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元スレ美希「ミュウツー……?」
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美希「……よっ、ほっ!」
真「……ダンスレッスンをやってて、
ボクのほうが先に音を上げちゃう日が来るなんて、思わなかったよ」
春香「美希ってば、最近すごいね……何かあったのかな」
真「何か、って?」
春香「うーん、わからないけど……例えばプロデューサーさんから何か言われた、とか」
真「プロデューサー? ……ああそっか、
春香はプロデューサーのことが気になってるんだっけ」
春香「ふぉっ!? ち、ちがうったらぁ!」
ミュウツー「……」
ミュウツー(あれからミキは、確かに人並みはずれた努力をするようになった)
ミュウツー(私とのあのやり取りがきっかけであることは明白であり、
私も、ミキがそうやって努力をしてくれることは嬉しく思うが……)
ミュウツー(……あれでは、明らかなオーバーワークだ。
このままでは壊れてしまうかもしれない……)
真「……ダンスレッスンをやってて、
ボクのほうが先に音を上げちゃう日が来るなんて、思わなかったよ」
春香「美希ってば、最近すごいね……何かあったのかな」
真「何か、って?」
春香「うーん、わからないけど……例えばプロデューサーさんから何か言われた、とか」
真「プロデューサー? ……ああそっか、
春香はプロデューサーのことが気になってるんだっけ」
春香「ふぉっ!? ち、ちがうったらぁ!」
ミュウツー「……」
ミュウツー(あれからミキは、確かに人並みはずれた努力をするようになった)
ミュウツー(私とのあのやり取りがきっかけであることは明白であり、
私も、ミキがそうやって努力をしてくれることは嬉しく思うが……)
ミュウツー(……あれでは、明らかなオーバーワークだ。
このままでは壊れてしまうかもしれない……)
~765プロ事務所~
美希「……え? 明日から三日間、お休み?」
ミュウツー「……」コクン
美希「お仕事、入ってきてないの?」
『そういうわけではないけど……、ミキではない他の誰かに回すことにします。
レッスンも、この三日間はやらなくていい』
美希「な、なんで!?」
『……ミキは近頃、少々頑張りすぎている。
たまには休むことも必要ですから』
美希「そんなことないの! ミキ、まだまだやれるよ!」
『ミキ、あなたは人間だ。ポケモンセンターで休めば一瞬で回復する生き物ではないのです。
自分では大丈夫と思っても、身体には大きな負担がかかっている……』
美希「……」
ミュウツー「……」
『……プロデューサーである私を信じてください。
こうすることが、ベストなんですよ』
美希「……わかったの」
美希「……え? 明日から三日間、お休み?」
ミュウツー「……」コクン
美希「お仕事、入ってきてないの?」
『そういうわけではないけど……、ミキではない他の誰かに回すことにします。
レッスンも、この三日間はやらなくていい』
美希「な、なんで!?」
『……ミキは近頃、少々頑張りすぎている。
たまには休むことも必要ですから』
美希「そんなことないの! ミキ、まだまだやれるよ!」
『ミキ、あなたは人間だ。ポケモンセンターで休めば一瞬で回復する生き物ではないのです。
自分では大丈夫と思っても、身体には大きな負担がかかっている……』
美希「……」
ミュウツー「……」
『……プロデューサーである私を信じてください。
こうすることが、ベストなんですよ』
美希「……わかったの」
~公園~
美希「……あーあ。暇になっちゃった」
美希「せっかくミキが珍しくやる気だしたのに、プロデューサーってばひどいよね。
ね、先生もそう思うでしょ?」
カモネギ「かもー」プカプカ
美希「……」
美希(……プロデューサーとお話をして、ポケモンのことを知ってから、
ミキの目に入ってくる世界が、ちょっとだけ変わっちゃった)
美希(公園の池でプカプカ浮かんでる先生は、最近ネギをしょってる。
見た目もゼンゼン前とは違うし……もしかして先生、ポケモンになっちゃったのかな?)
美希(会いたいって思わないと、ポケモンには会えないんじゃなかったっけ?
