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元スレ海未「どうして教えてくれなかったのですか!?」
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真姫「…っ!?」
穂乃果「ベル……?」
真姫「……ッ」
海未「答えてください、真姫…」
真姫「……セックス、してくれたら、教えてあげる……だから早く頂戴っ、そうしてくれないと私っ、おかしくなっちゃいそう…っ!!」
海未「……ベルのせいで、ですか…?」
真姫「…っ、海未……、貴方……」
海未は哀しそうな表情で真姫の痩せこけた頬に触れる
目の下に深くできていた痣の様なクマ……そこに溜め込まれた今にも溢れてきそうな涙を拭った
海未「これは、あくまで私の推測の観点ですが……」
海未「ベルによって私を繋ぎ止める……そう真姫は言っていました、それに今の言動……、そして……最近の異常なまでの私の性欲……」
真姫「……海未…」
海未「……ベルとは、性欲を欲させる興奮剤……違いますか?」
真姫「……っ」
穂乃果「そ、それって…危ない薬……テレビでやってる覚醒剤みたいなの……? 嘘だよね…? 真姫ちゃん」
真姫「……だったら……何だって言うの…、今まで気持ち良かったでしょ? 穂乃果やことりのことなんかどうでもよくなるくらいに夢中になってセックスして…」
海未「真姫っ、貴女はどうしてそんな…、そんな事を…」
穂乃果「真姫ちゃんっ、目を醒ましてよ!!」
真姫「うるさいっ!! うるさいうるさいうるさいっ!! もう後戻りは出来ないのよ…っ、私も海未もっ、あの至上の快楽を知っちゃったんだから…っ!!」
海未「おかしいです……、どうして…どうしてなんですか……っ!?」
真姫「海未だってセックスしたくてしたくて堪らないんでしょっ!? だったら我慢しないで私としよ!? お願いっ、お願いだからっ、海未…っ! 海未っ!!」
海未「や、やめ…っ」
バシ……ッ!!
その場に響き渡る乾いた音は、三人の中に流れる時を止めた
頬に感じる痛みは、数秒後に真姫の元へと届けられる
真姫「ぁ……痛……ぃ、っ……」
にこ「……最低よ、あんた」
穂乃果「ニコちゃん…!?」
海未「……ニコ」
真姫「ぅ…、ぁ……ッ……」
性欲で埋め尽くされていた頭の中には他者の介入など全く予想もしておらず、真姫は何が起こったのか状況が理解出来ず、ただただ目を丸くしていた
にこ「あんた自分が何したかわかってるの…? ふざけないで…っ」
穂乃果「ニコちゃん…っ!!」
にこ「大丈夫よ、私は冷静だから…それより中に入りましょう、ここじゃ目立ち過ぎるから」
海未「そう…、ですね……」
四人は呆けている真姫を支え、部室の中へと移動する
にこ「……話は聞かせてもらったけど、ベル……これはさっきの海未の認識で間違いは無いの…?」
真姫「……そうよ」
海未「……もう少し、早く気付くべきでした……気付けた筈なのに……っ」
にこ「……海未だって、被害者なんでしょ…? ……あの時の海未は、これのせいで……ってことよね……」
海未「ニコ……すみませんでした…、何度も謝ろうと思っていたのに……本当に、すみませんでした…っ」
にこ「……海未は、悪くないよ……悪いのは…」
ニコは瞳に涙を浮かべ、険しい形相で真姫を睨み付ける
にこ「何で…、海未に使ったの…? ニコの気持ち知ってたのに、どうして!?」
真姫「……私じゃ、ない…」
にこ「え…?」
真姫「最初に海未に飲ませたのは……私じゃない……」
にこ「今更逃げられると思ってるの…!?」
海未「真姫ではないなら、誰が……?」
真姫「……ことりよ」
穂乃果「……嘘…」
にこ「ことりが……?」
海未「し、信じられません……」
真姫「……私だって、ことりによる被害者なの…っ、あの日……夜にここで会ったの覚えているでしょ? それが始まりよ…」
真姫はニコが海未に強姦された日からの出来事を話し始める
部室に残っていた血の跡のこと、落ちていた薬の袋のこと、その薬の詳細
ことりにベルを盛られ、海未を夢中で求めさせられたこと
