私的良スレ書庫
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元スレ美琴「極光の海に消えたあいつを追って」2
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おつ!
徐々に忍び寄る絶望の影ってな感じですな・・・
グループサイドはともかく、美琴さんはこの件にどう関わっていくやら
徐々に忍び寄る絶望の影ってな感じですな・・・
グループサイドはともかく、美琴さんはこの件にどう関わっていくやら
おつおつ
こんだけ色々やっても結局負けちゃうテレっさんの噛ませっぷりを想像すると萌え……たりは別にしないな。
こんだけ色々やっても結局負けちゃうテレっさんの噛ませっぷりを想像すると萌え……たりは別にしないな。
幼女に自分のシャツを着せたがる一方さんとな
よし次は黒夜ちゃンだ!(マテ
よし次は黒夜ちゃンだ!(マテ
とっても面白い続きが気になるって
ミサカはミサカは感想を言ってみる
ところで読んでる人のコメント、投稿間隔
が段々ひろくなってない?
ミサカはミサカは感想を言ってみる
ところで読んでる人のコメント、投稿間隔
が段々ひろくなってない?
>>513
荒らし行為をしないでください
荒らし行為をしないでください
>>513
気持ち悪いんで死んでください
気持ち悪いんで死んでください
真・スルー 何もレスせず本当にスルーする。簡単なようで一番難しい。
偽・スルー みんなにスルーを呼びかける。実はスルーできてない。
予告スルー レスしないと予告してからスルーする。
完全スルー スレに参加すること自体を放棄する。
無理スルー 元の話題がないのに必死でスルーを推奨する。滑稽。
失敗スルー 我慢できずにレスしてしまう。後から「暇だから遊んでやった」などと負け惜しみ。
願いスルー 失敗したレスに対してスルーをお願いする。ある意味3匹目。
激突スルー 話題自体がスルーの話に移行してまう。泥沼状態。
疎開スルー 本スレではスルーできたが、他スレでその話題を出してしまう。見つかると滑稽。
乞食スルー 情報だけもらって雑談はスルーする。
質問スルー 質問をスルーして雑談を続ける。
思い出スルー 攻撃中はスルーして、後日その思い出を語る。
真・自演スルー 議論に負けそうな時、ファビョった後に自演でスルーを呼びかける。
偽・自演スルー 誰も釣られないので、願いスルーのふりをする。狙うは4匹目。
3匹目のスルー 直接的にはスルーしてるが、反応した人に反応してしまう。
4匹目のスルー 3匹目に反応する。以降5匹6匹と続き、激突スルーへ。
偽・スルー みんなにスルーを呼びかける。実はスルーできてない。
予告スルー レスしないと予告してからスルーする。
完全スルー スレに参加すること自体を放棄する。
無理スルー 元の話題がないのに必死でスルーを推奨する。滑稽。
失敗スルー 我慢できずにレスしてしまう。後から「暇だから遊んでやった」などと負け惜しみ。
願いスルー 失敗したレスに対してスルーをお願いする。ある意味3匹目。
激突スルー 話題自体がスルーの話に移行してまう。泥沼状態。
疎開スルー 本スレではスルーできたが、他スレでその話題を出してしまう。見つかると滑稽。
乞食スルー 情報だけもらって雑談はスルーする。
質問スルー 質問をスルーして雑談を続ける。
思い出スルー 攻撃中はスルーして、後日その思い出を語る。
真・自演スルー 議論に負けそうな時、ファビョった後に自演でスルーを呼びかける。
偽・自演スルー 誰も釣られないので、願いスルーのふりをする。狙うは4匹目。
3匹目のスルー 直接的にはスルーしてるが、反応した人に反応してしまう。
4匹目のスルー 3匹目に反応する。以降5匹6匹と続き、激突スルーへ。
休み終了間際に課題を上積みされて、そっちを優先で片づけてますorz
木山せんせいの安否はもう少しお待ちください
木山せんせいの安否はもう少しお待ちください
いつまでも待つよ!
でも、あんまり冗長になると、なんだかんだテンション落ちちゃうから少し心配…
素晴らしい作品だけにね。
もう少し展開スピードを上げてもらってもOKですよ!
でも、あんまり冗長になると、なんだかんだテンション落ちちゃうから少し心配…
素晴らしい作品だけにね。
もう少し展開スピードを上げてもらってもOKですよ!
課題頑張ってくれwwww
木山先生の今後はすでに10パターン程妄想中だ!
木山先生の今後はすでに10パターン程妄想中だ!
