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元スレ永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」
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うどんげ「咳・痰・胃もたれ・頭痛・出血・霞・熱・腫れ……この世には、数えきれないくらいあらゆる病があるけれど」
うどんげ「その中で、誰もが等しく持ち、そして決して治せない病がある……それは何か」
うどんげ「薬売りでしょ。当ててみなさいよ」
(――――え~何それ、全然わかんな~い)
薬売り「いささか頓知のような答えになりますが……よろしいですかな」
うどんげ「なんでも言いから」
(――――あ、わかった! もしかして…………)
薬売り「それは所謂……”死の病”って奴なのでは……?」
【正解】
うどんげ「かつて、時の皇帝に命ぜられた国一番の薬師が、生涯かけて臨んだと言う不老不死の薬」
うどんげ「しかしその薬師は完成することなく、どころか自らの病すら治せぬまま、生涯を終えた……とか」
うどんげ「もしくは皇帝の怒りを買い処されたとか、褒美だけ受け取ってバックレたとか……」
薬売り「偽物を飲ませた……なんて話もありますな」
うどんげ「まぁ、いろんなバリエーションのオチがある話だわね」
薬売り「してその全ては、”不老不死などありはせぬ”の言葉で結ばれる……ありがちな不老不死譚ですな」
うどんげ「でも――――本当にあったとしたら?」
薬売り「本当に……あるんですね」
【向風】
うどんげ「姫様の部屋にあった置物、覚えてる?」
薬売り「無論です。見るからに珍品とわかる、それはそれは珍しい品々でした」
うどんげ「その中に、盆栽みたいなのがあったでしょ? こう、先っちょに色とりどりの実が成ってる奴……」
薬売り「ああ、ありましたな」
うどんげ「あれは――――”蓬莱の玉の枝”。薬師なら、名前くらいは聞いたことあるんじゃない?」
――――蓬莱の玉の枝とは、不老不死の薬の元とも言われておる物だ。
この世のどこかにあると言う蓬莱山にのみ生え、宿す実は七色に光り輝いておると言う、まっこと摩訶不思議な木々なそうで。
その美しさは極楽浄土の風景に同じと言われるほど、大変に美しい実であり、また不老不死の噂も出回った事から、その名は各地へと一気に広まり申した。
しかし今日まで、位に関係なく無数の者どもが捜索に当たったと言われておるが、いまだその現物を手にした者はおらぬ……
と言うのが、広く知られた通説であろう。
うどんげ「言っとくけど、本物じゃないわよ。あそこにあったのは全部贋作(レプリカ)」
うどんげ「でも、姫様だけは――――唯一、蓬莱の玉の枝の”本物”を所持している」
薬売り「……ほぉ」
【姫君之宝】
うどんげ「それがどこにあるのかはあたしにもわかんない。でも、持っているのは本当よ」
薬売り「はて、しかし妙ですな……蓬莱の玉の枝は確か、物自体が贋作」
薬売り「どこぞの誰かが作り上げた、夢物語の中だけに存在する一品……と存じておりますが」
うどんげ「夢物語じゃ……ないのよ」
【凪】
うどんげ「あたし達がいた”かの都”……それがどこかわかる?」
薬売り「そういえば……はるか遠くの果ての地とおっしゃっておりましたから……」
薬売り「北は蝦夷地か、南は琉球か……それでもなければよもや、海の向こうの南蛮の地か」
うどんげ「ううん、全部ハズレ。かの都はそのどこでもないし、そのどこよりも遠い場所にある……」
薬売り「ほぉ……ではどこに?」
うどんげ「――――あそこ」
その時、鈴仙は立てた指を真上に持ち上げ、煌めく夜空を堂々と指さしなすったと言う。
奇怪な返答と思わぬか? 思うであろう。
戯れと思しき程に、その指した指の先は、丸い孤を描く月のちょうど真ん中に突き刺さっているではないか。
薬売り「……満月?」
うどんげ「そうよ、あたし達は……」
しかし鈴仙の返答は、決して戯言の類ではござらなかった。
真摯な鈴仙の顔つきが、その言葉の全てが真である事を示しておる。
うどんげ「あたし達は――――あの”月”からやってきた」
してその時の様子を、薬売りが曰く――――
手を仰ぐ様が月の光に照らし出され、「まるで枝に咲く一輪の花のようであった」などと、申しておった。
【つづく】
【八意永琳】
【鈴仙・優曇華院・イナバ】
【因幡てゐ】
【蓬莱山輝夜】×
【八雲紫】
――――儚き思いを重ねども、決して叶わぬ人の夢
金銀財宝、数多の名声。
羨む宝を捧げ共、欲さぬと断じられれは、その全てが甲斐なき骸と成り果てん。
そして問わん。あなた様が、真に欲するは何か。
そして問われん。あなた様が、真に望む夢は何か――――
【永遠亭】――――四の幕
うどんげ「かの都とは……つまり月の都の事。そこで生まれた人を、地上の人間と区別して月人って呼ぶの」
うどんげ「まぁ私は、正確に言うと玉兎っつって、月人とはまた別なんだけどね」
薬売り「月の兎……の意ですか」
【正真】
うどんげ「でも、お師匠様と姫様は正真正銘の月人。本当なら、地上なんかとは永遠に無縁の方々なんだから」
にわかに信じ難き鈴仙の語り。
口を開くと同時に飛び出す言葉の数々は、その全てが絵巻物の類となんら遜色なき内容である。
が、しかし薬売りは訝しむ事もせず、ありのままを信じた。
それはこの竹林に隠されし「真」のせいなのだろうか。
はたまた自らも、絵空事の如き怪異に身を委ねているからなのだろうか……
うどんげ「つーわけで……まぁ、にわかには信じられないと思うけど」
薬売り「いやぁ信じますよ。実直な姉弟子様がよもや嘘偽りを申すなど、恐れ多くてとても……」
うどんげ「話が早くて助かるけど、全然うれしくないのは何故かしらね」
【謙遜】
薬売り「それに……不死の薬に幻想郷。そしてあなたのような、強力な妖術を持った人兎」
薬売り「月の魔性に当てられたと考えれば……全てに合点がいきます故」
ちなみにだが、この鈴仙と先ほどのてゐとか言う二人の人兎
一見同じようではあるが、実は似て非なるアヤカシである
鈴仙の方は月の兎を意味する「玉兎」。
対しててゐの方は、地上のアヤカシを意味する「妖兎」
身なりに差異はあらねど、素性は全くの別物である故、努々お忘れなきようにされたし。
薬売り「にしても……どうしてまた、突然打ち明ける気になったのです?」
薬売り「それもこんな竹林の奥も奥で……誰かに聞かれてはよろしくない事でも、おありなんですかね」
うどんげ「そうね……できる事なら誰にも……特に、お師匠様には……」
うどんげ「これはある意味……姫様とお師匠様を、侮辱する行為でもあるから……」
鈴仙は、この期に及んでまた口を噤み出した。
その躊躇いが意味する事は、やはり背徳に対する懺悔なのであろう。
薬売りはその様子を、急かすこともせずにじぃ~っと待った。
真とは、叶うなら当人が自らの意思で表すのが一番良い……とでも、この時薬売りは思うておったのだろうて。
うどんげ「モノノ怪は、人の因果に憑りつく……だっけ?」
薬売り「そう。モノノ怪を成すのは、人の因果と縁(えにし)――――」
薬売り「人の情念や怨念がアヤカシに取り憑いた時、それはモノノ怪となる」
うどんげ「その怨念って……やっぱり、憎いとか、恨めしいとか、そういう感情?」
薬売り「ええ……”そういうのも”いますね」
うどんげ「だったら……ううん、やっぱり……」
薬売り「お聞かせ……願えますかな」
しかしにしても、あまりにも勿体ぶった鈴仙の仕草に、薬売りはつい退魔の剣を構え申した。
剣に付いた鈴が、チリンと小さく鳴る。
聞き洩らしも十分ありえる程に小さき音であるが、鋭い耳を持つ鈴仙には十二分に聞こえる音である。
あのきざったらしい薬売りの事だ。どうせ鈴の音で持って、粋に促したつもりであったのだろう。
「――――さっさと言わぬか! この半人半兎のアヤカシ風情めが!」
そんな回りくどい真似をせずとも、身共なら直接そう言ってやると言うのに。
うどんげ「一人……心当たりがある……」
うどんげ「姫様と……お師匠様……ううん、もしかしたら、月そのものに恨みを持ってるかもしれない人間……」
薬売り「ほぉ……して……」
薬売り「それは一体、どこのどちらさんで……」
やはり案の定、この玉兎は知っておった。
モノノ怪を成す怨念、その真に最も近き者であろうその名を。
全く、だったら最初からそう述べておけばよかったものを……
さすればあの姫君も、消え失せる事などなかったかもしれんであったろうに。
うどんげ「かつてまだそいつが人間だった頃、姫様に肉親を侮辱された奴」
うどんげ「そしてかつてまだそいつが人間だった頃、望まぬ永遠を植え付けられ、人ならざる者になった奴」
薬売り(姫君が……侮蔑……?)