ことりがどんな心境だったのかわからないが海未の存在とベルを譲渡されたこと
そして、今日今までのこと
全てを話した
穂乃果「……嘘、嘘だよ…っ、ことりちゃんが…」
にこ「……っ」
真姫「私は事実を述べているだけ……何か思い当たる節、あるんじゃないの……? 貴方も何処かでことりにベルを盛られていた筈よ」
海未「……」
ベルというものがどういった形状なのかは海未はわからないが、確かに盛られる機会はあったのだろう……
屋上での練習の際には、海未が常備していたペットボトルの飲み物に
夜、急に呼び出された時には缶コーヒーを受け取っていた
海未(あのコーヒー……蓋が、開いていた……)
海未「……そんな、ことりが……」
ことりとの思い出と真姫との快楽の記憶がグルグルと頭の中を回り、海未はその場に膝を付き崩れ込む
海未「……ぁ……こと…、り……」
穂乃果「海未ちゃんっ!!」
真姫「……もう、終わりよ……何もかも……っ」
にこ「……っ、穂乃果っ!! 今すぐことりを呼び出して!!」
穂乃果「う、うん…っ!」
ポケットから携帯電話を取り出し、ことりにダイヤルする
穂乃果「……ダメ、繋がらない!」
にこ「くっ……、このまま逃げるつもりじゃないでしょうね!!」
穂乃果「出発はまだ先だからそれはないと思うけど…、もう学校にいないのかな…」
海未「……出発…? 何の話ですか……?」
穂乃果「え……?」
にこ「知らないの……?」
海未「何が、ですか……?」
穂乃果「ことりちゃん、もうすぐ留学するんだよ……だからもう、この学校にいられるのもあと少しで……」
海未「なっ…!? 私には何も……っ」
真姫「私も、初耳だわ……」
穂乃果「と、とにかくっ! 今はことりちゃんを探そう! 絵里ちゃんや希ちゃんに電話してみるから!!」
にこ「私は凛と花陽を当たってみるわ!」
海未「こと、り……何で……」
──私は、ことりにとって一体何だったのでしょう……
『ことりが海未ちゃんのこと嫌いなのは、ずっと昔からだから♪』
──私の素行の問題なら自分を責めて納得出来る……しかし、何故嫌われているのかわからないまま別れるなんて……
ことりの言葉……今の海未は何よりそれを必要としていた
━━
屋上、冷たい秋の風が頬を撫でる
──ここからの景色を見るのも、これで最後かな……
南ことりはこの場所で一人、校舎、街並み、空……視界に入るもの全てを眺め立っていた
ことり「……えへへ……言っちゃった……、嫌いって……」
流れ落ちた涙が、秋風によって冷やされる
ことり(あれ……何でだろ……、大嫌いな人に嫌いって言っただけなのに……)
──胸が、苦しいよ……
ことりも気付いていた
大嫌いな海未のことが、大好きだということに
大好きな気持ちと大嫌いな気持ちが心の中でぐちゃぐちゃになっている
何年も前からずっとこうだった
相談したくてもできなかった……、だって、こんな事口にしたら二人を裏切ることになっちゃう
今だってすごく酷い事して裏切ってるのにね……変な私……、もうわかんないよ
このぐちゃぐちゃで苦しくて悲しくて辛い心を癒すには、大好きって気持ちをそれ以上の大嫌いで塗り潰す
それしか方法が思い浮かばなかった
鏡とハサミを鞄から取り出す
ことり「……好き……嫌い……、好き……嫌い……」
少し伸びた前髪
それを少しずつ切っていく
ハサミに、想いを乗せて
ハサミで、想いを断ち切る様に
ことり「……嫌い……好き……、嫌い…嫌い…嫌い…嫌い……」
──嫌い、私のことを愛してる貴方が嫌い
ことり「……好き、好き……好き……好き…好き…好き…好き……っ」
──好き、私のことをいつも愛してくれる貴方が大好き
ガチャ……
後ろから扉の開かれる音が聴こえた
そして、足音が近付いてくる
ことり(……やっぱり、来ちゃったか…)
鏡越しに扉の方を見ると、よく見知った顔が八つ確認できた
ことり(どうして皆……? お喋りな海未ちゃん……うふっ、リンチされちゃうのかな…)
──まぁ、それもいいかも
短いですが、今宵はここまでー
次で完結させます、嘘じゃないです本当ですっ
最後は書き溜めてから投下する予定ですので明後日か翌々年になるかも
