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    元スレ川内「好きの形」

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    251 = 1 :

    今日はここまで……投下量が少ないのは重々承知しています。お許しください

    では、できれば一週間後に

    253 :

    待ってた乙乙

    254 :

    ひえっ

    255 :

    キャットファイトはよ

    256 :

    挨拶前のアンブッシュで終わりそう

    257 :

    見てくださっている方、今更ですがプリンツちゃんが出るまで休ませてもらいます
    来週から本気出しますので許して下さいなんでもしまかぜ

    皆様の有意義な掘りライフを祈りつつ、まだ見ぬプリンツちゃんとの邂逅を夢見てパソコンに向き合います

    258 :

    はいな
    待つぜ

    261 :

    しれぇー!

    262 :

    って言ったよね

    263 :

    普通ならば気持ちのよいスタートだったのだろうが、私の頭のなかは例の目でいっぱいだった。

    たしかに見たのだ。ただ、それがいつか思い出せない。

    そんな煮え切らない記憶を探っているうちに、神通との散歩は終わってしまっていた。
    正直生返事で彼女を軽くあしらっていたことは否めない。何に対して頷いたのかも覚えていなかった。

    「提督?大丈夫ですか?」

    「少し考え事を……な」

    朝日を拝んだ場所で再び佇む。すっかり日は昇り、私はじんわりと汗をかいていた。
    そろそろ皆活動しはじめている頃だ。

    「……提督」

    私の右手に何かがぶつかる。
    見ると、神通の手だった。

    「私はあなたの一番の『相棒』だと自負しています……姉さんではなく、私です」

    その言葉に頭の思考が鈍る。
    私は熱が急激に冷めるように感じた。

    「なんでも仰って下さい。あなたのためならなんでもしますから」

    私に笑いかけながら手を絡めてくる。

    「……すまない」

    何に対しての謝罪か私自身わからなかった。
    だが、神通はなにも言わず頷いてくれた。
    昨日懸念していた彼女の精神は安定しているように見える。

    もしや、昨日は女性特有の精神が不安定になる日だったのかもしれない。

    「……ふむ」

    精神を削るような毎日を送る彼女たち。その背中を押すだけの上司。
    今更ながら、この地位が汚く見えた。

    「むしろ君の願いを叶えてあげたい……」

    さらに私のことを常に考えてくれる彼女。そう思えば、昨日の程度では安すぎる気がした。

    264 :

    おつ!
    ぷりんつはでたか?!グラーフはでなかったぜ!

    265 :

    投下しようと思ったら、既に寝ぼけて投下してました……怖い

    >>264お陰さまでプリンツもグラーフも来てくれました
    嵐?知らない子ですね

    266 = 1 :

    「そ……それは!?」

    いきなり彼女が痛いほど強く握ってくる。
    思わず私の顔は歪んだ。

    「……?いやすまない、独り言だ」

    「あ……そうですか」

    感情の起伏が激しい。神通は高ぶったかと思えば、すぐに縮こまってしまった。
    頬をほんのりと赤らめる彼女は、年相応の少女に見えた。

    「……提督、そろそろ」

    そこまで言って、彼女は口を閉じた。
    先程よりかは弱いが、わずかに握る力が強くなっている。

    「……どうした?」

    一旦目のことは忘れ、私の手を軽く引く彼女に向き直す。

    「そろそろ……いいのでは無いでしょうか」

    凛としたいつもの表情とは真逆にあるような顔でなかなか目をあわせない。
    例えるなら、映画やドラマで見る告白のワンシーンだ。

    「……いい?」

    何がだろうか。
    長い付き合いとはいえ、私には全く察することが出来ない。

    「あの…ですね?」

    彼女らしからぬはっきりしない物言い。
    私は気になって彼女の顔を覗いた。
    神通は私と目があうなり直ぐに水平線へ反らしてしまった。

    「その、勝手ながら私は提督の…い、一番側にいる身だと自負しています」

    「?あぁ、そうだな」

    やけに深呼吸を重ねる神通に疑問を感じながらも頷く。
    自負もなにも、秘書艦の彼女が私の隣にいるのは至極当然なことだ。

    「で……出撃もかなり積極的にしてるんです」

    してると彼女は言うが、それを編成するのは私の役目なのだから私自身がよく知っている。

    「練度も十二分でして……」

    「あぁ」

    上限ギリギリまで高められた彼女たちの練度は、どこに出しても恥ずかしくない……むしろ、誇れるようなそれだった。

    「その……そ!そろそろかと、思い……ます……」

    「何が――」

    「そろそろご飯だってー!」

    私たちの後ろから声が聞こえた。

    「もうっ!那珂ちゃんだって忙しいんだからね!!」

    振り返ると、顔を膨らませた那珂が門の前で仁王立ちしていた。

    267 = 1 :