ミキ、別に今はそういう気分でもなかったんだけどな)
美希「……ま、いっか」
美希「……あーあ。暇になっちゃった」
美希「せっかくミキが珍しくやる気だしたのに、プロデューサーってばひどいよね。
ね、先生もそう思うでしょ?」
カモネギ「かもー」プカプカ
美希「……」
美希(……プロデューサーとお話をして、ポケモンのことを知ってから、
ミキの目に入ってくる世界が、ちょっとだけ変わっちゃった)
美希(公園の池でプカプカ浮かんでる先生は、最近ネギをしょってる。
見た目もゼンゼン前とは違うし……もしかして先生、ポケモンになっちゃったのかな?)
美希(会いたいって思わないと、ポケモンには会えないんじゃなかったっけ?
ミキ、別に今はそういう気分でもなかったんだけどな)
美希「……ま、いっか」
響「おーい、オウ助~! どこいっちゃったんだぁ~!」
美希「あれ? この声って……響?」
響「あっ、美希! はいさーい!」
美希「はいさーい、なの」
……
響「美希、自分のペットのオウ助、見なかった?」
美希「オウ助?」
響「オウムのオウ助。散歩中だったんだけど、
自分が居眠りしてる間にどっかいっちゃったんだ……」
美希「あはっ! 散歩中に居眠りするなんて、実に響らしいの」
響「うぎゃー! 笑い事じゃないんだぞ!」
美希「あれ? この声って……響?」
響「あっ、美希! はいさーい!」
美希「はいさーい、なの」
……
響「美希、自分のペットのオウ助、見なかった?」
美希「オウ助?」
響「オウムのオウ助。散歩中だったんだけど、
自分が居眠りしてる間にどっかいっちゃったんだ……」
美希「あはっ! 散歩中に居眠りするなんて、実に響らしいの」
響「うぎゃー! 笑い事じゃないんだぞ!」
美希「あ、でもでも、ヘンな鳥なら、さっきバサバサって飛んでるの見たよ。
もしかしてそれじゃないかな~」
響「ヘンな鳥って……オウ助は全然ヘンじゃないぞ。普通のオウムなんだけど」
美希「んー、そうだよねぇ……」
響「……でも一応聞いておこっかな。ねぇ美希、その鳥って、どんな鳥だった?
もし白いオウムだったら、それがオウ助かもしれ……
ばさばさっ!
美希「あっ、ほら! あれ!」
ペラップ「[ピ──]」バサバサ
美希「頭が♪マークの、カラフルな鳥。
でも、白いオウムじゃないから、きっと響が探してるのとはちが──」
響「ああっ! あ、あれだよ! あれがオウ助っ!」
美希「……え?」
美希「……」
響「よーし、止まった……そこを動くなよ~……」ソローリ
ペラップ「[ピ──]」
響「捕まえたっ! ごめんね、オウ助……もうほったらかしになんてしないからな~」
美希「……ね、ねぇ響。その鳥が、オウ助だったの?」
響「うん! 自分の大切な家族だぞ!」
美希「……白いオウムって、言ってなかったっけ?」
響「え? 言ったけど……それがどうしたの?」
美希「ミキ的には、その鳥、白いのは首のまわりだけに見えるんだけど……」
響「……? あははっ、何言ってるんだよ~! 自分のことからかってるのか?」
美希「か、からかってなんてないの! でも……」
響「オウ助は、どこからどう見ても、全身真っ白の、ただのオウムじゃないか!」
美希「え……!?」
美希(……響には、その鳥が、普通に見えてる?)
美希(ミキとは、見えてるものが、ちがうの……?)
響「よーし、止まった……そこを動くなよ~……」ソローリ
ペラップ「[ピ──]」
響「捕まえたっ! ごめんね、オウ助……もうほったらかしになんてしないからな~」
美希「……ね、ねぇ響。その鳥が、オウ助だったの?」
響「うん! 自分の大切な家族だぞ!」
美希「……白いオウムって、言ってなかったっけ?」
響「え? 言ったけど……それがどうしたの?」
美希「ミキ的には、その鳥、白いのは首のまわりだけに見えるんだけど……」
響「……? あははっ、何言ってるんだよ~! 自分のことからかってるのか?」
美希「か、からかってなんてないの! でも……」
響「オウ助は、どこからどう見ても、全身真っ白の、ただのオウムじゃないか!」
美希「え……!?」
美希(……響には、その鳥が、普通に見えてる?)
