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    元スレ朝潮「制裁」

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    201 : 以下、名無しにか - 2015/03/01(日) 02:53:50.40 ID:ntc75ope0 (+95,+30,-186)

    加賀 「その通りよ、わかったら帰って今朝の報告書を作りなさい」

    荒潮 「ごめんなさい、朝潮ちゃん・・・わかってたの」

    荒潮 「それなのに朝潮ちゃんが引っ張るのに抵抗しないで」

    朝潮 「どういうこと?」

     「編成の決定権は司令官にあるのよ」


     執務室のドアを開けて大和が入って来た。空気が変わる。


    加賀 「何の用?」


     加賀はようやく視線を上げる。


     「廊下まで聞こえる声で話してたから諌めに来ただけよ」

    加賀 「・・・声を荒げた積もりはないけど」

    加賀 「丁度いいから、そこの二人を連れて出て行ってくれるかしら?」

     「諌めに来たのはあなたよ」

    加賀 「・・・」

    202 : 以下、名無しにか - 2015/03/01(日) 02:55:12.48 ID:ntc75ope0 (+95,+30,-283)

     「話を聞いて提督に進言するくらいできるでしょう?」

    加賀 「無意味よ」

    加賀 「私は朝潮と荒潮を第一艦隊から除外するよう既に提督に進言したわ」

    加賀 「成績が低い上に今日の大破もあったから」

     「提督は何とおっしゃって?」

    加賀 「提督は朝潮と荒潮を第一艦隊で使い続けるお積もりよ」

     「加賀が口下手だから説得できなかったんじゃないかしら」

    加賀 「提督は彼女達を一時旗艦にすえて鍛えてでも、第一艦隊から下げないと強くおっしゃったわ」

    朝潮 荒潮 「!?」

    加賀 「外れるなんて無理でしょうね」

     「士気の低い子を送り出して轟沈したらどうするの?」

     「加賀さんあなた・・・責任を取れるの?」

    加賀 「あなたが秘書艦だった時も轟沈する艦娘がいたようだけど責任はどう取ったのかしら」

     「私は人員が不足するようなことがなければ無理やり戦闘に駆り出すことはしなかったわ!」


     大和が加賀を睨む。朝潮と荒潮は蚊帳の外だ。

    203 : 以下、名無しにか - 2015/03/01(日) 02:58:44.68 ID:ntc75ope0 (+95,+30,-182)

     「無理かどうかは別よ」

     「荒潮ちゃんの気持ちを汲んで提督をもう一度精一杯説得すべきなんじゃないの?」

    加賀 「・・・そうね。そうやって子供を騙して気持ちよく出撃してもらうなんて方法、勉強になるわ」

     「・・・」キッ


     大和に睨まれても加賀は何もないように執務を再開した。

     当然放たれる加賀の言葉はまた温度を失った。


     「加賀さん、荒潮ちゃんに顔をちゃんと向けて説得することを約束してくれる?」


     やっと顔を上げた加賀は、表情を一切動かさず荒潮に言った。


    加賀 「あなたが第一艦隊から外れることで」

    加賀 「練度の足りない仲間が出撃して轟沈しても・・・あなたは耐えられるのね?」


     この言葉に朝潮と大和は一瞬硬直し、荒潮を見る。


    荒潮 「・・・」


     荒潮は少し固まった後に静かにうなずいた。


     「そんな言い方

    加賀 「わかったわ。その覚悟があるなら大丈夫ね」


     加賀は顔をPCに戻し執務を再開した。

    204 : 以下、名無しにか - 2015/03/01(日) 02:59:43.30 ID:ntc75ope0 (+95,+30,-85)

     「・・・」イラ

    荒潮 「ありがとうございます。失礼します」グイ

    朝潮 「しっ失礼します」

    加賀 「待って」

    朝潮 荒潮 「!?」ドキ

    加賀 「この件は朝潮と荒潮しか知らないわよね」

    荒潮 「・・・はい」

    加賀 「これからも口外しないことね、後提督の説得は期待しないことよ」

    荒潮 「はっはい」

    加賀 「下がっていいわ」

    朝潮 荒潮 「失礼します」


     朝潮の服を荒潮が強く引いた。


    ―――――
    ―――


    205 : ◆oUFoaE - 2015/03/01(日) 03:00:32.10 ID:ntc75ope0 (+87,+27,-3)
    今回投下分終了です。
    ご読了ありがとうございます。
    206 : 以下、名無しにか - 2015/03/01(日) 03:10:13.82 ID:n/ovY9Jfo (+32,+29,-21)
    乙ゥ
    轟沈させた責任言うなら相手が違いますぞ大和さん
    207 : 以下、名無しにか - 2015/03/01(日) 05:37:01.01 ID:uZtHTVJSO (+33,+29,-23)
    大和と提督が何やってるかも気になるし、スレタイにどう持っていくのかも気になるねぇ。
    208 : ◆oUFoaE - 2015/03/01(日) 21:56:49.29 ID:ntc75ope0 (+95,+29,-39)
    >>206
    お米ありがとうございます。アニメの大和さん可愛かったですね。