    「…っ………戻りましょうか」

    冷ややかな声が聞こえる。
    声の主は神通だと理解するのにしばらくの時間を要したほどに、声色が変わっていた。

    「え?……あぁ」

    色々と腑に落ちなかったが、それを押しきるようなオーラを感じた私は反射的に頷いた。

    私が頷く前にさっさと鎮守府に戻る神通。
    私は遅れながら彼女の後を追う。

    「提督!おはよー!」

    「あぁ……おはよう」

    私が返すと那珂は笑顔で近づいてきた。

    「今日は、何時から遊びにいくの?二人っきりで」

    挨拶もそこそこに、那珂は目を光らせて尋ねる。よほど楽しみなようだが……入念にプランを立てていない私としては少し困る。

    「そうだな……1100ぐらいからにしようかな」

    とりあえずあの喫茶店は、昨日の混み具合からするに早めに行った方が良いと踏んで速めに出ることにした。

    「っ……」

    私の先を歩いていた神通の足が止まる。
    一人で進んでいた彼女だが、待ってくれるらしい。

    「じゃあ、昨日の川内ちゃんたちと行ったときより早めからデートするんだね!」

    「お……おう」

    気迫に圧されて頷くと、那珂はうっとりと惚けた目で水平線を見つめる。
    彼女も年頃の少女。こんなおじさんとでも街へ行くのは心が踊るようだ。

    「……ん?」

    ここでわたしは先程の言葉を反芻し、あることに気づいた。

    「……いや、デートでは――」

    「違います!!」

    無い。そう言おうとした矢先、神通が物凄い大声でそう言った。

    268 = 1 :

    「……そうなの?」

    呆気に取られだが、キョトンとした顔で振り返る那珂の声で頭を冷やす。

    「あ、あぁ――」

    「当たり前です!!」

    神通再び叫び、私の声を遮って否定した。
    その必死さは昨日のやり取りを彷彿とさせた。

    「那珂ちゃんのはデートなんかじゃないですよ?だって提督が仕方なく付き合ってあげるんですから…!」

    こちらに戻ってくる彼女は明らかに那珂を睨んでいる。

    「…………そうなの?」

    その視線をさらりとかわし、那珂は私に目を向けた。

    「…………いや……」

    神通の言ってることは大方正しい。
    だが、その言葉の過剰なまでの刺々しさは、私の首を素直に振らせない。

    まっすぐ私を見る那珂から逃れるように視線を反らすと、眉間にシワを寄せる神通と目があった。

    ……1度寝て頭を冷やせたと思っていたのだが、それが間違っていたのかもしれない。

    「……那珂ちゃん、アイドルは上司とデートなんてしちゃ駄目でしょ?」

    「えっ……とぉ……」

    一拍おいた神通がここに来て理詰めで諭す。
    だが、その声には苛立ちがこもっている気がした。

    「…………ふむ」

    私と二人きりなら普段通りの彼女たち。だが、もう一人がいると険悪なムードになる。

    ……何となくだが、わかってきた。
    恐らく彼女たちは何らかの理由で喧嘩中なのだが、それを私に悟られまいと隠しているのだろう。

    269 = 1 :

