私的良スレ書庫
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元スレ八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「これで最後、だね」
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ー 木曜 thursday ー
さて、ここで改めて名言しておくが、俺は比企谷八幡である。
いきなり何を、と思われるかもしれんが、これはとても重要な事だ。
そう、重要な事なのだ。大事な事だからな。2回どころか3回言ってもいい。
今でこそ様々な人間と関わり、多少なりとも変化が見られたとしても、俺は俺だ。
そこだけは、どれだけ時間がたったても変わりはしない。
知らない人に話しかけられれば、盛大にキョドるし、
優しくされれば、何かあるのではと裏をかく。
伊達に、長年ぼっちはやっていない。
最近になって奇跡的に俺の事を友達と呼んでくれる奴らも出て来たが、それもごく稀だ。
リア充を見れば、心の中で九九艦爆を出撃させるし、
昔の知り合いを見かければ、バレないようにと逃げてしまう。
どうしたって、変わらない所は変わらない。
だが、俺はそんな自分が好きだし、それで構わないと思っている。
他人に否定される事はあっても、自分くらいは肯定してやりたい。
だから俺は、今日も比企谷八幡であり続ける。
例え、
八幡「…………」
美波「…………」
現在進行形で、女の子と気まずくなっていたとしても、だ。
……やりづらい。
現在、俺は隣に座る彼女と仕事場へ向かっている。
足はタクシー。車の免許を持たない俺では、移動手段はどうしたってこうなる。
そしてただただ静かに鎮座している彼女は、新田美波。
今日、俺が付き添いを頼まれたアイドルだ。
彼女は自信がキャンペーンガールとなっているラクロス全日本選手権の会場で、宣伝も兼ねた選手達への応援をする事になっている。
そして俺は、例によってその付き添い。理由は前川の時と似たようなものだ。
しかし、今回俺は思わぬ壁に衝突している。
前川の時以上に、いや。下手をすれば、今までプロデュースしてきたどのアイドルたちよりも厳しい状況かもしれない。
全ては、新田さんの人柄に起因する。
それと言うのもーー
美波「あ、あの、今何時くらいですか……?」
八幡「え、あー……8時、半、くらいですね」
美波「そう、ですか……」
八幡「ええ……」
美波「…………」
八幡「…………」
と、いった何とも言えないやり取りがずっと続いている。
何と言うか、ホントに……
八幡「(やりづらい……)」
今にして思えば、これまでのアイドルたちが少々特殊だったのだ。
物怖じしないと言うか、強気というか、遠慮が無いというか。
基本受動的な俺に対し、グイグイ来る奴が多かった。
よく考えれば、同い年か少し年下が多かったからな。
気兼ねなく話しかけてこれたのは、それが理由の一つでもあるのかもしれん。
八幡「…………」
いや、あいつらなら例え年上でも同じように接してるだろうな。
予想ではあるが、断言出来る。
そしてそこに来て、年上の新田……さんだ。
正直、どう接していいのか分からない。
同じ年上でも、楓さんの時とは勝手が違う。
あっちはもっと年上だったし、何というか大人の余裕があった。
本人も気にせず話しかけてきたしな。
しかし新田さんは花も恥じらう19歳。
なんつーか、少女でもあり、大人の色気も出て来たりで……とにかくなんか緊張しちゃう!
まぁ最初は全然19歳だって知らなかったけどな。普通に女子高生だと思ってた。
しかも年齢を抜きにしても、新田さんはとても大人しい。
お淑やかというか清楚というか、間違っても「にょわー☆」とか言わないタイプだ。いや普通は誰だって言わんだろうけど。
無駄に元気があっても振り回されるだけだと思っていたが……
まさか、ここにきてあいつらの積極性にありがたみを感じる日が来るとは。
別に新田さんの性格が悪いとは言わない。
むしろ個人的には好ましいまである。
だが如何せん……
八幡「(気まずい……)」
ホント、まさかこんな所で俺のコミュ力の無さを思い出すとはな。
俺も、プロデューサーとしてまだまだヒヨっ子なのだった。
美波「あ、あの……!」
と、ここで新田さんから再び声がかけられる。
ちなみにタクシーに乗ってからいくつか会話を交わしたが、その全ては新田さんからのものである。
し、仕方ないやん? そんな面識無いし、何話していいか分からないやん?
俺は窓の外から目を離し、新田さんへと顔を向ける。
さぁ次は何の話題だ? 天気か? 会話の墓場か?
