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元スレ武内P「アイドル達に慕われて困っている?」
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流石の武内Pもどうしていいかわからんやろチエリエルの脱糞とか…やってしまえ
下品なモノを書くときは救われてなきゃあいけないんだ。決して催促するものじゃない「気がついたら出ていた」モノなんだ
乙した。心臓には悪いけどPが刺される心配はしなくていいね
乙した。心臓には悪いけどPが刺される心配はしなくていいね
イイ話書いてもその感想じゃなくて真面目なのが来たから次は下の話来るぞしか言われなくて草
いやいや便秘なのかもしれないぞ
次も真面目な可能性もある
だけどそういう時って大体あとで下痢になるよね
次も真面目な可能性もある
だけどそういう時って大体あとで下痢になるよね
一人暮らしの杏ちゃんが体調崩してお見舞いに行く話をお願いします!
>>950
書きます
書きます
「何を……しているのですか……!?」
此処は、シンデレラプロジェクトの、プロジェクトルーム――では、無い。
「何って……勿論、決まってるじゃないですか」
私の問いかけ対しに、彼女はゆっくりと振り向き、言葉を続ける。
艷やかな口元は、ゆるやかな弧を描いている。
一歩踏み出せば全身が飲み込まれてしまう底なし沼のように、仄暗く。
しかし、同時に、全てを捧げる聖者のように、清らかでもある。
「――うふ」
彼女の視線は、再び目の前にあるデスクに注がれる。
少し、散らかっているそのデスクの表面を指先でツイとなぞる彼女の目は、
普段そこに座って業務に勤しむ、彼の視線を感じ、重ねようとしているのだろう。
クスクスと、本当に、幸せそうな笑い声が、部屋を支配する。
「……プロデューサーさんは――」
これは、私を指しているのでは……無いようですね。
「――運命の人」
彼女を担当するプロデューサーの事を言っているのだ。
私の同期であり、必要な資料を机の上に置いておいてくれとLINEで寄越した、彼を。
……気を利かせて、朝一で来たのは失敗……本当に、失敗でした。
「プロデューサーさんなら、この困難も、きっと乗り越えてくれます」
彼女は、私にその姿を確認されているにも関わらず、そこから動こうとしない。
本来ならば、すぐにでも行動をし、問題の解決を目指すべき、この状況。
そうしないという事は、則ち、彼女は今のこの状況を自ら作り出したのだ。
「――うふふ……そう、思いませんか?」
艷然。
そう評するに相応しい彼女の笑みは、彼への想い故に、だろうか。
その想いは、彼女にこんな行動を取らせてしまう程、強いものだったのか。
担当するアイドルから、全幅の信頼を置かれている……と言えば、聞こえは良い。
ですが、私は、それを羨ましいとは、全く思いません。
「どう……でしょうか」
何故なら、
「だって――運命の紅い糸で、結ばれてますから」
彼女は、彼が普段仕事をしている場所で、脱糞をしていたのだから。
ソレが落ちていくはずの穴の空いていない、リクライニングのきく、彼の椅子で。
「……うふふっ!」
一体全体どんな悪い事をしたら担当アイドルから椅子に脱糞されるんだよ…
「運命の紅い糸……ですか」
最初に、部屋に入った時に感じたのは、異臭だった。
人間、誰しもが嗅いだことのある、アンモニア臭。
しかし、一般的なオフィスでは嗅ぐ事があるはずの無い、その臭い。
「はい♪」
私の言葉を同意と受け取ったのか、彼女は嬉しそうに笑った。
一見、輝くような笑顔に見えるが、私には、それが明るいとは感じなかった。
「きつく結ばれた……絶対にほどけない、紅い糸」
左の手首に巻かれたリボンを見ながら、放たれたその言葉。
絶対に、何者にも踏み込む事など出来はしないと、そう、思わされる。
迂闊にもその間に入り込もうとしたならば、全てを溶かし尽くすような、その笑顔。
彼女は、夜空に煌めく星では、無い。
ただ一人のために、燦然と輝く、赤い……紅い、太陽なのだ。
「しかし……あの、何故……このような真似を……!?」
彼の口から、彼女とは上手くやっていると、聞いていた。
仕事面では、彼女の魅力を最大限に引き出す、良いプロデュースだと私も思っていた。
プライベートに関しても、彼女の年齢を考慮し、
適度な距離を保てていると……そう、言っていた。
――なのに、何故、彼女はこんな凶行に及んだのか。
「とっても、順調だったからです」
……えっ?
