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    元スレ娘「セック――」 男「言わせねーよ!?」

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    201 :

    マジ天使

    202 = 41 :

    娘と結婚したい

    203 = 114 :

    >>200
    気にせずやればいいと思う

    204 = 1 :

     古い記憶。
     いや、そこまで古いわけじゃないがどこか輪郭がハッキリしない、今の俺とは関係ないようにも思える記憶。
     友から全てを奪ってしまったあの日。

     年が明けて数日。高校サッカー選手権の第二戦終了後。
     チームメイトや監督が宿泊所に戻るバスに荷物を詰め込んでいる間、俺はこっそりとそこから抜け出す。

     誰にも話かけられたくない。誰も見たくない。

     何も考えられなかった。

     競技場から少し離れた公園。

     寂れたベンチに腰を下ろしうな垂れる。目立つからせめてユニフォームからジャージに着替えておいた方がよかったかもしれない。寒いし。なんて考えるでもなく感じていた。

     それにしても。

    「俺は取り返しのつかないことをした」

     声に出すと、それは一気に現実味を増長させる。
     俺が奪った。その事実を。

    「つまらない事を気にして、無理に試合に出て……結局はこのザマか」

     くだらない。

     くだらない…。

     くだらない……。

    205 = 1 :

    「友は……多分ただじゃ済まないだろうな……」

     ぶつかった体が、友の足を通してポストの感触を伝えてくる程だった。
     おかしな方向に曲がったあいつの膝がフラッシュバックする。

    「うっ……くっ……! おえっ……!」

     我慢する気にもなれずにうな垂れたまま地面に吐き散らす。
     心に詰まったものまでは、当然吐き出せない。

    「もう、あいつに見せる顔がないなぁ……」

     初めてあんなにわかり合える友達が出来たのに。

     こう言う結末を迎えてしまうのか。

     あいつは、俺になんて二度と会いたくないと思っているんだろうか。

     そう思われてたって、文句の言葉は一つもない。

     文句を言われないと、殴って貰わないと、誰よりも嫌悪してもらわないと――
     俺はもう死んでいく。

     そんな感じがする。

     ゆっくり折れる。

     ゆっくり沈んでいく。

    「試合、みせてもらったよ」

    206 = 1 :

     声。

     うな垂れていた上体をゆっくり、死体を引っ張り起こすみたいにして持ち上げる。

     見知らぬ初老がそこにいた。

    「まあ、90分間の内、五分は楽しませて貰ったよ。そこは素直に評価しよう」

    「残りの85分は、息をするのですら一級品の娯楽であるかの様に思わせる退屈ぶりだったがね」

     無表情というか仏頂面というか。
     声の抑揚も表情の変化も読み取りにくい。

    「……誰だ?」

    監督「スカウト、と名乗るのは気が乗らないのだがね。なにせ薄給の上に長くて骨が折れる割に合わない仕事ばかりやらされるのだから。
    まあ、クラブへの感謝の気持ちを込めたボランティア活動のつもりでやらせて貰っているだけなのだけれども。
    まあ……だから、今は監督としての私を名乗らせて貰おう。○○大学で指揮をとらせてもらっている監督という者だ」

    監督「今日は君を観に来ていた」

     俺を指さしながら抑揚の無い声で言う。

    監督「さて、今日の君の総評を聞きたいか? 普段はこんなサービスは絶対にしないのだが、今日は特別に教えてやろうと思っているんだ」

     いきなり現れて何を言うかと思えば。

    207 = 1 :

    「……有り難いお話ですが結構です。もう帰るんで」

     そういって立ち上がり、歩き出す。

     たとえクラブのスカウトだろうと。ついさっきまで絶対に評価を得て俺の実力を知らしめてやると思っていた相手だったといっても。

     今となってはもう意味がない。

     どの言葉も耳障りだった。

    監督「おや。君はそんなに謙虚な人物だったのか」

    監督「あんなプレーをしてまで一点もぎ取った選手だとは、到底思えないな。いや、これだからサッカーは面白い」

    「……何が言いたいんだ?」

    監督「そう苛立つな。そこに車を止めてある」

     公園の敷地外を指さす監督と名乗る男。
     
     堅苦しい表情だが、その雰囲気は飄々としたものを漂わせ、つかみ所がない。

    監督「少し話をしよう」

    208 = 1 :