俺はどんな話を振られてもいいように身構える。が、新田さんの発した言葉は、俺の予想の斜め上だった。
新田「ご、ごめんなさい……!」
八幡「…………は?」
思わず、間抜けな声が出る。
何を言われるかと思えば、何故か謝られてしまった。
え、俺何か謝られるような事した?
新田「わ、私、今まであまり歳の近い男の人と話したこと無くて……だから、ちょっと緊張して……」
申し訳なさそうに、俯きがちに言う新田さん。
あーつまりなんだ。自分が緊張して上手く話せないから、そのせいで気まずい空気にしてしまって申し訳ないと、そう言いたい訳か。
別にそれは謝る事じゃないし、そもそも気まずいに空気にしている原因は俺にもある。
お人好しというか、律儀な人であった。
八幡「……いーっすよ。こっちこそすんません、年下のプロデューサーとかやり辛くて仕方ないでしょう」
美波「そ、そんな事ないですよ! 私なんかよりしっかりしてて、凄いと思います」
そう言って、やっと彼女は微笑んだ。
う……やばいな、本当に美人だ。これは勘違いしても責められない。いやしないけど。
というか、さっき何かとんでもない事を言ってなかったか?
確か、あまり歳の近い男と話した事が無いとかなんとか。
……マジかよ。こんな可愛いのに男の免疫ないとか、完全に誘ってやがるよ!(違います)
美波「あまり話した事が無かったですけど、比企谷さんがとても良い方で良かったです」
安心したようにそう言う彼女。
というか、比企谷さん呼びとな。年上なだけに、何とも違和感を覚える。
八幡「さん付けとか、敬語もいいですよ。年下なんですし」
美波「え? でも……」
八幡「そっちのが、かえって気遣っちゃいます」
少し卑怯な言い方だが、こう言えば彼女も諦めるだろう。
実際言った事は本音だし、普通に話してくれた方が俺も何かと気が楽だ。
美波「そう……かな? ……じゃあ、よろしくね比企くん」
八幡「…………ええ」
ニコッと笑い、新田さんは少し恥ずかしそうに言う。
うぁぁああああああ天使か己はッ!!!!
し、しっかりしろ八幡! 戸塚だ、戸塚の笑顔を思い出せ!
俺は心の中で戸塚とのアバンチュール(妄想)に没頭するが、勿論新田さんはそんな事など知らない。
美波「今日はありがとう比企谷くん。プロデューサーさんが来れなくて困ってたから、助かっちゃった」
八幡「えっ? あ、あぁ。別にこれくらい大丈夫ですよ」
新田さんの言葉で、俺は現実に戻る。
危なかった。もう少しで超えてはいけない一線を超える所だった……
八幡「実際、俺が一緒にいてもやれる事なんて殆ど無いですしね」
美波「でも、男の方が付き添いなら危ない人に襲われる心配も少ないってプロデューサーさんが言ってたよ?」
八幡「まぁ確かに……でも、新田さんのプロデューサーならどっちにしろ心配無さそうですけどね」
美波「あ、あはは……うん……」
思い出すは、あのやけにキリッとした金髪眼鏡の女プロデューサー。
美人でスタイルも抜群。ぶっちゃけアイドルとしても通用するような容姿の彼女だが……如何せん、残念だ。
なんでも男には興味が無いらしく、可愛い女の子をプロデュースしたくて一般Pになったらしい。何それ怖い。
元女子大の主席とは聞いていたが、まさかここまでとはな。
この間なんかは、アイドルたちのライブ衣装の試着に同伴して「メ、メニアーック!」とか言って鼻血出して倒れたらしい。だから怖ぇって。
美波「で、でも良い人なんだよ? 私の為に凄い頑張ってくれてるし。……まぁ、ちょっと薦めてくる衣装は恥ずかしいけど」
八幡「えっ」
なん…だと……
そうか。新田さんのやけに露出の多い衣装はそのせいだったのか。やるじゃねぇか変態プロデューサー!
