私的良スレ書庫
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元スレ朝潮「制裁」
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朝潮が襲われた夜、月明かりも遮断する厚い雲が空を覆っていた。
広がる深い闇は光を吸う。懐中電灯の2m先は何もわからない。
提督 「おっ」
大和 「誰かいますね」
一つの懐中電灯を頼りに進む二人の行く手に指揮作戦艇が見える。
ゆらいでともる指揮作戦艇の光は乗っているものがいることを伝えていた。
提督 「おい、誰だ!こんな時間に!」
大和 「・・・」
加賀 「あら、提督・・・と大和さんもいましたか」
大和 「こんばんは」ニコニコ
加賀 「こんばんは」ニコニコ
提督 「おい、加賀何してた?」
加賀 「提督、朝潮を襲ったでしょう?」キッ
提督 「何のことだ?」シラ
大和 「・・・」ジト
加賀 「あなたのものと血が混ざった汚れが甲板に残ってたわ」
提督 「よくこんな暗い中で探し出したな、さすが加賀」
加賀 「はぐらかさないで」
加賀 「言ったわよね、朝潮を次に襲ったら骨の一本や二本じゃ済まないって」
加賀 「・・・死ぬわよ」
提督 「驚かすなよ」ハ
加賀 「私が冗談を言わないことはよくご存知よね」
加賀 「あれから朝潮を偵察機で監視していたけど、言動が危ないわ」
加賀 「いっそこちらから殺す?」
提督 「めったなことを言うな!大事な戦力だぞ!!」
加賀 「大事なら!!・・・襲わないでよ!!!」
提督 「おい、加賀お前おかしいぞ」
加賀 「おかしいのは提督でしょう」
大和 「提督・・・」
提督 「わかった。加賀、続きは後でだ」
加賀 「また大和と舟遊びですか?私があなたの彼女なんですよね」
提督 「そういう拘束はしないって約束だろ」
加賀 「・・・指揮作戦艇は綺麗にして返してくださいよ」フン
加賀は船から降り、振り返らず鎮守府に向かった。
指揮作戦艇は真っ暗な海を沖へ向かう。
提督 「大和何してるんだ?」
大和 「いえ・・・発信機のようなものが載っているといささか不味いかなぁと」ガサゴソ
提督 「心配性だな、この雲があるから場所がわかっても何も確認できんだろ」
提督 「そんなことより、加賀の件をどうにか進めろ」
大和 (狸が・・・)
提督 「聞こえてるか?」
大和 「すいません、探すのに夢中になっちゃって、何でしょう?」
提督 「加賀同伴でも大丈夫なように調整しろ」
提督 「いつも大和だけという訳にもいかんからな、何かあった時のためにもな」
大和 「あのぅ、こういうことは余り人を増やすのは得策でないかと思うのだけれど」
提督 「どうにかしろ、でなければ加賀に勝て」
提督は鍛錬を建前に第一艦隊所属艦を単艦同士で演習させていた。
この演習で大和は加賀に負けた。
大和 「それはそうなんだけれど・・・」
提督は歪んでいた。
加賀の他に所属する強力な艦もことごとく手篭めにしていた。
提督は、強い女を自分に屈服させ自分の与える快楽に酔わせることに何よりも興奮した。
そんな歪んだ性癖が問題化しないのには理由がある。
優れた指揮、評価を行う立場を巧みに利用、行為が上手いということ、これらもその一つだろう。
何より一番の原因は、鎮守府最強の艦娘、今は加賀を提督のものとしていたことだ。
付き合うことで言うことを聞かせ、他の艦娘達に対する監視と抑止力としていた。
一般的な鎮守府の提督が艦娘達の顔を伺い勝ちなのに比べると、尊大に指揮を行うこの提督はかなり異質だ。
誰も逆らう艦娘はいなかった。
提督 「色々な女とやっているが定期的に舟遊びするのは大和だけだ」