    >>207
    お米ありがとうございます。菱餅掘ってるんじゃないですかね。
    209 : 以下、名無しにか - 2015/03/02(月) 17:21:07.49 ID:zsrpK5/q0 (-25,+29,-44)
    乙です~。200レスとは思えない文章量と濃い内容に大満足。
    正妻と脳内誤変換したのが、読んだキッカケ "orz
    210 : 以下、名無しにか - 2015/03/02(月) 23:48:22.60 ID:GScU4FX6o (-25,+29,-26)
    制裁の内容に期待がかかる
    このフラストレーションのカタルシスでどんだけ感じさせてくれるのか

    轟沈を当たり前と考える提督は許しがたいね
    211 : 以下、名無しにか - 2015/03/03(火) 09:06:33.16 ID:GxFtxs0P0 (-25,+29,-34)
    面白い、続きが気になります

    熟練提督は滅多に轟沈無しか、結構ヌルヌルなのねこの世界
    212 : ◆oUFoaE - 2015/03/07(土) 12:23:16.97 ID:4nzYYJ1H0 (+28,+30,-208)
    >>209
    お米ありがとうございます。
    お楽しみいただき幸いです。
    お米が少ないから濃厚なのは仕方ないね。
    文章量はもっとスマートにしたいと個人的には思っています。
    題名は209様のお米通りの『朝潮「正妻」』が元祖でありました。
    内容はラブコメです。ここの朝潮と違って真面目馬鹿で私生活でも敬語使うような娘でした。
    気付いたらこんな内容になってしまい投下前に迷った末、今の題名になりました。

    >>210
    お米ありがとうございます。
    さぁ、どうなるでしょうか。そもそもこれで終ったのでしょうか。

    >>211
    お米ありがとうございます。
    ゲームに近い世界観で作ったつもりです。
    十分に注意すれば轟沈しない優しい世界です。表面は。
    213 : ◆oUFoaE - 2015/03/11(水) 01:09:58.88 ID:JUVxH4nq0 (+12,+27,-1)
    投下再開します
    214 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:11:41.74 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-184)


    ~朝潮と荒潮の部屋~


    荒潮 「最低だと思った?」


     先に部屋に入った朝潮の背中に、荒潮はドアを閉めながら話しかける。


    朝潮 「ううん」

    荒潮 「嘘でも嬉しいわ」

    朝潮 「嘘じゃない」


     万が一代わりに艦娘が出たとき一番苦しいのは満潮の死に誠実に向き合った荒潮だろうと朝潮は思った。


    荒潮 「編成権は提督が持ってるから、私からできるのはお願いだけ」

    荒潮 「元から無理だとわかっていたのよ」

    朝潮 「そう」

    荒潮 「ごめんなさい、朝潮ちゃんにこんなに気持ちを背負わせて」

    朝潮 「そんなことない」


     ドアの前で涙ぐむ荒潮を朝潮は抱きしめた。

     今の荒潮に朝潮型のお姉さんとしてみんなをまとめていた包容力はない。

     強く抱きしめると折れてしまいそうだった。

    215 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:12:36.76 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-96)

    荒潮 「大丈夫、ありがとう」

    朝潮 「・・・」


     そっと朝潮から離れた荒潮は席につき報告書の作成を始める。

     朝潮はその背中を見つめる。


    朝潮 「荒潮は」

    朝潮 「荒潮は艦娘になれたことを後悔してる?」

    荒潮 「・・・してないわ」

    荒潮 「朝潮にも会えた」

    朝潮 「うん」


     こういう時に満潮という子はどうなぐさめたり話したりしたのだろうか。

     朝潮はこの部屋が荒潮と自分を乗せたまま沈降していくかのような気がした。


    ―――――
    ―――


    216 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:13:34.23 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-180)


    ~埠頭~


     今日最後の出撃からの帰港。時間は夕暮れ。

     緊張を解かれた艦娘たちが安堵の表情で桟橋をカタカタ踏み下船する。

     その桟橋の近くで無表情な加賀が立っている。

     提督が艇内から現れ桟橋を渡る。


    加賀 「お疲れ様」

    提督 「どうした」

    加賀 「お話が」

    提督 「珍しいな」


     提督は加賀に構わず執務室の方向に向かうと加賀も並んで歩き出した。


    加賀 「戦果は?」

    提督 「ぼちぼちだ」

    加賀 「そう」

    提督 「加賀の艦隊と同じだ、全員浮き足立ってる」

    加賀 「私の艦隊が浮き足立ってる・・・ね」

    217 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:14:38.49 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-295)

    提督 「心当たりがあるか?」

    加賀 「反省会でもそういう話になったわ」

    提督 「ふむ」

    加賀 「提督の所見を聞かせてもらえる?」

    提督 「いいぞ」

    提督 「まず荒潮と朝潮の大破だ」

    提督 「あれは単に練度の低いあいつらが原因じゃない」

    提督 「朝潮や荒潮は最初対潜メインで攻撃してるから敵戦艦の動きまで把握できん」

    提督 「加賀も同様だ、制空権争いがあるからな」

    加賀 「そうね」

    提督 「あれは索敵値の高いほかの艦で敵の状況を確認し合うべきだった」

    提督 「落ち度があるなら艦隊の目なのにそれをおろそかにした・・・利根や筑摩になるだろうな」

    加賀 「彼女達にしては初歩的なミスよね」

    提督 「実際の反省会ではどういう話になった?」

    加賀 「提督が今言った通りの内容で会議が進んだわ」

    提督 「そうなるだろうな」

    提督 「他の艦隊も同じだ、冷静さがないからくだらんミスが多い」

    提督 「クズどもが・・・」

    加賀 「なるほどね」

    提督 「初日とは言え酷い」

    提督 「この戦果が続くようなことがあれば地方本部長官の椅子が遠のく・・・」


     イラついた様子で歩きが少し速くなる。

    218 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:15:51.40 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-279)

