元スレ国王「さあ勇者よ!いざ、旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」
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251 = 1 :
魔王「………」
盗賊「お、避けたのか。やっぱりラスボスは、簡単にはいかねーってか」
魔王「あなた…今…」
魔王(………魔弓だ)
魔王(間違いない。彼は今、いとも簡単に魔弓を真似てみせた)
盗賊「何か、文句言いたそうな眼だねぇ?」
魔王「………あなたこそ、つらそうよ」
盗賊「…鋭いねえ、ホント。顔色を変えない演技に関しちゃ、自信があったんだけどな」
魔王「力の負荷に、肉体も精神も押し潰されそうなのね。力をもて余してる」
魔王「あなたには、与えられるべくして与えられた力ではないわ」
盗賊「ま、そうなんだろうな。俺の身の丈にゃ合わねーよ、どう考えてもな」
盗賊「いいトシこいて背中から翼なんざ生やしてよ。勘弁してくれってんだ、こいつをデザインした野郎はどんな趣味してんだろーな?」
魔王「思い当たらないわけではないわ」
魔王「………女神教会、ね?」
盗賊「…」
252 = 1 :
盗賊「確かに、この力は教会の荷から手に入れたもんだ。大層な護送してやがるから、どんなお宝かと思えば、光の力と来たもんだ」
盗賊「…ちょーっとばかり王国を困らせてやろうって手ぇ出したはずなのにさ、オカシイと思ったんだよなぁ」
魔王「やはり…」
魔王(女神教会。…確か、女神を唯一神とする人間の教団)
魔王(人のほとんどは宗教として女神を信じているから、膨大な権力を持っているはず)
盗賊「あの時の王国の慌てようは想像以上だったが…それ以上に反王国勢力から俺は戦乱の主役に担ぎあげられて」
盗賊「力を使えば…奇跡を起こす英雄として祭り上げられた」
魔王(…勇者に与えられるがごとき女神の力を使えば、確かに人にとって英雄となりうるだろう。でも…)
魔王「奇跡は、そう易々と起こしていいものじゃないわ」
盗賊「…へえ? 奇跡の塊みたいな力をもった魔族四天王の、ボスがそれを言うなんてねぇ?」
魔王「あなたの力は、存在自体に大きな矛盾を孕んでる」
魔王「この世に本来あるべきじゃない、捻れを…違和感を感じる。力の所有者であるあなたは、何も感じないの?」
盗賊「ああ、おかしいと思うね。奇跡の力だってんなら、使うたんびに俺の体を蝕まないでくれ、てさ」
盗賊「…何度も思ったよ」ツー
魔王(…血が)
盗賊「いい迷惑さ。起こしたくて起こしたわけじゃない奇跡も沢山ある。英雄だとか言って、多くの人間を戦乱に導いて、死なせてきた」
盗賊「力を封じて、役目も捨てて、何度戦いをほっぽり出しちまおうと思ったことか。…けどよ、今さら、そうもいかねぇんだ」
盗賊「こーんなダメな俺を…時には引っ張り回して、時にはケツを叩いて、側にいてくれたあいつらが居るからな」
盗賊「捻れた奇跡だって、起こさなきゃならねぇのさ」
253 = 1 :
魔王「あなたの歯車は、もう、止まらないのね」
盗賊「そゆこと。でもさ、俺は運命の為すがままに流されていたんじゃねーよ」
盗賊「俺は自由でありたかった。最初からな。そのために剣を取った」
盗賊「あんたと相対している今も、それはひとつも変わらないんだ」
魔王「………そう」
魔王(何かが起こっているんだ…何だろう、嫌な感じがする)
魔王(駄目だ。立ち止まって考える暇はないんだ。私は…)
魔王「私は、勇者を倒さなければならない。ここで倒されるわけにはいかないの」
盗賊「…そーかい」
盗賊(迷いのない眼だ。射抜くように、真っ直ぐな)
盗賊「こんな圧倒的に不利な状況で、そうきっぱり断言されちゃあたまんないぜ」
盗賊「肝っ玉の座ったねえちゃんだよ。魔王じゃなかったら、口説いてたかもなあ。あんた、魔族ってわりに美人だしな」
魔王「変わった人ね、あなた。でも、分かってるんでしょう?」
盗賊「ああ。…俺たちは殺し合わなきゃならない。名残惜しいけど、そろそろ始めるとすっか」
魔王「いつでも、どうぞ」
盗賊「言っとくけど俺マージで強いぜ、今」
魔王「…そう。楽しみね」
盗賊「女を泣かすのは趣味じゃねぇが」
――「ねぇ…その真の力を解放したとき、貴方はどうなるの?」
――「生きて、帰ってきてくれる…?」
盗賊「…俺が負けても、泣く女がいるんでね」
盗賊「恨むなよ」
魔王「………私が」
魔王「解放してあげるわ」
254 = 1 :
軍師「…」
狩人「…盗賊と魔王、光に包まれて消えた…」
狩人「使ったんだね…。あの力」
軍師「…そのようですね」
狩人「これで良かったの? 軍師さん」
軍師「………」
軍師「やめろと言っても、あの人はそうしたでしょう」
軍師「…それに、実際それに頼らざるを得ない状況に違いはありません。…私の能力の限界です」ギュ…
狩人「軍師さん…」
軍師「狩人。魔王が消えたことによる敵の動揺を誘います。ハーピィの術式の援護をしてください」
軍師「私たちに、出来ることをするのです」
狩人「そう、だね。分かった」
狩人「行ってくるよ」バッ
軍師「…」
軍師「どうか…生きて帰ってきて…」
255 = 1 :
雷帝「…」
雷帝(魔王様と、人間が光に包まれ消えた…)
雷帝(人間の自爆? いや、仮にそうだとしても、ここまで塵も残さず魔王様の肉体を消し去るのは不可能だ。あの人間が見せていた能力…転移魔法の一種、と考えるのが妥当だろうが)
雷帝(どこかに転移をして、魔王様を倒すつもりか? しかし、何処にも魔王様の気を感じられぬのは何故だ?)
