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元スレ朝倉「ただ月が綺麗だったから…」

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保守本当にありがとう
2~3時までは飛び飛びになってしまうかも
とりあえず…補導の警察官で無かった事に俺は安心した
そして何より…
「家出でもしたのか?」
その人物は不思議な雰囲気で…柔らかく話しかけてくれる
だから俺も…つい、話しをしてしまう
キョン「…電車が無くなって、帰れなくなっただけです」
「そか…家はどこだ?おじさんのタクシーで送ってやるぞ?」
キョン「……」
2~3時までは飛び飛びになってしまうかも
とりあえず…補導の警察官で無かった事に俺は安心した
そして何より…
「家出でもしたのか?」
その人物は不思議な雰囲気で…柔らかく話しかけてくれる
だから俺も…つい、話しをしてしまう
キョン「…電車が無くなって、帰れなくなっただけです」
「そか…家はどこだ?おじさんのタクシーで送ってやるぞ?」
キョン「……」
「どうした、ほら?」
キョン「場所は……」
電車で一時間の街の名前を、俺は口に出す
「ああ…あの街か。ここからだと高速使わにゃな」
タクシー…か
家まで送ってくれるのなら、確かにありがたい
だが…一番の問題は、また別にある
キョン「いや、でも俺お金が…」
「…いくらもってる?」
キョン「…一万円ちょうどです」
遠距離のタクシーなんて、いくらかかるか想像が全くつかない
みるみる料金メーターがあがるようなイメージしか、俺には無い
そんな乗り物を…選択肢に入れる事は、最初から出来るはずも無かった
キョン「場所は……」
電車で一時間の街の名前を、俺は口に出す
「ああ…あの街か。ここからだと高速使わにゃな」
タクシー…か
家まで送ってくれるのなら、確かにありがたい
だが…一番の問題は、また別にある
キョン「いや、でも俺お金が…」
「…いくらもってる?」
キョン「…一万円ちょうどです」
遠距離のタクシーなんて、いくらかかるか想像が全くつかない
みるみる料金メーターがあがるようなイメージしか、俺には無い
そんな乗り物を…選択肢に入れる事は、最初から出来るはずも無かった
「…そうか。まあ乗りなさい、すぐそこの…ほら、あのタクシーだから」
これで…足りる計算なのだろうか?
こんな深夜に声をかけて来た人物…
一応ちゃんとした身なりをしているとは言え、他人に付いていくなど、確かに危険極まりないだろう
しかし今の俺には何をどうする事もできなくて…
キョン「はい…お願いします」
俺は言われるままに、タクシーに乗るしかできなかった
一人で無い安心感と…ちょっとした車の中の温暖具合が、俺に少しの安らぎを与えてくれる
「さ、行くか」
車は夜の街を走っていく…
これで…足りる計算なのだろうか?
こんな深夜に声をかけて来た人物…
一応ちゃんとした身なりをしているとは言え、他人に付いていくなど、確かに危険極まりないだろう
しかし今の俺には何をどうする事もできなくて…
キョン「はい…お願いします」
俺は言われるままに、タクシーに乗るしかできなかった
一人で無い安心感と…ちょっとした車の中の温暖具合が、俺に少しの安らぎを与えてくれる
「さ、行くか」
車は夜の街を走っていく…
オレンジ色の街灯が流れていく
暗くてビルの向こうまでは見えないが…
それでも、昼は人間がたくさんいて賑やかそうな…そんな、真夜中の都会なのだというのがわかる
「何か約束でも?」
走る窓の外を見ていると、ふいに運転手が話しかけてくる
キョン「あ…出掛けて帰るところです」
「ははは、そういえばさっきもそう言ってたな」
気さくに笑ってくれる運転手が、今はとても優しく感じた
さっきまでの孤独とは違う
意外と、人間の感情とは左右にぶれるものらしい
今は、見ず知らずのこの人物が、俺の不安を少しだけ解消してくれている
暗くてビルの向こうまでは見えないが…
それでも、昼は人間がたくさんいて賑やかそうな…そんな、真夜中の都会なのだというのがわかる
「何か約束でも?」
走る窓の外を見ていると、ふいに運転手が話しかけてくる
キョン「あ…出掛けて帰るところです」
「ははは、そういえばさっきもそう言ってたな」
気さくに笑ってくれる運転手が、今はとても優しく感じた
さっきまでの孤独とは違う
意外と、人間の感情とは左右にぶれるものらしい
今は、見ず知らずのこの人物が、俺の不安を少しだけ解消してくれている
だが…それ以上に料金メーターを見ていると、不安になる
カシャカシャと、どんどん料金があがっている
少し走っただけで、もう千円近くになっている
キョン(…大丈夫なのか、これ?)
