責める様な言葉と雰囲気に黒子は息を飲む。
言葉になくともその顔は謝罪をしているかの様だ。
上条「ましてや嫌っている男に触られたくもねえよな」
黒子「え…………………………」
悪い、と言葉を付け加えて上条は謝ってしまった。
違う。それは違う。
嫌ってなどいない。
断じて違うのだ。
彼の自嘲する様な乾いた笑いに、黒子はその手を取った。
上条「白井……………………?」
黒子「あなたの事。………………嫌ってなどいませんわ」
いや、寧ろ────────。
だがそれをここで言うのは違うのだろう。
はっきりと堂々と胸を張って、とまでではまだない。
答えはいつか、彼と接していく内に自ずと見つかるはず。
上条「そっか。ならよかった」
繋いだ彼の手の感触と、暖かさから。
不思議とそう思えていた。
浜面「何だよ麦野、頭下げて」
麦野「………………………………察しなさいよ、バカ」
浜面「??」
傍観者と成り果てた二人の間にそんな会話があったのだが、それはまた別の機会にしようとしますかね。
本妻、滝壺と愛人(?)麦野と浜面を賭けたドロドロの戦い────────。
それはまたどうなるのかはお楽しm「ブチコロカクテイネ」ごめんなさい。
初春「あっ当麻さん!」
そんな中、立ち話をしていた廊下にて一人の少女の声が響き四人はそちらに視線を送る。
その少女は彼の姿を見かけると、嬉しそうに駆け寄ってきていた。
上条「おー、初春さん。もう終わったのか?」
初春「はい、今終わったとこなんですよ……………………って!?」
初春の言葉は途中で止まる事となった。
目線は彼の顔から下の方。
彼の身体、腕、手。
その手は、今────────自分の知る、同僚の少女と繋がっている。
初春「………………………………白井さん?」ジト
黒子「はっ!? こ、これは違いますの!」バッ
上条「ぬお」パッ
自分の視線に気付くと、黒子は焦った様に彼から手を離した。
今まで、何をしていたのだろうか。
まったくもって羨ましい事をしていたのか。
初春「当麻さん! 行きましょう!」グイ
上条「のわっ、ちょ」
そう思うと何か嫌な予感の様なものがした気がして、彼の腕をつい引っ張ってしまったのは仕方のない事だ。
黒子から離そうと歩き出そうとしたのだが、そこで先程見た男性と女性の姿に気付くと初春はその足を止める。
………………彼の腕は、抱きかかえたままだが。
初春「あ、さっきの……………………」
麦野「大丈夫だった?」
浜面「上条、お前って奴は……………………」
先程自分が救出され、ビルの外に出た際に目にした人達だった。
聞けば、自分を助ける為に上条達に助力をしてくれたらしいのだ。
男性の方は彼に何やら恨めしいようなそんな目線を送っているのが気になったが、知り合いなのだろうか。
初春「あの、本当にありがとうございました」ペコ
頭を下げる。
先程、彼らがいなかったらもしかしたら助けられなかったのかもしれないと上条は呟いていて、初春は見知らぬ二人に心底感謝していた。
麦野「よかったわね」
ニコリと笑う女性を見て、やけに包容力のある人だな、と感じた。
それにしても………………。
麦野「……………………どうしたの?」
初春「えっあっ、す、すみません…………その、綺麗な方だなって思いまして…………」アセアセ
麦野「ふふ、ありがとう」
浜面「(やっぱキャラ違うってえええええええぇぇ!!)」
麦野「はまづらぁ」
浜面「(……………………もう何も思わん、うん、思わないったら思わん)」
まさに初春が目指す理想の『大人の女性』を体言した様な容姿、包容力を目の当たりにして初春は見とれてしまっていた。
そんな自分の視線を不快に思われてしまったのかちょっぴり不安になったのだが、クスクスと笑う彼女を見て初春はホッと一息ついていた。
上条「そうだな、俺からも言っておくか」
