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    元スレ国王「さあ勇者よ!いざ、旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」

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    101 = 1 :



    ビュンッ! ビュンッ!


    雷帝(ワイン樽に、滑車、小舟…! 一体こんな物どうやって投げ飛ばして!?)

    炎獣「おらおらおらおら!!」

    バキバキバキィッ!

    木竜「全部叩き落とすとはのう…」

    炎獣「へへーん、これが若さだぜ! …にしても」

    炎獣「雪合戦にしちゃ、ずいふんと馬鹿デカイもん投げ飛ばしてくるじゃんかよ!?」

    炎獣「どこのどいつだぁっ!? 姿を現せ!!」




    「ぬふふふふふふ」




    武闘家「面白い小僧じゃっ!!」バッ

    炎獣「!?」

    炎獣(どこに潜んでた…!?)

    武闘家「ぬん!!」ビュンッ

    炎獣「ちっ!!」ドシィッ

    武闘家(受け止めおった!)

    炎獣(すげぇ力だ…!!)

    102 :

    なぜ飛んできただけなのに投げたとわかるのだ

    103 = 1 :


    氷姫「炎獣っ…!」


    炎獣「なんつーパンチだよ…! お前本当に人間か!?」ググ…

    武闘家「ぬふふふふふ、流石は魔族」グググ…

    炎獣「アレぶん投げてきたのもお前かよ…!?」

    武闘家「まさか叩き落とされるとは思わなんだぞ…!」

    炎獣「へーえ! こりゃ面白ぇ…!!」



    雷帝「炎獣を動けなくさせる力は大したものだが」

    雷帝「隙だらけだぞ、人間」

    雷帝「″居合い抜き″」ビュッ


    武闘家「ッ!!」バッ


    炎獣(! 逃げられた!!)

    雷帝(かわされた!?)


    武闘家「ふう、危ないとこじゃった」スタッ

    武闘家「一瞬遅けりゃ死んでたの。ぬふふ…」


    氷姫「…な、何!? あいつ! 」

    木竜「炎獣と組み合っていながら、雷帝の一撃を避けおった…」

    魔王「…」

    雷帝「人間が、私の剣を逃れただと…?」

    104 :

    >>102
    魔族(というか、炎獣)なら投げれるから、何かを使って飛ばしたという発想にならないとか(投げれる事が常識という思考)

    105 :

    これは誰一人欠けることなく魔王組に勝ってほしい

    106 :

    炎獣って触れたら火傷するくらい熱くなってるんだよね?
    武闘家さ触れてるけど洋服とか皮膚とか大丈夫なん?

    107 :

    すみません…寝落ちしました。
    もう少しだけ。

    108 = 1 :


    武闘家(敵は、ドラゴンも入れれば5体)

    武闘家(どいつもこいつもえげつない能力を持っとるのお)

    武闘家(ワシの必殺の一撃を受け止めたあの小僧…。それからワシを殺ろうとしおったあの若造の剣はとんでもない疾さじゃ)

    武闘家(後ろの女二人は…)


    氷姫「ちっ! 人間が調子のんじゃないわよっ!」

    氷姫「距離を取れば安心できるとでも!?」キュィイイ…!


    武闘家「…!!」バッ

    バリバリバリバリ!!


    武闘家(立っておった所があっという間に氷の塊の中…!)

    武闘家(あの女が氷の魔術師か…。となると隣で澄まして立っておるのが)

    武闘家(あの小娘が、まさか魔王か?)


    氷姫「死ね! 死ねっ!」

    バキィンッ! ガキンッ!


    武闘家「ぬうっ!」

    武闘家(全く馬鹿げた火力じゃ!こりゃ一旦退くしかないの)バッ


    109 = 1 :


    氷姫「ちょこまかと…!!」

    木竜「姿を消しおったか」

    雷帝「人間にしては、やるようだな」

    炎獣「…」

    魔王「………炎獣?」

    炎獣「なあ、雷帝」

    雷帝「何だ?」

    炎獣「魔王を、頼むぜ」

    雷帝「? 何を――」

    炎獣「」ゴゥッ!

