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元スレ上条「俺がジャッジメント?」
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「「「「「おお!?」」」」」
「「「」」」
その様子を見て歓声を上げた一方通行、打ち止め、番外個体、芳川、固法。
また絶句したのは小萌、インデックス、黒子。
いや絶句した中に、上条と初春の二名も含まれていた。
「う、初春さん………………ごごごごごごごごめんなさいぃっ!!」
「……………ぁ……………ぃ………………///」
倒れた体勢から勢いよく跳ね上がり、空中で土下座の姿勢を作ってそのまま着地。
そして床にガンガンと頭を打ち付ける。
この間実に一秒も掛かっていない。
速攻再起動した上条に対して、初春はその身を起こす事はしたのだがそれ以外の事は出来やしない。
いまだ触れた感触が肌に残り、それが初春コンピューターのウィルスとしてCPUを蝕んでおり。
心のハードディスクをその感触だけで空き容量を全て埋め尽くしてしまったみたいに動きが鈍くなっていた。
「三下ァ。やっちまったか? やっちまったのかァ?」ケラケラ
「●RECしたんだけど、これMNWにうpしたらどうなっちゃうのかな? ぎゃは」
「でもいいなぁって指をくわえてあなたの顔を見てみる」
「や、やっちまったってなんだよ! か、上条さんは無実だ!」
言われたい放題の上条は反論するので精一杯で、彼も先程感じた柔らかい感触にどぎまぎしていた。
当然だろう、女の子とあんな事した経験などないのだ。
彼も正常な思考に戻るまでもうちょっと時間が掛かるのかもしれない。
「か~み~じょ~う~ちゃ~ん~」
「とうまあああああああぁぁぁぁぁぁぁ?」
「初春!? 大丈夫なんですの? しっかりしなさいな!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴという音が聞こえそうな程どす黒いオーラを発して上条に近付く小萌とインデックス。
その後ろには夜叉の様な「何か」が上条に見えた。
「ちょ、待て! こ、これは無実だ! 無実なんだよおおおぉぉぉ!!」
「女の子を押し倒しておいて、それはないでしょううううぅぅぅぅぅ?」
「確かな罪があるのに認めないって、主が聞いたらどう思うのかなあああああぁぁぁぁぁぁ? 救いも何もなくなると思うかもおおおおおおぉぉぉぉ?」
「三下ァ。花子の唇の感触はどォだったい?」ニヤニヤ
「それはもう柔らかく………………って違う! 一方通行! 打ち止めをけしかけたのってお前だろ!」
「はァ? あれくらいのつっぱりも耐え切れないお前が弱かったンじゃねェのかァ?」
「どすこーい! ってミサカはミサカはおすもうさんの真似してみる!」
「小さいお姉様! 今度は黒子と取っ組み合「「えい☆」」あbbbbbbbbbb」ビリビリ
ダメだ。この空気だと本当に犯罪者扱いされてしまう!
とは言え、さっきの柔らかい感触がまだ残っているのだが先に初春に気を遣わなければならないだろう。
「だ、大丈夫? 初春、さん……」
「は、はぃ……………………///」
お互いの顔など見れやしまい。
顔を真っ赤にして俯くだけしか出来ず、上条も初春も正座のままじっと下を見つめていた。
「ンで。初キスはレモンの味だったかァ? 花子ォ」
「いえ……………………唇には、触れませんでしたので……………………フレタカッタデスケド///」
「「「「「「「「えっ」」」」」」」」
しかしまあ上条にとってはセーフと言えただろう。
何せ触れたのは、お互いの口の横僅か五センチ程の頬と唇の間の辺りだったのだから。
今日はここまで
美琴ハブにしてる訳じゃないんだよおおぉぉぉ
美琴好きで前に上琴も書いた琴あるし
>>393
うーん、結構長くなりそうかな
ダラダラやるのもあれなんだけど、それでも見てくれると嬉しいっす
美琴ハブにしてる訳じゃないんだよおおぉぉぉ
美琴好きで前に上琴も書いた琴あるし
>>393
うーん、結構長くなりそうかな
ダラダラやるのもあれなんだけど、それでも見てくれると嬉しいっす
乙ですーダラダラやっても構わないのよ。その分、2828成分が補給できるんだもの!!
乙!