黒子「それでは、わたくしからも」
上条・黒子「「本当にありがとうございました」」
初春「あ、ありがとうございました」
初春はもう一度頭を下げて礼をしたのだが、上条と黒子のシンクロする動きに嫉妬して自分もとかは思っていない、うん。
頭を上げると、もういいのにと言った表情で麦野と浜面はお互いの顔を見合って苦笑いを浮かべていた。
浜面「つか上条。お前このコ達とどんな関係なんだよ」
上条「ん?」
四人で廊下を歩きながら浜面が上条に尋ねていた。
どんな関係と言われても、と苦笑いをして右隣を歩く初春(腕はなぜか組まれている)、左隣を歩く黒子(なぜか近い)を見る。
ちなみに初春はアンチスキルに支給された服に着替えたか、ダボダボの三又マーク付きのジャンバーとジャージのズボンを履いていた。
上条「尊敬すべき先輩達、仲間かな?」
浜面「ん? 先輩達?」
先輩という言葉に浜面は怪訝な表情を浮かべていた。
上条が先輩ではなく、彼女達が先輩。
どういう事だと聞き返していた。
上条「そ。つかまだ言ってなかったな。俺ジャッジメントになったんだよ」
浜面「なぬ」
麦野「へえ」
その上条の言葉になぜか嬉しそうにしている両隣の二人はまあ置いておくとして。
前を歩く浜面は思わず振り返っていた。
浜面「ジャッジメント? 上条が?」
上条「なんだよその言い草」
浜面「いや、な。そりゃお前に合っているかもしれんが」
そういうと浜面は前を振り向き直す。
何やら他にも言いたい事あんのかななんて右隣を見た。
初春「えへへ」
自分の視線に気付くと、彼女はニッコリと笑ってついには手に指が絡んでいく。
その感触に上条はどきまぎしながらもその手を握り返していた。
尊敬すべき先輩、仲間。
先程はそう言ったのだが、多分。
……………………その言葉では収まらないのだろう。
この右手を包む感触も────────。
麦野「そうそう。あなたのお花、浜面の車に置いてあるわよ」
初春「あっ。ありがとうございます」
浜面「んじゃ帰るか。皆送ってくぞ」
上条「いや、いいよ。初春さんと白井は俺が送っていく。ありがとな、浜面」
黒子「ええ、そこまでご迷惑をおかけする訳にもいきませんの」
浜面「そうか、了解」
ずっと、守るべき、守っていきたいと上条は思えていた。
麦野「あー、浜面コンビニ寄ってって」
浜面「ほいほい」
帰りの車中、麦野の言葉に了解の意を告げると浜面は前方に見えたコンビニの駐車場にハンドルを切った。
鮭フレークか何かでも買うのかと思いながら夜の道中には眩し過ぎるくらいの明かりに近付いていく。
手慣れた手つきでバック駐車を済ませると、意気揚々と麦野が車から降りた。
麦野「鮭♪ 鮭♪」
浜面「やっぱりか」
そんな彼女の様子に苦笑いを浮かべると、浜面もコーヒーでも買うかと車を降りると、コンビニの自動ドアが開き、中から一人の女性が出てきたのに気付いた。
浜面「あいつが、ジャッジメントねぇ…………そんなんで収まるタマでもねえだろうがよ」ボソッ
麦野「!」
浜面「ん? どうした麦野?」
その女性を見た麦野の空気が変わった────────そんな、気がした。
番外個体「ったく………………コーヒーくらい自分で買いに行けっつの…………最終信号もお菓子なんかねだらないでよ………………ん??」
麦野「てめぇは……………………超電磁砲? あ、でも何か違う」
浜面「何だ?」
そうして、また新たな事件は起きていく。
黒子についてはこれからどうなるか俺が一番わからなかったりする
つかここまで書いておいてまだ書きたい構想の半分進んだか進んでないかのとこくらい…………ダラダラ過ぎるかな?
また次回に頭突き!
つかここまで書いておいてまだ書きたい構想の半分進んだか進んでないかのとこくらい…………ダラダラ過ぎるかな?
また次回に頭突き!
