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    元スレ国王「さあ勇者よ!いざ、旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」

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    601 :

    乙乙
    人類の迷走感がハンパない

    602 :

    もう人類滅びてよくね?

    603 :

    こんな人類を守る価値あるのか?

    604 :

    まあ、代表者が狂ってたら世界は腐るわな

    605 :

    おつ

    606 :

    おつ
    時を遡る技の研究、ねえ

    607 :

    来週とは今週中ってことだよな?

    にしてもこの兄上いつから裏切ってたの?最初から?

    608 :




    王城

    「…それで? 教皇様より兵を預かってしてきたことが、たったこれだけか?」

    貴族「はっ…それは、そのぅ…」

    「お前の部隊長の任を解く。能力のないものは十字聖騎士団、改め王国正規軍には必要ない」

    貴族「!! お、お願いですぅ!! もう一度、もう一度チャンスをぉっ!!」

    「本来ならば、新たな軍法に照らし合わせて処刑とするところを、降格で良しとすると言っているのだ。下がれ、私は忙しい」

    「今後は一兵卒として、活躍してくれ」

    貴族「うぅ…そんなぁ…」

    「将軍閣下。そろそろ王国軍出陣の儀の時間であります」

    「分かった。すぐに向かおう」

    「………いよいよか」

    609 = 1 :


    教皇「――汝、その血と肉に、戦場を駆けるその風に、女神の加護を授けん」

    「…有り難き、幸せ」

    「最後に、国王陛下よりお言葉を賜るッ!」


    国王「………」


    (…陛下)

    国王「――あれは女神の力などではない」

    国王「人の欲望が生み出した、幻影だ」

    国王「存在もしないものに魅了されて…それに多くの命をかけるのは愚かなことだ」

    「………」

    「例え、幻影だとしても」

    「魔王が討てるのならば…人には幻影が必要なのです」

    「力があれば、平和すら手に入ります」

    国王「…馬鹿なことを。真の女神の加護なくしては、魔王は討てん」

    「………そうではないことを、証明して参ります」

    610 = 1 :


    「………」

    (女王陛下…やつれたな。俺にあの日の策を託したことを悔いておられるのか)

    (その選択は、間違いなかったという事を…示してみせます。だから…)

    「…どうか、心穏やかな日々を、お過ごしください」

    「………」




    「…ふう。後は軍を率いて旅立つのみ、か」

    「私の部屋に見送りにくる者など、ひとりも居ないな。これでも将軍なんだが」

    (…嫌われたものだ。まあ、当然か。信頼の全てを裏切ってみせたのだからな)

    (それでも…。全てと引き換えに、今や力は我が手中にある)

    (成し遂げてみせる)

    (真の平和を)









    戦士「………」

    611 = 1 :


    「…おや」

    「こんな私にも、見送りが居たか」

    「傷は良くなったようだな。送別の花でも手向けにきてくれたか?」

    「…なんて、気の利いたことが出来る男じゃないよな…」


    戦士「………」チャキ…


    「…まったく。お前は理解できないことがあればすぐ剣か?」

    「そんな事だから、いつまでたっても甘いのだ、お前は」

    戦士「…黙れ」

    戦士「兄上の顔で、声で、言葉で」

    戦士「それ以上語るな」

    戦士「お前は兄上などではない」

    戦士「操られ、ままならぬ姿の兄上を見ているのは………もう俺には耐えられない」

    「…戦士」

    「信じているのだな。俺を」

    「父上を信じていたのと、同じように」

    「でもなあ…戦士よ」


    「俺は、操られてなど、いないんだよ」

    「それが、現実なんだ」

    「………受け入れてくれ」

    612 = 1 :


    戦士「嘘だっ!!」

    「嘘じゃあない。俺の身体は俺のもので、俺の記憶だってそうだ」

    「お前が小さな時、勇者ごっこに夢中になりすぎて、屋敷の階段から落ちたことだって覚えてる」

    戦士「…やめろ」

    「そういえば、あの時から俺は魔王の役回りばかりさせられていたな」

    戦士「…やめてくれ」

    「あれからもう二十年経つが…今のお前にしてみれば、俺は魔王のごとき存在に見えるのか?」

    戦士「やめてくれっ!!」

    「………」

    「そう言えば、お前は勇者一行になったんだっけな。夢が叶って良かったな」

    「でも、そんなものでは国は守れない」

    「現実は………お伽噺話のようには、いかないんだよ」



    戦士「うあああああああああああッ!!」

    ダッ

    613 = 1 :


    ビタッ…!