「いやー、俺も昔は色んな場所に出かけてなぁ…よく怒られてたもんだよ」
キョン「あ、あの……」
「お、もう高速だからな。大丈夫、高速乗ればすぐだよ、すぐ」
カシャリ、と運転手が手元をいじると前の方に表示されていた文字が『高速』に変わる
キョン(ダメだ、話を聞いこうとしてくれない…)
そして、車は高速を走っていく…
カシャカシャと、どんどん料金があがっている
少し走っただけで、もう千円近くになっている
キョン(…大丈夫なのか、これ?)
「いやー、俺も昔は色んな場所に出かけてなぁ…よく怒られてたもんだよ」
キョン「あ、あの……」
「お、もう高速だからな。大丈夫、高速乗ればすぐだよ、すぐ」
カシャリ、と運転手が手元をいじると前の方に表示されていた文字が『高速』に変わる
キョン(ダメだ、話を聞いこうとしてくれない…)
そして、車は高速を走っていく…
いい男に弱いキョンは誘われるまま
ホイホイとおじさんについていってしまったのだ
ホイホイとおじさんについていってしまったのだ
カシャ
カシャ
カシャ
さっきまでの道とは違って、すごい勢いでメーターがあがっていく
キョン(待て待て…高速に乗るとこんなに早く値段上がるのか…!)
やはり不安だ…たまらず、俺は運転手に話しかけてしまう
キョン「あ、あの……タクシーってお金かかるんですね…」
「ん?ああ、メーターはな、時間と距離で計算してるんだよ」
キョン「そうなんですか…?」
「さっきまでの一般道では走った距離と…時速10キロ以下だったかな。になると、停止時間が加算されるんだ」
キョン「ふむふむ…」
カシャ
カシャ
さっきまでの道とは違って、すごい勢いでメーターがあがっていく
キョン(待て待て…高速に乗るとこんなに早く値段上がるのか…!)
やはり不安だ…たまらず、俺は運転手に話しかけてしまう
キョン「あ、あの……タクシーってお金かかるんですね…」
「ん?ああ、メーターはな、時間と距離で計算してるんだよ」
キョン「そうなんですか…?」
「さっきまでの一般道では走った距離と…時速10キロ以下だったかな。になると、停止時間が加算されるんだ」
キョン「ふむふむ…」
「その停止時間だと…例えば信号待ちだな。時間が累積されて、停止時間が1分45秒を越えると金額が加算されるんだ」
キョン「ほう…」
「これがタクシーの仕組みだ。で、高速に乗ると、この停止時間は加算されないんだ」
キョン「このカシャカシャすごい勢いであがってるメーターですか?」
この間も料金はどんどんあがる
「高速だと、距離だけで計算されてるんだ。それだけ進んでいるって事だよ」
キョン「はぁ…なるほど」
料金はもう3000円を越えている
まだ見覚えのある街の名前は、高速の案内表示に表れない…
キョン(まだ…遠いみたいだな)
ひたすら、夜の高速道路を車は走っていく
なんだか、時間の流れが遅すぎるような…そんな気がした
キョン「ほう…」
「これがタクシーの仕組みだ。で、高速に乗ると、この停止時間は加算されないんだ」
キョン「このカシャカシャすごい勢いであがってるメーターですか?」
この間も料金はどんどんあがる
「高速だと、距離だけで計算されてるんだ。それだけ進んでいるって事だよ」
キョン「はぁ…なるほど」
料金はもう3000円を越えている
まだ見覚えのある街の名前は、高速の案内表示に表れない…
キョン(まだ…遠いみたいだな)
ひたすら、夜の高速道路を車は走っていく
なんだか、時間の流れが遅すぎるような…そんな気がした
2時22分
…カシャ
走りに走って、とうとうメーターが1万円を越えた
キョン(おいおい…まずいぞこれ…)
「でな、兄さんみたいな長距離移動者をタクシー用語で、おばけって言ってな…」
相変わらず、タクシーの事を一方的に喋っている
「いやあ、あんな時間にあんな場所にいるんだからな。しかも長距離…本当兄さんおばけだよおばけ! ははははっ」
とても嬉しそうに、じいさんは笑っている
客がタクシーに乗ったら、疲れていようがなんだろうが話し掛けるタイプなんだろう…
ここはまだ高速の途中だ…おろしてくれと言った所でどうにもならない
キョン(帰ったら、親を起こして…金を借りるしかないか。なんて説明するかな……)
…カシャ
走りに走って、とうとうメーターが1万円を越えた
キョン(おいおい…まずいぞこれ…)
「でな、兄さんみたいな長距離移動者をタクシー用語で、おばけって言ってな…」
相変わらず、タクシーの事を一方的に喋っている