提督 「加賀の手前このままだと変な憶測を生む、調整を急がせろ」
大和 「はい、わかりました・・・」
提督 「強く言い過ぎたな」
大和 「いえ、変に勘ぐられないようにするためなら・・・そうだ、話は変わるけど提督」
提督 「何だ」
大和 「加賀さんは朝潮に対して何か因縁が? 攻撃的過ぎる気がしませんか?」
提督 「嫉妬しているんだろ」
大和 「あの加賀さんが?」
提督 「将来有望だからな、朝潮は」
大和 「提督が加賀さんから乗り換えると?」
提督 「朝潮の適性は元々空母にあるんだ」
提督 「年齢的にまず駆逐艦ということになってるが、子供の成長は速いからな」
大和 「加賀さんが交代ですか・・・」
提督 「可能性の話だ、絶対にない」
提督 「加賀は轟沈しないからな」
大和 「でしょうか・・・」
提督 「子供の可能性なんてものはよく大人の目を騙くらかすもんだ」
提督 「可能性なら誰にでもある、それを手にして加賀やお前のように大成するのは一握りもいない」
大和 「はぁ・・・」
提督 「大和お前も本当に美しい、愛してるぞ」
大和 「もう・・止めてください・・・終ってから、あ・・・」
大和がもたれかかった固定机は朝潮の時も使った机だ。
机には発信機もなかったが、加賀が見つけたはずの汚れも掃除された跡もなかった。
―――――
―――
大和と提督の夜の出航の少し前。。。
トイレに声だけが響く。
朝潮 「おぉおぉぇぇぇ」
吐きつくしても嘔吐感が止まらない。
少々の欠損なら治る強力な治癒能力でも、元々再生しない処女膜は治らないし、精神を癒すこともなかった。
荒潮 「朝潮大丈夫?」
朝潮 「荒潮、ごめん落ち着いたら部屋に戻るから・・・帰って」
荒潮 「そんな・・・」
朝潮 「お願い」
後ろで背中をさすってくれる荒潮の苦しそうな顔を見ていると朝潮は更に辛くなった。
朝潮 「お願い」
荒潮 「・・・わかったわ」
個室から出て行く荒潮。
少しして個室から朝潮が顔を出すとトイレの入り口で荒潮が待っていた。
朝潮 「恥ずかしいの、帰って、ね?」
荒潮 「わかったわぁ」ハァ
とぼとぼ歩く荒潮の後ろ姿を見て個室に戻りまた吐く。
朝潮 「えぇぇ・・・はぁはぁ」
朝潮 (あんな最低な奴に、あんな最低な奴に、あんな最低な奴に、、、)
今日の船上でのことが頭でぐるぐるする。
卑劣で最悪な提督に無理やり犯され屈した事実は
自身が提督のような最低人間以下なんだという屈辱的な想いを朝潮に抱かせた。
朝潮の細胞は屈辱にまみれ生きる意味を見失い緩やかに死滅を始め、
一部の臓器が体から脱出しようともがき嘔吐感となっていた。
朝潮 「殺してやる」
便器と同じ冷たい感触に我を取り戻すと執務室のドアノブを握っていた。
暗い廊下にドアの下から明かりが漏れている。
ドアノブをゆっくりとまわす。
ドア 「キィィィィー」
朝潮が音に驚き勢いよくドアを開けると中には加賀しかいなかった。
加賀 「誰?」
加賀は提督の執務机とドアを背に棚の書類を乱雑に下ろして何かを探していたかのようだ。
来訪者の確認にゆっくりと振り向く。
そこに加賀は走り寄る朝潮を認めた。
今朝任務を言い渡す時に見た、幼さを残す可愛らしい顔はどこに行ったのか、
綺麗な黒髪は乱れ、顔は不自然なほど青白く、強い力を持った目はそのままに兎のように真っ赤になり、
幽鬼もかくやという仕上がりになっていた。
加賀 (このまま殴りかかる気かしら)
加賀は至って冷静だ。
朝潮 「このぉぉぉ!!」
涙で声は枯れていた。
今加賀と自分の間にある執務机のように、加賀は提督までの障害物だ。殺さねばならない。
朝潮は執務机に足をかけ乗り、そのまま膝蹴りをしようかという体勢に移る。
瞬間、加賀の右手が朝潮の足元を払い、朝潮は体勢を崩したまま宙に浮いた。
