元スレ新ジャンル「囚人二人」
新ジャンル覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
1 :
看守「今日からおまえにはここで暮らしてもらう」
背中をとん、と押され、女は独房に踏み込んだ。
直後、背後の扉が、重い音を立てて閉じた。
外界から、完全に隔絶。その扉を恨めしげににらみ
つけたところで、金属でできたその扉は開きも溶けも
砕け散りもしない。しかたなく、壁際に置いてあった
ベッドに腰かけた。
看守の足音が遠ざかってゆくのを聞くともなしに
聞きながら、考える。さあ、何もすることがない。
これからの退屈を、いったいどうやってしのげば
いいものやら――
男「お、新入りさんかい?」
女(……え?)
男「そこにいた奴が『連れて』いかれちまってよ。
退屈してたんだ」
女(どこから……壁? あ、こんなところに
小さな穴が開いてる……)
男「ま、これからよろしく頼むわ。短い間だが、な」
女(えらく慣れ慣れしい……でもまあ、一人で
ふさぎ込んでるよりは――)
男「……あれ? 聞こえてねえのか? おーい」
女「聞こえてるよ……これからよろしく、ね」
2 = 1 :
男「よう。どうだい? ここでの寝ごこちは」
女「もうホント最高。どっかの五つ星ホテルかと
思っちゃったよ」
男「だろ? むやみやたらに広々としたこの部屋!
ホントは狭いのに、モノを置かないことで
広く見せる工夫のタマモノってワケよ」
女「置いてあるものといったらこの固いベッドだけ。
必要最低限なものだけを置く、機能美に特化した
すっばらしい部屋だよね」
男「よくわかってるじゃねえか。まったく、舌打ちの
ひとつもしたところでバチも当たりゃしねえ」
女「それに、これ以上バチの当たりようもない……よね?」
男「俺たちの場合はな。はっは」
3 :
こういうのマジでもういいから
5 = 1 :
女「ここってさ」
男「んー?」
女「夜になったら、けっこう暗いんだね」
男「昼でも暗いだろ?」
女「壁に、風と光を通すための窓があるじゃん」
男「まあ、昼はそこからお日さんが照らしてくれるわな」
女「夜はそういうのなくなるし」
男「お? もしかして、暗いのがニガテなのか?」
女「……うっさい。寝るっ」
7 :
独房は一人部屋
8 :
書き込めるかテスト
9 = 1 :
男「よう、見てみろよ。いい月だぜ」
女「窓の外? んー、ここからだと建物に隠れて
よく見えないや」
男「お、そうか。そいつは残念だな……
鉄格子越しに見る月なんてオツなモンは、
ムショ以外じゃそうは見られねえぜ?」
女「乙な物、ねえ。あんたの趣味、よくわかんない」
10 = 1 :
男「――――ってハナシがあってよ。おかしいだろ?」
女「あっはっは。おかしいおかしい」
男「! おい女、ちっと黙れや」
女「……はぁ? なにをいきなり――」
男「いいから!」
女「ちょっとあんたねえ」
……カツン。
女「!」
女(看守の足音!? 近づいてくる……
まさか、声が聞こえてた……?)
