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元スレあかり「ずっと贈りたかった言葉があるんだよ」

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「ありがとうございましたー」
店員さんの機械的な声を背に、私は買ったばかりの肉まんを口にくわえた。
熱い。
もうそろそろ寒いとはいっても、まだ帰り道にほかほかの肉まんを食べるのには
早すぎる季節なのかもしれない。
ちなつ「はーあ」
溜息を吐いて、立ち止まる。
高校生になって三年目の冬は、もう目前だ。いっそ早く冬になってしまえばいいのに。
中途半端な時期に生まれてしまった自分自身を呪いたい。
今年の誕生日も、一番大切な人からはきっと祝ってもらえない。
だって、一番大切な人なんていないから。
店員さんの機械的な声を背に、私は買ったばかりの肉まんを口にくわえた。
熱い。
もうそろそろ寒いとはいっても、まだ帰り道にほかほかの肉まんを食べるのには
早すぎる季節なのかもしれない。
ちなつ「はーあ」
溜息を吐いて、立ち止まる。
高校生になって三年目の冬は、もう目前だ。いっそ早く冬になってしまえばいいのに。
中途半端な時期に生まれてしまった自分自身を呪いたい。
今年の誕生日も、一番大切な人からはきっと祝ってもらえない。
だって、一番大切な人なんていないから。
ピッピッピッ
ブレザーに入った携帯を開け、私は今振られたばかりの子からの着信やメールを
すべて削除した。
高校生になって、これで何度目だろう。
この三年の間にたぶん数回は恋してそれで全て振られた。
当たり前といっちゃ当たり前なのだろうけど、でも告白せずに終わりたくはなかった。
初めて好きになった人のことがあるから。
中学生のときの初恋。その人は先輩で、本当に素敵な人で、だけど私は何も出来ないまま
彼女は卒業してしまった。それっきり、今でも連絡はあるけれど、彼女には他に大切な人がいる。
一年のブランク。それが長かったわけじゃなく、何も伝えられなかった私が悪い。
だから玉砕するとわかってはいても、私は伝えてしまいたかった。
ちなつ「……もう、高校卒業するまでは恋愛はお預けかなー」
携帯を閉じて、もう一度肉まんにかじりつく。
もうすっかり熱は冷めてしまっていた。
ブレザーに入った携帯を開け、私は今振られたばかりの子からの着信やメールを
すべて削除した。
高校生になって、これで何度目だろう。
この三年の間にたぶん数回は恋してそれで全て振られた。
当たり前といっちゃ当たり前なのだろうけど、でも告白せずに終わりたくはなかった。
初めて好きになった人のことがあるから。
中学生のときの初恋。その人は先輩で、本当に素敵な人で、だけど私は何も出来ないまま
彼女は卒業してしまった。それっきり、今でも連絡はあるけれど、彼女には他に大切な人がいる。
一年のブランク。それが長かったわけじゃなく、何も伝えられなかった私が悪い。
だから玉砕するとわかってはいても、私は伝えてしまいたかった。
ちなつ「……もう、高校卒業するまでは恋愛はお預けかなー」
携帯を閉じて、もう一度肉まんにかじりつく。
もうすっかり熱は冷めてしまっていた。
◆
家に帰って机に向かっても、今日は勉強する気なんてまったく起きずに早々に
布団にもぐりこんだ。
温かい布団が気持ちよくて、まだ早い時間なのにうとうととする。
だから最初、枕元の携帯がぴかぴかと光っていることに気付かなかった。
それでも暗闇の中、何か光が瞬いているのに気付いて携帯を開けた。
京子先輩からの電話だった。
京子『もしもーし』
ちなつ「京子先輩……?」