次の瞬間、加賀は浮いた朝潮に右手を振り下ろし、朝潮の体は勢いよく執務机に叩きつけられた。
机に並べられていた電話、書類、筆記具もろもろが床に散らばる。
朝潮 「カハッ!!はっはっはっ」
数十メール落下したような衝撃が朝潮を襲い肺が自由に動かない。
浅い呼吸しかできず苦しむ朝潮を加賀が見下ろす。
加賀 「何してるの?」
朝潮 「はっはっはっ」
加賀 「無作法よ、机から降りなさい」
加賀はごみを払うように無造作に朝潮を押し、朝潮を床に転がした。
そのまま、朝潮を無視して散らばった机の上にあったものを拾い元あった位置に並べていく。
朝潮 「ふーふーふー」
そうこうしている間に呼吸は落ち着いてきた。
そして、脳に酸素が送られた朝潮には更なる絶望と無力感が襲ってきていた。
朝潮 「何で・・・何で・・・」ポロポロ
枯れたかと思っていた涙が床に落ちる。
床に倒れているのではなく、どうしようもない壁にぶち当たっている感覚。
立ち上がろうと両の手に力を入れようとしても、床から離れる力さえこめることができない。
加賀 「起きなさい」
加賀が朝潮を引き摺りあげ何時の間にか近くに移動させた椅子に投げ座らせる。
加賀 「大方襲われて絶望、提督を殺すことを希望に乗り込んで来たってところかしら・・・」
加賀 「本当に頭がお花畑ね」
朝潮は無言で加賀を睨みつける。
加賀 「昨日も言ったけど、あなたの独りよがりで周りはいい迷惑よ」
加賀 「お姉さん、孤児院にいるのよね? 昨日も言ったけど、孤児院立ち行かなくなるわよ」
加賀は何事もなかったかのように、朝潮の前で執務机に腰掛けて書類をぱらぱら眺めている。
朝潮 「うるさい!!提督のような男のせいで姉が壊れたのよ!!!」
朝潮は今でもわからない。日々何かに怯えて過ごす壊れた姉は幸せなのか。
加賀 「ふ~ん、それくらいで壊れたの? 現実逃避もそこまで行くと凄いわね」
朝潮 「加賀あああああああ!!!!!」
朝潮の勢いよく立ち上がり振り上げた手はおろされることなく、加賀の中段前蹴りが命中して朝潮は椅子に沈んだ。
朝潮 「ぐっ・・・」
加賀 「甘えるんじゃないわよ!!!!」
朝潮 「はぁ!?」
加賀 「お姉さんは治らないって決まっているの?孤児院にもお世話になったでしょ!」
加賀 「勝手に何にでもすぐ絶望して予防線張って傷付かないようにしてるのはあんたでしょ!!!」
朝潮 「・・・」
加賀 「このことはなかったことにするわ、提督にも言わない。下がっていいわ」
加賀 「廊下の荒潮と一緒に部屋に戻りなさい」
開け放たれたドアを見ると廊下で荒潮が先ほどと同じ心配そうな目で朝潮と加賀を眺めていた。
加賀 「あなたが心配をかけた仲間よ、これからは大事にすることね」
朝潮 「・・・はい」
荒潮 「加賀先輩、おやすみなさい」
加賀 「えぇ、おやすみ。明日は言ってある通り、第一艦隊での出撃があるから宜しくお願いね」
荒潮 「は~い、宜しくお願いします。では失礼します~」
荒潮が朝潮の手を引いて退室する。
加賀 「無駄に時間を食ったわ・・・」
加賀は棚の物色を再開する。水平線に指揮作戦艇が現れないか警戒しながら。
―――――
―――
暗くて寒い廊下を歩く。真っ暗な窓から波音だけが入ってくる。
荒潮 「私慌てちゃって~」フフ
朝潮 「ごめんなさい」
荒潮 「大潮ちゃんと霞ちゃんにも探すの手伝ってもらってたんだ~」ウフフ
朝潮 「ごめんなさい」
荒潮 「もう・・・しない?」マガオ
朝潮 「・・・」
朝潮にはわからなかった。冷却された頭で考えても提督が許せないことは確かだった。
朝潮 (けど・・・)
朝潮 「もう荒潮たちを心配はさせるようなことはしない」
荒潮 「そう」ニコ
そこからは何も話さなかった。