    加賀 「ところで、轟沈防止の件覚えてる?」

    提督 「覚えてる」

    加賀 「今日のような状況の建て直しもしないといけないから急いだ方がいいと思うの」

    提督 「何か考え付いたか?」

    加賀 「出撃中の損傷確認を提督だけでなく旗艦も行うというのはどうかしら?」

    提督 「私と旗艦でダブルチェックするのか」

    加賀 「えぇ」

    提督 「いいんじゃないか、それで浮ついた奴らも落ち着くだろう」

    加賀 「・・・」

    提督 「どうした?」

    加賀 「いえ、それと荒潮が第一艦隊から外れたいと言ってるわ」

    提督 「そんな話を上げるな」チッ

    加賀 「そう思って断ったのだけど」

    加賀 「大和さんが秘書艦なんだからどうにかしろと嫌味を言うものだから」

    提督 「大和には後で言っておく」

    提督 「轟沈より士気に影響するぞ、第一艦隊から外れることを許したら」

    加賀 「荒潮が希望していたことが漏れなければ文句はないでしょう?」

    提督 「それはな」

    提督 「低成績で外すという体裁が整うからな」

    加賀 「口止めしたから知っているのは恐らく朝潮と大和だけよ」

    219 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:16:46.50 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-203)

    提督 「外せと言うのか、加賀は」

    加賀 「判断の材料を用意しただけ」

    提督 「加賀の意見は?」

    加賀 「外さない方がいいと思うわ」

    提督 「そう言うだろうな」

    加賀 「編成に艦娘が口出しするなんてご法度よ」

    提督 「建前は別として、荒潮の士気は艦隊に影響しそうか?」

    加賀 「荒潮はかしこいから無理だってわかってるわ」

    提督 「だから?」

    加賀 「第一艦隊に大きな影響はないでしょうね」

    提督 「今日の大破を加味してもか?加賀」

    加賀 「そうよ」

    提督 「ふむ」

    加賀 「ただ、朝潮に影響するかもしれないわ」

    提督 「ありそうな話だな」

    加賀 「どうする積もり?」

    提督 「旗艦で運用して決める」

    加賀 「使えるなら第一艦隊継続ね」

    提督 「あぁ、荒潮の後継を考えておけ」

    220 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:19:26.33 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-273)

    加賀 「現時点での荒潮の評価は?」

    提督 「いいよ」

    加賀 「意外ね」

    提督 「おれ好みかと言われればNOだ、才能がない」

    提督 「艦娘の保有人員上限がなくなるくらい溢れて選べる事態になればすぐ解体という名の解雇だ」

    加賀 「でしょうね」

    提督 「ただ、孤児院育ちの艦娘に多いが、周囲の顔色をうかがう癖が強いだろ、荒潮は」

    加賀 「そうね」

    提督 「あの若さで珍しく視野が広い、戦況と艦隊の状況を加味して動けてる」

    提督 「今は交代させる気は一切ない」

    加賀 「そう・・・」


     提督が執務室の厚いドアを開け息を吐きながら椅子につく。加賀も自分の椅子に。

    221 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:20:14.48 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-225)

    提督 「ダブルチェックの話に戻そうか」

    加賀 「はい」

    提督 「戦闘に影響を出さずに簡単に実行できると思うか」

    加賀 「問題ないと思うわ」

    加賀 「面倒なのは旗艦になる艦娘は損傷資料の暗記が必要なことくらいね」

    加賀 「提督は気になることはあるかしら?」

    提督 「ないと言えば嘘になるか、元々何で提督だけで確認するかという話だ」

    加賀 「それもそうだけど」

    提督 「気にしなくていい。そんなやわなのはおらんだろ」

    加賀 「どうかしらね」

    提督 「構わん、ダブルチェックは採用だ」

    提督 「専用のマニュアルと報告書の策定を頼めるか?」

    加賀 「はい」

    提督 「上にも提出できるように丁寧にな」

    加賀 「そうね」

    提督 「第一艦隊の士気と集中力を最盛期まで戻すのが第一義だ」

    提督 「一緒に地方本部の疑いも晴れるなら尚いい」

    222 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:23:13.62 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-294)

    加賀 「そうそう、よく旗艦になる娘なら損傷具合は元からわかるでしょうけど朝潮は

    提督 「朝潮は明日から旗艦にするぞ」

    加賀 「は?」

    提督 「決断は早い方がいいからな」

    提督 「荒潮もそうだが、朝潮も結果を出せなければ一緒に第一艦隊から下ろす」

    加賀 「時間がなさ過ぎるわ」

    提督 「そうでもないだろ、艦隊の一人は荒潮にするから覚える必要があるのは四人だ」

    提督 「加賀も入れれば、加賀の損傷は覚えなくていいから三人だな」

    加賀 「数字の上ではね」

    加賀 「旗艦ならやることがそれだけじゃないことはわかるでしょ?」

    提督 「問題ない」

    提督 「損傷はおれも確認するし、旗艦といっても駆逐艦だからいつもより多めにおれがフォローする」

    加賀 「無茶よ」

    提督 「御託はいい」

    提督 「朝潮を呼べ、明日の出撃を打ち合わせる」

    加賀 「・・・」


     旗艦は提督と執務室で調整に当たる。


     加賀は無言で執務室を出て行く。

     加賀のこういう時は不満を感じている時と提督にはわかっている。


    加賀 「また悪い癖・・・」



    ―――――
    ―――


    223 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:25:07.38 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-115)