    氷姫「ちょっとあんた! 何処へ行くつもり!?」

    炎獣「アイツは俺に任せとけ!」ダンッ!

    雷帝「おいっ、勝手な行動は…!」

    ヒュゥゥウウウ…

    木竜「行ってしもうたの」

    魔王「炎獣…」

    雷帝「アイツ! 何を考えてるんだ!」

    氷姫「…はーあ」

    氷姫「ホント、脳筋」

    110 = 1 :

    ここまでです。

    112 :

    おつ

    114 :

    >>106
    そりゃ港全体が凍ったりするくらいなのに寒い程度で凍りもしないで普通に寝てられたくらいだし?

    115 :


    武闘家「フーッ…ここまで来ればひとまず安心かのお」

    武闘家(それにしても…予想以上じゃ)

    武闘家(最初の一撃、あれは渾身の一打じゃった。あれで一匹削る算段じゃったが…受けられるとはのお)

    武闘家(あの化け物集団相手に一人で突っ込んでは流石に身が持たんぞい)

    武闘家(一匹ずつ誘きだして撃破…が理想じゃがまあそう上手く行くか…)

    カッ

    武闘家(むっ、なんじゃ今の光は)





    炎獣「」スゥー

    炎獣「 ど こ に 隠 れ た あ あ あ ! ! 」

    ゴオオオオオオオッ!!

    116 = 1 :





    「………」

    武闘家「なんちゅー馬鹿デカイ声じゃ」スッ



    炎獣「おっ!」

    武闘家「普通の人間だったら鼓膜がヤられとったの。そこまで耳は遠くなっとらんぞい」

    炎獣「素直に出てきてくれて嬉しいぜ! 町を壊すと怒られるからな!」

    武闘家「それはこっちの台詞じゃ。わざわざ一人でのこのこ現れたのか?」

    炎獣「おう! 俺は斬り込み隊長ってやつだからな!」

    武闘家(好都合じゃな。一番破壊力のある者を倒せる)

    武闘家「そりゃ災難じゃったのお…」ォォオ…

    武闘家「――己の立場を呪うがよい」ゴゴゴゴ

    炎獣「…まさか。呪うわけねーじゃん?」

    炎獣「俺は嬉しくてしょーがねーぜ。お前みたいなのと、会えてよ」ゴゴゴゴ

    武闘家「くふ…! なんじゃ、おぬし」

    武闘家「同類かよ!!」バッ!

    117 :

    > 武闘家「同類かよ!!」バッ!

    前の文まで年寄り的な話し方なのに「よ」のせいで違和感が強すぎる

    118 :

    某李書文が似た口調だから別に違和感ないわ

    119 :

    なんか老将でそんな口調になるやついた

    120 :

    「~ぞよ」みたいな系統の「よ」じゃないのかよ?

    121 = 1 :


    武闘家「オラオラオラオラ!!」ガガガガガッ!!

    炎獣「――ッ」

    炎獣(圧倒的な闘気。圧力。そしてそれを纏った拳の壁)

    炎獣(コイツ、本物だ!!)

    炎獣「りゃりゃりゃりゃあっ!!」ビュボボボボボッ!!

    パパパァンッ

    武闘家(掌低で叩き落とされた!?)

    武闘家(ならばッ)グルン

    炎獣(! やべえのが来る!!)バッ


    武闘家「喝ーッ!!」ビュバッ!!

    バリィインッ!!!


    炎獣(回し蹴り! 風圧で建物がぶっ壊れたぞ!?)

    武闘家(ちっ、跳び上がって避けたか!)

    炎獣「負けてらんねえな!」

    炎獣「うおおおお!! 炎パァアアアアンチィイイイ!!」カッ

    ゴゴォオオンッ!!