雷帝(まるで、この世界から消え去ってしまったような…こんな事がありうるのか…!?)
雷帝(くそ…っ! どうなっている!)
吸血鬼「………ざまぁ…ありません、わね…」
雷帝「…まだ息があったか」
吸血鬼「…ふ、ふ…貴方の…そんな、狼狽たえた、 顔が見れる…なんて…長生きは、するものです、わ…」
雷帝「…」
256 = 1 :
雷帝「お前は、あの人間の能力を知っているのか」
吸血鬼「…知って、いたとして…教えると思い、まして…?」
雷帝「吐かせるまでだ」グイッ
吸血鬼「…やって、みな、さいな…」ニィ
雷帝「! 貴様…その瞳の色…」
雷帝(なんだ!? 瞳が青く光っている!?)
吸血鬼「ああ…これ、ですの?」
吸血鬼「魔力を、送ってるの、ですのよ…ハーピィ、に」
吸血鬼「私の、記憶を…」
雷帝「何…?」
257 = 1 :
雷帝「お前は、あの人間の能力を知っているのか」
吸血鬼「…知って、いたとして…教えると思い、まして…?」
雷帝「吐かせるまでだ」グイッ
吸血鬼「…やって、みな、さいな…」ニィ
雷帝「! 貴様…その瞳の色…」
雷帝(なんだ!? 瞳が青く光っている!?)
吸血鬼「ああ…これ、ですの?」
吸血鬼「魔力を、送ってるの、ですのよ…ハーピィ、に」
吸血鬼「私の、記憶を…」
雷帝「何…?」
258 = 1 :
ハーピィ「吸血鬼さんの魔力を拾えた!」
ハーピィ「き、記憶を拡散するよ! 召喚術用意っ!」
「了解!」
ハーピィ「! こ、これ…」
狩人「ハーピィ! 行けるなら、やって! こっち押さえるのも限界だっ!」
ハーピィ「よ、よし! 行くよ!」
「召喚!! 幻惑の海獣!!」
剣士「隊列を立て直せッ! 受けに回ったらやられるぞォ!!」
炎獣「いい加減うざったいぜ! オラァッ!!」
ドカァンッ!!
剣士「ちィ、バケモンが…ッ!」
炎獣「これで終わりだっ!」
炎獣「炎ぉ――」ゴゴゴゴ
フワッ
炎獣(!? な、なんだこれ!? 急に妙な景色が目の前に…!)
259 = 1 :
炎獣(敵の幻術か!?)
炎獣(あれは雷帝…それに、魔王?)
盗賊『魔王、借りてくぜ』
魔王『っ!?』
雷帝『魔王様ッ!!』
盗賊『我が身に宿る力よ――』
盗賊『その真の力を示せ』
ゴァッ――!!
雷帝『な、なんだ…――この力!! 魔王様ぁッ!』
炎獣「――!!」
炎獣「魔王が………消された?」
260 = 1 :
氷姫(またハーピィの召喚術ってわけ? …にしても、これ)
氷姫(只の幻術じゃ、ない! 誰かの記憶を幻として映し出しているんだわ。だとすれば、これは実際に起こった事…!?)
氷姫(まさか、本当に魔王が…!)
木竜(姫様が………! 馬鹿な…)
木竜(しかし、姫様の気が、感じ取れぬ! 本当に、消えたとでも言うのか…!?)