    戦士「ッ!!」

    戦士(か、身体が…動かない…!!)


    「…お前は、無力だ」

    「考えも無しに突っ込んで、何が出来るというのだ」

    「今や将軍たる俺に刃を向ければ…また謀反人に逆戻りだということも、分からんのか?」


    戦士「…謀反人になろうが何だろうが…!」

    戦士「俺には、もう譲れないものがあるんだ…!!」ググ…

    戦士「守りたいものが、あるんだっ!!」グググ…


    「力の無い者に、何も守れはしない!!」スッ

    ズダァン!

    戦士「うぐぅッ…!」

    614 = 1 :


    戦士「………兄上までもが…あの忌まわしき術を使うのか…」

    戦士「父上を死に追いやった…その呪われた技を…!」

    「使えるものは利用するだけだ」

    「紛い物だろうが何だろうが、強きものだけが残るのだ!!」

    ドタドタドタ…

    「将軍閣下! 今なにか物音が…っ!? これは…!」

    戦士「………」

    「………」

    「…なに、弟が見舞いに来てくれただけのことさ」

    「我が一族には、こういう荒々しいしきたりがあってね…」

    「し、しかし閣下! この者は武器を!!」

    「暫くは動けない。放っておけ」

    「………出陣するぞ」

    615 = 1 :


    「………」ツカツカ

    戦士「…兄上が」

    戦士「兄上が言ってくれただろ…」

    戦士「"お前には、大事なことを感じ続ける力がある"って」

    戦士「俺が…大事だと信じていたこと…」

    戦士「――…間違って、いたのか?」

    「…間違っていたのかどうかは、後の世の人間が好きに決めればいい」

    「俺は俺で、お前はお前で、この国のことを思った」

    「ただ歩く道が………遠く離れてしまった」

    「それだけのことさ」

    戦士「…待て、よ」

    戦士「約束しただろ。女勇者様の、手紙…」ググ…

    「………」

    「もう………」

    「俺には必要ないものだ」

    戦士「………っ」



    「さらばだ」




    「我が弟よ」





    616 :

    魔王様頑張ってくれ

    617 = 1 :


    戦士「………」

    くノ一「………戦士殿」

    国王「…」

    国王「…兄弟とは、不思議なものだな」

    戦士「………」

    国王「同じ親を持ち、数えきれぬほど多くのことを共にしていたはずなのに…」

    国王「気づけばいつの間にか、全く別の生を歩んでいる」

    国王「それでいて…失ってしまえば、その代わりなるものなど、ひとつもない」

    戦士「………」

    くノ一「…」

    くノ一「――忍は、血の繋がらない兄でした」

    戦士「え…?」

    くノ一「陛下の陰の力となるべく、一緒に育てられてきた義兄妹」

    くノ一「兄者は私よりも遥かに優秀で、大事なことのためならどんなことも犠牲に出来る人でした」

    くノ一「私は、まだまだ未熟で…あの日ですら、小さな子供を相手に手をあげることを、躊躇した」

    くノ一「兄者が見たら、怒っただろうな…」

    618 = 1 :


    戦士「………俺は」

    戦士「弟なのに、兄上のことを何も分かっていなかったんだ」

    戦士(俺は…いつまでたっても)

    戦士(結局、何も分からないままだ)