    ~朝潮と荒潮の部屋~

     提督が執務室に戻る少し前。


     朝潮は命令違反以上に出撃後の反省会議で責められることはなかった。

     むしろ、敵を見失った日向と利根と筑摩が責められた。

     合理的且つ冷静に戦局が見直された。

     それはそれで朝潮にはこたえた。


     荒潮はあれから諦めからか表面はいつも通りにもどっている。


    荒潮 「加賀さんたち予想以上に私たちを責めなかったわね~」

    朝潮 「そうね」

    荒潮 「何かご不満~?」

    朝潮 「いえ・・・」

    荒潮 「責められた方がスッキリするのにとか思ってる?」

    朝潮 「そんなこと・・・」

    224 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:25:54.65 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-142)

    荒潮 「引き摺らないことよ、精神状態って同調に影響するから」

    朝潮 「・・・そんなことできる?」

    荒潮 「私はできなかった」

    荒潮 「けど、この鎮守府の第一艦隊にいればいずれはそうなるわ~」

    荒潮 「精神的不感症にならないと辛すぎるの」

    朝潮 「みんなそうなるもの?」

    荒潮 「日向さんみたいな人もいるけど少数派よ」

    荒潮 「利根さん筑摩さん加賀さんみたいに余り他の人と交流を持たない方が気楽よ」

    朝潮 「そうかもしれないけど・・・」


     飄々と荒潮が話す内容は実際の荒潮と乖離していた。


    コンコン

    225 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:27:02.83 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-221)

    朝潮 荒潮 「はい」

    加賀 「私よ、いいかしら?」

    荒潮 「・・・」

    朝潮 「今あけま


    ガチャン


     朝潮の言葉を無視して加賀が部屋に入りドアを閉める。

     荒潮は加賀に椅子をすすめる。


    荒潮 「どうぞ」

    加賀 「ありがとう」

    荒潮 「どうされました?」

    加賀 「荒潮、あなたの第一艦隊からの離脱は却下されました」

    荒潮 「はい」

    朝潮 (そんな・・・)

    加賀 「提督は朝潮と荒潮に期待しています」

    加賀 「付いては旗艦にして鍛える話を進めるそうです」

    朝潮 荒潮 「はい」


     旗艦としての成績次第とは加賀は言わない。

     それは加賀の配慮だったものの朝潮と荒潮を絶望させた。

     加賀に椅子を譲り立っていた荒潮は近くにある二段ベッドの柱を強く握っている。

    226 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:27:57.58 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-123)

    加賀 「先に旗艦になるのは朝潮、あなたよ」

    朝潮 「了解しました」

    加賀 「旗艦になるのは急だけど明日からよ」

    加賀 「説明と打ち合わせがあるからすぐ執務室に来るように」

    朝潮 「すぐですか?」

    加賀 「二回も言わせないで」

    朝潮 「はい、すぐに!」


     手早く準備を済ませると加賀を見つめる朝潮。


    加賀 「行くのはあなただけよ」

    朝潮 「え?」


     加賀はそう言うと唖然とする朝潮を置いて次に旗艦となる荒潮を連れてどこかに行った。


    ―――――
    ―――


    227 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:29:20.15 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-93)


    ~執務室~



    提督 「待ってたぞ、朝潮」

    朝潮 「遅れて申し訳ありません司令官」


     朝潮は執務机の前に立って敬礼する。


    提督 「加賀の椅子に座るといい」

    朝潮 「はい」


     秘書艦用のキャスター付きの一般的な事務椅子は誰でも使えるように高さが調整できた。

     机が使えるように加賀が使ってた時より椅子の高さを上げる。

     朝潮は足が床から離れ少しふらふらする。

    228 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:30:32.92 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,+0)

    提督 「旗艦になることは加賀が伝えたな、何をするかわかるか」

    朝潮 「教科書上の知識は一通り」

    提督 「よろしい」

    提督 「教科書と違う点がある」

    提督 「旗艦にはなってもらうだけで秘書艦は変わらず加賀だから書類仕事は殆どしなくていい」

    提督 「だから朝潮がやることは戦闘海域での指揮と戦闘の総報告書をまとめることだけだ」

    朝潮 「なるほど」メモメモ

    提督 「実際の戦闘はおれが殆ど指示をするし、総報告書も加賀が手伝う」

    提督 「難しいことはないから安心しろ」

    朝潮 「はい」

    提督 「後はこれを覚えろ」


     書類が投げられる。


    朝潮 「これは?」

    提督 「明日の出撃で朝潮が指揮する艦隊のメンバーの損傷表だ」

    朝潮 「???」

    提督 「明日からより安全な進軍のため損傷をダブルチェックすることになった」

    朝潮 「ダブルチェック?ですか?」

    提督 「おれがする損傷の確認を旗艦の朝潮にもしてもらう」

    朝潮 「なるほど二重に確認ですか、責任重大ですね」

    提督 「これも安心しろ、おれが間違うことはない」

    229 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:32:11.51 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,+0)