    監督「少し話をしよう」

     監督と名乗る男は神経質そうにあごを撫でる仕草をして、言葉を加える。

    監督「いや、君のために話をして上げたい、だろうか」

     どっちにしろそんなの聞く気分じゃない。

     歩みを早める。

    監督「そして、君を助けてあげられるかもしれないよ」

     背中を向けた向こう側。そんな言葉。

     いつもなら信じないだろうに。

     だけど、弱った心はその藁よりも信用ならない言葉に縋る。

     見透かしたような事を言う見知らぬ男に、ひょっとしたらこのやり場のない物をどうにかしてもらえるかもしれない。なんて叶わぬ愚かな希望を抱いてしまう。

    209 = 1 :

    ~車内~ 

     黒皮シートの車に乗るなんて久しぶりの経験だった。

     高級どころのドイツ車の静かなエンジンが作る独特の静寂に、すこし緊張して体が硬くなる。

     遠征先であるここでの地理カンはゼロに等しい。さっきから何処に向かっているのか、目的地なんてあるのか、全く解らない。

    監督「とにかく脚が速い選手だと聞いていたよ」

     車に乗ってから続いていた約五分の沈黙。監督がそれをなんのためらいもなく、流れるような品のある低声で破る。これがベストタイミングである、と計算していたみたいな、何処か得体の知れぬ余裕を感じさせた。

    監督「そこにズームアップして編集されたビデオも幾つかみせられた」

    監督「確かに速い選手だと思った」

     赤信号の交差点。ブレーキが生む緩やかなGが胸を押す。

    監督「でも、それだけだと思ったね。それ以外は何も持っていない平凡な選手だと、正直思っていた」

     青信号になり、また車が進み出す。監督は俺の反応なんて待ちもしないで話を続ける。

    監督「そういう前振りがあったからだろうか。今日は、久しぶりに、少し心が動いたよ」

     抑揚の無い声で監督が言った。

    210 :

    スレタイからは考えられないような物語の展開だったでござる

    211 :

    天才ポエマーあらわるwww

    212 = 1 :

    監督「君、いつから中盤の高い位置でプレーしているんだ? いいや、答えなくてもいいよ。多分ずっとそうしてきたんだろう」

    監督「これは君の過失じゃないだろう。正しく、君を見誤っていた、君の周りにいたコーチや監督の所為だろう」

     何を言いたいのかさっぱり伝わってこない。話までつかみ所のない人だ。

    監督「今日の君が一番輝いていたのはどういう所だろう?」

     俺が回答するのを待つような空白。だけど俺は窓の外を流れる景色を眺めながら口を閉ざす。

    監督「ふん……なら私が答えよう」

    監督「君が低い位置でボールを奪ったり受けたりした時から始まる攻撃だよ」

     監督の声は心なしか高揚しているようだった。

     正直、息を呑んだよ。そう監督がつぶやく様に言う。

    監督「一番遠い位置にいる選手の動きを予測出来る理解力と視野の広さ。細かいパスの流れから、一気に大波をたてるように蹴り込むサイドチェンジ。そしてそれを可能にする積極性と技術」

    監督「味方の選手、相手の選手を高いレベルで把握し、ベストな判断を下せる冷静さ」

    監督「ピッチを俯瞰出来る選手と言うのは、観ている者ですら驚く『道』を探し出す事が出来る。君もそういうものを持っている。そう感じたよ」

    監督「チームを押し上げ、ゴールが生まれるまでのシナリオをその場で創り上げる創造性。それが君の武器だよ。誰でも持てるものじゃないんだ、これは」

     監督が運転席から振り返り、俺の目を数秒睨むように見据える。

    監督「君も、君の周りの人間も、その他人よりも速く動く両脚を伝家の宝刀の様に扱ってきたかも知れない」

    213 = 1 :

    監督「だけどね」

    監督「それは只の脇差しだ」

    監督「だからそれに頼りすぎたらいけない。確かに脚を武器に戦うサッカーに置いて、俊足であることは有利に違いない」

    監督「だが、君という人間が戦う人生という時間を考えた時、それに頼り続けるというのは酷く危うい生き方だと思うのだ」

     眺めるビルも少なくなっていく。
     
     監督の声を聞きながら、俺は逃げ出したい心を抑えるように胸を押さえる。

     一体、何を言いたいのだ。この初老は。

    監督「そういうものは、案外簡単に奪われてしまうものだから」

     その言葉に胸が刺されたように痛んだ。

     より強く押さえる。

     痛みは止まらず、鼓動が暴れ馬みたいに跳ね回る。

    214 = 1 :