部屋に戻ると霞が心配そうに待機していた。
霞は開いたドアに駆け寄り朝潮を確認するとビンタした。
霞 「いい加減にしなさいよね!」
朝潮 「ごめんなさい」
霞 「はぁ・・・・・張り合いないわね。大潮は私が探すから!おやすみ!」プンスコ
霞は荒潮と朝潮をかきわけ暗い廊下に消えた。
朝潮達は静かに蒲団にもぐりこむ。
荒潮 「元々この部屋は私と・・・もう一人いたの」
朝潮 「?」
荒潮 「あなたはいなくならないでね」
朝潮 「え、じゃあ・・・」
荒潮 「それに私も守ってくれるのよね、約束よ」
朝潮 「・・・うん」
二段ベッドの上で荒潮はどういう表情をしていたのか。朝潮はのどまで出かかった疑問を留めた。
何より朝潮の疲れ切った体と精神は休憩を求めていた。そのまま意識が沈みこむ。
―――――
―――
翌日
第一艦隊所属と言っても四六時中出撃するわけではない。
所属の艦娘から6人選ばれ、入れ代わり立ち代わり指揮作戦艇に乗船し出撃する。
朝潮と荒潮は特例で指揮作戦艇へ当日一杯の乗船を指示された。
加賀 「勉強のために乗ってもらうのだから、決して邪魔をすることがないように」
提督 「加賀の進言で乗せたのに厳しいな」
加賀 (あんたのせいでほうっておくと何するか怖いのよ)ギロ
提督 「何でもない」
提督 (大和と出た翌日はいつもこうだ・・・)
愛宕 「わー、駆逐艦の子ちっさーいかっわいー!!」ハグ
荒潮 「あわわ」ムギュー
千歳 「じゃあ、私はこっち」ハグ
朝潮 「あわわ」ムギュー
加賀 「そのまま聞きなさい」
朝潮 荒潮 (えっ?!)
加賀 「出撃の始めにやることはわかる?」
朝潮 「敵艦隊の捕捉ですか」
加賀 「正解よ、私の艤装を触る権利をあげるわ」
朝潮 (いらない・・・)
加賀 「出撃は衛星情報か鎮守府と指揮作戦艇のソナーによって深海棲艦の艦隊群を捕捉することから始まるわ」
加賀 「そこから敵艦隊群の分析よ、ここからは提督のお仕事ね」
加賀 「この分析の仕事で勝敗の7割は決まるわ」
荒潮 「残りはどうなるんですか~?」
加賀 「2割が戦闘、1割が運ってところかしら」
朝潮 「具体的に分析っていうのは何を分析するんでしょうか?」
提督 ズイ「俺たちの艦隊と同じく、敵の艦隊にもそれぞれに旗艦と編成と陣形がある」
提督 「それらの情報に加えて、敵は艦隊群だからボスと言われる艦隊群を指揮する艦隊と艦隊群の陣形がある」
提督 「それらの情報を総合して既にある分類に当てはめて対処する、これが分析だ」
朝潮 「・・・」プイ
荒潮 「な、なるほど。それを調べて艦隊を組むんですね」アセ
提督 「そうだ。情報を元に編成した艦隊で、敵艦隊群のどの艦隊を叩きボス艦隊に突入して倒すかが提督の腕の見せ所だ」
提督 「そして戦果の稼ぎどころでもある」
荒潮 「戦果ですか?」
提督 「遠征艦隊にいた荒潮は行う遠征で戦果が変わっただろうが、出撃は違う」
提督 「ボスを叩かないと上から戦果が認められない」
荒潮 「何ででしょう?」
提督 「深海棲艦は強力なものほど高い知性を持っている、艦隊群のボスともなれば当然利口だ」
提督 「そのボスを叩かないとどこからともなく減った艦隊を補充して自分の身を守ろうとする」
荒潮 「なるほど、ボスを叩かないと周辺海域は危険なまま・・・」
提督 「そうだ。だから、本部もボスを倒すことに高い戦果を与えるわけだ。わかったか?」
荒潮 「はい」
朝潮 「・・・」
パン
加賀の平手打ちが朝潮に命中した。朝潮は全く動じない。
千歳 「きゃっ!」プルン
朝潮 「・・・」キッ
加賀 「ちゃんと話を聞いているの?」
朝潮 「戦闘では敵艦隊の分析・・・」
加賀 「いいわ・・・、いずれにしろ提督が言うことには返事をしなさい」
