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元スレ夕立「恋情は見返りを――」提督「求めない」
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>>301
すまん、ミスってた
すまん、ミスってた
―天龍チーム―
足柄「さて、どうしましょうか」
摩耶「……まあ、普通に考えて勝負の流れが決まるのは」
天龍「航空戦、だな」
天龍「火力はオレたちに分がある以上、向こうは長引くほど不利になると考えると思う」
摩耶「対空砲火でこっちの被害を極小に抑える必要があるな」
天龍「ああ。オレには艦娘としての戦闘経験があるが、この中じゃ一番耐久力がない」
天龍「それに旗艦だし、指揮機能を殺ぐためにも多分、狙われる」
足柄「私と摩耶で、それをフォローするということね」
天龍「そうだ。砲撃では鳳翔、神通の順に叩く」
天龍「みんな頼んだぜ」
摩耶「おう!」
足柄「ええ!」
―司令室―
響『各艦、配置につきましたか?』
響『これより演習を開始します。原則、判定の通達は私が行います』
響『また、両チームが戦闘領域から離脱した場合、或いはいずれかのチームが大破艦3隻となった場合、戦闘終了合図を通告します。皆さん、頑張ってください』
響『それでは、戦闘開始!』
響「司令官、こんな感じでよかったかい?」
提督「ああ、問題ない」
提督「さて、両チームがどう動くのか、見物だな」
―――
――
―
―鎮守府近海―
天龍「戦闘開始だ!」
天龍「各艦、対空警戒を厳に!」
摩耶「腕がなるぜ」
足柄「さぁて、どう出てくるのかしら?」
――――――――――
鳳翔「敵艦隊補足! これより攻撃態勢に入ります」
鳳翔「天龍、摩耶、足柄の順に単縦陣です」
神通「了解です。鳳翔さん、作戦通り、狙えそうですか?」
鳳翔「はい。やります」
――――――――――
摩耶「おいでなさったぜ」
天龍「対空砲火準備。てぇー!!」ドドーン!
摩耶「おらぁ!!!」ダダダダダダ!
足柄「くっ! 当たらない!」ドドーン!
天龍「ちょこまかと!」
摩耶「クソが……。おい、これじゃあ機銃を使った方がまだマシだぞ! 切り替えろ!」
天龍「今やってる!」バババババ!
足柄「着弾したのに! なんて操縦技術なの!?」ズダダダ!
摩耶(…………)
天龍「意地でも爆弾には被弾させないつもりか……」
摩耶「来るぞ!」
天龍「摩耶!!」
ガツン!
足柄「きゃあ! こ、これ結構痛いじゃない!」
摩耶「くっ……! う、動かねぇ……」
天龍「大丈夫か!?」
響『摩耶、中破。足柄小破判定です』
天龍(しくじった! 鳳翔さんの機動力を甘く見ていた。長期戦覚悟で高火力艦を叩かれるのも予想出来なかった)
足柄「私はまだまだやれるわ! ここから立て直しましょう」
摩耶(クソ……。“あの時”とは何もかも違い過ぎる! アタシ自身も、他の船たちも……)
――――――――――
提督「なるほど。神通も手堅いな」
響「今のは……? 天龍たちの対応が鈍かったように感じたけれど」
提督「……航空戦では天龍側が確実に不利だからな。おそらく、速攻で旗艦を潰されるのを嫌って3人とも意識が天龍に集中していたのだろう」
響「ああ……。その予想通りに事が進めば拮抗して、砲撃戦で天龍たちが優勢に立てた。……けど」
提督「神通はまず火力を殺ぐことを考えた。裏の裏を読んだとも言えるし、全く以って普通に攻撃してきたとも言える。その意味で手堅い。基本に忠実だ」
響「でも天龍の読みは……」
提督「勿論、失敗じゃない。多分、天龍側の事前の意識がなければないで、神通は可能なら天龍も狙うように指示していたと思う」
響「……航空戦と砲撃戦での有利不利でバランスをとったんだね」
提督「それだけじゃないさ」
響「? それはどういう――」
ピー!
提督「おっと、夕立たちが戦闘に入ったようだ。少し席をはずすが、後は頼んだ」
響「了解、司令官」
――――――――――
川内「やったね!」
神通「ええ、ひとまずは。鳳翔さん、ありがとうございます。最低でも持って行きたかったラインにまで届きました」
鳳翔「いえ。神通さんの作戦あってこそです」
神通「そんな、とんでもないです。ともかく、続いて砲撃戦を頑張りましょう」
――――――――――
天龍「敵艦見ゆ! 作戦通り行くぞ」
摩耶「おい! 鳳翔がもう発艦してる!」
天龍「……旋回して後から追撃するつもりか。演習なのをいいことに捨て身で飛ばしてきやがった……!」
足柄「弾幕を張りなさいな! 撃て! 撃てー!!」ドドーン!
摩耶「神通が発砲! てぇー!!!」ドドーン!
天龍「ぐあっ!」ガツン!
摩耶「天龍!」
響『天龍、鳳翔、共に中破です』
天龍「へへ……。深海棲艦なんかより、ずっとおっかねぇじゃねぇか。敵に回すとよ!」ドドーン!
