元スレ娘「セック――」 男「言わせねーよ!?」

みんなの評価 : ★
51 :
>>47
構わん
完走してくれ
52 :
しえん
53 = 1 :
礼儀正しく礼を言い、娘は迷い無く目当てのチャンネルのボタンを押す。
国営放送の堅苦しいニュースから一変、民放のチャライ音楽が流れ出す。
なにやら動物を紹介する種の番組らしかった。
娘「ふふ」
猫の親子が仲むつまじく散歩している映像を見て娘は笑みをこぼす。
たぶん俺が見る彼女の初めての笑顔。やっぱり母親の笑顔と似ている。母親の方の笑顔は思い出すだけでもむかっ腹がたつが。
娘「なあ男」
男「なんだ?」
娘「猫を解体」
男「なんてことを!? お前猫好きじゃなかったのか!?」
娘「ではなく、猫を飼いたい、だ」
男「ああ、そっちか。もちろん駄目だよ。というか何ここに長いこと住むことが前提になってる、みたいな話してんだよ」
娘「なんで駄目なんだ!? いくら積めばいいんだ!?」
男「どこで覚えてきたんだよそのフレーズ……。俺が個人的に駄目って言ってる訳じゃなくて、このマンションの入居規約としてNGなんだよ」
54 = 22 :
>>47
おk
がんがって
55 = 5 :
>>47
そうだよな。お疲れ
このスレじゃ終わらないんじゃないか?
56 = 1 :
娘「ああ、なるほど。じゃあ家を建てよう」
男「どんだけ猫飼いたいんだよお前……」
何がなるほどだよ。みじんも納得してないどころか、めちゃくちゃわがままじゃねーか。
娘「いや、まあテレビで観ているだけで十分なのだけどな」
男「そう言っちゃうと言っちゃうで、なんだかオヤジくさいな」
娘「可愛いから、もしも居なくなってしまった時悲しい思いをするからな」
男「それは……」
確かにそれはそうだ。居なくなってしまうと、死んでしまうととても悲しい。俺も小学生の時に亀を飼っていて、そいつが飼い始めて二年と経たないうちに死んでしまった時はひどく悲しんだものだ。死んでしまうなんて、全然考えていなかったし。
57 = 1 :
男「俺が小学生の時はそんなとこまで考えなかったけどな」
娘「まあ、これは元々望みの薄いお願い事だったからな。よし、没、と」
男「それもリストに入ってたのか」
娘「ん? ああ。そうだ。でもまあ難しい事だろう? 生き物を扱うというのは。だからまあ、もともとダメ元で加えたようなものだ」
男「そうか。そういえばさ、猫を飼えないのは仕方ないにしても、猫とをふれ合うだけなら案外簡単にできるぜ」
その言葉に娘がピキンと背筋を猫みたいに動かして反応する。猫耳が生えてきそうな程猫っぽい動きだ。
娘「本当か!? そんな都合の良い話があるのか!? ヤリ逃げってやつなのか!?」
男「どっからそんな下品な語彙を仕入れてるんだよ10才! 意味はわかってなさそうだけど!」
まあともかく……。
男「あー……えーとな。俺の記憶が正しければ、ここから電車で5駅ぐらい行ったところにそういうテーマパークがあるんだよ」
58 = 1 :
名前は忘れたけど、建物の中にいろんな猫が居て、そいつらと自由にふれ合えるって奴だ。
男「そこにいけば少しは猫を飼っている気分に浸れるだろ」
娘「なんと! 地上にこそ楽園があったのか!」
男「なんかお前のキャラつかめねーよ……。まあ喜んでくれるのはいいんだけど」
娘「そこにはいつ連れて行ってくれるんだ!?」
え?
