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元スレ八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「きっと、これからも」
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俺ガイルとモバマスのクロスSSです。
モバマス勢がメインなので俺ガイル側の出番は少ないです。
ヒッキーのこれじゃない感はご容赦を。
今度こそヒッキーと凛ちゃんのこれからを願って!
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八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1374344089/
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八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「その2だね」
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八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「その3だよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1387391427/
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八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「これで最後、だね」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396804569/
前スレ
八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「ぼーなすとらっく!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407691710/
SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1437327446
モバマス勢がメインなので俺ガイル側の出番は少ないです。
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八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」
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*
八幡「……は? 来られないかもしれない?」
思わず、素っ頓狂な声が出る。焦りの色が含まれているのが自分でも分かった。
携帯電話を掴む力が僅かに強くなり、相手の返答を固唾を飲んで待つ。
ちひろ『ええ。申し訳ないんですが、やはりこの天気では……』
電話越しに、幾分沈んだ声で話すちひろさん。
その言葉を聞いて、俺はチラリと窓の外へと視線を移す。
雨。いや、もっと正確に言い表すならば、豪雨とでも言えばいいか。
ザーザーと響くように鳴る雨音に、時折ガタガタと窓へと風が吹き付ける音も聞こえる。
まるで台風でも来ているのではないかと思うくらいの悪天候。こういったロケーションには定番とも言える、まさしく嵐である。いや、撮影まだ始まってないよ?
この旅館までの移動手段はバスしかない。
昼間乗ってきた時の道のりを思い出すと、確かにこの天気の中を来るのは厳しいだろうな。
八幡「……この嵐が止むまでは、難しいって事ですか」
ちひろ『一応、予報ではあと三日もすれば治まるようですね。そうすればすぐにでも向かう予定です』
三日……結構かかるな。
予報で雨と分かっていたとは言え、まさかここまで規模がデカイとは。ついていないのにも程がある。
八幡「けど大丈夫なんすか? 撮影のスケジュールとかに影響したりは…」
ちひろ『予備日を設けてありますから、その点は大丈夫かと。多少押す事にはなりますが、事態が事態ですし仕方ありませんね』
八幡「そう、ですね……」
俺も一応スケジュールには目を通してあるので、予備日がある事は知っていた。山の天気は変わり易いと言うし、多めに取っていた事も。しかしそれにしたって初っぱなから使うとは予想すまい。
ちひろ『その間そちらの事は比企谷くんに任せる事になります。申し訳ありませんが、よろしくお願いしますね』
八幡「……うっす」
あと三日、俺たちはこの嵐が過ぎ去るまでこのまま待機しなくてはならない。そして面子はアイドル数名と俺のみ。……コナンくんや金田一がいなくて良かったぜ。いたら確実に誰か死ぬ。
ちひろ『まぁ、特に気負う必要もありません。これを機に皆さんと親睦を深めてください♪』