木竜「姫様………!!」バサッ
エルフ「て、敵が引き上げていく…」
261 = 1 :
魔女「乗り切った…か…!」
剣士「作戦は…成功ってかァ…?」
エルフ「精鋭部隊の突撃は、上手くいったってこと!?」
狩人「じゃあ、魔王を倒した…!?」
魔女「まだ、そこまで考えるのは早計じゃ」
ハーピィ「………」
剣士「…どうした、ハーピィ」
ハーピィ「きゅ、吸血鬼さんから受け取った記憶のなかに…倒れている騎士さんと斧使いさんがいたんだ」
エルフ「えっ!?」
ハーピィ「ま、魔王の他に、別の四天王の姿もあった…。と、盗賊様たちの突撃は、成功したのかもしれないけど」
ハーピィ「きゅ、吸血鬼さんたちは、もしかしたら…!」
剣士「んだとォ…? あんな、殺しても死なねぇような連中が…!!」
狩人「っ!」バッ
魔女「どこへ行くんじゃ、狩人!」
狩人「精鋭部隊、助けに行く…!」パカラッ
262 = 1 :
魔女「一人で行くつもりかっ!?」
狩人「まだ間に合うかもしれない!」
エルフ「私も行くよっ!」パカラッ
剣士「くっそッ、俺も…ぐっ!」
魔女「落ち着け! その傷ではお前が行ったところで足手まといじゃ」
剣士「くっそがッ…!」
ハーピィ「う…うぅ…」
狩人「皆は陣形を整えて軍師さんの指示、待っていて!!」
狩人(…そこには、四天王が全員揃ってるのかもしれない…)
狩人(怖い…怖くてどうしようもない…けど)
狩人(僕に出来ることがあるなら………!)
パカラッ パカラッ…
魔女「くっ…援護しようにも、妾たちの魔力も限界が来ておる…」
魔力(できることは、最早待つことだけか…しかし…)
魔女(魔法使いの奴め。いつの間にか姿を消しおった)
魔女(何を企んでおるのじゃ、お前は)
263 = 1 :
氷姫「雷帝っ!」スタッ
雷帝「氷姫…何故お前がここに」
氷姫「んな事どうだっていいのよ! どういうことよ!? 魔王は何処っ!?」
雷帝「落ち着け…!」
氷姫「落ち着けですって!? これが落ち着いていられるもんですかっ!」
氷姫「答えなさいよ!! 魔王は何処!?」
雷帝「…っ」
氷姫「何とか言えっ!」
雷帝「…私にも分からない」
氷姫「!」
氷姫「分からない、ですって!? あんた、それでも――」
炎獣「待てって、氷姫!」ザ…
木竜「こりゃ、どういうことじゃ…」バサッ
雷帝(炎獣、翁まで…)
264 = 1 :
炎獣「雷帝に噛みついたってどうにもなんないだろ! 一旦落ち着いて…」
氷姫「離しなさいよ!」バッ
炎獣「なっ…」
氷姫「あんたはなんとも思わないわけ!? あんなに言ってたじゃない! ″魔王を″守るって!!」
炎獣「…俺だって焦ってるさ…!」
氷姫「じゃあ、何でこの状況で平気でいられるのよっ!」
炎獣「平気じゃねえよ! 俺だってなあ…!」
木竜「よさんかッ!!」
氷姫「っ!」
炎獣「…!」
木竜「…こうしてこちらの混乱を招くこと事態が、敵の目的じゃ」
木竜「だからわざわざ、ああやって儂らに幻影を見せ、前線から退かせた…そうじゃろう、雷帝」
雷帝「翁…すみません」
雷帝「その通りです。これは敵の策の一種。…恐らく敵はこれを機に我々を包囲しにかかります」
氷姫「あ…」
炎獣「…くっ」
木竜「ふむ…かといって、姫様の身に何が起こっているか分からぬ以上、下手に身動きも取れぬ」
雷帝「…はい」
265 = 1 :
吸血鬼「く、ふふ。四天王、が、揃いも揃、って、不様、ですわ」
雷帝「こざかしいマネを…。どうやら、その浅知恵を働かせている者から排除する必要があるようだな」ギリ…
吸血鬼「そん、な事を、する前に、貴方たちの、負け、ですわ」
吸血鬼「魔王、は倒され、る」
雷帝「………」
雷帝「あの男の能力は…女神の力の片鱗だな?」
吸血鬼「!?」
雷帝「転移魔法の時に発生する白い翼…そして聖なる波動。光の勢力の使う術そのものだ」
炎獣「お、おい、どういうことだよ。女神の力…て、それ…」
炎獣「勇者に与えられる力のことだろ!?」
雷帝「そうだ」
氷姫「なんなのよ…。つまり、あいつが勇者だったってこと?」
雷帝「いや…少し違うな。それにしては聖なる波動が不十分だ」
雷帝「あの者はその断片の力を操っていたに過ぎない。最も、人間どもの目にはそんなものですら超常の力に写っただろうがな」
266 = 1 :
