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元スレ永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」
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永琳「ただの薬売りさんが、こんな辺鄙な場所に何の御用かしら?」
薬売り「言えね……あっし、最近ここらで商いを始めまして」
薬売り「こちらに越してはや三月、四六時中足を棒にして薬を売りに渡っているのですが……が」
薬売り「どういうわけか、ここの人たちはみな、とんと薬を欲しがりませんで……」
永琳「はぁ……」
薬売り「不思議に思い人々に訪ねてみたんですよ。”皆々様、薬もなしにどうやって病気を治しているので?” と」
薬売り「するとどうでしょう。皆、口を揃えて言うではありませんか」
うどんげ「ははーんなるほど、つまり……」
薬売り「”永遠亭の人から薬を買ってるから必要ない”、と……」
うどんげ「商売敵なわけね!」
永琳「あらあら、それは……」
【永遠亭】――――序の幕
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薬売り「このままじゃあっしの薬が売れませんで……」
うどんげ「お師匠様、これはきっとあれよ! 競合事業のショバ争いって奴だわ!」
うどんげ「見てよこのいかにも怪しい格好。どうせ前の場所でインチキな薬でも売りつけて逃げてきたんだわ」
永琳「もう、よしなさいな」
うどんげ「残念だったわね、薬売り。あんたには悪いけど~……」
うどんげ「この幻想郷には、お師匠様以上の薬師はいないわ! 最初っから、あんたの出る幕なんてないのよ!」
薬売り「はて、一体どういうわけで……」
うどんげ「聞いて驚きなさい……今あんたがショバ争い吹っかけてるこの御方は――――その名も”八意永琳”」
うどんげ「この名、同じ薬売りが知らないとは言わせないわよ!」ビシ
薬売り「ほう……! あなた様があの……」
チーン
うどんげ「ここらの薬はお師匠様が一手を担ってるわ。もちろん、顧客全員からも大好評よ」
うどんげ「この辺の人間は本物の薬を知ってる。と言うわけで、師匠様の薬以外買う奴なんていやしない」
薬売り「本物の薬……ですか」
うどんげ「あんたのようなインチキ薬師に引っかかる奴なんていないわよ? だから……」
うどんげ「勝ち目のない争いは諦めて……観念して立ち去るといいわ!」ビシィ
永琳「もう……申し訳ありません、無礼な弟子で」
うどんげ「ふん!」
薬売り「いやはやしかし、かの高名な八意の賢者様が、よもやこのような場所におられたとは……」
薬売り「どーりで、一つも売れないと思いましたよ」ハァ
うどんげ「次からは商う前にもっとリサーチを行うべきね」
うどんげ「顧客の情報収集は商売の基本よ、薬売りさん」
薬売り「いやはや、ごもっとも。ご高説痛み入ります……」
薬売り「うっかり・うっかり」ポン
うどんげ「ふふん」ドヤ
永琳「……」
薬売り「では、しょうがない……またどこか、新天地を探しに旅立ちますかな」
薬売り「風の向くまま、気の向くまま。浮世の風向き幾然う然う……」
うどんげ「あんた、薬売りよりちんドン屋の方が向いてると思うわ」
薬売り「ふふ、よく言われます……」
薬売り「では……これにて失敬……」
シャーン
永琳「待ちなさい」
うどんげ「え」
薬売り「……何か?」
永琳「あなた、ここに来る前はどこで商いをしていたの?」
薬売り「……さぁねえ。あっしは流浪の薬売り。定住を持たず、この足で渡り歩くしか知りませんで」
薬売り「最後に薬を売ったのは……はて、あれは一体どこだったか……」
永琳「では……こちらなら覚えておいでですよね?」
永琳「薬師なら無論……”最後に売った薬”は覚えておいでなはず」
薬売り「ああっ、もちろん、それなら覚えてますとも」
うどんげ「お師匠様、なんでそんな事を……?」
永琳「してそれは」
薬売り「あの時求められたのは……霞やボヤけを取り、視界の鮮明さを取り戻す薬……」
薬売り「所謂……”目薬”って奴でさぁ」ニヤ
永琳(…………!)