こんばんは、お久しぶりです
大変ご無沙汰しておりますorz
3週間ちょっとぶりにも関わらず短めですが、今日の分を投下していきます
大変ご無沙汰しておりますorz
3週間ちょっとぶりにも関わらず短めですが、今日の分を投下していきます
12月20日。
「──? ─────ッ!?」
「…………んー……?」
ルームメイトのの素っ頓狂な声に眠りを乱され、美琴は目を覚ました。
白井はそれに気づかず、美琴に背を向け電話に熱中している。
「……えぇ、……えぇ。しかし、何故そのようなことに……」
「……くろこー、どーしたの?」
美琴の問いかけに白井は振り向き、静かにしてほしいというジェスチャーを返した。
「……はい、わかりましたの。ではのちほど」
ようやく通話を終えた白井はため息をつき、美琴に向き直った。
「起こしてしまって申し訳ありません」
「何かあったの?」
どう見ても穏やかな内容の電話ではなかった。
美琴の質問に、白井は答えて良いものか、というように逡巡する様子を見せる。
「……どうせそのうちお耳に入るでしょう。
一昨日深夜、木山春生が研究室で何者かに襲撃を受け、意識不明の重体だそうですわ」
「木山せんせいが!? なんで、どうして!?」
「詳しいことはまだ……。
襲撃犯がまだ近くをうろついているかもしれないということで、これから風紀委員の緊急会合が行われるという連絡でしたの」
怨恨、物取り、性犯罪目的。あるいはそれ以外の目的があったのか。
犯人の思惑が判明しない以上、次の犠牲者が出てしまう危険性も考慮した上で対応策を練らねばならない。
「下手な動きは犯人を刺激し、被害の拡大や逃亡の恐れを増大させますの。
お姉様は下手なことをせず、おとなしくしていてくださいまし」
などと言われたところで、大人しくしていられる美琴ではない。
気もそぞろに授業を受け、何か出来ることはないかと考えているうちに放課後になってしまった。
だが、『警備員』どころか『風紀委員』ですらない美琴に出来ることなどほとんどない。
襲撃事件と言うこともあり搬送された病院は公表されず、見舞いに行くことすらできない。
と、ここで美琴はあることを閃いた。
携帯電話を取り出し、電話をかける。
相手は妹の一人だ。
『──もしもし、ミサカ10032号です、とミサカは応答します』
「もしもし、私。電話は久しぶりね、10032号」
『いかがなさいましたか、とミサカは普段電話をかけてはこないお姉様を訝しがります』
日常、妹たちとメールのやり取りはすれど電話をすることはあまりない。
存在が露見したとはいえ妹たちとの電話は、予定が漏れて白井の襲撃を避けると言う意味であまり自室でしたいものではないからだ。
外であればどこで誰が聞き耳を立てているか分からず、彼女たちを守るためにも余り情報を漏らすようなことはしたくない。
というわけで、もっぱらやりとりはメールばかりなのである。
「ちょっと聞きたいんだけどさ、その病院で夕べ夜更かししていた子はいる?」
『19090号が午前二時ごろまで雑誌を読んでいたようですが、どうかいたしましたか、とミサカは尋ね』
「深夜に大怪我をした女性の急患があったかどうかちょっと聞いてみて欲しいんだけど」
木山が現在所属している研究施設は第七学区にある。
そして意識不明の重体で発見された。
となれば、運ばれる可能性が高いのは妹たちのいる冥土帰しの病院だろう。
『女性かどうかはわかりませんが、重傷を負った急患の緊急オペが深夜に行われたことは事実のようです、とミサカは伝聞を伝えます』
「……そっか、ありがとね」
そう言って、通話を切った。
木山だという確証はないが、重傷患者が冥土帰しの病院に運ばれたことは事実のようだ。
ならば、他に出来ることはないし行ってみるべきだろう。
「──守秘義務がありますし、部外者の方にお答えすることはできません」
「ですよね……」
婦長ににべもなく拒絶され、美琴は肩を落とす。
すっかり顔なじみになり会えば談笑することもある人だが、それはそれ。
特に事件性のある患者の情報は、再襲撃の可能性も考慮され、親族でもない限り明かすことはできないことになっているはずだ。
結局その患者が木山であるかどうかも確認できず、美琴は病院のロビーでうなだれていた。
数日前の木山の笑顔を思い出す。
自らの研究を、子供たちの為に役立てたいと語った木山の笑みは、何よりも綺麗だった。
その彼女が何故、襲撃されねばならなかったのだろう。
ひょっとして、『幻想御手』事件の被害者の誰かが木山の事を恨んでの犯行なのだろうか。
様々な考えが頭の中で渦巻き鬱々とした感情をもてあましていると、不意に誰かが美琴の前に立った。
冥土帰しだ。
「やあ、こんにちは」
「こんにちは」
「右手の調子はどうだい?」
「だいぶ良いです。もうお湯につけてもしみませんし、手を動かした時の変な感じも薄れてきました」
負傷してから2週間が経ち、右手の甲の傷もだいぶ良くなった。
治りかけの傷口が引き攣れて痛むなんてことも少なくなり、もう1週間もすればかさぶたも剥がれ落ちることだろう。
「ふむ。ただ、痕が残るかどうかは治りかけの時期にかかっているからね?
