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元スレ上条「俺がジャッジメント?」
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上条「いいのかい?俺は町中をフラフラと警邏するだけでスキルアウトがホイホイ釣れちゃう男なんだぜ」
乙乙~
上条さんは犯人の説得とかに駆り出されそうだなwwww
上条さんは犯人の説得とかに駆り出されそうだなwwww
運命の日、午前七時半。
しぱしぱする目を擦り、上条は歯を磨いていた。
前日遅くまで追い込みをかけて勉強し、後は野となれ山となれ状態だ。
しかし、昨日は初春がいたおかげで大分はかどった。
要所でポイントとなりそうな部分を纏めてくれ、それを中心とした内容を頭に叩き込み上条はこの日を臨んでいた。
もし、初春がそのポイントを外していたら上条としては落ちるのは必至であろうが、不思議となぜか出来る様な気がしていた。
「むにゃむにゃ……」
「お、インデックス。起きたか」
「おはよう、なんだよ……」
洗面台の前でインデックスも眠い目を擦りながら顔を洗う為に髪の毛を肩に流す。
髪の毛を縛るという選択肢はないのだろうか、そういえばインデックスが髪の毛を括ったのを見た事がない。
あれだけ長い髪の毛だ、手入れするのも大変だろうに。なんてしみじみと思いながら上条は口を濯いだ。
「ご飯出来てるからなー」
「ありがとなんだよー」
まだ睡眠欲>食欲か、ご飯というワードを聞いてもいまいち反応が鈍いインデックス。
まあいつもの事なので上条もタオルで顔を拭くと台所に向かった。
「行ってらっしゃい。頑張ってねとうま」
「おお、サンキュ。いってくる」
玄関先でフリフリ手を振ったインデックスに手を上げ、上条は学校へ向かう。
日曜日の朝という事で、学生達でごった返すこの街は随分と閑散としていた。
「おー、なんか新鮮だな」
冬の冷たい空気を吸い込み、息を吐く。
なんとなくいつもと違う感覚で、いつもと違う気分だ。
「さて、今日はどうなるんでしょうかね」
やはり試験は難しいのであろう。
それもそうだ、この街を取り締まる風紀委員。
能力開発なんていう他とは違う取り組みをしているこの学園都市。
当然、取り締まる側にもそれ相応の力というものが必要であろう。
「……………………」
右手。幻想殺し。
いままでいくつもの異能の力を打ち消してきた得体の知れない力。
イギリスへ行き、イタリアへ行き、ロシアへ行き、その旅に病院へ行き。
常人なら一生かけても味わえないであろう様々な事柄をわずか半年とちょっとで経験してきた。
今回、このジャッジメントを通してまたお世話になるのだろう。
まあ勿論、受かればの話になるのだが。
グッと右手を握り締める。
「よし」
何となく気合いを入れ、上条は再び朝焼けの街を歩きはじめた。
「上条さーん」
「ん?」
いつも通り掛かるあの公園にて、後ろから自分を呼ぶ声が響き渡った。
「あれ?初春さん?」
上条が振り返ると、揺れるお花が見えた。
…………もとい、お花を頭に乗せたジャッジメントの少女。
初春は走っていたのか、上条の傍に駆け寄ると息を切らして胸に手を当てていた。
「はぁ、はぁ…………よかった、会えて…………」
「ど、どうしたんだ?」
何かあったのかという初春の必死ぶりに上条は狼狽するのだが、とにかく初春の息が整うまで待つことにした。
幸い、時間はまだある。
少女の吐く吐息は、白い湯気となって冬の鮮やかな快晴の空に溶けて消えた。
「えっと、これを」
そういうと初春は手にしていた鞄からガサゴソと何やら布に包まれた箱の様なものを取り出し、上条に手渡す。
手に受け取ってみるのだが、それはほんのり温かかった。
「これは…………お弁当?」
「はい、そうですよ。これをお渡ししようと探してたんですけど、会えてよかったです」
「これを、俺に?」
「は、はい…………その、もしよろしければ、ですけど…………でも必要ないなら…………」
「あ」
そこで上条は今日の日程の事を思い出した。
午前中は筆記試験、午後は体力試験という風に別れていて。
という事は必然的に昼食を準備する必要があった。
もしこのままいけば、昼食なしで体力試験に臨む事になり…………年頃の健康男子だ、空腹による集中力低下は否めないだろう。
そして今朝の食事でさえ居候にほとんど奪われ、今でさえちょっぴり空腹感を感じている所だ。
「初春さん」
「は、はい」
上条は初春の手を掴み、目をジッと見た。
「~~~~~///」
声にならない声を上げ、初春の顔は一気に真っ赤に染まる。
これはもしや…………もしや!