美希(ミキとは、見えてるものが、ちがうの……?)
響「っていうか、♪マークなんてどこにも──って、美希?」
美希「……」テクテク
響「帰っちゃうのかー!?」
美希「……うん」
美希(……プロデューサーの言うとおり、
ミキ、ちょっと疲れちゃってるのかな)
響「そ、そっか……それじゃあ、また明日ねっ!」
美希「明日はお休みなの……ばいばい……」
美希(明日はお休み……)
美希(そ、そうだよね。せっかくお休みもらったんだから、いっぱい眠れば、
きっと普通に戻る……よね?)
美希(……きっと)
美希「……」テクテク
響「帰っちゃうのかー!?」
美希「……うん」
美希(……プロデューサーの言うとおり、
ミキ、ちょっと疲れちゃってるのかな)
響「そ、そっか……それじゃあ、また明日ねっ!」
美希「明日はお休みなの……ばいばい……」
美希(明日はお休み……)
美希(そ、そうだよね。せっかくお休みもらったんだから、いっぱい眠れば、
きっと普通に戻る……よね?)
美希(……きっと)
~翌日、765プロ事務所~
ピピピピ……
ミュウツー「……?」
ミュウツー(ミキから電話? 今日は休みだと伝えたはずだが……)
ピッ
ミュウツー「みゅー」
美希『……プロデューサー?』
ミュウツー(おっといけない。テレパシーを電話モードに切り替えて……)
ミュウツー『ミキ、どうしたんですか?』
美希『あ、あのね、ミキ、ミキ……! ああう、う』
ミュウツー『お、落ち着いてください! 一体何が……!』
美希『わかんない! でもとにかく、ヘンになっちゃったの~! 助けて~!!』
ミュウツー『っ!?』
ピピピピ……
ミュウツー「……?」
ミュウツー(ミキから電話? 今日は休みだと伝えたはずだが……)
ピッ
ミュウツー「みゅー」
美希『……プロデューサー?』
ミュウツー(おっといけない。テレパシーを電話モードに切り替えて……)
ミュウツー『ミキ、どうしたんですか?』
美希『あ、あのね、ミキ、ミキ……! ああう、う』
ミュウツー『お、落ち着いてください! 一体何が……!』
美希『わかんない! でもとにかく、ヘンになっちゃったの~! 助けて~!!』
ミュウツー『っ!?』
~公園~
ミュウツー「……!」
『……ミキっ!』
美希「プロデューサ~……」
……
ミュウツー「……」
『……動物が全部、ポケモンに見える?』
美希「うん……最初は疲れてるのかな、見間違えかなって思ったんだけど、
昨日からいくら寝ても、変わらなくて……」
『ポケモンというのは、確かなんですか?
ミキは私以外のポケモンのことを知らないはずですが……』
美希「……なんとなく、わかるの。あれは、
ミキが今まで見てきた動物とは、ゼンゼン違う生き物なんだって」
美希「今朝テレビ見たんだけど……そこに映ってた動物、
ミキが見てるのと、家族のみんなが見てるの、違かったし……」
ミュウツー(……どういうことだ?)
ミュウツー(ポケモンがミキの前に姿を現すだけならまだしも、
ミキと他の人間で、見えているものが違うなんて……)
ミュウツー「……!」
『……ミキっ!』
美希「プロデューサ~……」
……
ミュウツー「……」
『……動物が全部、ポケモンに見える?』
美希「うん……最初は疲れてるのかな、見間違えかなって思ったんだけど、
昨日からいくら寝ても、変わらなくて……」
『ポケモンというのは、確かなんですか?