まぁ今週中には終わらせます
ではではー
おつ
もし明後日来なかったら2016年まで待たなければならないのか……
もし明後日来なかったら2016年まで待たなければならないのか……
読んでる人の精神状態を慮って、ジョークを言える>>1は作者の鑑
──少し、切りすぎちゃったかな……おでこが冷たい
前髪を気にする仕草
その薬指では誰にも悟られないよう、涙を拭っていた
海未「ことり……」
にこ「ことりっ!! あんた…っ」
他の部員も真剣な面持ちで、ことりの背中を睨んでいる
穂乃果「……ことりちゃん、こっち向いて」
ことり「……穂乃果ちゃん」
ことりは鏡に写る自分の顔を見て、涙の痕跡が無いことを確認する
そして、手に持っていた鏡を閉じ、ゆっくりと振り返り皆と対面した
ことり「うふっ、皆揃ってどうしたの? お別れ会でもしてくれるのかな?」
希「…残念やけど、それはちょっと違うかなぁ」
ことり「そっか」
海未「……どうして、言ってくれなかったのですか? 留学の件…」
ことり「嫌いな相手に言う必要なんかないよね?」
海未「…ッ」
穂乃果「本当に、ことりちゃんなの……? どうしてそんな酷い事言うの…?」
ことり「……それで、何か話があって集まったんでしょ?」
穂乃果の目を見るのを避けるよう、隣にいるニコに反応を促した
にこ「ベル……、あんたの仕業って本当……?」
ことり「……」
ことりは視線を動かし、皆の顔を一瞥する
絵里「全部、穂乃果達から聞いたわ」
ことり「へぇ…」
にこ「皆には知ってもらう必要があるって思ったから」
穂乃果「真姫ちゃんはすごく嫌がってたんだけど、ね…」
真姫「もぅ……、いやっ……ひぐ…っ」
花陽「真姫ちゃん…っ」
凛「ことりちゃん、凛怒ってるんだよ……? 真姫ちゃんもニコちゃんも海未ちゃんも…皆、凛の大好きな友達だったのに、何でこんな事したの!?」
希「理由、聞かせて貰える?」
ことり「海未ちゃんが大嫌いだから、それだけだよ」
海未「……っ」
絵里「……なら、私達の事は? 貴女と海未に何があったのかは知らないけど、真姫やニコまでこんな目に遇わせて……そんなんじゃ、とてもじゃないけど納得なんて出来ない」
花陽「友達……だよね? そう、ことりちゃんも思っててくれてたんじゃないの……?」
ことり「……それも、海未ちゃんが嫌いだから」
絵里「答になってないわ……、ちゃんと答えて」
ことり「全部、海未ちゃんを貶める為……本当にそれだけだよ? 絵里ちゃんには、もっと期待してたんだけどね」
絵里「何の話…?」
ことり「誰が海未ちゃんを篭絡できるかゲーム? ニコちゃんは頑張ってくれてたよね♪ 最初はベルなんて使うつもりなかったんだけど、海未ちゃんが中々折れないのと、ニコちゃんにもっと頑張って欲しかったから」
にこ「ふざけんなっ!! あんたは人の気持ちを何だと思ってるのよ!?」
ことり「うん、よくわかんないよね。ことりがせっかく海未ちゃんとエッチさせてあげたのに、ニコちゃんったら全然喜んでくれなかったんだもん」
にこ「殺す…ッ!! 絶対に殺してやるッ!!」
絵里「ニコっ!! 落ち着いてっ!!」
いつもの愛らしい笑顔など微塵も感じさせない……憤怒に狂ってことりに飛び掛かろうとするニコを絵里が抑える
にこ「離しなさいよっ!! あいつはっ、あいつは…ッ!!」
ことり「真姫ちゃんにはもっと幻滅したなぁ」
真姫「え……?」
ことり「ベルまで与えてあげたのに、全然海未ちゃんを落としてくれないんだもん」
穂乃果「ことりちゃん!! もうやめようよ? 何で……いつもの、穂乃果の知ってることりちゃんに戻ってよっ!!」
ことり「ことりはことりだよ? 変なのかなぁ? 海未ちゃんがいなくなってくれれば元に戻るかも♪ なんてね」
海未「全部……私の、せいで……」
穂乃果「どうして……っ、どうしてなの……」
希「さっきから海未ちゃん海未ちゃんって、ことりちゃんはよっぽど海未ちゃんの事が大好きなんやね」
ことり「へ? 何言ってるの? ことりの話ちゃんと聞いてなかった? 嫌いだよ、ことりは海未ちゃんなんて大嫌いっ!」