京子『もしかして寝てた?』
ちなつ「寝そうになってましたよせっかく気持ちよかったのに」
京子『わるいわるい』
家に帰って机に向かっても、今日は勉強する気なんてまったく起きずに早々に
布団にもぐりこんだ。
温かい布団が気持ちよくて、まだ早い時間なのにうとうととする。
だから最初、枕元の携帯がぴかぴかと光っていることに気付かなかった。
それでも暗闇の中、何か光が瞬いているのに気付いて携帯を開けた。
京子先輩からの電話だった。
京子『もしもーし』
ちなつ「京子先輩……?」
京子『もしかして寝てた?』
ちなつ「寝そうになってましたよせっかく気持ちよかったのに」
京子『わるいわるい』
そう言って笑う京子先輩の声はまったく中学生の頃と変わっていない。
けれどこの前会った京子先輩は、驚くほど大人っぽくなっていて。
そりゃもう大学生だし、それなりに京子先輩だって思うところはあるんだろうけど。
やっぱり、結衣先輩と一緒にいるからなのかな。
そんなふうに思ってしまうときがある。
まだ未練あるのかなとか、バカなこと考えてしまう。
私はそんなに未練たらたらな女じゃないはずなのに。
ちなつ「どうしたんですか?」
京子『んー?勉強頑張ってるかなって……』
ちなつ「寝てたって言いましたよね」
京子『頑張ってないのか』
ちなつ「まあ……第一志望は一応推薦だから受かると思います」
京子『第二志望は?結衣もさ、もちろん私もちなつちゃんと同じ大学に行きたいなって思ってるんだけど』
けれどこの前会った京子先輩は、驚くほど大人っぽくなっていて。
そりゃもう大学生だし、それなりに京子先輩だって思うところはあるんだろうけど。
やっぱり、結衣先輩と一緒にいるからなのかな。
そんなふうに思ってしまうときがある。
まだ未練あるのかなとか、バカなこと考えてしまう。
私はそんなに未練たらたらな女じゃないはずなのに。
ちなつ「どうしたんですか?」
京子『んー?勉強頑張ってるかなって……』
ちなつ「寝てたって言いましたよね」
京子『頑張ってないのか』
ちなつ「まあ……第一志望は一応推薦だから受かると思います」
京子『第二志望は?結衣もさ、もちろん私もちなつちゃんと同じ大学に行きたいなって思ってるんだけど』
第二志望の大学は京子先輩と結衣先輩の通う学校。
私でも手が届かないほどレベルの高い学校というわけでもなく今からでも少し頑張れば
入れるところだけど、私はどうしても、行きたくなかった。それはもちろん、昔みたいに
結衣先輩たちと一緒にバカ騒ぎできたらいいと思う。それに今はもう、失恋の傷だって癒えてしまっている。
それでもなんとなく、嫌だった。
けれど誘われているのに志望校にすらいれないのもそれはどうかと思って、一応形だけの
第二志望として受験することになっていた。
念のために第一志望校は絶対に入ることのできる場所を選んで。
京子『まあ推薦で受かるんだったら無理か』
ちなつ「ですね」
京子『あかりも違う大学受けるって言ってるしなあ』
私でも手が届かないほどレベルの高い学校というわけでもなく今からでも少し頑張れば
入れるところだけど、私はどうしても、行きたくなかった。それはもちろん、昔みたいに
結衣先輩たちと一緒にバカ騒ぎできたらいいと思う。それに今はもう、失恋の傷だって癒えてしまっている。
それでもなんとなく、嫌だった。
けれど誘われているのに志望校にすらいれないのもそれはどうかと思って、一応形だけの
第二志望として受験することになっていた。
念のために第一志望校は絶対に入ることのできる場所を選んで。
京子『まあ推薦で受かるんだったら無理か』
ちなつ「ですね」
京子『あかりも違う大学受けるって言ってるしなあ』