「いやあ、あんな時間にあんな場所にいるんだからな。しかも長距離…本当兄さんおばけだよおばけ! ははははっ」
とても嬉しそうに、じいさんは笑っている
客がタクシーに乗ったら、疲れていようがなんだろうが話し掛けるタイプなんだろう…
ここはまだ高速の途中だ…おろしてくれと言った所でどうにもならない
キョン(帰ったら、親を起こして…金を借りるしかないか。なんて説明するかな……)
その後も、運転手によるタクシートークを聞きながら…なんとか地元まで戻ってくる事ができた
結局時間は…夜中の3時近くになっていた
時計は…3時2分
高速を降りて、少し走ると見慣れた町並みが広がっていく
キョン(ああ…懐かしい…とにかく、帰ってこれてよかった)
「さて、どこまで行けばいいのかな」
この時点で、料金メーターは2万円を軽く越えている
家に着くという事は、すなわちこの料金を支払わなければ降りられない…
キョン「とりあえず家まで…あの、お金が足りないんで親を起こしてから支払いを……」
「ああ、1万円でいいよ。オーバーしてる分はいらないよ」
キョン「え…」
「家はどの辺り?」
キョン「ま、待って下さい。お金はちゃんと払いますよ!」
結局時間は…夜中の3時近くになっていた
時計は…3時2分
高速を降りて、少し走ると見慣れた町並みが広がっていく
キョン(ああ…懐かしい…とにかく、帰ってこれてよかった)
「さて、どこまで行けばいいのかな」
この時点で、料金メーターは2万円を軽く越えている
家に着くという事は、すなわちこの料金を支払わなければ降りられない…
キョン「とりあえず家まで…あの、お金が足りないんで親を起こしてから支払いを……」
「ああ、1万円でいいよ。オーバーしてる分はいらないよ」
キョン「え…」
「家はどの辺り?」
キョン「ま、待って下さい。お金はちゃんと払いますよ!」
「いいよいいよ、帳尻合わせればいいんだから。ほら、気にしないでいいから」
運転手のおじさんは…さらっと、軽い様子で事を伝えてくれる
…俺には、タクシーの仕組みなんてわからない
それでも、この足りない分のお金がどこから出るのかは…俺にだって何となく想像はつく
キョン「本当に…いいんですか…?」
「ああ、大丈夫だよ。おじさんな、客とは殆ど喋らないんだよ…気恥ずかしいっていうか…何て言うかな」
キョン(……)
「こんな日に、兄さんと話せてよかったよ。トークに付き合ってもらったお礼みたいなもんだ」
キョン「ありがとう…ございます……」
俺は運転手の好意を、素直に受けとる事にした
話慣れている様子や、タクシーの仕組みの詳しい説明…
客とあまり話さないなんて嘘に思えて…
駅で拾ってくれた時も、街の名前を聞いてから…料金が1万円を越える事も多分きっと…わかっていたはずだ
キョン(ありがとう、おっちゃん…)
心の中で、もう一度、深く頭を下げ…お礼をした
運転手のおじさんは…さらっと、軽い様子で事を伝えてくれる
…俺には、タクシーの仕組みなんてわからない
それでも、この足りない分のお金がどこから出るのかは…俺にだって何となく想像はつく
キョン「本当に…いいんですか…?」
「ああ、大丈夫だよ。おじさんな、客とは殆ど喋らないんだよ…気恥ずかしいっていうか…何て言うかな」
キョン(……)
「こんな日に、兄さんと話せてよかったよ。トークに付き合ってもらったお礼みたいなもんだ」
キョン「ありがとう…ございます……」
俺は運転手の好意を、素直に受けとる事にした
話慣れている様子や、タクシーの仕組みの詳しい説明…
客とあまり話さないなんて嘘に思えて…
駅で拾ってくれた時も、街の名前を聞いてから…料金が1万円を越える事も多分きっと…わかっていたはずだ
キョン(ありがとう、おっちゃん…)
心の中で、もう一度、深く頭を下げ…お礼をした
「それでな、明日のクリスマスは非番だから、娘とケーキをな……」
こんな日…そう言えば今日はもうクリスマスだったな
さっきまで、涼子と会っていた事も、なんだか少し遠い事のように思えてきた
それくらい、今日の帰り道…タクシーでは色んな事が心の琴線に触れた…そんな体験だった
気付くと…タクシーはいつの間にか駅の近くを走っていた
キョン(駅か…ここから今日はスタートしたんだよな…って、いつもこの場所から、か…)
安心した余裕からか、心の中でも言葉が多くなる
深夜…さすがにもう電気も落ちて、待ち合わせで賑わうような駅の周りに人影も何も……
人影……?