幻想保存が長い間楽しめるから、ダラダラやるのは大歓迎です
幻想保存が長い間楽しめるから、ダラダラやるのは大歓迎です
上条×美琴はこれまで散々見させられて食傷気味だから、こういう展開は結構新鮮
イイヨイイヨ~
イイヨイイヨ~
いやはや、お疲れさまです。まず、感想。オモシロい!さて、これからも頑張ってください。
しかし・・・上条×初春か・・・。うん、悪くない。
あっただ条件。絶対にハッピーエンドにしてください。
バッドエンドはヤダですよ?
しかし・・・上条×初春か・・・。うん、悪くない。
あっただ条件。絶対にハッピーエンドにしてください。
バッドエンドはヤダですよ?
>>413ェ・・・
「「「チッ」」」
「何故に舌打ち!?」
一方通行、番外個体、打ち止めの三人は実は触れ合ったのが唇ではないという初春の言葉を聞くと苛立った様に揃って舌打ちをしていた。
顔を赤くしながらも何とかツッコミをいれる上条なのだが、先程の唇と横数cmに触れた柔らかい感触が忘れられない。
当の初春は顔を真っ赤にして俯くだけだし、何かを期待して言ってみても反応薄なのだろうと上条はその身を縮めていた。
「まァ、ごちそうさン」
「初々しい感じがまたソソるものがあるよね☆」
「この初々しさ、甘酸っぱい! てミサカはミサカはニヤニヤが隠せなかったり」
外野陣は本当に愉しんでる様子。
仕組まれた本人達───初春はどう思っているのかは知らないが、上条はそれどころではなかった。
危うくいたいけな少女のファーストキスを事故とはいえ奪ってしまう所だったのだから、それはもう本気で「危なかった」という感想が心の中で漏れる。
心情的にはセーフとばかりに両手を横に広げていたい気分であった。
ここで間違いを犯してしまえば空間移動能力者の制裁が飛んで来る事は目に見えていて、下手をすれば「ジャッジメントですの!」という言葉を聞きながら連行される事になりかねない。
───つーか俺もジャッジメントじゃねえか!
ハッと気付き顔を青ざめる。
ジャッジメント試験合格を告げられた日に捕まる事になるとは前代未聞過ぎる。
翌朝の新聞の見出しには
『新人風紀委員、浮かれて淫行』
などと書かれて目線を入れられた少年Kの顔写真が…………ここまで想像して、上条は息をヒュッと慣らせた。
───シャレになんねえよ……………………。
「♪///」
「あれ、意外と怒ってない………………………………?」
それから少し時間が経ち、再起動した初春は食後のデザートを満喫していた。
マンゴー味のアイスクリームを美味しそうに頬張る彼女は何だかとても幸せそうで、「ああそれで機嫌直してくれたのかな」とホッと一息ついていた。
「「「「「……………………鈍感」」」」」
「「むぐぐ……………………」」
「な、何だよ…………そしてインデックスと小萌先生は何でそんなに機嫌が悪そうなのでせうか」
「とうまはやっぱりとうまなんだよ」
「店員さん! ビールの追加注文をお願いするです! こうなったらヤケ飲みなのです!」
妙に膨れている右隣に座るインデックスと小萌はまあよしとして、初春の機嫌が直ってくれたという事で上条も随分気楽になっていた。
明日から彼女と一緒に仕事をしていく上で、いきなり不仲になったら上条としては持たないのだろう。
主に胃が。
「美味しいですー♪」
左隣を見る。
本当に美味しそうにアイスを頬張る彼女がそこにはいた。
鮮やかなオレンジ色のシャーベットがスプーンを介して彼女の口に次々と放りこまれていく。
その、形のいい小さな口、に。
小さなピンク色の唇が、ほんの少し開く。
「…………………………………………」
───やべ、何意識してんだ俺!
先程起きた出来事からか、彼女のそれにどうしても注目してしまう。
食べた後は、本当に幸せそうにその唇がほんの少し横に広がっている。
見ているこっちが幸せにしてくれそうな、そんな笑顔。
「あ、あの……………そ、そんなに見られると恥ずかしい、です………///」
「あ、あぁ………………ご、ごめん」
するとそんな自分の視線に気付いた初春が、こちらの方を向く。
恥ずかしそうにはにかんで、ほんのり頬を上気させていた。
───あれ………………何でだろう、初春さんがより可愛く見えて……………………って俺はまた何を考えてんだよこのバカヤロー!
さっきあんな事があったんだ、警戒してるに決まってんじゃねーか!
何故か発生している胸の動悸を何とか押さえながら、上条は彼女から視線を外した。
何だか顔が熱くなっていた気がしたが、それは気のせいなのだろうか。
一旦落ち着こう、まだ慌てる様な時間じゃない。
───ってこれは違う! 違うって何が!?