時間が空いているようなら、今から診てあげようか」
診察がてら、彼から木山について聞けるかもしれない。
そう思った美琴は頷いた。
冥土帰しの後について院内を歩く美琴は、そのうちに奇妙なことに気付いた。
今まで数度手の怪我を冥土帰しに診てもらった時はいつも彼の診察室だった。
だが今歩いている廊下は、彼の診察室へと向かうルートではないはずだ。
そんなことを考えていると、冥土帰しが歩くペースを緩めて美琴に並びつつ言った。
「一昨日の夜大怪我をした女性が運ばれてきたかどうか、妹さんたちに聞いたんだってね?」
「はい」
冥土帰しのほうからその話を切り出されたことに少々驚いた。
が、向こうから切り出されてしまった以上、今聞こうが後で聞こうが同じことだ。
「木山春生、という女性は運ばれてきませんでしたか?」
「来たね」
即答。なんともあっけらかんと応える冥土帰しに、美琴は少々拍子抜けする。
というか、守秘義務がどうのこうのはいいのだろうか。
「け、怪我は大丈夫なんですか!?」
「執刀時間2時間42分。内臓・主要血管などに後遺症を残すような損傷はなし。
予後は順調だね。退院まで一月もかからないだろう」
「ああ、良かった……!!」
ようやく胸を撫で下ろせた美琴。
その様子を、冥土帰しは満足そうに眺めた。
「実はね、君をロビーから連れ出したのは、君に聞きたいことがあるからなんだ」
「私に、ですか?」
美琴は首をかしげる。
木山に最後に会ったのは一週間近く前で、それ以降は直接の接触はしていない。
電話やメール越しにしても、昨日の昼間が最後であり、事件にはなんら関わっていないはずだ。
「話を聞きたいのは僕じゃなくて、彼女がなんだけどね?」
冥土帰しはとある病室の前で止まった。
扉の両脇を固めていた『警備員』2人が、冥土帰しに軽く礼をする。
「木山春生さんの要望で、お客さんをお連れしたんだけど」
「お聞きしています。どうぞ」
手招きに促され病室へ入ると中央にはベッドが一つだけ置かれ、脇には別の『警備員』が控えていた。
ベッドの中で寝かされていたのは、紛れもなく木山春生だ。
いくつもの点滴のチューブを腕につながれ、力なく横たわっていた。
「木山せんせい!」
思わず美琴は大声を出してしまった。
木山の様子が余りに痛々しかったからだ。
いくら手術に成功したとはいえ、即座に体調が戻るわけでもない。
「……やあ、よく来てくれたね」
「…………大丈夫、なの……?」
「なぁに、ちょっと腹と胸が痛むくらいさ」
鉛玉を至近距離から腹や胸に撃ち込まれて、大丈夫なはずがない。
発見が遅れていれば、間違いなく致命傷となっただろう怪我だ。
辛そうな息の下で、それでも木山は美琴に笑いかけた。
泣きそうな顔の子供がいれば、強がらずにはいられない。
どんな時でも子供たちを安心させるのは大人の仕事だと思っているからこその行動かもしれない。
現在のサーバのご機嫌:普通ですー(LA:0.5458984375)
「……『警備員』さん。少し、プライベートな話があるんだ。
あまり時間はとらせないから、席を外してくれないか」
木山に問いかけられた『警備員』は、木山と美琴、冥土帰しの顔を数度見比べた。
「分かりました。我々は表にいますので、何かあれば声をかけてください」
警備員が退出し、扉が閉まったことを確かめてから、木山は話を切り出した。
「……早速だが、君に聞きたいことがあるんだ」
「何かしら」
木山が美琴に聞きたいことというのが、彼女自身にはさっぱり思いつかなかった。
ひょっとして、病床の中でも彼女の進めている研究を続けるつもりで、その疑問点を解消するために呼んだのだろうか。
「君は、『第三次製造計画』という言葉を知っているかな……?」
「……っ!?」
だが、木山の口から飛び出したのは意外な言葉だった。
10日ほど前に一方通行に聞かされた、この学園都市の『闇』が進めているおぞましい計画と同じ名前だ。
何故、それを木山が知っているのだろう。
何故、この場面でその名が出てくるのだろう。
「……その反応だと、何かを知っているようだね。
良ければ、教えてくれないか」
「……『第三次製造計画』と、木山せんせいの事件は、何か関係があるんですか?」
「私を撃った犯人は、フードを目深にかぶっていたけれど。
それでも一瞬だけ、ちらりと顔が見えたんだ」
嫌な予感がする。
妹たちは生み出された目的に対し、何の疑いもなく従ってしまう。
ならば、その目的が悪意まみれのものだったなら。
「君に、とても良く似ていた」
「……ッ!?」
「私を撃った犯人が、名乗ったんだ。
『第三次製造計画』の先行試作体、『リプロデュース』と」
「私の妹たちの誰かが、木山せんせいを襲った……!?」
美琴の懸念は、最悪の事態として現実になった。
元々が『軍用クローン』として生み出された『妹達』だ。
暗殺者のような使役のされ方をされても、何の不思議もない。
善悪の意識に乏しい彼女たちを操るために、なんら難しい事をする必要はない。
ただ命令すればよい。それだけだ。
たったそれだけのことで、『妹達』は自身に与えられた力を躊躇することなく振るってしまう。
結果として、木山襲撃の実行犯はその『リプロデュース』ということになってしまうのだろう。
命令したその『誰か』は、命令しただけで実行はしていないとして、例え捕まっても罪は実行犯ほど重くはならない。
そもそも捕まるかも分からない。
「……その事は、『警備員』の人には?」
「言っていない。誤解しないでほしいのは、私は犯人探しをしたいわけじゃないんだ。
その子もきっと、誰か黒幕に操られているのだろう。ならば、退治すべきはその背後にいる連中だ」
だからこそ、黒幕を突きとめるためにも情報を提供して欲しい、と木山は言った。
美琴は悩む。
彼女が持っている情報は、一方通行に与えられたものだけだ。
彼自身とて、そんなに多くの情報を得たわけではないのだろう。
あくまで概要だけであり、突っ込んだところの詳細までは彼も分からないと言っていた。
今彼は番外個体と共に『第三次製造計画』を暴き立て、中止に追い込むために動いている。
彼から『第三次製造計画』に関する情報を得てから10日余り。
あれから有益な情報を得られたのだろうか。
尋ねてみるべきではないか。
「少しだけ、席を外してもいいですか?」
「構わないが、どこへ行くのかな?」
「携帯電話を使える場所、ここからだと近いのは……屋上ですね」
「──じゃあ、情報を整理するぞ」
一方通行のアジトの一つで、『グループ』のメンバーに加えて番外個体が顔を合わせていた。
メンバー間の情報共有は何よりも大事なファクターであり、日に一度はこうして集まっている。
「一週間の調査で、候補はおよそ残り2割にまで絞れた。
……が、ここからが一苦労だな。なんせ残りの施設は『やたら大きい』か『セキュリティが固い』か、あるいはその両方だ』
「こんな時こそ適任な人がいるでしょ? 今までもそうして調べてきたんでしょうし」
結標が横の海原を肘でつついた。
「一つ一つ調べるにも限度があるでしょう。
『成り済ます』にしても念入りな前準備がいりますし、あまり効率的とは言えません」
「クライアントからの依頼は年内に、ということでしたよね?