ガツン!
足柄「う……この私が、ここまでやられるなんて……」
響『足柄、中破です。続いて川内、小破』
摩耶「! 艦載機が!」
天龍(ここまで動きを読まれているとはな)
天龍「対空砲火ー!!」ダダダダダ!
摩耶「くっそ動かねぇ!」
足柄「ちっくしょう……!」ズダダダ!
ガッ!
天龍「うぐっ……ぅ……」
響『天龍、大破です』
摩耶「天龍! 追わないのか!?」
天龍「……無茶だ」
足柄「鳳翔は着艦出来ないのよ? まだチャンスはあるわ!」
天龍「……オレはもう撃てねぇぞ。それでもやるのか?」
足柄「当たり前でしょ。ねぇ摩耶?」
摩耶「ああ。演習の時ぐらい、命懸けられないでどうすんだ?」
天龍「……確かに。神通たちにも失礼だ」
天龍「各艦面舵いっぱい! オレは殿につく」
摩耶「そうこなくっちゃな!」
天龍「…………あれは」
摩耶「はっ! あいつら、アタシたちを完全にぶちのめす気満々だぜ?」
足柄「ほら、追って正解だったでしょ?」
天龍「さすが神通だ。……やれるだけやってみろ!」
摩耶「おう!」
足柄「でも容赦ないわね……。おそらく最後の、第3次攻撃隊が来るわ」
摩耶「上等じゃねぇか。どうせ狙われるのはアタシら重巡2隻だ。今度は落とす!」
足柄「対空砲火準備!」
摩耶「てぇー!!!」
―――
――
―
―司令室―
響『戦闘終了です。皆さんお疲れ様でした。総員、帰投してください』
響「! 司令官」
提督「お疲れさん。こっちも、今1戦目が終了した。完全勝利だそうだ」
響「幸先がいいね」
提督「金剛が随分とはりきっていたようだからな」
提督「さて、みんなが帰ってくるまでにデータを見せてもらおうか」
―――
――
―
提督「今回の演習、神通チームの勝利だ。よくやったな」
川内「いよっし!」
天龍「くっ……。オレがもう少し色々考えていれば」
提督「いや、対応としては間違ってなかったぞ」
提督「航空戦では天龍側はどうしても不利なんだ。むしろ勝機を生み出す可能性を少しでも模索出来たなら及第点だ」
提督「それに……」
提督「実は重巡の2人には少し負荷をかけている」
提督「今回は主に君たちのための演習だからな。身を以って“艦娘”を知ってもらいたくもあった」
提督「摩耶はどうだった?」
摩耶「……なんつーか、全然違った。自分の砲撃精度も、アタシの記憶と合ってねーし、艦載機の動きにも驚かされたよ」
提督「足柄はどうだ?」
足柄「概ね摩耶と同じね。まあそれ以上に、そこの神通ちゃんに驚かされたのだけど」
天龍「砲撃戦で鳳翔が狙われるのを読んで、あらかじめ発艦させていたのか」
神通「はい……。演習でなければ出来ないやり方ですが、有効かと判断しました。ダメだったでしょうか?」
提督「いや。実戦でそれをやったら本気で叱るが、弁えているなら別に構わない。むしろ演習の特性を理解し、最善策を練り、勝利を導こうとする執念は敬服に値する」
提督「よくやったな」ナデナデ
神通「あぅ……///」モジモジ
提督「結果的には私が予想した以上の差が出たが、それは神通の頑張り分だな」
提督「と言うのも、元々天龍サイドと神通サイドでは戦闘経験に差がある」
提督「特に航空母艦の“艦娘”――即ち鳳翔が、どれだけ艦載機を動かせるかを神通が知っていたということは大きい」
提督「艦娘も深海棲艦も、かつての船とは似て非なる能力を持っている」
提督「このことは摩耶、足柄、川内にはよく自覚しておいてもらいたい部分だ」
提督「勿論、天龍にもな」
一同「「「「はい!」」」」
提督「ほら、鳳翔。君の力はみんなが認めるところだ。もう、怖くないだろ」
鳳翔「はい! ありがとうございます、提督」
提督「私からの話は以上だ。一旦、休憩にしようか」
一同「了解!」
―――
――
―
―カムラン半島沖合―
夕立「赤城さん、偵察機を」
赤城「はい。偵察隊、発艦!」
夕立「この海域の敵主力艦隊との交戦が予想されます」
夕立「先程の戦闘とは異なり、おそらく航空母艦が出てくるでしょう」
夕立「敵機発見後、速やかに戦闘フェーズに移行出来るよう準備を進めてください」
夕立「また砲撃戦では直掩機による支援を中心に添えながら、対空砲火は最小限に留めるよう努めましょう」
赤城「! 敵艦影発見! ル級ヲ級ヌ級リ級ハ級ハ級の計6隻」
赤城「航空戦に移ります。加賀さん!」
加賀「戦闘機、発艦始め。赤城さんの偵察隊に従い、侵攻します」
夕立「各艦対空戦闘準備を。航空戦終了直後の初動で後れを取らないように!」
一同「了解!」
夕立「無線封鎖を解除。敵主力艦隊と会敵しました」
提督『了解。戦闘指揮は任せるぞ。やれるか?』
夕立「勿論!」
赤城「続いて九九艦爆、九七艦攻発艦!」
加賀「敵戦闘機との交戦に入ります」
加賀(いける。今の私なら、やれる)
夕立「来るよ! 対空砲火準備!」
加賀「鈍いわね。徹底的に撃ち落とします」
赤城「そろそろ攻撃隊が抜けます」
加賀「制空権、確保しました。攻撃態勢に入ります」
夕立「各艦用意……。てぇー!!」ドドーン!