して紆余曲折を経て、ようやっと玉兎はその名を口にしたのだが……
……いや、まさかのう。
あ、いや、いやはや、なんでもござらんよ。
ただその名が、身共もよぉく存じておる「氏」と同じ性であった故に、な。
うどんげ「【藤原妹紅】――――不死の秘薬を飲んで”しまった”、ただ一人の地上人」
いやはや面目ない。やはり身共の勘違いだ。
よくよく考えれば、氏の名が使われておったのは、鎌倉よりさらに以前の世の話だ。
数多の性が蔓延る今日に置いては、性の被りなどさして珍しくもない事であろうて。
薬売り「その名は確か……」
それに姓名の由来など時代事に大きく異なっておる……だから、ありえぬのだよ。
その藤原妹紅とやらが、”藤原氏の末裔”であるなどと。
薬売り「その藤原妹紅とやらが……モノノ怪の真であると?」
うどんげ「お師匠様を否定するわけじゃないけどね……でも、誰かひとり選べって言われたら、やっぱり妹紅以外ありえないと思うのよ」
薬売り「八雲紫は、関係ないと?」
うどんげ「だってそうじゃない。そりゃ過去に月を攻めたかもしんないけど、今は幻想郷の管理人みたいなもんでしょ」
うどんげ「あたしら別に、ここを荒らそうとしてるわけでもなし。目をつけられる言われがないわ」
にしても、師弟の関係とは、げに不思議な関係よの。
長きに渡り衣食住を共にし、親子同然の暮らしを送っているにも関わらず、その思想は決して重なることがない。
伝統に重きを置く師匠に、商いを促す弟子。
互いの言い分はどちらも正しく、しかし決して相容れぬ……
これは巷でよく耳にする、職人の後継ぎ問題と言う奴だな。
うどんげ「そもそもな話、あたしらが月人とバレてるって限らないじゃん」
うどんげ「仮にバレてたとしても、忙し過ぎてとてもあたしらに構ってる暇はないと思うんだけど」
薬売り「忙しく……ないんじゃないですか」
うどんげ「なわけ……ねえっつの」
【八意永琳】
【鈴仙・優曇華院・イナバ】
【因幡てゐ】
【蓬莱山輝夜】×
【八雲紫】
【藤原妹紅】
うどんげ「あのね~……言っとくけど、幻想郷ってほんッとうに、めッちゃくちゃ広いのよ?」
うどんげ「古今東西の妖怪が集う妖怪の山に、凶悪な吸血鬼の根城に、黒魔術の蔓延る暗黒の森に、後は……」
うどんげ「地底にはかつて地獄だった場所があると言われているし、聞く所によると、どこぞに冥界の入り口まで開いてるとかなんとか」
薬売り「冥界に地獄……ですか」
うどんげ「そんないかにもな場所と比べたら、ここはま~静かなもんよ。当然ね。ただ住んでるだけなんだから」
うどんげ「住み着きついでに病人救って、怪我人治して、薬出して、さ……」
うどんげ「ハッ、だったら猶更理由がないわね。攫われる所か、むしろ感謝されたいくらいよ」
今回もまさにその典型であろう。
此度の騒動、師が紫と言えば、弟子は紅と答える。
双方の言い分はどちらも根拠に足る物で、しかしその真偽はいまだ見えぬと来た。
薬売りも大層困り果てたであろうて。
師と弟子。紫と紅。人と兎。療と乱……真偽はどちらに傾くか。
それはやはり、薬売りが自らの眼で断ずる以外に無いのだ
薬売り「その藤原妹紅とやらに……会わせてもらえますかな」
うどんげ「……危険よ。命の保証はできないわ」
まぁ、唯一わかる事はだな。
紫も紅も、月桂に盾突かんとしている傾奇者なのだ。
荒唐無稽にして酔狂極まりないが、故に明快なのが不幸中の幸い。
してその心は……二色共、”決して近づいてはならぬ”色々。と言う事だな。
【至・竹林之最奥】
【子】
うどんげ「妹紅はね、元々はただの人間よ。見た目はその辺の生娘とそう変わらないわ」
うどんげ「だから、知らないまま出くわしても気づかない事の方が多い……ていうか、むしろあんたの方が妖怪に近いくらい」
薬売り「よく……言われます」
しかしこの永遠亭とやら、よくできた物であるな。
月から逃げ延びた者共の隠れ家と言うのが真相であるが、その真相を忍ぶ姿として、薬屋を商んでおるは周知の通り。
してその商いは……いやはや、どこで学んだやら。まさに関心の一言である。
うどんげ「ま、いくらなんでも迷い人を襲ったりはしないけどさ」
薬売り「兎に化かされる事の方が多いでしょうしね」
まずは大元、八意永琳があらゆる病に対応した薬を作る。
してその薬を、玉兎がその瞬足を用いて、疾風の如き速さで患者の元へと届ける。
大金を積んでも手に入らぬ上質な薬が、安価に、しかもすぐに届く環境。
これだけでも十分、そこらの商人と一線を画すと言うに……
さらには時に、急病の者がいれば、八意永琳が自ら駆けつけ治療を施す事もあると言う
そして治療を終えた後も足繁く患者の元に通い、差し支えないかを事細かに診て回ると言う万全ぶり。
いやはや、まさに薬師の鑑。
どこぞのうさんくささ極まれり薬売りにも、ぜひ見習ってほしい物よの。
うどんげ「ただ……やっぱり妹紅は、あたし達にとっては脅威そのもの。一度襲われれば、もうあたし達ではどうする事もできないわ」
薬売り「襲われることが……あるんですね」
これではよもや、永遠亭を月人の住処と思う者等いやしまい。
人の間では、永遠亭の名はもはや、立派な薬屋の大看板なのである。
……のだが、そのあまりに完璧な隠匿が故か。
反面、”外敵の襲来”にはやや弱い傾向にあるのではないかと、身共は断ずるわけだ。
うどんげ「恥ずかしい話だけどね、あたしもてゐも、お師匠様すらも、妹紅を食い止めれた試しがないのよ」
薬売り「貴方の妖術を持ってしても、ですか……?」
完璧に溶け込んでいるが故に。
もし下手人の類に襲われれば、対応は後手に回らざるを得ないのではないだろうか……と、身共は考えるわけだ。