男「何? 俺が連れて行くの?」
娘「他に誰が居るんだ?」
男「お前のお母さん、叔母さんと行けよ」
娘「……」
娘は困ったような顔をしながら目線を下に落とす。そしてもう一度俺を見上げる。
娘「さっきは一日だけと言ったが、やっぱり私はお母さんの所へは帰れないのだよ」
男「「お前も結構物わかり悪いのな……」
さすが親子だ。なんだか扱いの難しさが似ている気がする。
男「今はちょっと色々あってこんな事になってるだけなんだろうよ。だからきっと、全部解決したときにはちゃんと家に帰るんだよ。その時叔母さんに連れていってもらえばいい」
59 = 1 :
娘「それは違うよ」
娘「全部は全部、そっくりそのまま解決なんてしないんだ」
だって、悪いのは私だから。
そう娘は言う。
いや、俺が言わせたのかもしれない。
どちらにせよ、
男「そんな訳ない。俺が保証する」
娘「どうして……」
男「俺がそう思うからだよ」
酷く脆弱な根拠だった。だけど、それだけで十分だ。
男「明日には全部良くなる」
チキンの癖に、頭はまあまあ悪い方の癖に。こう言う大見得は一丁前にきれてしまうのが俺の悪いところだった。
61 = 1 :
翌日。自室。
事態は思いもよらぬ形で迷宮入りしかけていた。
男「吐け」
娘「黙秘だ」
男「どうしても?」
娘「黙秘だな」
男「往生際わりーな! そんなもんその内わかっちまうんだから早く吐けやあああ!」
娘「そういえば、ベッドの下からこんなイカガワシイ本が顔をのぞかしていたぞ。これは男の所有物だろう?」
男「黙秘だあああああああああああ!!」
娘の手からエロ本をひったくって、そのままの勢いでゴミ箱にダンクした。
ちくしょう! 自室のベッドを貸したらこのざまか! やっぱり娘をリビングのソファーで寝かせ方が良かった!
娘「おいおい。本は大切に扱わないと」
男「俺の中の何か大切な物を失うよりはましだよ!」
10才の女の子に奪われてしまうなんてたまった物じゃない。なんて10才なんだよまったく!
62 = 1 :
――しかし
今日は朝から娘、もとい叔母さんの家にカチコミに行く予定だったのに。
男「なんで家の場所を言わない……」
娘「何度も言っているだろう。帰る気は無い」
確かに何度も言われた。
それについての理由も尋ねた。
家が嫌いなのか? 『好きだ。むしろ大好きだ』
とにかく俺だけでも行かないと話が進まないんだが? 『別に進める話は無いよ。私をここに置いて居てくれればいい。迷惑は……かけないように善処する』
お父さんはどうなってるんだ? 『さあね。私が生まれる前に何処かに行ってしまったらしい』
わからないが。一つだけ解った。
叔母さんが娘と暮らす気がないのと同時に、娘も家に帰る気が無いのだ。
63 = 22 :
かわいい
64 = 1 :
男「足止めを食う、どころか後退させられている様な……」
事態は悪くなって行くのみだった。
いや、事態は俺の知らないところでもっと悪い事になっているのかも知れない。
なにしろ俺は叔母さんの事情も、娘の事情も、何一つとして正確に把握していないのだ。つい昨日までは叔母さんに子供が居たことすら知らなかった訳だし。母親は何だかんだで叔母さんと会っていた様だから知っていたのだろうが、そんな事は教えてもらっていない。
娘「とにかく、しばらくの間で良いんだ。頼みたい……お願いします」
表情は悲痛で。願いは切実だった。
一体この子の周りで、この子の中でどんな事が起こっているのかわからない。
男「わからない……が、わかったよ……。しばらくの間だけだからな。しばらく経ったらすぐに家に帰すからな」
娘「ありがたい!」
汚いマンションの一室に華やかな笑顔が咲いた。
男「ま、まあ最低限の家事手伝いはしてもらうぞ」
不覚にもその笑顔を可愛いとか思ってしまう。と言うかこの子かなり整った部類のお顔をしていらっしゃる。男っぽい口調と、普段の仏頂面で気がつかなかったが。
娘「ああ! 任せてほしい。 こう見えても食う寝る遊ぶに関しては鬼泣かせなレベルで極めている!」