余り残り時間も超多いとは言えませんが」
「もォ一度情報を精査して、少しでも可能性の高いところを片っ端から当たってみよォじゃねェか。
時間がないからと言って、雑な仕事をして嗅ぎつけられ逃げられたってンじゃ話になンねェし」
プリントアウトした施設の情報をテーブルの上にぶちまけ、順番に検討していこうとした時、部屋に可愛らしい音楽が流れた。
番外個体が慌てたように、ポケットから携帯電話を取り出す。
「邪魔だから音は消しとけって言っただろ」
「マナーモードにするのを忘れてたんだよ。……あ、お姉様からだ」
画面を見てどうしようかと番外個体が一同を見まわし、土御門が肩をすくめる。
「俺たちの事には触れず、声も聞こえないところでなら出てもいいぞ」
「りょーかい」
番外個体は身を沈めていたソファから立ち上がり、部屋の隅へと移動した。
「もしもし、お姉様? どーしたのー? 遊びのお誘い?」
『ワースト、ちょっと聞きたいことがあるんだけど』
学生たちももうすぐ冬休みに入り、浮かれて遊びの予定を立て始めるころだ。
姉もそうした手合いで、てっきりどこかへ遊びのお誘いのために電話をかけてきたと思ったのだが、どうも様子がおかしい。
急いたような声がいやに真面目と言うか、シリアスモードだ。
「……何かあったの?」
『ええ、ちょっとね。
"第三次製造計画"についての調査は進んでる?』
「うーん、あんまり……。
いくつか情報は出てきたけど、あの人がお姉様に話しただろう内容からは大きな進展はないよ」
『そっか……』
美琴の声に落胆の色が混じった。
実際は『第三次製造計画』が進められている根拠地の特定が着々と進んでいるのだが、それを話してもいいのかどうか番外個体には判断ができない。
悩む番外個体に、美琴が核心を切りだした。
『出てきた情報の中に、"リプロデュース"って単語は出てきた?』
「……ううん、ないなぁ。初耳だよ。その単語は、何を意味しているの」
『……実はね、私の知り合いの研究者の人が誰かに襲われて、酷い大怪我をしたの。
それで、その襲撃犯が……私にそっくりだったらしいの』
美琴の言葉に、番外個体は目を見開いた。
『その研究者さんが気を失う寸前に、犯人が名乗ったんだって。
"第三次製造計画"の先行試作体、"リプロデュース"って」
「……『第三次製造計画』の、『リプロデュース』」
前半はともかく、後半の単語は番外個体の知る限りは単なる英単語以上の意味は持たないはずだ。
しかし、番外個体は『第三次』とはいえ持っている情報は極めて限定されている。
彼女の知らないところで、『第三次』に関して何か別のプロジェクトが動いているのかもしれない。
研究者の襲撃。『リプロデュース』を差し向けた黒幕の怨恨か、あるいは技術奪取など何か別の目的があったのか。
それを判断するには、現状ではあまりに情報が少なすぎる。
『……もし、悪人の私利私欲のために『第三次製造計画』の子たちが利用されているのなら、私はそれをなんとかしたいの』
焦りが透けて見えるような美琴の声に、番外個体も力になれず申し訳なく感じた。
「…………ごめんね、ミサカたちも頑張ってはいるんだけど……」
『ううん、気にしないで。こっちもちょっと探りを入れてみるからさ。
何か分かったら、私にも教えてね』
そのまま通話を切ろうする気配を感じ、番外個体は慌てて引き留める。
「ミサカからもちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
『なぁに?』
「『地下』『縦穴』『水』。そのキーワードから連想するものって何?」
今『グループ』が頭を悩ませている問題だ。
問題がにっちもさっちも行かなくなった時は、たいてい思考がごちゃごちゃと絡み合い、自分でわけが分からなくなってしまっていることが多い。
案外、第三者に条件だけを提示して先入観なしで考えてもらった答えの方が的を射ていることもある。
『……何に関係するの?』
「いいからいいから。余計な情報なしで考えてよ」
『うーん、急にそう言われてもなー』
電話越しに美琴はしばらく考え込んでいるようだったが、
『…………セノーテ、とか?』
「……なんでユカタン半島の水没鍾乳洞?」
番外個体の期待する答えとは180度逆の答えに、少しだけ脱力をする。
そういうのはマジュツだのなんだのとオカルト臭みなぎる技術の領分ではないだろうか。
『夕べドキュメンタリーでやってたのよ』
「お嬢様学校ってテレビ禁止なイメージだけど」
『部屋にテレビがなくたって、PDAにチューナーぶっ刺せば見られるじゃない。携帯にだってくっついてるし』
「はぁ」
お嬢様学校として名高い常盤台中学校生徒の知られざる実態に、番外個体は呆れ声を出した。
「ミサカの携帯電話、テレビ機能ないんだよねぇ。
……じゃあさ、『人工物』って条件を付け加えて考えて?」
番外個体の言葉に美琴は再び考え込み、しばし沈黙が流れる。
『……井戸』
「ちょっと違うかなぁ。もっと大きいの」
『地下、縦穴、水、人工物、大きい…………ねぇ』
「なんかこうレベル5の閃きとか叡智とか第六感とかでズババン!! と思いつかない?」