ミキは私以外のポケモンのことを知らないはずですが……』
美希「……なんとなく、わかるの。あれは、
ミキが今まで見てきた動物とは、ゼンゼン違う生き物なんだって」
美希「今朝テレビ見たんだけど……そこに映ってた動物、
ミキが見てるのと、家族のみんなが見てるの、違かったし……」
ミュウツー(……どういうことだ?)
ミュウツー(ポケモンがミキの前に姿を現すだけならまだしも、
ミキと他の人間で、見えているものが違うなんて……)
ミュウツー(……私がこの世界に存在し、人々と交流できるのは、
私がかつてモンスターボールに入れられ、世界から存在を認められたから)
ミュウツー(だが、テレビ画面を通してミキの目にうつった生物は、
ボールに入れられ世界に認められたポケモンではないはず……)
ミュウツー(ミキはポケモンのことを知ったから、ミキが強く望みさえすれば、
彼女の目の前になんらかのポケモンが飛び出してくる可能性はある。
しかし、そうでないとすれば、考えられるのは──……)
美希「……プロデューサー?」
ミュウツー「……」
ミュウツー(ボールに入れられていないポケモンが、当たり前に存在する……。
そのような現象を見ることが出来るのは、ある特定の環境の下にある人間だけだ)
ミュウツー(その環境とは……)
ミュウツー(……『ポケットモンスターの世界』)
ミュウツー(……それは、本来そこにあるはずだった世界)
ミュウツー(しかしこの世界では、ポケモンの存在はフィクションだとされてしまった。
だから一部の人間の前にポケモンが姿を現すことはあっても、
それが人々にとって当たり前の存在になることは絶対にない)
ミュウツー(どうあがいても、今のこの世界はそういう風に出来てしまっている。
ポケモンの存在を知っている個人がいくら意識変革を行ったところで、
世界そのものを作り変えるなんて不可能であり、つまり……)
美希「ぷ、プロデューサー! ねぇってば!」
ミュウツー「!」
美希「どうしたの? なんかすっごく難しい顔してたけど……」
『……すみません』
ミュウツー(……要するに、こういうことだ)
ミュウツー(ミキが、この世界の住人ではなくなってきている)
ミュウツー(しかしこの世界では、ポケモンの存在はフィクションだとされてしまった。
だから一部の人間の前にポケモンが姿を現すことはあっても、
それが人々にとって当たり前の存在になることは絶対にない)
ミュウツー(どうあがいても、今のこの世界はそういう風に出来てしまっている。
ポケモンの存在を知っている個人がいくら意識変革を行ったところで、
世界そのものを作り変えるなんて不可能であり、つまり……)
美希「ぷ、プロデューサー! ねぇってば!」
ミュウツー「!」
美希「どうしたの? なんかすっごく難しい顔してたけど……」
『……すみません』
ミュウツー(……要するに、こういうことだ)
ミュウツー(ミキが、この世界の住人ではなくなってきている)
ミュウツー(アイドルという存在が大きな影響力を持ち、人々の心を支配【マスター】するこの世界。
黒井崇男はかつて、それを『アイドルマスターの世界』だと言っていた。
ミキはその、アイドルマスターの世界の住人……)
ミュウツー(しかし今、彼女の中でなんらかの変化が起こり、ポケモンが当たり前に存在する
『ポケットモンスターの世界』の住人へと、変わってきてしまっている)
ミュウツー(それは──……)
ミュウツー「……! ……!」
『……あ、ああ……なんてことだ、なんという……!』
ミュウツー(それは間違いなく、私のせいだ……!)
ミュウツー(私がミキに、ポケモンの存在を教えてしまったから……!)
ミュウツー(……黒井崇男を初めとした961プロの連中には、そのような変化は起きなかったはず。
ミキと彼らの違いがあるとすれば、それは……なんだ?)
ミュウツー(わからない……わからないわからないわからない……!
このミュウツーにも、あらゆる可能性を秘めたミュウの遺伝子を持つ私にも、
理解できないことがあるというのか!?)
ミュウツー(確かに私は、アイドルについては未だにその全貌を理解できていない。
しかしそれは、これから知っていけばいいと思っていた。
知的好奇心の赴くままに、知識を埋めていけばいいと……)
ミュウツー(だが……これ以上、私はこの件について知りたくない!