    くノ一「………どんなに絶望を感じても」

    くノ一「ひとには、出来ることが必ず残されている筈です」

    くノ一「何度だって、立ち上がる権利があるはずなのです」

    戦士「…くノ一」

    くノ一「共に、陛下を支えましょう」

    くノ一「最後の最後まで」

    国王「――まだ、全てが終わったわけではない」

    国王「お前の役目を、終わらせてやれはしないぞ」

    国王「お前の居場所は」

    国王「余の側だ」

    戦士「………」

    戦士「はい」


    ――
    ――――
    ――――――
    ――――――
    ――――
    ――


    「戦士さんへ」

    「王国正規軍は魔王の大陸を攻め上がり、猛進を続けているようですね」

    「そして、今回のあの件…。一見、人類の行く末には、光が射し込んだように見えますが」

    「私にはどうしても、このまますんなりと事が運ぶようには思えません」

    「女神のあの言葉を、覚えているでしょうか」

    「魔王は勇者一行の結成を待たずして攻めてくる。それは勇者が神託を受けるのとほぼ、同時だ…と」

    「感じるのです…魔王の力が、大きな衝動を抱えているのを」

    「………私たちが対峙するものは、もしかするととてつもなく強大なもので」

    「あまりに無力な我々には、成す術もないのかもしれません」

    「王国も抜かりなく備えているとは思いますが、くれぐれも注意して下さい」

    「それと…」

    619 = 1 :


    「王国と、辺境連合との戦いが熾烈化していると聞いて、胸を痛めています」

    「戦士さんと、盗賊さんが戦うなんて…和解の道は無いのでしょうか」

    「私に出来ることがあれば、何でも言って下さい」

    「僧侶」


    戦士「…僧侶殿」

    戦士(幽閉されていて尚、こうして秘密裏に文書を送ってくれる)

    戦士(なんとかしてやりたいが…教皇領には、近づくこともままならん)

    戦士「勇者一行…か」

    戦士「それが真のことかどうか…今日こそ、はっきりするのだろう」

    戦士(例えそれが真実だったとして…)

    戦士(今さら何になるんだろうな)

    「戦士殿。お時間です」

    「勇者が、謁見の間に入室します」

    戦士「…そうか」

    620 = 1 :


    王城 謁見の間?

    戦士「…陛下」

    国王「ついにこの日が来たな」

    戦士「はい。彼は、本物なのでしょうか」

    国王「まあ、教会の発表だからな。どうとも取りづらいが…。実際にその力で、地方の小さな集落をオークから救ったのだとか」

    国王「女神に会ったお前は何も感じんのか?」

    戦士「…はい。あの場に居た者たちにはそもそもその自覚はないですし、女神も勇者が誰とは言わなかったので…」

    国王「そんなものか。なんか、こう、ないわけ? 運命を感じる…! みてーなの」

    戦士「陛下におかれましては、絵巻物の読みすぎかとぞんじます」

    国王「うるせーや」

    国王「だが、しかしこれで…前線の兵士がいたずらに死ぬことも、防げるかもしれん」

    国王「王国軍も…魔王軍もな」

    戦士「………」

    国王「その運命を、魔王と…一人の人間に任せるのは、間違っていると言わざるを得ないが」

    国王「…まったく、ままならんな。女神様は何をお考えなのだか」

    戦士「陛下…」

    国王「それでも、余は勇者を激励せねばならん」

    国王「むごたらしい運命を背負わせると分かっていても、送り出してやらねばならん」

    国王「それが余の仕事だ」


    「勇者様、入室されます!」

    621 = 1 :


    国王「…よくぞ参った。勇者よ」

    勇者「はっ」

    戦士(………あれが、勇者)

    戦士(若いな。しかし、女勇者様も魔王を討った時はあれぐらいの歳だったと聞く)

    戦士(本当にあの者が、女神の言っていたものなのか)

    戦士(なんとも、感慨の無い出会いだ)

    国王「知っての通り、魔王軍には王国正規軍が攻撃をしかけているが、未だ魔王撃破には至らない」

    国王「女神の加護を…」

    国王「…真の強さをもつそなたならば、きっと魔王を討てるのはずだ」

    勇者「………」

    国王「世界の重みをその肩にかけることを…許せ」

    国王「勇者よ! 遊撃隊として勇者一行を組織し、魔王を撃破するのだ!」

    勇者「はっ!」


    国王「さあ、勇者よ!」


    国王「いざ、旅立ち――」


    バタンッ…!