まだ慌てる様な時間じゃないって何だよ!? この先に何か続くフラグなのかよ!
だあああああああ何だよ俺の思考!
落ち着け、落ち着くんだ。クールダウンだ。それ、ひっひっふー、ひっひっふー。
「花子ォ。三下のヤローはそれが食べてみてェンじゃねェか?」ニヤニヤ
「えっ」
「………………………………!」
「そこに気付くとは………………あなたって天才? ってミサカはミサカはあなたの髪を撫でてみる!」ピョンピョン
「跳ねンな、はしゃぐな。みっともねェ」
「「……………………」」ギロッ
その言葉を聞いた瞬間、初春の顔が一瞬何かに気付いた様な真剣な表情になり、次第に戻っていく。
上条はその一方通行が言った事に怪訝に思ったが、左隣からくるその初春の様子とと右隣からくる小萌とインデックスの様子にタジタジになりろくに反応出来なかった。
「か、上条さん。食べてみたいですか…………?」
「え、う、うん? んー、まあ食べてみたい、かな?」
スプーンで一掬いした所で初春の動きが止まり、上条に確認する。
上条もそんな言葉が飛んで来るとは思っていなかったのでしどろもどろながらも気付けばそんな返事をしていた。
とはいえアイスに別に興味があった訳ではない。
上条が見ていたのは、アイスよりも引き付ける『何か』なのだ。
「か、上条さん!」
「ん?」
「そ、その。は、はい、あーん……………………」///
「」
おずおずと差し出されたそれ。
それには初春が食べていたアイスが乗っけられており、緊張からか上下左右に小刻みに振動を起こしていた。
「……………………えと」
「ぜ、是非。食べてください……………………///」
「「「「「Oh……………………」」」」」
「と、とうま! それはダメなんd「お肉焼けたよってミサカはミサカはシスターさんの目の前にお肉を」美味しいんだよ!」ガブガブ
「か、上条ちゃん! だ、ダメでs「ほらァ、飲み足りねェンだろ?」ちょ、グビグビ」
「ヒーローさん、もらっちゃいなよ。ほら、早くしないとアイス溶けちゃうよ?」
「初春………………結構積極的なんですのね」コリャビックリ
周りから囃し立てる声が響く。
というか、それがより上条の動きを鈍くさせているのだがこの空気はもはや満場一致で「食っちまえ」のムードだ。
不満を唱える二人は取り敢えず打ち止めと一方通行が黙らせ、後は上条がそれを頬張るだけという空気をお膳立てしていた。
「は、早くしないとアイスが……………………」
どうする、どうする。
ここは甘んじてあーんで食べるか。
しかし初春が持っているのは彼女が使っていたスプーンで。
それは間接キスというものになるんじゃないだろうか。
別に男はそういうのは気にしないと思うのだが、相手は思春期真っ盛りの女の子で。
それに先程の出来事も加えて、どうするべきかと考える。
こんなシチュエーションなど経験した事はない。
記憶喪失前の自分ならもしかしたら、とは思うが今の上条からしてみれば全くの初体験の事態だ。
しかし。
「い、いや、そういうのはですね、初春さん……………………」
「上条さんは嫌、なんですか……………………?」
少し悲しそうにした初春の表情を見て、上条は動いていた。
「……………………ん」
「あ……………………///」
「「「「「いったあああああああああ!!」」」」」
「とうまのばかー!」ガツガツ
「上条ちゃん明日はすけすけみるみるですぅ!」グビグビ
言っておこう。
そのアイスは今まで食べたそれの中でも一番甘かった、と。
「お、おいしいですか?///」
「おーこれがマンゴーアイスってやつなのか。結構美味いな、これ。ありがとう初春さん」ニコ
「ぃ、ぃぇ……………………///」キュン
「何だよ。三下の反応は意外と普通かよ」
「初春のお姉ちゃんみたいな反応じゃなかったねってミサカはミサカは期待を裏切られた気分だったり」
「お前らは何を期待してんだよ………………食べちまえば一緒だろ」
───私ってば、ほぼ無意識であんな事……………………!///
彼が、食べてくれた。
まるで恋人同士の様な振る舞いをしてくれた。
その事実が初春の思考を幸福の絶頂へと導いていて、いましばらくは言葉を発するのにも時間を要するだろう。
しかしそれは幸せを噛み締める時間。
初春の脳内コンピュータではその映像が何度でもリピート再生されていて、初春の心を奪ってやまない。
「……………………ダイスキデシュ、カミジョウサン…………///」
「ん? 何か言った?」
「ぃ、ぃぇ…………な、何も…………///」
「」
(((((……………………今さりげなく告白しなかった?)))))