『そんなので簡単に思いついたら苦労はしないわよ。
……そうねぇ、じゃあ緊急放水路とかは? 災害防止用のヤツ』
「放水路? 人工的な川か何か?」
『違う違う。大きな縦穴で、底に大きな貯水槽があるのかなぁ。
大雨とかで水害が発生しそうな時に、余分な水をそこに流し込んで洪水を未然に防ぐの。
東京に大きなヤツがあるし、確か学園都市にも第二十一学区あたりにあったような……』
番外個体の脳裏に浮かんだのは、もの凄く大きなマンホールだ。
コンクリートに固められた巨大な縦穴の底に、大きな地下水路でも存在するのだろうか。
第二十一学区は水源地帯だ。
水害が発生するとしたら、大きな河川やダムを抱えるこの学区から真っ先に発生するだろう。
そして、目下のところ『第三次製造計画』の本拠地があるのではないだろうかと疑われている場所でもある。
『東京にあるのは深さ50mくらいだけど、学園都市のは地下開発の関係で200mくらい深いところにあったはずよ。
あんたの挙げた条件だと、最大限に満たしてるのはここじゃないかなぁ。
……ところでさ、これがどうかしたの?』
「それはちゃんと調べてから話すよ。ありがとね」
番外個体は電話を切ろうとして、その前に一つだけ気になったことを尋ねた。
「ねぇお姉様。『リプロデュース』だかに襲われた研究者の人って、何て人?」
『名前? ……木山春生さんって名前だけど、知ってるかしら』
「うーん、ミサカの記憶にはないや。
……じゃあねお姉様」
じゃあね、と美琴が返答したのを確認してから、番外個体は通話を切った。
「──何だったンだ?」
ソファに戻った番外個体を、一方通行らが待っていた。
「なんだか、あんまり悠長に構えてる時間はないみたいよ?」
「……何かあったのか?」
「『第三次製造計画』の誰かが、お姉様の知り合いの研究者を襲ったんだってさ」
「何だと?」
『グループ』のメンバーに、かすかな困惑の色が漂う。
「どォ言うことだ。詳しく話せ」
「そのまんまだよ。一昨日の夜、お姉様の知り合いの研究者が襲われて銃で撃たれたの。
その犯人の顔がお姉様にそっくりで、『第三次製造計画』の……なんだったかな、『リプロデュース』って名乗ったとか」
「……『第三次製造計画』、か」
一方通行がその名を呟き、深く考え込み始める。
彼のその胸の中を、何が駆け巡っているのだろう。
守ろうとしている少女が凶事に手を染め、未だ自分は計画の尻尾をつかみ切れずに燻ったまま。
そのストレスもそろそろ限度に近付きつつある筈だ。
「しかしなんでまたそんなことを。被害者の名前は?」
「木山春生」
その名を聞いた土御門が手元のノートパソコンを操作しだす。
やがて『警備員』のネットワークから木山の事件についてのファイルをダウンロードし、その概要を読み上げ始めた。
「……被害者は木山春生、女性。職業は研究者。
昨日深夜、自らに与えられた研究室に籠って作業をしていたところを何者かに襲撃された模様。
被害は胸、腹に一発ずつ貫通銃創。凶器は不明で、壁や床に残った弾痕は丁寧にナイフかなんかで抉られている。
ただし、医師より学園都市軍で制式採用されている拳銃ではないかという指摘あり……」
「その木山って研究者、どんな研究をしていたのかしら」
「確かアレですよ。『幻想御手』を超バラまいた研究者です」
「『音楽を聞くだけで能力が向上する』ってヤツか……」
約半年前に学園都市を震撼させた『幻想御手』事件の名はいまだ記憶に新しい。
その実体はある研究者が共感覚という現象を利用して被害者の脳波を補正する音楽をばらまき、巨大な脳波ネットワークを作り上げようとしたものだ。
『幻想御手(レベルアッパー)』という名前のように、被害者のレベルを一時的に引き上げる副作用があったという。
「……つまり、『第三次製造計画』の襲撃者はその『幻想御手』を求めて木山春生を襲撃した……ということになるのでしょうか?」
「それはねェと思う。あンだけの事件を起こしたんだ。
『幻想御手』は少なくとも製作者側の周囲からは完全抹消されてンだろ。
そこらのチンピラ襲って音楽プレイヤー奪った方がまだ手に入る望みはある」
「そもそも、『幻想御手』と同じようなものをもう既に『第三次製造計画』は保有しているじゃないか。
改めて入手し直す必要はあるのか?」
土御門の指摘に、一同の顔がいっせいに番外個体のほうを向く。
集中した視線を浴びた番外個体は、きょとんと土御門の顔を見返した。
「ひょっとして、ミサカネットワークのことを言ってるの?」
「そうだ。同じ脳波ネットワークなんだ、仕組みが同じなら、出来ることも同じでも不思議じゃないだろ?」
「うーん、どうなのかなー」
土御門の意見に番外個体は難色を示す。
この場にいる人間は誰も知らないが、そもそも『幻想御手』はミサカネットワークを参考に作られたものであり、運用原理としてはほとんど同一と言ってよい。
だが、『幻想御手』とミサカネットワークでは決定的な違いがある。
「……ミサカの考えだと、ミサカネットワークを『幻想御手』として運用するのは無理だと思うよ?」
「どうしてだ?」
「だって、その『ネットワークの構成員』っていう根本的なところが違うでしょ?