仮に下手人が病人を装ったとしよう。
見るからにいかにもな輩であろうとも、病に苦しんでいると言う”建前”があれば、薬師としては門戸を開かぬわけにはいかぬであろうて。
うどんげ「妹紅にはね、波長そのものがないのよ」
うどんげ「あたしの術は波長があって初めて操る事ができる……んだけど、妹紅の波長はずっと止まったままなの」
うどんげ「波は揺らぐからこその波なの。止まった波長は、ただの一本線でしかないわ」
うどんげ「これじゃあ、あたしじゃどうする事も出来ない」
薬売り(一本の……線……)
そして病魔に苦しむ患者を救わんと、いざ馳せ参じたその途端……
”グサリ!”と刃を突き刺されれば、はてさて、どうして躱した物か。
薬売り「生命の波長が止まったまま……と言う事は」
薬売り「やはり不死の薬の効能……文字通り”永遠”を手にした、と言うわけですかな」
ま、とは言う物の、そこは自称月の民。
仮にそのような者共が現れたとて、彼奴等の奇怪な妖術を持ってすれば、そんじょそこいらの曲者ではとても太刀打ちできまいて。
うどんげ「それとね、妹紅の場合はもう一つ問題があって……」
薬売り「まだあるんですかぃ……」
その代表例が、この竹林にてやたらと目にする兎共だ。
竹林に似つかわしくない白い毛皮は、やはり術によって連れ込まれた防人なのである。
それはもう一人の妖兎、てゐが術。
この兎が鼠の如く各地へと点在し、ある時は警守を。ある時は曲者の撃退を受け持つ……のだが。
とはいえ、曲者などそうそうめったに現れる場所ではないが故な。
長らく家事手伝いに留まっている。と言うのが現状のようじゃ。
うどんげ「妹紅は、不死と同時に”炎術師”でもあるのよ」
うどんげ「不死とは言え、なんでただの人間がそんな強力な術を持ってるのか……そこはマジで、未だに謎なんだけど」
先刻の山ほど詰まった食料の籠がそれだ。
あの煩わしい重い荷。わざわざ運ばずとも、あの場に置いておくだけで、兎が勝手に亭まで送って行ってくれるという……。
いやはや、それほど有用な兎ならば、身共も是非一匹頂戴したいものよの。
薬売り「そんな大変物騒な曲者を、毎度どうやって追い払っておられるので?」
うどんげ「……姫様よ」
いやしかし……むぅ……
どうせ娶るなら、やはり畜生風情などよりもうら若き美しいおなごの方が……
あ、いや、なんでもござらん。こちらの話でござるよ。
うどんげ「妹紅が現れた時だけ、いつも姫様が、直々に追い払っているのよ」
うどんげ「あの妹紅を止めれるのは、同じ永遠を手にした姫様だけだから……」
薬売り「変わった、主従関係ですな」
にしても妻を娶るならばやはり、慎ましきおなごに限る……
自己主張の強いおなごは好かん。本当に好かん。
あのいつぞやの生娘のように、耳元で事あるごとに金切り声をあげられては、おちおち夜も眠れぬわいて。
うどんげ「情けないと思うなら笑うがいいわ。従者が姫に守られるなんて、滑稽もいい所よね」
薬売り「いえいえそんな、めっそうもない……」
そのような頑固極まれりおなごより、修験者の身としては、やはりこう……
身を挺して守ってやりたくなるような、儚きおなごが、いとよきかな。
【守】
薬売り「不死の身となった炎の術師ですか……さしずめ、不死鳥の如きですな」
うどんげ「言い得て妙ね。あいつ、ホントに空飛ぶし」
薬売り「だからでしょうか……さっきから、やけに”焦げ臭い”のは」
うどんげ「……近いわよ」
っと、そんな事はどうでもよい……
――――さあさあ皆様ご注目!
紆余曲折を経て、ついに薬売りが不死の炎術師・藤原妹紅と対峙する場面!
その、到来である!
うどんげ「もう一度言うけど、妹紅は本気で危険な相手よ。下手に刺激して、睨まれるような真似だけは避けて」
うどんげ「特にあんた、ナチュラルに無礼だし」
薬売り「ご心配なく……お話をお伺いするだけですので」
藤原妹紅はその通り名を「不死鳥」にして、かの時の帝・藤原氏と同じ性を持つ者である!
その繰り出す妖術はまさに地獄絵図の体現!
この世の全てを焼き尽くし、生い茂る竹林を煤色で染め上げ、この玉兎を含めた永遠亭の全員が匙を投げる程である!
このような者が相手とあらば……ドゥフフ
如何に数多のモノノ怪を斬り払いし薬売りとて、きっとただでは済まぬであろうて……なぁ!?
うどんげ「この波長……いるわ……近くに……」
うどんげ「じっとして……いい? 息を潜めてて……あたしが合図するまで、絶対に動かないで……」
何やら曰くの香りがプンプンと漂う、まっこと奇怪な者と思わぬか?
だが、それがよいのだ!
あのいけすかぬ薬売りのすかした顔を、猥雑で卑しい恐怖の表情に歪めてやるには……ぷふっ
まさに、これほどにない大・逸・材! なのであ~る!
薬売り「……ん?」
うどんげ「近いわ……もう間もなくよ……」
しかしそこは薬売りも流石と言った所か。
これから降りかからんとする火の粉を察知したか、闇夜に紛れて密やかに身構え申した。
札を構え、天秤を傍らに、そしてあの退魔の剣を、再びその手に持ち……
残念ながら、そう簡単に折れてはくれぬ様子であるな。
薬売り(いや……)
だがしかぁし!
薬売りがふと手元に目を流せば、退魔の剣がカタカタと激しくと震えておるではないか。
その震えを見た――――途端!
薬売りは、ななな、なんとぉッ!
薬売り(そこに…………”居る”のは…………!)
玉兎の諫めもなんのその!
あれほど強く忠告されたにも拘らず、その全てを無下へと返し……”脱ッ!”
自ら業火の元へと、颯爽と飛び出して行ったのだ!