希「…ふーん、そうなん? 今、図星突かれて表情変わった風に見えたんはウチの気のせいかー」
ことり「……っ」
穂乃果「穂乃果が知ってることりちゃんは、海未ちゃんの事が大好きだったよ。海未ちゃんといることりちゃんはとっても楽しそうで幸せそうで……時々羨ましくなるくらい」
ことり「やめてっ!!」
真姫「昔からって、どういう事なの? さっき言ってたじゃない……海未のこと嫌いなのは…昔からだって」
海未「……」
穂乃果「昔、から……? 穂乃果が知らないだけで何かあったの……?」
海未「……私も知りたいです……理由もわからず、嫌いになられても……納得出来ません、……教えてください、悪い所があるなら、直しますから…っ」
ことり「……海未ちゃんには無理だよ」
海未「そんなことありません…っ! 私はことりの為だったら」
ことり「じゃあさ、ことりのこと愛してる?」
海未「それは勿論です…」
ことり「ふーん、なら……ことりと穂乃果ちゃん、どっちの方を深く愛してくれてるの? 海未ちゃんは」
海未「え……?」
穂乃果「……そう、だったんだ…」
穂乃果はことりに向けていた視線を、自分の足元へと落とした
ことり「穂乃果ちゃんならわかるよね? ことりが考えてる事」
穂乃果「わかる……わかるよ、でもっ! 三人でずっと一緒にいようって…」
ことり「一度もないって言える? 私達を愛してくれてる海未ちゃんに疑問を抱いたり、ことりを妬んだりしたことが一度もないって言える!?」
穂乃果「……そんなの、言えないよ。でも……私はことりちゃんのことも大好きだから、だから……そんな風に考えちゃいけないんだって……」
ことり「……強いね、穂乃果ちゃんは」
ことり「ことりは穂乃果ちゃんほど強くなかった……すごく弱くて、すごく我儘だったから……」
海未「穂乃果……、ことり……」
ことり「聞かせてよ、海未ちゃん……。穂乃果ちゃんも知りたいでしょ? 海未ちゃんの気持ち」
穂乃果「……うん」
穂乃果とことり、二人の視線が海未に向けられる
他の部員達も誰一人口を挟むこと無く、三人の動向を見守っていた
希「……ニコっち、辛くない?」
にこ「……辛くない、ワケないでしょ……っ」
絵里「我慢しないの……、馬鹿ね…」
大好きだった人……今も大好きな気持ちはニコの胸に存在していた
その人が自分ではない二人から一人を選ぼうとしている
海未の想いは心が泣き疲れるくらい理解してた筈なのに……
今にも溢れ出しそうなニコの涙を隠す様に、絵里は自分の胸へとそっと優しく抱き寄せた
真姫「……ぁ……いゃぁ……っ、海未…ぃ…」
凛「真姫ちゃん…」
花陽「辛いよね……花陽だって、泣いちゃいそうなのに…っ、真姫ちゃんはもっと…」
身体が海未を強く欲している、心も海未をそれ以上に欲しているのを感じていた
自分の気持ちまでベルに侵されていたって思ってたけど……違ったみたい、そっか……
──私、恋してたんだ
穂乃果「……」
ことり「……海未ちゃん」
海未「……はい…、私は…」
こんな質問、何の意味などない
海未が自分を選んでも、穂乃果を選んでも、何も変わりはしないだろう
決して受け入れたりしない、喜んだりしない、妬んだりしない
曖昧な答を出そうものなら、どんな手を使ってでもこの気持ちを永遠に消し去るくらいの覚悟で、一生涯憎んでやる
そう、ことりは思っていた
そして長い沈黙を破り、海未の口が開かれる
海未「……一番、我儘だったのは私の方です…」
海未「何度考えても、答は変わりませんでした……だって、昔からずっとずっと私の中に大きく存在していた揺るぎない想いなんです。二人は怒るでしょうね、完全に呆れられてしまうでしょう……嫌われるのは怖いです、でも……もう恐れはしません」
海未「……聞いてください、私の最大級の我儘を…」
海未「私は……、私は二人を愛しています。穂乃果とことり、二人が大好きです」
穂乃果「…っ」
ことり「ふふ…っ、ふふふ……何それ…? そんなの全然」
穂乃果「全然変わってないよね、海未ちゃんは……、穂乃果は良いと思うな」
ことり「穂乃果ちゃん…?」
穂乃果「海未ちゃんだけは変わらないでいてくれた……あの頃のままでいてくれた、私達二人と結婚して三人でずーっと一緒にいようって。穂乃果も海未ちゃんに賛成!」