こんな日…そう言えば今日はもうクリスマスだったな
さっきまで、涼子と会っていた事も、なんだか少し遠い事のように思えてきた
それくらい、今日の帰り道…タクシーでは色んな事が心の琴線に触れた…そんな体験だった
気付くと…タクシーはいつの間にか駅の近くを走っていた
キョン(駅か…ここから今日はスタートしたんだよな…って、いつもこの場所から、か…)
安心した余裕からか、心の中でも言葉が多くなる
深夜…さすがにもう電気も落ちて、待ち合わせで賑わうような駅の周りに人影も何も……
人影……?
よく見ると、駅の前に一人誰かがたたずんでいる…ようだった
キョン(こんな時間にか…)
寒空の下、誰かを待っている
その気持ちが、今はよくわかる
でもその姿をよく見ると…知っている人に似ているような…せんな気がする
あれは…
キョン(……! まさか、嘘だろ?)
キョン「運転手さん、ここで止めて下さい!」
「ん…駅の近くなんか?」
キョン「ええ、ここで…本当にありがとうございました」
「そうか。じゃあ、気をつけてな」
メーターはもう3万円間近だ…約束通り、そこを1万円にしてくれた
「これからまた、とんぼ返りさ、はははっ。気をつけてな」
キョン(こんな時間にか…)
寒空の下、誰かを待っている
その気持ちが、今はよくわかる
でもその姿をよく見ると…知っている人に似ているような…せんな気がする
あれは…
キョン(……! まさか、嘘だろ?)
キョン「運転手さん、ここで止めて下さい!」
「ん…駅の近くなんか?」
キョン「ええ、ここで…本当にありがとうございました」
「そうか。じゃあ、気をつけてな」
メーターはもう3万円間近だ…約束通り、そこを1万円にしてくれた
「これからまた、とんぼ返りさ、はははっ。気をつけてな」
笑いながら、運転手のじいさんは行ってしまった
キョン「…不思議な人だったな」
タクシーのライトが、来た道を戻っていく
キョン「……」
そして俺の足は、駅に向かっている
もしかしたら知っている人かもしれない、彼女の元へ…
キョン「…不思議な人だったな」
タクシーのライトが、来た道を戻っていく
キョン「……」
そして俺の足は、駅に向かっている
もしかしたら知っている人かもしれない、彼女の元へ…
真夜中3時
私…どれだけここにいたんだろう
体が震えている
ハルヒ「寒い……私、バカみたい……」
駅がしまってからも、私はずっとここにいる
電車に彼は乗っていなかった
今は遠い街に……彼女と一緒にいるんだろう
ハルヒ「…」
もう、独り言も…何も出てこない
私…どれだけここにいたんだろう
体が震えている
ハルヒ「寒い……私、バカみたい……」
駅がしまってからも、私はずっとここにいる
電車に彼は乗っていなかった
今は遠い街に……彼女と一緒にいるんだろう
ハルヒ「…」
もう、独り言も…何も出てこない
もう、帰ろう…
そう思って歩き出した瞬間
横の路地から一台の…タクシーだ
車はそこから走ると、すぐに止まった
誰かが降りてくる
タクシーはすぐに来た道を引き返していく
…
そう思って歩き出した瞬間
横の路地から一台の…タクシーだ
車はそこから走ると、すぐに止まった
誰かが降りてくる
タクシーはすぐに来た道を引き返していく
…
キョン「風邪ひくぞ?」
ハルヒ「……」
キョンだ
ずっと待っていたキョンが…目の前にいる
キョン「こんな時間に…どうしたんだ?」
それは…こっちが聞きたい事
キョン「あのさ…」
ハルヒ「…なんで…ここにいるのよ?」
言葉を遮るように私は問う…
彼がここに…駅にいる今が、信じられない
なんだか、実感がわいてこない…
キョン「ああ…ちょっと色々あってな」
ハルヒ「……」
キョンだ