【鈴】
うどんげ「く…………ぉらァァァァ!! おとなしくしとけっつったろォォォォ!!」
【絶叫】
【木霊】
【怒号】
チーン
【完全・無視】
薬売り「――――ここか!」
その様はまさに電光石火の如く
他人の忠告なんのその。単身意気揚々に乗り込んだ薬売りであったが……
気配はすれども姿が見えぬとは、これ如何に。
ただでさえ薄暗い竹林。さらに子の刻も過ぎし深き夜分であれば、モノノ怪どころか目の前の竹すらも見えぬ道理。
しかしそれでも剣は語っておる。
「モノノ怪はすぐそこにいる――――」。その言葉を、震えに代えて。
薬売り「どこ……だ……」
薬売りは、先ほどの玉兎の話を糧に、かつて斬ったモノノ怪達を浮かべ申した。
人が持ちし、モノノ怪を成す強い情念。
その念はあらゆる情が入り乱れ、まこと千差万別であった……が。
しかし強いて一つ型に嵌めるとするならば、やはり”怨み”の念が、一つの定石と言えよう。
【追着】
うどんげ「――――この……アホンダラがぁぁぁぁ! あれっほど! 勝手に動くなっつったのに!」
うどんげ「バカ!? 生きたまま焼かれたいの!? それか灰になって、ここの土に還りたいの!?」
薬売り「何か……匂いませんか」
うどんげ「 話 聞 け よ ! 」
遅れて駆けつけた玉兎が薬売りに吠える。
無論その真意は、薬売りの勝手な行動に対する、純粋なる怒りである。
玉兎の怒号が静かな闇夜に響き渡る。
それは、裏を返せば、響き渡る怒号と同じまでに、強い”怨”と言う事だ。
うどんげ「あんたほんと、耳ついてる!? 危険な奴だっつったばかりだろーが!」
うどんげ「ほら……やっぱりあった! ここ見なさいよ!」
うどんげ「こーこ!」
薬売り(ん……?)
【痕】
うどんげ「竹が少し焦げてる……それにまだ、ほんのりと熱い」
うどんげ「ほんのついさっきまで、ここにいたんだわ……こんなの、どう考えても妹紅の仕業以外ありえない!」
姫君に強い怨を持つ、強大な炎の不死者。
肉親を侮辱され、不死を植え付けられ、にも拘らず未だ討ち取る事叶わぬその心中は、もはや身共では測り知れん。
薬売りとてその念の強大さたるや、重々承知の上であろう。
よもや自らも、怨念の炎に炙られ、あわや煤となりて闇夜に散らん……
そんな結末も、薬売りには薄っすらと見えていたはずだ。
薬売り「いえ、その匂いじゃありやせん……むしろ、匂いに関してはあなたの方がわかるんじゃないですか……」
薬売り「この炙られた竹の焦げ臭さに混ざる……”香ばしい香り”は」
うどんげ「はぁ……? 香ばしい……?」
――――その話が、”真”であるならばな。
【息吹】
薬売り「モノノ怪は……間違いなくいる……しかし闇に紛れて、姿が見えぬ……」
薬売り「夜を照らす月明かり……それを遮る竹林の群れ……煤けた焦げ跡……」
薬売り「闇をより一層濃くする暗がりの中に、微かに漏れる光の標……」
薬売り「それこそが……真のあるべき場所……!」
右も左も闇に次ぐ闇。
辺りもロクに見えぬ暗闇の中で、唯一「まだ明るさの残る場所はどこか」と、問われれば。
その答えは、少し思案すれば、誰もがすぐに気づけるであろう。
そう……答えは”天”にあり。
昼も夜も、空には常に明かりがある。
太陽と月の輝き具合は比べるまでもないが、月の輝きも満月ならば、人の顔を見る程度には十分な明るさである。
この答えに同じく行き着いた薬売りは、気づくと同時にハッと空を見上げなすった。
うどんげ「 キ ャ ー ー ー ー ッ ! 」
そして――――ついに見つけ申した。
薬売り「遅かった……か…………!」
空に届きそうなほどに育まれた竹林の、その先端にて……
竹葉と共に、不死者の召し物”だけ”が、そこには佇んでおった。
薬売り「モノノ怪の真は……藤原妹紅ではなかった!」
うどんげ「嘘よ……そんな……嘘に決まってるわ……」
薬売り「嘘じゃありませんよ……ほら」
薬売り「まるで焼き魚のように……綺麗に”身だけが”消えてらっしゃる」
にわかに信じ難き玉兎の心情、察するに余りある。
己が導き出した答え、藤原妹紅はモノノ怪の真などではなく……
どころか、とって食われる”供物”の側であったとあらば、その動揺も致し方なき所であろうて。
うどんげ「――――違う」
が、どうやらこの場合に限り、意味合いが少し違ったようだな。
それは動揺と言うよりも「戦慄」と呼ぶが相応しきかな。
竹葉と、召し物と、そしてもう一つ――――
玉兎の心までもが、大きく揺らぎ始めたのだ。
うどんげ「違う――――じゃない――――」
そしてその揺らぎは、あまりに大きすぎたが故か……
薬売りにもしかと、見え申した。
うどんげ「あたしじゃない! あたしじゃない! あたしじゃない! あたしじゃない!
あたしじゃない! あたしじゃない! あたしじゃない! あたしじゃない!
あたしじゃない! あたしじゃない! あたしじゃない! あたしじゃない!
あたしじゃない! あたしじゃない! あたしじゃない! あたしじゃない!
あたしじゃない! あたしじゃない! あたしじゃない! あたしじゃない!
あたしじゃない! あたしじゃない! あたしじゃない! あたしじゃない!