雷帝「ほんの一部とは言え、伝説と言われる女神の力だ。貴様ら魔族のはぐれ者や、外界を遮断し続けていたような特殊な民族ですら、その奇跡の前に夢を見たのだろう」
雷帝「そうして出来た特殊な集団は、王国軍とはまた質の異なる勢力を形成していた…それが、貴様らの軍、といったところか」
吸血鬼(…っ。この短時間で、そこまで見抜くなんて…)
雷帝「そして、その奇跡の力こそが、貴様らの奥の手だった。魔王様ですら、その力を以てすれば打倒できるはず…と」
吸血鬼「………」
雷帝「--…切り札にしては、何とも陳腐だな」
吸血鬼「なん、ですって…!?」
雷帝「女神の力の、断片程度で…魔王様を討てると思ったのか?」
雷帝「あのお方は、全ての魔族の頂点に立つお方」
雷帝「我々四天王を付き従えるだけの偉大なる力を持ったお方」
雷帝「――邪神の加護を一身に受けた、我らの救世主だ」
267 :
魔王「…」
魔王「ここまで、ね」
盗賊「がッ………ごッ………」
魔王「翼の力…か。勇者以外に聖なる力を使うものが現れるなんて思わなかった」
盗賊「うッ………ぎぃッ…!!」
魔王「でも…それでは、私は倒せない」
盗賊「…く………そ………ッ!!」
魔王「…さよなら」
盗賊「………お…れが…」
盗賊「…ま……ける………わけ…に………」
盗賊「いか………な…」
魔王「魔弓」
――「どうか…生きて帰ってきて…」
盗賊「………軍――」
268 = 1 :
ゴォッ――
炎獣「!! なんだ!?」
氷姫「眩しくて何も見えない…! でも…でもこれって…!」
木竜「姫様の、気じゃ!」
雷帝「………魔王様」
魔王「みんな」スタッ
魔王「心配かけて、ごめん」ニコ
炎獣「ま、魔王っ!」
氷姫「魔王!!」
木竜「姫様…良かった…!」
雷帝「魔王様…」
吸血鬼「そん…な」
吸血鬼「盗賊…様………」
269 = 1 :
あー!年内に投下終わらせられず…
ってゆーか年内に完結しないのかよ
クリスマスだろーが大晦日だろーが正月が来ようが土曜日はss
今後ともよろしくお願いします
270 :
あけおめ
乙
272 :
来てたか乙&あけおめ
273 :
氷姫「良かったっ…! 良かった無事で…!」
炎獣「魔王! 怪我、してないか? 」
魔王「ふふ、大丈…夫」ヨロ…
木竜「姫様!」バッ
雷帝「…!」
魔王「ごめん、なさい。少し立ち眩みがしただけよ」
魔王「聖なる波動にあてられ続けてたから…でも、もう平気」
炎獣「無理すんなよ!」
氷姫「そうよ…!」
雷帝「魔王様。手を見せてください」
魔王「っ、雷帝、平気だってば」
雷帝「魔王様」
魔王「…う、うん」ス…
木竜「! ひどい痕じゃ…」
氷姫「これ…!」
雷帝「魔王様…力を何度か使われたのですね」
魔王「…」
274 = 1 :
魔王「ほんの一部とは言え…女神の加護を受けた力と対峙するには、こうするしかなかったの…」
雷帝「…」
炎獣「…魔王、ごめんな」
炎獣「俺、守るって言ったのに…」
魔王「謝らないで。私は平気だから」
雷帝(………私には)
――「信じるわ。雷帝」
雷帝(私には、申し開きをする権利すらありはしない)
木竜「治療をしますぞ、姫様」
炎獣「か、肩貸すか? それとも椅子代わりになろうかっ?」
魔王「くすっ…大丈夫だってば、炎獣」
雷帝「…」
氷姫「…変に意地張ってると、本当に蚊帳の外になるわよ」
雷帝「………なんの話だ」
氷姫「…馬鹿」
275 = 1 :
炎獣「でもよ、まさか人間がこんな手を使ってくるなんて…」
木竜「女神の力の断片を手にした人間、か。もしそんな者が他にもいるとなると、今後の儂らの動き様も考えねばならんのう」
魔王「彼は、どういう経緯かは分からないけれど、力を持っていた…」
魔王「女神の力は、代々選ばれし人間が魔王を倒すために授けられてきたもの。すなわち、勇者にしか与えられない力のはず」
魔王「それを、勇者以外の人間が手にしていた…」
氷姫「なんでそんな事が…?」
雷帝「分からん。が、どうにもきな臭いな」
雷帝「何者かが、秩序を乱しているように感じる。…いや、もしくは」
雷帝「…」
炎獣「? なんだ?」
魔王「…」
雷帝「…いや。ともかく、魔王様をお守りしつつ、この戦いを乗りきらなければな」
木竜「そうじゃな。形勢は、それほどウマくないからのう」
276 = 1 :
エルフ「聖水の煌めき…っ!」
カッ!