男「それ極めちゃったら親泣かせだろうが! 働かない大きなお子さんの肩書きじゃなくて実務としての家事手伝いだっての!」
娘「ああ、なら最初からそう言ってくれればいいのに」
男「なんか悪意的に取り違えてる節があるよな、お前……」
10才女子への突っ込みに息を切らしてる19才男子ってどうなんだろう。
65 :
うむ、面白い
66 = 1 :
娘「じゃあ手始めにこの部屋の掃除でもするとしようかな」
娘はそう言うと立ち上がり、部屋をぐるりと見渡す。
娘「呑みっぱなしの空き缶はデスクの上だけにとどまらず、床にまで勢力を展開。脱ぎっぱなしの服はそこら中に。弁当のプラスチック容器とファーストフードの紙袋で形成された、部屋の角にそそり立つ現代アート……」
……。
娘「汚い!」
ズビシッと指を指されて断言された。
男「クッ……悔しいが反論の言葉が無い……」
二週間も掃除しないとこんな有様だろう。男の一人暮らしなんて。
男「いや、ここの所忙しくて……」
娘「そうなのか。そういえば昨日、大学に通っていると言っていたな。今日は行かないのか?」
男「ああ、ちょっとね。休みみたいな? 普段は忙しいんだよ。うんすごく忙しいよ」
67 = 1 :
娘「大学生と言えばあれか。すべての食事に金粉を振りまいて食し、定期的に恋人にブルガリの時計とヴィトンのバッグをプレゼントし、夜はシャツをパンツインにしてポルシェでディスコに向かうんだろう?」
男「一つとしてやった事ねーよ……」
どこのバブル大学生だよ。
男「そんな世代の大学生とは大きくかけ離れてるけど、まあ普通に勉強とか、バイトとか急がしいんだよ」
まあ、勉強もバイトも『してた』なんだけど……。
娘「そうか。学生たるもの学業や勤労に精を出すのが一番だな、うん」
男「いや、小学校中退みたいな生活してる奴に言われたくないけどな」
昨日は聞きそびれたけど、こいついつから学校行ってないんだろう。昨日は行きたくないから行かないみたいな感じに言っていたが、実際は何か問題でもあったんだろうか? なんかこいつすべてが謎だな……。
68 = 1 :
娘「まあいい。とりあえずゴミ袋とゴム手袋を貸してくれ。掃除を始める。男は……そうだな、とりあえず掃除機をドアの前に置いておいてくれ。後は私がすべてやろう」
男「お、おう。なんか頼もしいな」
俺はすべて言われた通りにして、自室の掃除を娘に任した。
現在はリビングのソファーに寝転がり、観るとも無くテレビを眺めていた。
男「アナログで所持していたアダルトな物はあのエロ本が最後だから、まあ心配ないな」
非常に惜しいことをした。だが俺も男だ。一度別れを告げたエロ本をゴミ箱から引きずり出すような真似はしない……!
男「昨日はソファーで寝たからまだ疲れが残ってるな……」
疲れるような生活はしてないはずだけども。
男「一眠り……」
69 = 1 :
一時間ぐらい経っただろうか? 目覚めればもういいともが始まる時間だった。
娘「掃除おわったぞ」
男「うおうっ!!」
背もたれの方から娘が顔をのぞかせ、俺の顔に娘の髪が覆い被さる。
男「びびったわ! 一気に目が覚めた」
と言うか昨日は俺のシャンプー使ったんだよな? なのに俺の頭から垂れ流れてくる臭いと違う。なんだこの良い香り。女の子って不思議!
娘「よかったではないか」
男「心臓に悪いって……えーと終わったのか。じゃあ早速アフターを見てみよう」
立ち上がり、自室へ向かった。
70 :
こいつ、自動筆記マクロか?
72 = 1 :
男「うおうっ! なんじゃこりゃ」
俺の部屋がキレイ…だと?
男「床が見えるし輝いてる。服も洋箪笥に収まっている。本棚の整頓も欠かしてない!」
素直に関心した。俺だったら色々手を抜いて絶対にこうはならないだろう。
男「お前やるな! かなり良い嫁さんになるとみた!」
娘「お、おう!? そうか? 良いお嫁さんになれそうか!?」
男「おうマジでマジで。つーか俺のところに嫁げ!」
娘「えっ……それはちょっと……その……」
素で反応かよ! そこは頼むからノって欲しかったよ! 褒めたときはちょっと赤くなってて可愛かったじゃん!
