元スレ勇者「はじめからから始まるまで」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ○
51 = 1 :
勇者「な、なんだ? よく見るとみんな装備がバラバラ……」
勇者D「俺の主力武器は『ドラゴンキラー』だ。オロチを倒せる武器だったのにな」
勇者C「俺は『炎のブーメラン』。投げる武器って流行らなかったんだな……強いのに……」
勇者B「『はがねのつるぎ』。前の武器から大躍進したのに、上には上があったんだな」
勇者A「見れば分かるだろ。これがその前の武器、『ひのきのぼう』だよっ!」
勇者「……防具も、武器に比例してどんどん格式が高くなっていってる」
勇者「こ、これはつまり……」
勇者D「もうすぐ答えが出そうだな」
勇者「……お前は確か、さっきオロチを倒せなかったって……」
勇者D「そうだ」
勇者「倒せなかったってことはつまり……」
勇者「ぜ、全滅したのか?」
勇者D「ああ。そうだ」
勇者「……俺も魔王との戦いで全滅した。って、てことは待て、これはつまり」
勇者「それまでの冒険で全滅してしまった、過去の『俺』の集まりってことか!?」
52 = 24 :
ほう
53 = 1 :
勇者E「さすがは最後に来た『俺』。かしこさも高まってるな」
勇者「そ……そうなのか? 本当にそうだというのか!?」
勇者F「正解だ。それはいい。それより確かめたい」
勇者「!?」
勇者F「お前は側近を倒し、魔王との戦いで敗れた、ということで間違いないな」
勇者「……」
勇者「ああ……そうだ」
勇者「俺は……作戦をうまく組み立てられなかった」
勇者「戦士が倒れ……魔法使いが倒れ……そして、賢者が俺を庇って……」
勇者F「!」
勇者「俺は……もう何も考えられなくなって……」
勇者F「馬鹿が!!」 ボゴッ
勇者「がっ!?」 ズシャッ
勇者F「どうしてすぐに賢者を生き返らせなかったんだよ!」
勇者F「なんであと一歩だったのに、なんでそこでしくじるんだよ!!」
54 = 1 :
勇者B「おいよせ!」
勇者C「八つ当たりはやめろ!」
勇者F「放せよ! 俺はこいつに言いたいことが山ほどあんだよ! 放せって!!」
勇者「お」
勇者「お前だって全滅したってことだろ!?」
勇者「みんなを守れなかったのは、お前だって同じってことだろうが!」
勇者F「そうだよ! 俺は側近の奴にやられたんだよ!」
勇者F「でもお前はそこを乗り越えたんだろ!? 最後の戦いに臨めたんだろ!?」
勇者F「じゃあ、あと一息で全部終わってたじゃねえか!」
勇者「ぐっ……」
勇者F「なのにこんな所にのこのこ来やがって! なんで……なんでお前は……」
勇者F「……『俺』は……」
勇者「くそっ」
勇者「無念なのは、俺だって同じなんだよ……」
55 = 1 :
勇者E「なあ。参考までに聞きたいんだが」
勇者「……何だよ」
勇者E「次にもし、再び魔王と戦えるチャンスがあったとして」
勇者E「お前はそれに勝てると思うか?」
勇者「勝てる。絶対に勝てる!」
勇者「攻撃パターンは熟知している。俺の防具や、仲間の装備も変えるつもりだ」
勇者「絶対に負けない。もう一度チャンスがあるなら、絶対に討ち果たしてみせる」
勇者E「……そうか」
勇者E「それなら、ここに来る『俺』は、お前で最後なのかもしれないな」
勇者「え?」
勇者E「順番なんだ。俺は、最果ての塔の将軍に敗れた」
勇者E「そしてここにたどり着いて、同じ事を思った。次は絶対に負けないと」
勇者E「で、俺の後にここに漂着したのが、その将軍を破った『別の俺』だ」
勇者E「しかしその『俺』は、側近とやらにやられたという。それで最後に来たお前は」
勇者「側近までを撃破したが、魔王にやられてしまったってわけか……」