年頃の少女。
手を繋いでいる。
相手は想い人。
いつになく真剣な表情。
顔も近い。
そこから弾き出す答えは、夢見し乙女なら一つしかないだろう。
「……………………///」
静かに、目をつぶった。
「何やっとんじゃゴラアアアアアアァァァァッッッ!!!!!」
「」
「げげ、御坂!?初春さんごめん!先行く!弁当ありがとう!」
ダダダダッ!という足音と共に一匹の兎が逃げていく。
まるで台風が過ぎたかのように轟音が響き渡り、そして静寂がこの場を制した。
「」
「あ、コラ待ちなさい!!…………って初春さん!?」
「」
「初春さん大丈夫!?アイツに変な事されなかった!?」
「」
「え、あれ。初春さん?」
「」
「おーい……」
「はっ!?」
「わっ」
頬をプニプニ突かれたような感触で意識を取り戻した初春は、目の前にいる人物が入れ替わった事にそこで気付いた。
「あれ?御坂さん?上条さんは…………?」
「走って逃げちゃったけど…………」
「むぅ…………」
「う、初春さん大丈夫?変な事とかされてない?」
「大丈夫ですよ。寧ろされタカッタノニ…………」
「どしたの?」
「何でもないです」プイ
何故か不機嫌そうにした初春に美琴は冷や汗を垂らした。
しかしそれよりも気になることがあった。
──何でアイツと初春さんが。
一緒にいたのだろう。
そしてとても仲良さそうに近く、それはまるで…………。
ブンブンと首を振る。
違う。そう思いたくない。
「御坂さんは学校、ですか?」
私服の自分とは違い、常盤台の制服に身を包んだ美琴を見て尋ねる。
いや、常盤台は休日でも制服着用義務があり、日曜日だとしても制服を着ているのはおかしくないのだが、手にしている学校指定の鞄を見て何かあるのかな、と感づいていた。
「うん。ちょっと研究の資料、提出し忘れちゃってね。すぐ出さなきゃいけないんだけど…………」
「そうなんですか」
レベル1の自分とは違い、美琴はこの学園都市230万人の中でも七人しかいないレベル5の中の一人。
自分では想像もつかないような研究とかあるんだろうな、と感慨深げに聞いていた。
「あ、初春さんこの後なんだけど、時間ある?私はこれ提出さえすればもうおしまいだからさ。お茶でもしよっか」
「あ、いいですね。午後はジャッジメントの仕事があるので、午前中だけですが御坂さんに着いていきます」
「ごめんね、じゃあ行こっか」
と、会話しながらも。
──上条さん、大丈夫かな…………
ついつい彼の事を気にかけてしまうのは悪い事なのでしょうか。
「よし、じゃあ始めるじゃん」
ジャージを着たやたら巨乳の教師の号令と共に筆記試験が始まり、ペンが紙を通して机を叩く音が響き渡る。
上条の周りには、約20人くらいなのだろうか。
上条よりも一回り身体の大きい男子学生もいれば、その逆の小さな女学生もいたりする。
──色んな人が受けてるんだなー
なんて関心しながら、問題を解いていく。
解ける。
解ける。
わからない。
解ける。
結構初春の読みが当たっていたのか、昨日の追い込みが功をそうした様に大体は埋められる。
勿論完璧、という訳でもないのだがそれでも普段上条が受ける試験よりも手応えはありそうだ。
──問題が解けるって、ちょっと楽しいかも。
そんな実感を得て、一通り空欄を埋めひとまずはペンを置く。
そこでふと廊下の方に視線を向けると。
「」
やたらと見慣れたピンク色がちょこちょこ顔を覗かせていた。
──小萌先生、何やってるんすか…………。
なにやら心配そうな表情を上条に向けていて、目が合うと恥ずかしそうにしていたが、キッと真剣な表情を作ると上条に何かを訴えかけていた。
(上条ちゃん、ファイトです!)
それを見るとなんだか暖かくなった様な気がする。
いやまあ随分と小萌には迷惑やら心配を掛けているので、上条としてもここはやはり落としたくはない。
(ありがとうございます)
目で礼を告げると、通じたのか顔をほんのり赤らめていた。
──風邪でもひいてるのかな…………?