寂しげに溜息を吐きながら、京子先輩が言った。
あかり。
その名前を久し振りに聞いた気がする。
赤座あかりちゃん。
中学校のときに同じクラスで、同じごらく部のメンバーとして仲良くしていた。
けれど高校が別々になってしまってからは、あまり会わなくなってしまった。
始めの方はそれなりに電話やメールもしていたのに、今じゃそれも途絶えてしまっている。
ちなつ「そういえばあかりちゃん、どこ行くんですか?」
京子『なんかお姉さんと同じとこ行きたいみたい』
ちなつ「あそこって難しいんじゃ……」
京子『浪人する覚悟でとか言って笑ってたよ。まあ、あかりだし行けるんじゃね?』
あかり。
その名前を久し振りに聞いた気がする。
赤座あかりちゃん。
中学校のときに同じクラスで、同じごらく部のメンバーとして仲良くしていた。
けれど高校が別々になってしまってからは、あまり会わなくなってしまった。
始めの方はそれなりに電話やメールもしていたのに、今じゃそれも途絶えてしまっている。
ちなつ「そういえばあかりちゃん、どこ行くんですか?」
京子『なんかお姉さんと同じとこ行きたいみたい』
ちなつ「あそこって難しいんじゃ……」
京子『浪人する覚悟でとか言って笑ってたよ。まあ、あかりだし行けるんじゃね?』
たしかに、あかりちゃんは中学校のときもこつこつ勉強してたから結局すごく
レベルの高い高校に行っちゃって。
今だってこつこつ勉強してさーっと手の届かないところに行っちゃうんだろうな。
ちなつ「……遠いですよね」
京子『遠いね。お姉さんは家から通ってるけどあかりは家出たいって言ってたしね』
ちなつ「あかりちゃんが一人暮らしって、想像できないかも」
京子『まああれでも結構しっかりしてるしなあ』
ちなつ「よけい会いにくくなっちゃうな……」
ぽつりと呟いただけなのに、京子先輩は『最近会ってないんだっけ』とご丁寧に
その言葉を拾ってくれた。
レベルの高い高校に行っちゃって。
今だってこつこつ勉強してさーっと手の届かないところに行っちゃうんだろうな。
ちなつ「……遠いですよね」
京子『遠いね。お姉さんは家から通ってるけどあかりは家出たいって言ってたしね』
ちなつ「あかりちゃんが一人暮らしって、想像できないかも」
京子『まああれでも結構しっかりしてるしなあ』
ちなつ「よけい会いにくくなっちゃうな……」
ぽつりと呟いただけなのに、京子先輩は『最近会ってないんだっけ』とご丁寧に
その言葉を拾ってくれた。
ちなつ「中々会う時間もないですし」
そう答えると、京子先輩は『うん』と頷いて押し黙った。
そのまま時間が過ぎる。
あかりちゃん、元気にしてるかな。
突然そんなことを思った。
最後にメールが来たのはたぶん夏休みが入る前。まだ数ヶ月前なのに、もう随分と
懐かしい記憶のような気がした。
京子『たまにはあかりに電話でもしてやったら?』
やがて京子先輩がまた口を開いて。
私は「そうですね」
頷いた。
それでもたぶん、私からあかりちゃんに電話することはないと思う。
そう答えると、京子先輩は『うん』と頷いて押し黙った。
そのまま時間が過ぎる。
あかりちゃん、元気にしてるかな。
突然そんなことを思った。
最後にメールが来たのはたぶん夏休みが入る前。まだ数ヶ月前なのに、もう随分と
懐かしい記憶のような気がした。
京子『たまにはあかりに電話でもしてやったら?』
やがて京子先輩がまた口を開いて。
私は「そうですね」
頷いた。
それでもたぶん、私からあかりちゃんに電話することはないと思う。
>最後にメールが来たのはたぶん夏休みが入る前。
→
最後にメールが来たのはたぶん夏休みに入る直前。
→
最後にメールが来たのはたぶん夏休みに入る直前。
私たちの卒業式の日。