「えっ?」
順調だと、彼女も自覚していたのに。
それなのに、彼の椅子に座り、糞をする必要があると言うのか。
ここからでは確認出来ないが、彼の机の周辺には、茶色い水たまりが出来ている。
時が経つにつれ、勢力を拡大していくそれを視界の端に捉えながら、
「愛には、試練がつきものですから……うふふ」
私は続く彼女の言葉を聞き、耳を疑った。
彼女は、運命が絶対だと、信じている。
しかし、穏やかな日常に、あえて自ら波を立たせ、それをより強固なものにしようとしたのだ。
理解したくはないが、私も、プロデューサー。
彼女の――アイドルの目的は、残念だが、理解出来た。
しかし――
「――貴女は、間違っています」
――だからと言って、こんな事をして良い訳では……無い。
「間違っている?」
理解出来ない……とでも言いたげな表情で、首を傾げている。
その位はわかっていただきたいと、そう、思います。
恋は盲目と言うが、こんなにも先が見通せなくなる程の濃い霧だとは。
私は、彼女の担当プロデューサーでは無い。
濃霧の発生源をどうにか出来る程、自惚れてはいない。
――だが、この状況を打破する事は、出来る。
「はい。まず、彼はドアを開けた時……その、異臭に気付くと思われます」
今すぐにでも窓を開けて換気がしたくなる、この臭い。
私は、この臭いを嗅いだ時、既に判断を誤っていたのだ。
だが、その間違った判断が、彼女に行動を省みさせるという結果に、繋がるかもしれない。
正に、災い転じて……いや、どう言い繕おうとしても、とんだ災難です。
「……それが?」
彼女の瞳からは、光が消えている。
私こそが、二人の仲を裂こうとする障害だと言わんばかりの、強烈な視線。
「プロデューサーさんは、絶対に挫けません」
そう言いながら、彼女は何もない空を見つめる。
「プロデューサーさんは、きっと乗り越えます」
彼女の、彼に対する想いが、嫌という程伝わってくる。
「だって――運命の人だから! 紅い糸で、結ばれてるから!」
紅潮する頬、熱に浮かされた視線。
「うふふ……この困難を乗り越えて、もっと、もっと――」
そんな、彼女の目を覚ますため、
「異臭に気付き……警備員の方を呼ぶと思われます」
現実という、非常に冷たい冷水を浴びせかける。
「――もっ……と……」
恍惚としていた表情から、一転。
頭に昇りつめていた赤い血は、燦然と輝いていた太陽は――
「……あっ」
――地に、落ちた。
>>968
最早誤字かわからんぞ
最早誤字かわからんぞ
「……」
そう……普通は、思わないのだ。
自らのオフィスで、異臭がしたとしても……アイドルが大をしているとは。
それにも関わらず、彼女は、信じて疑わなかった。
彼女がこのプロダクションに入る時に発揮した、恐ろしいまでの行動力と決断力は、
今回ばかりは、見当違いの方向に向いてしまったと言わざるを得ない。
「あっ、ど……どうしよう……どうすれば……!」
両手で頭を抱え込み、必死に思考を巡らせているようだ。
彼に与えられるはずだった困難が、大きさそのままに、彼女に跳ね返っている。
……最初に彼女を発見したのが私という時点で、企画は失敗だったのでは?
いや、よそう……今、彼女の企画の拙さを責めても、何の解決にもならない。
「このままでは、貴女は、担当プロデューサーの席で脱糞し――」
ゆっくりと、
「――警備員の方に囲まれ、大騒ぎを起こした――」
言い聞かせる。
「――超問題児として、彼に認識されるでしょう」
既に、私の中では貴女は超問題児ですが。
「ちょ、超問題児……!?」
彼に、そのように思われると考えただけで、体の震えが止まらないようだ。
――ブビッ!