あらお懐かしい
姿と真と理を得なければ斬れないんですよね、モノノケは
姿と真と理を得なければ斬れないんですよね、モノノケは
薬売り「では、これにて……」
うどんげ「帰れ帰れー!」
永琳「……お待ちなさい」
うどんげ「え」
永琳「……許可します」
薬売り「ほぉ……?」
永琳「――――この地で薬の商いを行う事、私が責任を持って許可します」
うどんげ「……えぇぇぇぇ~~~~!?」
永琳「これからは”永遠亭の薬師”と名乗りなさい。さすればきっと人々は、あなたの薬を買い求めるでしょう」
薬売り「これはこれは、願ってもない申し出で……」
うどんげ「ちょっとちょっとお師匠様、一体どういうおつもりで!?」
うどんげ「そんな事したら、私とこいつは……!」
薬売り「姉弟子……という事になりますな」
うどんげ「や~~~よそんなの! こんなうさんくさいちんどん屋みたいなのと同じ一門だなんて!」
永琳「イヤですか?」
うどんげ「と~ぜんじゃない! そんな事するくらいなら(ry
永琳「だったら出て行きなさい」
うどんげ「 」
永琳「私が門下を増やす事。嫌だと言うならどうぞ出ておいきなさい」
永琳「これは私が八意の名において下す判断。異を唱えるなら、八意の名の届かぬどこへでも……」
うどんげ「そ、そんなぁ~……」
永琳「出ていきたくなければ、辛抱なさい」
永琳「いくら異を唱えても、私の決定は覆りません」
うどんげ「……でもでも、そんな事言ったって、そもそもこいつが断れば!」
うどんげ「ほら、あんたも言い返しなさいよ! あんただってあるでしょ!? イチ薬師のプライドとか(ry
薬売り「――――不束者でございますが、何卒よしなに、願い申し上げ候(正座」
うどんげ「チョロすぎんのよ!」ガーン
【入門】
うどんげ「くっそ~、なんであんたみたいなのと……」
薬売り「かわいがってくださいよ、姐さん」
うどんげ「その呼び方やめい。ったく私はまだ認めてないっつーの」
うどんげ「それにソッコーでホイホイ下っちゃってさ。薬師としての、こう……誇りとか? そういうのないの?」
薬売り「そういえば……そう言った事は、あまり考えた事ありませんね……」
うどんげ「けっ、威信のない奴」
うどんげ「お師匠様もお師匠様よ。一体な~んでこんな奴を……」グチグチ
薬売り「恐縮です……」
ゴーン
うどんげ「……ふん。まぁいいわ」
うどんげ「わかってると思うけど、私が姉弟子。あんたは新入り」
うどんげ「何年薬師やってるか知らないけど、あんたのキャリアとか、ここでは関係ないから」
うどんげ「つまり……私の命令は絶・対・服・従。そこんとこ弁えてるわよね?」
薬売り「無論……承知の上です」ニッコリ
うどんげ「……よく言った! だったら早速姉弟子命令!」
うどんげ「たまった洗濯物、掃除、食事の用意、その他etc全部今日からお前が(ry
【空】
うどんげ「――――いねぇし!」ガーン
【報】
永琳「――――以上の経緯から、本日より新弟子を一名取る事になりました」
永琳「いえ……人兎ではありません。なんと申しますか……見た目は鈴仙曰く、まるでちんどん屋のような」
永琳「奇抜な服装に奇抜な化粧。耳は天へと先細り、瞳はうっすらと青みがかかっております」
永琳「それに、この竹林をいともたやすく潜り抜けた……ええ」
永琳「間違いなく、”何らかの意趣を抱えて”馳せ参じた事は、確かでしょう」
【疑】
永琳「故に弟子として身近に置き、しばし動向を監視すべきであると思う所存でございます」
永琳「そして万が一……もし奴が、”かの都”の使いだったなら」
永琳「この私が、責任を持って”処分”いたします故、ご安心下さい」