    122 = 1 :


    武闘家「…とんでもないのお」

    武闘家「石畳の道がまるっとえぐれおったぞ」

    炎獣「当たんねーかあ。仕留めたと思ったんだけどな」

    武闘家「ぬふ、当たってはおらんが、お前の纏った熱気のせいで、背中が爛れたぞい」

    炎獣「あ、ワリィ! そりゃ俺の魔力のせいだな」

    武闘家「…何?」

    炎獣「ちー、本気出すとついつい魔力纏った攻撃になっちまうや! お前みたいのが相手なら、魔力は使わないでおこうと思ったんだけどな」

    武闘家「…」

    炎獣「肉弾戦に魔力はズッコイよな! 悪かった! 今のなし!」

    炎獣「お詫びに、そうだな…一発殴らせてやんよ!」

    武闘家「………」

    123 = 1 :


    炎獣「さあ来い! ほれ!」

    武闘家「………この」

    炎獣「?」


    武闘家「うつけ者がああああっ!!」ガシャアアアアンッ!


    炎獣「どわっ!?」

    武闘家「――命のやり取りに、そのような無粋なものを持ち込むでない!!!」

    武闘家「勝った方が生き、負けた方が死ぬ!!! その神聖な闘いにおいて!!!」

    武闘家「加減をするとは何事かァッ!!!」

    武闘家「勝負の在り方を、お前ほどの使い手が歪めてどうするのだ!!!」

    武闘家「闘いを、汚すな!!!!」


    炎獣「…っ!」ビリビリビリ

    124 = 1 :


    武闘家「…ふうー…」

    武闘家「つい説教臭くなったの。歳はとりたくないもんじゃ」

    炎獣「…」

    武闘家「ん?」

    炎獣「…」ムス

    武闘家「なんじゃ、むくれておるのか?」

    炎獣(…なんで怒られなきゃならねーんだよ。俺、せっかくフェアにやろうと思ったのによ)

    武闘家「ふーむ。どうやら精神面にムラがあるようだの」

    炎獣「う、うっせーぞ!」

    武闘家「その隙を突かれたらどうするんじゃ。全くなっとらんな」

    炎獣「なんで敵にそんな事言われなきゃいけねーんだ!?」

    炎獣「つーか、お前だってその隙を突いてこないじゃねーかよ! それ、手加減じゃねーの!?」

    武闘家「…うむん?」

    武闘家「言われてみればそうじゃの」

    炎獣「人を怒鳴りつけといてそれはないだろ!?」

    武闘家「ぬふふ、まあそう言うな」

    武闘家(はて、ワシはなぜ戦いの最中にこんな話を…)

    125 = 1 :


    炎獣「ちっ! 分かったよ…」

    炎獣「じゃあ、全力で、行くからな。後悔すんじゃねーぞ、オッサン」

    武闘家「それこそ、望むところ」

    炎獣「どーなっても知らないぞぉ…」

    炎獣「…」スゥー



    炎獣「炎キーッ」バシュッ




    武闘家「!!」

    武闘家(なんだ!? 急に物凄い速さで距離が詰められ――)



    炎獣「ク!!!」ドッ



    ズドオオオオオッン!!!



    126 = 1 :


    ゴッ バキャッ ドガッ 

    ドゴーン…

    炎獣「…ふしゅーっ!」

    炎獣「ありゃりゃ。オッサン何処まで吹っ飛んだ?」

    氷姫「やり過ぎだっつーの、アンタも」ス…

    炎獣「氷姫! なんだ、見てたのか?」

    氷姫「まあ、ね。相手が一人じゃなかったらヤバいかな、と思って」

    氷姫「アンタそういうこともちょっとは考えなさいよ。あれが二人も三人も居たらヤバかったでしょーが」

    炎獣「あ、言われてみりゃそーだな」

    氷姫「ったく、脳ミソまでチビなわけ?」

    炎獣「うぐっ…ひどい」

    炎獣「でも、ありがとな、氷姫」

    氷姫「は?」

    炎獣「え、俺の心配して来てくれたって事だろー?」

    氷姫「なっ、ばっ、誰がアンタの心配なんて!!」

    氷姫「調子乗んな! このチビ! クズ! カス!!」

    炎獣「ええっ!?」


    127 :