あの日から、私たちの友達としての関係は崩れてしまったような気がする。
でもたぶん本当はあの日からなんかじゃなくって、もっと前からだ。
あの時突然、目の前が真っ暗になって、それで――
今でもまだあかりちゃんの唇の感触を思い出すことが出来る。
それは練習としてではなくあかりちゃんの意思によるもので、それでも重ねた唇が
震えていたことを、今でもよく覚えている。
今までありがとう。
あかりちゃんの声が、確かにそう言っていたことも。
あの日から、私たちの友達としての関係は崩れてしまったような気がする。
でもたぶん本当はあの日からなんかじゃなくって、もっと前からだ。
あの時突然、目の前が真っ暗になって、それで――
今でもまだあかりちゃんの唇の感触を思い出すことが出来る。
それは練習としてではなくあかりちゃんの意思によるもので、それでも重ねた唇が
震えていたことを、今でもよく覚えている。
今までありがとう。
あかりちゃんの声が、確かにそう言っていたことも。
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わ あ \
ん か )――……― 、
わ り / > 、
ん く ( {三>
だ \二^ヽ . / <;;;>\―''\
| )三.} } / 人,,イ_|__\
! /ミニソ !二コ~ | |\:.:.:.:.:\|
\ く /|:.:.:.:.乂_ノ:):.:|:.:.:.\:.|
/三三へ_> /|:.:.:.!:.:.:.::|:.:.:.:.:.:/ート:.:.:.:.:r}
i三三/ .イ:.:.:.ヤ丁~Vヽ:.:.:./ >=ミv:.:.:.:|ム
.三三{ .イ:.|:.:.:.:i|≫≠ミ 人/ ハノ;;}〉:.:.:.:!三!
.三三{ ./:.:|:.:|:.:.:.:.|Λノ;;;,}` 弋ソ }:|ハ|三}
.三三{ .7.:.:.:.:.ト、:.:.:|! 乂.ソ ,,, |:.:.:|ノニノ
ハ三ハ |ミ:.|:. !:.ヽ:.:\ ,,, _ ' .ィ'|:.:.:!リ
く >リヽ\:.\:.:フ ( ノ ィ<ノ:ノ|
Y^ィ^t\:.:.:\:.ヽ≧==≦ヲ /ヽ
ヘ| / //)-.…\ヽ >厶 ' r-、r-、
/三ニヽ / /○ \ \/i三i}
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ちなつ「……」
人差し指でなぞる唇。
リップを塗っていないそれは、少しガサガサしていた。
京子『んじゃ、そろそろ切るね』
ちなつ「あ、はい。本当に用、勉強してるか確かめるためだったんですか?」
京子『いや、久々にちなつちゃんの声が聞きたいなってさ』
結衣先輩がいるくせに。
そう呟いた声が聞こえたのか、最後に「ごめんね」という声が聞こえた。
謝って欲しかったわけじゃなかったのに、私こそなんだか申し訳なくなってくる。
ちなつ「おやすみなさい」
だから私はそう言った。
京子先輩は、明るい声で「おやすみ」と返してくれた。
人差し指でなぞる唇。
リップを塗っていないそれは、少しガサガサしていた。
京子『んじゃ、そろそろ切るね』
ちなつ「あ、はい。本当に用、勉強してるか確かめるためだったんですか?」
京子『いや、久々にちなつちゃんの声が聞きたいなってさ』
結衣先輩がいるくせに。
そう呟いた声が聞こえたのか、最後に「ごめんね」という声が聞こえた。
謝って欲しかったわけじゃなかったのに、私こそなんだか申し訳なくなってくる。
ちなつ「おやすみなさい」
だから私はそう言った。
京子先輩は、明るい声で「おやすみ」と返してくれた。
―――――
―――――
次の日。