    一人っ子だった私は、恥ずかしながらこのような場合の対処法を知らない。

    目の前で妹を睨む姉と、その視線を飄々とかわし私しか見ない妹。
    正直お手上げだった。

    「ん……そうだな」

    だが、だからといって放っておくわけにもいかない。
    那珂を置いて二人と街へ出たことは、彼女にとって喧嘩中の姉たちが贔屓されているように写ったのだろう。

    なるほど、そう考えると思い当たる伏が多い。

    「お忍びデートは悪いことではない……はずだ」

    ならば、私が喧嘩を加速させてしまったことになる。
    ある程度修正して、神通の言った通りしばらく放っておこう。

    「提督~!」

    再び笑顔を咲かせた那珂は、そのまま私の胸へ飛び込んできた。

    「お、おい……」

    小心者の私は自分の体から彼女を直ぐに剥がし、一歩後ろへ下がった。

    「え~!」

    那珂は口を尖らせて頬を膨らませる。
    ……子供がいたら、こんな感じなのだろう。

    「これ以上の我が儘はやめなさい」

    そんな那珂の肩を掴んだ神通は、いつも通り、またはそれ以上に冷たい声で咎めた。

    「…………はーい」

    そんな声に臆することなく、那珂は隠れていたずらをしたような笑みを浮かべ舌を出す。

    「じゃあ提督、11時に玄関ね♪それまでにいっぱい用意しないといけないから、那珂ちゃんはダッシュで帰ります!」

    肩に置かれた手を払った那珂はそれだけ言って、案外すんなりと鎮守府へ小走りで帰っていった。

    「…………提督」

    突風のごとく消えた那珂の背中を眺めていると、横からぐいっと腕を引っ張られる。
    私が驚いていることも気にせず、神通は出来た隙間に腕を入れ、そのまま私の腕に絡ませた。

    「私たちも行きましょう」

    返事も待たずに腕を引く神通。
    自然な流れで腕を組む彼女に戸惑ったが、その力が妙に強く、無理にほどくのもどうかと思った私はされるがままに歩き出す。

    小さな歩幅でゆっくり進む神通。
    組んだ腕は、鎮守府が近づくにつれ力がこもっていった。

    270 = 1 :

    今日はここまで
    社会人でss書いてる提督さんに脱帽

    272 :

    明けましておめでとうございます
    満足のいく方向性と書き溜めが出来たので帰ってきました(スムーズに書けるとは言ってない)

    以下投下

    273 = 1 :

    戻った私と神通は諸々の用事を終え、伊良湖が腕をかけてくれた料理が待つ食堂へと赴いた。

    「……混んでいるな」

    外にいた私たちに声がかかるということは、例外を除いた鎮守府内のメンバーには既に連絡済みだということ。
    とくにうちは大御所でもあるので、席待ちはいなくとも十分混んでいた。

    「ですね……二人で食べられる場所、探してみましょうか」

    最悪別れざるを得ないとも考えたが、いっそう力強く握ってくる手を離すのもどうかと思い、私と神通は人混みをかき分けながら席を探すことにした。

    「ん?提督じゃん」

    その声の方へ顔を向けると、軽く手を挙げる川内と目があう。

    「こっちおいでよ!」

    そこまで距離が有るわけでもないのだが若干オーバーな手振りでこちらに誘う。

    「ありましたよ」

    だが神通は、そちらへ行こうとした私の手を逆方向に引いた。彼女も見つけたらしい。

    「いや……」

    私は言葉を濁して後ろに目配せする。

    「……姉さん」

    274 = 1 :

    「……なんだ、一緒にいたんだ」

    喧嘩とまではいかなくとも、やはり仲が良さそうには間違っても見えない。
    周りも何かを察したのか、少しだけ静かになった気がした。

    「……まぁ二人分空いてるし、ここで食べなよ」

    「……どうする?」

    私は波を立てないように神通に委ねる。

    「…なら、そこでいいのではないでしょうか」

    納得したという顔では無いが、彼女はそう言ってスタスタと歩きだした。

    「…………」

    神通が睨み、その視線を川内が飄々とかわす。
    一発触発とはいかなくとも、張りつめた空気が食堂に漂っているのがわかる。

    「とりあえず座ったら?」

    私にそう言いながら、川内端自分の隣の椅子を引く。

    「そうだな」

    私はそれに従って、椅子に腰を下ろした。

    「…………どうしたの?座らないの?」

    だが神通は席に着こうとせず、立ち尽くして私に視線を送り続けていた。
    そんな彼女に川内が催促する。

    「……そうですね」

    神通は何かを諦めたように溜め息をひとつ吐き、残った席――川内の向かい――に渋々と座った。

    275 = 1 :