     朝潮は損傷表を眺める。

     写真には特徴的な損傷にマークがされていてわかりやすくなっていた。


    朝潮 「このマークは提督が?」

    提督 「そうだ」

    朝潮 「覚えやすくて助かります」

    提督 「自分のためだ、礼はいい」

    朝潮 「他に覚える方法等はありますでしょうか?」

    提督 「ない」

    朝潮 「提督は苦労しなかったんですか?」


     200人超の損傷を覚える提督に対する純粋な好奇心だった。


    提督 「轟沈が多くて人の出入りが多いから大変かってことか?」

    朝潮 「いえ、そんな積もりは・・・」

    提督 「朝潮がどういう積もりでも気にはせん」

    提督 「おれは苦労しなかったよ」

    提督 「特徴的な損傷は艤装の元である艦の轟沈時の損傷に符合する」

    提督 「それさえ覚えておけば応用がきく、後は個人個人の特徴を覚えるだけだからな」

    朝潮 「なるほど」

    提督 「今回は急だしおれもチェックする、だから気負うことはない」

    朝潮 「ありがとうございます」


     暫くボードの出撃表と損傷表を見比べていると自分の写真が目に入った。

     あの場面がフラッシュバックする。吐き気がした。

     朝潮が逃げるように顔を上げると提督は何食わぬ顔で各艦隊の報告書を確認している。

    230 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:33:12.92 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-184)

     朝潮の提督への憎しみはそのまま不信に繋がり、

     荒潮を平気で沈める提督の様子が頭でぐるぐるする。


    朝潮 「質問いいですか?」

    提督 「なんだ?」

    朝潮 「荒潮を第一艦隊から外すことは絶対にできないのでしょうか?」

    提督 「・・・その話か」

    朝潮 「・・・」

    提督 「加賀にも言ったが、今回の旗艦出撃の成績次第だ」

    朝潮 「成績次第?」

    提督 「あぁ、悪ければ荒潮の意思と関係なく外す」

    提督 「ただ、現時点で経験のある荒潮を抜くことは考えていない」

    朝潮 「なら旗艦のときに失敗をすれば」

    提督 「朝潮が荒潮ならできるか?そんなこと」

    朝潮 「・・・」


     小中破から轟沈させるような深海棲艦がいる海域だ。

     自分の命は勿論、仲間の安全を考えても不可能だ。

    231 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:35:38.96 ID:JUVxH4nq0 (+93,+30,+0)

    提督 「その様子だとこのことは加賀が伝えなかったようだな」

    提督 「いたずらに動揺させるよりはいい、荒潮には話すな」

    朝潮 「はい」

    朝潮 「成績次第とのことですが、現時点で提督の荒潮に対する評価はどうなのでしょうか」

    提督 「加賀にも同じことを聞かれたな」

    提督 「おれの荒潮への評価は低くない」

    提督 「朝潮お前はそこそこ才能あるよ、荒潮にはそれさえない」

    提督 「が、周囲の状況に対応して動ける賢さがあるから大きな失敗をしない」

    提督 「そこを評価してる」

    朝潮 「じゃあこのまま問題がなければ・・・」

    提督 「下げない」

    朝潮 「どうにかならなりませんか」

    提督 「朝潮は外して欲しいのか、何でだ?」

    朝潮 「荒潮は限界です、満潮の轟沈に今日の大破だって

    提督 「荒潮だけと思うなよ」

    提督 「金剛型は金剛と榛名が轟沈しても比叡と霧島は第一艦隊で活躍してる」

    朝潮 「大破して轟沈しかけたんですよ!」

    提督 「大袈裟だ、馬鹿らしい」

    提督 「駆逐艦ならよくあることだ」

    提督 「朝潮は初めての仲間だからと気にしすぎじゃないか」

    朝潮 「そんなこと・・・ありません」

    提督 「初めてというだけで特別になるからな」


     初めてという言葉が朝潮の耳に嫌に響く。

     鎮守府初めての友達荒潮。朝潮の初めてを奪った提督。

     提督のにやついた顔はそれを同列に語るような下劣な感を朝潮に与えた。

     違う。

    232 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:36:34.15 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-88)

    朝潮 「第一艦隊になりたい駆逐艦なら他にいます」

    朝潮 「やる気のある艦娘が第一艦隊の方がいいのではないでしょうか」

    提督 「編成権に口出しとはお前何様の積もりだ、朝潮」

    朝潮 「っ・・・、すいません」


     無茶を言っているのは朝潮にもわかっているのだ。


     編成権は提督の牙城だ。

     力関係が逆転した鎮守府世界で唯一の提督の艦娘への強権だ。

     そして、国を守る鎮守府で最重要の機能だ。

     鎮守府を統制し、深海棲艦に勝利するために。


     それでも。

    233 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:38:28.92 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-243)