乙~
いいんじゃね?長く続くほうが楽しいし
事件が起き過ぎ……、でもないか
上条さんだし、学園都市だし
いいんじゃね?長く続くほうが楽しいし
事件が起き過ぎ……、でもないか
上条さんだし、学園都市だし
クソワロタ
どっちも許してやれよwwwwww
とりあえず乙でござる
どっちも許してやれよwwwwww
とりあえず乙でござる
>>780
まあ、なんだ、ドンマイ
まあ、なんだ、ドンマイ
>>780
なーにやってだwwwwww
なーにやってだwwwwww
長くなるのはOKです。ってか、もっと読ませて下さい。よろしくお願いします。
さて、黒子は自覚したと言っていいのかな?これも気になるな。
あわせてお願いします。
さて、黒子は自覚したと言っていいのかな?これも気になるな。
あわせてお願いします。
>>786
というか長くして下さいお願いします
というか長くして下さいお願いします
番外固体「えー、なんかすっごい睨まれてるんだけど………………」
麦野「……………………………………」
浜面「お、おい、麦野………………?」
困った様な表情を浮かべ、そのコンビニから姿を現した女性は言う。
どこかの民族衣装なのだろうか、白のそれに包まれたその人物は両手に買い物袋を引っ提げており、どうやらこれから帰路に着くのだろうと推測された。
浜面「ん?」
店内からの逆光にて浜面にはしっかりとは女性の顔は見えなかったのだが、目が慣れてくると女性の顔がどこかで見たような顔だと言う事に気付く。
───あの顔、どっかで見たぞ? 確か………………
浜面「確か………………御坂美鈴か?」
麦野「あぁ?」
浜面にとっても、その人物の顔は見知ったものであった。
それは浜面が今は亡き駒場という男の後を継いでこの第七学区のスキルアウトのリーダーになった直後の話。
学園都市上層部からの命で学園都市にやってきた第三位の母親の殺害を実行しようとしたのだが、しかしそれは上条と一方通行に阻止され失敗に終わっていた。
完全に思い出した。
その顔は、その時の被害者になる予定だった顔だ。
忘れようにもない。
自分が変わる一番最初のきっかけとなったあの事件なのだ。
それも今思えば、実際に自分を止めてくれた上条には感謝をしている。
詳しい事情は聞かされてもなく。
ただ殺せとだけ命じられただけだった。
後で聞いた話によると、美鈴はローマ正教と学園都市との戦争に子供が巻き込まれないように連れ戻そうとしただけ。
本当に、未遂に終わって良かったと今ならばそう思えていた。
とはいえ出来ればもう二度と顔を合わせておきたくなかった人物でもあった。
それも当然だ、殺してしまいそうになった人物に今更どの面下げていればいいのかわからない。
いきなりこんな所で出くわして逃げられるか、悲鳴を上げられるかいっそ糾弾でもされんのかなと考えていると、その人物の口が再び開いた。
番外個体「誰それ?」
浜面「………………………………あん?」
麦野「ちょっとどういう事だぁ? 浜面」
肩透かしを食らったような気分になったのは浜面の気のせいではないと思う。
番外個体「ま、とりあえず急いでいるから帰らせてもらうよ。そうそうそこのお兄さん、隣の彼女さんに言っておいてくれる?」
浜面「人違い……………か? いや、確かにあの時の顔だぞ………………
ん? 何をだっつーか彼女じゃねえ」
番外固体「あっつーい視線を向けられるのは別にいいんだけどさ、ミサカにはその趣味はないよって」
麦野「あぁん? 誰が熱い視線を送ってるだって?」
番外個体「ほら、ミサカってば結構モテちゃうから。きゃー、またあの人が嫉妬して夜枕とパンツに染みを作っちゃうよ。ぎゃは☆」
浜面「ちょ、ここコンビニの前d」
麦野「誰がてめぇなんざに劣情を持つかよ。はっ、なんなら今からてめぇのパンツに恐怖の黄色いシミを作らせてやろうか?」