世の美波ファンを代表して、心中で賛辞を送る。
美波「それに、比企谷くんの事も評価してたよ? プロデューサーさん、あまり男の人の事を良く言わないから、ちょっと驚いちゃった」
八幡「あーそれはまぁ……」
というのも、新田さんのプロデューサーと初めて話したのは最近になってからだ。
なんでも、凛のライブに感銘を受けたらしい。
直接会いに来て、なんか凛にハァハァしていたのは記憶に新しい。凛が怯えてて可愛かったです。
ちなみにその時に「あなた、中々良い趣味してるわね」と言われた。
いやアンタには敵いませんて。
俺はその時の事を思い出し苦笑する。
すると、そこで新田さんは別の話題を振ってきた。
美波「……比企谷くん、一つ訊いてもいい?」
八幡「? 何です?」
美波「こんな事訊くのは、あまり良くないかもしれないんだけど……」
顔をしかめつつ、新田さんはおずおずと話し出した。
美波「私や凛ちゃんはシンデレラプロダクションのアイドルだけど、プロデューサーや比企谷くんは、その……正式には、社員じゃないよね」
八幡「……そう、ですね」
美波「だから、その……このプロデューサー大作戦っていう企画が終わったら……」
その続きは、言葉になることは無かった。
それでも、言わんとしてる事は充分に伝わっていた。
俺だって、気付いていなかったわけじゃない。
このプロデューサー大作戦という企画が終われば、俺も、新田と前川のプロデューサーも、
会社を辞めて、元の一般人に戻るのだ。
もしかしたら、そのまま正社員になる可能性もある。
以前に言ったように、この企画自体に選定的な意味合いがあるなら、それは決して低い可能性ではないだろう。
だがそれでも、確実な話ではない。
企画が終われば、別れがやって来る。
そう思っていた方が、きっと身の為だ。
八幡「……やっぱり、プロデューサーと離れるのは寂しいですか?」
俺がそう訊くと、新田さんは俯き、やがて小さく頷いた。
美波「……うん。プロデューサーさんは、私に色んなものをくれたから」
その言葉を聞いて、ふと凛の顔が、凛と過ごしたこれまでの記憶が蘇る。
色んなものをくれた。その言葉はきっと、事実だろう。
そしてそう思っているのは、彼女のプロデューサーも同じはずだ。
俺が、そうだから。
美波「……比企谷くんは、どう思う? プロデューサーさんには聞けないけど、同じ立場の比企谷くんならどうなのかなって……」
八幡「…………」
アニバーサリーライブまで、既に二ヶ月を切った。
そしてそれが終われば、もう企画終了まで僅かな時間しかない。
つまり、それが凛との残された期間。
そんな事は分かり切っている。
だから、俺はーー
八幡「わからないです」
美波「え?」
俺の言葉が意外だったのか、目を丸くする新田さん。
そんな新田さんに対し、俺は言葉を続ける。
八幡「……いや。というよりは、考えてる余裕が無いって感じですかね」
美波「余裕が無い……?」
八幡「ええ。だって、まだ企画は終わってませんから」
美波「っ!」
そうだ。
確かに別れはいつか必ずやってくる。
でもそれは、今じゃない。
八幡「そりゃ俺だって思う所が無いわけじゃないです。それでも、今は凛をトップアイドルにする事だけを考えるようにしてます」
美波「…………」
八幡「まぁ、問題を先送りにしてるって言われたらそれまでですけどね。……けど俺は、凛をシンデレラガールにしたくてプロデューサーやってるわけですから」
きっとこんな事、本人には言えないだろうな。
相手が新田さんだからこそ言える、今の俺の本音。
そしてこれはきっと、俺だけではない。
八幡「……新田さんのプロデューサーも、たぶん同じだと思いますよ」
美波「っ! プロデューサーさん、も……?」
八幡「ええ」
新田さんとプロデューサーが、二人で話しているのを見た事がある。
本当に中が良さそうで、こんな俺からでも、確かな絆があるように感じられた。
まるで、姉妹のように。
美波「そっか……」
そして俺の言葉を聞いた新田さんは、少しだけ晴れやかな表情になっていた。
いつもよりちょっとだけ、力強い笑顔。
美波「それなら、私も頑張らないとだね」
八幡「……ですね。手始めにまずは、今日の仕事を片付けましょう」
美波「うん♪」
そうして、タクシーは仕事場へと向かって行く。
その後いくつか会話を交わしている内に気付いたが、いつの間にか普通に話せるようになっていた。
お互い、自分の胸の内を見せたおかげかもな。
きっと、誰しもが等し並に悩みを抱えている。
それはアイドルでも、プロデューサーでも。
解消できたとは言えない。それでも、今このときだけは彼女を笑顔に出来た。
比企谷八幡は変わらない。
イケメンを見れば呪詛を唱えたくなるし、
可愛い子を見れば、どうせビッチだろうと決めつける。
我ながら、腐った目と性根をしているものだ。
しかし。そんな俺でも、一人のアイドルを笑顔に出来た。
ならやっぱり、
比企谷八幡という人間も、案外捨てたもんじゃない。
次回は金曜! 一週間も後半へ突入です。
美波ちゃんよりヒッキーが年下だという事実に最近気付く1。
美波ちゃんよりヒッキーが年下だという事実に最近気付く1。
乙 次回も期待
美波のプロデューサーはいぬぼくの野ばらかww
美波のプロデューサーはいぬぼくの野ばらかww
プロデューサーのCVもアイドルと同じでいいんじゃないかと思うような人だなw
そろそろ川島さん来てもいいと思うんだけど、大人枠楓さんなんだよなあ
そろそろ川島さん来てもいいと思うんだけど、大人枠楓さんなんだよなあ
乙です!