氷姫「! 敵!?」
炎獣「ちっ! ここに攻めてきたのか!? なめやがって!」
木竜「しかしこれは…」
雷帝「単なる目眩まし、か? 」
エルフ「斧使いはオーケーだよっ!」パカラッ
狩人「こっちは騎士をつんだ! あとは…!」パカラッ
吸血鬼「…行きなさいな」
狩人「何言ってんの!? 吸血鬼も早く乗って!!」
吸血鬼「誰かが、敵の追跡を、防がねば」
エルフ「一人で、四天王全員相手にする気!?」
吸血鬼「誰かがやらなきゃ、振り切れませんわ」
吸血鬼「それに…」
吸血鬼「少しでも、あの人の側に居たいんですの…」
エルフ「!? それって…」
狩人「………まさか」
277 = 1 :
吸血鬼「盗賊様は、帰ってきませんわ」
エルフ「…っ!!」
狩人「…嘘、だよね…?」
吸血鬼「あのメガネ女狐に伝えてくださいな」
吸血鬼「きっと、仇を討て、と」
エルフ「盗賊、が…」
狩人「…嘘だ」
狩人「嘘だっ! 盗賊がっ! 死んだなんて!!」
吸血鬼「早く、お行きなさいな!!」
狩人「嘘だっ!!」
吸血鬼「エルフ!!」
エルフ「! くっ…!」ガシッ
狩人「離して、エルフ!! 盗賊がっ! 吸血鬼まで!!」
エルフ「行くんだ狩人…!」
「おい」
炎獣「奇襲にしちゃ、ずいぶん悠長だなあ!?」バッ
●
278 = 1 :
吸血鬼「盗賊様は、帰ってきませんわ」
エルフ「…っ!!」
狩人「…嘘、だよね…?」
吸血鬼「あのメガネ女狐に伝えてくださいな」
吸血鬼「きっと、仇を討て、と」
エルフ「盗賊、が…」
狩人「…嘘だ」
狩人「嘘だっ! 盗賊がっ! 死んだなんて!!」
吸血鬼「早く、お行きなさいな!!」
狩人「嘘だっ!!」
吸血鬼「エルフ!!」
エルフ「! くっ…!」ガシッ
狩人「離して、エルフ!! 盗賊がっ! 吸血鬼まで!!」
エルフ「行くんだ狩人…!」
「おい」
炎獣「奇襲にしちゃ、ずいぶん悠長だなあ!?」バッ
279 = 1 :
吸血鬼「貴方の相手は」ガシ…!
吸血鬼「わたくしですのよ」
炎獣「誰だ、お前」
炎獣「こっちは、気が立ってるんだよ」
吸血鬼「知ったことでは、ありませんわ…!」
狩人「離して、離してよエルフっ!!」
狩人「吸血鬼が、死んじゃうよ!!」
エルフ(…っ!!)ギュ…
炎獣「どけ」ゴッ
吸血鬼「あぐッ」グシャ
280 = 1 :
炎獣「逃がさないぞ、人間…!?」グイッ
吸血鬼「…」ニィ
炎獣「…お前」
雷帝「離れろ炎獣! 自爆する気だ!!」
炎獣「なっ…」
吸血鬼(…盗賊様………)
吸血鬼(地獄の果てまでお供します、なんて)
吸血鬼(…冗談で済めば良かったのですけど)
吸血鬼(今、お側へ…)
ドォ…ン!
狩人「吸血鬼ーッ!!」
281 :
炎獣ーッ!!