あたしじゃない! あたしじゃない! あたしじゃない! あたしじゃない!」
うどんげ「あたしじゃ…………ない…………!」
【膝落】
薬売り「……全く」フゥ
薬売り「秘め事が上手な……薬屋な事で……」
その当時の光景を、後の薬売りが曰く……
「竹葉の擦れ合う音が、まるで嘲りのように聞こえた」と、申しておった。
永琳「開けなさい鈴仙――――一体どうしたと言うのです!」
うどんげ「いや! こないで! 来るな! 開けるなァーーーーーーーッ!」
【拒】
てゐ「うるっさいなも~、どーしちゃったのさアイツ」
薬売り「さぁねえ……何か恐ろしい物でも、見たんじゃないですかね」
帰ってくるなり玉兎は自室へと一目散に駆け込み、鍵を掛け、自室を師匠すらも通さぬ堅牢な城へと変貌せしめた。
傍から見れば異様にしか思えぬ所業の真相は、この場では薬売りのみが知っている……と、言いたい所だが。
実の所、当の薬売りすらも存ぜぬのだ。
「あたしじゃない」――――その言葉だけが、最後に聞いた唯一の言葉であった故。
てゐ「――――はぁ!? 妹紅に会いに行っただぁ!?」
薬売り「あの姉弟子様が、きっとそうだと……」
てゐ「いやいやいや……何故に妹紅? アイツ関係なくない?」
薬売り「曰く……藤原妹紅が姫君を強く恨んでおいでだとか……」
てゐ「あーなるほどだからこっそり二人で…………って、いやいやいやいや!」
てゐ「そういう捉え方、する!? すごいわうどんげ、とっても斬新だわ!」
薬売りも薄々感づいていたのだろうか、妖兎の降りなす怒涛の反論に、どこか納得した面持ちであった。
先に伝えられた藤原妹紅の詳細。
げに恐ろしき存在であると、玉兎はあれほど強く言い張っておったにも関わらず……
この妖兎の言い分は、天地がひっくり返った程に別物であるのは、はてさて一体どういうわけであろうか。
てゐ「恨み……恨み……うーん、ある意味でそうとも言えるけども」
薬売り「藤原妹紅に恨みなどなかった、と?」
てゐ「いや、そういうわけでもないんだけど……なんというかな~、ニュアンスの違いって奴?」
てゐ「そういう”恨めしや~”的な事じゃなくてさ。”てめー今日こそやっちまうかんなコノヤロー!”みたいな?」
薬売り「ふむ……喧嘩するほどなんとやら、な感じですかな」
妖兎曰く、藤原妹紅はそもそも”永遠亭を敵視などしていない”と言うのが結論のようだ。
してその経緯はこう。
妹紅が姫君にかけるそれは、「復讐」ではなく「招来」。
退屈しのぎ同然にふらりと現れては、姫君に挑み、ひとしきり満足すれば帰って行くと言う……
不死者であり、強大な炎を扱うまでは事実であるものの、しかしそこから先はまぁ~別物もいい所である。
恨みつらみはどこへやら。これではまるで、御隠居の囲碁遊び同然ではないか。
てゐ「姫様も部屋に籠りっぱなしじゃ体に障るでしょ。いい運動になってんじゃないの」
薬売り「不死者なのに健康を気遣うとはこれいかに……」
こうなれば「誰も敵わない」と言った玉兎の言葉の意も、大きく変わってくると言う物。
敵わないはずだ。敵う敵わぬ以前に、そもそも、姫君以外が妹紅に挑む必要がないのだから。
てゐ「だってアイツ死なないじゃん。姫様と同じ不死身だし」
薬売り「その不死身も、望まぬ不死身だったと伺いましたが」
てゐ「ハッ! そりゃそーでしょーよ! だって――――」
てゐ「なんか貴重な供物っぽいからパクって食べたら、それが蓬莱の薬だったってだけなんだから!」
薬売り「なんと……」
聞けば聞くほど妹紅の印象が変わっていく……
うぅむ、古事記に出(いず)る火の神の如き存在を想像しておったのだが……
はぁ~……つまらぬ。まっことつまらぬ
いけすかぬすかした薬売りの顔を、恐怖の表情に歪めてくれる逸材だと思うておったのにのぅ。
これでは……表情は表情でも、ただのあきれ顔になってしまうではないか。
【相違】
薬売り「貴方様も、面識がおありなので?」
てゐ「面識も何も、そこかしこでしょっちゅう会ってるっての」
てゐ「こんな薄暗い竹林でバンバン火焚かれればさ、そりゃあんた、嫌でも目に入ってくるってもんじゃん?」
薬売り「それもまぁ、そうですな……」
その後の妖兎が語りし妹紅の詳細は、まぁ~聞くに値せぬ物であった。
やれ一緒に落とし穴を仕掛けただの、やれ偶然会って夕暮れまで遊びふけっただの
やれ焼き鳥を馳走になった事があるだの、やれ部下の兎が間違えて食われそうになっただの……
……その辺の童とたいして変わらん。語るのも億劫な、他愛なき日常の一部である。
てゐ「知ってた? あたしと妹紅は、人間の間では”幸運の使者”なんて、呼ばれてたりするんだから」
てゐ「たまに出る迷い人を出口に帰してたら、そー呼ばれるようになったの。ただ厄介払いしてるってだけなのにね」
薬売り「幸運の使者……ですか」
だが、薬売りはそれらの話を最後までしかと聞き入れ申した。
他愛なき妖兎と不死鳥の関りは、しかし薬売りにとっては貴重な縁。
してその主点は――――”何故に玉兎の名聞とこうまで異なるのか”である。
うどんげ「開けるなァーーーーッ! 去ねーーーーーッ!」
永琳「鈴仙……!」
てゐ「お~やれやれ、ヒステリックと引きこもりを同時に発症するとか」
てゐ「薬師の弟子の鑑ね。これでまた、置き薬の種類が増えるってもんよ」
薬売り「……」
単に玉兎が偽りを申しておったとあらば、話は容易に片が付く。
だが玉兎が轟かせるこの恐れは、まさに正真正銘の、嘘偽りなき真である。
どちらが一方が黒を置けば、もう一方が白を置く。
覆い覆われ、その果てに、残るはただ白と黒の二つのみ――――
薬売り「ところで姉弟子殿……一つお尋ねしても、よろしいですかな」
てゐ「あ? 何よ」
薬売り「お体の具合……すっかり完治されたようで」
【叫】
てゐ「……あああああ痛いいいいいい! お腹のこの辺が痛いいいいいいい!」
【恐】
うどんげ「来るなァーーーーーッ! 寄るなーーーーーッ! 誰も近づくなァーーーーーッ!」
【驚】
永琳「鈴仙! 開けなさい! お願い、開けて……!」
【境】
薬売り「やれ、やれ……」
真と偽りの境が曖昧になる――――。
「さすがに参った……」薬売りは小さく、そう零したとか、零さなかったとか。
【つづく】
【八意永琳】
【鈴仙・優曇華院・イナバ】
【因幡てゐ】
【蓬莱山輝夜】×
【八雲紫】
【藤原妹紅】×