56 :
いちいちボスで毎回全滅してるプレイヤー下手糞だな
57 = 1 :
勇者「ちょ、ちょっと待てよ。まだ俺たちが『俺』だと断定できないことがある」
勇者E「なんだ?」
勇者「記憶だよ。俺達は姿かたちは似ていても、辿ってきた旅路は違うかもしれないじゃないか」
勇者「まるきり同じ大きなイベントを経てきたとしても、それまでの経緯が違ったら」
勇者「それはもう俺以外の『俺』ってことになるんじゃないか?」
勇者A「何だかごちゃごちゃしてきたな」
勇者B「俺ら序盤中盤で退場した『俺』は、まだかしこさが足りてないんだよね」
勇者E「それは簡単に確認する方法があるぞ、『最後の俺』よ」
勇者「どうやって?」
勇者E「俺の最初のパーティーは僧侶・戦士・魔法使いだった」
勇者D「俺もだ」
勇者C「俺も。ていうかすでに一度確認してて、皆そうだったんだよな」
勇者「じゃあ少し違うじゃないか。だって僧侶は――」
勇者E「最初のパーティーって言っただろ? 途中の『神殿』で、僧侶は賢者に転職したんだ」
勇者「!!」
58 = 41 :
ヒノキの棒wwwどこまで行けたんだ
59 = 1 :
勇者D「ちなみに賢者姿の僧侶を拝めた記憶は、俺のときからね」
勇者C「もうその話はやめろよ。俺たちは見られなかったんだから」
勇者B「な、なあ。あの僧侶が、本当にミニスカートなんか穿いてたのか?」
勇者A「だ、だからお前ら僧侶僧侶って呼び捨てにして、馴れ馴れしいだろ」
勇者「お前ら3人は、僧侶が賢者になったことを知らなかったのか?」
勇者B「うるせぇー!」
勇者E「なんなら、もっと確かめてやろうか?」
勇者E「お前さ。ルイーダの酒場で、なんで最初に僧侶って職の女の子を頼んだんだ?」
勇者「え……そ、そりゃあ……」
勇者「さ、酒場の男が言ってたんだよ。最初のパーティーは戦・僧・魔がいいって」
勇者E「そう、戦・僧・魔だ。で、何で戦士じゃなくて僧侶から選んだんだ?」
勇者「え! そ、そんな、順番なんてどうでも……」
勇者D「前々から女僧侶の服装が好みだったからだろ? 旅立つ前から決めてたんだろ?」
勇者「!? ち、ちが……」
勇者A「お前らもうやめろよ! 僧侶さんをそういう目で見るのはやめろよ!!」
60 = 1 :
勇者D「僧侶さんねぇ」
勇者C「最低レベルの『俺』は、いつまで経ってもウブだなぁ」
勇者A「うるさい!」
勇者D「あとおっぱい見てたもんな。紹介されて初めて出会ったときにさ」
勇者A「見てない!」
勇者D「いいや見てた。俺が言うんだから間違いない」
勇者A「うあああああ!!」
勇者「……馬鹿な……」
勇者「本当に記憶を共有してるのか? これは一体どういう仕組みなんだ……」
勇者E「……仮説の域を出ないが、現時点での俺の考えはこうだ」
勇者E「一度全滅してしまうと、その瞬間、なぜか別の『俺』が生まれる」
勇者E「そいつは、直前に全滅してしまった『俺』の記憶をそっくり受け継いでいるんだ」
勇者E「ただしたった一つ、『全滅した当時』の記憶だけは取り除かれている」
勇者E「全滅したってことは、この空間に来てしまう訳だからな」
勇者E「よく分からないが、その記憶があったらおかしいことになるんだろう」
62 = 1 :
勇者「じゃ、じゃあ『俺』は、全滅のたびに何度も蘇ってるってことになるのか……?」
勇者「いやでも待て! 俺は死んだ記憶ならあるぞ!」
勇者「復活呪文や世界樹の葉、もしくは教会に寄付金払って、死の淵から蘇ったんだ!」
勇者E「それは仲間が一人でも生きていた場合の話だろ?」
勇者「か、関係ないのか?」
勇者E「そりゃそうだ。たとえ勇者が一人死んだとしても」
勇者E「はたまたもう二人までなら死んでも、まだ取り返しはつく」