ずっと待っていたキョンが…目の前にいる
キョン「こんな時間に…どうしたんだ?」
それは…こっちが聞きたい事
キョン「あのさ…」
ハルヒ「…なんで…ここにいるのよ?」
言葉を遮るように私は問う…
彼がここに…駅にいる今が、信じられない
なんだか、実感がわいてこない…
キョン「ああ…ちょっと色々あってな」
ハルヒ「なんでタクシーに乗って現れるのよ?」
キョン「電車が無くてな…親切なタクシーの運転手が……」
終電が無くなった事
タクシーに乗せてもらった事
…泊まりではないという事だけを聞いて、私はちょっと安心した
あくまで、自分の中でだけど…
ハルヒ「そ、そう…ともかくよかったじゃない。帰ってこれて…」
安心と嬉しさと不安…その全部が、溶けたチョコレートみたいに混ざっている
気持ちが、何だかザワザワしながら、ドキドキする
キョン「ああ、おかげでな。ハルヒはどうしたんだ、こんな時間に。窓から見て…ビックリしたぞ?」
ハルヒ「私は……」
私はずっとキョンを待っていた
この場所でずっと
今日プレゼントを渡すために
ハルヒ「あ、あのね…クリスマス会がさっき終わって…それでプレゼントが…プレゼント……」
キョン「電車が無くてな…親切なタクシーの運転手が……」
終電が無くなった事
タクシーに乗せてもらった事
…泊まりではないという事だけを聞いて、私はちょっと安心した
あくまで、自分の中でだけど…
ハルヒ「そ、そう…ともかくよかったじゃない。帰ってこれて…」
安心と嬉しさと不安…その全部が、溶けたチョコレートみたいに混ざっている
気持ちが、何だかザワザワしながら、ドキドキする
キョン「ああ、おかげでな。ハルヒはどうしたんだ、こんな時間に。窓から見て…ビックリしたぞ?」
ハルヒ「私は……」
私はずっとキョンを待っていた
この場所でずっと
今日プレゼントを渡すために
ハルヒ「あ、あのね…クリスマス会がさっき終わって…それでプレゼントが…プレゼント……」
ハルヒ「プレゼントが…余ったのから……! それで…その…」
キョン「クリスマス会、こんな遅くまでやってたのか…妹は?」
ハルヒ「あ…妹ちゃんは早いうちに送ったから安心して。大丈夫よ」
これは本当だけど…さっきのは嘘ばかり
キョン「そうか…それはよかった。で、プレゼントがどうしたって?」
ハルヒ「あ…うん…えっと……」
ガサガサと、袋を取り出す
ハルヒ「こ、これ…あげる」
キョン「クリスマス会、こんな遅くまでやってたのか…妹は?」
ハルヒ「あ…妹ちゃんは早いうちに送ったから安心して。大丈夫よ」
これは本当だけど…さっきのは嘘ばかり
キョン「そうか…それはよかった。で、プレゼントがどうしたって?」
ハルヒ「あ…うん…えっと……」
ガサガサと、袋を取り出す
ハルヒ「こ、これ…あげる」
綺麗に包装された袋…震える手
キョン「ああ…ありがとう。わざわざ…このために?」
ハルヒ「う、うん…」
彼が袋を受けとる…よかった、やっと渡せる…
ハルヒ(あ……)
でもその時彼の左手…薬指に、見つけてしまった
一つ…銀色の指輪が彼の指に……
ハルヒ「ま…待って!!」
急いで袋を取り上げ、手を引っ込めてしまう
キョン「な、なんだよ…どうしたんだ?」
ハルヒ「……」
キョン「ああ…ありがとう。わざわざ…このために?」
ハルヒ「う、うん…」
彼が袋を受けとる…よかった、やっと渡せる…
ハルヒ(あ……)
でもその時彼の左手…薬指に、見つけてしまった
一つ…銀色の指輪が彼の指に……
ハルヒ「ま…待って!!」
急いで袋を取り上げ、手を引っ込めてしまう
キョン「な、なんだよ…どうしたんだ?」
ハルヒ「……」
左手の薬指に指輪…私だって意味くらいは知っている
ハルヒ(最愛の人からの…プレゼント…)