金剛「Fire!!!!」ドドーン!
長門「てぇー!!!!」ドドーン!
那珂「てぇー!!!」ダダダダダダダ!
ズドーン!
夕立「砲撃戦準備! 金剛さん!」
提督(対応が早い。見切っていたのか)
金剛「Roger that! 発砲準備!」
赤城「ハ級2隻大破炎上中! 沈んでいきます。並びにヌ級中破、艦載機発着艦困難です」
夕立「さすがです」
金剛「Burning Love!!!!」ズドーン!
長門「こちらはヲ級を狙う。てぇー!!!」スドーン!
赤城「長門さん、夾叉です」
那珂「ル級、リ級ともに発砲!」
長門「次は中てるぞ!」
ガッ!
加賀「うっ……。一撃でかすめてくるなんて、普通じゃないわね」
ガツン!
長門「ぐっ……。クソ! 煩わしい!」
夕立「!」
提督(あのリ級……。長門の照準を逸らしやがった……)
夕立「ヲ級が艦載機を発艦! 気をつけて!」
那珂「撃ちます。てぇー!!!」ドドーン!
夕立「! このままヌ級を沈めましょう。てぇー!!」ドドーン!
加賀「こちらの攻撃隊、既に発艦しています」
夕立「長門! 金剛! 機銃で牽制を!」
長門「任せろ!」ズダダダダ!
金剛「Aye sir!」ババババババ!
ガツン!
加賀「ぐっ! 大丈夫、残骸が接触しただけ!」
赤城「那珂さん夕立さんによりヌ級は撃沈、ル級は加賀さんにより小破です。こちらももう攻撃隊を出しています」
夕立「私がル級を牽制するよ。第1、第2主砲、撃てぇー!!」ドドーン!
夕立「ふふっ。今さら構えても遅いんだけど」ニヤリ
那珂「ル級に着弾! 続いて発砲! ヲ級も攻撃してきます!」
長門「夕立!」
夕立「当たらないよ! 長門さんはこのままル級を!」
ズドーン!
提督(砲塔を狙ったのか……!)
長門「主砲、一斉射! てぇー!!!!」ズドーン!
夕立「今日は随分狙ってくるのね……。そんなに私が邪魔かしら?」ズダダダダダダ!
金剛「撃ちます、Fire!!!」ズドーン!
ヒュン! ガツン!
夕立「ぐっ……。やって、くれたわね……」キッ
ビリッ
長門(なんだ、今のは……?)ゾクッ
那珂「リ級中破! 夕立ちゃん、発砲してくるよ!」
赤城「第3次攻撃隊、発艦始め!」
加賀「同じく攻撃隊、発艦!」
夕立「あはは。夕立ったら、本当に、今日は人気者みたいね?」
ズドーン!
那珂「赤城さん、加賀さん、牽制するので仕留めてください!」ドドーン!
赤城「任せて!」
金剛「夕立、大丈夫デスカー?」
夕立「平気。少し残骸が当たっただけ」
那珂「赤城さんが重巡リ級を撃沈。ル級も大破しました」
加賀「チッ。仕留め損なったわね」
那珂「敵艦隊、離脱していきます」
夕立「戦闘終了。提督さん、聴こえる?」
提督『ああ。お疲れ様』
夕立「撃退したと判断して、撤退していいかしら?」
提督『それで構わない』
夕立「了解。鎮守府へ帰投します」
夕立「ふぅ……。終わった」
夕立「みんな、お疲れ様!」ニコッ
赤城「やりましたね、加賀さん」
加賀「ええ。ひとまずは。色々と反省が必要なのがわかったわ」
加賀「提督に合わせる顔が……」
提督『加賀、気にするな』
加賀「なっ! な……あ……聴いていらしたのですか! くっ……///」
提督『ま、細かい話は後だ。とりあえず戻って来い』
一同「了解!」
―――
――
―
―司令室―
夕立「艦隊、無事帰投しました」
提督「ご苦労」
夕立「道中、高速建造材を拾得しました。妖精さん曰く、“ちょっとしたおすそわけ”とのことです」
提督「なるほど。相変わらずだな」
提督「第1艦隊帰投までに戦闘データを確認しておいた。結論から言って、各艦、申し分ない働きだった」
夕立「ありがとうございます」ペコリ
提督「決して油断していいような敵編成ではなかったが、全艦小破未満で事を終えたことにはただただ驚くばかりだ」
提督「夕立の戦況分析及び指揮も的確かつ適切だった。今後も同じようにやってもらいたいくらいだ」
提督「旗艦にした判断は間違ってなかったろう?」
金剛「Yes! 夕立は凄いネー!」
那珂「私も、夕立ちゃんならついていきたいって、思えるよ」
夕立「みんな……」ウルッ
長門「…………」
加賀「提督」
提督「なんだ?」
加賀「お言葉ですが、私は自分が思っていたよりも満足に動くことが出来ませんでした」
赤城「加賀さん……」
提督「加賀。それは嘘だろう」
加賀「嘘ではありません! 出撃前に大口を叩いたこと、反省しています。申し訳ありません」ペコリ
提督「加賀。これは命令だ。まず顔を上げろ。そして私の話を聴け」