男「少し傷ついた……」
娘「少しは気がついて欲しい」
男「ええ!? 俺が知る以上に俺には欠点があるのかっ!? 頼む教えてくれ! 気がつかないまま一生独身だけは勘弁してくれええ!」
娘「冗談だよ」
男「冗談じゃねぇ! 危うくアイデンティティーを失う所だったよ!」
娘「ずいぶんチャチャな作りなんだな……」
73 = 1 :
いやまあ、もちろん冗談だってわかってるよ。
だから。
だからこそまた違和感を感じた。
男「なんかお前と話してると、お前が小学生だってことを忘れちまうなぁ……」
というかそこらの同年代より大人な印象を受ける。
こんなくだらないやりとりが参考になるかどうかは解らないが、こう言うのだって色々頭を使ったり、他人の考えを読み解く力が無いと出来ない事のはずだ。
だから、それが出来るこいつに違和感を感じざるを得ない。
環境が人を作ると言うが、だとしたらどう育って、こいつはこんな風になったんだろうか?
74 = 60 :
一体どんな本を読んでいたか気になるな
75 = 1 :
娘「まあ、多少変わっていることは認めよう……一般がどうであるかは良く知らないのだがな」
男「別に変わってるとかだなんて、俺は思わないよ。それどころかすごいし、良いことだと思う」
えらいえらい、と頭をなでてみた。140センチぐらいだから撫でやすい。そしてサラサラだろうと思っていた髪はやっぱりサラサラだった。
娘「べっ、別に大した事じゃないっ! 遊ぶ金ほしさでやってるだけだっ!」
娘の顔がボッと赤くなる。
男「いや、それは犯行動機だろう」
そして別に遊ぶ金は手に入らない。
娘「そうじゃなくて、あれだ! 別に最初は殺すつもりじゃなかった!」
男「言い訳する部分がすり替わってるぞ……」
娘「あー、とにかく! 私は普通でなくとも、年相応だ! むやみに褒めるな! むしろ罵ってくれ! さあ早く!」
男「第一印象の欠片も残らないキャラになってんなお前……」
76 :
かわいい
77 = 1 :
まあ、家に上がって自己紹介をしあった時点で片鱗は見えてきていたが。
娘「男がそうさせているんだろうっ」
男「そうなんだろうか? まあ、ちょっとからかったかも。悪い悪い」
娘「ふんっ」
娘は腕を組んで顔を横にプイッとする。
リアルでこの感情表現する人いるんだ……。いや、まあ様になっていて可愛いけど。
やっぱいくら性格が大人っぽいといっても、やっぱり子供だなぁ。あー微笑ましい。
娘「まあ全部演技だったのだがな」
男「台無しだよ!」
恐ろしい人心掌握術だな!
まあ、そんな感じで。
さよならの日だと思っていた日は過ぎていく。
78 :
いいこと思いついた。
俺が引き取ればいいんじゃね?
79 = 1 :
夜。
娘「この野菜炒め、モヤシが八割なのは匠のこだわりと言う解釈でいいのか?」
男「雪国モヤシにそこまでの意匠を凝らしたつもりはねーよ。ただあれだよ、節約。暫く二人分の飯を作らなきゃならないんだ」
娘「節約? 金が無いのか?」
男「仕送りと奨学金で生活している身分なのでね。そうそう贅沢は出来ないんだよ」
娘「そうなのか。だが、金の心配はしなくて良いぞ.。私も少しなら持っている」
そう言うと箸を置いて鞄を持ってくる。
男「おいおい、いくらこう言う状況とは言え小学生女子から金を巻き上げるような真似は出来ないぞ。男、というか人として」
それにこいつ全然食わないっぽいし。コンビニ弁当を買わないようにして自炊に専念すればむしろ今までより安上がりじゃなかろうか。
娘「ほら、一束あれば足りるか?」
はい、とそれを俺の手のひらにのっける。
男「あーうんそうそう。これが一束あればうまい棒が1、2、3、4――」
娘「……ん? どうした? 急に止まってしまって」
おいおいこれって。
80 = 1 :
男「うわあああああ!? 百万円だあああああ!?!?!」
うまい棒換算してたら日が昇ってまた暮れる!
娘「おいおい、そんな事は絶対にないだろう。 百万円はヒャックマンに勝たないと手に入らないんだぞ?」
男「いつのネタだよ!? 俺でもぎりぎりの世代だっつの! そんな冗談はいいからさ! どうしてこんな大金持ち歩いてるんだよ!」
娘「お母さんから貰ったんだよ」
あの人小学生に現生100万をポイと渡す様な人なのかよ。犯罪に巻き込まれでもしたら、とか考えないのかよ!