勇者E「ただし『全滅』してしまったなら、もう打つ手がない」
勇者E「生き返らせてくれる者もいないし、勇者の死を伝える人間もいない」
勇者E「そこで詰みだ。その世界では、もう誰も魔王を倒せない」
勇者「……本来なら、か」
勇者F「とにかく俺たちはさ」
勇者F「絶対に『全滅』だけはしてはいけなかったんだ」
勇者F「言われるまでもないって思うだろ? 好きで全滅する勇者なんかいないもんな」
勇者F「でもよ……こんな、こんなとこに連れてこられてさ。延々と後悔しなきゃならないなんてな……」
63 = 1 :
勇者「……じゃあ結局、魔王を倒すって目的のために、俺たちは生まれ続けているわけか」
勇者「記憶を受け継ぎながら……世代を変えながら、冒険していたってことなのか」
勇者E「あくまで俺の仮説だ。もっとも装備といい記憶といい、根拠は揃ってるけどな」
勇者「……」
勇者C「なあ、そういえばさ。全滅してしまったら、仲間はどうなるんだ?」
勇者「!」
勇者C「だって勇者のパーティーだったってことは」
勇者C「少なからず『俺』って存在に干渉してるんだろ? 僧侶ちゃんはどうなるんだ?」
勇者C「ちょっと抜けてるけど憎めなくて、いつも身体張って前線に立ってくれた戦士や」
勇者C「ツンツンしてて口は悪いけど、いつも窮地を救ってくれた参謀役の魔法使いちゃんは」
勇者C「一体どうなるっていうんだよ?」
勇者E「……それは……この世界にいない以上は」
勇者E「全滅自体がなかったことになって、勇者の再スタートと同時に巻き戻されてるとか……」
勇者F「まだいないと決まったわけじゃないだろ! きっとどこか」
勇者F「この世界のどこかに……いるはずなんだ……」
64 = 1 :
勇者A「分からねえよ。この世界のことなんて」
勇者「!」
勇者A「かつての仲間なんて贅沢は言わねえ、もう魔物でも魔王でもいいんだ」
勇者A「いい加減に、自分と同じ顔した落ち武者以外の何かに会いたいぜ」
勇者D「落ち武者とは言ってくれるじゃないか、低レベルのヒヨコさんよ」
勇者A「この世界じゃ俺が一番センパイなはずだろ!」
勇者B「まぁ俺と初めて会った時のお前は、俺よりも狂喜乱舞してたもんな」
勇者A「余計なことは言うなよ!」
勇者「なぁ、ひのきの棒の『俺』」
勇者A「その呼び方やめろ!」
勇者「お前は一体どのくらいの間、この世界でさまよってたんだ?」
勇者A「……分からない……半年か、あるいは10年くらいか」
勇者「じゅっ!?」
勇者A「ここには日の出も日没もない上に、空腹も眠気も湧きゃあしない」
勇者A「時間の感覚なんか、とっくに取り上げられちまったよ……」
66 = 1 :
勇者A「じゃあ逆に俺からお前に聞きたいんだけど」
勇者A「世界に厄災を振りまいたっていう『魔王』ってのは、どんな成りをしていたんだ?」
勇者F「そうだ。俺もそれが聞きたかった」
勇者「え? ええっと……まず、導師系の外見の割に、馬鹿みたいにデカいんだよ」
勇者D「デカいってどのくらいだ? オロチよりデカいのか?」
勇者「いや、あそこまで大きくはないけど、動きが段違いに素早いんだ」
勇者「だから次に戦うときは、仲間ではなく俺自身に『ほしふるうでわ』を装備して翻弄するつもりだ」
勇者B「次があればな。って何だその腕輪は」
勇者E「すばやさが倍になる装飾品だよ。お前らには何回も見せただろ」
勇者F「これのことだ」スッ
勇者「! そう、それだ。しれっと装備してたのか」
勇者C「いつ見てもかっこいいデザインだな」
勇者F「だがこれは賢者に装備すべきだった。側近戦では、先制補助・回復を安定させるべきだった」
勇者「そうだ、それで俺は側近戦を乗り切ったんだ」
勇者F「……待て。お前の装備……ちょっとよく見せてみろ!」
67 = 1 :