簡単に言ってくれるな。むしろもう色々といらぬ世間話まで済ませてしまった所だ。この分じゃ夕食時が思いやられる。
……っていうか、もしかしてこれから三日間ずっと絡まれっぱなしの可能性もあるんじゃねぇの? 何それ嫌過ぎる。
俺が驚愕の事実に戦々恐々としていると、そこでちひろさんは思い出したかのように声を上げる。
ちひろ『あっ、そうそう。折角だから比企谷くんに持たせたアレも皆さんで頂いちゃってください。……分かりますかね?』
八幡「アレって、もしかしてあのやたら高そうな桐箱の事ですか」
持って来た荷物の中でも、なんか無駄に重いなとずっと思っていたから覚えていた。包みの隙間から桐箱が見えたので一応丁寧に扱ったが、まぁ、大きさと形状から中身は大体想像出来る。
ちひろ『そうですそうです! 元々は収録終わりの打ち上げ用にと思ったんですけど、今回お待たせさせてしまうお詫びに皆さんでどうぞ」
八幡「いいんすか? 打ち上げ用の方は…」
ちひろ『それはこっちが合流する時にまた用意しますから大丈夫です。あ、未成年の方にはあげちゃダメですよ!? もちろん比企谷くんも!』
一転、慌てたように注意してくるちひろさん。
つーかやっぱ中身はそっち系なのね……
八幡「分かってますよ。幸い喜びそうな大人の方が三人程いるんで、ありがたく貰っときます」
大分高級そうだったし、本当に喜びそうだ。羽目を外しすぎないかが少々心配ではあるが。
八幡「けど、別にそこまで気を遣う必要も無いと思いますけどね。天候の影響なんて誰のせいでもないわけですし」
ちひろ『そんな大した事じゃないですよ。まぁ敢えて言うなら……』
八幡「……言うなら?」
数秒の間を開けた後、電話越しの事務員さんは無駄にしたり声で言う。
ちひろ『私なりの愛ですよ』
八幡「そんな汚いもん、いらないです」
そんな会話を交わし、俺たちは少しだけ笑い合った。
ちひろさんも中々良い趣味をお持ちのようだ。それが原作派にしろアニメ派にしろな。
ちひろ『それではアイドルの皆さんの安全と健康管理の方、よろしくお願いしますね』
八幡「ええ。出来るだけ飲ませ過ぎないよう善処しますよ」
電話を切り、自分で言った言葉にたぶん無理だろうなぁ…と苦笑が漏れる。
こんな事まで仕事に入ってるんだから、中々どうしてプロデューサーというものは大変だ。
……いや、絶対他のプロダクションならあり得ないよなやっぱ。冷静に考えておかしいでしょウチの事務所のあの酒豪連中。デレプロ多岐に渡り過ぎ問題。
八幡「さて、そろそろ夕食の時間か」
踵を返し、一階の会場へと向かう事にする。
俺が今いる場所は最上階である三階。の一番奥の談話室。俺の部屋は三階にあるが、何故わざわざ奥の談話室まで来て電話しているのか、それはズバリ電波がここじゃないと繋がらないからである。やっぱソフバってry……いや何でも無い。聞けば他の機種の人もそうらしいし、関係無いから。関係無い(震え声)。
廊下を歩きつつ、途中に例のゲームコーナーを通りかかる。そういや三階にあるんだったな。
正直後ろ髪を引かれる思いではあったが、プロデューサーである俺が夕食に遅れるわけにもいくまい。遊ぶのは後でだな。
あれ、でもここって何時までやってるんだ? 大抵終わり時間があって、それが過ぎたら暗くなって遊べなくなるよな。マジかよ。出来れば皆寝静まった時に一人で遊びたかったんだが……
念の為確認しておこうと、どこかに終了時間が書いてないか辺りを見渡してみる。
ふーん、ほーん、じゃんけんゲームあるやん。絶対勝てないんだよなこれ~。でもやる。違う違うそうじゃない終わり時間が知りたいんだよ俺は。何だココめっちゃワクワクする!
俺が誘惑の渦に呑み込まれそうになっていると、しかしそこで人影を視界の隅に捉える。あの金髪は……
「あーんもう取れない! これアーム弱過ぎないー?」
八幡「何してんだお前……」
小さなクレーンゲームに食い入るようにへばりつく少女。俺の呼びかけに一瞬ビクッと反応すると、こちらへ振り返る。
莉嘉「あ、八幡くん! やっほー☆」
八幡「やっほー。……じゃねぇ、もう夕飯だぞ」
莉嘉「えっ、ウソ。もうそんな時間?」
慌ててケータイをチェックする莉嘉。
ちなみに格好は既に浴衣になっており、長い金髪も結わずにストレートのままだ。うむ、悪くない。
八幡「もしかしてずっとここで遊んでたのか?」
莉嘉「んーん、最初はお姉ちゃんと電話したくて来たんだ。っていうかここ電波弱過ぎるよ八幡くん!」
八幡「俺に言うな……」
なんつーか、今時な文句を言ってくれるJCだな。そんなに電話がしたいなら一階のロビーに確か固定電話あったぞ? まぁどっちしろ部屋から出ないといけない時点で一緒な気もするが。
八幡「電話はちゃんと出来たのか」
莉嘉「うんっ。……あ、そういえばお姉ちゃんから八幡くんに伝言があるんだ」
八幡「伝言?」
美嘉から俺に? なんだろう。温泉饅頭よろしくとかか? いやそれなら莉嘉に頼むか。
莉嘉「『莉嘉のこと、ちゃーんと面倒見て頂戴ね★』だって」
八幡「……さいですか」
なんつーか、相変わらすシスコン全快なこって。しかしそれを妹本人から言わせるってどうなの?