    なんかこの二人?のやりとりにニヤニヤする

    128 = 1 :


    炎獣「ま、さ。あんな強ぇーのがそうポンポン居たら俺としちゃ嬉しいけど…そうそう会えやしないよ」

    氷姫「…なんでアンタ、ちょっと寂しそうなのよ」

    炎獣「え? え? そうか?」ワタワタ

    氷姫「分かり易いのよ、アンタ」

    炎獣「…なんだろな。あのオッサンだったら、分かりあえるかもって、ちょっと期待してた」

    氷姫「分かりあえる?」

    炎獣「…いや、ちょっと違うな。何て言うんだろ。もしかしたら、俺の全力も受け止めてくれたかも、てさ」

    氷姫「…」ハア

    氷姫(ったく、闘いの事しか頭にない奴はこれだから…)

    氷姫「それだけ、あんたが強いってことでしょ。四天王で一番の武闘派なんだから、それだけ魔王もアンタのこと頼りに…」ズキ

    氷姫「頼りに…してんのよ」ギュ

    炎獣「そ、そーかな。そーか。じゃあ、良いんだよな、これで!」

    氷姫「………うん、いいのよ。これで」

    129 = 1 :


    炎獣「へへ! なんか今までで一番強い人間が出てきたけど、俺の敵じゃなかったぜ!」

    氷姫「あっそ」

    炎獣「うん、言葉にしたら元気出てきた! ありがとな、氷姫!」

    氷姫「うっさい! 死ね!」パキィイン

    炎獣「うおあっ!? 何で!?」

    氷姫「…ふん」


    ズン…

    炎獣「ん?」

    氷姫「何よ?」

    炎獣「今なんか音が…」

    ズン… ズン…

    氷姫「…確かに。これは、何の…」

    炎獣「地鳴りみたいな…これ、巨人族の足音に似てないか?」

    氷姫「馬鹿言わないでよ、こんなトコに巨人族がいるわけ――」

    ズン… ズン… ズン…


    氷姫「…っ、あれ、見て!」

    炎獣「!? なんだ、ありゃ!!」

    氷姫「家が…動いてる!?」

    炎獣「ま、マジかよ…一体ありゃなんの…」

    氷姫「あ、あれ! 家の下!! なんかいるっ!」

    炎獣「!? まさか――」

    130 = 1 :



    武闘家「ぬぅうううう…!!」

    ズシン! ズシン!


    氷姫「何、あれ、どうなってんのよ…。あの人間、あのデカイ家引っこ抜いて担いでるってわけ!?」

    炎獣「…は、はは。本当に人間か?」

    炎獣「って、ヤバい!! 氷姫、下がれっ!」


    武闘家「ぬおおおおおおおおお!!」ブオォンッ


    氷姫「わっ、家投げてきた!」

    炎獣「やっぱり!!」

    131 = 1 :


    炎獣「へ、ったく」

    炎獣「何回全力出させりゃ成仏すんだよ!」

    炎獣「うおおおおおッ!!」ボウッ

    氷姫「ちょっと、どうするつもり!?」

    炎獣「あの家、ぶち割るっ!!」

    氷姫「はあ!?」


    炎獣「炎ぉ」


    炎獣「チョーップ!!!!!!」


    ドガシャアアアッ!!


    132 = 1 :


    氷姫「ほ、ほんとにやった…」

    炎獣「っしゃオラァ!! どんなもん――!?」

    炎獣(いない! あのオッサン消えて…)

    ガタ…

    氷姫(っ! 真っ二つになった家の中に何かいる…!!)