――――人里外れし辺境の、誰が住まうか奥座敷。
此度寄り人訪ねれば、迎うは連なる双眼鏡。
『煙霞跡なくして、むかしたれか栖し家のすみずみに目を多くもちしは、碁打のすみし跡ならんか』
流離う人。流離う言葉。流離う風。流離う故事。
徒然なるままに、後、其処には一切のなごりなし――――
【永遠亭】――――五の幕
【姫君之間】
薬売り「珠・鉢・衣・貝・枝……そして、優雅な絵巻の描かれた襖」
薬売り「まさに豪華絢爛の粋を極めし、高貴なる者の御座す間……なれど」
薬売り「肝心の主がいないとあれば、いくら飾ろうと、間はただの間にすぎぬ」
【三度】
薬売り「いやはや、参りました……此度の騒動、いつも以上に各段と因果と縁が複雑に絡んでおりまして」
薬売り「まさに永遠亭とはよく言った物です。いくら真を紐解けど、絡みは延々と解れてくれませぬ……」
薬売り「まるで、永遠に連なる時のように」
(――――)
薬売り「少々……”弱音”を吐かさせて頂いても、よろしいですかな」
薬売り「ああっ、ご安心ください……この間なら、誰も近寄りませんので」
【愚痴】
薬売り「いやはや、どこから話しましょうか……そう」
薬売り「まずあの八意永琳からしてそうだ……姫君が攫われた当刻。師匠らしからぬ、あれほど人前で取り乱した様を見せておったにも関わらず」
薬売り「今ではトンと平静に……まるで、姫君の存在を忘れてしまったかのように」
(――――)
薬売り「逆に鈴仙は、当初は姉弟子に相応しき振る舞いであったにも関わらず、今や御覧のあり様で……」
薬売り「無礼千万も何のその。寄るな来るなの大立ち回り」
薬売り「あれを宥めるのは……八意永琳とて、少々骨が折れるかと」
(――――)
薬売り「そしてもう一匹の兎、てゐ。不自然極まりないと言えば、やはりこの者が最たる者でしょう」
薬売り「と言うのも……一貫して傍観の立場なんですよ。最初にモノノ怪と遭遇した御当人だと言うのに」
薬売り「自身の居所が未曾有の怪異に包まれているにも関わらず、まるで我関せずを貫くあの姿勢」
薬売り「やる事と言えば仮病と、使い走りと、嘲りと……っと失礼。一応怪我は本当でしたな」
(――――)
薬売り「ただし、神隠しが主であるモノノ怪が、何故にてゐにだけあのような粗末な奇襲をかけてきたのか」
薬売り「そして鈴仙は、何を恐れ、何故に塞ぎ込み、一体何から逃れようとしているのか」
薬売り「そして八意永琳は、主が消え失せた後も、何故にああも平静を保っていられるのか」
(――――)
薬売り「藤原妹紅は敵か味方か。秘薬は夢か現か。姫君は居か去か」
薬売り「モノノ怪が形造るあの眼の群れは、幻と真の、一体どちらを観ていると言うのか」
薬売り「貴方なら……わかるんじゃないですか」
(――――)
薬売り「万物の境界を司ると言う……貴方なら」
(――――)
薬売り「ずぅーっと覗き見てたんでしょう? どこぞとどこぞの隙間から……」
薬売り「だったらいい加減……舞台に上がって来ていただけませんかね」
薬売り「スキマ妖怪殿……いや、今は」
薬売り「”八雲紫”とお呼びすれば……よろしいのですかな?」
【今昔之境】
今は昔、竹取の翁といふ者有りけり。
野山にまじりて、竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。
名をば讃岐造(さぬきのみやっこ)となむ言ひける。
その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて寄りて見るに、筒の中光りたり。
それを見れば、三寸ばかりなる人、いと美しうて居たり。
翁言ふやう、『われ朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて知りぬ。子になり給ふべき人なめり』とて手にうち入れて家へ持ちて来ぬ。妻の嫗に預けて養はす。
美しきことかぎりなし。いと幼ければ籠(こ)に入れて養ふ。
世界の男、あてなるも卑しきも、いかで、このかぐや姫を得てしかな、見てしかなと、音に聞きめでて惑ふ。
そのあたりの垣にも、家の門にも、居る人だにたはやすく見るまじきものを、夜は安き寝も寝ず、闇の夜に出でても、穴をくじり、垣間見、惑ひ合へり。
さる時よりなむ、『よばひ』とは言ひける。
その中に、なほ言ひけるは、色好みと言はるる限り五人、思ひやむ時なく夜昼来ける。
その名ども
・石作の皇子(いしつくりのみこ)
・庫持の皇子(くらもちのみこ)
・右大臣阿部御主人(あべのみうし)
・大納言大伴御行(おおとものみゆき)
・中納言石上麻呂足(いそのかみのまろたり)
この人々なりけり。
この人々、ある時は、竹取を呼び出でて、『むすめを我に賜べ』と伏し拝み、手をすりのたまへど
『おのがなさぬ子なれば、心にも従はずなむある』と言ひて、月日過ぐす。
かぐや姫、『石作の皇子には、仏の御石の鉢といふ物あり、それを取りて賜へ』と言ふ。
『庫持の皇子には、東の海に蓬莱(ほうらい)といふ山あるなり
それに白銀を根とし、黄金を茎とし、白き珠を実として立てる木あり。それ一枝折りて賜はらむ』と言ふ。
『今一人には、唐土にある火鼠の皮衣を賜へ。
大伴の大納言には、龍の首に五色に光る珠あり。それを取りて賜へ。
石上の中納言には、燕の持たる子安の貝、取りて賜へ』と言ふ。
薬売り「これは……」
さて、かぐや姫、かたちの世に似ずめでたきことを、帝聞こしめして、内侍中臣房子にのたまふ
『多くの人の身を徒らになしてあはざなるかぐや姫は、いかばかりの女ぞと、まかりて見て参れ』とのたまふ。
房子、承りてまかれり。
竹取の家に、かしこまりて請じ入れて、会へり。
嫗に内侍のたまふ
『仰せ言に、かぐや姫のかたち優におはすなり。よく見て参るべき由のたまはせつるになむ参りつる』と言へば、『さらば、かく申し侍らむ』と言ひて入りぬ。
帝、なほめでたくおぼし召さるることせきとめ難し。
かく見せつる造麻呂を悦び給ふ。さて、仕うまつる百官の人に、あるじいかめしう仕うまつる。
帝、かぐや姫を留めて還り給はむことを、飽かず口惜しくおぼしけれど、たましひを留めたる心地してなむ、還らせ給ひける。
御輿に奉りて後に、かぐや姫に、還るさのみゆき ものうく思ほえて そむきてとまる かぐや姫ゆゑ御返事を、むぐらはふ 下にも年は 経ぬる身の 何かは玉の うてなをも見む