それを見た瞬間、なんだか自分の贈り物がとても小さく…小さく見えた
ハルヒ「…やっぱ、余り物なんて渡したら悪いわよね」
キョン「は?いや、別に構わないぞ。もらえるなら、何でも」
ハルヒ「何でも、じゃあ…ダメなのよよ。もうパーティーもおしまい。帰りましょう」
すぐにその場から逃げ出したかった
もう、彼の手を見たくなかった
私は…すぐに彼から離れるように歩き出す
彼の反対方向を向いて…彼を見てしまわないように…
キョン「お、おい待てよハルヒ……」
ハルヒ(最愛の人からの…プレゼント…)
それを見た瞬間、なんだか自分の贈り物がとても小さく…小さく見えた
ハルヒ「…やっぱ、余り物なんて渡したら悪いわよね」
キョン「は?いや、別に構わないぞ。もらえるなら、何でも」
ハルヒ「何でも、じゃあ…ダメなのよよ。もうパーティーもおしまい。帰りましょう」
すぐにその場から逃げ出したかった
もう、彼の手を見たくなかった
私は…すぐに彼から離れるように歩き出す
彼の反対方向を向いて…彼を見てしまわないように…
キョン「お、おい待てよハルヒ……」
>>1の描くssは好きだな。
あ、よよミス
>>285
雰囲気を感じていただけたなら、幸いです
ハルヒ「…また学校でね。じゃあ、ね」
そのまま、すぐに走り出す
あんなに、駅から動かなかった足が、今は早く動かす事ができる
とても軽く…とても重く…
キョン「待てって、おい!」
キョンは追いかけてくれる
でも今はそれが痛い
ハルヒ「っ…来ないでよ、バカ!」
キョン「何怒ってるんだよ、ほら帰るなら家まで送るぞ」
>>285
雰囲気を感じていただけたなら、幸いです
ハルヒ「…また学校でね。じゃあ、ね」
そのまま、すぐに走り出す
あんなに、駅から動かなかった足が、今は早く動かす事ができる
とても軽く…とても重く…
キョン「待てって、おい!」
キョンは追いかけてくれる
でも今はそれが痛い
ハルヒ「っ…来ないでよ、バカ!」
キョン「何怒ってるんだよ、ほら帰るなら家まで送るぞ」
グイッと、腕を引っ張られる
触らないで
ハルヒ「いい! いらない! 一人で帰るの。離してよ」
キョン「落ち着けって、何怒ってるんだ…ほら、夜遅いんだから…送るって」
エスコートしてくれるような…優しい手で私の腕を掴んでくる彼の右手…
どうしても、目は左手を見てしまう…
綺麗な銀、真ん中に黒のラインが一本通った、シンプルで…
それでいて気品を感じさせるようなそのデザイン…
それを見て、また言葉が頭に浮かばなくなってくる
ハルヒ「送るのなんて、いいわよ…あんたは遠くに行ってきて、幸せに帰る……私は…友達と遊んで家に帰る…それだけの事じゃないの」
だから今は、こんな言葉しか、口から生まれない
触らないで
ハルヒ「いい! いらない! 一人で帰るの。離してよ」
キョン「落ち着けって、何怒ってるんだ…ほら、夜遅いんだから…送るって」
エスコートしてくれるような…優しい手で私の腕を掴んでくる彼の右手…
どうしても、目は左手を見てしまう…
綺麗な銀、真ん中に黒のラインが一本通った、シンプルで…
それでいて気品を感じさせるようなそのデザイン…
それを見て、また言葉が頭に浮かばなくなってくる
ハルヒ「送るのなんて、いいわよ…あんたは遠くに行ってきて、幸せに帰る……私は…友達と遊んで家に帰る…それだけの事じゃないの」
だから今は、こんな言葉しか、口から生まれない
キョン「帰る行為は一緒だろ。それに…さっきのプレゼントの事だって…」
ハルヒ「あれは…余り物だから別にいいのよ…もう、その話はやめて」
キョン「ハルヒ…」
ハルヒ「私たちは…帰る場所が違うんだもの…誰と生きているか、違うんだもの…だから、もう帰りましょう? タクシー使うくらいなんだから、あんただって早めに帰らないと…」