加賀「ですが……」スッ
提督「もう一度言う。君は嘘をついている」
提督「君は艦娘として、かつてと同じかそれ以上に上手く動けたことを自覚しているはずだ」
加賀「それは……」
提督「聡い君のことだ。自身の能力の錯誤以上に、深海棲艦との戦いが厳しかったから、それに驚いているだけじゃないか?」
加賀「……」
提督「加賀。私は君たちに過去の戦いを忘れろ、とは言わない。だが何の因果か君たちは今、ここに呼ばれ戦っている」
提督「そのことと過去の事柄は、必ずしも同じ次元にあるものではない。純粋に比較するだけ、加賀自身が辛くなるだけだ」
提督「今一度、ここにいる全員に告げる」
提督「あるがままを受け入れろ」
提督「私から言えることはそれだけだ」
加賀「……わかりました」
赤城「加賀……」
加賀「赤城さん、私は、大丈夫」
提督「うむ!」
提督「他に、何か報告はあるか?」
一同「……」
金剛「ハイ!」ビシッ
提督「なんだ金剛」
金剛「あのー……約束通り、お茶会を開いてもいいデスか……?」
提督「ふむ。なんと言っても小破未満だからな。何も問題はあるまい」
金剛「Thank you 提督ゥー!! 大好きネー!」ダキッ
夕立「んなぁー!!!!」
金剛「今から準備してくるから、待っててくださいネー!」
金剛(あぁ! ……勢いに任せてダイタンなことを言ってしまいマシタどうしまショウ////)
夕立「提督さん! 拾得艦を呼んでくるよ!」イライライライラ
提督「あ、ああ……。頼んだ」
提督(なんなんだ……)
飛鷹「名前は出雲ま……じゃなかった、飛鷹です。航空母艦よ。よろしくね、提督」
提督「……出雲マンさん?」
飛鷹「ち、違うわ!」
提督「その、出雲なんちゃらってのは何なんだ?」
飛鷹「えっと……。私、もともと客船になる予定で……。その時の名前が“出雲丸”なの」
提督「なるほど。私が提督だ。よろしく」
提督「そして君は……」
北上「アタシは軽巡、北上。まーよろしく」
提督「北上か。よろしく頼む」
提督「さて、お茶会までに北上と飛鷹に鎮守府を紹介したいんだが……」
北上「あ、じゃあアタシは那珂ちゃんに頼むとするよー」
那珂「え?」
北上「いいでしょー?」
提督「え、ああ、まあ。那珂もいいか?」
那珂「大丈夫ですよ」
北上「それじゃあ行ってきまーす。よろしくねー」
那珂「うん、よろしく」ニコ
一同(物凄くマイペースだ……!)
提督「加賀。飛鷹を頼んでいいか?」
加賀「ええ。私が案内するわ」
飛鷹「よろしくお願いします」ペコリ
加賀「いえ」
ガチャバタン
赤城「提督」
提督「どうした」
赤城「金剛さんの手伝いに向かっても、いいでしょうか?」
提督「? 別に構わないぞ」
赤城「ホントですか!? それではお先に失礼致します」ペコリ
ガチャバタン
長門「どうしたんだろうか?」
提督「さぁな」
提督「さて、工廠へ行こうか」
夕立「ぽいー」
―工廠―
鈴谷「鈴谷だよー。よろしくねー!」
提督「よろしく鈴谷。私が提督だ」
提督「気分はどうだ?」
鈴谷「んー? まあまあかな。なんか不思議な感じ?」
提督「そいつは何よりだ」
提督「そして、ここにいる2人が、これからの君の仲間だ」
夕立「駆逐艦夕立です、よろしくお願いします」ペコリ
長門「戦艦長門だ。よろしく頼むぞ」
鈴谷「ほぉーっ、すごーい! 何これ、どうなってんの?」
提督「まあ話すことは色々あるな」
提督「長門、頼めるか」
長門「ああ。鈴谷。私がこの鎮守府を案内する。ついてきてくれ」
鈴谷「らじゃー! お願いしまーす!」
提督「よし。金剛たちは準備が終わったかな」
夕立「行ってみましょう?」
―屋上・テラス―
提督「ほう。これはなかなか」
金剛「あ! 提督ゥー! こっちに来るネー!」
提督「ふっ。やれやれ」テクテク
夕立「わぁ! すっごーい!」
吹雪「お疲れ様です、司令官! ごめんなさい、先にいただいてます」
提督「いや、構わない。冷めても勿体ないしな」
響「お疲れ、司令官。これはとてもおいしいよ」
提督「私もいただこうか」
金剛「長門も来たネー」
長門「ほう。これのことか」
響「そちらは、新人さん?」
鈴谷「うん! 鈴谷だよー。賑やかな艦隊だねー、みんなよろしくねー!」
足柄「ほら、立ってないで一緒にお茶を楽しみましょう?」
神通「ただいま椅子を持ってきますね」ニコ
鈴谷「あ! 大丈夫、私自分で持ってくるし!」
長門「まあまあ、今はいいだろう。大人しく待ってろ」
鈴谷「了解っす」
睦月「はぁ~……暖まります~」