あるカフェにてケーキを口に運ぶ初春。
甘いものが大好物で、その顔はとても幸せそうだ。
「おいしいですー」
「噂で美味しいって言ってたけど、本当美味しいわねー」
それは正面に座る美琴もそうで、心地好い甘みが表情を柔らかくさせている。
午前十時半という時間帯も時間帯なのだが、いざ目にしたケーキの魔翌力に二人は吸い込まれるように注文していた。
噂を聞き、初めて来る店だったのだがどうやら当たりの様で「また今度は四人で」なんて考えている二人の胸中は一緒だ。
「ところで、さ」
「はい」
「あ、あんな朝早くからさ…………アイツと何やってたの?」
初春はそこでピクンと反応する。
恐らく、美琴が言うアイツとは────。
「アイツって、上条さんの事ですか?」
「……うん」
やはり。
最後の一切れを口に入れ、初春は紅茶を口にしながら思案する。
自身が助けてもらった、あの時。
どうやらお互い知り合いの様で、気兼ねなく、という訳でもなさそうなのだが何度も会った事のある様な雰囲気で。
初春自身も二人の関係も気になっていた所だった。
自分よりも付き合いは長いのだろう。
どんな関係で、どんな間柄で。
もし深い間柄ならば…………それを考えると怖いのだが、しかしまあ今は美琴の質問に答えるのが先であろう。
「…………いえ、何もしてないですよ?お弁当渡しただけで」
「…………え?お弁当?」
「はい」
「な、何で…………?」
「上条さん、今日試験じゃないですか。それで助けてもらったお礼と言っちゃなんですけど、お弁当作って持ってったんです。もし上条さんがお弁当作ってたのなら、無駄になっちゃってましたケド」
渡した時の状況を振り返りながら……………………それを考えると初春の思考は停止してしまうのでブンブンと首を振ってどうにか意識を保つ。
それは置いておいて、まあどうせ美琴も上条の試験の事を知っているのだろう。
「試験…………?ああ、そっか。追試験ね。ほら、アイツって成績悪いからね。そんな事よりもなんで初春さんがアイツのお弁当なんか……」
あれ?
「…………あれ、御坂さん、知らないんですか?」
「え、何が?」
「上条さんが、ジャッジメントを目指してるって…………」
「…………………………………………え?」
そこで美琴の時間は完全に止まっていた様に見えた。
「あ、アイツがジャッジメント?」
「はい」
コクンと首を縦に振る。
もしかして、美琴は知らなかったのか。
「全然聞いてない…………」
「えええええええええ??」
「な、何その反応は?」
だって。
だって自分よりも近いと思う人なのに。
「いえ、てっきり知ってるんだと思ってましたので……」
「知らなかった…………」
「そ、そうなんですか」
当てが外れて初春は少し驚いた。
美琴と上条の絡みは一方的に美琴が攻撃をしかけ、上条が逃げるという場面しか見たことはないのだが、あの後の美琴の呟きや表情を見るに、恐らく特別な何かを抱いているのであろう事は感じていた。
ならば、と初春は美琴と上条の間柄を気にかけていたのだが、そういう話はしないのだろうか、と気になり出した。
「でも、別にほら、アイツの事が気になるとか、そういうのじゃないから」
とは言うが、実際はどうなのだろうか。
聞きたい。
知りたい。
上条の事なら、何でも知りたい。
でも二人は特別な糸やら何やらで結ばれていたとしたら。
それを考えると…………怖い。
だが、それならそれだとしても。
やはり、知りたい。
折角のチャンスなのだ、ここで聞いておきたい────。
しかし。
prrrrrrrr────────────
突如、初春の鞄の方から着信を知らせる電子音が響いた。
「あ……………………」
「あ、うん。出ていいわよ」
「すみません」
携帯を取り出し、画面を確認すると。
「うぇ」
白井黒子という名前が表示されており、恐らくジャッジメントの仕事であるということを示していた。
「よし時間だ。これより昼休憩にするじゃん。また13時に動きやすい恰好でグラウンドで集合するじゃん」
その黄泉川の声と共に、室内は少し喧騒に包まれる。