キョン「それは…そうだけどさ…」
ハルヒ「じゃあ、それでいいじゃない…私も帰る。キョンも帰る…それだけの事よ」
キョン「……」
彼は少し黙った後…
キョン「そうだな、わかった…とにかく今日は、帰るか」
ハルヒ「ええ。まだ冬休みなんですもの。今度…また話しましょう」
キョン「ああ…でも、本当に気をつけてな」
ハルヒ「うん、キョンも……気をつけて……」
ハルヒ「あれは…余り物だから別にいいのよ…もう、その話はやめて」
キョン「ハルヒ…」
ハルヒ「私たちは…帰る場所が違うんだもの…誰と生きているか、違うんだもの…だから、もう帰りましょう? タクシー使うくらいなんだから、あんただって早めに帰らないと…」
キョン「それは…そうだけどさ…」
ハルヒ「じゃあ、それでいいじゃない…私も帰る。キョンも帰る…それだけの事よ」
キョン「……」
彼は少し黙った後…
キョン「そうだな、わかった…とにかく今日は、帰るか」
ハルヒ「ええ。まだ冬休みなんですもの。今度…また話しましょう」
キョン「ああ…でも、本当に気をつけてな」
ハルヒ「うん、キョンも……気をつけて……」
お互いの言葉を最後に…彼は反対方向に歩いていってしまう
一人になった通り道…私はまた…
ハルヒ(寒い……)
体が、寒いという事を感じ出した
コートの隙間から吹き込む風、頬を刺激するような冷たい空気…
ハルヒ「今は…冬なんだもの…当たり前じゃないの…」
彼と過ごせなかったクリスマス
渡せなかったプレゼント
ハルヒ「…バカみたい」
一人…本当に一人で歩き出す
いつの間にか…道端に落ちたままの、プレゼントの袋
彼女はそれを忘れて、家に帰っていく
それに気付いて…拾い上げる事はできなかった
行き場の無いクリスマスと、袋の中の両手だけが…彼女の中で終わっていった
一人になった通り道…私はまた…
ハルヒ(寒い……)
体が、寒いという事を感じ出した
コートの隙間から吹き込む風、頬を刺激するような冷たい空気…
ハルヒ「今は…冬なんだもの…当たり前じゃないの…」
彼と過ごせなかったクリスマス
渡せなかったプレゼント
ハルヒ「…バカみたい」
一人…本当に一人で歩き出す
いつの間にか…道端に落ちたままの、プレゼントの袋
彼女はそれを忘れて、家に帰っていく
それに気付いて…拾い上げる事はできなかった
行き場の無いクリスマスと、袋の中の両手だけが…彼女の中で終わっていった
1月1日 昼過ぎ キョン
冬休みも半分程を消化し…もう今日から、新しい年が始まっていた
元旦…正月だというのに、俺の気分は暗い
クリスマスの朝帰りが親にばれてしまい、外出禁止を言い渡されたからだ
涼子に会いにいけないのはもちろん…とりあえず、学校が始まるまでは動く事ができない
それに、クリスマスでのハルヒの態度も…ほんの少しだけ気になる
―ピリリリリ
そんな事を考えていると…電話だ
キョン(古泉…?)
キョン『もしもし?』
古泉『あけましておめでとうございます』
キョン『よう、おめでとさん』
古泉『体調など、お変わりありませんか?』
キョン『ああ、体は何ともないさ。特に何もなく…平和な正月を送っているよ』
古泉とも…久しぶりに電話をした気がする
冬休みも半分程を消化し…もう今日から、新しい年が始まっていた
元旦…正月だというのに、俺の気分は暗い
クリスマスの朝帰りが親にばれてしまい、外出禁止を言い渡されたからだ
涼子に会いにいけないのはもちろん…とりあえず、学校が始まるまでは動く事ができない
それに、クリスマスでのハルヒの態度も…ほんの少しだけ気になる
―ピリリリリ
そんな事を考えていると…電話だ
キョン(古泉…?)