    監督「無くしてしまったら、二度と戻らない事がほとんど。それが現実だよ」

    監督「だから。だからこそ、君は自分と言う人間が持つ武器に気が付くべきだと思うのだ」

    監督「速いことは強さではないよ。強さとは、もっと誰にも見えぬ高い所にある。君がいくら地ベタを速く這い回ろうと手には入らない」

    監督「だから、君はもっと全てを広くとらえるべきだと思うのだ。君は、君という人間は」

     君にとって、サッカーが最も美しく見える場所を探さなくちゃならない。
     いつまでも覚えているその言葉。
     今までの自分が酷く薄っぺらく思えたその瞬間。

    監督「ピッチの上でも、心の中でも。それを見つけなきゃならない。そうしなければ君はいつか止まってしまうよ。つまらぬ挫折に脚を持って行かれ、立ち止まる事も出来ずに土の味を噛みしめる事になるかもしれない」

    215 = 1 :

    監督「……久々に説教くさい事を言ってしまったな。年のせいか。これでも若い頃は結構な爽やかキャラだったんだがな」

     冗談ともつかない事をいい、車を止める監督。どれぐらい走ったのだろうか。もう何処なのか見当もつかなかった。

    監督「さあ、着いたよ。君の所の監督には既に『話がある』と伝えてあるから、面倒な事にはならないと思う」

    「……どこ……ですか」

    監督「君が泊まってるホテルだろう」

     言われて気が付く。そういえばこんなフロントだったっけ。

    監督「ドアを開けてあげよう」

    エンジンを切り、車を出る監督。

    俺が座っている席の方に回り込み、ドアを開ける。

    監督「忘れ物はないかな。これは借り物だから、もしもの場合取り戻すのに手間がかかる」

    「大丈夫です。何も持ってきてないので」

     そういえば手ぶらだった。曲がりなりにもこうして送って貰ったのは幸いだったかもしれない。さすがにユニフォームのパンツには電車に乗る小銭なんて入ってない。というかポケットがない。

     車を降りる。

    216 = 1 :

    すまん。
    筋トレの時間になってしまった。
    メニュー終わって、ホットケーキ作り終えたら再開する。

    218 :

    筋トレにホットケーキだと・・・!

    219 = 114 :

    >>216
    ホットケーキとか可愛いなwwww

    222 :

    プロテイン混ぜたらナンみたいになりそうだな

    223 :

    誰か書籍化してくれ

    226 = 15 :

    ホットケーキうpしとけ

    230 :

    .

    231 = 1 :

    筋トレ早めに切り上げた。
    ホットケーキを焼きながら再開する。

    長いけどよろしこ。

    234 = 1 :

    「わざわざ送ってくれてありがとうございました」

    監督「いや、これは私の頼み事だったからね。気にしなくていい」

    「じゃあ、さよなら」

     短く告げて、ホテルの正面玄関のドアへと歩みを進める。

    監督「最後に。今日のことはよく考えてみてくれ。そして――」

     後ろは振り返らない。

     聞こえないふりをする。

    監督「――被害者面は止めた方がいい。失ったのは彼で、奪ったのは君だ。そしてこれは、ただそれだけの事。君が逃げ出す理由にはならないよ。それを理解して、納得しろ」

     後のことは良く思い出せない。

     泣いたのかも知れないし。

     いらだちに任せて叫んだのかもしれないし。

     何もせずに何処かに籠もっていたのかも知れない。

     いずれにせよ変わらない。

     それが俺が友から大切な物を奪った日の話。

    236 = 1 :

    ~朝。男の部屋。ベッドの中~

    「……」

     最悪な目覚めだ。

     久しぶりに嫌な夢を見てしまった。

    「寝る前に変な話するんじゃなかった……」

     娘にせがまれて適当に話しを作ってみたけど、最後の方は色々ごっちゃになって大号泣していた気がする……。大人としてどうだったんだろう、それって。

    「そういえば娘が居ない」

     空っぽの右腕。

     もう起きているんだろうか。

     手探りで目覚まし時計を探し当て、目の前にもってくる。

    「もう十時かー……つーかもう大学に行かないのが普通になってるなー……」

     それに伴う罪悪感も感じなく無くなってきていた。

     それって色々まずいよなー……。

    237 = 1 :