穂乃果「海未ちゃんも大好きだし、ことりちゃんも大好き! だから三人でこれからもずっと一緒、駄目かな? これって簡単な事のようですっごく難しい事……、でも本当はとっても簡単な事だと思うんだ」
海未「穂乃果、それではことりの気持ちを丸っきり無視してることになるのでは…」
穂乃果「あ、そっか!」
ことり「……ふふっ、ズルいよ…二人とも……っ、ことり…皆にいっぱい酷い事してきたのに…っ、大好きって気持ち…一生懸命、抑えてきたのにっ…」
海未「ことり、私は貴女が大好きです」
海未は震えることりの肩を両手で抑え、静かに唇を重ねた
ことり「……ン…っ、ぁ……、……もぅ…… 海未ちゃんは、優しすぎるよ……バカ…………ことりも、大好き…」
希「一件落着……かな?」
にこ「改心したのかどうかは知らないけど……あんたがやった事は、許されないわよ……」
絵里「そうね、冷たい言い方になっちゃうけど……薬物を使用したことは罰せられるべきだと、私は思う」
ことり「……うん」
海未「はい……絵里の言う通り、罪は償わなくてはなりません……私も真姫も……、いいですね? ことり」
ことり「……うん、ごめんなさい。ニコちゃん、真姫ちゃん、皆」
真姫「……私、逮捕されちゃうの……?」
花陽「み、未成年だから…どうなんだろうね……」
凛「それに真姫ちゃんは被害者なんでしょ? だったらそんなに」
真姫「いや…私、は…」
海未「そうですね、ですので真姫は私やことりと比べて罪は軽いと思います」
真姫「え…?」
海未は穏やかな表情で微笑みかけた
絵里「じゃあそろそろ警察に行くわよ。学校に呼んだら大騒ぎになりそうだから、歩いて向かいましょう」
凛「え、絵里ちゃんっ!!」
希「凛ちゃん、エリチだって辛いんよ? でも誰かが言わないけんことやから……、わかってあげて」
凛「うん…」
穂乃果「……あの! 一つだけお願いがあるの…」
絵里「穂乃果…?」
最後に三人の時間を作りたい
一応、三人とも納得はしてくれたと思うけど、これから先どうなるかわからない……だから、今まで言えずにいた事、想いの内、全部……語り合いたい
と、穂乃果は皆に告げた
穂乃果「明日には絶対に警察に行くから……約束する」
ことり「……穂乃果、ちゃん…」
海未「……当事者の私が言える立場ではないのですが、……どうか、お願いします…」
反対する者は一人もいなかった
皆、三人を信じていた……道を誤ったことりだが、元は……いや、今も自分達の大切な仲間だから
ことり「……皆、ありがとう」
━━
放課後、三人は各々仕度を整え穂乃果の家……穂むらへと集った
ことり「お邪魔します」
穂乃果「あ、ことりちゃん! 遅いよー!」
海未「来てくれないのかと思いました…」
ことり「来るよ……だって、ことりは穂乃果ちゃんも海未ちゃんも大好きだもん…」
海未「ことり…」
ことり(あぁ……やっぱり、そうだ……)
ことり「ごめんね、遅くなっちゃって……これ、作ってたらつい…」
穂乃果「わぁ、ケーキだー! すごいすごーい!」
海未「す、少し大きすぎませんか……?」
ことりが取り出したケーキの表面には砂糖細工で作られたレースのリボン、飴細工の天使の羽……等とても豪華な装飾が施されている
その大きさも一般家庭で食べられるモノと比べて一回り以上に大きく……その上、二段重ね仕様になっていた
穂乃果「これって、もしかして……ウェディングケーキ?」
ことり「うん、頑張って作っちゃった♪ 美味しく出来てると良いなぁ」
海未「嬉しいです……とても、結婚式みたいで」
穂乃果「いつかこんな風に、本当に挙げられたら幸せだよね」
ことり「……うん、そうだね」
海未「不安……ですか?」
ことり「う、ううん…」
穂乃果「大丈夫だよ! 穂乃果とことりちゃんと海未ちゃん、三人だったら絶対に大丈夫!! だから言ってよ……何でも……、また今回みたいになっちゃうのなんてイヤだよ…っ」
ことり「ごめんね……穂乃果ちゃん」
海未「すみませんでした……」
穂乃果「ずっと待ってるからね、二人のこと……罪を償って帰ってくるまで…。ずっとずっと何年でも何十年でも!!」
