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元スレあかり「ずっと贈りたかった言葉があるんだよ」
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ガラリとドアを開けると、にこにこした笑顔であかりちゃんが立っていた。
「久し振りに来たから道に迷いそうだったよぉ」ととてもそうなっていた人とは
思えない口調でそう言って、あかりちゃんは少しだけ乱れていた髪を手で梳かした。
ちなつ「迎えに行けばよかったね」
そう言いながら、あかりちゃんを迎え入れる。
「お邪魔します」と、あかりちゃんは丁寧に靴を脱いで並べた。
こうして実際に会うのは数週間ぶり。
ちなつ「……」
あかり「どうかした?」
ついじっとあかりちゃんを見ていたせいで、靴を並べ終えて顔を上げたあかりちゃんが
不思議そうな顔をした。
ちなつ「あ、ううん……ちょっと髪伸びた?」
「久し振りに来たから道に迷いそうだったよぉ」ととてもそうなっていた人とは
思えない口調でそう言って、あかりちゃんは少しだけ乱れていた髪を手で梳かした。
ちなつ「迎えに行けばよかったね」
そう言いながら、あかりちゃんを迎え入れる。
「お邪魔します」と、あかりちゃんは丁寧に靴を脱いで並べた。
こうして実際に会うのは数週間ぶり。
ちなつ「……」
あかり「どうかした?」
ついじっとあかりちゃんを見ていたせいで、靴を並べ終えて顔を上げたあかりちゃんが
不思議そうな顔をした。
ちなつ「あ、ううん……ちょっと髪伸びた?」
あかり「えっ、そう?」
ちなつ「そんな気がする」
私の中のあかりちゃんは、ほぼ中学生の頃の姿のまま留まっているからなんだか
随分と髪が伸びたような気がする。
この前会ったときは気づかなかったんだけど。
あかり「うーん、今ね、ちょっと伸ばしてるの」
ちなつ「髪?」
あかり「そう、さらさらロングヘアー、憧れてて」
そういえばあかりちゃんのお姉さんは髪長かったんだっけ。
前にお姉ちゃんに見せてもらった写真を思い出す。
ちなつ「そっかー、似合うんじゃない?」
あかり「えへへ、ありがと」
ちなつ「そんな気がする」
私の中のあかりちゃんは、ほぼ中学生の頃の姿のまま留まっているからなんだか
随分と髪が伸びたような気がする。
この前会ったときは気づかなかったんだけど。
あかり「うーん、今ね、ちょっと伸ばしてるの」
ちなつ「髪?」
あかり「そう、さらさらロングヘアー、憧れてて」
そういえばあかりちゃんのお姉さんは髪長かったんだっけ。
前にお姉ちゃんに見せてもらった写真を思い出す。
ちなつ「そっかー、似合うんじゃない?」
あかり「えへへ、ありがと」
そう嬉しそうなあかりちゃんが、ふと動きを止めた。
そこに何かあったわけじゃない。けど、あかりちゃんが何を見ているのか
わかった気がして少し居心地が悪くなる。
練習のつもりでしたことだったけど、あかりちゃんはあのとき何を思っていたんだろう。
触れていた指の温もりが今にも蘇ってきそうになる。
あかり「……あ、お茶」
ぽつりとあかりちゃんが呟いた。
私はあかりちゃんに差し出しかけていた手をそっと背中に隠す。
あかり「ちなつちゃん、お茶淹れてくれる?」
そう言って、あかりちゃんはいつもどおりに立ち上がった。
そこに何かあったわけじゃない。けど、あかりちゃんが何を見ているのか
わかった気がして少し居心地が悪くなる。
練習のつもりでしたことだったけど、あかりちゃんはあのとき何を思っていたんだろう。
触れていた指の温もりが今にも蘇ってきそうになる。
あかり「……あ、お茶」
ぽつりとあかりちゃんが呟いた。
私はあかりちゃんに差し出しかけていた手をそっと背中に隠す。
あかり「ちなつちゃん、お茶淹れてくれる?」
そう言って、あかりちゃんはいつもどおりに立ち上がった。
◆
あかり「誰もいないの?」
ちなつ「相変わらずお父さんもお母さんもお出かけ中」
あかり「そっかぁ」
とりあえずリビングのソファーにあかりちゃんを座らせて、私はかちゃかちゃと
お茶の用意。
あかりちゃんと再会してから、また自分でお茶を淹れるようになったからそれなりに
手際よくはできるけど腕は落ちちゃってるかもしれない。
ちなつ「前みたいに美味しくないかもよ?」
あかり「ちなつちゃんのは全部美味しいよ」
根拠のないことをあかりちゃんは平気で言って。
でもあかりちゃんが根拠もないのに大丈夫と言ったことは大抵大丈夫だから、
美味しく淹れられたのかもしれない。
そろそろと熱いお茶を、あかりちゃんの前に置く。
あかり「誰もいないの?」
ちなつ「相変わらずお父さんもお母さんもお出かけ中」
あかり「そっかぁ」
とりあえずリビングのソファーにあかりちゃんを座らせて、私はかちゃかちゃと
お茶の用意。