    提督 「不満そうな顔だな」

    提督 「これで荒潮を第一艦隊から外して代わりの練度が低い艦娘が轟沈したらどうなる?」

    提督 「おれが上からどやされるぞ、ただでさえ轟沈が多くて目をつけられているんだ」

    朝潮 「・・・」

    提督 「上からどやされるからじゃない」

    提督 「こういう危険な海域を任されているから少しでも轟沈をなくしたい、わかるか?」

    朝潮 「はい・・・」

    提督 「そもそも何で荒潮は外れたがってる?」

    朝潮 「加賀さんから聞いてないんですか?」

    提督 「加賀には言わないよう命じた、聞いても仕方ないからな」

    朝潮 「・・・」

    提督 「加賀にあたるなよ」

    提督 「で、何だ?」

    朝潮 「荒潮は轟沈が怖いそうです」

    提督 「そうか」

    提督 「そのままの気持ちで出撃したら本当に轟沈するな」

    朝潮 「・・・」キッ

    提督 「にらむな、事実を言っただけだろ」ハァ

    朝潮 「荒潮が轟沈してもいいとお考えですか?」

    提督 「いついいって言った?!」

    朝潮 「いえ・・・」ビク

    234 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:39:18.55 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-182)

    提督 「轟沈を減らすため合理的に考えた結果だ」

    提督 「やる気のある娘より練度が高い荒潮の方が生存可能性は高い」

    朝潮 「そうかもしれませんけど、今の荒潮は!!」

    提督 「轟沈が怖ければ注意するだろ」

    朝潮 「そんな」

    提督 「さっきから外せ外せと偉くなったなもんだな」

    提督 「荒潮が轟沈するのは嫌、やる気がある娘だったら轟沈してもいいってことか?」

    朝潮 「そんなことは・・・」

    提督 「そう言ってるのと変わらん」

    朝潮 「・・・」


     朝潮は提督に口で勝つのが難しいと自覚する。

     何か言わないとという思いだけ走り提督を見つめるも言葉は出ない。

     提督が口を開く。

    235 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:49:10.91 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,+0)

    提督 「朝潮、お前にとって正義とは何だ」

    朝潮 「正義ですか?」

    提督 「そうだ」

    朝潮 「正義・・・」

    提督 「命令違反をして荒潮を守ることか?」

    提督 「おれの編成に文句をたれることか?」

    朝潮 「・・・」

    提督 「迷うことはない、お前の大好きな教科書には何て書いてある」

    朝潮 「国と一般市民を守るため、ですか」

    提督 「そうだ」

    朝潮 「何で今

    提督 「黙っておれの質問に答えろ」

    提督 「そのために荒潮を外すことは必要か?」

    朝潮 「・・・」

    提督 「速く答えろ、朝潮」

    朝潮 「必要ではないです・・・」

    提督 「だったら必要なことは何だ」

    朝潮 「・・・」

    提督 「答えられないなら教えてやる」

    提督 「必要なことは深海棲艦をより多く殺すことだ」

    提督 「未だ深海棲艦が跋扈する国土を回復し、沿岸の市民を守り、海運を守って経済を守る」

    提督 「通常兵器で傷付けられない深海棲艦を傷付けられるのは艦娘だけなんだ」

    提督 「艦娘が守らなくて誰が守る」

    提督 「海にのさばる深海棲艦を、その艦隊群の中枢を、より多く叩け」

    提督 「黙って迷う暇があったら深海棲艦を皆殺しにすることを考えろ」

    提督 「違うか?」

    236 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:50:58.19 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-211)

    朝潮 「その通りかもしれませんが・・・けど、今の荒潮は精神的に不安定で・・・」

    朝潮 「轟沈の危険もあるし戦果だって期待できません」

    朝潮 「艦娘の所属上限がある理由が艦娘適合者の不足である現状」

    朝潮 「荒潮に轟沈の危険が見えるなら避けるべきできはないでしょうか」

    提督 「偉そうにわかりきった講釈をおれにたれるな」

    朝潮 「そんな積もりは」

    提督 「そう相手に聞こえたらそうなんだよ」

    提督 「ここは軍隊でおれはお前より偉い、逆らうな」

    提督 「お前は艦娘をクラブ活動とでも間違えてるのか?」

    朝潮 「違います」

    提督 「艦娘には責任があるんだ」

    提督 「力を持っているから力のないものを守る責任がな」

    朝潮 「・・・」

    提督 「お前は深海棲艦を狩ることだけ考えればいい」

    提督 「でないと荒潮と一緒に轟沈するぞ」

    237 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:52:05.03 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-252)

    朝潮 「荒潮の轟沈を軽々しく口にしないでください」

    提督 「少しでも朝潮の迷いがなくなればという優しさだったが無駄だったようだな」ハッ

    提督 「まだ荒潮を第一艦隊から外して欲しいのか?」

    朝潮 「はい?」

    提督 「どうなんだ?」

    朝潮 「外してほしいです」

    朝潮 「このままではいずれ荒潮は轟沈します、しなくても心が・・・」

    提督 「そのために何でもできるか?」

    朝潮 「?」

    提督 「おれなら外せる、編成権を使ってな」


     突然の甘い言葉に警戒する朝潮は提督を見て言葉を発しない。

     そんな朝潮に痺れを切らしたように提督は机の引き出しを漁る。

     その引き出しから保湿クリームのような小振りのチューブが取り出された。

    238 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:55:40.40 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-170)