野ばらさん、雑巾…一反木綿の世話はどうしたんだよ!?
野ばらさん、雑巾…一反木綿の世話はどうしたんだよ!?
このシリーズが始まって今日でちょうど1年なんだよな
感慨深いものがあるな
感慨深いものがあるな
一周年御目出度う御座います。
このSSの御陰で今や重課金兵の仲間入りです。
このSSの御陰で今や重課金兵の仲間入りです。
皆さんお祝いの言葉ありがとうございます!
まぁぶっちゃけ更新が遅いせいでここまで長引いたわけですから、めでたいかどうかで言えば微妙なところですが……
今日はちょっと時間が無いんで、投下は明日か明後日を予定しています。
一年立つ前に完結させたいなーとは思っていたんですが、もうしばしお付き合いをお願いします。
まぁぶっちゃけ更新が遅いせいでここまで長引いたわけですから、めでたいかどうかで言えば微妙なところですが……
今日はちょっと時間が無いんで、投下は明日か明後日を予定しています。
一年立つ前に完結させたいなーとは思っていたんですが、もうしばしお付き合いをお願いします。
明日か明後日まで待ちます。
もう1年続けてしまうのはどうでしょう?
もう1年続けてしまうのはどうでしょう?
最近の更新の速さはすごいな…
余命宣告でもされた?救急車呼ぼうか?
余命宣告でもされた?救急車呼ぼうか?
ー 金曜 friday ー
八幡「ーー何でだッ!」
柄にもなく、叫んでしまう。
こんなに喉が痛くなる程声を出すなんて、俺らしくない。
しかしそれでも、叫ばずにはいられなかった。
絶対に諦めるわけには、いかなかったんだ。
奈緒「…………」
そんな俺を、酷く冷めた目で見つめる奈緒。
呆れ果てたように、どこか侮蔑を含めた視線で、ただただ俺を射抜く。
何だってんだ……
そんなに、そんなにいけない事なのかよ……!
未央「なおちん……」
そしてその隣では、奈緒を宥めるように声をかける本田。
どちらかと言えば、彼女は俺を擁護してくれている側だった。
未央「少しくらいなら、ね? プロデューサーもここまで言ってるんだし……」
奈緒「ダメに、決まってるだろ……」
八幡「ッ!」
だが、それでも奈緒は引き下がらない。
俺への睨みを強くし、更に畳み掛けてくる。
奈緒「そんなの……そんなの許されるはずがない! 例え周りが良いって言ったって、アタシが認めないっ!」
絶対に引かないという、奈緒の強い意志が伝わってくる。
だがな、そんなのは俺だって一緒なんだよ。
絶対に、引けるかーーッ!
八幡「いいぜ……お前が俺の頼みを聞けないってんならーー」
奈緒・未央「「ッ!!」」
八幡「ーーまずは、そのふざけた幻想をぶt「そろそろ本番でーす! 出演の方は準備お願いしまーす!」
…………。
奈緒「あ、はーい。今行きまーす」
未央「ごめんねプロデューサー? もう始まるし、行ってくるね♪」
スタッフの声が聞こえるや否や、奈緒と本田はさっきのノリから一転、何事も無かったかのようにさっさとその場を後にする。
残されたのは、ただ虚しく右拳を掲げる俺一人。
……なんでだ。
俺はその場に崩れ落ち、無様にも膝をつく。
どうしようもない想いが、溢れてしょうがなかった。
なんで、なんでーー
八幡「なんで俺も『千葉散歩』に出してくれないんだ……!」
奈緒「いや無理に決まってるだろ」
奈緒のツッコミすら、今の俺には虚しかった。
わざわざ戻ってくるなよ……
そんなこんなで、今日の俺の仕事は奈緒と未央の番組『千葉散歩』の同行だ。
千葉出身の二人が、千葉の名所を紹介していくローカル番組。今最も俺の中で熱いテレビ番組だと言えよう。
ちなみに毎週録画しているのは秘密である。
俺が今日このロケに同行しているのは、先日奈緒たちに相談を受けた事が発端になる。
より身近な意見を取り入れたいという事で、出演者以外の千葉出身者からの案が欲しかったらしい。
もちろん、俺は二つ返事でOKした。むしろ心待ちにしていたまである。
俺が積極的過ぎてスタッフが若干引くくらいだったが、まだまだこんなもんじゃ足りないくらいなんだよこっちは!