あかりちゃんと再会してから、また自分でお茶を淹れるようになったからそれなりに
手際よくはできるけど腕は落ちちゃってるかもしれない。
ちなつ「前みたいに美味しくないかもよ?」
あかり「ちなつちゃんのは全部美味しいよ」
根拠のないことをあかりちゃんは平気で言って。
でもあかりちゃんが根拠もないのに大丈夫と言ったことは大抵大丈夫だから、
美味しく淹れられたのかもしれない。
そろそろと熱いお茶を、あかりちゃんの前に置く。
ちなつ「はい、どーぞ」
あかり「あっ、ありがとー。ずっと楽しみにしてたんだよ」
一旦あかりちゃんは居住まいを正すと、「いただきます」と手を合わせた。
お茶を飲むのに手を合わせる人なんてそうはいないから、なんだかおかしい。
熱いのにろくに冷まそうともせずあかりちゃんはお茶を口にした。
こくんと喉が動いて、それからすぐに幸せそうな顔になった。
あかり「ちなつちゃんだぁ」
ちなつ「……なにそれ」
あかり「えへへ」
あかり「あっ、ありがとー。ずっと楽しみにしてたんだよ」
一旦あかりちゃんは居住まいを正すと、「いただきます」と手を合わせた。
お茶を飲むのに手を合わせる人なんてそうはいないから、なんだかおかしい。
熱いのにろくに冷まそうともせずあかりちゃんはお茶を口にした。
こくんと喉が動いて、それからすぐに幸せそうな顔になった。
あかり「ちなつちゃんだぁ」
ちなつ「……なにそれ」
あかり「えへへ」
それからすぐ、お茶が冷めてしまわないうちに私は「はい」とあかりちゃんに前にお姉ちゃんが茶道部で
使っていたお茶の淹れ方が書かれているコピー用紙を手渡して簡単に説明した。
あかりちゃんはわかったようなわからないような顔で頷くだけだった。
ちなつ「まあそんな感じかな」
あかり「また家に帰ったらやってみるね」
ちなつ「うん」
いつのまにかもうすぐ昼前。
どうでもいいような話も挟みながらだったから、簡単に終わらせるはずがかなりの
時間が経っていたようだった。
あかり「ちなつちゃん」
私と同じく時計を気にしていたあかりちゃんが、コピー用紙を持っていた鞄に
仕舞いながら言った。
使っていたお茶の淹れ方が書かれているコピー用紙を手渡して簡単に説明した。
あかりちゃんはわかったようなわからないような顔で頷くだけだった。
ちなつ「まあそんな感じかな」
あかり「また家に帰ったらやってみるね」
ちなつ「うん」
いつのまにかもうすぐ昼前。
どうでもいいような話も挟みながらだったから、簡単に終わらせるはずがかなりの
時間が経っていたようだった。
あかり「ちなつちゃん」
私と同じく時計を気にしていたあかりちゃんが、コピー用紙を持っていた鞄に
仕舞いながら言った。
あかり「あのね」
久し振りに見た、あかりちゃんの困ったような顔。
困ったような、というよりもきっと今のあかりちゃんを言い表すには泣きそうのほうが
ぴったりかもしれない。
あかり「あかり、そろそろ帰らなきゃ」
ちなつ「えっ……」
あかり「勉強、しなきゃいけないから」
ちなつ「あっ、うん……そうだよね」
まだお昼にもなっていないのに、あかりちゃんは鞄を持ってソファーから立ち上がる。
私はまだ向かい側に座ったまま、あかりちゃんを見上げた。
もう少し何か言いたそうに、あかりちゃんが私を見ていたから。
久し振りに見た、あかりちゃんの困ったような顔。
困ったような、というよりもきっと今のあかりちゃんを言い表すには泣きそうのほうが
ぴったりかもしれない。
あかり「あかり、そろそろ帰らなきゃ」
ちなつ「えっ……」
あかり「勉強、しなきゃいけないから」
ちなつ「あっ、うん……そうだよね」
まだお昼にもなっていないのに、あかりちゃんは鞄を持ってソファーから立ち上がる。
私はまだ向かい側に座ったまま、あかりちゃんを見上げた。
もう少し何か言いたそうに、あかりちゃんが私を見ていたから。
あかり「ちなつちゃんももうすぐ受験だよね」
ちなつ「一応だけど……」
あかり「お互い、頑張らなきゃだよね」
あぁ、と思った。
これからあかりちゃんが言わんとしていることが、わかった気がして。
私は「そうだよね」と、もう一度呟いた。
あかり「……あかり、しばらくちなつちゃんに電話もメールもできないかも」
ちなつ「一応だけど……」
あかり「お互い、頑張らなきゃだよね」
あぁ、と思った。
これからあかりちゃんが言わんとしていることが、わかった気がして。
私は「そうだよね」と、もう一度呟いた。
あかり「……あかり、しばらくちなつちゃんに電話もメールもできないかも」
ずっと練習してきたような口振り。
私は「うん」と頷いて。
あかり「ごめんね」
何度、私はごめんねと言われればいいんだろうか。
結衣先輩にも、京子先輩にも、そしてあかりちゃんにまで。
ちなつ「しかたないよね。受験、頑張ってね」
わかってた、きっとあかりちゃんの邪魔になってるだろうなってこと。