    伝令「で、伝令!」



    伝令「魔王が、攻めてきました!」




    622 :

    ここまで女神の計画通りな気がする

    623 = 1 :



    国王「なに…!? それは真かっ!?」?

    勇者「…!」?

    ザワザワ…?

    伝令「はっ!!」?



    「ま、魔王が…?」?

    「そんな馬鹿な…! 勇者が旅立ってこれからと言う時に!」?

    「なんということだ…っ」?


    国王「…状況を詳しく申せ」?

    伝令「はっ!本日未明、魔王軍との最前線基地へ、新たな敵軍が出現!」?

    伝令「我が国の軍は、新手の出現からわずか半時で全滅しました…!」?

    国王「な、なんだと…!?」?








    戦士(――全、滅?)



    624 = 1 :


    戦士(王国正規軍の、"全滅"--)

    戦士(それは………)

    戦士(司令官の死をも、同時に意味する)


    伝令「新手はどうやら、魔王と直属の精鋭兵のようです!」?


    戦士(死んだ?)

    戦士(こんなにも、あっけなく?)


    勇者「魔王が、自ら…!」

    ?
    ――「いつもいつもそういう場は面倒だと私に押しつけて…」

    ――「ふっ、可愛くない弟だ」

    ―― 「…約束だ」


    伝令「魔王の部隊は、その後直近の拠点を蹂躙!南方大陸から海路に出ました!」?


    ――「もう、俺には必要ないものだ」

    ――「さらばだ。我が弟よ」


    伝令「その猛進凄まじく…我が国の港町までおよそ数刻…!!」?



    ――「ふぐっ…馬鹿言うな…俺が泣くわけないだろう………」

    ――「よく、生きて戻った」

    ――「戦士」


    625 = 1 :








    戦士(………………兄…上)


    626 = 1 :

    >>624
    貼り直します


    戦士(王国正規軍の、"全滅"--)

    戦士(それは………)

    戦士(司令官の死をも、同時に意味する)


    伝令「新手はどうやら、魔王と直属の精鋭兵のようです!」


    戦士(死んだ?)

    戦士(こんなにも、あっけなく?)


    勇者「魔王が、自ら…!」


    ――「いつもいつもそういう場は面倒だと私に押しつけて…」

    ――「ふっ、可愛くない弟だ」

    ―― 「…約束だ」


    伝令「魔王の部隊は、その後直近の拠点を蹂躙!南方大陸から海路に出ました!」


    ――「もう、俺には必要ないものだ」

    ――「さらばだ。我が弟よ」


    伝令「その猛進凄まじく…我が国の港町までおよそ数刻…!!」



    ――「ふぐっ…馬鹿言うな…俺が泣くわけないだろう………」

    ――「よく、生きて戻った」

    ――「戦士」


    627 = 1 :

    >>623
    も貼り直します。
    もう許さん。マジで文字化け許さん…


    国王「なに…!? それは真かっ!?」

    勇者「…!」

    ザワザワ…

    伝令「はっ!!」



    「ま、魔王が…?」

    「そんな馬鹿な…! 勇者が旅立ってこれからと言う時に!」

    「なんということだ…っ」


    国王「…状況を詳しく申せ」

    伝令「はっ!本日未明、魔王軍との最前線基地へ、新たな敵軍が出現!」

    伝令「我が国の軍は、新手の出現からわずか半時で全滅しました…!」

    国王「な、なんだと…!?」








    戦士(――全、滅?)