これを帝御覧じて、いとど還り給はむそらもなくおぼさる。
御心は、更に立ち還るべくもおぼされざりけれど、さりとて、夜を明かし給ふべきにあらねば、還らせ給ひぬ。
かやうにて、御心を互ひに慰め給ふほどに、三年ばかりありて、
春の初めより、かぐや姫、月の面白う出でたるを見て、常よりももの思ひたるさまなり。
ある人の、『月の顔見るは、忌むこと』と制しけれども、ともすれば、人間にも月を見ては、いみじく泣き給ふ。
七月十五日の月に出で居て、切にもの思へる気色なり。
かぐや姫泣く泣く言ふ、『さきざきも申さむと思ひしかども、必ず心惑はし給はむものぞと思ひて、今まで過ごし侍りつるなり。
さのみやはとて、うち出で侍りぬるぞ。おのが身は、この国の人にもあらず、月の都の人なり。
それをなむ、昔の契りありけるによりなむ、この世界にはまうで来たりける。
今は帰るべきになりにければ、この月の十五日に、かの本の国より、迎へに人々まうで来むず。
さらずまかりぬべければ、おぼし嘆かむが悲しきことを、この春より、思ひ嘆き侍るなり』と言ひて、いみじく泣くを、翁、『こは、なでふことをのたまふぞ。竹の中より見つけ聞こえたりしかど、菜種の大きさおはせしを、我が丈立ち並ぶまで養ひ奉りたる我が子を、何人か迎へ聞こえむ。まさに許さむや』と言ひて、『我こそ死なめ』とて、泣きののしること、いと堪へ難げなり。
御使ひ、仰せ言とて翁に言はく、『いと心苦しくもの思ふなるは、まことにか』と仰せ給ふ。
竹取、泣く泣く申す、『この十五日になむ、月の都より、かぐや姫の迎へにまうで来なる。
尊く問はせ給ふ。この十五日は、人々賜はりて、月の都の人、まうで来ば、捕らへさせむ』と申す。
かかるほどに、宵うち過ぎて、子の時ばかりに、家のあたり昼の明かさにも過ぎて光りたり、望月の明かさを十合せたるばかりにて、ある人の毛の穴さへ見ゆるほどなり。
大空より、人、雲に乗りて下り来て、地より五尺ばかり上がりたるほどに立ち連ねたり。
内外なる人の心ども、物に襲はるるやうにて、相戦はむ心もなかりけり。
からうして思ひ起こして、弓矢を取りたてむとすれども、手に力もなくなりて、なえかかりたる中に、心さかしき者、念じて射むとすれども、外ざまへ行きければ、あれも戦はで、心地ただ痴れに痴れて、まもりあへり。
竹取心惑ひて泣き伏せる所に寄りて、かぐや姫言ふ。
『ここにも心にもあらでかくまかるに、昇らむをだに見送り給へ』と言へども、
『何しに悲しきに見送り奉らむ。我を如何にせよとて、棄てては昇り給ふぞ。具して率ておはせね』と泣きて伏せれば、御心惑ひぬ。
『文を書き置きてまからむ。恋しからむ折々、取り出でて見給へ』とて、うち泣きて書く詞は、
この国に生まれぬるとならば、嘆かせ奉らぬほどまで侍らで過ぎ別れぬること、返す返す本意なくこそおぼえ侍れ。
脱ぎ置く衣を、形見と見給へ。月の出でたらむ夜は、見おこせ給へ。見棄て奉りてまかる、空よりも落ちぬべき心地する。
と書き置く。
そうして姫は無事、月へと帰っていきました、とさ……
めでたし、めでたし。
薬売り「八雲紫殿……とお見受けします」
はぁい薬売りさん。初めまして
面と向かってみれば、中々にカッコイイ御方ね。
その奇抜なファッション、とっても素敵よ。
薬売り「いえいえそちらこそ……まるで、西洋人形と思しき可憐さで」
あらやだわもう、薬売りさんったら、お上手ね。
ホホホホホ――――
薬売り「竹取物語……ですか」
紫「ふふ、やっぱり知ってたんだ」
薬売り「現存する最古にして最初の物語……してその名は、今日までありとあらゆる文化にも、影響を及ぼしております故」
紫「ロマンティックよねぇ……初めて生まれた物語が、まさか月を題材にした幻想譚だったなんて……」
紫「あっ」
――――その後、翁嫗、血の涙を流して惑へどかひなし。
あの書き置きし文を読みて聞かせけれど、『何せむにか命も惜しからむ。誰が為にか。何ごとも益なし』とて、薬も食はず、やがて起きもあがらで病み臥せり。
中将、人々引き具して帰り参りて、かぐや姫をえ戦ひ留めずなりぬる、こまごまと奏す。
薬の壺に御文添へて参らす。広げて御覧じて、いとあはれがらせ給ひて、物も聞こしめさず、御遊びなどもなかりけり。
大臣上達部を召して、『何れの山か、天に近き』と問はせ給ふに、ある人奏す、『駿河の国にあるなる山なむ、この都も近く、天も近く侍る』と奏す。
これを聞かせ給ひて、
あふことも 涙に浮かぶ わが身には 死なぬ薬も 何にかはせむ
かの奉る不死の薬に、また、壺具して御使ひに賜はす。
勅使には、調石笠といふ人を召して、駿河の国にあなる山の頂に持てつくべき由仰せ給ふ。峰にてすべきやう教へさせ給ふ。
御文、不死の薬の壺並べて、火をつけて燃やすべき由仰せ給ふ。
その由承りて、兵どもあまた具して山へ登りけるよりなむ、その山を『ふじの山』とは名付けける。
紫「ああごっめ~ん、まだ残ってたわ」
薬売り「そう、かぐや姫が月へと帰った後、翁は病状に倒れ、帝は姫のおらぬ世界に未練はなしと不死の薬を山へ燃やしてしまった……」
薬売り「そして不死の薬の煤を浴びた山は”不死山”と呼ばれるようになり、いつしか”富士山”と名を変えた」
薬売り「それが物語の本当の終着点。広く世に知られた、結の幕切れ……」
紫「さすが薬売りさん、博識な所もステキ」
薬売り「お戯れはよしてください……有名な物語じゃないですか」
薬売り「にしても、何故に……こんな物をお見せになさるので?」
紫「ふふ、それはね……」
その煙、いまだ雲の中へ立ち昇るとぞ言ひ伝へたる。
紫「まだ、物語は終わっていないからよ」
【竹取物語――――之・真】
紫「不死に帝に従者に、月と姫君……なぁんか、どっかで見たようなシチュエーションじゃない?」
薬売り「あの永遠亭の連中が、そうであると?」
紫「全員がそうかは知らないけど……でも、一人だけ、動かぬ証拠を持ってる奴がいるじゃない」
紫「ほら」
いまはとて 天の羽衣 着る折ぞ 君をあはれと 思ひ出でける
とて、壺の薬添へて、頭中将(とうのちゅうじょう)を呼び寄せて奉らす。
中将に、天人取りて伝ふ。
中将取りつれば、ふと天の羽衣うち着せ奉りつれば、翁をいとほし、かなしとおぼしつることも失せぬ。
この衣着つる人は、物思ひなくなりにければ、車に乗りて百人ばかり天人具して昇りぬ。
紫「この、不死薬渡してる奴……」
薬売り(八意永琳――――!)