長門「ジャムに種類があって面白いな」
摩耶「金剛、うまいぞ!」
金剛「摩耶、もう少しお上品に嗜んで欲しいデース……」
摩耶「わ、悪い……」
金剛「まず姿勢はこうデス!」
摩耶「こ、こう、か?」
龍田「ふふふ」
足柄「唐突に何かが始まったわね」フフッ
鈴谷「金剛さんのマナー講習会第1回目」ボソッ
睦月「あはは!」
長門「しかも、ちゃんと話を聴いて実践しようとする摩耶が微笑ましいな」ハッハッハ
摩耶「あ、あん? なんか言ったかよ!?///」テレッ
金剛「こーら摩耶! ちゃんとするネー!」
摩耶「わ! ごめん……」
金剛「ま、今日はこれくらいでいいデショウ。もっと見過ごせない方々がいますからネー……」
金剛「どうして……」
鈴谷「お?」
金剛「……どうしてお茶会なのに、横でバーベキューかましてる人達がいるのデスかー!?」
一同(みんながツッコミを入れたかったところに、ついに金剛のメスが!!)
金剛「天龍ー!?」
天龍「おお? なんだよびっくりするじゃねぇか」ハッハッハ
金剛「“おお? なんだよびっくりするじゃねぇか”……じゃねーデス!! びっくりしたはこっちのセリフデース!!」
金剛「What are you doing now!?」
金剛「これはお茶会への冒涜ではありませんか!?」
天龍「まあまあ別にいいじゃねーか。ほれ、金剛も1本どうだ!?」
金剛「イリマセーン!!!!」
金剛「あなたたちのせいでテラス一帯が肉臭いのデスよ!」
天龍「おう。お肉の香りで紅茶も捗るだろ」
金剛「ハ カ ド リ マ セ ン !」
天龍「なーんだよ金剛。オレは閃いたんだ。“お茶会”には“バーベキュー”が欠かせないってな」
金剛「どこからそのアイデアが降ってきたのか、私、気にナリマス!!」
赤城「私は最高のアイデアだと思いましたよー」モグモグモグモグ
吹雪(赤城さんってめちゃめちゃ食べるんですね……)
加賀「私も赤城さんに同意します」ムシャリムシャリ
金剛「ぐっ……。一航戦……! あなたたちもお肉の魔力に負けたのデスネ! 運命には抗えなかったのデスネ!?」
赤城「はて、何のことだか……。金剛さんのスコーンもおいしかったですよ?」
赤城「あ! 間宮さん、ありがとうございます!」
間宮「鳳翔さんと野菜を切っていますので、足りなくなったらいつでも声を掛けてくださいね」ニコ
赤城「はい、お気遣い、ありがとうございます」ペコリ
金剛「ムッキー! 負けた気分デース!」
睦月「ま、まあまあ、それくらいにして一緒にお茶、飲みましょう? 冷めちゃいますよ?」
金剛「うぅ~……。睦月だけが味方デス……」
睦月「よしよし」ナデナデ
深雪「ガンガン焼いてくけどいいか!?」
天龍「おう、いけぇ!」
加賀「お願いします」ワクワク
川内「このかぼちゃもらうねー!」
提督「お茶に肉か。世界観に差があり過ぎるな」
龍田「肉々しいですねー……」
飛鷹「もう少し落ち着いて食べられないのかしら」
摩耶「まったく、匂いが移りそうだぜ」
ダッダッダッダッダッダッダッダ
那珂β『みんなーお茶会、楽しんでるー!?』
天龍「な、なんだ!?」
提督「そういや那珂がいなかったな。何してんだ?」
那珂β『今日はー、みんなー、那珂ちゃんのために焼き肉パーティー開いてくれて、本当にありがとー!!』
提督「いや、開いてない開いてない」
金剛「頭が痛くなってキマシタ……」
神通「妹がご迷惑を……」
赤城「ふむ」ムシャムシャ
那珂β『那珂ちゃんのことがだーいすきな、ファンのみんなのためにー、今日はー、那珂ちゃんから、サプライズのプレゼント!』
那珂β『というわけで、リサイタルを、やりまぁす!』
金剛「誰か……あいつを止めるのデス……」ガクッ
睦月「ダメ、金剛さんが……死んじゃいます!」
長門「おい金剛、大丈夫か!?」
金剛「あぁ……最期は、……提督のそばで…………」
吹雪「ダメです金剛さん、目を覚まして!」
摩耶(何か始まった……)
提督(みんなお酒も入ってないのに錯乱してるなー)
金剛「提督……どうか武運長久を……。私……ヴァルハラから見ているネ……」
タッタッタ
??「とぅ!」
吹雪「あ、あれは?」
??「そいやー!」
バキッドカッゴスッ
那珂β「うにゃあぁぁあああ!!!!」
スタッ
那珂「悪は滅びた……」
赤城「……なかなか面白いですね」モゴモゴモゴモゴ
加賀「ぷっ……ぐ……ごほっ! ごほっ!」
赤城「どうしたんですか加賀さん」キョトン
加賀「ごめんなさい、ティッシュを……」プルプル
提督(なんだこれは、見世物なのか?)