京子先輩からの電話で紛れた気も、突然深夜にぐずぐずとやな感じの気持ちが
広がって結局うまく眠ることが出来なかった。京子先輩から電話が来なかったら
ちゃんと眠れてたかもしれないのに、なんて理不尽な怒りを覚えつつ今日最後の授業を受ける。
もうほとんど教えられることなんてないはずなのに、どうして授業に出なきゃ
いけないのか。
そんなふうなことを考えてうとうとして。
昨日振られてしまった子とはもう話していないし、違うクラスの子でよかったと
思う。こんな姿を見られたら、本当に自分のことが好きだったのかと疑いをもたれそうだ。
失恋したはずなのに呑気に居眠りなんかして、今までもそうだったからこそ振られちゃったのかもしれないけど。
―――――
次の日。
京子先輩からの電話で紛れた気も、突然深夜にぐずぐずとやな感じの気持ちが
広がって結局うまく眠ることが出来なかった。京子先輩から電話が来なかったら
ちゃんと眠れてたかもしれないのに、なんて理不尽な怒りを覚えつつ今日最後の授業を受ける。
もうほとんど教えられることなんてないはずなのに、どうして授業に出なきゃ
いけないのか。
そんなふうなことを考えてうとうとして。
昨日振られてしまった子とはもう話していないし、違うクラスの子でよかったと
思う。こんな姿を見られたら、本当に自分のことが好きだったのかと疑いをもたれそうだ。
失恋したはずなのに呑気に居眠りなんかして、今までもそうだったからこそ振られちゃったのかもしれないけど。
実際本当に好きだったんだと思う。
本当に好きでも、後を引くほど好きになったわけじゃない。
告白して、気持ちを伝えてしまったら全てがなんだかすっきりして、もういいや、と
思ってしまうのだ。
ちなつ「……」
きっと、結衣先輩に関してだけは違って。
あれほど好きになった人にはなにも伝えられないままなのに、なんとなく人生って
ひどいものだなあと思う。
もう結衣先輩以上に好きになれる人なんていないんじゃないんだろうか。
なんて。
たまに不安になる。
本当に好きでも、後を引くほど好きになったわけじゃない。
告白して、気持ちを伝えてしまったら全てがなんだかすっきりして、もういいや、と
思ってしまうのだ。
ちなつ「……」
きっと、結衣先輩に関してだけは違って。
あれほど好きになった人にはなにも伝えられないままなのに、なんとなく人生って
ひどいものだなあと思う。
もう結衣先輩以上に好きになれる人なんていないんじゃないんだろうか。
なんて。
たまに不安になる。
◆
キーンコーンカーンコーン
校舎中を震わせるほどのチャイムが鳴り響いてすぐ、私は帰り支度もそこそこに
教室を出た。
結局最後の授業はずっと半分眠ったまま聞いていたから、ろくにノートもとれていない。
一応最後の最後まできちんと授業を受けなきゃなんないはずなのにな。
ぼんやり考えながら駅まで歩いて電車に乗る。
ちなつ「帰ったら単語して……」
うとうと。
うとうと。
いつのまにか電車の椅子に座って揺られているうちにまたまどろんでしまっていたらしい。
気が付けば、二駅も乗り過ごしていた。
慌てて立ち上がった。今止まったばかりの駅をおりて、走り去っていく電車を見送る。
ちなつ「あ……」
その電車が過ぎ去ってすぐに、私は思わずそんな間抜けな声を上げていた。
顔もたぶん、ひどく間抜けだったと思う。
見慣れたその人も、同じようにぽかんと私を見ていた。合った目も逸らせずに。
キーンコーンカーンコーン
校舎中を震わせるほどのチャイムが鳴り響いてすぐ、私は帰り支度もそこそこに
教室を出た。
結局最後の授業はずっと半分眠ったまま聞いていたから、ろくにノートもとれていない。