【誓】
永琳「……あなた様には何人たりとも近寄らせない」
永琳「この永遠、何人たりとも崩させない」
永琳「永久に守り、永久に償い続けましょう」
永琳「それが私の、命の理を犯した者の罪……」
【気配】
永琳「――――ハッ!」
兎「きゅ~」
永琳「なんだ……てゐの兎……」
永琳「あ……そういえば……」
永琳(てゐにまだ……伝えてなかったっけ……)
兎「きゅ~」
(キュ――――)
【求】
(キュ――――)
薬売り「……いやはや、存外な展開になったものです」
薬売り「まさか彼女が、かの高名な八意永琳だったとは……」
薬売り「そしてよもや、このような場所で会いまみえようとは、ね」
カチ カチ カチ
薬売り「何より驚くべきは、そんな彼女からモノノ怪の気配がするなどと……ふふ」
薬売り「一体、どんな因果を抱えているのやら……」
薬売り「こんな昼夜も曖昧な、薄暗い迷いの竹林で……ねえ?」
薬売り「そう思いませんか、ウサギさん」
兎「きゅ~」クンクン
薬売り「よし、よし……」ナデナデ
「――――おっしゃあ! 今よ!」
薬売り「…………えっ」
「――――食らえよそ者ッ!」
【穴隙】
薬売り(落とし穴――――?)
【堕落】
薬売り「おおおおお――――!」
【奈落之底】
薬売り「……存外な、展開ですね」ケホ
チーン
「――――キャッハッハ! ひっかかったひっかっかった!」
「ざまぁないわねちんどん屋! そんな格好でこんな所ウロついてんのが悪いのよ」
薬売り「化け猫……いや……」
薬売り「化け…………兎?」
【因幡之白兎】
てゐ「ちゃんと足元みてないとダメじゃない、ちんどん屋」
てゐ「散歩を楽しんでいたら、実はそこは黄泉へ続く大穴だったなんて事も、ひょっとしたらあるかもしれないじゃない?」
薬売り「……」チラ
退魔の剣「――――」カチカチ
てゐ「夜空の星々が顔面目がけて落ちてくるかもしれないし、昼が明けない事もあるかもしれない」
薬売り「……そんな稀有な事態が、そもそもな話起こり得るんですかね」
てゐ「ほら、四つ葉のクローバーも、十万分の一の確率もあるんだから」
てゐ「レアでもなんでもないわね」
薬売り「とりあえず……ですね」
薬売り「穴が深すぎて這い上がれませぬ……何か、なんでもよいので手を貸してくれませんかね」
てゐ「は? やーよそんなのめんどくさい。戻りたいなら自分で昇れ」
薬売り「……やれやれ」
てゐ「ひとりでできるでちょ じぶんでやりなちゃい」
薬売り「存外な……展開になったものです」
ゴーン
天秤さんも出てくるんだろうか?
でもモノノケだらけの世界だしなぁ…
でもモノノケだらけの世界だしなぁ…
うどんげ「く……ぉらァァァァちんどん屋ァァァァ! どこ行ったァァァァ!」
永琳「騒がしいですよ、鈴仙。一体何事ですか」
うどんげ「あ、お師匠様! 聞いてよ! あのちんどん屋ったら!」
うどんげ「新入りの癖に雑用サボってソッコーどっかにバックレやがったのよ!? まだ入門して半日も経ってないのに!」
永琳「あらまぁ、それは……」
うどんげ「見た目からして怪しいと思ってたけど、ここまでくると礼儀作法すらも怪しいわね」
うどんげ「お師匠様ったら、ほんとなんであんな奴を迎え入れて……」
永琳「……いいですか鈴仙。薬師と言う物は商うだけが生業ではありません」
永琳「その本質は、知識で持って人々をあらゆる病から解き放つ事……して彼が、その生業を生涯の糧とするならば」
永琳「同じ薬師を生業とする者として、此れを後押しせぬ道理はありません」
うどんげ「う、う~ん、わかるようなわからんような……」
永琳「それに……さっきからあなた、彼をちんどん屋だのとインチキ呼ばわりしてますが」