『幻想御手』って、脳波を同一にしてネットワークを構成し、演算能力や『自分だけの現実』の差異を互いに補い合い、より強力なものへと拡張させる。
結果、能力強度が使用者の本来のものより格段にアップする。そんな認識で合ってるよね?」
土御門が頷き、肯定を示した。
「だけど、ミサカたちにはそもそも補い合えるだけの『自分だけの現実』の差異そのものが存在しない。
生まれてから時間が経った『第二次』の『妹達』は少しずつ自我を芽生えさせ始めているけど、最初に設定されたものからしてみれば誤差の範疇でしかない。
つまり、何人ネットワークに繋いでいようが、『自分だけの現実』はほとんど同一のままで補正し合うことはできない。
演算能力は第一位の演算補助が立証しているように融通し合えるかもしれないけど、それだけで能力は向上しないでしょ?」
「演算能力を高めるだけで能力強度が上がるなら、スパコンと繋いだヘルメット被ればみんなレベル5ってことになってしまいますしね」
「それに、仮に『ミサカネットワーク≒幻想御手』説が正しいなら、ミサカの姉妹はみんなもっとレベル高いはずだよ?
単体でレベル2~3なんだから、20000人の能力を合わせたらどうなることやら」
「でも現実には、今現存する『妹達』はあなたを除いてみんなレベル2~3。
つまり、ミサカネットワークは『幻想御手』としての機能は果たせない。『第三次』においてもそれは恐らく同じ。
故に、『第三次』が『幻想御手』を狙う理由もないということになる。……ってところかしら?」
「そゆこと」
結標の意見を首肯し、番外個体はソファに体を埋めた。
「論点がズレてンぞ。『妹達』のネットワークが『幻想御手』としての役割を果たすかどうかは問題じゃねェ。
一番重要なのは、『いかにさっさとその黒幕を潰すか』だ。
その『リプロデュース』とやらの襲撃が、一度で終わるとは限ンねェぞ」
「そうですね。ですから、まずは場所の超特定からです」
「それについても、ちょっとお姉様に尋ねてみたんだけどさ」
「……お前、まさか『超電磁砲』に情報を漏らしたのか?」
「違う違う。『縦穴』『水回り』『人工物』とかいくつかのキーワードを挙げて、何を思い浮かべるかって聞いてみたの。
先入観なしで何を思い浮かべるかって言うのが利きたかったからさ。
人の直感って意外と馬鹿に出来ないし」
「で、『超電磁砲』は何て答えたの?」
「災害防止用の緊急放水路、だってさ。第二十二学区にもでかいのがあるらしいよ?」
「放水路、ねェ」
怪しい施設のリストの中に入っていたか定かではないが、第二十二学区にそのような施設があることは一方通行も知っている。
「土御門、資料を出せ」
ほどなくして、土御門の手元にあるノートパソコンにいくつかのファイルが現れた。
片っ端から印刷しつつ、その概要を読み上げて行く。
「役所の『広域環境管理局』という部署が管理している施設の一つに、『水源地水位監視センター』という施設がある。
数年前から民間委託されていて、今は同名の法人が管理者として登録されているな」
部屋の隅に置かれたプリンターから吐き出された紙の束を結標が次々と転送し、それが卓上にばらばらと散らばる。
その中から適当に紙を取り上げ、土御門は説明を続けた。
「位置としては、第二十二学区でも一番大きなダムの真横だ。
施設内に大きな縦穴があり、ダムの水位が危険域に達した時、その縦穴から地下の巨大水槽へと排水を行う。
……だが、ここは違うかも知れんな。施設は完全に地下にあり、地上3階建ての施設で──」
「超ちょっと待って下さい」
土御門の説明を、絹旗が遮った。
「今、"地上3階建て"って言いました?」
「ああ。それがどうかしたか?」
「『書庫』の記述には、"全20層"って超書いてあるんですが」
絹旗が広げた一枚の書類に、全員の視線が集まった。
そこには確かに「全20層構造」の文字が記されている。
「……いくら学園都市と言えど、さすがに20階建を3階建てに見せかけることは無理よね」
「人間を20分の3の大きさにしたり、元の大きさに戻したりする技術が完成したのかも知れねェな。
学園都市ならやりかねねェ」
「とある青狸の秘密道具じゃないんですから。
つまりは、地上じゃなくて地下に17階層分超埋まってると言うことでしょう?」
「そうなるね」
一同で、ホームページと『書庫』の記述の両方を見比べる。
「……普通に考えりゃ、まともな施設なら地下に埋まってるもンを隠す必要はない。
テロ対策って線もねェ訳じゃねェが、だったら余所にダミーを作って本物は完全に地下に隠してしまえばイイ話だ」
「地上部分と地下部分は、実質的には別の施設なんじゃないの?