加賀 「ここは戦場なの私情を持ち込んで感情を乱すと死ぬわよ」
朝潮 「はい」
千歳 「・・・」ナデナデ
母にもこうやって撫でられていた気がした。
その時、視界に入った提督に襲われた情景がよぎる。瞬間、船上にいる全ての人間が気持ち悪いものに見えた。
朝潮は千歳を降り払い甲板の端で嘔吐した。
朝潮 「おぇぇぇ」
千歳 「どうしたの?大丈夫?」
朝潮 「・・・すいません」
心配してさすってくれる千歳を一瞬間でも汚物のように見ていたことに、朝潮の胸は酷く締め付けられた。
提督と加賀が離れたところで朝潮を見つつ会話をする。
加賀 「あなたのせいですよ」
提督 「は?」
加賀 「あなたが襲ったせいで朝潮は当分不安定で使い物になりませんよ」
提督 「知るか、お前らでフォローしろ」
加賀 「第一艦隊編入を止めないつもりですか? 死にますよ」
提督 「艦隊のフォローはお前の仕事だろ?」
加賀 「分析と編成は提督のお仕事ですよ?」
二人で見合っていたが、ため息を付くと諦めたように加賀が動いた。
提督が譲らないのはわかっていた。
加賀 「朝潮、私の艤装と同調してみなさい」
朝潮 「?」
千歳 「そんな無茶な・・・それに危険です!」
荒潮 「加賀さんの強力な艤装に同調するのが無茶なのはわかりますけど、何で危険なんですか?」
千歳 「同じ艦隊に同じ艦種を組み込めないなのは何故かわかる?」
加賀 「どうでもいいわ、やりなさい朝潮」
千歳は口を閉じ朝潮をさするのを止め、朝潮の動くに任せた。
朝潮は素直に加賀に渡された艤装を受け取る。
千歳は首を振った。
荒潮 「愛宕先輩、何でなんですか~?」
愛宕 「ん~、同じ艦種が近くにいると艤装との同調をお互いに阻害して力が出せないのよ~」
荒潮 「それはわかりますけど、なんで・・・千歳先輩があんなに」
愛宕 「一人の艦娘が数種類の艤装と同調するのは難しいの」
愛宕 「加賀さんの艤装と同調できたら、朝潮は自身の艤装との同調に影響が出るし」
愛宕 「何より艤装の同調ってのは無意識下で周囲に影響するから、これから行う戦闘で加賀さんに悪影響があるかも・・・」
愛宕 「だから一般的に戦闘に参加しない艦娘は安全のため乗船させないのよ」
荒潮 「そんな危険なことだったんですか?!」
愛宕 「んー、実際はそうなんだけど、加賀さんだから・・・」
愛宕 「朝潮に自身の同調が乱されない自信があってのこととは思うけど」
朝潮が自身の艤装を降ろし、加賀の艤装を手に持ち目をつむる。
集中してすぐ、驚くほど簡単に朝潮は加賀の艤装と同調した。
艤装の空母甲板が地面をする様はちぐはぐで滑稽だが、朝潮の年齢で加賀と同調できるのは凄いことであった。
提督 「素晴らしい」ボソ
千歳 「すっ凄いわ朝潮ちゃん」
愛宕 「わ~ぉ」
比叡 「やっるー」
荒潮 パチパチ
霧島 「・・・」アングリ
朝潮に加賀の艤装は想像以上に馴染み、歓声は朝潮にとって自信となった。
加賀 「あなたはやはり才能があるわ」
加賀 「潜在的な能力は私を凌駕するかもしれないわね」
朝潮 「ありがとう・・・ございます」
加賀 (ちょろいわね)
加賀 「しかし、今は朝潮の艤装を使いこなさないと意味がないわ」
加賀 「戦闘の合間に見てあげるから次は朝潮の艤装と同調しなさい」
千歳 「うわーん、朝潮ちゃんが取られちゃった」
愛宕 「おーよしよし」
荒潮 「むぎゅ」
加賀は戦闘中は戦闘の内容を朝潮と荒潮に考察させ、
戦闘外では朝潮に朝潮自身の艤装の同調に影響がないように、朝潮と加賀の艤装両方で交互に同調を教えた。
戦闘で加賀には愛宕が想像したような悪影響は一切なく、開幕攻撃で確実に一隻は沈めた。
この手際で射程外から大和を一方的に攻撃して演習に勝利したらしい。