    「まあ、やる気は出ない訳だけども……」

     やっぱり、母さんと親父には申し訳ない気持ちになる。だからと言って何か行動に出られる訳じゃないけれど。

     なんとなくやる気が無くなって、大学をサボるようになってもうすぐ二ヶ月になろうとしている。
     将来への不安は、曖昧な輪郭から実体的な像へと変わりかけていた。
     出来る事もやりたい事もわからない今の俺。
     一体、一年や二年たった頃にどうなっているのやら。想像もしたくない。

    「朝からテンションがガタ落ちる……」
     ガチャ
    「男。朝だぞ」

     朝というには微妙な時間だが。

    「おう、今起きた。飯作るからちょっと待っててくれ」

     寝癖頭を手串で押さえつけながらベッドから這い出る。

    「朝食なら私と友が作ったぞ」 

    「え? マジで? お前料理とか出来るの?」

    「多少の心得はあるぞ。だが、実戦経験が少ないゆえ、今回は友の手伝いをしただけだ」

    「あいつまだ居たのか……まあ元彼女から鞄の取り戻すなんてハードな任務を前にしたら、ルンルンと朝から出掛ける気分にはならないか」

    「まあとにかく、朝食が出来たから早くきてくれ」

    「はいよ」

    238 = 1 :

     部屋を出て食卓へ。 
     食卓にはいつもよりも多い食器達が並ぶ。
     
    「遅いよ男。朝には強い方じゃないか」

     先に席に着いていた友がそんなことを言う。

    「昔の話だろそんなの。今はめっきり早起きなんてしなくなったよ。それのおかげで10時には眠ってしまう体質が改善されたぜ」

    「確かに、最近まで10時以降に男を見かけたこと無かったかも……」

     どうでもいいところで大人になっていた俺だった。

    「それにしても、焼き魚なんて久しぶりに食べるなぁ。魚、買ってきたのか?」

    「朝早くからやってるスーパーがあるからね。そこで」

     わざわざご苦労な事だ。

    「よし、これで準備が整った」

     サラダの入ったボウルと取り分け用の皿をテーブルに置く娘。本日のメニューは焼き魚と卵焼きと味噌汁と白米。そして今持ってきたゴマドレッシングサラダと言う事らしかった。

    「朝から二品目以上食べるのは幾らぶりだろ……」

     一人暮らしとなると朝は抜かす事だって多くなりがちだったからな。

     作るのめんどくさいし、腹減ったら出掛けるついでに外で買っちゃうし。

     毎日朝食を作っていた母さんの偉大さを思い知った。

    239 = 1 :

    あ、参考に聞きたいんだけど、SSってやっぱり台詞のみで書いた方が良い?
    今投下してるのは地の文大杉な気がする。
    次回何か書こう思いついた時はどうするべきか……。

    240 = 1 :

    「さあ、食べる前にはいただきます、だぞ男」

    「そういういえばこの国にはそんな文化があったなぁ。一人暮らしの所為で忘れてた」

    「僕は一人でも言うかなー。この前までは彼女と一緒に食べる事が殆どだったから一緒にいってたね。今日からまた一人なのかー」

    「目から何か出てるぞ……」

    「ははっ……これは今朝の汁物だよ」

     遠慮したい。というか味噌汁が既にあるから。

    「ほら、早く手を合わせるんだ二人とも」

     行儀の悪い大人二匹をたしなめる娘。

     なんだか朝から情けない。

     でも。

     でもなんだか悪くもない。

     なんだか悪くない日になりそうだった。

    一同『いただきます!』

     そんな感じで一日が始まる。

    241 :

    別に

    242 :

    このままでいいんじゃない

    243 = 22 :

    >>239
    我が道を行けばいいよ

    244 = 1 :

    「なんだって?」

     友が戦場(元彼女宅)へ赴くため家を去ってから数十分。

    「だから。俺がお前のリストの完遂に一肌脱ごうって事だよ」

    「願ってもない話だが……男も忙しいのでは無いか?」

    「うーん……」

     多分、忙しくあるべきなのかなー。
     でも大学行く気にもなれないし……。
     今更行ったところで、もうテストとかサボっちゃってるわけだし……。

    「えーと……知ってたか? 出来る男は大学に行かなくてもいいんだ」

    「な、なんだって-!?!?」

     期待してた以上のリアクションだった。

    245 = 1 :