282 = 1 :
王国軍・砦
軍師「…信用して頂けませんか」
将軍「ふん…。貴様ら賊の一団に、人類の命運を握らせるわけにはいかぬ」
軍師「面子の問題ですか? 王国正規軍の指揮を、辺境連合軍の指揮官に執らせる事が許せないと?」
軍師「人類の命運がかかっているのなら、尚更そのような事にこだわるべきではないと思いますが?」
将軍「…。確かにな」
軍師「ご理解頂けましたか。それでは今後の軍の指揮は、我々辺境連合軍が--」
将軍「だが、それだけではない。貴様らは信用するに値しない」
軍師「…将軍。意地を張るのも結構ですが…」
将軍「貴様らは確かに強い。魔王の手勢を相手取るだけの力と、策がある。しかし」
将軍「このような時ですら、貴様らは己達の利を考えている。…私の部下の最期を、みすみす貴様らの食い物にされるわけにはいかん」
軍師「…っ」
軍師「ですから、それは…!」
ハーピィ「--あぁ…!」ガタン
283 = 1 :
軍師「ハーピィ?」
ハーピィ「あ…あ…!」
魔女「どうしたんじゃ、ハーピィ!」
ハーピィ「吸血鬼さんが…吸血鬼さんが…!」
軍師「…!」
ハーピィ「吸血鬼さんが、死んじゃったよぅ…!!」
魔女「な…!」
軍師「…」ギリ…!
魔女「あやつが!? そのような事が本当に…!!」
魔女「………待て。それでは、精鋭部隊はどうなったのじゃ!?」
ハーピィ「…きゅ、吸血鬼さんの霊魂が………、え? なあに…? 僕に何か伝えようとしてるの?」
ハーピィ「分かんないよ…! 行かないでよっ、吸血鬼さん!!」
魔女「ハーピィ…何か見えておるのか?」
軍師(…)
ハーピィ「え…? と、うぞく、さま? 盗賊様が…」
ハーピィ「盗賊様が…死ん、だ?」
軍師「--…」
284 = 1 :
炎獣「…っぶねー…!」スタ
氷姫「炎獣、平気?」
炎獣「直撃したらヤバかったけど、な。平気だ」
木竜「逃がしたネズミを追うか?」
雷帝「…いえ」
雷帝「女神の力を使うものを排除した今、あのような雑兵が生き永らえた所で大した問題にはなりません」
雷帝「強いて驚異を排除するとしたら…敵の参謀です」
木竜「うむ。妙に敵がイヤらしい動きをしおるからのう」
炎獣「なんだかケンカがやりにくいのはそのせいか!」
氷姫「そいつを先に潰すにしても、こっちだってすぐには身動きを取れないでしょ。魔王の回復を待たないと」
雷帝「ああ」
魔王「ごめん、皆」
氷姫「謝らないでよ。元は、あたしたちが不甲斐なかったからなんだし」
氷姫(…そう、あたしが、人間なんかに遅れを取ったから)
氷姫(…)
285 = 1 :
氷姫「…究極氷魔法を使うわ」
炎獣「え?」
魔王「…!」
氷姫「そうすれば、敵の軍隊を一手に引き受けられる。その隙に…敵の砦を陥として」
雷帝「出来るのか? お前に」
氷姫「………やってやるわよ」
氷姫「あたしも…口先だけで、終わりたくないの」
雷帝「…そうか」
炎獣「おい、ちょっと待てよ。究極氷魔法って、氷姫お前、一度失敗して…」
氷姫「そうね。確かに、かつて一度負荷に耐えられずに暴走させた事がある」
木竜「あの時は、ひどい有り様じゃったのう。生きておったのが不思議なくらいじゃった」
氷姫「あの時のあたしじゃないわ」
氷姫「やり切ってみせる」
魔王「氷姫…」
286 = 1 :
氷姫「魔王…」
氷姫「信じて」
魔王「………」
魔王「ひとつだけ聞かせて?」
氷姫「何?」
魔王「究極氷魔法を使うのは、なんのため?」
氷姫「…」
氷姫(なんの、ため…? それは)
氷姫(人間に対する、怒り? いや、違う。不甲斐ない自分が許せないから…?)