    提督 「あったあった」

    朝潮 「何ですか?それは」

    提督 「ほれ」


     提督から投げられたチューブを朝潮が受け取る。

     チューブの表面にある名前や成分表示は英語のようなもので書かれている。


    提督 「わかるか?」

    朝潮 「・・・」ジー

    提督 「当てられたら荒潮を第一艦隊から外してやる」

    朝潮 「?」

    朝潮 「本当ですか!」

    提督 「荒潮の旗艦が終ってからになるがな」

    朝潮 「あ、ありがとうございます」

    提督 「回答できる回数は3回まで、どうだやるか?」

    朝潮 「やらせてください!」

    提督 「じゃ、始めだ」


     上下左右に持ち替えて眺める。

     チューブの薬品となると朝潮にはそんなに思い浮かばない。

     そんな甘い話があるわけがないことも。

    239 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:56:45.28 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-277)

    朝潮 「保湿クリームですか?」

    提督 「違う、一回目だ」

    提督 「塗って湿度を保つってのはあってるけどな」

    朝潮 「ピンクだから消炎剤ではないでしょうし・・・う~ん」

    朝潮 「美容クリームでしょうか?」

    提督 「違う、二回目」

    提督 「悪くない推理だ、女性を魅力的に見せるという点は間違ってない」

    朝潮 「???af・・・di・・・?」


     表面に書かれた英語はわからない。

     可愛い容器、半分以上使われ潰れたチューブ、提督が持っていること、推理材料は殆どない。

     チューブの上下左右を触る朝潮の白魚のような指に提督の視線が絡みついていた。


    朝潮 「艦娘からの没収品?」

    朝潮 「麻薬ですか・・・?」

    提督 「お前はおれを何だと思ってるんだ」

    提督 「中毒性はあるかもしれんが、ヨーロッパじゃゴールデンタイムにCMしてる合法な商品だぞ」

    朝潮 (中毒性・・・?)

    提督 「今ので三回目だ、残念だったな」

    朝潮 「そんな」

    提督 「冗談だよ、こんなクイズで編成をどうこうするわけないだろ」ハッハッハ

    朝潮 「そ、そうですよね」


     編成権をおもちゃにしなかった提督への安堵と、荒潮への申し訳なさで朝潮は少し戸惑う。

    240 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 01:58:36.44 ID:JUVxH4nq0 (+95,+30,-229)

    朝潮 「これ・・・消炎剤だったんでしょうか?」

    提督 「違う」

    朝潮 「肩こりを解消するCMのやつですか?」

    提督 「知ってるか?肩こりするのは日本人だけなんだそうだ」

    朝潮 「んん・・・」

    提督 「そうだな。どうだ、ここからはいくらでも回答していいぞ」

    提督 「景品はないけどな」


     CMをうつような商品なら触れたことはありそうなのに、いくら見てもぴんと来ない。

     純粋な興味がわいてこの製品が何なのか当てたいと朝潮は思った。


    朝潮 「開けてにおいをかいでも?」

    提督 「いいぞ」


     首をかしげる朝潮を見る提督の目はあからさまに火を帯び口の端が吊りあがっている。

     朝潮は不振そうに提督を見ながら好奇心のままチューブのキャップを外してかいだ。


    朝潮 「くどいにおいですね」


     南国の花のような、おりもののような臭いがした。


    提督 「媚薬だからなぁ」ハッハッハ


     朝潮はあらん限り目を見開き提督を見た。

     提督は愉快そうに笑っている。



    ―――――
    ―――


    241 : ◆oUFoaE - 2015/03/11(水) 01:59:22.00 ID:JUVxH4nq0 (+86,+26,-3)
    本日投下分終了です。
    ご読了ありがとうございます。
    242 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 03:14:21.88 ID:lN+PFd+WO (+21,+29,-13)

    次回は朝潮ちゃんと媚薬セックスかな?
    股間が熱くなるな
    243 : 以下、名無しにか - 2015/03/11(水) 18:00:24.41 ID:xF9sU2v3O (+28,+30,-28)

    朝潮ちゃん可愛いよ朝潮ちゃん
    244 : ◆oUFoaE - 2015/03/11(水) 23:59:02.29 ID:JUVxH4nq0 (+96,+30,-93)
    >>242
    お米ありがとうございます。
    ヨーロッパのゴールデンタイムにCMやってることで有名な媚薬は
    実際はチューブ型でなくタブレットの経口型だったりします。

    >>243
    お米ありがとうございます。
    私生活でも敬語を使う馬鹿かわいい朝潮もいいですが、
    曲げられない自分を持って不器用に生きる朝潮も可愛いですよね。
    245 : ◆oUFoaE - 2015/03/12(木) 00:01:40.44 ID:/fPKOeOS0 (+12,+27,-1)
    投下再開します
    246 : 以下、名無しにか - 2015/03/12(木) 00:07:23.34 ID:/fPKOeOS0 (+95,+30,-189)


    提督 「それをつけて30分言うこと聞いたら荒潮を第一艦隊から外してやる」

    提督 「どうする?」


     提督の顔は満足そうに笑っている。さも予定調和だと言わんばかりに。

     先ほどの会話で何でもすると朝潮が言っても同じことになっていたのだろう。


     今の朝潮を支えるにはキャスター付きの椅子では不安定すぎる。


    提督 「お前の考えなら荒潮はこのまま出撃を続けると轟沈しそうなんだよな?」

    提督 「余程お前はおれを無能だと思っているようだな」

    提督 「おれはそうは思ってはないんだがなぁ、どうする?」

    提督 「もう初めてじゃないんだ、失うものはない」

    提督 「30分言うことを聞くだけだ」

    提督 「荒潮の命とどっちをとるんだ?」


     朝潮は迷い頭では自分の貞操より荒潮の命が大事だと考えていても言葉が出なかった。

     提督に刻まれた恐怖と恨みが混ざり合ったどろどろしたものが心に渦巻き動けない。

    247 : 以下、名無しにか - 2015/03/12(木) 00:09:44.22 ID:/fPKOeOS0 (+95,+30,-249)