永琳「彼の薬師としての腕は本物ですよ……ほら」
うどんげ「こ、これは!」
【夾竹桃】
うどんげ「こ、こんなもんどっから……」
永琳「彼の所持品の一つです。ほら、背に背負った大きな筒箱の中の……」
うどんげ「ああ、あの装飾過剰な箪笥みたいな」
永琳「――――さて鈴仙、復習しましょう。これについては、この間教えましたね?」
永琳「夾竹桃の効果と諸注意について、述べてみなさい」
うどんげ「え~と確か、打撲や腫れなどの皮膚炎に効果があってぇ~……」
うどんげ「え~っと……確かもう二つくらい効果が……」
永琳「――――同時に成分中に含まれる強心配糖体が強い強心作用、並びに体内の水分を適切に保つ利尿作用もある」
永琳「ただし、強心配糖体の主成分であるオレアドレナリンは同時に強い毒性を持ち――――」
うどんげ「そう! わずかな摂取量でコロッ! と」
永琳「下手に扱えば猛毒にもなり得ない、扱いの難しい危険な薬草です」
永琳「思い出しましたか?」ニッコリ
うどんげ「うう~、自分の脳みそが恨めしい……」
【及第点】
うどんげ「……ってか! そんな危なっかしいもんなんであいつが!?」
永琳「それほどまでに調合術に精通しているか……あるいは」
うどんげ「もしかして……”そっちの意味で”の薬師だったり?」
永琳「いずれにせよ、まがい物ではない事は確かのようですね」
永琳「知らぬ者にはただの花。よって、それなりの知識はあると判断してもよいでしょう」
うどんげ「うーん、むしろますます怪しくなったわね……」
永琳「それに、彼は――――」
うどんげ「え、何?」
永琳「――――いえ、なんでもありません」
うどんげ「……?」
永琳「……さて鈴仙、そろそろ彼を迎えに行ってあげなさい」
永琳「ひょっとしたら、逃げ出したのではなく、迷ってしまったのかもしれません」
うどんげ「迷ったって、そもそもあいつが勝手に……」
永琳「ほら……彼はてゐの事を知りませんから」
【悟】
うどんげ「……あ~もしか! アイツの仕業かぁ!」
永琳「てゐは悪意こそありませんが、加減を知りません。大事になる前に迎えに行っておやりなさい」
うどんげ「――――くぉらァァァてゐィィィ!! 弟弟子に手を出すなァァァ!」
【脱兎】
永琳「……ふぅ」
永琳「こんなモノが効けば……苦労はないと言うのに……」
――――クシャリ
薬売り「にしても少し……深く、掘りすぎじゃないですかね」
てゐ「は? だって、半端な穴作ったってつまんないじゃない」ガサガサ
てゐ「そのへんのくぼみに足を取られるなんて全然あり得るし。そんなもんでシテヤッタリ! とはなんないって」
薬売り「美学……って奴ですか?」
てゐ「あたしが手掛けるには、それはもうスペシャ~ルな体験をしてほしいの」
てゐ「普段じゃ絶対ありえない、とびきり~な体験をね」ガサガサ
薬売り「それと落とし穴がどう結びつくのかわかりませんが……そんな事より」
薬売り「なんで、人の物を勝手に漁ってるんですかね」
てゐ「好奇心」ガサガサ
薬売り「ああ……なるほど」
薬売り「ただの……愉快犯ですね」
チーン
てゐ「粉と、葉っぱと、茎と……なにこれ? 兎の糞?」
薬売り「丸薬ですよ。あっし、こう見えて薬売りを営んでおりまして」
てゐ「え、お師匠様と同業じゃない」
薬売り「そうですよ……ああそうだ、申し遅れましたが」
薬売り「あっし、本日を持って八意永琳様に弟子入りする事になりました……ちんけな薬売りに御座いやす」
てゐ「――――マジ!?」
薬売り「先刻、永琳様より正式に”永遠亭の薬売り”の名を頂戴いたしました」
薬売り「以後、よろしくお願い奉り候」ペコ