男「あー……! なんかもう無茶苦茶だなーお前も叔母さんも!」
娘「この野菜炒め、バンジージャンプで食べられたら百万円」
男「今すぐその話題から離れろ!」
バシッ、と堪えきれずに頭をはたいて突っ込んだ。
こいつ、気を抜くとすぐボケに走りやがる!
娘「殴ったな!? 殴った人には冬場の暖房の効いた満員電車の中で体がめちゃくちゃ痒くなる呪いがかかります」
男「地味にすごく嫌で二度ぶてないっ!? いや、というか俺はすでにその体質を抱えているんだっ!!」
スッパーン。二度もぶった。多分、親父にもぶたれたことない子を。
どうでもいいけど、冬場に発汗すると体中が非常に痒くなるアレはコリン性蕁麻疹とかと呼ばれるらしい。電車の中でアレが来ると地獄なんだよなぁ……。
81 = 1 :
娘「おおっ……中々激しいな、男」
男「……いや、なんか盛り上がりすぎたとは言え、俺も反省してるよ……今後このような突っ込みはひかえる」
娘「いやいや、そんな事は言わなくていいんだ。これも私の願いだからな」
男「え? そうなのか? と言う事はあのリストに?」
娘「もちろんだ。ほら」
おおう……本当だ。びっしり文字の書き込まれたページ。娘が指さす一行に目を通すと『激しく突っ込まれる』と達筆に記されていた。というかもうちょっと他に書き方があるだろう……。
男「そのリスト、一体どこまでお前の願望をカバーしているんだよ」
娘「そうだな……吉野屋でお持ち帰りするときに紅ショウガを20袋ほど入れて貰う、までかな」
男「そんな紅ショウガに飢えた小学生いてたまるかっ! というかお前吉野屋でお持ち帰りとかしねぇだろ絶対!」
並を間食するまでに袋換算で15袋ほど消費する俺には割と共感出来る話だけども。10袋ぐらいは何も言わずに入れてくれるんだけど、それ以上頼むのはちょっとためらわれるよなぁ。
82 = 1 :
娘「まあ吉野家にも松屋にも行ったことがないがな」
男「未経験なのにそこまで紅ショウガに熱くなれるお前に脱帽だよ……」
そんな感じで。
夕食の時間は過ぎていった……。
83 = 22 :
こんな娘がほしい
84 = 1 :
ちょっと出掛けてくる。
そうとだけ娘に伝えて俺は夜の住宅街へと足を運ぶ。
目的はあるが、目的地はない。
男「自分から電話するのってどれぐらいぶりだろう」
ギリギリ二桁の名前達が並ぶアドレス帳から「母」を選択する。そこからの一歩が重かった。
男「かかってくるのを受ける分にはまだいんだけどなぁ……」
自分からかけるとなると別だ。
高校の時のアレコレで。俺はちょっと変わってしまって。そして家族と顔を合わすのが何となく気まずくなってしまって。東京の大学に逃げるように入学して。そこでもまた挫折しかけていて……。
男「俺が地元に帰れる日は来るのだろうか……」
ケータイを握りしめたまま、ドーンと気分が重くなる。
精々噛んだりどもったりしない様に努力しよう……。
通話ボタンをプッシュして十秒と経たない内に相手が出る。
妹『はい、○○ですけど』
母親の声ではなくもっと若い、妹の声が受話口から鳴る。
ビクッ、と曲がった背筋が伸びる。
85 = 1 :
男「い、妹か。あの、お兄ち――男だ。今お母さんいるか?」
妹『……少し待ってて』
あー……。なんでこう言う時に限って妹がでるかな-。
軽く冷や汗かいた。背中が痒い。
何故か妹とは特に気まずいんだよなぁ……向こうも気まずそうだし。昔は結構仲が良かったはずなのに。
母『もしもし男? 送ったお米届いた!? 今年は豊作だったから期待しておけ、っておじいちゃんが言ってたわよ』
男「お、おう……まだ届いてないよ」
母『念のため一俵送ったからね』
念の入れ方が間違っていた。置き場所に困ること間違いない。
男「あのさぁ、まあそれはいいとして……えーとさぁ……娘ちゃん、って知ってる?」
回りくどく言っても仕方がない。俺は単刀直入に言うことにした。
沈黙の後、
母『……うん』
86 = 1 :
まあ、知っている事ぐらいは想定済み、というか知らない方がおかしいだろう。
男「昨日さ。叔母さんにその子を半ば強引な形で引き取らされた。
えーと、つまり……いきなり呼び出されて、要領を得ない説明を受けて、