お前どうだった?やら昼飯だーやら。
ふう、と一息吐き背もたれにもたれかかった。
筆記問題は、とりあえずは出来た、とでも言っておこう。
手応えは確かにあったのだが、ぶっちゃけ点数はどうなるかはわからない。
しかし昨日の初春の特訓がなければ詰んでいただろう。
「はは、受かったら何か奢ってあげなきゃいけない心境だなー」
お世話になりっぱなしな気がしてきて、それに対するお返しを考えながら鞄を取り出す。
そういえば。
「…………わざわざお弁当、作ってくれたんだっけ」
日程を考えもせずいつも通り弁当など持ってきていない。
いつも購買を使っていた為、学校に弁当を持っていく、という習慣もなく買えばいいや的な感覚だったのだが、今日は日曜日。
購買など、やっているはずもない。
それを考えるとまさに冷や汗ものだったのだが、今朝は女神様に会い命を繋げる食料を渡してくれた。
「助かった、本当に助かった」
うんうんと頷き、弁当箱を包んだ布を解くと一枚の紙切れがある事に気付いた。
「ん?」
そこには可愛らしい文字で、『頑張ってください!』の一言だけが書かれていた。
「……………………」
ここまでしてくれた。
なぜここまでしてくれるのかは分からないのだが、これはますます期待に答えるしかないのだろう。
「ありがとな」
笑みを浮かべ、箸を取り出す。
どんな弁当なんだろうと期待を込めて箱の蓋を開けようとするのだが。
「か~み~じょ~う~ちゃ~ん」
「は、はい!」
その声が背中に届き、上条はビクッと身体を震わせる。
そっちの方にいまだ視線は向けていないのだがそれはそれは可愛らしい容姿に似合わず、まるで般若の様な雰囲気なのだろう。
ぎぎぎと油の切れたロボットの如く、そちらに首を回すのだが。
「お弁当持ってないと思ってせっかく作ってきたのに!その可愛らしいお弁当はなんですか!」
「いや、頼んでませんから…………」
やけに大きな包みを持ったピンク色の悪魔がそこにいた。
「っていうかあなた教師!一人の生徒だけにそういうのはダメですよ!?」
「……………………ふぇ」
「涙!?」
「だって…………先生この試験に関係ないし、上条ちゃんの保護者としてお弁当持ってきただけなのに…………」
般若から一変してまるで怯える子供の様に目に涙をこらえる上条の担任教師。
いや、その容姿は間違いなく子供だと誰しもそういうのであろう。
「おい、あいつあんな可愛い妹さん泣かしてるぜ…………」
「おいおい、ジャッジメントになろうって奴が子供を泣かせるのか?」
「やーねー、世も末よねー」
「だあああああもう不幸だああああああああああ!!」
泣きたいのはこっちだ!と言わんばかりに一瞬の内に弁当箱を持ち小萌と共に上条は教室から飛び出していた。
展開考えるの難しくてこんなに時間かかっちまった…………
また次回、次はなるべく早く来る!
また次回、次はなるべく早く来る!
チクショウ…
電車のなかで2828しながらみてしまった
ここに変人がいまーす
電車のなかで2828しながらみてしまった
ここに変人がいまーす
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| ヽ | | | `¨¨´ `¨¨´|| |ノ |
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|| | l l \ --_-- ,.イ 「´ | ¦ | タ ヒ ん で み る … ?
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_j,.イ `" \ >'′,.ィfユ>、彡| ドイノ`ヾ、
,.イ爪リノ ,.イ不心. ヽ / i斤弋fハ, '| |゙¨´ `ヽ、
. / `二´ {{了゙下ハ ヽ , ' ゞ辷少′|¦| ヽ
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>>1面白いよ! 面白いから続きを早く投下するんだよ!