そしてそんな俺の意見が採用された回の収録が、今日というわけだ。
やはり原案者としては現場まで同行せねばなるまいと、半ば強いn……快諾を得てロケに付いて来た。
本当なら少しだけでもいいから出してほしかったが……やっぱ無理ですよねー
まぁ俺もダメもとだったしね。半分冗談だったしね。いやホントホント。超出たかったーーッ!!
というわけで、俺は大人しくスタッフさんと一緒に静かに見守るのでした。
未央『いやー楽しかった♪ 今日はどうだったナナミン?』
菜々『ナナもすっごい楽しかったです! ゲストで呼んで頂きありがとうございました♪』
カメラ越しに見えるのは、今日のゲストである安倍菜々……さん。
既にロケも終盤で、残るはエンディングを残すのみだ。
菜々『いやー最近は忙しかったから、あまり帰ってこれn……あっ』
未央『帰って??』
菜々『い、いやあのそのっ、そう! ウサミン星へのワープホールが千葉にあってですね! それで……』
未央『そう言えばナナミン、マザー牧場行った時に、昔よく遊びに来てたとかなんとか……?』
菜々『ミ、ミミミン……』ダラダラ
奈緒『こ、今週はこの辺で! また来週も千葉のどこかでお会いしましょう! またなー!』
『はーい、オッケーでーすっ!』
八幡「…………」
オッケーなのかよ。
心の中でツッコミを入れ、今日の収録は無事終了した。
いや、約一名無事じゃない気もするが。
なんでもファンには、このグダグダな緩い感じがウケているらしい。
まぁ、気持ちは分からんでもない。
ちなみにレギュラーは本田と奈緒。
そして順レギュラーには同じく千葉出身のデレプロ所属アイドルの、太田優に矢口美羽がいる。
ただ基本的には本田と奈緒の二人進行なので、たまーに太田さんか矢口がそれに参加するといった具合だ。
基本的にゲストは珍しいのだが、何故か安倍さんはよく呼ばれる。ナンデダロウネー。
そろそろ凛もゲストに呼んでほしいものだ。
そんなわけでロケも終了し、場所は変わってロケバス内。
今日はもう上がりなので、東京の会社まで送ってくれるらしい。良いスタッフさんたちだ。
奈緒は疲れたのか、窓へもたれ眠ってしまっている。
安倍さんは……なんか凹んでるな。そっとしておいてあげよう。
そんで本田はというと……
未央「お疲れ様プロデューサー♪」
何故か、俺の隣の席へと座っている。
いや、他にも席結構空いてるよ?
八幡「……お疲れ」
未央「もうプロデューサー、そこは闇に飲まれよ! くらいは言ってくれないと!」
八幡「お前は俺に何を求めてるんだ……」
からかうような笑顔で、これでもかと絡んでくる未央(比喩です)。
ロケが終わったばかりだというのに元気な奴である。ちょっと杏に分けてやれ。
俺が鬱陶しそうな態度を隠そうともせずにいると、それが気に食わなかったのか、わざとらしく拗ねた顔になる本田。
未央「あーあ、折角千葉散歩に出演出来るようにディレクターさんにかけあおうかと思ったのになー」チラッ
八幡「クックック、闇に飲まれよ!」
そして俺は単純な男であった。
くっ、俺を即陥落させるとはな。やりおるわい。
未央「あはは、期待せずに待っててね」
そう言って笑う本田だが、俺としては期待せずにはいられない。
ぶっちゃけ俺が出演した所で一体誰得なの? と、当たり前過ぎる疑問も湧くが全力でスルー。
いやぁ、まさか本当にかけあってくれるとはな。マジ本田△。
内心で彼女に対し賞賛の嵐を送る。
と、そこで本田はふと、いつもとは少し違う笑みを見せた。
それは何と言うか、昔を思い出し、懐かしむような微笑み。
俺だって本田とはそれほど長い付き合いというわけでもない。臨時プロデュースした事だってたかだか数回だ。
が、それでも今の表情は少し違って見えた。
いつもの眩しい笑顔とは違う、どこか哀愁を漂わせた微笑。
その見た事のない一面に、不覚ながらも一瞬目を奪われる。
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