海未「はい…」
ことり「…うん」
穂乃果「よし! 早くケーキ食べよ! ナイフ持ってくるねー」
大きなケーキとまるで釣り合いが取れない、家庭用の小さなナイフ
それに三人の手が重なり……、想いも乗せたその刃がケーキに通る
穂乃果「ケーキ入刀ー! なんちゃって、えへへ……何だか穂乃果、今すっごく幸せな気分」
海未「私もです」
ことり「……本当に幸せ……、幸せすぎるよ、こんなの…っ」
海未「ことりは相変わらず泣き虫ですね、ふふっ」
海未が器用に取り分け、ケーキの乗った皿を二人に渡す
ことり「ありがと、海未ちゃん」
穂乃果「もー、こういうのは女の子の役目なのにー」
海未「だったら少しくらいそういう素振りを見せてください」
穂乃果「むぅー、それはひとまず置いといて……いただきまーす!」
海未「頂きます、ことり」
ことり「いっぱい召し上がれ」
穂乃果と海未がケーキを口に運ぶ
穂乃果「んんーっ! おいひぃーっ!! 最高だよ、ことりちゃん!!」
海未「ことりはとてもお菓子作りが上手ですね」
穂乃果「あれ? ことりちゃんは食べないの?」
ことり「う、うん……実は作ってる時につまみ食いしちゃって、もうお腹いっぱい…」
穂乃果「えー! ずるーい!」
海未「せめて一口くらいでも」
ことり「……あのねっ!」
唐突に強い口調になることり、それは涙声にも感じられる
どうしたことかと、穂乃果と海未は顔を見合わせた
ことり「……ごめんね」
海未「ことり……?」
穂乃果「ことりちゃん? どうしたの?」
ことり「ことりは、穂乃果ちゃんと海未ちゃんのこと……大好きだよ」
穂乃果「うん…知ってるよ、そんなの穂乃果達が一番よく知ってるよ」
海未「……何故、そのような悲しそうな顔で言うのですか……?」
ことり「私は、二人が大好き……これは私の本当の気持ち、だと思う……二人といると嬉しくて楽しくて幸せで…っ、ことりには眩しすぎるよ……」
ことり「穂乃果ちゃんと海未ちゃん、二人ともいつもキラキラしてて、手を牽いてもらってることりも輝いてる様な気がして……っ、そんな二人の思い出を濁しちゃったことりは、一緒にいちゃいけないんだ…って」
ことり「でも、穂乃果ちゃんも海未ちゃんも優しいから……そんな事ないよって言ってくれるんだよね? ぎゅって抱き締めてくれるんだよね? ……優しすぎるのって、時には残酷なんだよ…」
ことり「穂乃果ちゃんは、海未ちゃんの事……独り占めしたいって思ったことなかったの? そんなわけ無いよね、女の子だもん……当たり前だよ、今だって海未ちゃんと二人きりになりたいって思ってるのかな? ……最後まで穂乃果ちゃんの心だけは、わかんなかった……ずっと一緒にいたのに……おかしいなぁ…」
ことり「海未ちゃん……ことりの大好きな海未ちゃん……愛してる……。愛してるから……愛してあげない……。愛してくれてるから……愛はもう充分……っ」
ことり「…………ことりの声、もう聴こえてないよね。……大好きな二人に、私からの贈り物…」
ことりには、聴こえないけど……
二人には、ちゃんと聴こえてるかな……?
──祝福を告げる、ベルの音が
カーン……カーン……カーン……カーン……
教会中に鐘の音が響き渡る
私は、今とても幸せです
右を向けば、ことりがいる
少し照れているような、幸せそうな表情で私の右手を抱いている
ことりは花嫁衣装がよく似合う、そのブーケも素敵ですよ
とても可愛らしい……この場では、美しいと言うべきなのでしょうか? そこら辺はよくわかりませんが
綺麗ですよ、ことり
左を向けば、穂乃果がいる
緊張しているのか顔が強張っている気がする
こういう時こそ、その一番の武器である笑顔を見せないでどうするのですか
左手に少し力を入れ、穂乃果に微笑みかけた
すると、穂乃果も笑った
今までで一番の最高級の笑顔で
二人の指に、リングを填め……口付けを交わす
これからも、ずっと一緒にいよう……私が幸せにします
そんな誓いを込めて
幸せすぎて……幸せすぎて……、まるで夢の中にいるような……
夢、の……
──あれ……? 幸せな筈なのに、この違和感は……?