あれから小萌と共に昼食を済ませ、上条は試験会場であるグラウンドに来ていた。
ちなみに昼食時に小萌からの質問攻めにあったのは言うまでもない。
勉強はちゃんとしたのか。
その弁当は誰製か。
どういう子なのか。
どういう関係か。
ABCどこまでいったのか。
地面に敷かれたピンクの可愛らしいシートの上で(何故か正座)、向かい合ってその一つ一つに冷や汗をかきながら律儀に答えていたのだが、最後の最後でお茶を吹き出したのはいい思い出。
上条が答える度に、小萌の機嫌が遊園地にありそうなアトラクション並に浮き沈みしていたのはスルーしたいところだ。
昼食を食べ終えると。
「結局無駄になっちゃいましたー」
と小萌は横にドンと置かれた一際大きな弁当箱の包みを寂しそうに見ると、上条はいたたまれなくなったか、それともはたまた別の理由からか、
「あ、なら後でいただいてもいいですか?」」
と思わず口走り小萌に泣いて飛び付かれたのは記憶の片隅に閉じ込めておくことにした。
──まあ量も多いし俺とインデックスの夕食のおかずの足しにしよう。冬だし品質的にもきっと大丈夫だ、うん。
しかしそういう考えの上条なので、本心を知れば小萌は報われないのだろうから黙っておこう。
グラウンドに出ると、まずは目を見張ったのが所々に設置された重々しそうな機械の数々。
その機械それぞれに担当の風紀委員らしき者が配備されており、受験者一同はその大掛かりな様子に驚いていた様子だ。
「おいおい、すげーなこりゃ」
「的?みたいなものもあるわ」
「一体何が始まるんです?」
「ますます落ちらんねーな、お前は大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない」
そんな驚きの声を耳にしつつも、上条も勿論驚いていた。
「随分手の込んだ試験なんだな…………」
はは、と渇いた笑いをしつつ、黄泉川がこちらに向かっている事に気付いた。
「よし、全員揃ったか?」
普段とは違う、恐らく仕事モードの声色で黄泉川が場を取り仕切ると、談笑ムードだった空気が一変した。
右を見ると、真剣な眼差しのガタイのいい男。
左を見ると、こちらもまた真剣な表情の少女。
ここには生半可な気持ちで来ている人間など、一人もいない。
この空気が、やはり自分をも真剣にさせる。
そして目の前で腰に手を当て、体力試験について説明をしている黄泉川もまた普段よりも真剣だ。
その向こう側のベンチでちょこんと座っているピンクは視界に入れると気が抜けてしまいそうになるため、気にしないことにする。
「よし、ここからまず男女に別れて、それからレベル毎に別れろ」
黄泉川の言葉に集団はバッと動く。
上条も男側、そして無能力者の括りに入った。
内訳を見るとこうだ。
~女子グループ~
レベル3・二人。
レベル2・三人。
レベル1・一人。
レベル0・無し。
~男子グループ~
レベル3・三人。
レベル2・五人。
レベル1・五人。
レベル0・四人。
どうやらこの中にはレベル4の大能力者以上の者はおらず、レベル3までのようだ。
この学園都市ではレベル0の無能力者が230万人でも約六割いるようなのだが、大能力者以上がいないと言えどもやはり風紀委員を目指す有志達は能力が発現している割合が高い。
女子に至っては全員発現している、とのことで上条はある意味感心していた。
──やっぱ皆頑張ってるんだな。
風紀委員を目指すという事はある意味優等生であるというメタファーでもある。
上条のいるレベル0の括りであっても、やはり能力開発に諦めた、という目をしている者はおらず皆ギラギラと目を光らせていた。
「まずは能力者から特性を見る。男子から行くじゃん。レベル3、~~!」
「はい!」
黄泉川から名前を告げられると、呼ばれた男子は勢いよく返事をして一歩前に踏み出た。
「お前は……水流操作か」
「はい!」
「それじゃコントロールを見せてもらおう。クレー係!準備!」
「「ハイ!」」
黄泉川の言葉に勢いよく返事をした係員は、機械を操作し黄泉川に合図を送った。
「クレー射撃の様に投射機からエモノが飛び出す。それを撃ち落とせ」
「はい!」
「よし…………始め!」
黄泉川の言葉と共に投射機からエモノが飛び出してきた。
「ヌン!」
すると男の周りの地面から水が浮き出て、男の身体の周りを螺旋状に囲った。
「はっ!」
スパアアアアァァァァンッッ!!