一応最後の最後まできちんと授業を受けなきゃなんないはずなのにな。
ぼんやり考えながら駅まで歩いて電車に乗る。
ちなつ「帰ったら単語して……」
うとうと。
うとうと。
いつのまにか電車の椅子に座って揺られているうちにまたまどろんでしまっていたらしい。
気が付けば、二駅も乗り過ごしていた。
慌てて立ち上がった。今止まったばかりの駅をおりて、走り去っていく電車を見送る。
ちなつ「あ……」
その電車が過ぎ去ってすぐに、私は思わずそんな間抜けな声を上げていた。
顔もたぶん、ひどく間抜けだったと思う。
見慣れたその人も、同じようにぽかんと私を見ていた。合った目も逸らせずに。
人身事故のため七森駅方面の電車が遅れています。
そんな駅のアナウンスが、私たちを現実に引き戻してくれた。
目が逸らされ、でも確かにその人の唇は私の名前を呼んだ。
ちなつ「あかりちゃん」
私もそう、返した。
その人は――あかりちゃんは、遠くでもわかるくらいに、
中学生の頃とちっとも変わらない困ったような顔でこくんと頷いた。
――――― ――
そんな駅のアナウンスが、私たちを現実に引き戻してくれた。
目が逸らされ、でも確かにその人の唇は私の名前を呼んだ。
ちなつ「あかりちゃん」
私もそう、返した。
その人は――あかりちゃんは、遠くでもわかるくらいに、
中学生の頃とちっとも変わらない困ったような顔でこくんと頷いた。
――――― ――
あかり「ちなつちゃん、久し振りだね」
ちなつ「うん、久し振り」
この辺りじゃすっかり珍しくなってしまったセーラー服に身を包んだあかりちゃんが
私の隣を歩きながらそう言った。
高校生になった頃メールで見せてもらった写真よりも今のあかりちゃんは随分とその制服が
板についていた。
あかり「まさかここで会うとは思わなかったよぉ」
学校へは反対方向だし、帰る時間帯も違うから帰り道に会うなんてことはこの三年間、
一度だってなかった。
「私も会うとは思わなかった」と溜息混じりに答える。
あかり「乗り過ごし?」
ちなつ「そんな感じかな」
ちなつ「うん、久し振り」
この辺りじゃすっかり珍しくなってしまったセーラー服に身を包んだあかりちゃんが
私の隣を歩きながらそう言った。
高校生になった頃メールで見せてもらった写真よりも今のあかりちゃんは随分とその制服が
板についていた。
あかり「まさかここで会うとは思わなかったよぉ」
学校へは反対方向だし、帰る時間帯も違うから帰り道に会うなんてことはこの三年間、
一度だってなかった。
「私も会うとは思わなかった」と溜息混じりに答える。
あかり「乗り過ごし?」
ちなつ「そんな感じかな」
そんな感じもなにも、そうとしか言いようがないわけだけど。
乗り過ごしたなんてことを素直に言うのは少し恥ずかしい。
あかり「そっかぁ」
ちなつ「あかりちゃんは今帰りだったの?」
あかり「うん、久し振りに早く帰ろうかなって思って」
最近はあんまり家に帰らないで図書館やどこかのお店で勉強してるんだぁ、と
にこにこあかりちゃんが言う。
ちなつ「あー、じゃあ残念だね、早く家に帰れなくて」
けれどさっきアナウンスがあったとおり、今は事故で電車が動かない状態で。
動くのには少し時間がかかると駅員さんが説明しているのが聞こえた。
あかりちゃんは「うん」と苦笑しながら、でも、と付け足した。
あかり「ちなつちゃんとこうやって話せるからラッキーかなぁ」
乗り過ごしたなんてことを素直に言うのは少し恥ずかしい。
あかり「そっかぁ」
ちなつ「あかりちゃんは今帰りだったの?」
あかり「うん、久し振りに早く帰ろうかなって思って」
最近はあんまり家に帰らないで図書館やどこかのお店で勉強してるんだぁ、と
にこにこあかりちゃんが言う。