莉嘉「お姉ちゃんってば、アタシのこと子供扱いし過ぎだよねー! 一人でも大丈夫だもん!」
ぷりぷりと、頬を膨らませて抗議する莉嘉。この分じゃ、たぶん美嘉本人にも色々と文句を垂れてたんだろうな。
莉嘉「……まぁ、でも」
と、そこで莉嘉は一転顔を綻ばせて俺を見る。
莉嘉「お姉ちゃんもそう言ってたし、八幡くんが良いなら、アタシの面倒見てもいいよ?」
八幡「……なんじゃそりゃ」
ニパーっと、太陽のような笑顔。
言ってる事には全く可愛げが無いのに、笑顔はこんなにも可愛らしいんだから本当に困る。
これも美嘉の奴が甘やかしたからだろうな。……もっとも、俺も人の事は言えないが。
八幡「まぁ、今はプロデューサーは俺しかいないしな。……美嘉にも頼まれたし、面倒くらい見てやらん事もやぶさかではない」
莉嘉「えー? それってつまりどういうことー?」
八幡「莉嘉が可愛くて仕方ないから、面倒見てやるって事だよ」
俺がそう言うと、莉嘉は吹き出すように笑い出す。
莉嘉「アハハ、何それ。なんかキモーい。……でも、ありがと♪」
嬉しそうに言って、また屈託の無い笑顔を作った。
ったく、軽々しくキモイとか言うなよな。どんどん美嘉に似て来てるような気がするぞ。なんだかんだで良い子な所とか、な。
八幡「そんじゃ、そろそろ行くぞ。夕飯に遅れる」
莉嘉「はーい。でももう少し遊んでいきたかったなー」
名残惜しそうに言う莉嘉。
こういう所はやっぱり子供っぽいな。いや、気持ちはすげぇ分かるんだけども。
八幡「メシ食ったらまた来ればいいだろ」
莉嘉「あ、じゃあ今度は八幡くんも一緒に遊ぼ! ホッケーやろうよホッケー!」
八幡「あ? いや、俺は…」
出来れば一人で来たかったんだが……あー、まぁ別にいいか。
はしゃいでる所を見られるのが嫌なくらいで、別段そこまで拘りがあるわけでもないしな。意地張って遊べないよりは全然マシか。
莉嘉「でもちょっと古くさいよねー。もっと新しいゲームがあったら良かったんだけど」
八幡「ばっかお前、その古くさいのが良いんだろうが。この空気感やべぇだろマジで」
莉嘉「うわっ、怒られた」
思わず反論してしまった俺に莉嘉が軽く引いていた。
いやいや、でもこればっかりは譲れないでしょ。このちょっと薄暗くて何故か床が絨毯な所とか最高じゃない? あ、分かんない? そうですか。
莉嘉「じゃあ遊び方が分からなかったのは八幡くんに頼むね☆ いる間に遊びきれるかな~」
八幡「……その点は心配いらないと思うがな」
莉嘉「え? なんで?」
俺の発言に、キョトンと可愛らしく首を傾げる莉嘉。
どうせ夕飯の時に話す事にはなるが、先に言っておいてもいいか。
八幡「この天候のせいで、スタッフさんや他の出演者が遅れるんだとよ。三日くらいは待機になる予定だ」
莉嘉「えー! そうなの!?」
あからさまに大仰な反応をする莉嘉。
まぁ、明日から仕事だと思っていたのに突然ヒマになるわけだもんな。驚きもするか。
八幡「多少スケジュールは押す事になるが、予備日もあるし、旅館も余裕を持って貸し切ってあるから大丈夫だろ」
莉嘉「そっか……」
少しばかり、元気を落とした様子の莉嘉。
なんだ、てっきり今の流れで沢山遊べると喜ぶと思ったんだがな。撮影が楽しみだったのか?