    氷姫「炎じゅ…」



    武闘家「捉えたぞ…」ヒュッ



    炎獣「馬鹿なっ…!!」

    炎獣(投げ飛ばした家に追いついて、中に潜んだってのか!? 滅茶苦茶――)



    武闘家「喰らえッ!!」ギュンッ

    ドシュッ――!


    炎獣「あがッ…!!」


    133 = 1 :


    氷姫「炎獣っ!!」

    炎獣(腹を、貫かれたっ…! なんつー突きだっ!)

    炎獣(けどっ…!!)ガシッ

    武闘家「!?」

    炎獣「この腕、貰うぜ…!」ゴォ


    炎獣「発火ぁっ!!」ドシュゥウウッ


    武闘家「ぬわあぁあっ!?」

    134 = 1 :






    武闘家「…ぜぇ…はぁ…」

    武闘家(右腕を、失った…焼き切られたか)

    炎獣「がふっ…ごほっ」

    炎獣(へっ…腹に風穴開いちまったよ…)

    氷姫「え、炎獣っ!! アンタ…!」タタッ

    炎獣「――来るな」

    氷姫「えっ?」

    炎獣「来ちゃあダメだ、氷姫。手ぇ出さないでくれ」

    氷姫「は!? そんな事言ってる場合じゃないでしょーが! そんな怪我負わされて…」

    炎獣「へへっ、そうだよな。でも、だからこそなんだよ」

    炎獣「今…瀬戸際なんだ。下手打てば死ぬかもしれない所にいる」

    炎獣「今、俺は際の際に立たされてる。こんな強い奴…初めて会った」

    炎獣「だからこそ、見えそうな景色がある気がする」

    炎獣「こんな気持ちは、初めてなんだ。こんなに怖くて………こんなに楽しいなんて」

    氷姫「っ!? 何を…」

    武闘家「ぬふ」

    武闘家「ぬふふふふふふ」

    135 = 1 :


    武闘家「ようやく理解したか、小僧。それこそが命のやり取り」

    武闘家「死の深淵を覗き込み、尚且つ生を掴み取らんとすること…そのために己の全てを賭ける」

    武闘家「ひとつの挙動に、ひとつの反応に、ひとつの瞬きにさえ――己の全存在を乗せる」

    武闘家「それが、まことの、″闘い″じゃ」

    炎獣「…へっ」

    炎獣「しゃべってたって、わっかんねーよ」

    武闘家「ぬふ。そうじゃな」

    武闘家「これ以上の言葉は不粋か」

    炎獣「だからさ――」

    武闘家「応」



    炎獣「行くぜッ!!」

    武闘家「来いッ!!」



    ドッ


    136 = 1 :

    本日はここまでです。

    また来週の土曜日に…

    137 :

    家投げるとか初めて見たわww

    139 :

    老害つえー

    140 :

    もうこいつが勇者でいいんじゃね?

    141 :



    ズドガガガガガガッ!!


    氷姫「…っ!」

    氷姫(何、これ………目で、追いきれない! それに)

    氷姫(どんどん攻防が加速している――!)

    氷姫(なんで…炎獣も相手の人間も、死ぬかもしれないような傷を負ってるのに、なんで…!!)

    氷姫(動きが研ぎ澄まされて………まるで、舞いを踊ってるかのような)ゾワッ

    氷姫「………綺、麗」



    炎獣(身体が、勝手に動いていく。考えるまでもなく反射で)

    炎獣(繰り出し、捌き、跳び、弾く)

    炎獣(なんだろう。この感覚)

    炎獣(今まさにこの時、殺し合いをしてるってのに)

    炎獣(なんだか遠くの出来事のような、ぼんやりとした時の中にいる)

    炎獣(目の前に敵の足が迫る。身体を捻ると、それが耳を少し掠めて通りすぎる)

    炎獣(風圧で耳に痛みが走り、頬は死の予感で逆毛立つ。でもそれを感じた時には俺はもう攻撃を繰り出していて)