その間に娘ちゃんは俺の家の前まで来てた……。
まあ、昨日は諦めて、今日は叔母さんに家にその子を連れて行こうと思ったんだけど、
何故かあいつ中々家の場所を教えなくてさ。なんかもうほとほと困り果ててるんだよ、今の俺。
何か知らないかな? 叔母さんの事情とか、その他諸々の不明な点について」
そもそも、叔母さんに子供が居たなら俺が聞き知っていても良いはずだろう、とまでは言わなかった。
母さんは少しの沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。
88 = 1 :
母『娘ちゃん、今一緒にいるの?』
男「一人。外で歩きながらかけてる」
母『そう……』
男「もしかしてさ、この事知ってた?」
母『……うん、知ってる。事情についても、知ってる』
やっぱり。何というか。親子のカンみたいな物で感じ取っていた。
知っていた、そう確認すると少しだけ腹が立つ。それって叔母さんがしている事を容認してるって事と同じだろう。
男「じゃあさ、叔母さんに連絡つけてくれないか? 昨日の夜にも電話かけてみたんだけど全然通じなくて……」
母『悪いけど、それは出来ないの』
男「えーとさぁ……」
また体の芯が熱くなる。なんでみんなそうはっきりしないのかなぁー、なんて思う。
男「正直さ。俺がなんでこんな事に巻き込まれてるか全く意味がわからないんだよ。別にさ、少しぐらい子供を預かるのは良いよ。だけど、ろくな説明もなしに『無理だから預けます、はい』みたいに言われたらさぁ」
――俺だって困るし、困られるあいつだって可哀想だろ。
母『今は……詳しくは言えないの。ゴメンね。でもこれを言ったら色々駄目になっちゃうから……だから今は少し待って欲しいの。あの子と居てあげて欲しいの。たぶん……きっと遠くない日に』
彼女が全部をあなたに教えてくれるはずだから。だから今は少し待ってあげて。そんな事を言われた。
母『そして、たぶん私は、私たちはあなたに謝らなければいけないと思う。でも今は言わせて。あの子と、精一杯、出来る限り仲良くしてあげて』
なんだか、よくわからない。
昨日からよくわかる事が一つもない。
89 :
今からバイトだからまとめにあがりますようにっと
91 :
このスレは完結前に落ちる
92 = 1 :
それから母親は話の流れを無理矢理変えるみたいに俺の近状を聞きまくり、俺はぼーとする頭をなんとか働かせてそれに答えていた。
電話を切って。帰り道。
随分と住宅地の外れの方まで歩いてきてしまった。
男「八方塞がり、孤軍奮闘、か」
誰も何も教えてくれやしない。
男「やっぱり俺ってついて無いのかなー」
石ころを蹴っ飛ばそうとして、思いとどまる。嫌なことを思い出しそうになったから。
そして思い直す。たぶん、そういうわけでは無いんだろう、と。
そして。
八方塞がりなのも、孤軍奮闘しているのも、俺ではなくて娘なんだろう。
だったら。
男「まあ、俺ぐらいは味方になってやらなきゃなぁ……」
頼りない俺だけど。味方を名乗るぐらいは、まだ出来たはずだ。
93 = 1 :
娘「随分と遅かったな」
家に帰ると娘がリビングのソファーに寝転がりながら俺の漫画を読んでいた。
というか、部屋着スカート穿くならもっと上品に振る舞え。パ、パンツが見える! 細い太ももが限界まで露出してるぞ! いやまあ、10才のパンツにはマジで興味が無いけども。
男「ああ、あれだよ。電話したり、その後もちょっと」
娘「ん? 汗をかいているな? 外はそんなに暑いのか?」
男「いいや、別に。まあ、ちょっと汗っかきなんだよ俺」
娘「ははは、風をひかない内に早くシャワーを浴びた方がいいぞ」
そう言って視線を漫画のコマへと移す。なんでチョイスがマサルさんなんだよ。くすりともしねぇで読んでるし……。
娘「そういえばさっき見知らぬ男が何やら叫びながらいきなり家に入ってきたぞ」
男「それを一番先に言ええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
94 = 1 :
娘「大丈夫だ。今は男の部屋にいる」
男「大丈夫じゃないだろそれ!? 不審者と一つ屋根の下とか非常事態だっての!!」