……体に力が入ったことで、アンコールが発生したようですね。
全く望んでいないLIVEではあったが、腸に問題はなさそうで、何よりです。
……はい、少しでも良かった所を探さないと、心が折れてしまいそうです。
「あ、あのっ! どうすれば良いんですかぁ!?」
眉間に皺を寄せ、眉はハの字に垂れ下がり、歯は噛み合わずカチカチと音を鳴らしている。
そんな彼女を見ることなく、私は歩を進め、
「――此処は、私が」
窓を全開にし、換気を始める。
排気ガスで汚れていると言われる都会の空気でも、この部屋にただようそれに比べれば、新鮮だ。
次々と窓を開け放ち、風通しを良くする。
北風は太陽とは違い、旅人の服を脱がすことは出来ないが、霧を晴らすことは出来るのだ。
「貴女は、汚れの痕を残さないよう、十分に気をつけて……シャワールームへ」
アイドルの方は、輝いていなければいけない。
汚れ仕事は、プロデューサーの役目だ。
異臭がするのに部屋に入ってしまう武内P
あれだけ後始末してるから感覚麻痺してるよ
あれだけ後始末してるから感覚麻痺してるよ
・ ・ ・
「……――これで、此処は大丈夫だろう」
まるで、何事も無かったかのように、原状復帰出来た部屋を見渡す。
臭いも、むしろ、彼女が脱糞する以前の状態よりも良くなっているかも知れない。
だが、唯一、如何とも出来なかった場所が、ある。
それは――爆心地。
「……」
彼の、椅子だ。
ビニール袋を何枚も被せるという封印を施したその中には、
彼女のドロドロと溢れ出してしまった想いと、彼の椅子が入っている。
彼女が脱ぎ捨てていった下着も、別の小さい袋に入れ、一緒に封印している。
下着の色? はい、茶色です。
「……」
私は、その大きな塊を抱え上げ、歩き出した。
目的地は――シンデレラプロジェクトの、プロジェクトルーム。
本当に、したくはないのだが……とりあえず、私の椅子と交換するしかなさそうだ。
あまり時間は残されていないし、彼が来る前に、全ての処理を終わらせなくては。
「……笑顔です」
一瞬、私は何のためにこの会社に務めているのだろうと、疑問が頭に浮かんだ。
しかし、それに対する答えを私は知り得ているし、それこそが、
何もかもを放り出して帰宅したくなる私の足を前に進める原動力になる。
だから私は、それを口にすることで、なんとか平静を保った。
「……」
確かに、彼女の、彼へ対する想いは、問題がある。
アイドルと、プロデューサーという立場。
そして、彼女の年齢も考慮すると、会社的にも、社会的にも許されはしない。
しかし、その想いこそが、彼女をよりアイドルとして輝かせている。
それだけは、誰にも否定しようのない、事実だ。
「……」
願わくば、彼と――そして、彼女がこれからも、笑顔で。
「……」
ドアを開け、プロジェクトルームへ急ぐ。
速やかに、椅子の交換と、彼に渡すための資料を印刷しなければならないから。
持ってきた資料は、後処理に使用したため、茶色く染まり、読めなくなってしまったので。
恐らく、これ以上無いほど、役に立ったのでは無いでしょうか。
私は、固く心に誓った。
この一件が終わったら、何を言われようと、此処には二度と近づかない、と。
おわり
「……――これで、此処は大丈夫だろう」
まるで、何事も無かったかのように、原状復帰出来た部屋を見渡す。
臭いも、むしろ、彼女が脱糞する以前の状態よりも良くなっているかも知れない。
だが、唯一、如何とも出来なかった場所が、ある。
それは――爆心地。
「……」
彼の、椅子だ。
ビニール袋を何枚も被せるという封印を施したその中には、
彼女のドロドロと溢れ出してしまった想いと、彼の椅子が入っている。
彼女が脱ぎ捨てていった下着も、別の小さい袋に入れ、一緒に封印している。
下着の色? はい、茶色です。
「……」
私は、その大きな塊を抱え上げ、歩き出した。
目的地は――シンデレラプロジェクトの、プロジェクトルーム。