浜面「ここコンビn」
番外個体「えー、ミサカは別に怖いっていう感情はないんだけどなぁ……………………」
麦野「じゃあ今からその感情を身体に刻み込んでやるよ、そのクサレマ○コから内蔵引きずり出してやろうかぁ!?」
浜面「麦野こk」
番外個体「おお、綺麗な顔して結構エグイ事言うんだね。昔のあの人みたいだよ、ぎゃは☆ 昔のあの人実際には知らないけどね」
麦野「はっ、強がって話そらそうったってそうはいかねえぞ? 今だってションベン漏れそうなの我慢してんだろぉ?」
浜面「だかr」
番外個体「もー、なんで初対面の人にいきなりコンビニの前で喧嘩売られなきゃいけないの?」
麦野「ああ? てめぇは御坂美琴じゃねえのかよ?」
番外個体「違うよ?」
麦野「そうか。悪かったな」ウィーン
番外個体「うん、じゃあね」スタスタ
麦野「って納得いくかあああああああああぁぁぁッッッ!!」ダダダッ
番外個体「もー、何なのかなー」モー
浜面「やべ、ちょっともうついていけね」
どっちかっていうと事件というより、喜劇の始まりというのかも知れない。
まあ浜面にとってはとてもそうは言えそうにないのだが。
浜面「どうしてこうなった……………………」
コンビニの前で延々と女の子達に卑猥な叫び声を上げさせている訳にもいかず、浜面は二人を(命懸けで)車に押し込み自身も運転席に引き下がっていた。
車中では物凄い殺気やらのオーラが飛び交っており、窓ガラスがかたかた悲鳴を上げている様な気さえする。
女性を見て機嫌が一変した麦野は元より、初対面というのに車に普通にホイホイ乗り込んできたその女性も女性だった。
二人ともどういう神経してんだよという浜面のこっそりの溜息は誰にも気付かれる事なく空中に消えて行く。
まさか今日一番の疲労感をここで味わう事になるとは。
麦野「それで。てめえは一体誰なんだよ」
番外個体「えー、ミサカはミサカなんだけどな」
麦野「ミサカっつー事は超電磁砲なんじゃねえのか?」
番外個体「ううん、それとは別人」
麦野「……………………ま、超電磁砲ならそんな発育いい訳ねえもんな」
とは言いつつも、麦野の脳内では一つの仮説を立てている。
『絶対能力進化実験』
二万体の軍用クローンを用いて、学園都市第一位を誰も上る事の出来ない高み、レベル6の『絶対能力者』に進化させようというもの。
三人席の間一つを空けて隣に座るこの女は、超電磁砲のクローン、というやつか。
麦野は美琴が研究所を破壊して回っている所、研究所の護衛として一度美琴とは交戦している。
超能力者としてのプライドを持ち臨んだその戦いで、この世から葬ると意気込んでいた麦野は不覚にも遅れを取った。
相手もレベル5だろうがそんな事は麦野に関係なかった。
学園都市暗部のアイテムにて様々な任務に就く中、その圧倒的破壊力で数々の手練れを葬ってきたのに、よもや自分より年齢も下の少女に負けるという事は麦野のプライドに大きな傷痕を付け、その日は撤収となっていた。
麦野としては再戦を待ち望んでいた。
この手で、この能力で。
例え相手の序列が上だったとしても、沸き上がる激情を元にただブチコロスだけ。
そう意気込んでいたのだが、その機会は来なかった。
実験は、凍結されたのだ。
それも何の力も持たない無能力者が、最強の第一位を打ち破ったという根も歯もない噂だけを残して、実験は終わっていたのだった。
詳しい事情は知らない。
それに、麦野にとって実験が凍結されたなどという事は、どうでもいい事実だった。
それよりも、超電磁砲をこの自分の手で葬り去る──────あの時の麦野は、それに尽きていたのだが。
もうその機会は、二度となかった。
その時の、麦野のやり場のない怒りを再燃させる顔が、年齢こそ違えどその姿が僅か横1m足らずの距離にいる。
本人ではないという事は、実はわかっていた。