    「提督。このあとって、暇?」

    少し冷めてしまったご飯を食べていると、先に、食べ終えた川内が身を乗り出して聞いてきた。

    「いや、少ししたら街へ出かける」

    「そっか。ならいいや」

    あっさりと身を引いた川内は、すっと立ち上がって食器を手に取った。

    「提督。私も街へ行って良い?」

    「……それは着いてくるってことで良いのか?」

    「んー……それでも良いんだけど」

    川内は言葉を濁して目配せする。

    「ん?……」

    その先に目を向けると食堂の入り口からこちらを覗く顔が見えた。
    じっくりと見れは出来なかったものの、目があった瞬間引っ込められた顔は那珂のそれだった。

    「那珂ちゃんが楽しそうにしてるし、邪魔したらダメだと思うな」

    妹の可愛らしい仕草を見て楽しそうに笑う川内。そこには、神通との間にあるような不穏な空気は一切無かった。

    「遠征も他の当番か……良いだろう」

    個人的には休暇を連日与えているようで素直に頷くことは出来なかったが、与える任務も無い今、彼女は手持ち無沙汰になるだろう。それは気が引けた。

    「…………私は」

    その声で私は顔を神通に向けた。

    「私は明後日の仕事に手を着けておきます」

    神通は拗ねたように口を尖らせる。

    「それは有り難いが……」

    「私がしないでどうするんですか」

    「……そうか」

    休んでも良いという旨を告げようと思ったが、諦めたような据わった目を向けられると頷くことしか出来なかった。

    276 = 1 :

    「じゃあ、私はお先に……あっ」

    盆を持って立ち上がった川内は、そのまま食器を返しに行くのかと思いきや、数歩進んだのちにクルリと振り返った。

    「神通、後で話があるから」

    「…………そうですか」

    その返事を聞いた川内は、再び前を向き直して食器を返しに行った。

    「…………聞かないのですね」

    「……何をだ?」

    「話の内容。提督なら気にするものと思ったので」

    勿論気にならないと言えば嘘になる。

    「君たちの話なのだろう。首を突っ込むのは野暮だ……そもそも、気にするなと言ったのは君の方じゃないか」

    「……そうでしたね」

    安心したような、寂しそうな。神通はどっちともつかない表情で笑った。

    「……よく知らないが、私は君たちの仲が修復されることを望んでいる」

    「……………………はい」

    間が空いての返事。
    だがそれは素っ気なく、神通にその気が無いように感じられた。

    「……そろそろ私も失礼します」

    「あまり根詰め過ぎないように」

    「はい」

    思い詰めた顔を少し伏せ、神通も席を立つ。
    彼女の背中を見送りつつふと周りを見ると、空席がちらほら目に入った。

    「……さっさと食べるか」

    神通も立ち去ったことで私の周りは全て空席となり、妙な物寂しさを覚えた私は箸を持った手のスピードを速めた。

    277 = 1 :

    「……さて」

    そそくさと食事を終えた私は、そのままの足で執務室に入る。
    いくら朝食が遅れたとはいえ、約束の11時までかなりの時間が残っていた。

    「どうしようか」

    大声で言えることではないが、街へ行く服などさほど持ち合わせていないので、すぐに身繕い終えたのだ。
    誰もいなかったことから、まだ神通は川内と話しているらしい。

    「…………いや」

    顔を見に行こうかという発想が脳裏を過ったが、すぐに思考を遮断する。

    「そっとしておくか」

    子供どころか世帯を持たない私にとって、彼女達は子供のようなものになっている。最近では、妻を欲しいという気が薄れている始末だ。

    そんなわけで、彼女達が喧嘩をしているといたたまれない。仲を取り持ちたいのだが……

    「……子煩悩、か」

    以前元帥殿に言われたことを思い出す。
    あのときはつい否定したが、今思えばあれは的確な指摘だったのかもしれない。

    「……ふむ」

    どうも落ち着かず、私は足を止めること無く部屋を動き回る。
    ……とは言っても、それほど広くないこの部屋を練り歩くのに1分もかからず、やがて私は机の前にたどり着いた。

    「…………」

    大した理由もなく、机の上に置かれている写真立てを手に取る。
    そこには私と川内三姉妹が写っていた。

    278 = 1 :

    今回はここまでで
    改めて、今年もよろしくお願いします

    280 :

    来月中には終わらせたい……
    以下投下

    281 = 1 :