風船が割れた様な、そんな派手な破裂音と共にエモノは砕け散った。
「「「「おおおおおお!」」」」
その様子に歓声が沸き上がり、受験者の男も心なしか嬉しそうに次々とエモノを割っていった。
「ほえー」
上条もそんな彼を見て素直に感心する。
しかしまあ、水流操作……と言うとある人物を思い浮かんだのだが咄嗟に首を振って打ち消したのは上条だけの秘密。
「そこまで!」
おおおおおおおお、という歓声と拍手が巻き起こり男も嬉しそうに片手を突き上げて歓声に応えている。
そうやら手応えは十分だったのか、勝ち誇った顔をしていた。
「よし次、~~!」
「は、はい!」
次はどうやら発火能力者。発火能力者の場合はクレーではなく、どれだけ操作できる範囲を広げられるか、という測定だった。
「先生は心理学と共に発火能力の専攻なのですよー」
「ん?」
クイクイ、と袖を引っ張られた様な感覚を覚えてそっちの方を見ると、小萌が上条のジャージの袖を掴んでいた。
「あー、そうでしたっけ? さすが我らが小萌先生…………って先生!? 何やってるんすか!?」
上条が冷や汗を垂らして小萌の方に向くと、上条の言葉が嬉しかったか小萌は上条の袖を掴みながらモジモジしていた。
そして上条と視線を合わせると、ニコーッと笑顔を見せる。
…………つーかまあ、笑顔を見せられている場合ではない。
「上条ちゃん、頑張るんですよー」
そういうと小萌はスタスタベンチの方に戻っていった。
「それだけ言いに来たんかい!」
「え、上条ちゃんは先生に傍にいて欲しいのですか?」
「何すかその解釈…………っていいから戻ってて下さい!」
「また後で、ですよー」
顔に手を当てながら、はぁ、と溜息を吐く。
あの人何しに来てるんだ…………というツッコミは野暮なのだろうか。
ある意味只今試験を受けている者よりも注目を浴びていて、やけに周りからの視線が痛くて軽く涙を拭いていた。
「よし、それじゃあ次はレベル0のグループじゃん」
上条の袖が涙で絞れそうになった頃、とうとう自分のグループの順番が回ってきた事に気付いた。
レベル0、というのは無能力者だ。
つまりは、能力を持たない学園都市の『外』の人間と一緒。
この学園都市では能力によるヒエラルキーが顕著に現れる。
能力者に比べ、進学や就職、そして奨学金やら何やら色々扱いが良くない。
レベル5とレベル0の差は、それはもう比べるのも馬鹿馬鹿しくなる程だ。
だからこそ能力の発現に夢見て日夜努力を続ける苦学生もいるのだが。
それでも発現しない者もいる。
そしてその能力の無さ故に嫌気が差したり、また迫害されたりしてまた悪の方向に落ちていく────スキルアウトというのは、こうして出来ていく。
そしてそれを制圧するのがアンチスキルという警備員の仕事である。
スキルアウトと言うのは言い方を変えれば不良の吹き溜まり…………という認識を世間一般ではされている。
事実、そうでもないものもあるのだが、その大部分の素行の悪さにそういうイメージをもはやこの学園都市では植え付けられていた。
能力者に嫉妬しての、破壊活動暴力沙汰窃盗強盗強姦etc…………。
無能力者の全てがスキルアウトかと言われたら、そうでもないのだがそれでも数は多い。
事件の数も多く、それは風紀を律する側として頭の悩ませ所だった。
そしてそれを取り締まる側の人間の絶対数も、少ない。
しかしそれは選ばれた人間からなるのだから、少ないのも当たり前なのかも知れない。
しかし少ないながらも、この街は現状を保っている。
それは、取り締まる側のジャッジメント、アンチスキルの 優秀さが光っているからのこそ。
武力だけではなく、学力、頭の回転、正義感など。
そしてその武力の括りの中でもトップクラスに位置するアンチスキル所属、黄泉川。
彼女は今、何をしているのだろうか。
「よし、レベル0は一気にやるじゃん」
腰くらいまで伸びている長い髪をまとめ。
袖をまくり。
靴紐を固く結び。
立ち上がり、ぽよーんと跳ねる何かを釘付けにさせ。
「組み手開始、じゃん。さあかかってこい!」
「「「「「「「「はい?」」」」」」」」
その場の全員が素っ頓狂な声を上げたという。
「んー、男共はこっちの方が手っ取り早いじゃん。さあ! さあ!」
クイクイ、と手を挑発するかの様にレベル0のグループに振る黄泉川。
上条達レベル0のグループ四人はあんぐりを開けていた。
「反応悪いなあ」
その様子が少々気に食わないのか、黄泉川は不機嫌そうな表情を作った。
「私の顔に一発でも打撃を浴びせるとそいつは合格じゃん」
「mjd!?」
「お、おれやっちまおうかな……」
「でも相手、一応女だし……」
上条を除いた他の三人がそんな言葉を吐く。
上条も上条で困った表情を見せてポリポリ頭をかいた。
「か、上条ちゃんファイト!です!」
ふとそんな声が横から聞こえたので、一応そっちに視線を向けるとどこから出したのかボンボンを装備した小萌が上条にエールを送っていた。
「あ、そうそう上条は抜きで」
「え」
するとそこで黄泉川が何かを思い出した様に上条にそんな声を掛ける。
他の三人も何事かと上条に視線を向けるのだが、当の上条が一番よくわからないのだから仕方がない。
「ど、どうしてなんですか!」
なぜかプンプンと言葉を黄泉川に投げたのは小萌だ。
自分が担当する可愛い生徒を除外されるのは心外か、それとも黄泉川に対して鬱憤がたまっt…………ゲフンゲフン、いやまあそれはないのだが、そんな素朴な疑問だ。
「上条は…………こいつらが終わった後、サシで勝負するじゃんよ」
ゾクウウゥゥゥゥ!!