娘「まあ落ち付けって、あんちゃん」
男「お前と一つ屋根の下なのも嫌だなああ!!!」
何なんだよこいつ……。なんか嫌だよ……。怖いよぉ……。
しかし。
男「鍵は閉めたはずだよな!? なんで入ってきたんだ!?」
俺は背負っていたバッグを床に置き、拳を握って軽く構える。俺の拳がやや内角に抉り込むように空を切る。
俺の部屋のドアは閉まっている。
娘「開けてくれ、と大絶叫していたので開けてやった」
男「なんなんだよお前……。それ絶対入れちゃいけない奴の台詞じゃん……。男らしすぎるよお前……」
一歩間違えれば大事件じゃねーか。というか事件だよこれ。
でもまあ見たところ何もされていないようだし……。
今のところは大事には至っていないか。
96 = 52 :
ふむ
97 = 1 :
男「しかしこの状況……」
閉ざされたドア。
その向こうには得体の知れない変質者が居るらしい。
男「どんな奴だった? 強そうだったか? 凶器になりそうな物は持っていたか?」
娘「うーん……年の頃合いは男と同じぐらいだっただろうか。 凶器になりそうな物は右手に持った一本のちくわぐらいだろうか……?」
娘はひとまず漫画を置いて、ソファーの上であぐらをかいて腕を組みながら言った。
男「ちくわは凶器じゃねーだろう……」
ちくわで殺されてたまるか。
男「なんだかわからねーな……部屋も静かだし……」
娘「三十分前ぐらいからは静かにしてるな」
男「というか本当に居るのか? もしかしてお前ものすごくたちの悪い冗談を――」
?『デゥっアアアアアアアアアアアアッーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』
男「誰かいるううううううううう!!!!!」
部屋の中からものすごい絶叫が聞こえてきた。
98 :
地の文付いてるvipのSS久しぶりに見た気がする
がんがれ
99 = 1 :
娘「だから部屋に居るといっただろう」
お前なんで、何を当たり前なこと声を大にして言ってやがるんだよコイツみたいな顔してるんだよ……。
?『男おおおおおおおおおおうああああああうううあああおろああ!!!!!!!!! しゃあああ!!』
男「あわわわわわああ!?!?! どうすればいいのっ? なんかあたしの名前呼んでるよっ!? 怖いよおおおおおお!! うわーん!!!」
台詞だけ読めば不審者におびえる可愛い女の子だった。まあ俺だけど。
娘「おいおい、そんなに取り乱しても仕方ないだろ。事はもう起きてしまっているのだから」
男「お前が入れたんだろうがよっ!!」
?『男あああわっっおうっおろろろろこおおおおうっ……うあう、はやくううううう、早く、ひゃああく来てくれっえええええええ!!!!』
なんかすげー俺の事呼んでるよこの不審者っ! すっげー怖いぜ。
だがよ。
男「チクショウ……こんな羽目になるとはな……」
右手で顔を覆うポーズをとりつつ、俺はニヒルに微笑する。
娘「おおっ、何故かいきなり顔つきが漢らしくなったぞ!」
100 :
コリン性蕁麻疹はきついよな。
吊革をつかんだ腕の赤い発疹を見られるのは嫌だ。
自分の汗がアレルゲンってどうなんだ(笑)
みんなの評価 : ★
類似してるかもしれないスレッド
- 八尺様「ぽぽぽぽぽぽ」男「うるせぇぇぇ!!」 (330) - [49%] - 2012/8/30 3:00 ☆
- 咲「おーい、和。おもち触らしてくんね?」 (119) - [48%] - 2013/1/9 22:45 ☆
- 咲「エッチまでしたのにふざけないでよ!!」 (965) - [46%] - 2012/7/7 3:15 ★★★
- サカキ「お……お、女になってる!?」 (1001) - [45%] - 2009/9/28 22:02 ★★★×4
- 姉「ねえHしようよ」弟「しねーよ!」 (220) - [44%] - 2012/10/18 3:15 ☆
- 妹「エロ本ばっか見てんじゃねーよ!」 (1001) - [43%] - 2008/8/21 4:16 ★★★
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について