だけど毎日電話してきてくれたあかりちゃんにずっと甘えていたくて。
好きだとか好きじゃないとか、今はそんなことはどうでもよかった。
ただ、あかりちゃんの声が聞けない夜のことを思ってひどく怖いと思った。
私は「うん」と頷いて。
あかり「ごめんね」
何度、私はごめんねと言われればいいんだろうか。
結衣先輩にも、京子先輩にも、そしてあかりちゃんにまで。
ちなつ「しかたないよね。受験、頑張ってね」
わかってた、きっとあかりちゃんの邪魔になってるだろうなってこと。
だけど毎日電話してきてくれたあかりちゃんにずっと甘えていたくて。
好きだとか好きじゃないとか、今はそんなことはどうでもよかった。
ただ、あかりちゃんの声が聞けない夜のことを思ってひどく怖いと思った。
「またね」と手を振った。
あかりちゃんは何も言わずに私に手を振り替えしただけだった。
その背中を最後まで見届けて、私は真昼なのになんだかひんやり寒い家の中に
戻った。
むなしい気持ちが押し寄せてきて、私はかたんとドアを背に座り込んだ。
ちなつ「……」
結衣先輩に会いたいな。
真っ先に思うのはそんなこと。
大丈夫。
私はまだ、結衣先輩のこと忘れてない。
あかりちゃんのことなんか、好きになんてなっていない。
あかりちゃんは何も言わずに私に手を振り替えしただけだった。
その背中を最後まで見届けて、私は真昼なのになんだかひんやり寒い家の中に
戻った。
むなしい気持ちが押し寄せてきて、私はかたんとドアを背に座り込んだ。
ちなつ「……」
結衣先輩に会いたいな。
真っ先に思うのはそんなこと。
大丈夫。
私はまだ、結衣先輩のこと忘れてない。
あかりちゃんのことなんか、好きになんてなっていない。
おい・・・おぃいいい(´ ; ω; `)
切ないやないけ・・・
切ないやないけ・・・
>>387
やめて、マジやめて
やめて、マジやめて
ィ- 、 ィ-..
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―――――
―――――
その日の夕方だった。ぼんやりとテレビを見ていたら、意外な人からの電話。
その人は、「久し振り」の一言もなしに突然『ほんとなの!?』と
うるさいくらいの声で訊ねてきた。
ちなつ「えっ、ほんとって……?」
櫻子『あかりちゃんだよあかりちゃん!』
ちなつ「あかりちゃん?」
櫻子『だってだって、こっから離れちゃうって今日向日葵から聞いて吃驚してさ!』
―――――
その日の夕方だった。ぼんやりとテレビを見ていたら、意外な人からの電話。
その人は、「久し振り」の一言もなしに突然『ほんとなの!?』と
うるさいくらいの声で訊ねてきた。
ちなつ「えっ、ほんとって……?」
櫻子『あかりちゃんだよあかりちゃん!』
ちなつ「あかりちゃん?」
櫻子『だってだって、こっから離れちゃうって今日向日葵から聞いて吃驚してさ!』
中学の頃のクラスメイトだった櫻子ちゃんが、興奮したように早口でそう言って。
私はそっと電話を耳から離す。
結構そういう話って同級生の間でまわるものなんだなあ。そういえばあかりちゃんの前にも
誰かが上京するという話を聞いたことがある気がする。そこまで仲良くなかった子だから
聞き流していただけで。
ちなつ「あー……ていうかどうして私に電話なの?」
櫻子『ちなつちゃんが一番早く知ってるかなと思って!一番仲良かったし』
櫻子ちゃんとも高校は離れてしまって、連絡は絶え絶えだった。
だから私とあかりちゃんが会わなくなっていたことを知らないのだろう。
今日も。
あの日電車なんか乗り過ごさずにあかりちゃんと会わずにいたら、結衣先輩からの
電話のあと、寂しいなんて思わなかったら。
今日だって、私とあかりちゃんの距離はずっと離れたままだった。
一旦近付いてまた離れてしまう悲しさなんて、感じずに済んでいた。
私はそっと電話を耳から離す。
結構そういう話って同級生の間でまわるものなんだなあ。そういえばあかりちゃんの前にも
誰かが上京するという話を聞いたことがある気がする。そこまで仲良くなかった子だから
聞き流していただけで。
ちなつ「あー……ていうかどうして私に電話なの?」
櫻子『ちなつちゃんが一番早く知ってるかなと思って!一番仲良かったし』
櫻子ちゃんとも高校は離れてしまって、連絡は絶え絶えだった。
だから私とあかりちゃんが会わなくなっていたことを知らないのだろう。
今日も。
あの日電車なんか乗り過ごさずにあかりちゃんと会わずにいたら、結衣先輩からの
電話のあと、寂しいなんて思わなかったら。
今日だって、私とあかりちゃんの距離はずっと離れたままだった。
一旦近付いてまた離れてしまう悲しさなんて、感じずに済んでいた。
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