ちなつ「あー、じゃあ残念だね、早く家に帰れなくて」
けれどさっきアナウンスがあったとおり、今は事故で電車が動かない状態で。
動くのには少し時間がかかると駅員さんが説明しているのが聞こえた。
あかりちゃんは「うん」と苦笑しながら、でも、と付け足した。
あかり「ちなつちゃんとこうやって話せるからラッキーかなぁ」
さっきの困ったような顔と同じく変わらない笑顔であかりちゃんはそう言った。
私は突然気まずくなって、あかりちゃんが見られなくなった。
もうだいぶ昔のことなのに、おまけに自分からしたことだってあるくせに、なんだか
目を合わせづらかった。
ちなつ「そ、そっか」
あかり「うん」
ちなつ「……」
あかり「……」
不自然な沈黙。
こういうとき、いつも先に口を開いてくれたのはあかりちゃんだった。けれど今日は、
あかりちゃんはずっと何も言わないままで。
私はいたたまれなくなって、「駅、出る?」と小さな声で言った。
あかりちゃんは「そうだね」といつもの声で答えた。
私は突然気まずくなって、あかりちゃんが見られなくなった。
もうだいぶ昔のことなのに、おまけに自分からしたことだってあるくせに、なんだか
目を合わせづらかった。
ちなつ「そ、そっか」
あかり「うん」
ちなつ「……」
あかり「……」
不自然な沈黙。
こういうとき、いつも先に口を開いてくれたのはあかりちゃんだった。けれど今日は、
あかりちゃんはずっと何も言わないままで。
私はいたたまれなくなって、「駅、出る?」と小さな声で言った。
あかりちゃんは「そうだね」といつもの声で答えた。
―――――
―――――
乗り越した分のお金はもちろんちゃんと払って、あかりちゃんも駅員さんにきちんと
伝え、私たちは駅を出た。
少しずつ暗くなってきた空をあかりちゃんはちらりと見上げた。
あかり「雨、降りそうだね」
ちなつ「あ、ほんとだ」
雨の降り始めのときのように、私たちはぽつりぽつりと会話を交わしながら
駅前の喫茶店に入った。
あかりちゃんはよく来ている場所らしく、慣れたように奥の席へと進んでそこに
座った。私もその前の席に腰を下ろす。
―――――
乗り越した分のお金はもちろんちゃんと払って、あかりちゃんも駅員さんにきちんと
伝え、私たちは駅を出た。
少しずつ暗くなってきた空をあかりちゃんはちらりと見上げた。
あかり「雨、降りそうだね」
ちなつ「あ、ほんとだ」
雨の降り始めのときのように、私たちはぽつりぽつりと会話を交わしながら
駅前の喫茶店に入った。
あかりちゃんはよく来ている場所らしく、慣れたように奥の席へと進んでそこに
座った。私もその前の席に腰を下ろす。
ちなつ「慣れてるね」
あかり「えへへ」
あかりちゃんはそう笑っただけで、「何か頼もうか」と私にメニューを差し出してきた。
確かに入って何も頼まずにいるのはまずいので、適当に一番安いコーヒーを注文することにした。
あかりちゃんも同じらしく、やってきた店員にそれを二つくださいと注文した。
あかり「最近はお金節約するようにしてるんだ」
ちなつ「あ、そうなんだ」
あかり「一人暮らしの資金、ちょっとでも貯めなきゃね」
あかり「えへへ」
あかりちゃんはそう笑っただけで、「何か頼もうか」と私にメニューを差し出してきた。
確かに入って何も頼まずにいるのはまずいので、適当に一番安いコーヒーを注文することにした。
あかりちゃんも同じらしく、やってきた店員にそれを二つくださいと注文した。
あかり「最近はお金節約するようにしてるんだ」
ちなつ「あ、そうなんだ」
あかり「一人暮らしの資金、ちょっとでも貯めなきゃね」
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