海未「あの、ことり……え? ことり!? 何処へ…」
私の隣から、ことりが消えていた
まるで、初めからそこにいなかった様に……
海未「ほ、穂乃果っ!! ことりは」
穂乃果「ことりちゃん? そんなのどうでもいいから…」
海未「え……?」
穂乃果「穂乃果と……エッチなこと、しよ? 海未ちゃん」
海未「ほ、穂乃果……!?」
穂乃果「穂乃果ね…、ずっとずっと欲しかったんだよ、海未ちゃんのおちんちん……早く挿れて…、穂乃果を気持ちよくして? ね?」
海未「……っ、はい…」
━━三年後
「うぇっ…っ、うああぁぁんっっ!!」
「よしよし、泣かないの」
「うぅ…っ、ままぁぁ…っ!! うぁっ、うぁぁぁぁんっ!!」
「あぁもぅ…っ、笑顔をいつも忘れちゃダメって言ってるでしょ? ほら、にっこにっこにー☆」
「ひぐっ、うぁっ…にっこ、にこ…にっ……」
「上手上手、にっこにっこにー」
「へぇ、意外とちゃんと母親やっとるみたいやね」
「意外とって何よ、意外とって……こっちは大変なんだから…毎日必死よ…」
「……お父さんのこと、もう話したん?」
「いくらなんでも、まだ早すぎるでしょ…」
「もしかしたらニコっちのとこに帰ってくるかもしれんしね」
「そんな淡い期待なんてとっくに…、っていうか最初から持ってないわよ……大体、アイツはこの子の事知ってるわけ……っ」
「ん?」
「とんでもないお節介が目の前にいたわ……、あんたそんな勝手に…っ!! はぁ…、ニコじゃなかったらぶちギレられてるわよ?」
「なんならウチがお父さんになってあげてもええんよ?」
「だーかーらーっ! デリケートな問題なんだから少しは躊躇しなさいよっ!!」
「もう身体は大丈夫なの?」
「えぇ、薬も完全に体内から抜けたみたい」
「よかったぁ…」
「……ごめんなさい、いっぱい心配かけちゃって……私、とんでもなく馬鹿だったわ……本当に、ごめんなさい……」
「真姫ちゃん…」
「もうー! そんなの真姫ちゃんらしくないにゃ!」
「そうだよ、真姫ちゃんはちゃんと反省したんだから」
「……ありがとう。凛、花陽」
「手紙……、沢山溜まったね」
「これって、全部海未ちゃんからの?」
「えぇ…」
「……聞いていいのかわかんないんだけど、……真姫ちゃんは、薬から解放された今……海未ちゃんのこと、どう思ってるの……?」
「好きよ」
「あの人は、私が初めて好きになった人……今もそれは変わらない、きっとこの先も……」
「……」
「隣、いいかしら?」
「……絵里ちゃんはダメです」
「ここの紅茶、美味しいわよね」
「……何で、ことりに構うの?」
「それは同じ大学の先輩と後輩だからじゃない?」
「監視のつもり? またことりが何かしないか見張ってるの?」
「だったらどうするの?」
「……」
「……あれから、もう三年が経つのね…」
「……」
「そろそろでしょ? 海未が釈放されるのって」
「……」
「会いに行かないの?」
「行けるわけないよっ! 私の代わりに海未ちゃんは……っ、それにどんな顔して会いに行けって言うの!?」
「……海未はことりに会いたい筈だと思うけど?」
「……そんなわけないよ、海未ちゃんはことりのことなんてもう……。これはわたしが望んだ事……嫌えないなら、嫌われるしかないって……っ」
「めんどくさくて不器用で変で馬鹿で、どうしようもない人……貴女の事よ? 南ことりさん」
「……」
「でも、すごく人間らしくて私は嫌いじゃないかな? 私ですらそう思うんだから、あの子がそれに気付かないワケないんじゃない?」
「……授業は、いいの…?」
「してるわ、今ここで。貴女は人間性に少し問題があるみたいだし? ふふっ」
「……絵里ちゃんの方が、ずっと変だよ…」
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