しかし超電磁砲に対する憎しみのようなもので、美琴にウリフタツの顔を持つその人物に無意識で突っ掛かっている。
番外個体「ねえ、もしかしてあなたは」
麦野「あ?」
番外個体「あの実験の……関係者、なの?」
麦野「………………………………」
麦野が考えていた話題が、彼女によって触れられる。
違ったらどうしようと迷うなどという軟弱な精神も持ち合わせていない麦野は、自分から聞こうと思えば勿論出来た。
ただ自分から話すと言う事は、何故か自分の根負けの様な気がしてそうしなかった。
相手よりも優位に立ち、跪かせるのが趣味というか無意識の内の性格というか。
どうでもいい所というか、変な所でこだわりを持つ麦野であった。
麦野「直接的は関係はなかったが知っている」
番外個体「そうなんだ。ならミサカの事もわかるよね?」
麦野「クローン、なんだろ?」
番外個体「当たり!」
浜面「クローンだと……………………?」
浜面が振り返る。
そこには、まさに一人の女性が足を組んで座っている様子があり。
とても、クローンには見えなかった。
番外個体「あなたも関係者なの?」
浜面「いんや、俺は違う。ただ」
番外個体「?」
麦野「なによ?」
浜面「一方通行から、聞いた」
番外個体「あの人から……………………………………聞いた?」
その時、番外個体の空気が変わった。
番外個体「え…………う、うそ……………………なんで………………」
浜面「お、おい、どうしたんだ?」
麦野「どうしたんだよ? っつーか第一位から聞いた、だぁ?」
まるで信じられないものを見るかの様に浜面を見る。
それは聞いてはいけないものを聞いてしまったかの様な、その若干隈がかかった様な目を大きく見開かせていた。
彼女の様子に、麦野も怪訝そうな視線を送る。
この女も疑問だし、浜面が第一位と繋がっているかの様なその言い草にも疑問を覚えていた。
浜面「もしかして………………お前は噂の番外個体、か?」
番外個体「嘘……………………だって、何で……………………?」
麦野「番外個体だぁ? ただのクローンじゃねえのか?」
浜面「………………詳しい事を言ってもいいかどうかわからんから伏せておくが、こいつはただのクローンじゃねえらしいな」
麦野「どういう事だよ………………わかんないわよ」
番外個体「嘘、だ……………はずがない……………ぅそだ…………」ブツブツ
浜面と麦野の話にももはや気にも留めず、ただ呆然とした様子で呟く番外個体。
浜面と麦野はそんな彼女の様子をただ窺うだけしか出来ない。
彼女の持つビニール袋がカサッという音を立てていた。
番外個体「あの人、ヒーローさん以外に友達いたの!!??」ビックリ
浜面・麦野「……………………………………は?」
十分な静寂の時間を挟んで、ようやく二人の口から出た声はたったそれだけだった。
番外個体「ねえねえ! あなたってあの人のお友達なの!? うわー、ビックリだよ、あの厨二を極める白モヤシが顔はともかくこんな遅い時間まで異性と戯れるリア充の友達がいるだなんて! ねえねえ、あの人とどんなお友達なの!? いつもどんなお話してるの!? お友達といる時のあの人ってどうなの!? 黒い翼が出た時どうやって対処してるの!? あの下品な笑い顔見ても気分は大丈夫なの!? 」
浜面・麦野「」ポカーン
番外個体の剣幕とまくし立てた言葉に面食らった浜面と麦野はあんぐりを開けているだけしか出来ないでいた。
表情はまるで財宝を見つけたトレジャーハンターの様に見え、普段の一方通行の素行という名の眠る情報を片っ端から掘り起こさんとばかりに浜面に問い詰めている。
前の助手席を後ろの座席から抱きしめる様に手を回し、浜面の方に視線を向ける番外個体を見て浜面はひっと怯んでいた。
浜面「お、おう………………友達っつーか戦友っつーか」
番外個体「何それ!? かっこいいじゃん! かー、孤高の一匹狼を気取るあの人にもそんなオトモダチがいるんだねえ」