    628 = 1 :

    >>623
    も貼り直します。
    もう許さん。マジで文字化け許さん…



    国王「なに…!? それは真かっ!?」

    勇者「…!」

    ザワザワ…

    伝令「はっ!!」



    「ま、魔王が…?」

    「そんな馬鹿な…! 勇者が旅立ってこれからと言う時に!」

    「なんということだ…っ」


    国王「…状況を詳しく申せ」

    伝令「はっ!本日未明、魔王軍との最前線基地へ、新たな敵軍が出現!」

    伝令「我が国の軍は、新手の出現からわずか半時で全滅しました…!」

    国王「な、なんだと…!?」








    戦士(――全、滅?)



    629 = 1 :


    「う…嘘だ…港町まであと数刻だと」

    「港町からは、もうこの王城まで砦ひとつ隔てるのみだぞ!?」

    「お、王国軍は!? 王国軍はどうなって…」

    「主戦力の半分以上は最前線に送られているはずだ…それが全滅…」

    「で、ではもはや港町以降を守れる人類の戦力は…!!」

    「そんな…そんな馬鹿な!!」


    国王「………」

    兵士「し、失礼致します!」

    国王「…今度は何だ」

    兵士「陛下、こちらの書状を…。港町の長から、火急の報せとのことです!」

    国王「港町…長というと、武器商会の長か」

    国王「よい。読み上げてみよ」




    630 = 1 :


    『魔王との闘いは、近いうちに起こるでしょう』

    『避けることは出来ません』

    『魔王は、絶大な力を示して現れます』

    『魔王は、勇者一行の結成を待たずして攻めてきます』

    『勇者が、神託を受けるのとほぼ、同時にです』

    『…あなたたちはそれぞれ別々に、魔王と闘うことを強いられます』



    戦士「――どうやら全ては現実のこととなるようです」

    国王「そうみたいだな」

    戦士「私は、戦いに赴かなければなりません」

    国王「そう言うことに、なるだろうな」

    戦士「残存の王国軍を全て率いて、王国南方の砦に布陣します」

    国王「確かに、それが良さそうだ」

    戦士「…陛下?」

    国王「………」

    631 = 1 :


    国王「こうなるかもしれんと分かっていて…それを止めることも出来なんだ」

    国王「余は、人類の歴史上最も愚かな国王として記憶されるだろうな」

    国王「しかし、どうやら悲劇に酔っている時間もどうやら残されてはいない」

    「………陛下」

    くノ一「………」

    国王「戦士」

    戦士「…はっ」

    国王「共に足掻いてくれるか」

    戦士「…」

    戦士「私は、陛下のつるぎです」

    戦士「最後の、時まで」

    国王「そうか。では――」








    国王「お前に、将軍の地位を授ける」







    将軍「御意」

    632 = 1 :


    くノ一「戦士殿…」

    くノ一「…いえ、将軍閣下」

    将軍「…はは。お前にまでそう言われてしまうのは寂しいな」

    くノ一「………いつか」

    くノ一「この時が来るであろうと、覚悟はしておりました」

    将軍「そうか」

    将軍「………離れていても、我らのすべきことは変わらんさ。そうだろう?」

    くノ一「…はい」

    将軍(…例え、それが生と死ほどの距離であっても)

    くノ一「隠密である私は、涙も失って久しく…可愛くない女ですね」

    くノ一「こういう時に泣くことも出来ません」

    将軍「…」

    くノ一「将軍閣下」

    くノ一「我らは、陛下をお守りすると誓い合った身。なまじ本懐を遂げずにおめおめと戻られようものなら」

    くノ一「私は、あなたを許しません」

    将軍「…ああ。分かっている」

    将軍「それではな」

    くノ一「はい」

    633 = 1 :


    将軍(よく分からんな…女心というものは)

    将軍(嘘をついてまで、激励しなくてもいいだろうに)

    将軍(兄者を失った時も人知れず、泣いていたろう。知ってるぞ、私は)

    将軍(そして、私が去ったその部屋で、泣くことも)

    将軍(優しさを捨てきれないお前が、そうまでして…)

    将軍(…よく、分からんよ)

    将軍(なあ、兄上。兄上だったら分かるのか?)

    ――「俺はな。お前にはひょっとしたら――」

    将軍(…あの時、何を言おうとしていた?)