俺が訝しんでいると、そこで不意に莉嘉は神妙な顔つきになり、俺を見る。
莉嘉「ねぇ、八幡くん」
八幡「なんだ」
莉嘉「お願いがあるんだけど、いいかな」
お願い? おねがい、おねがいかぁ……
なんとも不穏なワードだ。プロデューサーになってからは特に。
莉嘉が珍しく真面目な顔で言っているのが拍車をかける。
けど、ついさっき面倒見るって言っちまったしなぁ。
八幡「……まぁ、内容によるよな」
俺が何とも歯切れの悪い解答を返すと、莉嘉は辺りを見渡した後、ちょいちょいと小さく手招きをする。耳を貸せというなぞらしい。
人に聞かれるとマズイ内容なのかとちょっと不安が増したが、大人しく耳を寄せる。
莉嘉「…………」 こしょこしょ
八幡「…………はぁ?」
その莉嘉からのお願いに、思わず変な声が出た。
いや、何を言い出すかと思えば……マジで?
莉嘉「お願い! 八幡くん!」
手を顔の前で合わせ、このとーり! と頼んでくる莉嘉。
いやしかし、そう言われてもなぁ……
莉嘉「…………」
八幡「…………」
莉嘉「…………」
八幡「……まぁ」
莉嘉「っ!」
八幡「……考えとく。一応な」
苦し紛れにそう言うと、莉嘉は満面の笑顔で「ありがとー!」と抱きついてくる。いや俺引き受けるとは言ってないかんね? 前向きに検討するだけかだんね?
しかしこいつ、俺の溢れんばかりのお兄ちゃん力を利用するとは侮れん奴だ。
莉嘉を引きはがし、もうさっさと夕食会場まで行く事にする。
莉嘉「あ、待ってよ八幡くん!」
八幡「待たん。……そういや、あのゲームコーナーって何時までやってるんだ?」
莉嘉「え? えーっと確か、10時までって書いてあったかな?」
思い出すように呟く莉嘉。
なるほど。10時ね。……いやキツくね?
どう考えたってあの方々の宴会がそんな早く終わるとも思えないし、俺が解放してもらえるとも思えない。これ、今日はもう莉嘉と遊ぶのは無理っぽいな……
とりあえずは、出来るだけ早く終わってくれるよう願おう。
莉嘉と共に廊下を歩き、会場へと早足で向かう。
若干な憂鬱な気分のまま、未だ見ぬ露天風呂へと思いを馳せた。
* 登場人物紹介 *
高垣楓 主人公
渋谷凛 助手
比企谷八幡 狂言回し
片桐早苗 元警官
鷺沢文香 文学部学生
城ヶ崎莉嘉 現役女子中学生
???
???
安斎都 探偵
というわけで、大変遅くなりましたがスレ立てました。短くてごめんね。
これからもゆっくりな更新になるとは思いますがよろしくお願いします!
スレの名前を前に落ちた奴と全く一緒で立てちゃったんだけど、これまずかったりするんですかね……?
これからもゆっくりな更新になるとは思いますがよろしくお願いします!
スレの名前を前に落ちた奴と全く一緒で立てちゃったんだけど、これまずかったりするんですかね……?