『書庫』を見られる人は限られているんだし、地上部分の施設で働いてる人は自分の足元に何が埋まってるか知らないのかもね」
「ダムの管理システムを運用するための機材と動かす人、あとはそれらを収容するハコモノさえあればいいわけだからな。
どう考えても20層もの施設は必要ない。調べてみる価値はあるだろう」
と、ここで土御門は番外個体を見る。
「どうだ、番外個体。ここがお前の『生まれ故郷』だと思うか?」
「……うーん」
問われた番外個体は眉をしかめる。
「……何とも言えない、かな。せめて地下部分の見取り図が欲しいよ。
そうしたら昔ちらりと見た見取り図を思い出せるかもしれないし。
今の段階じゃ判断はできない」
「ふむ」
答えを受け、土御門は視線を海原へと戻した。
「すると、とりあえずはお前に忍び込んでもらうことになるな、海原」
「ええ、お任せください」
海原は薄く笑う。
自分が学園都市の闇に身をやつしているのには理由がある。
例え二度と日の目を浴びることの出来ない境遇に落ちようとも守りたいと思った少女のため、海原は単身敵地へと向かう。
「──そうか。君や『妹達』も、あまり詳しくは知らないのだな」
番外個体との電話を終えた美琴は木山の病室へと戻り、知っていること全てを木山と冥土帰しに話した。
難しい顔をする木山に美琴は尋ねた。
「他に『第三次製造計画』について何か知っていることは?」
「私が知っている事は昨夜起きたことだけだし、そもそも詳しく知っていたら君を呼びつけたりはしないよ」
苦笑する木山。
その横から、冥土帰しが木山に尋ねる。
「木山さんの怪我に関することなんだけど、御坂さんに話してもいいかな?」
「構いませんよ、この件に関するのであれば」
「では失礼して。
僕は長年医者として、数多くの怪我を見てきた。
切創、裂傷、擦過傷、捻挫に骨折、火傷や凍傷、電撃傷に化学傷。
怪我には様々なタイプのものがあるが、経験を積むうちにその傷が『どんな状況で発生した』ものなのか、
人為的なものであるならば『どんな目的で負わされたか』。患部を見ただけでそれが大体分かるようになってしまった」
「はぁ」
「今回、その観点から木山さんの傷を見るとね、単なる襲撃事件とは思えなくなってくるんだよ。
木山さんの怪我は、まずお腹に一発。その後、胸に一発。お話を聞くと、殺そうと思えば確実に殺せた状況のはずなんだ。
動きの鈍った相手なんて、心臓でも頭でもその他のどこか主要臓器でも狙いたい放題なんだから。
けれど、今回の犯人はそれをすることなく立ち去った。事前に切っておいた警報装置を手動で作動させてからね」
単に木山を襲撃することそのものが目的ならば、警報装置なんて動いていないほうが良いに決まっている。
犯行から発覚までの時間が長ければ長いほど逃亡に使える時間は多くなり、また仕留めそこなっていたとしても木山が死ぬ確率は高くなる。
わざわざ捕まりやすくなるメリットを増やしてまで警報装置を再び動かす理由が見つからない。
(694)
「二発の貫通銃創と言うのは確かに致命傷になり得るものだけど、それは撃たれた場所によるんだ。
通常口径や弾丸で手足を撃ったところで即命には関わらないだろう? 放っておけば失血死する可能性はあるけれどね。
お腹や胸を撃たれて死に至る場合、銃創が臓器や大きな血管を傷つけることで臓器不全や出血性ショックを起こし、死に至るケースが多い。
これは、逆に言えば『内臓や血管を傷つけなければ命に関わる可能性は低い』と言うことも出来るんだ。
もちろん、まったく死に至るリスクがないというわけではないけどね?」
「私の怪我もそうだった、と?」
「うん。内臓と血管の間を綺麗にすり抜けるように、銃創が貫通していたよ。
人間の体の大きさや形には個体差があるけれど、内臓の位置関係は大体同じだからね。
人体構造に対する適切な知識と、銃弾を狙ったところに正確に通すほどの腕前があれば、やってやれないことはないだろうね」
つまり、木山を襲撃した犯人は「木山を殺さないように」銃撃した、ということになる。
産業スパイ対策の為に学園都市の研究所の警備レベルはどこも極めて高い。
そんな高度な警備を掻い潜り、個人の研究室にまで忍び込み、しかし殺害目的ではない襲撃を行う。
その理由は、一体何だと言うのだろうか。
「……何か別の目的があって、木山せんせいの生死そのものは問題ではなかった……?」
「それもちょっと違うね。今回のケースは明らかに死なないように撃っているとしか思えない。
僕は『死なない程度に木山さんを傷つける理由』があったのではないかと思っている。
……木山さん本人への恨みではなく、例えばほかの誰かへの警告や見せしめ目的とかね?」
「……っ、一体誰が……!」
本人ではなく他の誰かへの怨恨などに巻き込まれたというのなら、これほど理不尽なことはない。
誰かを殺したいほど憎むという感情は理解できる。美琴だって一方通行への恨みや憎しみを決して忘れたわけではない。
しかし、復讐を美化するわけではないが、それでもある人物への恨みはその人物に直接返すのが筋ではないのか。
自身の復讐のために関係のない人間を巻き込むというのは理解できない。