    「羽黒ちゃん?」

    「ひゃっ!?」

    私が後ろ声をかけると、羽黒ちゃんは体全体を大きく震わせて小さな悲鳴をあげた。

    「な、那珂…さん」

    「もー!那珂ちゃんでいいよって言ってるじゃん!」

    「あっ……那珂ちゃん…っ」

    いつものやり取りだけど、私には彼女がいつもと違うように感じた。
    それは怒りを堪えているようにも見え、苦しみを隠しているようにも見える顔。

    「……もー!」

    そんな顔では美人が台無しだと私は思った。
    だから、私は手を彼女の頬に当てて無理矢理笑顔を作る。

    「な…何!?」

    「笑顔!そんな顔じゃ、皆悲しくなっちゃうよ!」

    ……羽黒ちゃんのほっぺた、温かい。

    「那珂ちゃん……そろそろ、は…離してっ」

    …………はっ!
    ついほっぺた触るのに夢中になっちゃった。

    「あっ、ごめ――」

    私は急いで手を放す。
    だけど、それが却って羽黒ちゃんのバランスを崩したみたいで、私の方に倒れてきた。

    「羽黒ちゃん!」

    「ひゃ…っ~!」

    咄嗟に手を伸ばして彼女を支えることに成功。
    だけど……少し勢い余って羽黒ちゃんのお腹、少し強く押し返しちゃった。

    「あっ…ごめ――」

    「ごめんなさい!!」

    突然謝る羽黒ちゃん。私はビックリして抱いていた彼女を引き離し、顔を覗いた。

    「どうしたの?羽黒ちゃん。悪いことしてないよ?」

    「ごめんなさい……ごめんなさい……」

    でも、羽黒ちゃんは聞く耳を持たないで謝り続ける。
    もう一度慰めようと思ったとき、私は太股に違和感を感じた。

    「――え?」

    生暖かい液体が、羽黒ちゃんのおまたから私の太股に垂れていた。

    「これって……」

    妙に温度があって、足下から独特の臭いが立ち込める。

    真っ白のソックスに黄色い軌跡を残すそれは、顔を赤くして泣いている羽黒ちゃんのおしっこだと理解した。

    282 = 1 :

    ちょっとタンマ

    283 = 1 :

    「……いつから」

    いつから仲が拗れていたのだろうか。
    私が気付いたのが最近なだけで、実は以前から関係は良好では無かったのか…?

    「…………いや」

    少なくとも、このときは違ったはずだ。

    「いつから……」

    再び呟いた私は写真を片手に記憶を辿る。
    仲が拗れた、又はそのような素振りを見せていたことがあったはず……

    「……あれか?だが――」

    「提督ー!準備出来たー?」

    ひとつ思い当たるものが浮かんだのと、ほぼ同時に勢いよく扉が開かれた。

    突然のことで、特に理由もないが写真立てを咄嗟に伏せる。

    「いや、もうできてるぞ」

    焦りの色が透けて見えるのが自分でもわかる声色。

    「じゃあ、早いけど行こうよ!」

    だが那珂は気に止めなかったようで、目を輝かせて玄関を指差した。

    「……そうだな」

    私は掛けていた帽子を取り、胸ポケットの財布を確認しつつ、早足で部屋を出た。

    284 = 1 :

    「早くー!」

    私が部屋から踏み出したと同時に那珂は小走りで駆け出す。

    「すぐ行くから、外で待っててくれ」

    廊下へ出た私は、少し進んだところで立ち止まった。そこは川内型姉妹の共同部屋だ。
    一応出掛けることを伝えておこうと思ったのだ。

    「……川内、神通」

    ノックをすると扉の向こう側から彼女たちの声がしたりドタドタと騒がしい音をたてていたが、15秒ほどで川内が顔を出した。

    「何?どうしたの?」

    「いや…そろそろ私たちは出ようと思ってな」

    「……早くない?」

    何故か目を細めて口を曲げる川内。
    不機嫌なのは感じ取れたが、私にはその理由がわからない。

    「二人とも暇になってしまってな。まぁ、混むことを考えたら妥当だろう」

    「……ふーん」

    いかにも興味なさげだと言わんばかりの、無関心を貫こうとする態度。

    「まぁ…那珂ならいいかな」

    「……?そうか」

    よくわからないが、お許しが下りたらしい。

    「いってきまーす!」

    まだ一分も経たぬうちに、玄関から那珂の声が響いてきた。どうやらよほど待ちきれないらしい。

    「おっと。では、そういうことで」

    「いってらっしゃい!」

    顔だけしか覗かせないが、彼女はおどけたように敬礼してみせた。

    「川内もどこか行くようだが、あまり遅くならないように」

    「私はすぐ終わると思う。提督こそ、はしゃぎすぎないでね」

    私は返事の代わりに肩をすくめ、そのまま玄関へ向かった。

    285 = 1 :