てゐ(やば……お師匠様の新弟子落とし穴に落としちゃった……)
てゐ「う……」タジ
薬売り「どうか、なされましたかな」
てゐ「ねね、ちんどん……じゃなくて、薬売りさん。物は相談なんだけど」
てゐ「今日の事は……誰にも言わないでくんない?」ヒソ
薬売り「と、申しますと」
てゐ「困るのよね~、こないだもうどんげ突き落として、めちゃ怒られたばっかでさ」
薬売り「……ほう」ニヤ
てゐ「だから、ね? 軽い自己紹介だと思ってさ」
てゐ「今度の付き合いを考えたら、今のうちに先輩に貸し作っといた方が、いいんじゃないかな~……とか?」
薬売り「ああ……なるほど……」
薬売り「それも…………そうですね…………」ニタァ
てゐ「うわぁ……」
てゐ(足元見る気満々の顔ね……)
【毒気】
てゐ「お詫びにほ、ほら! 永遠亭までちゃんと送ってあげるからさ!」
てゐ「ここ、一人でうろつくのは危ないのよ? なんてったって”迷いの竹林”だなんて呼ばれるくらいだしね!」
薬売り「確かに、ここはアヤカシの気配が強い……」
てゐ「でしょでしょ! っつーわけで、さっそくレッツゴー!」
【悟】
てゐ「あれ……ていうかさ」
薬売り「どうしました?」
てゐ「あんた、どうやってお師匠様の所に着いたの? 一人じゃ絶対たどり着けないはずなんだけど」
てゐ「ていうか、そもそも迷わしてるのあたしだし」
薬売り「ああ、そういえばやけに同じ場所に戻るなぁと思ったら……」
薬売り「あれは……あなたの仕業だったんですか……」ギロ
てゐ「う……っさいな! こっちは悪戯じゃないっつーの!」
てゐ「防犯よ防犯! セキュリちぃって言葉をご存じ!?」
薬売り「ああ……番士の方でございましたか」
てゐ「そーよ。あんたみたいな見るからにうさんくさい奴を近寄らせない為にやってんの。お分かりいただけた?」
薬売り「まぁ、怪しいのは、認めますがね」
てゐ「で、どうやって潜り抜けたのよ」
薬売り「ああ、それはね……」
てゐ「ひぇぇぇぇぇぇえ!? 何!? 何!?」
薬売り「こいつに……聞いたんですよ」
【驚】
薬売り「これは……天秤にございます」
てゐ「天秤の形……じゃなくない?」
薬売り「この天秤は通常と少し用途が違いまして……こいつは重さではなく、距離を測る天秤」
てゐ「ええ~、見方がさっぱりわかんないんだけど」
薬売り「簡単ですよ。ほら、こうして……」
チ リ ン
薬売り「天秤の傾きが正しき道筋を示してくれる……という次第で」
てゐ「……なんかよくわかんないけど、持ち主がわかるならそれでいいんじゃない?」
薬売り「恐縮です」
【納得】
てゐ「てかびっくりした……一人でに飛び出してくるとか……」
薬売り「そういう風にできてますからね」
てゐ「タネも仕掛けも満載ね。これじゃあいよいよ持ってちんどん屋だわ」
薬売り「まぁまぁ、便利ですぜ。おかげでこうして、この薄暗い竹林でも迷わずに済む……」
てゐ「なんか、竹林の主として複雑な感情なんだけどォー」
薬売り「いえいえ……どころか、迷いの原因がアヤカシの所業ならば、むしろこちらとしても好都合」
薬売り「全てが人ならざる物の仕業と言うのなら……こいつも使える」ペラリ
てゐ「――――そ、それはッ!」
薬売り「い……よっと」ペタリ
薬売り「即席の結界に即席の天秤。これら二つが混ざり合う事によって……」
薬売り「真を示す、標になる……というわけで御座います」
てゐ(スペルカード――――!?)
てゐ「全員・緊急集合ォォォ! こいつが貼ったスペルカード、全部食い破ってしまいなさい!」
兎達「「ギギギギギギギ――――」」
薬売り(札が……”竹毎”食い破られていく……!)