    ――「いや…。なんとなく、な。お前が先に見るべきな気がしたんだよ」

    将軍(あの手紙を、兄上が読んでいたら…こんなことにはならなかったのか?)

    ――「うるさい。…兄ってものはな、色々考えてるんだよ」

    将軍(何を考えていたんだ?)


    ――「…間違っていたのかどうかは、後の世の人間が好きに決めればいい」

    ――「俺は俺で、お前はお前で、この国のことを思った」

    ――「ただ歩く道が………遠く離れてしまった」

    ――「それだけのことさ」


    将軍(分からないよ…そんな言葉で)

    634 = 1 :


    将軍「納得、できないよ」

    将軍「死んでしまうなんて、ずるい」

    兵士「か、閣下?」

    将軍「………」

    将軍「…中央、左翼は重装歩兵を前に出せ!!」

    兵士「し、しかしあの破壊力の前では」

    将軍「敵がいかに屈強でも、立ち止まるな!!」


    将軍「決して歩みを止めるなッ!!」


    将軍「我らの後ろに逃げ場などとうにないッ!!」


    将軍「ここが、この王国軍が人類最後の砦だッ!!」


    将軍「進めッ!!」


    将軍「死して尚も前へッ!!」








    635 = 1 :


    将軍(全てを失った時…)

    将軍(私は只のいち戦士へと戻るだろう)

    将軍(そしてその時、私は)

    将軍(死んでいるんだろう)

    (そう思っていた)

    「…それなのに」

    「何故、私は生きているのだろうな」



    「教えてくれないか? 魔王よ」ユラ…




    氷姫「! 何、コイツ…」

    炎獣「お前…」

    魔王「炎獣、見覚えが?」

    炎獣「…ああ。戦場でデカイ声張り上げてたからな。こいつは王国軍の…」




    「そう。私はずっと、王国を守るために戦ってきた」

    「守るべきものが、王国にはあった」

    「色んなものに守られもした。そういう幾つもの想いを胸に進んでいくうち」

    「人は私を、将軍、と呼ぶようになった」

    「だが今の私は将軍などではない」

    「兵を失い、旗は燃え尽き、剣は折れた」

    「私は最早何も持たない」

    「そう、私は只の――」














    戦士「戦士だ」



    636 :

    かっけえ

    637 = 1 :


    戦士(滑稽だ)

    戦士(何も出来はしなかった)

    戦士(何も守れなかった)

    戦士(何も分からないまま死んでいく)

    戦士(何が勇者一行だ)

    戦士(………万死に値する)


    ――「それでも」

    ――「何度でも立ち上がる権利が、あるはずです」


    戦士(…うん)

    戦士(そうか、だから私は)

    戦士(身体は軋み、剣は折れ、兵を失い、誇りは費えても)


    戦士「…」ザ…


    戦士(この者達の前に立ち塞がろうとしている)



    638 = 1 :



    炎獣「退かないってか」

    戦士「それが、私の権利だ」

    炎獣「…そうかよ」

    炎獣「じゃあ、手加減しねえからな」

    戦士「…いざ」


    ヒュオオォ…


    炎獣「…」


    戦士「…」


    炎獣「…」


    戦士「…」



    ガラ…






    戦士「」ドンッ


    炎獣「」バッ


    639 = 1 :



    戦士(………盗賊。貴様は何を思いながら死んだ?)

    戦士(商人、貴様はどうだ?)