    提督 「ならこの話はなしにするか」

    朝潮 「え?」

    提督 「何だ?」


     脅しをすぐ取り下げた提督の気持ちが朝潮にはわからなかった。

     良心か気紛れか。

     提督が指で机をコツコツ叩く。


    朝潮 「待ってください」

    朝潮 「他の条件になりませんか」

    提督 「おれが折角出してやった条件が気に食わないのか」

    朝潮 「お願いします」

    提督 「別におれはしたくなかったんだ」

    提督 「けど、朝潮がどうしてもというから親切で提案してやっただけだ」ハッ

    提督 「この条件がダメならこの話はなしだ」

    朝潮 「そんな・・・」

    提督 「明日からの荒潮の出撃が楽しみだな」ニコ

    朝潮 「っ・・・」


     「荒潮を轟沈させかねない無能提督と侮るおれに服従しろ」と提督の目が朝潮にささやきかける。


    朝潮 (最初に襲われた事件からこの男は何も変わってなんかない)


     朝潮は見たくもない提督の本質を垣間見た気がした。

     その本質は異質で朝潮には理解できなかった。

     朝潮に今わかるのは提督に従えば荒潮の命が助かるということだけであった。

    248 : 以下、名無しにか - 2015/03/12(木) 00:11:16.38 ID:/fPKOeOS0 (+95,+30,-185)

    朝潮 「しますから」

    提督 「何か言ったか、声が小さくて聞こえなかったな」

    朝潮 「しますから!!」

    提督 「あぁ?何か勘違いしてないか?!」バン

    朝潮 「」ビク


     提督が執務机を叩く。

     一瞬浮いた灰皿がカラカラ音を立てながら着地する。


    提督 「しますぅ?じゃねぇよ!!!」

    朝潮 「すっすいません」ビク

    提督 「すいませんじぇねぇ!!お願いなら、頼み方があんだろうが!!」ブン

    朝潮 「ヒッ」


     提督が瞬間灰皿を朝潮に投げつけた。

     灰皿は灰を撒き散らしながら飛び朝潮の近くをかすめ壁にぶつかった。


    カーン


     金属の衝突による高音は若い朝潮の耳に痛いほど響き脳を揺らす。

     少し前までの朝潮が提督の気紛れに感じていた不安が見事に恐怖にすり替わった。

    249 : 以下、名無しにか - 2015/03/12(木) 00:13:33.36 ID:/fPKOeOS0 (+95,+30,-267)

    朝潮 「」ケホ

    朝潮 「や・・・やらせてください・・お願いします」

    提督 「誠意が感じられんな」


     提督が上げた手に朝潮がびくりと体を揺らすと提督は人差し指で床を指す。


    提督 「土下座してお願いしろ」

    朝潮 「え?」

    提督 「土・下・座」


     朝潮は怯えていた。

     突きつけられた理解できない提督の命令に、その人格に。


    朝潮 「します。します・・・から。。」


     朝潮は何のためらいもなく椅子から離れる。

     提督は満足そうにその様子を眺めている。


    朝潮 「第一艦隊から荒潮をちゃんと外すことを約束していただけますか?」

    提督 「おれがぐだぐだ先延ばしするような男に見えるのか」イラ

    朝潮 「すいません」

    提督 「さっき言ったとおり荒潮を旗艦にした後に外す、約束する」

    提督 「後お前は言わないが外した後いつまで外すかも約束しよう」

    提督 「艦種が変わるか荒潮の自信が付くまでは第一艦隊にしない」

    提督 「これでいいか?」

    朝潮 「あ・ありがとう・・・ござい・・ます」


     提督が朝潮を手懐けるためにやった一瞬の優しさに飛びつく形で朝潮は了承した。

     その条件はそこまで好条件であったか。

    250 : 以下、名無しにか - 2015/03/12(木) 00:14:36.83 ID:/fPKOeOS0 (+95,+30,-175)

    提督 「これ以上生意気ならその時点で止めるからな」

    朝潮 「はい」

    提督 「やるんなら早く土下座しろ!!」ドン

    朝潮 「ひっ」ビク


     朝潮は提督の座る椅子の横に近付き無言で床に膝をつく。

     両手を付き頭を下げると視界がふさがり安心できた。


    提督 「額を床につけてお願いしろ」

    朝潮 「はい」


     額にひんやりした床のタイルの感触がつたわる。

     少し冷えた頭は朝潮の情けなさを容赦なく自身に突きつける。


    提督 「お願いをしろと言ったんだ。日本語がわからないのか?!」

    朝潮 「」ビク

    朝潮 「30分提督の言うことを聞きます!荒潮を助けてください!!」

    提督 「いいぞ」


     見上げると提督がこの様子を携帯で撮影していた。

     今その映像の使い道は考えたくなかった。

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