「ふんにゅ────────────────!!!」
「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「……………………インデックスと小萌先生はどうしたんだよ…………」
そんな会話を聞き流しつつ、自分も残ったアイスに取り掛かる。
口に含むと、先程よりも甘く感じられた。
───あ……………………か、間接、キス…………
何故より甘く感じられたのか、わかった。
幸せだ。幸せに幸せを重ねた様な気分。
隣の彼は、皆と談笑をしていてとても楽しそうに笑っている。
彼のその笑顔を見られるのがとても嬉しい。
そして特に嬉しいのが。
そう、彼がジャッジメント試験に受かったって事だ。
しかも配属は、自分と同じ第一七七支部。
という事は、彼といられる時間が必然的に増える。
もっと彼と話していられる。
彼の傍にいられる。
その事実が、私を何よりも幸せにさせていた。
上条さん。上条当麻さん。
知り合ったのは最近の事だけど、もはや私の生活の中で彼の存在は欠かせないものになってきている。
今日だって彼と一緒にいられたし、彼の隣で食事も摂る事も出来た。
その、事故とは言え、き、キスまがいな事もしたし。
使ったこのスプーンも持ち帰りたいくらい。
「~~なんだよ。酷い話だよなー」
「あはは、何それーってミサカはミサカはあなたの話に笑い転げてみたりー!」
「いやいい加減厄介事に巻き込まれ過ぎだろォ」
「不幸体質って聞いたけど、ここまでとはね」
「ったく、いつも事件現場にいると思ったらそんな事してらっしゃったんですの」
「そしたら青ピっていう変態な同級生がいるんだがな、そいつがさー」
「青ピちゃんは悪い子じゃないんですけどねー。でもちょっと度が過ぎの所があるんですよねー」
でもやっぱり楽しい時間って早く流れちゃうみたい。
「一方通行、まじご馳走様でした!」
「「「「「ご馳走様でしたー!!」」」」」
「気にすンな。俺が肉食いたかったついでだ」
「この人数分出しておいてそんな事言えるのはお前くらいしかいないよな……………………」
「カカカ! 涙でも流しながら俺に感謝しとけェ!」
「マジで……………………ありがとな…………いい飯食えた」ブワ
「本当………………嬉しいんだよ…………家じゃ絶対に食べられないんだよ…………」ウル
「ちょ、ホントに泣いちゃったよこの二人…………あなたの気持ち悪い笑顔が怖かったんだね、きっと」
「あァ!? まァいい。三下ァ、テメェは花子にでも慰めてもらっておけェ」
「えっ///」
「ニヤニヤしながら行方を見守るよってミサカはミサカはニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤおっと下位固体暴れないで」
この楽しかった時間はもう終わりの様で。
今日はビックリしたけど、でもそれ以上に嬉しい事がいっぱいあった。
それは全部上条さん絡みの事で。
今日でハッキリとまた一段と彼への想いが増したのがわかった。
「それじゃ皆、今日は本当にありがとう。皆の励まし、すっげー嬉しかった。またな!」
「あ、はい、おやすみなさい! 上条さん、明日から頑張りましょうね!」
「ああ。初春さんも、また明日な」
「はい///」
「むー……………………」
「むー……………………あ、一方通行ちゃん、芳川さん、黄泉川先生をよろしくお願いしますね」
「ン」
「ええ」
「それじゃ!」
「またなんだよ!」
「「「「「「「おやすみなさい!」」」」」」」
明日から上条さんも一緒に仕事する事になる。
私、頑張ります!
どなたかお医者様わいらっしゃいませんか!!
俺がにやけ顔で倒れて息していません!!
誰かぁ!
助けてくださぁい!!