てゐ「このうさんくさいちんどん屋を全員で取り囲め~~~!」
【包囲】
てゐ「そこを動くなちんどん屋ァ! 動くと全身噛みちぎるわよ!」
兎達「「ギリギリギリギリギリギリ――――」」
薬売り「なるほど、兎を使役するアヤカシでしたか……」
薬売り「どおりで、兎みたいな耳をしていると思いましたよ」
てゐ「そっちこそ、目は体を表すとはよく言ったものね! 最初っからあんた、うさんくさい見た目してると思ってたのよ!」
薬売り「名は体を、でしょ」
てゐ「……ええいやかましい! そんなド派手なスペカ持ち込んどいて、何もないだなんて言わさないわよ!」
薬売り「スペカ……スペルカード……はて」
薬売り「申し訳ありませんが、さっきから話がさっぱり……」
てゐ「まだしらばっくれる!? この野郎……上等よ!」
てゐ「その弾幕勝負、受けてたってやるっつってんのよ!」グッ
薬売り(この気配……本気で仕掛けてくるつもりか……)
てゐ「お師匠様の元へは行かさないんだから!」
薬売り(もしや…………こいつが”形”か?)
【対峙】
薬売り「致し方……ありませんね」
てゐ「そ、それは!」
薬売り「モノノ怪を成すのは、人の因果と縁(えにし)――――」
薬売り「人の情念や怨念がアヤカシに取り憑いた時、それはモノノ怪となる」
てゐ「本性表しやがったわね……そんないかにもな刀持ち込みやがって!」
てゐ「やっぱり、ヤル気マンマンだったんじゃないのさ!」
薬売り「この広大な竹林を、人を寄せ付けぬ迷いの竹林に変えし”形”」
薬売り「その目的は、永遠亭に誰も近寄らせないが為。それが”真”」
薬売り「してその”理”は――――」
てゐ「絶ッ対! に! お師匠様の元へいかせるかァーーーーッ!」
薬売り(あの永遠亭の主。八意永琳を守るため――――)
【兎符】因幡の素兎
てゐ「食らえーーーーーッ!」
薬売り「形・真・理の三つによって」
薬売り「剣を」
てゐ「オラァァァァーーーーーッ!」
薬売り「解き放――――」
――――なんと、げに奇怪な事態であろう。
薬売りにあらぬ誤解を抱き、ついに牙を剥いたるは半人半兎のアヤカシ。
アヤカシは己が持つ呪符で持って薬売りへと襲い掛かり、薬売りは其れを迎え討たんと、いざ身構え申した。
それは、まさにその刹那の出来事である。
退魔の剣は薬売りの形・真・理に応える事無く押し黙り、よって薬売りは兎の牙に空手で挑む運びとなった。
剣の沈黙は形・真・理が違っていた……すなわち、薬売りの見当違いを意味して申す。
だがしかし、薬売りの仰天は其れとは無関係にござい。
薬売りの関心はアヤカシの事など隅に追いやり、代わりに、視界の隅を微かに掠めた”小さな影”に移ったのである。
てゐ「………………え?」
その影は韋駄天の如き瞬足で、瞬く間に薬売りの視界の、奥へ奥へと突き進み――――
半兎の身を”グサリ!”と貫いた後、ようやっと消え失せたのだ。
薬売り「――――兎ィ!」
てゐ「な…………んで…………」グラ
嗚呼嘆かわしや。
その身貫かれし半兎のアヤカシ、直ちに大地へとその身を伏せ、そのままピクリとも動かぬ肉塊に成果てなすった。
アヤカシの使役し兎の群れも同様。
主の地に伏せる様を、ピクリとも動かぬままに、その赤い眼にてじぃ~っと見つめていたという。
てゐ「 」
薬売り「これは……一体どういう……」
薬売り「この傷口、何かに貫かれた……?」
薬売り「何か、小さな……小粒のようなモノに……」
薬売り「――――ハッ」
そして一連の光景を見届けた薬売りは、何らかの気配を察したか、不意にふと振り返えなすった。
してまもなく後――――かつて幾度となく見せた、あの奇怪な笑みを浮かべたと言う。
薬売り「これはまた……骨の折れそうな……」
「竹林に生い茂る竹の一本一本に、あっしを見詰める無数の目ン玉が生い茂っていたんでさぁ」。
そう語る薬売りの表情は、いみじくもどこか……
”愉し気”であったとか、なかったとか――――。
【つづく】
・今後の更新予定
時間、曜日不定期
間隔は一日以上一週間未満が目安
万が一一週間を超えても更新できない場合はなんかしら言いに来る
・話数
ちょっと長いかもしれない
>>18
幻想郷の妖怪の多くは「アヤカシ」であって「モノノ怪」とは違うんじゃないの?