11 = 1 :
>>10
……カツン、カツン、カツン……
女(通り過ぎた……)
男「……ふう。やっぱマズいんだよな、こうやって
話すのは。もし聴かれたら、この穴もふさがれ
ちまう」
女「……ごめん。これからはちょっと声を抑えるね」
男「かまいやしねえ。見回りの時間は決まってる。
その間だけ気をつければいいさ」
女「うん……」
男「しかし、アレだ。こういうの、ワクワクするだろ?」
女「え?」
男「昔よ、やっただろ。学校の授業中にさ、センコーの
目ぇ盗んで手紙の交換とかしてよ」
女「ああ……なつかしいね」
男「情報のやりとりが目的じゃなくてよォ。ただ、エラい
人に隠れてあれやこれやするのが楽しかったんだ」
女「ふふ。あんた、子供みたいなコト言うんだね」
男「大人の男ってのぁな、でっけえ少年なのさ」
女「で、やんちゃが過ぎてここにいるってわけ?」
男「それは言わねえ約束だぜ」
12 :
かまわん続けろ
13 = 1 :
男「よう。今日は空が高えなあ」
女「そうだねー……いい天気」
男「こんな日にゃあ、軽くそこいらをぶらぶらしてえもんだ」
女「またアンタは。無理だってわかってるくせにさ」
男「ないものねだりってのは、してみるもんだ。
もしかしたら、欲しいモンが手に入るかもしれねえぜ?」
女「だからあんたはコドモだってのよ」
男「うっせ。そういうてめえはいくつなんだよ」
女「レディに歳を訊くもんじゃないわ」
男「レディ、ねえ」
女「レディ、よ」
男「ふ~~~ん」
女「…………」
男「ふ~~~~~~ん」
女「……21、よ」
男「ふは! 俺の方がみっつも上だ!
ガキはどっちだってんだよ、はっは!」
女「……だからあんたはコドモだってのよ……」
14 = 1 :
男「よう。あんた、お里はどこだい?」
女「故郷、か。捨てたよ、そんなもの」
男「なんだ。帰る場所、ねえのか」
女「あったとしても、もう帰れないじゃない」
男「……そうだな。そうだったな」
女「そういうあんたは、どうなのさ」
男「俺かい? 俺も捨てたよ、そんなもん」
女「だろうねえ。じゃなきゃ、今ごろこんなところに
いたりはしない」
男「はっは。違いねえ」
15 = 1 :
男「よう。起きてるかい?」
女「……いちお。なんか用?」
男「いいや、なんにも。ここでしなきゃならねえことなんて
なにもねえのに、用なんかあるわけねえだろ?」
女「ごもっとも。で? だったらなんで話しかけてくるわけ?」
男「冷たいねえ。することもなにもねえんだ、構ってほしいのさ」
女「子供みたいなコト言わないの。今は眠いからさ、明日にして
くんない?」
男「今がいい」
女「後がいい」
男「今がいい」
女「…………」
男「おーい。なんだよ寝ちまったのか?
おきろーおきろーおーきーろー」
女「ああもううるさい! 看守が来る!
ったくもーしょーがないなあっ」
男「へへ」
16 = 1 :
男「しかし驚いたぜ。隣に、女の子が入ってくるなんてな」
女「なによ。べつに珍しいもんじゃないでしょ。女が犯罪を
起こすなんて」
男「たしかに珍しくねえ。だが、『ここ』は違う」
女「どういう意味?」
男「わかってんだろ。ここがどこだか」
女「……危険度最高クラスの犯罪者が集まる刑務所。
極めて大きな罪を犯し、終身刑以上の罰が言い渡された
者を収容する」
男「そしてこのエリアの独房には――」
女「死刑判決を受けた者だけが収容される」
男「…………」
女「…………」
男「珍しいんだ。ここでは、な」
女「……それが、どうかしたの?」
男「いや。べつにどうもしねえさ。
ただ、なにをやってここに来たのかが、気になった」
女「話さないと、夜も眠れない?」
男「いいや。そういうわけじゃねえ」
女「だったら、いいじゃない。そんなこと、どうでも」
男「そうか……そうだな。
まあ、気が向いたら話してくれや。
傷をなめあうのも、悪かぁねえぜ」
女「……そ」
18 = 1 :
男「いやしかし腹が減った。ここの暮らしには
だいぶ慣れたが、メシの量が少ねえのだけはいただけねえな」
女「身体を動かすこともないし、十分じゃないの?」
男「てめえと一緒にすんじゃねえっての。こっちは大の男だぜ?」
女「あっそ。じゃあ――わたしの分、わけてあげようか?」
男「マジか!