ある一室に水が滴る音が響く。
机の上に置かれた花飾りは、ご機嫌な主人に相乗するかの様にいつもより可憐な色を見せているかの様。
今はこの場ではなく、浴室にいるであろうその少女をただひたすらに、微笑ましく満開に咲き誇っていた。
上から下に向けて絶え間無く落ちてくる適温の湯を目をつむりながら顔から浴びる。
閉じた目の、瞼の裏にいるのはただ一人だけ。
ここに閉じ込めて、絶っっ対に逃がさないとキュッと更に目をきつく閉じる。
「……………………………………」
そして自身の唇と、その数cm横の頬と唇の間の部分に手を触れる。
まだ、感触が残っている。
彼の唇の感触、頬の感触。
愛しい。
胸の動悸が収まらない。
こんなに気分が高揚したのは初めてだ。
慎ましい胸に手を当てると、骨と肉、皮膚を越えてその心情を主張していた。
ほら、もうこんなにも彼に会いたい。
もっともっと彼と話がしたい。
もっともっと彼を知りたい。
触れたい。
触れてほしい。
今の彼女の欲求を表すとすれば、それだけであった。
欲しい物、とかなりたいもの。
そんな様なモノは全て彼方へ吹っ飛ばしていて
『彼と一緒にいたい』
その気持ちだけで、今のこの身体の細胞組織の形成が出来ている───
そんな気さえもしていた。
「あれ、メールだ………………」
風呂から上がり、濡れた髪の毛をバスタオルで乾かしながら机に置かれた携帯に目をやると、メール着信を告げる緑色のランプが点滅している事に気が付いた。
誰だろうと携帯を手に取り画面を確認すると、初春の思考はほんの少し止まる。
『無題
22:28 当麻さん』
という二列の文字列だけで初春をフリーズさせる事が出来るのは、恐らくその電波からの着信だけであろう。
また初春の携帯には、上条の番号は下の名前で登録してあり。
いつか、そう呼べる日が来るのをという思いを込め、漢字も上条から教えてもらっていた。
「あわわわわわわわわわ……………………///」
入浴で温まった身体の温度が更に上昇したのが分かる。
鏡は見ていなくとも顔も赤いのだろうと容易に想像出来てしまう。
ドキドキしながら携帯の画面をタッチすると、文面が書かれた画面に移った。
『from :当麻さん
subject :無題
────────────────
初春さん、今日は本当にありがとう
初春さんが手伝ってくれたおかげで
上条さんも試験合格する事が出来ま
したよ!
はは、まさか今日あそこにいるのは
ビックリしたけど、これから仕事が
一緒になるんだよなー
でも一緒でよかった
あとたくさん面倒かける事になると
思うけど、ご指導ご鞭撻の程よろし
くお願いします!
それじゃ温かくして寝るんだぞー
おやすみ!』
「当麻さん……………………」
文面に目を通すと、無意識の内に彼の名を呟いていた。
口に出したのは下の名前だったのだが、そんな事などまだまだ誰もいないここでしか出来ないだろう。
しかし勿論聞くものはおらず、その声は虚空で消えていく。
それでも、初春は呟いた。
『保護しました』
と、その画面を確認すると、すかさず返信画面に切り替える。
慣れた手つきで返信の文を打ち込むと、送信ボタンを押した。
「本当は…………声が聞きたいけど」
しかし時間も時間だ。
寝るにはまだ早い時間だとは思うが、こんな時間にいきなり電話を掛けるのは迷惑になるのだろう。
しかもしっかりと文面を考える時間があるメールと違って、電話はそうにもいかない。
話題に詰まったらどうしよう、しどろもどろになって変に思われたらどうしようとか、そんな失態など晒す事も出来やしまい。
『to:当麻さん
Re:おめでとうございます(≧▽≦)
────────────────
確かにビックリしちゃいましたねー
(f^_^;
合格できたのは上条さんの頑張りが
あったからですよo(^-^)o!
一緒の支部になれてよかったです!
私の方こそ、よろしくお願いします
(=^∇^=)♪』
『送信しました』
その画面が表示されたのを確認すると、もう一度彼からのメールを読む。
一字一句逃さず暗記するかの様に、彼の声で脳内変換してもう一度。
「私の方が、一緒で嬉しいです……………………大好きです、当麻さん」
いつかは面と向かってそう言える様になりたい。
そんな関係になりたい。
そんな想いを馳せ、今日は早めの就寝を取る事にした。
この幸せの感覚を噛み締めながら、夢に出て来る事を望みながら。
ここは一体どこなのだろう。
暗く人気のない寝静まった夜の街に自分はいた。
知っている様な気もするし、知らない場所の様な気もする。
登場人物は二人で、自分は相手を追っている。
───オイ
その相手は無表情を装っているが、逃げるのに必死な事は分かる。
それに対して、自分の気持ちとは裏腹に己の口角が斜め上へと釣り上がっているのが感覚で分かった。
───ヤメロ
自分視点で逃げている相手の背中がどんどん近くなっていた。
相手は振り返る毎に、その絶望感を段々と大きく滲ませている様だ。
───止まれ…………止まりやがれ…………
距離にしておよそ二メートルになった瞬間、相手の顔に諦めの色が浮かぶと共にやぶれかぶれ銃口をこちらに向けた。
───やめろ! ンなモン撃つンじゃねェ!