提督は真面目に指揮を執っていた。朝潮は獣のような指揮でもとるのかと邪推していたので拍子抜けした。
まだ出撃があるとのことだったが、その出撃で朝潮と荒潮は指揮作戦艇を降りた。加賀の指示だった。
折角なので一緒に乗っていた第一艦隊の艦娘達と戦闘内容の反省会議に参加した。
比叡 「霧島は当たらないからって近付きすぎよ」
霧島 「そういう比叡姉さんも命中率そこそこなんだから叫ぶ以外に努力したらどうかしら?」
比叡 霧島 「ぬぬぬ」
朝潮 「いつもは提督と加賀さんも参加するんですか?」
愛宕 「提督と加賀さんは書類仕事で忙しいから基本こっちは第一艦隊の艦娘達だけ」
荒潮 「いつもこんな感じなんですか~?」
霧島 「かなり今はぬるいわよ、色々あって・・・」
比叡 「そうそう」
霧島が目を流すと比叡も愛宕も千歳も目を外した。
霧島 「まず、言っておくわ。実はね・・・この艦隊には暗黙の了解があって」
朝潮 「はい?」
霧島 「轟沈した娘の話をしないって・・・」
荒潮 「・・・」
霧島 「この鎮守府は多いのよ、轟沈する娘が・・・だから」
霧島 「けど、安心して。最近は殆どないから! ね!」アセアセ
荒潮 「・・・」
比叡 「荒潮・・・おいで」ダキ
霧島 「轟沈する娘が多いときは・・・どうしても皆暗くなるし、ぴりぴりして荒れるから」
霧島 「だから、ない今はちょっと落ち着いて出撃できてるのよ」
全員疲れた顔だ。
朝潮にはあの提督と加賀がいてそんなに轟沈が起こることがわからなかった。
朝潮 「そんなに・・・轟沈が多いんですか?」
愛宕 「近くの鎮守府に友達がいるから聞いたけど多いわよ」
愛宕 「交通事故で無作為に数万人亡くなるように、普通の鎮守府でも年2-3人亡くなるそうよ」
愛宕 「けど、うちは年数十人レベルで亡くなっているわ」
朝潮 「そんな・・・なんで・・・」
霧島 「強力な深海棲艦が出るからよ、この理由はお上公認よ」
朝潮 「皆さん・・・怖くないんですか」
比叡 「怖いよ」
比叡 「けど、艦娘は鎮守府を選べない」
比叡 「嫌なら辞めるしかない、異動できるのは加賀のような強力な艦娘だけ」
比叡 「異動できても、第一艦隊にまたなれる?もっと酷い提督の下で轟沈?鎮守府に合わなくて艤装を解体されて無職?」
比叡 「いずれにしろ、ろくでもないわ。ゆっくり死ぬだけ・・・轟沈の方が遺族補償が出る分マシ」
比叡 「轟沈は怖いしや提督に手癖の悪いところはある。けど、戦果が高くて第一艦隊なら我慢できるってこと」
比叡 「朝潮も背負っているものがあるならわかるはずよ・・・」
朝潮 「・・・はい」
朝潮の提督への感情は変わらないが、加賀への感情は変化していた。
ただ、提督を擁護する加賀の側面だけは全くわからなかった。
朝潮 「すいません、不謹慎かもしれませんが、故意って可能性はないんですか?轟沈」
霧島 「提督の? ないわ。この目で轟沈をしているのを見ているしおかしいことなんか・・・」
霧島 「それに割りに合わないと思うわ」
千歳 「本当にそうでしょうか」
皆 「え?!」
千歳 「他の鎮守府の娘と飲んだ時に言われたんですけど」
千歳 「うちの提督ってかなり出世してますけど、艦娘の死骸を足場に今の地位まで上り詰めた提督って他じゃ話題らしいですよ」
千歳 「轟沈を霧島さんが言った通りお上公認でお目こぼししてもらってるから、それをいいことに大破進軍してるんじゃないかって」
霧島 「突拍子もないこと言うわね・・・」
千歳 「実際に私達の鎮守府のボス到達率と撃破率って他鎮守府より遥かに高くて大破進軍でもしないと無理な確率らしいです」
千歳 「それで戦果を好き放題に稼いでるって・・・」
霧島 「千歳!うちで大破進軍なんて見たことないでしょ?!根拠のないこと言わないで!!」