ミキの存在を根底から変えてしまった原因など知りたくない!
こんな感情を持ったのは生まれて初めてだ! 怖い……怖い怖い怖い……!)
ミュウツー(これが──恐怖……!)
ミュウツー「みゅ……! みゅう、うぅ……!」
ミュウツー(もう……イヤだ……!! 誰か、誰か私を、助けてくれ──……っ!!)
美希「……プロデューサーっ!!」
ミュウツー「っ!」
美希「ぷ、プロデューサー……!」
ミュウツー「……」
美希「……えいっ!」
ぎゅぅぅ
ミュウツー「み……?」
美希「……、ハァ、はぁ……! あ、あは……
プロデューサーって、身体、こんなに熱かったんだね」
美希「ミキ、そんなの……知らなか、った……!」
ミュウツー(……ミキの意識レベルが、著しく低下している?
今にも気絶してしまいそうに……な、なぜ?)
美希「……ほとんど、何言ってるか、ミキにはわかんなかったけど、
ハァ……っ、ずっと、聞こえてたから。プロデューサーの声……」
ミュウツー「……!」
ミュウツー(……無意識のうちに、テレパシーを飛ばしてしまっていたのか!?)
美希「そうだよ……も、もう……頭、ガンガンして……
すぐにでもお昼寝しちゃいたいって、カンジ……」
ミュウツー「……!」
『み、ミキ……あ、ああ、こんなに苦しそうに』
美希「……いいから、もうこれ以上、何も考えないで」
『しかしっ!』
美希「いいのっ! なんにもシンパイ、ないんだからぁっ!!」
『え……?』
……
美希「……プロデューサーが言っている意味はわかんなかったけど、
プロデューサーがいま、どんな気持ちでいるかは、わかったよ……」
美希「ミキのこと、たくさん考えてくれてた。
ミキのために、カナしい気持ちになってくれてた……」
美希「ぜんぶ……ぜんぶぜんぶ、ミキのために、あんなにたくさん……っ!」ジワッ
ポロポロ……
美希「あ、あはっ! もう、頭痛すぎて、涙が出てきちゃった……!」
美希「ミキ……すっごく痛かったけど、それと同じだけ、嬉しかったの。
誰かにこんなに思ってもらえたこと、今までなかったもん」
ミュウツー「……」
美希「……ねぇ、プロデューサー」
美希「なーんにも、シンパイ、ないんだからね?
ミキの世界が変わっちゃっても、ミキは消えたりしないんだから」
……
美希「えへへ……それに、プロデューサーは、とっくにもう……、ミキの世界を変えちゃってるし」
ミュウツー(……私が、ミキの世界を?)
美希「……うん。だって、前はあんなにやる気なくてダラダラしてたミキが、
今では真くんよりたくさん練習する子になったんだよ?」
美希「プロデューサーが、つらいのをガマンして、ミキにいろんな話してくれたから……。
だからミキは、もっともっとガンバろうって思った。変わろうって思った」
美希「それって、プロデューサーが今考えてたような変化より、
ずっとずっと、すごいことなんだよ……!」
美希「だから……もう、なんにも考えなくていいの」
美希「安心して……ね? プロデューサーがプロデュースしてくれる限り、
ゼッタイ、ミキはどこにもいかないから」
ミュウツー「……っ!」
ぎゅぅぅ……!
ミュウツー「み……!」ジワッ
ポロポロ……
ミュウツー(……涙を流したのも、生まれて初めてだ。
涙とは、痛みを感じたときに出るものだと思っていたが──……)
ミュウツー「みゅー……!」
美希「……前から思ってたけど、プロデューサーの声って、かわいいよね」
ミュウツー(誰かの言葉によって、その心のあたたかさを感じたときにも、
涙は出てしまうものなんだな……)
──────
────
──
美希「安心して……ね? プロデューサーがプロデュースしてくれる限り、
ゼッタイ、ミキはどこにもいかないから」
ミュウツー「……っ!」
ぎゅぅぅ……!