刹那、発射。そして出血。
客観的に見ている自分とは対照的に、夢の中の自分はさも愉快そうに笑っているのが分かる。
撃たれた筈の自分は何ともない。
その代わりに────────胸から血を流し、倒れていく少女の姿が瞳に写った。
───オイ…………やめろ…………どォするつもりなンだ…………?
仰向けに倒れ伏した少女が更に近付いている。
いや、近付いていくのはその少女ではない。
『自分』だ。
聞こえる。
風を切った様な、虫の息の呼吸が。
まだその少女は生き絶えてはいない様だった。
そして『自分』は少女を優しげに起こそうとしているのか、その腕を引っ張って、少女の身を軽々と持ち上げていた。
───そォだ。早くそいつをあの医者の所に────────
…………しかし、引っ張った腕の根本に自分の足がかけられた事に疑問を持つ。
───…………………………………………ア?
待て。
自分は何をしようとしている。
その足は何だ。どけろ。
その心からの嘆願と共に、胸の奥から激しく警鐘が鳴った。
『……………………ギャハ』
その声が『自分』の口から漏れた事に気付く。
───なンで…………っ、テメェは笑ってやがる……………………!?
今すぐ『自分』の身体の主導権を握らなねばならない。
今すぐ少女を助けなければならない。
必死にもがく。もがくもがく。
しかし、代わる事はなかった。
『ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハァ!!!!!!!!!』
そして『自分』は、まるで雑草でも引っこ抜くかの様に、持っていたそれを────────
「やめろォォォォォォォォォッッッ!!!」
暗い一室で一人の男の叫び声が響き渡る。
その音はまるで部屋の中を荒らすかの様に響き、机の上に置かれたコップや窓ガラスをカタカタと揺らしていた。
───ハァ……………………ハァ……………………
息が苦しい。
冷や汗が頬を伝っていて、部屋の中と言えども冬の冷たい空気を相俟ってより冷たくそれが感じられた。
「一方通行!」
その声と共に四人が部屋になだれ込む。
『自分』とは違う「自分」に届いたその声と姿が見えると、自分がどんな状況だったのかを思い出す。
夢を見ていたのか。
息を整える。
・・
「ハァ、ハァ……………………悪ィ…………また起こしちまったか」
「ミサカは大丈夫ってミサカはミサカはそんな事よりあなたを心配してみる……………………」
「……………………大丈夫じゃんよ? 一方通行」
打ち止めと黄泉川の二人の心配そうな声が耳に届くが、一方通行は口をつむんだ。
悪い夢────────そんな生易しいものではない。
クソッタレな自分の経験として、今でも映像として脳裏に焼き付いてしまっているあの地獄。
必死に生きようともがく罪なき者を、残虐の限りを尽くして傷める自分の経験として、一段落ついた筈の今でも気を抜けば思い起こしてしまう。
自分がこうして悪夢にうなされ、悲鳴の様な叫びを上げる事はまだまだある。
しかしそれでも彼と共に生活する住人達は、彼の事を本気で心配してくれているのが手にとって分かってしまう。
分かってしまうから、申し訳ないという気持ちが先行してしまうのは自分が弱くなったからなのだろうか。
「…………………………………………」
心配そうな表情を浮かべる打ち止め、そして番外個体を見る。
もしかしたら被害者になりえた者達。
もはやクソッタレ以下の自分の、手に掛かったかもしれない少女達。
唐突に覚えた嘔吐感を必死に押さえた。
「う……………………!」
「一方、通行……………………!?」
あのロシアの時、番外個体に言い放った言葉が脳裏に蘇った。
一生懸命生きながらえろ────────どの口がそんな事を言えたのか。
……………………そこでふと、背中に温かい感触を覚えた。
打ち止めが自分の背中を優しげに撫でていたのが分かった。
「いらン心配、すンな…………、…………クソガキ」
「ミサカはどこにもいかないよ……………………あなたの傍にいるよ」
自分の見た悪夢の内容を知っているのか、打ち止めがそんな事を言う。
涙声混じりのその声に、罪悪感を覚えた。
弱い。
脆い。
こんなにも自分は弱かったのか。
こんなにも自分は脆かったのか。
その打ち止めの撫でる腕を払い落とす事も出来ず、ただジッと佇む。