千歳 「後知られてないけど、轟沈艦の戦力を補充するという名目で艦の解体より多く資源が支給されるらしくて」
愛宕 「そんな、じゃあ私達の使う燃料弾薬に・・・それが・・・」
霧島 「千歳!!!!」
霧島が殴りかかろうとするのを比叡が抑える。愛宕は泣き出した。
比叡 「朝潮と荒潮、今聞いたことは忘れなさい!大和さん呼んで部屋に帰って!!」
昨日とは逆で虚ろな荒潮を朝潮が連れて歩く。
朝潮の通るところが悉く壊れていく不気味さを全身でひしひし感じていた。
朝潮からことの顛末を聞いた大和は血相を変えて会議室に向かった。
―――――
―――
月に一度はどの提督も地方本部に参勤交代をする。
その際は、近在鎮守府の提督に自鎮守府の警戒海域を分けて警備をお願いする。
地方本部では鎮守府で王様の提督も借りてきた猫のように大人しい。
提督は地方本部長官に呼ばれていた。そういう仲だ。
~地方本部、長官室~
地方本部長官(以下長官) 「君~、不味いことになったよ」
提督 「何事でしょう?」
長官 「実はね~。兼ねて話があった新地方本部設立に向けた話が本格始動するってことになってね」
提督 「はい」ゴクリ
長官 「長官を誰にするかって話も本格始動するんだよ」
提督 (いよいよか)
この時のために提督は各方面に媚びを売り待っていた。
長官 「ぼくはね、勿論ね、君を推したいよ」
提督 「有難うございます」
長官 「ただね~」
提督 「どうされました?」
長官 「他の近在地方本部と総本部がさぁ、邪魔してくるんだよ~」
ここまでは利権争いでよくある話だ。
長官 「やっぱり君が沈めすぎたのがね~」
提督 「それは、以前も説明申し上げたとおり事故で・・・」
地方本部から監査が来た時に武蔵が轟沈した。他にも駆逐艦から戦艦まで幅広く轟沈していた。
規則性は殆どない。空母が轟沈しないことを除いては。
それを偶然と思ったのか、そもそも気付いてないのか、本部は事故と認めている。
長官 「そうそう、それで事故がないように私が厳命して今期はないよね」
長官 「ただ、その代わりに今期戦果低いよね~、まぁ上位ではあるんだけどさ~」
提督 「事故がないように注意する余り、少し腰が引け気味であったかもしれません」
長官 「君が沈めすぎたのは、もう仕方ないよ」
長官 「今でも新種の深海棲艦や、同種でも強力な個体が発見されてるからさぁ」
長官 「私が君を評価してるのは、そういう逆境でもしっかり大きい戦果を出しているところなの」
提督 「はい」
長官 「長々と喋ったけどさぁ」
長官 「沈めすぎたのは仕様がないから、君の大きい戦果で周囲を納得させたいんだ」
長官 「で、今期の戦果は何?」
提督 「申し訳ありません」
腐っても上位であり、言われるいわれはなく。伝えたいことは他にある。
長官 「これじゃ推薦できないな~困ったなー」
提督 「何とかできませんか」
提督は手持ちのカバンから100万円の束を取り出し、長官の机に置いた。
長官 「ぼくはね~元々推薦するのはやぶさかじゃないのよ」ニコニコ
長官はさっとひったくるように取ると机に収めた。
提督 「有難うございます。長官あっての私です、新長官に拝命された暁には・・・」
提督 (轟沈しろ・・・)
長官 「お礼の言葉は早いよ~」
長官 「ぼくはいいんだよ、ぼくは。けど、こういうのはさ、周囲も納得させないといけないからさ」
提督 「そこまでの心遣い痛み入ります、長官の下にいられて幸せです」
提督はカバンからさらに五束取り出し、机に置く。
長官 「いや、ぼくも君のような部下を持てて幸せだよ」
長官は引き出しに札束を掻きこむ。
提督 「そんなお言葉いただけるなんて光栄です・・・」
長官 「最後に話を戻すけど、今期の戦果が低いのはいずれにしろ不味いよ」