    炎獣(ああ、意識が海の底に沈んでしまったような)

    炎獣(なんだろう、これは)

    炎獣(――静かだ)


    142 = 1 :


    武闘家(思考は必要ない)

    武闘家(ただただ、どう動くかは身体が知っている)

    武闘家(ふふ。ぬふふふふ)

    武闘家(あはははははは)

    武闘家(そう、身体を極限の状態で動かす喜びに、身を委ねるだけ)

    武闘家(………ここまでの高みに辿り着いたのは初めてだ)

    武闘家(ここには、こんな世界が広がっていたのか)

    武闘家(足りないものは、何もない)

    武闘家(生きていて良かった。もうこれ以上はない)

    武闘家(ずっと…)

    武闘家(ワシはこれが欲しかったんだ)



    ドゴガガガガガガガガガッ!!!



    炎獣「」ヒュ

    武闘家「」…ヒュ



    氷姫(!! 僅かに人間の反応が遅れた――)



    ドガッ

    武闘家「!!?」

    143 = 1 :



    ズドドドドドォンッ!!


    氷姫「っ、直撃した!!」

    氷姫(港の方まで、吹っ飛ばしたっ!)

    炎獣「…ハッ…ハッ…」

    炎獣「…ハッ…?」ポー

    氷姫「やったわね!! 炎獣!!」

    炎獣「…ハッ…やった…?」

    炎獣「あれ、アイツは…?」

    氷姫「何言ってんのよ、今アンタが殴り飛ばしたでしょうが!」

    氷姫「町の家々をぶち抜きながら、海の方まで飛んでったわよ」

    炎獣「そ…うか」

    氷姫「ったく無茶して! そんな怪我しながら、信じられないわ! 早く木竜のジイさんの所に行くわよ!」

    氷姫「何だったワケ、あの人間! 人間の動きしてなかったわよ! 気が気じゃなかったんだから…本当にもう!」

    炎獣「………」

    144 = 1 :


    氷姫「な…何よ? もうちょっと喜びなさいよ」

    氷姫「あ、何? 町壊したこと気にしてるワケ? 大丈夫よ。魔王もああ言ってたし」

    氷姫「雷帝の頭でっかちがなんか言ってきたら、今度はあたしが言い返してやるから!」

    氷姫「ほら、早く――」

    炎獣「ふ、ふふっ」

    氷姫「?」

    炎獣「ねえ、氷姫。多分さ。多分だけど」

    炎獣「あいつは、まだ生きてるよ」

    氷姫「え…?」

    炎獣「分かるんだ、あいつの事なら。あれぐらいで死ぬはずがない」

    氷姫「な、何言ってんのよ、アンタ。だって、アンタの全力の一撃が、あいつの胴に直撃して…」

    炎獣「俺は多分、世界中の誰よりもあいつの事を理解してる」

    炎獣「あいつも…俺の事を分かってくれた」

    氷姫「ちょっと…大丈夫、あんた!?」

    炎獣「…こんな事、初めてだったんだ」

    炎獣「俺を分かってくれた奴」

    145 = 1 :


    炎獣「ほら」ニヤァ

    氷姫「は? 何処見て…空?」

    氷姫「っ!? 何、あれ…っ」

    氷姫「船が…――ガレオン船が、宙に浮いてる」

    炎獣「まだ、闘えるんだ」

    氷姫「も、もしかして、あいつっ! あそこに居るの!? 自分で投げ飛ばして、自分で乗ってここまで飛んでくるつもり…!?」

    氷姫(炎獣の本気をまともに受けて…しかも片腕のはずよ…!?)

    氷姫(あまりにも…馬鹿げてる…!!)

    炎獣「こっちから行くさ」


    炎獣「あの世界にもう一度」


    氷姫「炎、獣…!?」

    氷姫「ちょっと、待っ



    炎獣「」ダンッ!!


    146 = 1 :


    ヒュオオオオ…!!