そんな資格などありもしないのに。
それでも打ち止めは、優しく撫で続けている。
───…………………………………………チッ
心の中で、力一杯憎しみを込めて舌打ちをする。
勿論対象は自分。
守ると決めた存在に、守られている様な感覚にどうしようもない怒りが湧いていた。
「ふっふーん♪」
鼻歌混じりに昼休みの廊下を歩く。
上条はいつになく機嫌が良かった。
昨晩はこれから先、当分食べられないであろう豪華な夕食も摂る事が出来たし、何はともあれジャッジメント試験に合格したという事実が上条の気持ちを高ぶらせていた。
今日からジャッジメント第一七七支部所属の人間だ。
「ん…………………? そういえば」
上条は立ち止まり、顎に手を当て昨日黄泉川の言った言葉を思い返す。
そういえば、今日から第一七七支部所属だと言っていたのだが。
いつ、どこで何をすればいいのか聞かされてはいない。
「うーむ」
一応支部の場所は知っている。
第七学区にある、柵川中学校の近くにあるビルの中だ。
上条の通う学校と柵川中学校は割と距離が近く、平凡な学校同士、柵川中学から上条の通う高校へと進学していくパターンが多い。
まあ放課後に行ってみればいいのかなと考えながら教室へと再び足を動かそうとすると、上条の教室の方から長い髪をなびかせて出て来た黄泉川の姿に気が付いた。
「黄泉川先生じゃないですか」
「お、上条。ここにいたか」
「ほえ?」
黄泉川のまるで自分を探していたという口ぶりに上条は首を捻った。
上条の中で『教師に呼び止められる=補習の予告か授業態度の注意』という公式が成り立っていて、嫌な予感しかしないと内心焦りはじめてきていた。
何故そんな公式が上条の中で成り立つのかと聞かれれば、それはまあ上条自身のせいでもある。
それはまあいいとして、何故自分を探していたのかを聞かねば何も分かりはしまい。
「いや昨日言い忘れてた事があったじゃんよ。今日の放課後、第一七七支部に行くじゃん」
「その事でしたか」
「ん? どうした?」
「あ、いえ、何でもないっす。分かりました、放課後あそこの支部に行けばいいですね?」
「場所は知っているじゃんか?」
「大丈夫です」
ホッと一息吐いて安心した様な表情を見せた上条に黄泉川は疑問符を浮かべるが
まあそこまで気にする事でもないのだろうと聞かない事にした。
「あ、昨日はどうもありがとうございました」
「ん? あー、別にいいじゃんよ。というか私よりも一方通行に礼を言ってやるとあいつ喜ぶじゃん」
「そうですね」
改めて礼を言う。
試験の時は迷惑も掛け、昨日はわざわざ自分の為にパーティーみたいなものまで開いてもらった。
昨日のスポンサーは一方通行だったとはいえ、実際に一昨日には黄泉川にもご飯をご馳走までしてもらっている。
しかしまあ一方通行とこの黄泉川の繋がりは大いに驚きはしたのだが。
「黄泉川先生と一方通行って同居してたんですね」
「ん? ああ、まあ同居って言うか引き取った? 感じじゃん」
「へえ、そうなんですか?」
「桔梗っていたじゃんか? 桔梗とは昔馴染みで桔梗からあいつらをよろしくって任されてさ」
「……………………なるほど」
黄泉川の言葉に上条は頷いた。
なるほど、そういう背景があったのか。
というか素直にそれに応じる一方通行、というのがなかなかに想像につかなかったのだが恐らく何かあったのだろうと推測して納得していた。
まああの頃の一方通行と今の一方通行は違うしな、と思案する。
勿論根本の所は変わらない。
ただ素直になっただけ、というのが上条が持つ一方通行への印象だったりする。
「……………………それでさ」
「はい?」
そこで黄泉川の声色に変化が起きた。
明るい彼女の口調とは違う、まるで落ち込んだかの様なその様子。
上条はその変化が非常に気になり、黄泉川の方をじっと見つめていた。
黄泉川は廊下の窓の手すりに前屈みの状態で肘をつき、ボーッと窓の外を眺めている。
それに上条も廊下の窓側に立ち、黄泉川の言葉に耳を傾ける姿勢を作った。
昼休みを楽しむ喧騒がやけに大きく聞こえる。
窓の外には、誰もいないグラウンドが写っていた。
「一方通行のヤツ、何か悩みを抱えてるみたいじゃん…………」
「……………………悩み?」
「ああ。寝てる時によくうなされるじゃん…………悲鳴を上げるかの様に起き上がってさ。あいつは大丈夫だって言うんだけど」