本当に、したくはないのだが……とりあえず、私の椅子と交換するしかなさそうだ。
あまり時間は残されていないし、彼が来る前に、全ての処理を終わらせなくては。
「……笑顔です」
一瞬、私は何のためにこの会社に務めているのだろうと、疑問が頭に浮かんだ。
しかし、それに対する答えを私は知り得ているし、それこそが、
何もかもを放り出して帰宅したくなる私の足を前に進める原動力になる。
だから私は、それを口にすることで、なんとか平静を保った。
「……」
確かに、彼女の、彼へ対する想いは、問題がある。
アイドルと、プロデューサーという立場。
そして、彼女の年齢も考慮すると、会社的にも、社会的にも許されはしない。
しかし、その想いこそが、彼女をよりアイドルとして輝かせている。
それだけは、誰にも否定しようのない、事実だ。
「……」
願わくば、彼と――そして、彼女がこれからも、笑顔で。
「……」
ドアを開け、プロジェクトルームへ急ぐ。
速やかに、椅子の交換と、彼に渡すための資料を印刷しなければならないから。
持ってきた資料は、後処理に使用したため、茶色く染まり、読めなくなってしまったので。
恐らく、これ以上無いほど、役に立ったのでは無いでしょうか。
私は、固く心に誓った。
この一件が終わったら、何を言われようと、此処には二度と近づかない、と。
おわり
SS界というか同人界も含めてこれだけ下の処理に精通した武内Pはいねえよ(褒め?言葉
色っぽいのならよかったんだがねぇ……だが、そうはならなかったんだロック
>>979
アーメンハレルヤ、ネコミミだ
アーメンハレルヤ、ネコミミだ
「ねえ……起きて」
静まり返った部屋に、一人のアイドルの声が響く。
その声を聞いて、霞がかっていた意識がハッキリとしてきた。
うっすらとだが、ノックの音が聞こえていた……ような気もする。
私は、身をよじって声のする方へと、視線を向けた。
「起きて、Pチャン」
旅館に備え付けられていた浴衣ではなく、Tシャツとハーフパンツ。
そして、普段では見ることのない、眼鏡をかけている彼女の姿が目に映った。
薄闇の中でも、視界がクリアーになっていく。
だが、今の状況を正しく理解出来る程には、頭が回らない。
「……Pチャン」
彼女は、布団に横たわっている私の傍に座り、胸に手を置いてきた。
明かりの灯った廊下から歩いてきたからか、この暗闇に彼女の視界はまだ慣れていなのだろう。
浴衣のはだけている、肌が露出している場所に、
同じ年頃の少女よりも少し皮膚が固くなっている指先の感触を感じる。
だが、それは彼女がアイドルとして人一倍努力している結果であり、私は――
「っ!?」
――などと、悠長にしている場合ではない!
「にゃっ!?」
飛び起きた。
それに彼女は驚いて声を上げ、置いていた手をすばやく引っ込めた。
その手を胸に抱え込み、目を大きく開きながら、声を失っている。
「あ、あの……ここで、何を……!?」
私も私で、彼女の指先が触れた左胸――丁度心臓の真上だった――を隠すように、
はだけていた浴衣をたくしあげ、少しでもマシになるよう、体裁を整える。
そうは言っても、この様な状況に陥ってしまった時点で、かなりの失態だ。
担当しているアイドル……いや、それ以前に、彼女はまだ年若い。
そのような方に無防備な姿を晒してしまうとは……いや、年齢は関係ないか。
「え、えっと……その……お願いがあるの」
太ももをすり合わせながら、非常に言いにくそうに、彼女は言葉を紡いだ。
瞳は潤み、切なげなその表情は、普段の明るい彼女からは想像が出来ないものだった。
仕事とプライベートの区別をしっかりする方だとは思っていたが、
今の姿が、彼女の素……という事なのだろうか。
「あの……ね」
彼女は、普段の装いを脱ぎ捨て、ありのままの自分を曝け出している。
それは、彼女が言おうとしている事が、心の底からの、願いということだろう。
それは……一体――?