氷姫(いや…それよりも)
――『なんで手出ししたっ!!』
――『ふふ…ふ。大丈…夫』ヨロ…
氷姫(私は…これ以上大事なものが傷つくのを見たくない)
氷姫(出来るかもしれないことをせずに、指をくわえて見てるなんて、そんなのは)
氷姫(もう、御免よ)
氷姫「――勝つため、よ。″皆で″ね」
氷姫「人間も必死だわ。そのためには、生半可な事じゃ駄目なの」
氷姫「魔王も。他の皆も。ここを乗りきるために」
氷姫「あたしも、自分に、勝ちたいの」
魔王「…」
287 = 1 :
魔王「そっか」
魔王「分かった。お願いします」
氷姫「…ええ!」
魔王「私も、爺に力を戻して貰ったら、手伝うから」
氷姫「そ? その頃には戦う相手はいなくなってると思うけど?」
木竜「やれやれ、負けん気の強い奴だのお」
炎獣「じゃあ、砦には俺が…!」
雷帝「いや、私が行く」
炎獣「!」
雷帝「私が、敵の本陣に攻め入り、この軍を指揮している人物…参謀を消す」
雷帝「今の私なら、それが確実に出来る」
288 = 1 :
炎獣「確実にって、どうしてそこまで…」
木竜「! 雷帝、おぬしまさか魔剣を抜いたのか」
雷帝「…ええ。魔剣の力があれば、氷姫のテレポートに似た瞬間移動すら可能です」
炎獣「…雷帝、おまえ」
氷姫「あんた、それって…」
雷帝「何も言うな」
雷帝「全てが終わったとき、魔剣との盟約により我が身は呪いに焼かれる」
魔王「…」
雷帝「その時は、翁。宜しくお願いします」
木竜「…まったく、どいつもこいつも。鷲の治癒能力に頼って無茶ばかりしよる!」
木竜「魔剣の呪いなんぞ、確実に解ける保証なぞありゃせんぞい!」
雷帝「信じていますよ」ニ…
木竜「………はあ」
木竜「好きにせい」
289 = 1 :
炎獣「…」
雷帝「炎獣。お前は魔王様の護衛を頼む。敵が、どんな手段をうってくるか分からん」
雷帝「お前が…」
雷帝(…)
雷帝「お前が守ってくれれば、安心だ」
炎獣「で、でもよ。俺…」
木竜「炎獣。おぬしは、おぬしの戦いをせい」
炎獣「え…?」
木竜「守るための戦いは、ただの殺し合いとは、わけが違う」
木竜「ただ相手を負かす、ということではない」
木竜「炎獣。お前の本能は、そういう事を求めておる。戦う相手は、そこになるかもしれぬ」
炎獣「自分の、本能と、戦う…」
木竜「………雷帝も、氷姫も。どうやら腹をくくったようじゃ」
木竜「おぬしも、自分と向き合うのじゃ」
木竜「本当の強さを、見せてみよ」
炎獣「…!」
290 = 1 :
雷帝「…行くぞ」
氷姫「ええ」
氷姫「………ねえ」
雷帝「なんだ?」
氷姫「重いわね」
氷姫「信じろ…って」
雷帝「…そうだな」
雷帝「だが、今はこうも思う」
氷姫「?」
雷帝「″信じる″というのは、悪くない気分だ」
氷姫「…そ、か」
雷帝「成功させろよ。究極氷魔法」
雷帝「信じてるぞ」
氷姫「…!」
氷姫「………そっちこそしくじるんじゃないわよ」
雷帝「ああ」
氷姫「信じて、やるんだから」
雷帝「…ふっ」
291 = 1 :
エルフ「…」
狩人「…」
剣士「おい…マジかよ」
剣士「マジで言ってんのかよ!?」
剣士「盗賊が死んだってよッ!!」
騎士「………」
騎士「ああ」
剣士「騎士ッ! てめェが…!」ガッ
騎士「…っ」
剣士「てめェがついてて、なんで…!!」
騎士「………」
騎士「すまない」
剣士「っクソがァ!」バキッ
騎士「ぐっ…」
エルフ「やめなよ!!」
魔女「………喚いたところで、盗賊は帰ってこんぞ」
剣士「…ちッ!!」
狩人「盗賊………吸血鬼…」
斧使い「………」
292 = 1 :
ハーピィ「ね、ねぇ」
ハーピィ「…でもさ、僕らなら…な、何とか出来るよね!」
魔女「…」
ハーピィ「盗賊様は、消えちゃったけど、し、死んじゃったって決まった訳じゃないし…!」
騎士「…」
ハーピィ「吸血鬼さんが…吸血鬼さんがさ。せ、せっかく命懸けで、助けてくれたんだから」
狩人「…」
ハーピィ「き、きっと…どうにか、出来るよね! 皆の力を合わせれば、さ!」
エルフ「…」
ハーピィ「か、仇、討たなきゃ、だよね! そう、でしょ…?」
斧使い「…」
ハーピィ「ね…ねえ。皆………」
剣士「…」
294 = 1 :
剣士「…盗賊の奴が生きてたとして、探しだしようがねェ」
剣士「そもそも、魔王はほぼ無傷で戻ってきたんじゃ…あのバカが生きてる可能性は低い」
ハーピィ「…っ!」
剣士「あいつの力を解放して勝てなかった魔王がいて………四天王は俺たちが全力でやって、一人として倒せねェ」