ミュウツー「み……!」ジワッ
ポロポロ……
ミュウツー(……涙を流したのも、生まれて初めてだ。
涙とは、痛みを感じたときに出るものだと思っていたが──……)
ミュウツー「みゅー……!」
美希「……前から思ってたけど、プロデューサーの声って、かわいいよね」
ミュウツー(誰かの言葉によって、その心のあたたかさを感じたときにも、
涙は出てしまうものなんだな……)
──────
────
──
ミュウツー(……結局、ミキが見える世界が変わってしまった原因については、わからないままだった)
ミュウツー(しかしミキは、それでもいいと言って笑ってくれた)
ミュウツー(世界が変わっても、自分の心が変わるわけじゃない。
最初は確かに驚いてしまったけど、もう慣れたからいちいち気にしない……)
ミュウツー(プロデューサーが自分の近くにいて、そのことを知ってくれているから、
だから自分はひとりじゃない、さみしくない。全然平気だよ、と……私に言ってくれた)
ミュウツー(……他者の存在によって、これほどまでに強くなる。
人間とは、人の心とは、実に興味深いものであると、私は改めてそう思った)
ミュウツー(ミキが心の安定を得るために私を求めるならば、私はそれに従うとしよう。
……いや、もしもミキが、私がそばにいることを求めなかったとしても、
間違いなく私は、自分からミキのそばに寄り添っていただろう)
ミュウツー(他でもない、私自身の心が、そうしたいと思ったからだ)
ミュウツー(……私達の間に芽生えた感情、繋がる心。ミキはそれを、絆と呼んだ)
ミュウツー(それは間違いなく、モンスターボールよりも強固な繋がりだろう……)
ミュウツー(──しかし、それと同時に、私の中にはまた新たな感情が生まれていた)
ミュウツー(それは、恐怖……。先ほどのような、『知りたくない』という恐怖ではない。
もしかしたら私はまた、自分の力を暴走させ、ミキを傷つけてしまうかもしれない……)
ミュウツー(……それが何よりも怖かったのだ)
ミュウツー「……」
『……ミキ。渡しておきたいものがある』
美希「なーに? あ、っていうかプロデューサー、もう敬語やめたんだね!」
『そ、そんなことはいいだろう。……渡したいものとは、これだ』
スッ
美希「これって……ボール? あのオジサンが持ってたやつ?」
『奴はこれをフェイクだと言ったが、どうやら機能自体は生きているようだ。
……これを、私に向かって投げて、ぶつけてくれないか?』
美希「投げるの?」
『……ああ。そうすれば私は、ミキの所有ポケモンとなる』
美希「……えっ!?」
美希「プロデューサーが、ミキのポケモンに……?」
『……今更こんなものが無くても、私はミキに逆らうことはしない。
しかし、万が一ということがある。また先ほどのように、ミキを傷つけてしまう可能性が……』
『そうなった場合、「戻れ、ミュウツー」と叫ぶだけで、
私はこのボールの中に戻っていくだろう。そうすれば──……』
美希「えーい!」
ヒューン……ポチャッ
『ええっ!!? なんで池に捨てるんだ!?』
美希「……だって、ボールの中って、暗くて寒いんでしょ?」
『いや、しかし……』
美希「大丈夫だよ、ミキはプロデューサーのことを信じてるもん。
それに、もしもさっきみたいになったって、それはそれで良い、っていうか……」モジモジ
ミュウツー「……?」
美希「……な、なんでもないの!」
ミュウツー(……やはりまだ、人間の考えることは、よくわからない。
自分が傷つくことが、怖くないのだろうか?)