「とっ――トイレに着いて来て欲しいの!」
その言葉を発するのに、彼女は大いに悩んだのだろう。
だが、私は想定していたものとはまるで違う彼女の願いに、大いに安堵した。
・ ・ ・
「……はあ、和式……ですか」
私達は、仕事で来た山奥にある、小さな宿に宿泊している。
予約をとっておいたホテルはあったのだが、
ホテル側の手違いで他の旅行客の方とダブルブッキングしてしまったらしい。
私は、交渉して譲って貰うつもりでいたのだが、
話してみたら、なんと、旅行客の方が彼女のファンだと言うのだ。
「それに……な、なんか暗いんだもん!」
それに気を良くした彼女は、快く部屋を譲り、颯爽とホテルを後にした。
勿論、少し離れた所で頭を抱えて後悔されたのは、言うまでもないだろう。
そこから、他に空いているホテルを探したのだが、
どこも生憎と、空いていている部屋が……一部屋のみ。
アイドルとプロデューサーが、同室で寝泊まりするわけにはいかないと、
一時は別々のホテルに宿泊する事も考えたのだが、何かあった時のために、却下した。
「うぅ……なんで、こんな目に……!」
結果、二部屋だけ空きがあった、ここに宿泊する事になったのだ。
少し……いや、かなり古びた宿だったので不安ではあったが、
夕食は非常に絶品で、小さいながらも温泉まである、良い宿です。
部屋の窓からの景色も良く、機会があれば、個人的にまた来ようとも思える程だった。
「……早く、帰りたい……!」
……しかし、彼女はそうは思ってはくれなかったようだ。
そこに、一抹の寂しさを覚えながらも、仕方ないとは思うのも、また事実。
普段、気の強い所を見せている彼女には、怖がりな面もある。
そして、驚いた事に、和式のトイレを使用した事が無いらしい。
「トイレくらい、座ってしたいにゃ……!」
そんな、二つの不安要素が重なって、私に助けを求めてきたと、そういう事のようだ。
時刻は既に、深夜二時をまわり……図らずも、丑三つ時になっている。
朝まで我慢する気でいたらしいが、どうしても、耐えられなくなったらしい。
そうですね……はい、夕食をかなり食べていましたから、当然の結果です。
「あの……どうぞ」
トイレの――木製のドアの前に立ち、彼女は泣きそうな声を上げ続けている。
迷惑にならないように、小声でぼやいているのが、彼女らしいといえばらしい。
だが、トイレには、ドアを開けなければ入れない。
それなのに、彼女はドアに手をかけようとしないのだ。
「……」
促しても、彼女はトイレに入ろうとしない。
それどころか、眼鏡越しに訴えるような眼差しでこちらを見つめてきている。
が、
「どうぞ、中へ」
私はそれを無視し、ギィィと鳴るドアを開け、催促した。
申し訳ありません、私も眠いのです。
「……はあ、和式……ですか」
私達は、仕事で来た山奥にある、小さな宿に宿泊している。
予約をとっておいたホテルはあったのだが、
ホテル側の手違いで他の旅行客の方とダブルブッキングしてしまったらしい。
私は、交渉して譲って貰うつもりでいたのだが、
話してみたら、なんと、旅行客の方が彼女のファンだと言うのだ。
「それに……な、なんか暗いんだもん!」
それに気を良くした彼女は、快く部屋を譲り、颯爽とホテルを後にした。
勿論、少し離れた所で頭を抱えて後悔されたのは、言うまでもないだろう。
そこから、他に空いているホテルを探したのだが、
どこも生憎と、空いていている部屋が……一部屋のみ。
アイドルとプロデューサーが、同室で寝泊まりするわけにはいかないと、
一時は別々のホテルに宿泊する事も考えたのだが、何かあった時のために、却下した。
「うぅ……なんで、こんな目に……!」
結果、二部屋だけ空きがあった、ここに宿泊する事になったのだ。
少し……いや、かなり古びた宿だったので不安ではあったが、
夕食は非常に絶品で、小さいながらも温泉まである、良い宿です。
部屋の窓からの景色も良く、機会があれば、個人的にまた来ようとも思える程だった。
「……早く、帰りたい……!」
……しかし、彼女はそうは思ってはくれなかったようだ。
そこに、一抹の寂しさを覚えながらも、仕方ないとは思うのも、また事実。
普段、気の強い所を見せている彼女には、怖がりな面もある。
そして、驚いた事に、和式のトイレを使用した事が無いらしい。
「トイレくらい、座ってしたいにゃ……!」
そんな、二つの不安要素が重なって、私に助けを求めてきたと、そういう事のようだ。
時刻は既に、深夜二時をまわり……図らずも、丑三つ時になっている。