勇者「な、なんだよ急に」
勇者F「ドラゴンメイルにドラゴンシールド……?」
勇者「ああ。炎対策型の装備だ。魔王城にはドラゴン系モンスターも多かったからな」
勇者「そして側近も炎の使い手だった。たまたま装備の相性が良かったな」
勇者F「たまたまじゃない!!」
勇者「!?」
勇者F「その装備は俺が理想と考えてた、リベンジ用の一式じゃねえか!」
勇者「えっ?」
勇者E「何、どういうこと?」
勇者D「ま、待て。そういえばオロチを突破したお前らは、全員同じ装備じゃなかったか?」
勇者B「ああ、そんな話もあったな。洞窟の主も同じだったろ?」
勇者C「近海の主を倒したときもだ。それもやっぱり、当時の理想系の装備でだ!」
勇者A「えー、だから、ってことは?」
勇者「……全員が同じ対策をもってして、躓いてきたボス達を乗り越えてきた……つまり」
勇者「全滅した当時の記憶は失われているのに、戦った経験は残っていた……?」
68 :
ペース早いな
69 = 41 :
旅の経験が引き継がれるならおかしくないんじゃないの
70 = 1 :
勇者C「ますます訳がわかんねえな」
勇者E「過去の自分の身体が、未来のボス戦を憶えていたっていうのか?」
勇者A「いったんそこで止まれ。そろそろオツムがおっつかなくなってきた」
勇者D「まぁ結論が分かったところで、今の俺たちにはどうしようもないしな」
勇者B「そうだそうだ。この何もない無限の荒野を見ろ。まさに不毛な議論だぜ」
勇者C「もっとうまいこと言えよ」
勇者F「話を戻すが」
勇者F「魔王はその炎対策の装備だと、倒せなかったんだよな」
勇者「ああ。魔王はヒャド系の呪文や、吹雪系のブレスも使ってきたからな」
勇者F「氷か……。一度側近戦を終えた後、また装備を改める必要があるな」
勇者A「お前、もしかしてまだ帰るつもりでいるのか?」
勇者F「当たり前だ。必ず帰って、魔王を倒しきるんだ」
勇者「俺だってそうさ。帰れるものなら帰って、真の平和を取り戻したい」
勇者D「でもさ。二人が一緒に同じ世界に帰っちゃったらどうなるんだ? まずいんじゃないのか」
勇者「それは……。……わからない……」
72 :
次に来る勇者は「隠しダンジョンのボスに負けた」勇者だな
73 = 68 :
寝たらさるりそう
74 = 41 :
ほ
76 :
>>12
よく見たらこの洞窟の主ガイルじゃねーかwwwwwwww
77 = 41 :
ほ
78 = 1 :
ちょっと待って
PC重くなったから再起動したらjaneのログが全部吹っ飛んでしまった
79 = 2 :
何のログだよ
80 :
勇者ばっかりやな
81 = 41 :
ほ
82 = 1 :
勇者「……ところで今更なんだが、最初から気になってることがある」
勇者E「なんだ。話せるネタはどんどん話せ。俺たちは退屈しのぎに飢えている」
勇者「これまでこの集団は、俺が合流したときからずっと話し込んできたけど」
ザッ ザザッ ザッ ザッ ザザッ ザザッ
勇者「足はほとんど止めてないよな。いったいどこに向かっているんだ?」
勇者E「分かんねえよ」
勇者「えっ?」
勇者E「最初に進んでいた方角を、ただひたすら目指してる」
勇者「な、なんで? ただ無意味に歩いてるだけ? おいひのきの棒の『俺』!」
勇者A「うるさいな。分からねえっつってんだろ」
勇者A「一番最初に足を運んだ方向に、ずっとまっすぐ進んでいるだけだよ」
勇者A「もし遠くに何かあるなら、ふらふら横道それるよりは最短ルートだろ」
勇者「だってお前……10年間だろ……?」
勇者A「半年かもしれないって。ま、どちらにせよ今までまるっきり収穫なしだけどな!」
83 = 1 :
勇者「んな馬鹿な……延々と同じ景色の中を練り歩くだけの旅路かよ……」