あれの設定だと特定個人の妄執やら後悔やらにアヤカシが憑いて(呑まれて?)モノノ怪と化す、だったはず
幻想郷で該当するのは虹川三姉妹くらいじゃない?
しかしこれは……○○○、か?
幻想郷の妖怪の多くは「アヤカシ」であって「モノノ怪」とは違うんじゃないの?
あれの設定だと特定個人の妄執やら後悔やらにアヤカシが憑いて(呑まれて?)モノノ怪と化す、だったはず
幻想郷で該当するのは虹川三姉妹くらいじゃない?
しかしこれは……○○○、か?
――――壁に耳あり障子に目あり
蔓延る秘め事万別なれど、果てに行きつくは白日の下
それは、形ある物に限らず。
人の世があり続ける限り。人が因果を持つ限り――――。
【永遠亭】――――二の幕
薬売り「……」
【待機】
うどんげ「う、ううう……」
【啜泣】
薬売り「……ん」
【静寂之果てに】
永琳「――――お待たせしました。二人共」
うどんげ「お師匠様! そっ、それで! それでてゐは……!」
永琳「安心なさい……てゐは無事です」
【無問題】
永琳「確かに、薬売りさんの言う通り、この部分……右肩部付近を何かに貫かれたような痕はありました」
永琳「が、とは言ってもそれは……針に刺さった程度の小さな痕。言うなれば、掠り傷と大差ありません」
薬売り「ただの掠り傷……ですか」
永琳「別段、命を脅かす程でもないでしょう。あの程度ならまた、半日もせずにまた元気に飛び跳ねますよ」
うどんげ「は、はは……あのバカ……」
薬売り「そいつぁ……よぅござんした」
チーン
薬売り「では、モノノ怪は、命を奪うつもりまではなかったと……」
永琳「まぁ、てゐにとっては良い薬になったでしょう。これを機に、無用な悪戯は懲りて欲しいものですね」
薬売り「のたまうままに……」
うどんげ「よかったぁ……本当に、よかったぁ……」
【安堵】
永琳「あなたが出くわしたあの子は、その名を因幡てゐと言いまして。鈴仙に次ぐ、私のもう一人の弟子です」
薬売り「弟子は……二人いたんですね」
永琳「しかしてゐは鈴仙と違い、何と言うかこう……謀り症な性で」
永琳「ここが迷いの竹林なのを良い事に、迷い人に悪戯を仕掛ける事ばかりに心血を注ぐ次第で……」
薬売り「身をもって体験しましたよ。自己紹介がてらね」
永琳「幾度も、忠告はしているのですが」ハァ
うどんげ「――――で、穴に落とされてあったまきてやっちまったってか!? はん、ありがちな犯行理由ね!」
薬売り「あっしじゃありませんよ……」
うどんげ「嘘つけぇ! じゃあ逆に聞くけど、あの場あの状況で、他に誰がいるってーのよ!」
うどんげ「言っとくけどてゐはそんじょそこらの妖怪兎とはわけが違うのよ!? あいつはここの全兎のリーダーで(ry
薬売り「だから……違いますって」
【誤解】
永琳「鈴仙……いい加減におし」
うどんげ「いーや、今度ばかりは勘弁ならないね! 例えお師匠様のいいつけでも!」
薬売り「あなたもお師匠様に逆らいますか? いやはや、個性豊かな姉弟子さん達だ」
うどんげ「逆らう? とんでもない。むしろ守ってんのよ」
薬売り「ハッ、どこが……」
うどんげ「じゃあ聞かせてもらいますけどね……あんたのその、ちんどん屋にしか見えないド派手な服!」
薬売り「この着物が……何か?」
うどんげ「――――に忍ばせてる懐刀は、一体何に使うモノなわけ?」
薬売り(――――!)