朝まで我慢する気でいたらしいが、どうしても、耐えられなくなったらしい。
そうですね……はい、夕食をかなり食べていましたから、当然の結果です。
「あの……どうぞ」
トイレの――木製のドアの前に立ち、彼女は泣きそうな声を上げ続けている。
迷惑にならないように、小声でぼやいているのが、彼女らしいといえばらしい。
だが、トイレには、ドアを開けなければ入れない。
それなのに、彼女はドアに手をかけようとしないのだ。
「……」
促しても、彼女はトイレに入ろうとしない。
それどころか、眼鏡越しに訴えるような眼差しでこちらを見つめてきている。
が、
「どうぞ、中へ」
私はそれを無視し、ギィィと鳴るドアを開け、催促した。
申し訳ありません、私も眠いのです。
「……わかったにゃ」
私の有無を言わさぬ様子に観念したのか、彼女はトボトボとトイレに向かって歩き出した。
恐らく、彼女にネコミミがついていたならば、それはピタリと頭にはりついていただろう。
尻尾があったら、その毛は逆だっていたか、もしくは、垂れ下がっていたか……。
とにかく、これで、トイレに入っていただけ、部屋に戻れ――
「でも! 戻っちゃダメだよ!?」
――ない……らしい。
「……わかりました」
右手を首筋にやって、必死な彼女の顔を見る。
しばし、月明かりの下、無言で見つめ合う。
廊下も照明がついてはいるのだが、その光量はほんの僅かだ。
そして、彼女はトイレの――和式便所をキッと睨みつけ、トイレの照明ボタンを押した。
パチン。
「…………ん?」
少し古めかしい、黒いスイッチ式のそれが反対側に倒れたのに、照明はつかない。
パチン……パチン、パチン。
「…………えっ? えっ?」
パチン、パチン……パチンパチンパチンパチンッ!
「…………うそにゃ」
――トイレの照明が――つかない。
電球の交換を怠っていたのか、はたまた、他に違う原因があるのか。
何にせよ、このトイレの電気は――スポットライトは、無い。
「Pチャン……どうしよう……?」
顔から一切の感情が抜け落ちた彼女に対し、私は、
「……頑張ってください」
精一杯の、声援を送る。
しかし、彼女は「それだけ?」と小さく呟いた。
なので、
「……笑顔で、頑張ってください」
パワーオブスマイル……笑顔の力を信じてくださいと、再度声援を送る。
あの……それ以外、かける言葉が無いと、そう、思います。
・ ・ ・
「……絶対、後を向いちゃダメだからね、Pチャン」
最悪だ。
私の眼の前には、トイレの木製のドアがある。
暗がりの中とは言え、窓から差し込む月の光で、木目すら数えられる程の、至近距離で。
……そう、私は今、
「はい、決して振り返りません」
彼女と一緒に、暗い、トイレの中に居る。
同室になるのを避けたばかりに、こんな事態に陥ってしまうとは、思わなかった。
こんな事になるならば、別々のホテルに宿泊すれば良かった。
これ以上の事態など、そうそう、起こり得はしないだろうから。
「……ふぅ、んんっ……!」
今すぐに、耳を塞ぎたい。
だが、私の両手は、既に使用中なのだ。
「んぐっ……ふ、ん……!」
背後でふんばっている彼女が、支えにしたいと要求して来たために。
私の担当アイドルは、和式トイレを正しい向き――ドア側を見る形で、用を足そうとしている。
だが、しゃがんだその体勢では、暗がりの中安定せず転んでしまうと、そう、言ってきた。
そんな事を仰られてもと困る私とは逆に、彼女は……閃いた、と。
不思議なもので、閃いたはずなのに、私は視界がより一層暗くなった。
「はぁ……はぁ……緊張して出ないよぉ……!」
後ろに回した両の手は、彼女がふんばる度に、強く、握りしめられる。
一見すれば、私が前に立ち、彼女の手を引き、導いているように感じるだろう。
……そうですね、そう考えてみれば、気分も大分違うはずです。
楽しい事を考えよう……笑顔……そう、良い笑顔の事を――
「そうにゃ! 笑顔! 笑顔になれば、リラックス出来るにゃ!」
――……もう、考えるのはやめよう。
「……」
早く、この悪夢のような時間が過ぎれば良い。
いや、むしろ、これは夢なのではないだろうか?
本当の私は、今も布団の中で目を閉じて眠り続け、日中の疲れを癒やしているのでは?
そうだ、そうに違いない……これは、夢――
「アイドルになるの、ずっと夢だったの」
――では、無いですね、はい……現実ですね、わかっています。
ですが……あの、この状況で、何故その話題を選択してしまうのですか?