と言いてえが、こんなに小さい穴じゃあな。水くらいしか通らねえ」
女「噛み砕いた後なら通るけど」
男「ペンギンじゃあるめえし。いらね」
女「あーあ。人の親切を無為にするなんてねー」
男「てめえ無理だってわかってて言ってるだろ」
19 :
まちがえた
20 = 19 :
>>19をまちがえた
ごめんなさい
21 :
紫煙
23 = 8 :
男「今日も誰かに尾けられてる気が…」
女「男君男君男君男君男君ハァハァ」
スト「ストーカーしてる女ちゃん可愛ええええええ」
24 = 8 :
スレタテミスの誤爆より恥ずかしい物は無い
支援
25 = 1 :
男「しかしまあ顔も知らねえ男に対して
噛み砕いたモノをくれてやるたあ、な」
女「べつにいーじゃない。現にこうやって
壁で仕切られてるわけだし、襲われることは
ないでしょ」
男「いやまあそうなんだがな」
女「むしろ互いに顔が見えないからこそできることも
あるってもんでしょ」
男「それもそうだ。だがな女よ、その気になれば
俺はその穴からそっちを覗きこむこともできるんだぜ?」
女「あっそ。するの? あんたが?」
男「……いや。隣にいる女性がどんな容姿なのか、わからない
からこその楽しみもあるしな」
女「そう言うと思った。あんたはそーいうヤツよ」
男「想像は自由だと言ってくれ」
女「はいはい。ホント、子供みたいなんだから」
28 = 1 :
女「この穴ってさ」
男「ん?」
女「あんたが開けたの?」
男「……ああ。最後はな」
女「最後は?」
男「俺がここに来た時には、もうかなり深い穴が
壁に開いてた。たぶん……俺の前にここにいた奴が、
ちょっとずつ掘っていったんだと思う。
いや、何人もの手で、カンナでやるみてえに削っていったのかもな。
きっと寂しかったんだろうなあ。ここでたった一人で
息をしてるのが」
女「…………」
男「で、俺がそれに気づいて、メシのたびにスプーンの柄で突ついたんだ。
2週間くらい経ったころかな。いきなり、スプーンが向こうに
突き抜けた」
女「晴れて、開通ってワケだね」
男「ああ。ほんの1センチやそこらの穴だがな。
驚いてたぜ。そりゃそうだろうな、いきなり壁からスプーンが
生えてくるんだ。
そこからは……そうだな。おまえが今いる部屋にいた奴と、
くだらねえ話に花を咲かせたもんだ」
女「……仲良く、してたんだ」
男「まあな。看守を除けば話ができるたった一人の相手だ、
いがみあってもしょうがねえ。
ま、そいつも今となっちゃあ――
いや、やめとこう。シケた話だ」
29 = 1 :
女「で?」
男「ん?」
女「そーいうアンタは、いったい何をやったの?」
男「聞きてえか?」
女「まあ、ヒマ潰しのネタ程度には」
男「聞きたくねえのか……」
女「なによ。言いたいの?」
男「……まあ、ヒマ潰しのネタ程度には……」
30 = 1 :
男「大体よお、何をやったのかって言うけどな」
女「なによ?」
男「世の中には冤罪というものがあってだ」
女「な――まさかあんた」
男「もしかしたら、俺はなにもやってねえのかも
しれないぜ?」
女「!」
男「とかいう夢を見ることもある」
女「…………
結局どっちなのさ」
男「どうだかなあ。はっは」
31 :
>>23
スレ立てするときは呼んでくれよ
32 :
なんだ終わりか
33 = 1 :
女「ヒマだね」
男「ああ。ヒマだ」
女「なんでこんなにヒマなの?」
男「することがねえからだ」
女「それってトートロジー」
男「わかってる」
女「なんですることがないの?」
男「それが今の俺たちの仕事だからだ」
女「待つことが仕事ってこと?」
男「ああそうだ。何を待つかって?