美希「えへへ……それじゃあプロデューサー! 今日はこのあと、どこにおでかけする?」
『おでかけ?』
美希「だって、ミキはお休みで、暇なんだもん。ね、買い物付き合ってよ!」
『……私には、仕事があるんだが』
美希「え~。もうここまでサボっちゃったんだからいいじゃん! ねぇねぇったら──
カシュー…ン
ミュウツー「っ!?」バッ
美希「ど、どうしたの?」
『……ミキ、落ち着いて聞いて欲しい』
美希「う、うん……」
『……今、池に住んでいたカモネギが、ミキの捨てたボールの中に入り……捕まった』
美希「え!? 先生がっ!!?」
カモネギ『かもー』
美希「……ほんとに捕まっちゃってる。は、早く出してあげないと!」カチッ
ポンッ
カモネギ「くえーっ!」
美希「ああぅ……ね、ねぇ! どうしたらいいの!?」
『ニックネームでもつけたらどうだ?』
美希「ニックネーム!? あだ名なんてつけてる場合じゃないでしょ!」
『しかし、そのカモネギは、随分ミキに懐いてるようだが……』
カモネギ「かもかも」
美希「……いっぱいご飯、あげてたからかな」
……
美希「……じゃあ、君のニックネームは『せんせい』、ね」
カモネギ「くえー!」
美希「うちで飼えなかったらごめんね……」
テクテク……
カモネギ「かもっ、かもっ」テクテク
美希「……ねぇ、プロデューサー」
ミュウツー「……?」
美希「ニックネームって、ポケモンには必要なの?」
『そうだな……たとえば人間が、犬を飼ったとする。
そのときペットに向かって、「犬」なんて呼んだりしないだろう?』
美希「あー、たしかにそうだね」
……
美希「……それじゃあじゃあ、もしもさっきミキがプロデューサーにボールを投げてたら、
プロデューサーにもニックネーム、つけられたの?」
『……そういうことになるな』
美希「だったら、ちょっともったいないことしちゃったかも。
『プロデューサー』も『ミュウツー』も、可愛くないもんね」
『……もしミキが私にニックネームをつけたいのであれば、好きすればいい。
もちろん仕事中はプロデューサーと呼んでもらいたいが』
美希「えっ、ホント!?」
美希「うーん、じゃあ……そーだなぁ~……んふふ、あれもいいし、これも……」
ミュウツー「……」
『……ミキ、あまりヘンなニックネームはやめてくれ』
美希「えー、まだ何も言ってないのに……」
『ミキが考えていることは、読み取ろうと思えば読み取れるんだ。テレパシーの応用で』
美希「……へっ? え、う、うそ……でしょ?」
『嘘ではない。最初に私達が出会ったとき、
ミキは私に対し、「あまりタイプじゃないかも」と思っただろう?』
美希「……」
『タイプじゃない……つまり相性がよくないと思われ、私もつい落ち込んでしまった。
アイドルからいきなりそういう印象を持たれてしまっては、
これから先プロデューサーとして……美希?』
美希「……」ボッ
ミュウツー「……?」
美希「……ば、ばかっ! なんでそんなことするの!」
『ええっ!?』
『アイドルの考えを読み取れたほうが、
プロデュース業もスムーズにいくと思ったのだけど……』
美希「し、信じらんないのっ! あのね、ハニー、
女の子には、ヒミツにしておきたいこと、いーっぱいあるんだよ!?」
『そ、そうか。傷つけたのなら、すまなか……え、ハニー?』
美希「……もう決定! これからプロデューサーは、ハニーね!」
『……それが、私のニックネーム?』
美希「うん。もうぜーったい、ゼッタイ! やだって言っても取り消さないの!」
ミュウツー「……」
ミュウツー(ハニー……それが、私の名か)
ミュウツー(ミュウの子供という意味の『ミュウツー』ではなく……、
他のきょうだい達には誰ひとりとして与えられなかった、私だけの名……)
『……ああ、わかった。これから私は、自分のことをハニーと名乗るとしよう』
美希「あ、でも、なんかそれってちがうんじゃないかな……。
ミキが呼ぶときだけでいいよ」
ミュウツー(ハニー、ハニーか……)
ミュウツー「……みゅ」
美希「ハニー、なんか嬉しそうだね」
『……この名前は、初めて他者から与えられた、私だけの宝だから』
ミュウツー(大切にするとしよう……)
……
『……しかし、ミキ』
美希「なーに?」
『ミキの頭の中ではどうやら、「ハニー」というのは、
特別な意味を持っているらしいが、それは一体……?』
美希「……ば、ばかっ! 頭の中見るの禁止ー!」
──────
────
──
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