「……とりあえず、今僕が知っていることや、それから推測できることはこれくらいだね。
あとは警備員さんたちの捜査の進展を待たなければならないかな」
「これから君は、『リプロデュース』という子のことについて調べるつもりかい?」
「そうですね。その子が誰か悪い人間に従わされているなら、私は助けてあげたい。
……万が一、自分の意志で木山せんせいを襲ったのだとしたら、私はその子を止めてあげないといけないと思うんです」
私は『姉』だから、という美琴の言葉に木山は深くうなずいた。
「私に出来ることがあれば、何でも言ってほしい。力の及ぶ限り協力をしよう」
「ありがとう、木山せんせい、お医者さん」
病院を後にした美琴は、この後どうしようか一瞬悩む。
日はもう暮れ始め門限までの時間は差し迫っており、破れば当然寮監によるきついお仕置きが待っている。
だが、美琴は敢えて寮とは別の方向へ足を向ける。
アテがあるわけではない。だが、じっとしているよりはマシだろう。
『妹達』が再び悪人に利用されているかも知れないという状況は気分のいいものではないし、本当にそうなのかもわからない。
『リプロデュース』が番外個体のように明確な自我を与えられているのならば、自発的に襲撃事件を起こした可能性だって否定できないのだ。
もしそうだとしたら、例え殴ってでもそれを止めさせるのが自分の義務だ。
寮とは逆方向へと走り出した美琴は、いくつかの施設を頭に思い浮かべる。
『絶対能力者進化計画』がまだ健在だった頃、ついぞ潰すことのかなわなかった実験施設。
馬鹿正直にそこで今でも研究が続けられているとは思わないが、それでも何らかの手がかりがあるかもしれない。
ならば、まずはそこを調べてみよう。
美琴を見送った木山と冥土帰しは、『リプロデュース』のことは上手く避けつつ『警備員』に話をしていた。
事がうまく運んだなら、表向きこの事件はきっと迷宮入りとなるのだろう。木山にとってもそのほうが望ましい。
ようやく事情聴取が終わり警備員が帰っていくのを見届けた後、木山は冥土帰しにある話を切り出した。
「……さっきあの子に意図的に話さなかったことがあるでしょう?」
「何のことだい?」
「私を襲わせた黒幕の怨恨の対象が、あの子自身ではないかということですよ」
木山の言葉に、冥土帰しはしばらく沈黙した。
窓から望むビルの向こうの地平線に、ちょうど夕日が沈んで行くのが見えた。
「木山さんは、そのことを御坂さんに話したほうが良かったと?」
「いいえ、きっとあの子はそれをとても気に病むでしょうから。
話さなかったことは正解だと思います」
「だろうね、とても優しい子だから」
今回の被害者である木山は美琴と同じ顔で、加害者である『リプロデュース』は彼女と同じ顔だ。
『自分と同じ顔の刺客が自分の知り合いを襲撃していく』というのは、ごく一般の少女にとっては耐え難い苦痛となるだろう。
手を汚さずに怨恨の対象が苦しみ悩む姿を見るという卑劣な目的のために平気で子供たちを利用する黒幕に、木山は強い嫌悪の情を抱いた。
「話そうが話すまいがきっとあの子のやることは同じだろうし、
ならば精神に影響を与えるようなことは言わない方が良いと思ってね?」
「優しいんですね」
「あの子も、僕の患者の一人だからね」
美琴の手の怪我は完治してはいない。
きっちり痕も残さず治るまでは冥土帰しの患者なのだ。
だから、彼女に必要なものは全部揃える。
逆に、不必要なものは出来る限り遠ざける。
「子供たちを守らねばならない大人が、その子供に重荷を背負わせているというのは、なんとも歯がゆい状況ですね」
「そうだね。だけど僕らにはない力を、彼女は持っているんだよ」
『超電磁砲』。レベル5第三位にして、学園都市最強の電撃使い。
彼女と実際に対峙したことのある木山は、その底知れぬ強さを身を持って実感している。
「子供たちはただ守られるだけの存在じゃない。大人が思っている以上に強いものなんだよ。
だから、僕たち大人はいざという時のためのフェイルセーフとなってあげた方がいい場合もあるのさ」
学園都市、いや世界最高峰の名医として『冥土帰し』の名を拝する男は、自分に何ができて何ができないかをきっちり理解している。
自分の領域の外に躊躇なく突っ込んで行けるのは子供の特権だ。だからこそ、自らの領域では最高の働きを。
窓の外のすっかり群青色に染まった学園都市を眺めながら、冥土帰しは小さく呟いた。
「……死なない程度に頑張っておいで。怪我で済むうちはそれがどんなものであろうと綺麗に治してあげる」
それが、彼の『医者』としての職務であり、矜持でもあるのだから。
今日はここまでです
お腹に風穴が空いてるのに木山先生が元気?冥土帰しなら……なんとかしてくれる……!
最近間が空きに空きすぎていて本当に申し訳ない
速度を取り戻せるよう、少しずつリハビリしていきます
それではまた次回
お腹に風穴が空いてるのに木山先生が元気?冥土帰しなら……なんとかしてくれる……!
最近間が空きに空きすぎていて本当に申し訳ない
速度を取り戻せるよう、少しずつリハビリしていきます
それではまた次回
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