    戦士(………兄上)

    ――戦士「あにうえ!」

    ――戦士「オレ、おおきくなったら、ゆうしゃになるんだ! そして、まおうをたおすんだ!」

    ――「ゆうしゃ? おまえ、しってるのか? まおうのてしたには、まおうしてんのうってヤツがいるんだよ」

    ――戦士「じゃあ、してんのうもたおす!」

    ――「…あのな、ゆうしゃって、めがみさまにえらばれなきゃ、なれないんだぜ」

    ――戦士「ええ!? じゃあ、どうしよう?」

    ――「おれは、りっぱなせんしになりたいんだ。ちちうえみたいな!」

    ――戦士「せんしだったら、なれるのか!?」

    ――「うん、たいせつなココロエをもてばなれるんだって、ちちうえがいってた!」

    ――戦士「じゃあ、おれもせんしになりたい!」

    ――「…まねするなよ」

    ――戦士「べつに、いいだろ! あにうえといっしょがいい!」

    ――「…おまえが、おれよりいいせんしになったら、おれヤだなあ」

    ――戦士「あにうえより、いいせんしになんて、なれっこないよ! あにうえはスゴいもん!」

    ――「おまえ…」

    ――戦士「たいせつなココロエをまもって、いっしょにつよいせんしになろう!」

    ――戦士「そして、ちちうえみたく、まおうやしてんのうを、たおそうよ!」

    ――「…もう、いいだしたらきかないんだから」

    ――戦士「やくそくだよ、あにうえ!」

    ――「…」

    ――「うん。やくそくな」

    640 = 1 :


    戦士(兄上)

    戦士(俺は、ほんとは)

    戦士(勇者なんて大きなものになれずとも良かった)

    戦士(兄上と共に並び立つ、ひとりの戦士であれば、それだけで)

    戦士(――だから、最後まで)

    戦士(俺はただただこの剣に)

    戦士(俺の思いを託して)

    戦士(死んでいくよ)




    《――己の全てを、伝えるために剣を振れ》


    《自分の伝えたいことを…忘れるな》


    《もののふだったら、その剣に誓ったことを忘れるな》


    《相手の命を奪う剣だから…それで正しいと思う道を示せ》


    《人を切り伏せる時こそ…自分を伝えろ》





    戦士(それが、戦士であることの、大切な――)

    641 = 1 :



    炎獣(――なんだ、こいつの剣…)

    炎獣(ああ、そうかよ)

    炎獣(お前も、守りたかったんだな)

    炎獣(守るための、剣だったんだな)

    炎獣(俺も、あんたみたく)

    炎獣(守るための道を行けたらって思うよ)

    炎獣(………羨ましい、な)


    ――狩人「………皆の、仇」


    炎獣「…っ!」ズキッ…






    ズガァアァンッ!!!






    642 = 1 :


    氷姫(一瞬――)

    氷姫(炎獣の爪がほんの僅かにブレた)

    氷姫(敵に受けた銃弾の傷が、微かに炎獣の踏み込みを甘くした)





    戦士「」





    氷姫(敵は一撃で消し飛んだ)

    氷姫(――でも、折れた剣を握った腕だけが)

    氷姫(怨念のように魔王の方へ、吹き飛んできたのに)

    氷姫(咄嗟にあたしは反応出来なかった)

    643 = 1 :


    氷姫「――魔王っ!」

    魔王「!」

    魔王(腕だけになってまで――!! なんて執念)

    魔王(弾き落とさなければ)サッ

    ヒュンッ

    魔王「なっ!?」

    魔王(消えたっ!?)






    ドシュッ













    木竜「がァッ………!」


    644 = 1 :


    魔王「爺…!?」

    炎獣「爺さん!!」

    氷姫「ジィさんっ!!」


    木竜「ぐっ、ごっ………」



    魔王(何故っ…!)





    魔法使い「やはり…人間と言うのは興味深いですね」


    魔王「――!!」

    炎獣「誰だっ!」

    氷姫(この魔力…あの時の!)


    魔法使い「想いの力…それは時より奇跡のような結果をもたらすのですよ」

    魔法使い「折れた聖剣にも、あなたの想いのエネルギーは充分に蓄積された」

    魔法使い「僕は、それをちょっとだけお手伝いしましょう…"王国軍の鬼"、戦士殿」


    魔王「あ…」

    魔王「あなたは--」


    魔法使い「解放せよ」



    木竜「グッ…」

    木竜「………側…近………」

    木竜「………貴様………」


    魔法使い「お久し振りですね、木竜」

    魔法使い「そしてさようなら」







    645 = 1 :




    ギュオォオォオオォオッ!!