番外個体は顔に手を当てて随分嬉しそうな表情を作っていた。
一体こいつは何なんだという視線を番外個体に向ける。
一方通行から聞いた話。
手の付けらンねェ奴が一人いて困ってンだよという嘆きを聞いた事がある。
その言葉と番外個体のやんちゃ振りを見て、ああ一方通行が言ってたのはこいつなんだなと納得させられ浜面も苦笑いを作った。
っつーか黒い翼が出た時ってなんだよそれ。
コンコン────────
浜面「ん?」
すると運転席の窓ガラスをノックする音に気付き、浜面は振り返る。
そちらの方に視線を寄越すと────────。
黄泉川「………………………………」ゴゴゴゴゴゴゴ
浜面「ひいいいいぃぃぃぃぃっっっ!!??」
夜叉(そう見えた)がいた。
浜面「よ、黄泉川! な、何か用か……………………はは?」ガチャ、ビシッ
黄泉川「浜面ぁ?」
ドアを開けて車から飛び降りるようにして直立不動の敬礼を見せた浜面に、黄泉川がズイッと詰め寄る。
その表情は怒りに満ちているようにも見えた。
黄泉川「お前……………………ウチの子に何してんじゃん………………?」
浜面「は? う、ウチの子って………………?」
番外個体「あ、ヨミカワー!」
浜面「えっ」
麦野「あら、さっきのアンチスキルの人じゃない」
グルグルと黄泉川、そして番外個体に目を回す。
一体何がなんだかもう理解出来ない。
軽いスモークが張られたパワーウィンドウを麦野が開け、どうもと会釈をすると、黄泉川も麦野の存在に気付いた。
黄泉川「お? 浜面ぁ、お前そっちの子含めてウチの子にまでも何しようとしてたじゃん?」
浜面「何もしようとしてねえよ!? っつかコイツお前の知り合いかよ!?」
黄泉川「番外個体はウチの大事な家族じゃん」
浜面「か、家族だって?」
番外個体「うん、そうだよ?」
麦野「(クローンでアンチスキルの家族って…………得体がしれねえ…………)」
黄泉川「一方通行から番外個体の帰りが遅いって電話きて、おつかいに行ったっていうコンビニまで来てみれば浜面が連れ込んでたから声をかけたじゃん」
浜面「んあ?」
また疑問が増えていく。
一方通行から電話きて、番外個体の帰りが遅い?
番外個体の手荷物見れば買い物に来てたっていうのはわかる。
しかしそれが今はこの場にいない一方通行とどういう繋がりを持つのかいまだ理解出来ないでいるのはきっと浜面の頭がバカだからではない、混乱しているだけなのだ、多分。
次から次へと出てくる驚きの事実に、もう情報の整理も諦めた方がよさそうな気がしてきた。
番外個体「このお兄さん、あの人の数少ないお友達なんだって」
黄泉川「ん? 浜面、一方通行を知っているのか?」
浜面「ん、んん…………まあ」
番外個体「ねえねえ、ヨミカワ。いい事考えたんだけど」ニヤ
黄泉川「ん?」
歯切れの悪い返事をしていると、番外個体が何かを思いついた様な表情を作り車を降りた。
タッタッと黄泉川のいる方に駆け寄り、黄泉川にボソボソと耳打ちをし始めた番外個体に浜面は怪訝と疑問の視線を流していた。
麦野「何なのよ、一体……………………」
浜面「わかんねえ……………………」
麦野の呟きにも呆然と反応するだけ。
色々な事情が複雑に混み合いすぎて、到底浜面の理解も追い付けるもんじゃない。
それは麦野とて同じ事で、そんな麦野の様子に浜面は自分だけじゃなかったとちょっぴり安堵の様な溜息を吐いたのは彼だけの秘密だ。
麦野「何かどっと疲れた」
浜面「俺もだ………………帰るか」
麦野「そうしよ」
はぁと溜息をもう一度つき、車のエンジンをかける。
麦野ももはや買い物の事はどうでもよくなったのか、パワーウィンドウを閉めてどっと背もたれに身体を預けていた。
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