    「……那珂?」

    門をくぐった私は辺りを見回す。だが那珂は本当に先に出たらしく、数十メートル先に彼女らしき後ろ姿を見つけた。

    「…………はぁ」

    呆れつつも小走りで彼女の元へ向かう。

    「――でね?――そう!――」

    だが、近づくたびに違和感を感じた。
    彼女は誰かと喋っているように見えるのだ。
    一応携帯は持たせているが、どちらかと言えばすぐ近く――隣に誰かいるような雰囲気を醸し出しているのだ。

    「那珂!」

    「…………あれ?提督?」

    何故か那珂は驚いたような目で追い付いた私を見る。
    やはり彼女は携帯を持っていなかった。

    「……何してたんだ?」

    「えっ?提督と……あれ?」

    彼女もあからさまに狼狽している。

    「え?提督とおしゃべり……なんで!?」

    「…………?私がどうしたんだ?」

    彼女も混乱しているが、私にも全く話が見えない。

    「………………あっ。そうだ!この前羽黒ちゃんがね?」

    「…ん?」

    暫く間を空けた後、那珂は何もなかったかのように話し出した。
    つい先程の記憶をバッサリと切り捨てたかのような切り替わりは、更に違和感を深める。

    「だから那珂ちゃんが――」

    「…………どうしたんだ?」

    286 = 1 :

    「え?大丈夫だよ?お漏らししたのは羽黒ちゃんだもん」

    「いや……そっちではなく」

    全く噛み合わぬ会話に苛立ちを感じるが、彼女の顔を見る限りふざけてはいないらしい。

    「……………………なんでもない」

    その姿は昨日の神通と重なって、これ以上の追及は気が引けた。
    ……もしかしたら、これは一種の流行り病なのか?
    聞いたことは無いがそうかもしれない。

    ……そう思いたかった。

    「そう?……それで、羽黒ちゃんが泣きながら――」

    話し続ける那珂。

    「………………」

    彼女の、彼女たちのおかしくなった姿。
    それと、さっき私が思い付いた原因――指輪。
    そこに因果関係を見いだしたくなかったのだ。

    「…………提督?こっちの道なの?」

    「……ん?」

    我に返ると、私は道を大きくはずしていた。

    「……間違えた」

    頬を膨らませて何か起こっている那珂。
    だが、別のことでいっぱいだった私にはその声が届いていなかった。

    287 = 1 :

    少ないけど今日はここまでで
    秋で終わるとか言っといて……すみません
    冬イベ始まる前にもう一度来ようと思っています

    あと、誤爆なんか無かった。いいね?

    289 :

    アッハイ

    290 :

    一瞬混乱したわww

    291 :

    提督の皆さんは来る冬イベに向けて備蓄していることでしょう
    頑張る皆さんの癒しとなれば幸いです
    あとガッサさんの手がエロい

    以下投下

    292 :

    指輪。あれが上から届いたとき、恥ずかしながら私は酷く狼狽した。
    女性への免疫も去ることながら、娘同然の彼女たちをそのような目で見たことが無かったのだから当然である。

    「それでねー?――」

    那珂の話を聞き流しながら、当時に記憶を巻き戻す。

    ……私は彼女たちを娘同然と思っていた。だが、彼女たちは違った。
    落ち着きのない姿は私と同じだったが、僅かながら空気が変わったのを覚えている。

    あれから川内は毎晩のように執務室へ訪れるようになり、神通はいつもよりも距離を詰めてきたり。那珂などあからさまに、雑談という名目のはずが、脱線して指輪のことを執拗に尋ねる始末。
    あのときはとても困惑していたものだ。

    「…………ん?」

    そこまで思い出して、新たな疑問にぶつかった。

    私はあのとき、何もしなかったのか?