金剛「ふぅ……危うく陸で轟沈するところデシタ。危なかった。私の心の平穏、お茶会という名の心のオアシスは無事守られマシタ。感謝シマス、那珂」
那珂「いえ、こちらこそ遅れてしまってごめんなさい。姿が見えなかったので、何か企んでいるとは思っていましたが、結局ここに現われるまでに見つけられなかったので……」
那珂「後でたっぷりお灸を据えておきますね」ニコッ
提督「ん?」
夕立「……」ニコニコ
提督「楽しいかい?」
夕立「……うん、とっても」ニコッ
提督「ふっ、そうか」
白雪「はぁ……。癒されますね……」
北上「あー……いいねぇ~……。ずーっと、ここでぼーっとしてたいよ」ボー
響「金剛、おかわり」
金剛「うん、今入れマスネー!」
赤城「鳳翔さんもお肉、いかがですか?」
鳳翔「ありがとうございます。でも、夕食が食べられなくなってしまいますので……」
加賀「お肉を食べてると、お酒が欲しくなりますね」
鳳翔「今度、飲み会でも開きましょうか」
赤城「いいですね!」
提督「…………」
提督(……どうしようもなく、平和だ)
―――
――
―
キリがいいので今宵はここまで。
>>314
摩耶ちゃんはテンパっちゃうかわいいなんです。俺は悪くねぇ!
(訳・記述に見落としがありました。ご指摘ありがとうございます)
期待してくださっている方、大変励みになります。
今月の投稿はこれだけでしたが、来月もよろしくお願いします。
>>314
摩耶ちゃんはテンパっちゃうかわいいなんです。俺は悪くねぇ!
(訳・記述に見落としがありました。ご指摘ありがとうございます)
期待してくださっている方、大変励みになります。
今月の投稿はこれだけでしたが、来月もよろしくお願いします。
深雪「ガンガン焼いてくけどいいか!?」
天龍「おう、いけぇ!」
深雪と天龍のコンビはあまり見かけないけど息合うよな
天龍「おう、いけぇ!」
深雪と天龍のコンビはあまり見かけないけど息合うよな
―波止場―
響「~♪」
提督「ご機嫌だな」
クルッ
響「……司令官。待ってたよ」
提督「お茶会はどうだった?」
響「あれはいいな。またやりたいね」
提督「……ちゃっかり肉も食べてただろ」
響「見られてたんだ。さすがに少し恥ずかしい……」
提督「あはは。食い意地が張ってると思われるのは嫌か?」
響「まあね。これでも、その……。心は女なんだと思う」
提督「そんなに卑屈になることはないだろう。響はとても女の子らしいよ」
響「……///」プイ
提督「ふっ……。そうやって照れるところもさ」
響「司令官は女たらしなのかい?」
提督「なんだ。たらされている自覚でもあるのか?」
響「その切り返しはずるい。返答に困る」
提督「ふははっ」
響「それだけの余裕があるなら、昔からそんななんだろうね」
提督「さあどうかな。身に覚えがないよ」
響「とぼけるあたりが最高に最低だね」
提督「響のその辛辣さは結構好きだ」
響「好きだなんて、軽々しく口にしないで欲しい」
提督「悪かったよ」
響「司令官は話をはぐらかすのが上手い」ムスッ
提督「お褒めに預かり光栄だ。でも響にその手は通用しないようだな」
響「褒めてないよ」
提督「これは手厳しい」
響「……ふふっ」
響「司令官とは何を話してても、楽しい」
提督「そうか。ありがとう」
響「……私が女だからかな」
提督「今度は私が返答に困る番だな」
響「一般論としてだよ。提督がどうという以前に、やはり私の意志は身体に大きく影響を受けてるんじゃないか、ってね」
提督「……つまり、女性として今在るということに疑問があると?」
響「女性としての心の動きを、私が今まさに感じ取っているからね。司令官に男を感じないわけではないし」
提督「微妙な言い回しをされたな」
響「直接的に言うのが単に恥ずかしいだけだよ」
提督「そこまで言えるなら同じことだろう」
響「司令官は機微という言葉を辞書で引いた方がいい……」
提督「ごめんよ」
響「……まあここまで言えるのも、男であるとか女であるとか以前に、私が提督を信頼しているからだけれども」
提督「面と向かって言われるのは少し照れるな」
響「ちょっとした仕返しだよ」
響「……ともかく、私は私自身がこの姿をとっていることに何ら必然性を感じない」
響「もし艦艇がヒトの姿をとったのだとしても、別様にもあり得たと考えてしまうんだ」
提督「それは自然な発想だろう。でも艦艇に魂があるのだとすれば、“響”の魂はその姿だったのかもしれんが」
響「ひとつの艦艇に無限個の魂が入っているだなんて、想像したくないけどね」
提督「そうだったな……。或いは魂を複製出来るなんてのは、オカルトにオカルトを足したようで決まりが悪い」
響「うん。だから、この前の話から自分で少し考えてみたけど、結局、私が“かつての響そのものである”ということはあまり重要なことではない気がする」
提督「それはどうして?」