勇者E「ホントにお前、よく精神崩壊しなかったよな」
勇者A「前も言っただろ? 不可能なんだよ。気が狂うなんてことは」
勇者A「それどころか、自殺も数え切れないくらい試したもんだぜ」
勇者B「俺もそれ手伝ったな。あん時は『来世で会おう』とかカッコつけまくったな」
勇者「や、やっぱり死ねないのか?」
勇者C「死ねない」
勇者D「死ねなかったな」
勇者E「持ってる武器を結集しても死ねなかった。剣の刃がうまく通らないんだ」
勇者C「けど何故か痛みは残ってるもんだから、ホントに痛いだけなんだ」
勇者B「結構えげつないこともやったけど、結果はなーんにも変わらなかったぞ」
勇者「そんな……」
勇者F「俺達はここに、心身もろとも完全に閉じ込められてるんだよ。くそっ」
勇者A「ま、そんなわけだから、残った脱出手段として――」
勇者「終わりの見えない旅を続けてるってことか……」
84 = 1 :
勇者E「あながちアテのない放浪でもないさ。すがる根拠はある」
勇者「えっ?」
勇者E「お前、初めてここに来た時、どっちに進もうと思った?」
勇者「……さぁ。いま進んでいる方向に近いのかな……」
勇者B「やっぱりか。実は俺たち全員、最初は自然にこっちの方角に足を向けてるんだ」
勇者「!」
勇者D「まぁ漂着した座標はズレてるけど、結局は合流するような経路を辿ってるんだよね」
勇者C「別に吸い寄せられてる感覚なんかはないんだけどな」
勇者「ど、どういうことなんだよ。適当に歩いたら、奇跡的にみんな重なったってことか?」
勇者A「まあ奇跡的だな。最初はほんとにどっちに進んでも良かったんだ」
勇者E「その前に合流するってのも奇跡だ。多分、スタート地点は集団の近くに落とされてる」
勇者「落とされている……? 誰に……」
勇者E「ま、何にせよ」
勇者E「同じことが5回以上も続いたら、さすがに偶然じゃ片付かないさ」
勇者F「この先には『何か』があるんだよ。俺たちを導き、引き寄せる『何か』が……」
85 = 56 :
5億年ボタンかよ
86 = 1 :
勇者「な、何かあるなら急がないと……いや」
勇者「急いで到着してるなら、もうとっくにゴールしてるはずだもんな」
勇者E「おお! お前は、俺よりひとつ先の『俺』とは違うな」
勇者F「俺のことかよ」
勇者D「お前は急げ急げってずっと皆を急きたててたもんな」
勇者A「おかげで恒例のランニング大会が、第448回までカウントされちまったぜ」
勇者「そんなにやってたのか」
勇者A「そんくらいじゃないの」
勇者D「賢さ最低値の言葉は真に受けるな」
勇者A「なんだとこら!」
勇者B「じゃあ新人の歓迎祝いにいっちょやってみるか」
勇者C「えっやるの」
勇者F「やるぞ」
勇者「え? なに?」
勇者B「じゃあいくぞ。よーいドン!」
87 = 1 :
――
勇者「……で。ゴールは?」
勇者F「決まってない。誰かがはぐれかけたら終わりだ」
勇者E「まぁ順当にこの3人がトップ3になるよな」
勇者D「……ハァ……ハァ……」
勇者C「……ま、待ってくれぇ……」
勇者B「おーい終わりだー走るの終わりー」
勇者「体力に差が開くな。レベルは全滅した当時と変わってないのか」
勇者F「ああ。ここでは何をどうしたって自分の能力値が変わることはない」
勇者E「一度『俺』同士で特訓みたいなこともしたが、まぁ意味は無かったな」
勇者「成長もできないのか……」
勇者D「……ハァ……ハァ……やっと追いついた……」
勇者E「おつかれ。あれ? そういえば最初の『俺』はどこいった?」
勇者D「え? ああ、多分あの豆つぶ……」
88 = 1 :
――
ザッ ザッ ザッ ザザッ ザッ ザッ
勇者E「……ところでさ。最後に来た『俺』」
勇者「俺か? なんだ」
勇者E「お前、戦士と魔法使いのこと、どう思う?」