    「やっぱりそうだよね!でも長良ちゃんってば――」

    仮に彼女たちの喧嘩――特に川内と神通――の原因が指輪だとして、今ほどで無いにしても異様な空気を感じていたのだ。
    行動を起こしていてもおかしくはない。

    ……いや、何かしたのでは?
    そう……確か、神通に話をした気がするのだが……

    私は数分間頭を捻って思い出そうとした。

    だが、奇妙なことに全く思い出せない。

    「そしたらね?神通ちゃんが――」

    …………いやまて。
    私は、どうして覚えていないのだ?
    自分が指揮を執る部下が険悪なムードに浸っているのだ。
    振り返ってみると、易々と忘れられることでは無いはずだ。

    293 = 1 :

    「やっぱり提督は――」

    「……那珂。ひとつ聞いてもいいだろうか」

    「――え?」

    反対を向いていた那珂は、驚いた顔で私を見た。
    どうやら私が話し出したことに驚いているようだ。

    「……その、おかしなことなのだが、私は最近物忘れが酷くなったようでな」

    「……知ってるよ!一緒にご飯食べることも忘れてたんだもんね」

    私はふいっと目を逸らした。
    ……痛いところを突かれた。確かにその事も覚えていなかった。

    もしかすると、私は自覚していないだけで患っているのか?
    そんな考えも浮かんだが、それは頭の隅に押し込んで那珂に視線を戻す。

    「……それで、他にも忘れていることがある気がするんだ」

    「いつのこと?那珂ちゃんは、ずっと提督のそばにいるからいつのことでもオールオーケーだよ!」

    立ち止まって胸を張る那珂は、いつもの彼女そのものだった。
    その姿にホッとしつつ、私は意を決した。

    「それはありがたい……それなら聞かせて貰いたいのだが、あの指輪…って、どうなったんだろうか」

    指輪。その単語を聞いた瞬間に那珂は弾かれたようにぴくんと1度震えて、硬直してしまった。

    「……那珂?」

    294 = 1 :

    「なんのこと?私知らない」

    明らかな間の後に、那珂は首をぎこちなく傾げる。

    「……何か知っているな?」

    これほど動揺する那珂を、私は初めて見た。

    「……なんで?」

    出撃で大破しても、私の手伝いで大きなミスをしても全くぶれることの無かった『那珂』というキャラが、誰でも感じるほどの崩壊をしているのだ。

    「それはこっちのセリフだ」

    期待以上の反応に、私も驚いていたのだ。

    「那珂。何を知っているんだ?」

    「……………………」

    先ほどまで楽しげに話していた彼女からは想像しがたい落ち込んだような顔。

    「……那珂ちゃんは言えない…かな」

    そう重々しく呟くと、今度は彼女が目を逸らしてそっぽを向いた。
    追及から逃れようとしているのが見てとれる。

    「…………そうか」

    そんな彼女から強引に聞けるほど、私は図太い性格ではない。
    未だ頭は晴れないが、表情を取り繕って引き下がった。

    「……変なことを聞いてしまったな。お詫びにタルト以外にも1つ奢ろう」

    何か話題は無いものかと周りを見回した私は、かなり歩いていたことに初めて気づいた。
    私は、いつの間にか数十メートル先に見えるまでに近づいていた喫茶店に目配せし、未だ笑顔を取り戻せていない那珂の手をご少し強引に引いて進みだした。

    295 = 1 :

    「いらっ…しゃいませ」

    ウェイトレスの挨拶に一瞬間があったのは、恐らく昨日も来た私を覚えていたからであろう。
    だが、私は当然ながらそこを指摘したりましてや絡みにいくような性格ではない。

    「二人で」

    何事も無かったようにピースを作って人数を伝える。
    ……まぁ、本当に何事も無かったのだが。

    「では、こちらへどうぞ」

    全くの偶然か、昨日と同じ席だった。
    ここで昨日と同じ物を、と頼むのはどうだろうか、などと考えてみる。
    そんな下らないことに頭を回せるほどには幾らか余裕ができていた。

    「ここはタルトが美味しいんだ」

    「聞いた!川内ちゃんがまた食べたいって言ってた。那珂ちゃんも楽しみ」

    那珂はわたりに船と言わんばかりに、私の振った当たり障りの無い会話に笑顔を撒き散らして返答する。
    その辺の切り替えの早さは、流石はアイドルといったところか。

    「すみません」

    やや声を張って呼ぶと、すぐにウェイトレスが駆けつけてくれた。

    「このタルトを2つ。それと……」

    「レモンティーも!」

    「かしこまりました」

    私のあとを引き継いで注文する那珂に目を向けたウェイトレスは、小さく頭を下げて厨房へ戻っていった。

    296 = 1 :

    「…………そうだな、その、最近どうだ?」

    那珂には悪いが、私は追求の手を緩めるつもりは無かった。
    仲の悪い長女と次女。そしてその喧嘩にあまり関わっていないように見える三女。
    険悪なムードの原因を探るには今しかないと踏んだのだ。