はっは」
女「笑うしかないのもわかるけどさ」
34 = 1 :
>>32
書きためてたのが尽きた。
ペースがかなり落ちるが、ヒマだったらどうぞ
35 = 26 :
迷わず支援
36 :
これから読むぜ
37 :
男「……。(暇だ、あいつ何してんだろうな、ちょい覗いてみるか)」
ヌッ(互いに合う視線
女「きゃっ!」
男「うおわっ!びびった!なんだよ!なに覗いてんだよ!」
女「そっそっちこそなに覗いてんのよ!」
男「いや、俺はただなにしてるかな~って、オマエは?」
女「…私もアンタがなにしてるかな~って」
男「……。」
女「……。」
ヌッ
女「目潰し!」
男「痛っ!?」
38 = 1 :
女「くしゅんっ」
男「お。カゼでも引いたか?
それとも……いい男でもいるのかい?」
女「心当たりはないね……もうシャバに
わたしのこと覚えてる人もいないんじゃないかな」
男「えらく寂しいこと言うなぁ」
女「事実だもの。わたしのことウワサしそうなのって……
この壁のむこうにしかいないよ」
男「おお。なんでおまえのこと考えてるってバレた」
女「くしゅんっ」
男「おおう」
39 = 1 :
男「へくし」
女「今あんた口で『へくし』って言ったでしょ」
男「へくし」
女「もっとそれっぽく聞こえるように言えばいいのに」
男「いやあ俺もウワサされてんのかねえ。
俺のことウワサしそうなの、この壁のむこうにしか
いねえんだけどなあ。あーへくし」
女「こら」
男「ああもしかして今女の頭の中は俺でいっぱい!?
いやー照れるぜー」
女「…………」
男「へくし」
女「コドモ……いや、もういいや」
40 = 1 :
女「ねえ男ー」
男「…………」
女「男ー?」
男「…………」
女「あれ? 寝てんのかな……」
男「…………」
女「退屈だから構ってもらおうと思ったのに」
男「…………」
女「ねえ男ー?」
男「…………」
女「……つまんない」
男「そうかそうか。やっぱ女には俺がいねえとなあ」
女「なッ……もしかして今の全部聞いてた!?
殺す! ぶっ殺すッ!」
男「そんなに怒んなよ。はっは」
女「はっはー、じゃない!」
42 = 26 :
私怨
43 = 1 :
女「わたし今着替えてるけど」
男「おおうッ」
女「よかったらその穴から、どうぞ?」
男「てめッ……想像は自由だってーのに、
それを阻害しようってのか」
女「そうは言わないけど。
オンナのカラダを見る機会も、
もうないんじゃないかなって思ってさ」
男「……想像は自由だ。
だが妄想はもっと自由だ!」
女「覗かないってはっきり言えばいいのにさ。
純情だねー……もしかして童貞?」
男「ちがうわ!」
46 = 44 :
でけた
見てるぜ
頑張ってくれ
47 = 1 :
男「狭い」
女「そうだね」
男「動かねえ」
女「必要ないし」
男「身体がなまってしょうがねえ」
女「しょうがなくないでしょ。もう、いらないじゃん」
男「……えらく達観してやがんなあ。
世の中なにが起こるかわかんねえぜ?」
女「そうだね。わかんないね」
男「なんだその反応……じゃあ言い方変えるか?
世の中なにが起こせるかわかんねえ、ってな」
女「……なにを考えてるの?」
男「さあな。秘密だ……はっは」
48 = 1 :
男「今夜は冷え込むな」
女「秋だしね。あんた、今からそんなコト言ってて、
これからの季節大丈夫なの?」
男「さあな。女がこっちに来てあっためてくれたら、
そんな悩みはねえんだが」
女「あんたがこっち来るなら考えてやってもいいけど」
男「うおマジか! おおりゃあがんばれ俺!
この穴をくぐれッ!」
女「あ。指が出てきた。
とうっ」
男「あだっ!? 爪を立てるな!」
49 = 26 :
紫煙
50 = 26 :
>>1寝たか
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