勇者「えっ!?」
勇者C「その話題ももう100回以上やったけどな」
勇者E「まぁ昔話は何度やってもいいもんさ。で、どうなんだ?」
勇者「うーん……やっぱり俺の見立てでは……両思いだったんじゃないか?」
勇者E「だよなぁ!」
勇者B「うそでー。あの不器っちょな戦士と、いつもツンツン魔法使いがー?」
勇者C「全然そんな風には見えなかったけどなぁ」
勇者D「俺の時点では、二人とも怪しい仕草は見せてたけどな」
勇者E「あの時だろ。戦士がトロールの一撃を庇った時」
勇者「そうそう。あの後の魔法使いの『バカ』の一言で気付いてしまったな」
89 = 1 :
勇者A「……あのパーティーのメンバーがそんなことになるなんて……」
勇者D「まぁ長く一緒にいれば、そんだけ絆も深まるさ」
勇者「ああ。最終決戦前なんか、あの二人だけの時間も結構多かったしな」
勇者C「詳しく聞かせてもらおうか」
勇者「無粋なことはしない主義だよ」
勇者B「さすが『俺』。おい、『俺』も見習えよ」
勇者C「そろそろ『俺』がゲシュタルト崩壊してきた。ってセリフも何回目だろうか」
勇者E「でだ。本題に入るが」
勇者F「やめろ」
勇者E「聞きたくないなら離れておけよ」
勇者「なんだ? 賢者絡みか?」
勇者E「そうだよ。賢者のこと、どう思う?」
勇者「そりゃ」
勇者「お前らも分かってるはずだろ」
勇者「好きだよ。賢者のことは」
90 = 1 :
勇者B「お……おお。さすが経験を積んだ『俺』は違うな」
勇者C「貫禄あるよな」
勇者A「やめろ! 恥ずかしい! わー」ダダダダダ
勇者D「……そうかぁ」
勇者D「やっぱり、『好き』だったんだよな。俺は気付けず終いだったなぁ」
勇者「……付け加えておくと、賢者の方も、俺を好きだったと思う」
勇者E「……そこまでうまい話になってたか?」
勇者「ああ。多分、なってた」
勇者E「……そっか」
勇者E「そりゃあ」
勇者E「もったいなかったな」
勇者F「……」
勇者「……でも、きっと賢者は」
勇者「『魔王を倒した俺』が、幸せにしてくれるさ」
勇者F「違うッ!!」
91 = 1 :
勇者「!!」
勇者F「賢者を幸せにするのは、俺の役目なんだ!」
勇者F「他の誰でも、得体の知れない『俺』じゃなくて、この俺なんだよ!」
勇者E「おいまたか。落ち着けって」
勇者F「いくら『俺』が同じ存在だっていっても、ちゃんと自我がある!」
勇者F「お前らは悔しくないのか? 自分が好きになった女の子も守れず死んでしまって!」
勇者F「それでも『俺』か!? なぁ、なんでもっと焦らないんだよ!」
勇者「……お前、どうした? ……いや」
勇者「俺の冒険では、そこまで激昂するようなことは起きなかった。ということは」
勇者「何かあったんだな。側近戦で」
勇者F「……ふん! 知るか」
勇者C「お。おいちょっと待てって。あーもう自己中な『俺』だな」
勇者「……」
勇者E「何か知ってるのか? 俺は側近まで行けなかったから事情が分からん」
勇者「……さあな。そういえばあの側近の奴……まぁ、別にいいか……」
93 = 1 :
――
ザッ ザッ ザッ ザッ ザザッ ザッ ザッ
勇者「……」
勇者「ふう」
勇者「ほんとに何もないんだな。ほんとに歩くだけなんだな」
勇者A「そうだよ!」
勇者B「ついに最後の『俺』も初ギブアップか?」
勇者C「ここじゃ100回ギブアップしてやっと一人前だぜ」
勇者D「その無意味なカウントはやめろよ」
勇者「お前らもうすっかりカウント症候群だな……」
勇者「ん?」
勇者「おい」
勇者「なんだあれ」
勇者「なんか見えるぞ」
94 = 56 :
経験は引き継いでるけどそりゃあ過去の勇者しかない体験もあるのか
95 = 1 :