キョン『もしもし?』
古泉『あけましておめでとうございます』
キョン『よう、おめでとさん』
古泉『体調など、お変わりありませんか?』
キョン『ああ、体は何ともないさ。特に何もなく…平和な正月を送っているよ』
古泉とも…久しぶりに電話をした気がする
古泉『それでですね…今から初詣に行きませんか?みんな集まりますよ』
キョン『悪いんだが実はな……』
古泉『ふむ、外出禁止ですか…』
キョン『あの日、朝近くに帰った事がバレてな…そう言えば、そっちのクリスマスも盛り上がってたみたいだな』
古泉『…ええ、人が多かったですからね、何だかんだで皆さん、楽しんでましたよ』
キョン『夜中3時近くまでやってたんだろ?そりゃあ盛り上がるよなぁ…』
古泉『…? クリスマス会は9時には終わりましたよ。夜中の3時なんてとても…』
キョン『え…だって俺パーティー帰りのハルヒに駅で会ったぞ?夜中の3時に』
キョン『悪いんだが実はな……』
古泉『ふむ、外出禁止ですか…』
キョン『あの日、朝近くに帰った事がバレてな…そう言えば、そっちのクリスマスも盛り上がってたみたいだな』
古泉『…ええ、人が多かったですからね、何だかんだで皆さん、楽しんでましたよ』
キョン『夜中3時近くまでやってたんだろ?そりゃあ盛り上がるよなぁ…』
古泉『…? クリスマス会は9時には終わりましたよ。夜中の3時なんてとても…』
キョン『え…だって俺パーティー帰りのハルヒに駅で会ったぞ?夜中の3時に』
古泉『…涼宮さんが、その時間駅にいたんですか?』
キョン『ああ…俺も帰りがずれたから、その時間になってな…』
古泉『彼女は、なんと言ってました?』
キョン『えっと…確か、プレゼントが余ったから…渡す、って…』
古泉『交換用のプレゼントですか?それならちゃんと全員で交換しましたよ。それに、交換というシステム上、余りなど出るはずがありません…』
考えてみれば、確かにそうだ…
古泉『それに、電車が来ない駅で人を待つはずが無いでしょう』
キョン『そう…だよな……』
じゃあなんでハルヒはあの場所にいたんだ
駅が閉まった午前3時に…プレゼントを持って待っていたんだ…
会える保証なんて無いのに…
古泉『でも、会えたなら渡せたみたいですね。時間はともかく…少し安心しましたよ』
キョン『ああ…俺も帰りがずれたから、その時間になってな…』
古泉『彼女は、なんと言ってました?』
キョン『えっと…確か、プレゼントが余ったから…渡す、って…』
古泉『交換用のプレゼントですか?それならちゃんと全員で交換しましたよ。それに、交換というシステム上、余りなど出るはずがありません…』
考えてみれば、確かにそうだ…
古泉『それに、電車が来ない駅で人を待つはずが無いでしょう』
キョン『そう…だよな……』
じゃあなんでハルヒはあの場所にいたんだ
駅が閉まった午前3時に…プレゼントを持って待っていたんだ…
会える保証なんて無いのに…
古泉『でも、会えたなら渡せたみたいですね。時間はともかく…少し安心しましたよ』
―ズキッ
キョン『…もらってない』
古泉『…今、なんと言いましたか?』
キョン『ハルヒから…プレゼントは貰ってない。渡す瞬間…袋を取り上げられた……』
古泉『……』
キョン『古泉…?』
受話器越し…沈黙が流れてくる
古泉『あなたは……』
キョン『え…』
古泉『馬鹿ですか! あなたは!!』
ビリビリと…電話が震える
古泉のこんな声は…初めて聞いた
古泉『そんな夜中に、なんで彼女がそこにいたか…少し考えればわかるでしょう!』
キョン『…もらってない』
古泉『…今、なんと言いましたか?』
キョン『ハルヒから…プレゼントは貰ってない。渡す瞬間…袋を取り上げられた……』
古泉『……』
キョン『古泉…?』
受話器越し…沈黙が流れてくる
古泉『あなたは……』
キョン『え…』
古泉『馬鹿ですか! あなたは!!』
ビリビリと…電話が震える
古泉のこんな声は…初めて聞いた
古泉『そんな夜中に、なんで彼女がそこにいたか…少し考えればわかるでしょう!』
キョン(これは…怒られているのか?)
古泉『…彼女が、プレゼントを持っていた理由が…わからないんですか?』
キョン『ま、待てよ古泉…俺には付き合ってる人がいて……』
古泉『そんなのは、僕も彼女も知っていますよ。付き合ってる人がいたら、プレゼントを渡しちゃいけないんですか?』
キョン『そんな事は…無い…』
古泉『どうして…受けとってあげなかったんですか』
キョン『それは…さっきも言っただろう、取り上げられたって……』
古泉『…取り上げられた?』
…
古泉『…彼女が、プレゼントを持っていた理由が…わからないんですか?』
キョン『ま、待てよ古泉…俺には付き合ってる人がいて……』
古泉『そんなのは、僕も彼女も知っていますよ。付き合ってる人がいたら、プレゼントを渡しちゃいけないんですか?』
キョン『そんな事は…無い…』
古泉『どうして…受けとってあげなかったんですか』
キョン『それは…さっきも言っただろう、取り上げられたって……』
古泉『…取り上げられた?』
…
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