【予期せぬ鋭敏】
薬売り「ほぉ……これはこれは……」ニヤリ
薬売り「モノノ怪を成すのは、人の因果と縁(えにし)」
薬売り「人の情念や怨念があやかしに取り憑いた時、それはモノノ怪となる」
永琳「では、てゐに手傷を負わせたのは、そのモノノ怪の仕業であると……?」
うどんげ「そのモノノ怪とやらが、てゐに何の怨みがあるってーのよ?」
薬売り「モノノ怪の道理は人の道理と混じらわず。決して相容れる事はない」
薬売り「ゆえに……斬らねばならぬ」
薬売り「それが例え、いかなる因果であろうとも」
永琳「…………」
【問答無用】
うどんげ「斬らねばならぬ……つったってさぁ」
うどんげ「肝心のこれ…………んぎぎぎぎぎぎ!」
うどんげ「~~~~ばっ! ダメ! 無理! 全然抜けないじゃん!」
薬売り「抜けませんよ、そいつは」
うどんげ「はぁ!? じゃあどうやって斬るのよ!?」
薬売り「そいつを抜くには、とある三つの条件が必要でね」
薬売り「退魔の剣を抜くには、モノノ怪の形・真・理が必要なんですよ」
薬売り「形とは、読んで字のごとく、モノノ怪の成す形」
薬売り「真とは、事のあり様」
薬売り「理とは、心のあり様」
薬売り「この三つが揃わぬ限り、そいつはいくら引っ張ったって抜けやしません」
永琳「真と理……」
うどんげ「結構ワガママな奴なのね……」
退魔の剣「 」チーン
薬売り「モノノ怪が現れた以上、この竹林になんらかの因果が存在するのは、もはや変え難き真」
薬売り「よって、皆々様――――」
【凛】
薬売り「この永遠亭に纏わる、真と理――――」
薬売り「お聞かせ――――願いたく候――――!」
【問掛】
うどんげ「お、お師匠様……」
永琳「…………」
薬売り「あの人兎は、幸いにも軽い怪我程度で済みましたが……」
薬売り「今度は……怪我程度で済む保証はありやせんぜ」
【返答や如何に】
永琳「……わかりました」
うどんげ「お師匠様!」
永琳「ただし、こちらからも一つ条件が」
薬売り「……何でございやしょう」
【問掛】
永琳「そのモノノ怪とやら、必ずや斬り屠って見せなさい」
永琳「これは申し出にあらず。流浪の薬師の、その師としての”命令”」
永琳「万が一、その命が叶わねば……」
薬売り「叶わねば?」
永琳「叶わぬなら……あなたもまた、永遠の一部となりましょう」
【返答や如何に】
薬売り「……そのように」
【八意永琳――――之・真】
永琳「薄々感づいておられるかもしれませんが……私と鈴仙は、元々はこの場所の住人ではありませんでした」
薬売り「ほぉ……元々はどこに?」
永琳「ここから遥か遠くにある都……思い馳せねど、おいそれと戻れぬ彼方の故郷」
うどんげ「要するに、簡単に帰れないくらいくっそ遠い場所って事よ」
薬売り「続けて……いただけますか」
永琳「太古の昔、私はその故郷を捨て、この地へと移住してきました」
薬売り「わざわざこんな、薄暗い竹林にですか……人里ならば、もう少し住み心地のよい場所もありましょうに」
永琳「そう、私はそのような……薄暗い、人がいるかどうかもわからない場所を選んで住まう必要があった」
うどんげ「空気読みなさいよ。大体察しが付くでしょ」
薬売り「なるほど、これは所謂……」
【悟】
薬売り「”逃避行”って奴……ですかな」
ゴーン
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