響「もし“この”私がまさに艦艇としての響の魂だとして、この姿が偶然的に与えられたものだとしても、今あなたと話し、ここでこうして振る舞うこの姿こそが紛れもない私なのだと、そう納得せざるを得ないから」
響「多分私は、“自分こそが響である”という確信を、この姿なしに得ることは出来ないんだと思う」
響「……怖くなった」
響「そのことが少しだけ怖いんだ。過去が……。覗き込んだだけで吸い込まれてしまう真っ暗な奈落のような……」
響「司令官はヒトだからいいのかもしれない。“ずっと”ヒトだから」
響「でも! 艦の魂がヒトのカタチに宿るだなんて……。私は艦娘として目覚めてから事後的に、遡及的に自己の記憶をそう認識しただけかもしれない」
響「……それこそ司令官の言った通り、誰かの撮った映像を、さも自分が体験したものとして誤認するかのように」
提督「響……」
響「司令官」
響「響の記憶を刻まれた私が複製されてこの姿に宿るのと、ヒトであるこの姿の私に響の記憶が挿し込まれるのとでは、何が違うんだろうね」
響「……単なる艦艇としての響に、“私である”と意識する何かは、存在し得たのかな……」
提督「…………」
提督「それは確かに存在したのだ、と。響はそう考えたいんだね」
響「そうだね……」コクン
提督「……君は先程、自分の意志は身体に従属しているんじゃないかと、そう言ったね」
響「うん」
提督「響は意識を特権化し過ぎているような気がする。意志と身体を分離して考える必要はないのでは?」
提督「すべてひっくるめて、それが自分だと、そう自己肯定することは出来ないのかい?」
響「……それ以外に方法はないと思う」
響「でもそれは、私が本当に“響である”のかどうか、ということについて問わないということだと思う」
提督「ああ…………。そういうことか……」
響「どの道、私の採れる解釈は限られているんだよ」
響「私は私自身の存在を疑ったりはしない。でも私が“響である”ということには一抹の疑いを拭い切れない」
提督「……響の原初的なアイデンティティーが、艦艇としての響と女の子としての響の間で揺れているんだね」
響「……」コクン
提督「ひとつ質問がある」
響「なんだい?」
提督「その疑いを拭えないのは、自分が艦娘でなければ“かつて自分は響だった”という確信を持てなかったのではないか、という仮定に起因している?」
響「おそらくは、そう」
提督「君の持つ艦の記憶は、君の“過去の”意志について、何と言っている?」
響「……わからない」
提督「なら質問を変えよう。かつて君は自分が意志していたと思うか?」
響「………………」
響「うん。そう思うよ」
提督「……面白いね。いや、おかしいくらいだ」
提督「私も響も、言ってることと信じていることが、きっと逆だ」
響「私に関しては単に、解釈に迷っているだけだと思うよ」
提督「そうかもな」
提督「だが私は、違う。私なら、自分自身が意志しているとは考えない。否、考えられない」
響「それは……悲しい考えだね」
提督「響。君はたとえ乗組員が自分の進路を決定したとしても、それが他ならない“響”の意志であると?」
響「その通りだよ、司令官」
提督「……君の意志を響の乗組員数百名の創発として定義出来たとして、上位の意志である君が下位の意味、即ち乗員の意図を理解出来てもなお、それは自分の意志であると、そう言い張れるのか?」
響「出来るさ。何より私は、彼らの意図と挙動を理解出来ても、私自身の意志の発生を理解出来ないのだから」
提督「それこそが、自分に意志があることの何よりもの証拠だとでも?」
響「私は、そう思う」
提督「君にとって乗組員とは何だ?」
響「私の意志に、従う者のことだよ」
提督「……驚いたな。これは艦娘が人智を超えているからか? それとも、響の体感が特別なだけか?」
響「後者だと思うよ。単なる解釈の問題なんじゃないかな」
響「でもそんな私でも、ヒトの身体には軛のようなものを全く感じないわけでもない」
響「尤もそれは単に、おそらく偶然的なものだろうこの姿に対して制限を感じているというだけの話であって、この姿から導かれる諸々の感情も、意図も、行為も、等しく私のものなのだと、そこだけは胸を張って言えるよ」
提督「……私には響が眩し過ぎる。私には何も奪えない」
響「奪うという次元にすらないよ。彼らは元々私のものだった」
響「そして同時に、おそらく私は彼らのものでもあったのだろうけど、“私”にとってそんなことは問題ではないんだ」
響「彼らの意図と私の意図には、区別がない。このことは彼らの意図が私のものであると、そう私が恣意的に解釈するための妨げにならない」
響「だから当然、彼らの行為はすべて説明出来るし理解出来るよ。なぜなら、他でもない私が意志したことなのだから」
提督「それが響の、記憶なんだね」
提督「そして、彼らの意図を理解出来るのは、今自分が艦娘だからではないか、と」
響「そうだよ」