「…………………………………………」
黄泉川の言葉に黙って耳を傾けている。
「打ち止めも番外個体も桔梗もさ、あいつを心配してんじゃん…………多分何かを抱え込んでるって思うけど」
「…………………………………………」
「あいつらに何かがあったって事は知ってるじゃん。桔梗に深くは事情は聞かないであげてって言われてるから聞かないけど……………………きっと、私の想像につかない事があったじゃんよ」
「…………………………………………」
「あいつ、あのままだと壊れてしまいそうじゃん……………………だから上条も、あいつを助けてやってほしいじゃん」
「黄泉川先生………………………………」
「上条も知ってるじゃんよ? 打ち止め、番外個体を含めたあいつらに何があったかを」
「…………………………………………はい」
黄泉川の言葉から、一方通行をどれだけ大切に思っているのかが窺えた。
本当に大切な家族、というのが言葉の節々から感じられる。
だから黄泉川のその質問に、素直に答えた。
最初は知らない、と答えるつもりだった。
あんな実験、あんな大戦など人に言えるはずもなく。
どれだけ一方通行が苦しんだかを上条は知っている。
それでも一方通行は何を守ろうとしているのかを知っている。
それと同じで、黄泉川も一方通行を守ろうとしていたから、上条は素直に答えていた。
「あいつとはいいダチみたいなもんですから」
「そっか。あいつ、ウチのヤツらしか信用しないって感じだけど、上条も信用してるって感じじゃんよ。だから上条もあいつを見てやってほしいじゃん」
「はい」
無能力者の自分など信用されてるのかは知らないが、一方通行の力になれるのならば協力は惜しむ事はない。
人が『闇』でい続けなきゃならない理由などこれっぽっちもない。
一方通行は言ったのだ。
『こォいう生活も……………………悪かねェか』
ならばその答えはただ、救ってやる────それだけの事だった。
「初春ーっ! 今日ジャッジメントの仕事でしょ?」
「そうですけど…………何で佐天さんが知ってるんですか。後、一応部外者は立ち入り禁止ですよ?」
「あはは、固い事は言わないの。お茶菓子持っていくから」
「もう、佐天さんってば」クス
放課後の喧騒にその二人の会話も加わる。
クラスメイト達は帰る、遊ぶムード一色で、これから仕事だというのに初春にそう話し掛ける佐天もそのクラスメイト達と同じ様な雰囲気だった。
部外者だと言うのにまるで正規のメンバーみたく支部室に入り浸る佐天だが、別段彼女を断る理由もなく二人して第一七七支部に向かう事にした。
───今日から……………………
上条も、そのメンバーの一員。
いつもの仕事風景に彼の姿が加わる────そう考えると、初春はいてもたってもいられなかった。
「初春、今日はどうしたの? なんか張り切ってるみたいだけど」
「えっ、そ、そうですか? 別にそんな事はないですよ」
いつもと違って歩くスピードが速い初春に気付き、佐天が隣で不思議そうな顔をしている。
佐天にはまだ上条が今日から加わるという事は伝えてはいない。
彼女にこの話を持ち掛けた所で、からかわれるだけというのは目に見えていたので、別に隠しはしないが自分からは口にはしていなかった。
昇降口で靴を履き変える。
履き慣れた小さな黒の革靴に足を入れると、佐天は既に履き終えていたみたいで初春を待っていた様子だった。
「よしそれじゃ行こー!」
「はぁい」
夕暮れの校舎をバックに校門へと歩き出す。
今日は冬にしては比較的暖かい陽気の日で、初春も気持ち良さそうにんーと伸びをする。
これから彼に会える。
それだけでテンションはまるでレーシングカーのスピードで富士山頂上まで一気に駆け上がるみたいに上がっていくのが自分でも分かってしまう。
彼に会えるのだ、テンションが上がらない筈がない。
「やっぱり今日、何か機嫌良さそうだね」
「そうですかー?」
「ははーん。さては上条さんと何かあったな?」
「そっ、そんな事……………………!///」
「分かりやす過ぎだよ、初春ー」ニヤニヤ
ほら、やっぱり彼関連でちょっかいを掛けてくる。
上条という言葉だけでもはや過剰反応してしまう初春の様子に佐天はニヤニヤと肘を肘で突っつき始めていた。
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