    「まあ、驚くのも無理はないな。あまり知られていない事だから」

    「なんで出来る男だと大学に行かなくていいんだ!?」

    「出木杉君から成績の良さ、人望の厚さ、誠実さを引いた男、と呼ばれる俺みたいな奴は大学で『BOCCHI』と呼ばれ、周りから一目引かれる存在なのさ」

    「おお! なんかすごそうだ! そんなにすごい奴だったのか男!」

    「HAHA. 別に大した事じゃないぜ? 食事は大衆用の汚い食堂ではなくとある個室で。
    講義中は俺の近く二メートルの場所に座ってはいけないというルールがあり、
    たまにある『じゃあ、近くの人とこれについて話し合ってみてください』は免除される等々……
    その他思い出してみればまだまだいろんな特別待遇があったなぁ……」

     アレ……? 目から朝の味噌汁が。

    「おお! すごい待遇だな! まるで貴族だなっ!」

    246 = 1 :

    そこまで読みにくい訳で無いのならこんな感じで書いてみるよ。
    どうも。

    247 = 1 :

    「まあそんな感じで、大学の心配はしなくていいぞ」

    「そうか! それは私にとってもうれしい事だな!」

     娘の無邪気な笑顔が痛かった……。

     情けないなあ俺!!!!

    「……で、早速今日からリストに書かれてるものを消費していこうと思う」

    「今日からか! さすがだ! 出来る男は違う!」

     テンション高いなー……。俺が上げたんだと思うけど……。

    「えーと……じゃあ、早速リストを持ってきてくれたまえ」

    「わかったぞ!」

     鞄をがさごそして例の大きめの手帳を持ってくる。

    「うんじゃ、ざっと目を通すとするか」

    248 = 1 :

     娘から手帳を受け取り、一ページ目を開く。

    「うわ……この前も思ったけどかなりびっしり書き込まれてるのな……」

     紀元前の遺跡から発掘された解読不能の書物みたいな感じだ。書かれている文字自体はキレイなもんだけど。

    「いやー、書き出すとお願い事とは尽きないのでな」

    「いやまあ確かにそうだろうけど……まあいいや、とりあえずこれを全部読むわけにはいかないから目に留まった奴を適当に候補に挙げていくぞ」

    「わかった。それでいいぞ」

    「よし、そんじゃ適当に……」

    ページを飛ばし飛ばしめくっていく。

    「えーと……ショートケーキの生クリームだけ食べたい、テリヤキバーガーにマヨネーズを追加したい、バブを一箱一気に使ってみたい、野菜炒めの肉だけ食べたい、吉野家ので並と牛皿を注文したい、吉野家のゴボウサラダが復活しますように、吉野家で働きたい」

     いや。

     願い事は人それぞれだけどさぁ。

    「もうちょいマシな願い事無いわけ?」

     吉野家へ情熱は一丁前だな。行ったこともない癖に。

    249 = 1 :

    「む」

    「それらの何処に不足があるんだ。どれも叶えたら幸せになる事間違いなしの願い事達ではないか」

    「いやさぁ……そりゃまあちょっと幸せになるだろうけど、こう言うのってもっとスケールでかい方がいいじゃん?」

    「むー……そう言われてもな。何がスケールのでかい願い事なのか検討がつかないぞ」

    「そうか? 俺がお前ぐらいの時なんて、平気で『将来はアメリカ人になる』とか言ってたけどなー。アメリカンドリームだよ、アメリカンドリーム」

    「いや、それはアメリカンドリームが本来意味する物では無いと思うのだが……とにかく、私はよくわからないから男が選んでくれ」

    「う……そう言われるとやっぱりチョイスが難しいな……」

     ページをぺらぺらとめくる。

     それにしてもあんまりデカイ事を書かないな、こいつ。
     学校に行って無くても年齢的には小学生なんだからもっと大胆な願いを書きまくればいいものを。

    250 = 1 :

    「ん、これは比較的まとも……なのだろうか」

    『水族館でイルカをみる』

     小さな願い事には違いないけど、他の鰻重のウナギだけ食べたい等々と比べてみれば立派な方だ。

    「これはどうだ?」

    「おお、さすが男だ。それは特Aクラスの願い事だ」

    「これで特Aなのか……それはいいんだが、まあこれ位なら簡単に叶えてやれるぞ。電車で一時間と少し行けばイルカショーやらなんやらをやってる水族館があるはずだ」

    「本当か!? イルカはいるか!?!?」

    「いや、そういう寒いこという奴連れて行かないけどな……」

     そんな感じで。

     俺たちは水族館に向かう。


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