提督「それはとても興味深い見解だ」
提督「艦娘として生まれ、下層の意味を知り、それでもなお自分の意志を肯定出来るのは響の強さだと思う」
響「どうかな。さっきは私の感覚が特別だからと答えたけど、もしかしたら艦娘は皆、潜在的にはそう思っているのかもしれないよ」
提督「なぜ?」
響「そうでないと、今艦娘として操艦出来ないんじゃないかな?」
提督「なるほど」
響「航空母艦に関しては艦載機まで自分の意志で操っている」
提督「ああ。それは私も気になっていたところだ」
提督「今艦娘として何の問題もなく操作出来ているということの起源は、艦艇の時にまで遡れるのではないかと、響はそう言いたいわけだ」
響「私自身は、実はそうなんじゃないかって思ってる。いや、そう信じてる。そして、そう信じたい」
提督「その認識が誤認だったとしても?」
響「誤認だったとしても、だよ。私は、信じる心を大切にしたいんだ。ああ、そうか…………」
響「たとえ記憶に騙されていたのだとしても、過去に保証なんかなくても……」
提督「……確信さえ得ているなら、そこから考えられる諸々の事実よりも、確信そのものを肯定する……。そういうピュアな考え方、嫌いではないな」
響「うん。それだけで私の心は落ち着いた。僅かばかりの恐怖心も乗り越えられると、信じさせてくれた」
響「他ならないこの私が、――響なのだと」
響「…………司令官」
提督「ん?」
響「ありがとう」ニコッ
響「これでもう、瑣末なことに頭を悩ますこともないと思う」
響「司令官のおかげだよ」
提督「私はただ、話を聴いたに過ぎない」
響「ううん。それだけでよかった」
響「決して悩んでいたわけではないけれど、それでも、こんなに見晴らしが良くなるなんて」
響「……司令官にも、こんな気持ちを感じて欲しいと思った」
提督「はは……。私は、響ほどの主体性を持って自己規定することは出来ない」
響「司令官……」
提督「でも、そうだな」
提督「いつか見つけられるといいかもな。響のような、自分の明確な在り方を」
響「……うん!」
―――
――
―
―司令室―
提督「……」ペラペラ
夕立「……」カタカタカタカタ
提督「もう、秘書の仕事は完璧か?」カリカリ
夕立「んー……」カタカタ
夕立「そうでもないっぽい」
提督「妥協しないんだな」
夕立「まあね」
夕立「……」
夕立「なんだろう……」
夕立「最近、海に出ても、ここで仕事をしてても」
夕立「何となく、何かが足りない気がするの……」
提督「?」
提督「何かって、何が?」
夕立「わかんない……」
夕立「お仕事もっと頑張ろう、って。妥協なんてしない、もっともっと提督さんの役に立とうって、思うんだけど……」
夕立「私の、この気持ちは――」
コンコン
赤城『赤城です。長門さんもいます。ただいまお時間よろしいでしょうか?』
提督「いいぞ。入ってくれ」
ガチャ
赤城「失礼致します」
長門「失礼します」
提督「なんだ、どうした?」
赤城「ええっと、お仕事中ごめんなさい……。本当に、大した話じゃないんですけど」
赤城「あの、今度飲み会でも開こうかと、皆さんとお話致しまして……」
提督「の、飲み会?」
赤城「ええ。その、お仕事のある中大変かとは思いますが、是非、提督ともご一緒出来たらなと思う次第でありまして……」
提督「なるほど。業務に関わることだから、この場で進言したんだな」
赤城「はい……。ダメ、でしょうか?」
提督「はぁ。まったく……」
赤城「う……」
提督「意外と律儀なんだな。気にすることはないぞ。私も参加させてもらおう」
赤城「本当ですか!? やりましたね!」
長門「ああ」
提督「ふむ。夕立」
夕立「はい?」
提督「そういうわけで夜の時間を空けるために、明日夕立は出撃せずに秘書をやってもらう」
夕立「なるほー。了解でーす!」
赤城「ごめんね夕立さん」
夕立「大丈夫ですよ! 日中はみんな等しくお仕事なんですから」ニコ
赤城「ありがとうございます」ペコリ
提督「じゃあそういうことで」
提督「ところで長門は何しに来たんだ」
長門「赤城の付き添いだ。もしかしたら提督の機嫌を損ねるかと思ってな。独りで叱られるのは心細いだろう?」
提督「杞憂もいいところだ。揃いに揃って律儀なヤツらめ」
提督「話は終わりか?」
赤城「ええ」
赤城「では提督、明日は楽しみにしていますね」
提督「こちらこそよろしく頼む。戦果は――」
赤城「当然、心得ています」
提督「よろしい」
長門「……提督」
提督「うん?」
長門「……」チラ
夕立「?」
長門「いや、なんでもない……」
長門「私も提督と酌み交わす酒を、楽しみにしている」
提督「ああ」
赤城「ふふっ。では、失礼致します」
長門「失礼します」
ガチャ
提督「悪いな、負担をかけて」
夕立「ううん。夕立は大丈夫」
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