長官 「推薦書を作る今期はやはり地方区一位で、できる限り圧倒的な戦果で終れるように頑張ってほしいな」
提督 「激励有難うございます」
提督 (結局そうなるか)
長官 「そうそう、来月初孫が生まれるんだ」
提督 「おめでとうございます、お祝いにお納めください」
提督 (・・・)
笑顔を崩さずもう一束机に乗せ失礼する。
帰途、感情を殺した顔で提督は思う。
提督 (あれを・・・使うしかないか)
―――――
―――
ガサガサッ
アヤ「お、ほたる戻って来たか?」
きらり「にょわー☆」ガサッ
蓮実「きらり…さん?」
美里「それと頭に杏ちゃんのせてるわねぇ…」
きらり「にょわ?」キョロキョロ
きらり「にょ?」キョロキョロ
きらり「にょー…」ジロジロ
蓮実「あの…?きらりさん?」
きらり「美しい森だ…この森を切り開いてきらりんハウス建てよう」
杏「どしたのきらり!? 言葉使い変だよ!?」
アヤ「お、ほたる戻って来たか?」
きらり「にょわー☆」ガサッ
蓮実「きらり…さん?」
美里「それと頭に杏ちゃんのせてるわねぇ…」
きらり「にょわ?」キョロキョロ
きらり「にょ?」キョロキョロ
きらり「にょー…」ジロジロ
蓮実「あの…?きらりさん?」
きらり「美しい森だ…この森を切り開いてきらりんハウス建てよう」
杏「どしたのきらり!? 言葉使い変だよ!?」
>>87 様
お米有難うございます。
あるなし回数は今後のストーリーに関わるので回答を控えさせてもらいます。申し訳ありません。
どちらにしろ個人的に寸止め描写の方がげふんげふんするので、余りご期待には添えないと思われます。
お米有難うございます。
あるなし回数は今後のストーリーに関わるので回答を控えさせてもらいます。申し訳ありません。
どちらにしろ個人的に寸止め描写の方がげふんげふんするので、余りご期待には添えないと思われます。
>>89 様
お薬出しときましょうね~
お薬出しときましょうね~
もしお読みの方がいれば質問が一つ。
更新のスピードはいかんともしがたいのですけど、一回の投下量は多いですか?少ないですか?
現在は、約8000文字と展開で投下量を決めています。
感覚的なものでも教えていただけると助かります。
更新のスピードはいかんともしがたいのですけど、一回の投下量は多いですか?少ないですか?
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陽炎「陸で訓練の説明してるとき、隣の
霰がおもむろに雑草を抜いて私に小声で、
『…何だと思う?これね、ミキプルーンの苗木。』
吹き出した私は、愛宕さんにボードの角で殴られた。」
霰がおもむろに雑草を抜いて私に小声で、
『…何だと思う?これね、ミキプルーンの苗木。』
吹き出した私は、愛宕さんにボードの角で殴られた。」
朝潮と荒潮は第一艦隊配置から少し経ち、日々練度を上げていた。
第一艦隊の話は同鎮守府の駆逐艦寮の艦娘たちに好評で、
いつだって英雄のようにもてはやされ話を聞かせてと引っ張りだこで忙しい。
提督が本部に向かう休日には、実家がある娘はそちらへ、遊びたい娘は地本部のある近くの大きい町へ向かう。
他の艦娘から開放された朝潮と荒潮は、霞と大潮と空いた食堂でお菓子を広げ話をしていた。
何時も賑わう食堂はがらがらで自分たちのいる場所だけが熱を持っていた。
朝潮が暴走したあの夜から任務外は荒潮と霞と大潮の誰かが気を遣って朝潮の傍にいてくれた。
朝潮が落ち着いてからも気が合ってずっと一緒にいる。
適性の近い同型艦は気も合うのかもしれない。
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