    武闘家(さあ、もう一度)

    武闘家(もう一度だけ、ワシをあの世界に連れて行ってくれ)

    武闘家(…もはや、身体は長くもたぬ。声も出ないし、視界も半分とない。骨は砕け、内臓も潰れとる)

    武闘家(これが最後。だがそれでいい)

    武闘家(さあ…友よ)



    炎獣「よぉ、オッサン」スタッ

    炎獣「ほんと、馬鹿デカイもん投げ飛ばすの好きだよな、あんた」

    武闘家「…」ニィ

    炎獣「さあ、やろうぜ」ニヤァ


    武闘家(この宙に投げ飛ばした大型船が、地上に墜落するまでの刹那)


    武闘家(最後にここで、あの愛しい時間をもう一度)


    147 = 1 :


    雷帝「あれは…!?」

    木竜「なんじゃあ!? 巨大船が、飛んできおった――」

    魔王「…! 炎獣!?」

    雷帝「えっ!?」

    木竜「ぬっ! 飛んでいる船の上で闘っておるのか!?」

    雷帝「何だと!? 馬鹿なっ!」

    魔王「…っ」

    魔王(炎、獣!! 駄目…!!)

    魔王(その人間の目…危険すぎるっ!)


    148 = 1 :



    炎獣「」ビュッ

    武闘家「」ボッ

    炎獣「」ギュンッ

    武闘家「」ヒュオ

    炎獣(きた)

    武闘家(きたきた)

    炎獣(すべてが見えて、何も見てないような)

    武闘家(すべてを動かし、何も動いていないような)

    炎獣(ただ胸のうちにあるのは)

    武闘家(喜びだけ)




    氷姫「…炎獣のあんな顔」

    氷姫「初めて見る、な」

    氷姫「………でも」

    氷姫(ごめん。あたしは、どうしても…アンタに死んで欲しくない)


    149 = 1 :


    パッ

    武闘家(うぬん? なんじゃ。急に意識が、独立してしもたぞ)

    武闘家(闘っておる。あれが、ワシ?)

    武闘家(うむ、いいぞ! そうじゃ、そこ! ああ、違う違う!)

    武闘家(…って。どうなっとるんじゃこの状況。闘っとるワシらを外から眺めとるぞ)

    武闘家(そういえば…何処かで聞いたことがあるな。頭が急速に働き過ぎると、周囲を置き去りにして妙な世界が見えるんだとか)

    武闘家(これが、そうなのか? それとも、もう半分くらい死んどって、魂が身体から抜け出しているのかもしれんの)

    武闘家(あれだけボロボロじゃったら、まあそれも頷けるわい。我ながら、死に損ないじゃのお)

    武闘家(自分を外から見るなど、なんだか変じゃな…)


    武闘家「」ゴッ

    炎獣「」グンッ

    武闘家「」ブォ

    炎獣「」バッ


    武闘家(………)

    武闘家(あんな、楽しそうに笑えるんじゃったか、ワシは)

    武闘家(子供みたいじゃな)

    150 = 1 :


    武闘家(魔族の小僧も、まあ楽しそうだこと)

    武闘家(殺し合いだぞ、分かっとるのか。ったく)

    武闘家(じゃが、なんじゃ。あやつ…)

    武闘家(…ああ、そうか)

    武闘家(あやつは、ワシの若い頃にそっくりなんじゃな)

    武闘家(だから叱り飛ばしてやりたくなったり、妙な愛着を持ってしまうんじゃな)

    武闘家(生涯孤独じゃったワシが、な…可笑しな事じゃ)


    武闘家(………ああ、船が墜落する)

    武闘家(悲しいかな、終わりの時じゃ。気づいてしもうた)

    武闘家(名も知らぬ魔族の小僧よ。おぬしが次に繰り出す攻撃を)

    武闘家(ワシは若かりし頃…受けたことがあった)




    武闘家(すまぬな。ワシの、勝ちじゃ)




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