その黄泉川の何やら悪意に満ちた様な表情を見ると、上条を一気に鳥肌が襲った。
(お、俺なにかしたっけ……………………!)ガクガク
(上条ちゃん、怒らせちゃったんなら謝らないと…………!)オロオロ
(何もした覚えはないっすよおおおおぉぉぉぉ!!)ヒイイイィィィ
小萌と互いに青い顔を見せ合いながら視線で会話をする二人。何故か息ピッタリだ。
「「「ぐはああぁぁ!!」」」
「「え」」
突如、視線を外していた隙に何か野太い悲鳴が響き二人してそちらの方に視線を向ける。
すると……………………。
「あっけなかったじゃん。ツマンネーノ……」
「「しゅしゅしゅ瞬殺────────!?」」
屍と化した(?)三体の山に一瞥するだけして上条に視線を向けた黄泉の悪魔の姿だけがあった。
(フィアンマより)怖い。
膝が笑っているのだが、寒さのせいでは決してない。
いやまあ背中を冷たい汗がツウ、と垂れ落ちたせいでもあるのだが、その元凶は勿論。
「かーみーじょーうー」ゴゴゴゴゴゴゴ
ゆぅっくりと向かって来る黄泉川の姿に、何となく今日が命日となりそうだと感じた。
そうだ、ここで一句辞世の句でも詠んでおいた方がいいのだろうか。
「今日(こんにち)も
恐らく来世も
不幸でせう
とをま」
「上条ちゃぁぁん」ウルウル
軽く一句詠み上げ、黄泉の国へと旅立つ準備を整える。
父よ母よ、旅立つ不幸をお許し下さい…………ああもっと美味しいもの食べておけばよかった…………。
支援
バトル描写前で次回へ続くだったら絶対に許さない
今から徹夜してでも書き上げるべき
バトル描写前で次回へ続くだったら絶対に許さない
今から徹夜してでも書き上げるべき
美味しいもの。
そういえばさっきのお弁当。
『頑張ってください!』
──そういえば、俺は覚悟を決めたじゃないか。
己の信念に従うって。
守るんだって。
『ジャッジメントって、いいもんだな』
『勿論です』
俺はまだ、返し切れてない。
右手を握りしめる。
幻想殺し。
この右手で、今までやってきたではないか。
己にふりかかる不幸ってヤツを、乗り越えて。
大切な人達の笑顔を、作り切れたかはどうかはわからないけど。
それでも、やってきたじゃないか!!
「上条さんっ!!」
「初春さん…………?」
「頑張ってください!!」
いつ来たのか、視界の端にちょこんと見えた少女の姿。
「まあ、応援はしてあげますの」
「白井さんは黙ってて下さい。上条さん!信じてますから!」
自然と、勇気が出た。
「なんなんですかあの子はー?」
「さて上条」
「黄泉川先生…………一発当てればいいんですね?」
「ああ」
「………………いざ、尋常に」
時が止まる。恐らく勝負は、一瞬。
自分の力がどれだけ通用するのかはわからない。
だが、やらねばならない時がある。
それは、今じゃないのか?
無能力者だろうが、能力者だろうが関係ない。
勝つまで、負けない────────!!
「勝負だ三下ァァァァァッッ!!」
「上条、お前の場合は一方通行にじゃん」
「…………………………………………はい?」
時は止まった。
ここで一方通行さんww>>1を待ってたかいがあるわww
絶対だぞ!約束したからな!投下しなかったら迎えに行くかんな!顔は覚えたからな!
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