勇者「おい、待て! ほらあそこ! 右っかわ!!」
勇者A「はいはい」
勇者B「その手にはもう二度と乗らないもんね」
勇者C「最後の『俺』はここの初心者だから、俺らにその手のネタが通じると思ってんだよ」
勇者D「本命は冗談。対抗馬で錯覚。大穴でもう一人の『俺』ってとこだな」
勇者「違う! いる! 集団だ!」
勇者E「またまた……って……」
勇者E「え?」
勇者F「お、おい……マジだ! いる!」
勇者A「うっそ!?」
勇者D「集団!? 今までにないパターンだぞ!」
勇者C「あ、ああ、俺にも見えてきた! 確かに動いてる!」
勇者B「え、マジで!? マジかよ! 1000万歩ぶりに興奮してきた!!」
勇者F「「おお~いいい~!!」」ダダダダダダッ
勇者「お、おい! あの早とちりめ。……あの集団も、進路方向は同じみたいだな……」
96 = 41 :
>>94
次の勇者は勝っちゃうんだから負けた時の記憶はその時の勇者だけだわな
97 :
誰だろうな
98 = 1 :
――
――――
女勇者A「へえ、君たちもここに辿り着いたの?」
女勇者B「他にも、ボク達みたいに漂着した勇者がいたんだね!」
女勇者C「元の世界で冒険してた仲間だったら良かったのにな、ってのが本音。あはは」
女勇者「それにしても7人かぁ。ボク達はこの4人だけだよ」
勇者A「お、女の子……の、勇者……?」
勇者B「ど、どうもこれからよろしく」
勇者C「みんな同じ顔だけど……か、かわいい」
女勇者B「ありがと! 君たちもカッコいいよ!」
女勇者C「これから楽しくやっていこーねー!」
勇者「女勇者だけのパーティー? どうなってるんだ……」
勇者F「……」
勇者E「↑おい、いい加減元気出せよ」
99 = 1 :
勇者「お前が、一番冒険を進めていた女勇者か」
女勇者「あら。どうして分かったの?」
勇者「装備が一番充実してる」
女勇者「はは、そりゃそっか。どう? この『ひかりのドレス』」
勇者「そいつは、うちのパーティーの賢者が装備していた防具だ」
女勇者「えっ? やだなー。賢者がこんなドレス着てたら気持ち悪いよー」
勇者「それはあり得ない! ――いや。待て。賢者。そっちの賢者は」
勇者「男賢者か」
女勇者「え? 賢者っていったら男じゃないの?」
勇者「なるほど。それじゃあ残りもあべこべ、戦士は女で、魔法使いは男ってわけだ」
女勇者「え? 違うよ。後のパーティーは盗賊クンと商人ちゃんだよ」
勇者「あれ?」
勇者「話が食い違ってるな。お前はオロチを倒していないのか?」
女勇者「オロチなら倒しましたとも! 強敵だったよねっ!」
勇者「~??」
100 = 1 :
――
勇者「――話をまとめると、スタートしたパーティー構成は違うが」
勇者「冒険の進行ルートはまったく同じ。全滅してからもまったく同じ経緯で合流」
勇者「単に最初の連れ添いが違うだけか」
女勇者「ちなみにボクは、【最果ての塔】の将軍のトコで力尽きちゃったんだ」
女勇者「あの時、指示を間違えなければなぁ……」
勇者「……」
勇者「なぁ、お前は本当に女なんだな」
女勇者「そだよ。あっ、もしかしてヤラシイことして確かめる気なんでしょ!」
勇者「お、俺は無粋なことはしない主義だよ。分かった、信じる」
勇者「となると……こちらの冒険とは、別の平行世界があったということか」
女勇者「平行世界……それは、ボク以外の『ボク』たちの世界とは違うの?」
勇者「俺以外の『俺』たちの世界は、『俺』が勇者である独立した一つの世界だ」
女勇者「? 要するに、【ボク世界】と【俺世界】があるってコト?」
勇者「たぶん、そういうことだと思う」
みんなの評価 : ○
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