    木竜「グァアァアァアァアァアァアァア!!」

    魔王「じっ…」

    木竜「グァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアッ…!!」



    魔法使い「………弾けろ」






    パァンッ…!!





    魔王「――爺ぃぃっ!!」



    646 = 1 :


    氷姫「そん、な」

    炎獣「…爺…さん…?」



    魔法使い「おや」

    魔法使い「すんでのところで、間に合いませんでしたか。まったく、集中治癒とは恐ろしい術ですね」

    魔法使い「四天王を二人片付けられると思ったんですが――」




    雷帝「――貴様ァアァアッ!!」ダッ




    魔法使い「久しいですね、雷帝」

    魔法使い「ですが、病み上がりで無理をするものではありませんよ」


    ポンッ


    647 = 1 :


    雷帝「っ!?」グルンッ

    ドサッ

    氷姫「雷帝…!」

    氷姫(こいつ、転移を…)

    炎獣「」ドンッ!


    炎獣(――殺す)


    魔法使い「おっと」ヒュンッ


    炎獣「!? 消えた――」


    魔法使い「おお、恐い。武闘家さんを倒したひとと、まともにやり合いたくなんかないですよ」

    魔法使い「それに、本調子じゃ、無さそうですし、ね」ス…

    ズゥンッ!…

    炎獣「がっ!?」

    炎獣(なん、だ…身体に…何かが、のし掛かってる、みてぇだ…!!)

    氷姫「炎獣っ!」

    648 = 1 :


    魔法使い「…さて」

    氷姫(こいつ、何者なの…っ!?)

    氷姫(じ、尋常じゃない魔力…!!)

    氷姫「ま、魔王…。下がって!」

    魔王「………」


    魔法使い「…ふふ。絶体絶命、といった所ですか? 今までにないピンチですねぇ」

    魔法使い「…ですが、こんな所にしておきましょうか」

    魔法使い「これ以上、手を出すと………貴女は怒り狂って、世界を破滅させてしまうかもしれませんし、ね?」

    魔法使い「――魔王」



    魔王「………」



    魔法使い(ただならぬ圧力ですねえ。魔王の貫禄、ってやつですか)

    魔法使い(あなたの娘はこの通り、ご立派に成長なさってますよ………先代。しかし…)

    649 = 1 :


    魔法使い「そんなに高ぶっては…コントロール出来ないのではないですか?」

    魔法使い「…今、正に力を取り戻しているのでしょう」


    魔王「………」


    魔法使い「そんなに睨み付けないで下さい。これでも貴女の発する圧のせいで、息苦しくってしょうがないんですから」

    魔法使い「分かりましたよ。私はこれで引きましょう」

    魔法使い「まあ、木竜の撃破、という目標は達成したわけですし」

    魔法使い「底なしの魔力で回復をし続ける彼が居ては、人間に勝ち目はありませんから。ヒーラーから撃破、は定石ですしねぇ」

    雷帝「………側近…貴様ァ…!!」

    魔法使い「ふふ。それはもう…死んだ者の名ですよ」

    魔法使い「私はただの、魔法使いです」

    魔法使い「それでは…また後程、まみえましょう…」


    ヒュゥン…


    650 = 1 :


    氷姫(…さ、去った…)

    氷姫「………雷帝」

    氷姫「あんた…今、"側近"って…言った?」

    雷帝「………」

    雷帝「ああ」

    雷帝「間違いない…奴は、先代様の側近を務めていた魔族だ」

    雷帝「あいつは………女勇者に殺されたはず…」


    炎獣「………」フラ…

    炎獣「…なあ」

    炎獣「爺さん」

    炎獣「死んじまったのか?」


    魔王「………っ」ギュウ…!


    雷帝「――…」

    雷帝(私が…)

    雷帝(私が死ぬべきだった)

    氷姫「…う…」

    氷姫「うぅ…」ポロ…

    氷姫「ジーさん…」ポロポロ


    魔王「………………」








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