薬売り「八意永琳は、月の迎え人であった……!」
紫「正確に言うと迎え人”達”の一人ね。他にも、似たようなのがいっぱいいるし」
薬売り「しかし月の使者にも関わらず未だ地上に残る……その所以は」
【同調】
薬売り・紫「――――”姫は月へと帰らなかった”」
【緞帳】
紫「ほら、始まるわよ。幕を下ろした竹取物語の……」
紫「永遠に表に出る事のない……”第二幕”が」
薬売り「こ…………れは…………」
【惨】
(姫様――――私と共に逃れましょう――――)
【屠】
(私にお任せください――――貴方様を月になど帰させはしませぬ――――)
【射】
(貴方の罪は私の罪――――故に被り、共に落ちましょう――――)
【殺】
【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】
【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】
【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】
【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】
【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】【殺】
(月が蔑む、穢れし地へと――――)
(永遠に――――)
【断末魔】
紫「おお、怖い怖い。澄ました顔して、蛮人顔負けな所業ね」
薬売り「姫を迎えに行った月の使者達は、結局誰も戻ることがなかった……」
紫「月の連中も、想像すらしてなかったでしょうね……まさか、迎えにやった使者達の一人に”鏖”にされるだなんて」
(姫様が……そう望まれたからです)
薬売り「ふふ、八意永琳……飛んだタヌキだ」
薬売り「逃げたのではなく……”奪い獲った”が真だったとは……ね」
紫「まるで、今回のモノノ怪みたいね」
チ リ ン
紫「そうそう言っときますけど。今回の騒動、犯人はアタシじゃないですからね」
紫「なーんか連中、好き勝手言ってくれちゃってるけど。変な濡れ衣着せられて、こっちも迷惑してるんだから」
【白状】
薬売り「月への侵攻は……もう諦めたんですか?」
紫「ふふ……ま、いつかはリベンジとしゃれこみたい所だけどね~」
紫「でもそれは今じゃない。今は月よりも、大事な物があるから……」
薬売り「してその心は」
紫「幻想郷……私がお腹を痛めて産んだ、夢の桃源郷」
【八雲紫――――之・理】
紫「産んで、育てて、与えて、見守って――――そんな日々は、この先も延々と続く」
紫「幻想郷はまだまだ産まれたばかり。一人で歩けるようになるまで、ママが傍にいないと…………ね」
薬売り「幻想郷は……貴方にとって”赤子”ですか」
紫「にしてもそろそろ、あんよくらいはしてもらわないと、ねえ?」
キーン
紫「人と人ならざる者の境が曖昧な世界……当然そこには、あらゆる異変が起こる」
紫「こないだだって大変だったのよ? 湖が紅い霧で覆われちゃったり、春が来なくなっちゃったりとかさぁ」
薬売り「おやまぁ……それはそれは」
紫「今回だってそう。ま~た誰かが何か異変を起こしたのかと見に来たら……」
紫「来て見てびっくり。そこには”呼んだ覚えのない物”がいたじゃないの」
薬売り「それは……どちらを指す言葉なんですかね」
コーン
紫「排除は容易かったけど、後学の為に見守る事にしたの」
紫「ウチん所のグータラ巫女ちゃんにも、その姿勢を少しは見習ってもらいたくてねぇ」
薬売り「見本になる程、立派な人間じゃありやせんがね」
紫「いやいやとんでもないわ。形と真と理……だっけ?」
紫「あなたが退魔の剣を抜く為に求めるその姿勢。それって、異変の解決屋の素養と同じなのよ」
薬売り「ほぉ……奇遇ですな」
カーン
紫「異変の解決には、事の首謀者と、異変の目的と、起こした理由。この三つを見抜く眼力が必要なの」
紫「そうやって今まで異変を無事解決してきた……んだけど」
紫「何年か前に受け継いだ後継ぎが、どーもこう、伝統に縛られないタイプと言うかなんというか……」
薬売り「縛られない……ですか」
紫「歴代でも才能はピカイチなんだけどね……そのせいなのかしらねぇ。力押しで無理やり解決する事のほうが多くって……」
紫「弾幕でガンガン押しまくって、力づくでふん縛ってやめさせるのよ」
薬売り「確かに、それでは真と理は見えませぬ」
紫「”解決してるから問題ないでしょ”って言われたらうまく言い返せないんだけど……」
紫「それってなんか……ねえ?」
薬売り「こっちとしては……むしろそっちの姿勢の方が見習いたいくらいなんですがね」
コーン
薬売り「そうそう、弾幕と言えば……この札は、この幻想郷ではスペルカードとやらに、当たるのですかな」
紫「ううん、スペルカードはあくまで自発的な物よ」
紫「スペルカード自体はあくまでただの紙でしかないから、自分がスペカと認識するなら物はなんでもいいの」
薬売り「ただの紙ですか……」
紫「とは言いつつも、なんだかんだでみんな、符しか使わないんだけどね」
紫「かさばらないし、持ち運びやすいし、集めやすいし、おしゃれだし……かく言う私も実は」ピラ
【結界】光と闇の網目
薬売り「おお……なんと美しい……」
紫「気を付けてね。触ったらピチュンと逝くわよ」
薬売り「弾幕……さしずめ、光輝く盤上の升目ですな」
紫「人と人ならざる者が共存するには、共通のルールがいるの……そのルールの一つが、この弾幕遊びなんだけど」
紫「浸透したのはうれしいんだけど、広まりすぎて逆に、今度は決闘の合図になっちゃってるのよね」
紫「まぁ、無益な殺生を防ぐ意味で本質は果たしてるけど……逆に争いの種になってちゃ、本末転倒よね」
【規則】
一つ、カードを使う回数を宣言する
一つ、技を使う際には「カード宣言」をする
【理念】
一つ、妖怪が異変を起こし易くする
一つ、人間が異変を解決し易くする
一つ、完全な実力主義を否定する
一つ、美しさと思念に勝る物は無し
薬売り「どーりで……見せた途端に襲われるわけだ」
紫「特に札タイプの弾幕はねぇ……さっき言ったゴリ押し解決人の、力押しの代名詞みたいなもんだから」
紫「あんまり見せびらかさない方がいいわよ……もし、”ここの住人となるつもりなら”」
薬売り「……肝に銘じておきましょう」
紫「神隠し……そちらの世じゃこの程度でも稀なんでしょうけど、こっちじゃこんな事日常茶飯事なのよね」
紫「人も妖怪も、それ以外の何もかも。あっちゃこっちゃで泣き出して、おちおち夜も眠れやしない」
紫「だが、それ故に愛しい……目に入れても痛くないとは、ほんと言い得て妙」
薬売り「母性に近い心情……ですか」
紫「自然と面倒事に進んでる自分がいる……ついつい、おせっかいを焼きたくなる自分がいる」
紫「もしかしたら……今回出たモノノ怪とやらも、同じ気持ちだったりしてね」
チ リ ィ ン
紫「さて、でもまぁ、おせっかいはそろそろ終わりにしようかしら」
紫「こう見えても私、忙しい身なのはわかっていただけたと思うし?」
薬売り「ご協力、まこと感謝の極み……」
紫「でもまぁこのままサヨナラするのはなんか味気ないわね……あ、そうだ」
紫「せっかくだから、お近づきの印にこれあげる」
薬売り「これは珍しい……”朱色のシロツメクサ”ですか」
紫「でしょでしょ。さっき穴ぼこの近くで拾ったの」
【土産】
紫「いや実はさ、月人うんぬん関係なく、前からちょくちょく覗きに来てたのよね」
紫「知ってた? あの竹林、実は幸運を呼ぶパワースポットなのよ」
薬売り「幸運を呼ぶ……?」
紫「迷いの竹林なのに人々が消えた試しがないとか、何故かやたら珍しい物が落ちてるとか」
紫「そもそも、地上人が月の医療を受けられるって、周りにとったらラッキーもいい所じゃない?」
薬売り「稀の集まる幸運の場所……」
紫「月の連中が来たからそうなったのか、はたまたそれを含めて幸運の一部なのか……」
紫「ほんと、全部足して何十万分の一の確率なのって感じ」
チ リ ィ ン
紫「さてと、スキマのおせっかいは此処迄。こんなんで、お力になれたのなら幸いだわ」
薬売り「いえいえ、あなたのような可憐な御方と会いまみえる事が出来た……それだけで十分にございます」
紫「もう、ほんとお上手ね」ホホホ
(キャーーーーーーーーーッ!)
紫「――――ほら来た! 薬売りさん! さっそく出番よ!」
薬売り「全く、慌ただしい薬屋だ……」
紫「どれどれ、今度は何事……ワオ!」
紫「ちょっと薬売りさん! なんか、なんかすんごい事になってるわよ!」キャッキャ
薬売り「なんで……嬉しそうなんですかね」
【到来】
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