剣士「…翼の団も、王国軍も、疲弊してる。王国軍の連中なんざ、俺たちと連携する事を拒んで勝手に先走ってやがる」
剣士「俺たちも先の戦いで満身創痍だ」
剣士「吸血鬼は…死んじまった。認めたくはねぇが…あいつは俺たちの中で一番強かった」
ハーピィ「………」
剣士「状況は最悪だ。…そうだろうが」
剣士「何とか言ってみやがれ、軍師」
軍師「………」
295 = 1 :
剣士「そうなんだろうが…おい」
剣士「まだひっくり返せるってか…? 盗賊もいねェ、どいつもこいつもボロボロで」
剣士「生きているのでやっとだ! 絶望的じゃねェかよ…!!」
剣士「それとも次は、ケツまくって逃げ出す策か、ぁあ!?」
軍師「………」
軍師「盗賊なら」
軍師「盗賊ならこんな時、何て言ったのか…」
軍師「それを、考えていました」
剣士「…ッ! あいつは…!」
剣士「あいつはもう、居ねェッ!!」
軍師「居ますよ………此処に」
剣士「…何ィ?」
軍師「我々は…翼の団は…」
軍師「彼の志に共鳴して集まった者達です」
軍師「強者に虐げられた弱者に手を差し伸べ…自由を得るべく剣をとった人々です」
軍師「強大な王国の圧力の下で…空を飛ぶ鳥をただ羨んで、地面を這いつくばる事が当たり前だった私たちに」
軍師「空も飛べるのだと…彼はその障害を軽く飛び越えてみせました」
296 = 1 :
軍師「自由を得るための翼は、誰にでもあるのだ、と」
軍師「それを使わなくしている一番の敵は、王国ではなく、ただ落ちるのを怖がる自分なのだ、と」
軍師「さも、当たり前のように、彼はそれを言ってのけた」
軍師「…私たちが夢を見たのは、彼の身に宿る奇跡の力にだけでしょうか」
軍師「私たちは…いつの間にか、自分達まで空は飛べるのだと、当たり前のように口にしていたはずです」
軍師「彼の志は…もう」
軍師「みなの胸のうちに宿っているのではないのですか?」
剣士「………」
エルフ「――″絶望的な状況、か″」
エルフ「″まぁアレだ、やっぱヒーローの定番はピンチからの逆転勝利だろ?″」
剣士「!」
エルフ「…なんて。盗賊なら、そう言ったかもね?」
297 = 1 :
魔女「″もしダメでも、その時はせいぜい死ぬだけだ″」
魔女「などと、軽口を叩いてみせたかもしれんの」
エルフ「ああ、言いそう!」
狩人「″大丈夫だ、俺、持ってるから!″」
狩人「なんて、根拠のない強がり、言ったかもね」
騎士「…ああ。自身も不安でどうしようもなかったとしても」
騎士「盗賊殿なら、そう言った」
ハーピィ「…」
ハーピィ「″弔い合戦なら、派手にやんなきゃ″」
ハーピィ「″あの世の連中にも見えるように″」
剣士「…」ハァ
剣士「″つっても、俺たちがする事って言やァ″」
剣士「″ただ――″」
斧使い「″かっさらう事だけ、だ ″」
298 = 1 :
剣士「おっ…」
剣士「斧使い、テメェ普通に口きけたのかよ!?」
斧使い「…」
狩人「は、初めて聞いた! ね、オッサンもう一回! もう一回しゃべって!」
斧使い「…」フルフル
エルフ「あーっ、斧使い照れてる?」
斧使い「…」プイッ
騎士「お、斧使い殿からいつもの覇気がない…」
魔女「くくくっ、口を滑らせたのう、斧使い!」
剣士「かっかっかっ! なんだよ斧使いよォ、その顔はっ!」
ハーピィ「け、剣士さん、笑ったら可哀想…プッ、クスクス」
斧使い「…」ブン!
剣士「いてっ!? テッメェ斧使い、怪我人になんてマネしやがるっ!」
エルフ「もー、よしなよー!」
299 = 1 :
軍師(ああ)
軍師(やはり貴方がいなくては、ダメなのです)
軍師(何処かへ行ってしまっても…貴方の存在が、皆を救うのです)
軍師(だから、どうか)
軍師(どうか、見ていて下さい)
エルフ「軍師」
エルフ「…やろう。最後まで足掻こう」
騎士「これが最後になるならば…もはやそれで構いませぬ」
騎士「尚のこと、我輩たちらしくありたいと…そう思うのです」
魔女「勝ちを悠々取りに来る魔王に…手痛いしっぺ返しをくれてやろうではないか」
狩人「うん…もう、怖くないよ」
ハーピィ「わ、私は、ちょっと…恐いです、が………でも、頑張るですっ!」
剣士「…しゃーねェ。ここまで来たら腐れ縁だ」
剣士「付き合ってやんぜ」
斧使い「…」コク
軍師「………そうですね」
軍師「では、最後の策です」
300 = 1 :
今日はここまでです
長かった盗賊編、来週で終わります(多分)
みんなの評価 : ○
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