    「どうって?」

    ……思春期の娘を抱えた父親とはこんな気持ちなのだろうか。
    何故かぎこちなくなり、上手いこと話を運べない。

    「いや…出撃とか友人関係とか」

    「さっきも話してたと思うけど…」

    「もう少し無いのかと思ってな」

    「……変なの」

    首を傾げる那珂には申し訳ない。
    だが、チャンスは今しかない。

    「羽黒ちゃんとの話はもうしたし……後は…」

    「…………姉とは上手くやってるのか?」

    私が尋ねると、一瞬だがまたもや那珂の体が固まった。

    「指輪。あれが仲を壊してるのなら、素直に言ってくれ」

    「…………気になるの?」

    「あぁ。話を蒸し返すようで悪いのだが、教えくれないか」

    那珂は一分ほど目をきょろきょろとさせていたが、恐る恐るといった風に口を開いた。

    「あの頃から……少し良くないんだ」

    俯く那珂は、みるみる声が小さくなる。

    「川内ちゃんは優しいんだけど……神通ちゃんが、ときどき私を怖い顔で見てるときがあるの」

    297 = 1 :

    「……そうか」

    ……となると、神通がムードに影響を与えているのか?
    昨日の彼女は初めて見たものだったが、あれが初めてでは無いのかもしれない。

    「…………神通に何かあったのか?」

    その質問をすると、那珂の目の色が僅かに変わった。

    「もしかして、この話をしたいからお昼ご飯に誘ってくれたの?」

    「あっ……そうだ」

    ……我ながら嘘の下手さに呆れてしまう。
    だが那珂は、そんなことお構い無しに感慨深そうに頷いた。

    「前から神通ちゃんと川内ちゃんの仲が悪くなってたけど、最近は川内ちゃんの元気は良くなって、でも神通ちゃんが怖……不機嫌になってて……」

    那珂の頭の中でも整理は出来てないようで、落ち着かせるようにゆっくりと話しだした。

    「……那珂ちゃんは仲良しの二人が良くて、でもなんにも出来なくて…」

    自分を責めるように言葉を絞り出す那珂に、思わず手が伸びる。

    そのまま頭を撫でると、那珂は顔を上げて驚いた表情を見せた。

    「良くわかったよ。ひとまず神通に聞いてみよう」

    そうしていると、ウェイトレスがタルトの乗った皿を2つとレモンティーを持ってきた。

    「さぁ食べよう。川内の言う通り、これはとても美味しいんだ」

    那珂は涙声で頷いて、レモンティーのストローをくわえた。

    298 = 1 :

    「那珂、すまん」

    「良いよ!話したら楽になったし」

    私が食べ終えた頃には、那珂の元気もすっかり元通りになっていた。

    「美味しかった!また食べたいなぁ~」

    「次は何処へ行こうか」

    「うーん……あっ、ロー○ン行きたい」

    「……これまた意外な所が出たな」

    「良くわからないけどコラボしてるんだって!」

    「そうか……?」

    次に行く場所を決めながら、私たちは席を立つ。

    「そうだ。お土産に買って帰ろうよ」

    「ふむ…」

    確かに今なら余っているだろう。
    だが、生物を持ち歩くことは避けたい。

    「取っておいて貰えるか、掛け合ってみるか」

    レジを見ると、暇そうにしているウェイトレスと目があった。

    「お会計を。カードで頼みたい」

    「はい。かしこまりました」

    「それと……このタルトを3つ。また後で寄るので、そのときまで取っておいてくれないか?」

    「かしこまりました」

    無理なお願いだと思っていたが、案外すんなり通ったので少し拍子抜けした。

    「良いのかい。私が言うのもあれだが、通らないと思っていたよ」

    「先ほども同じことを仰ったお客様がいらっしゃいましたので」

    「そうなのか」

    やはりここは人気店らしい。昼の混み具合からある程度は察していたが、そんな注文をする客が私以外にいるとは。

    「まぁ、よろしく頼む」

    「早く行こ!」

    そうして店を出た私は、那珂に振り回される形で街を回り、鎮守府に戻ったのは1700であった。

    299 = 1 :

    今日はここまで
    つまり、全部神通のせいだったんだよ!!
    神通嫁の提督さんすみません。許してくださいなんでもしますから


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