他にもっと、こう……あると思うのですが。
「……絶対、後を向いちゃダメだからね、Pチャン」
最悪だ。
私の眼の前には、トイレの木製のドアがある。
暗がりの中とは言え、窓から差し込む月の光で、木目すら数えられる程の、至近距離で。
……そう、私は今、
「はい、決して振り返りません」
彼女と一緒に、暗い、トイレの中に居る。
同室になるのを避けたばかりに、こんな事態に陥ってしまうとは、思わなかった。
こんな事になるならば、別々のホテルに宿泊すれば良かった。
これ以上の事態など、そうそう、起こり得はしないだろうから。
「……ふぅ、んんっ……!」
今すぐに、耳を塞ぎたい。
だが、私の両手は、既に使用中なのだ。
「んぐっ……ふ、ん……!」
背後でふんばっている彼女が、支えにしたいと要求して来たために。
私の担当アイドルは、和式トイレを正しい向き――ドア側を見る形で、用を足そうとしている。
だが、しゃがんだその体勢では、暗がりの中安定せず転んでしまうと、そう、言ってきた。
そんな事を仰られてもと困る私とは逆に、彼女は……閃いた、と。
不思議なもので、閃いたはずなのに、私は視界がより一層暗くなった。
「はぁ……はぁ……緊張して出ないよぉ……!」
後ろに回した両の手は、彼女がふんばる度に、強く、握りしめられる。
一見すれば、私が前に立ち、彼女の手を引き、導いているように感じるだろう。
……そうですね、そう考えてみれば、気分も大分違うはずです。
楽しい事を考えよう……笑顔……そう、良い笑顔の事を――
「そうにゃ! 笑顔! 笑顔になれば、リラックス出来るにゃ!」
――……もう、考えるのはやめよう。
「……」
早く、この悪夢のような時間が過ぎれば良い。
いや、むしろ、これは夢なのではないだろうか?
本当の私は、今も布団の中で目を閉じて眠り続け、日中の疲れを癒やしているのでは?
そうだ、そうに違いない……これは、夢――
「アイドルになるの、ずっと夢だったの」
――では、無いですね、はい……現実ですね、わかっています。
ですが……あの、この状況で、何故その話題を選択してしまうのですか?
他にもっと、こう……あると思うのですが。
「でもね、その夢は叶ったでしょ?」
彼女の小さな手に込められていた力が抜け、しがみつくから、繋ぐに変わった。
プロジェクト内でも、飛び抜けたプロ意識を持つ彼女は、
文字通り、夢を叶えるために、必死にしがみついて歩いてきた。
だが、ユニットを伝えた時の彼女は、非常に不満を持っているようだった。
「だから、今の夢はトップアイドルにゃ!」
しかし、彼女はそれを乗り越え、手を繋いだのだ。
今でも、彼女の――彼女達のデビューライブの時の姿は、ハッキリと思い出せる。
目を閉じれば、瞼の裏に焼き付いた光景が、まざまざと浮かんでくる。
今の言葉が現実になるだろうと思える程の、本当に、良い笑顔だった。
「だからね、Pチャン……これからも、プロデュースよろしくにゃ!」
キュッと、手を握りしめられる。
この様な状況にも関わらず、やはり、彼女は素晴らしいアイドルだと認識させられる。
きっと、私の後で、彼女は良い笑顔をしているのだろう。
振り返る事は出来ないが、今の言葉に応える事は――
「はい……これか「あ、出る! 出る出る出る出る出るにゃ!」
――出来なかった。
ブフーッ!
「……」
凄い、放屁です。
「ふっぐ……P、チャン……!」
お願いします、手を握り締めるのは、構いませんが、その……私を呼ばないでくれますか?
「手……! 手、握っててぇっ……!」
絞り出すような、彼女の声。
私の手を掴む彼女の掌は、小刻みに震えている。
それが、羞恥のためか、腹筋に力を込めているかは、わからない。
だが、アイドルの方の要望に可能な限りお応えするのが、プロデューサーの務めだ。
「――はい、わかりました」
彼女の、小さな手を握り締める。
「ふんっ、にゃあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ゙……!」
ブポッ! ブッ、ムッ、ブリィッ!
「……」
一つだけ、気付いた事がある。
木目を数えるのは、案外と、楽しい。
おわり
みんなの評価 : ○
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