久々の投下予告ですー、たぶん時間はいつも通り。
>>24 ありがとうございます。こんだけダラダラやってるのに、いまだに読んでくれる人がいるのは嬉しい限りです。
というか気付いたら2年を過ぎていた……どうか今後ともよろしくお願いします。
>>24 ありがとうございます。こんだけダラダラやってるのに、いまだに読んでくれる人がいるのは嬉しい限りです。
というか気付いたら2年を過ぎていた……どうか今後ともよろしくお願いします。
*
夕食会場である一階の大きな和室。莉嘉を引き連れて部屋に到着すると、もう既に殆どの面子が揃っていた。
向かい会うように二列の食膳が並んでおり、入り口から向かって右側の列の手前、そこに浴衣姿の凛を捉える。ふむ。
俺は特に迷う事なく歩を進め、凛の隣に座ろうとしたのだが……
早苗「比企谷くーん?」
八幡「っ!」
呼びかけに、足が止まる。
見れば反単側の左列、その手前に座っていた早苗さんが俺を見ていた。不気味なくらいの笑顔で。
八幡「……なんすか?」
とりあえず、無視するのもアレなので聞いてみる。
早苗「いや、こっちこっち」
ちょいちょいと、手招くようにする早苗さん。
心なし既に顔が赤い。もう飲んでんのか? いやよく考えたらさっき大広間で飲んでたな。
尚も笑顔で手招きする早苗さんの真意を少し図りかねたが、そこではたと気付く。
あーなるほどな。そういう事か。
俺は納得すると、早苗さんの近くまで寄ってしゃがみ込む。
八幡「ここのゲームコーナー、10時までしかやってないらしいっすよ。遊びたいんなら早めに切り上げる事をお勧めします」
早苗「え。あ、うん」
八幡「では」
いい終えると、俺は立ち上がり反対側の列へと向かう。そして改めて凛の隣に座ろうとして……
早苗「って、んなことはどうでもいいのよっ!!」
八幡「っんぐ!?」
背後からの見事なホールド。首がガッチリと締め上げられる。いやちょっ、またも柔らかい感触がががが! っていうか意識飛ぶぅ!
早苗「普通に考えて、こっちの席に座りなさいって意味だって分かるでしょ!?」
八幡「い、いや。そんな自ら地雷原へ飛び込むような真似を出来るわけが…ぐふ……」
早苗「あ! 今キミ分かってて逃げようとしたの認めたわね!?」
しまった失言だった。つーか何なのこの人めんどくさい……このめんどくささはどこぞのアラサー教師を思い出す。酒豪で腕っ節が強くて行き遅れそうとか、重なる部分多過ぎぃ!
そしてようやく解放されたかと思うと、そのまま襟首を掴まれ隣の席へと連行されてしまった。これもう逃げられないパターンやん……
向かい側を見ると、凛が哀れむように苦笑している。ダレカタスケテー。
早苗「何よ、そんな見つめ合っちゃって。そんなに凛ちゃんの隣が良かったわけ?」
俺の様子に、酷くつまらなさそうに言う早苗さん。子供かあんたは。
八幡「別にそういうんじゃないですけど……こういう場なら出来るだけ気の知れた奴の隣に座りたいんすよ。その方が気が楽ですし」
早苗「ふーん? でも私だって知り合いじゃない。他の子たちだって面識あるでしょうに」
八幡「だから出来るだけ、って話ですよ。もし叶うなら一人飯が一番良いです」
俺の発言に早苗さんが「うわぁ……」という表情をしているが、こればっかりは譲れん。いや別に飯食う時くらい一人でも良いじゃん? 普段でも一人のが良いけど。
「それじゃあ、もう一つのお隣は私が貰おうかしら」
そう言って、空いていた右隣に座る一人の女性。
いきなりの登場だったので俺は思わず面食らってしまった。いや抗議するヒマすら無かったぞ……
ひと際目を引くのがそのスタイル。着ている浴衣は凛や莉嘉と一緒だと言うのに、何とも凹凸が激しく目のやり場に困る(そういう意味では早苗さんも一緒だが)。
パッと見年齢は楓さんと同じくらいだが、どちらかと言えば早苗さんとの方が近い。茶髪のアップテールで、前髪は左側を編み込んでいる。
兵藤レナさん。
大人の色気漂う27歳。この人もデレプロ所属のアイドルである。
レナ「比企谷くんはまだ学生だったわよね? 一緒にお酒を飲めないのは残念ね」
楓「まったくです……」
どこからか25歳児の声が聞こえてくる。どうやら左隣の早苗さんの、更に隣に座っているようだ。
いやこっち側の席完全に飲んべぇサイドじゃないですか……
八幡「俺やっぱりあっちの席行きますよ。ほら、飲めないのに間にいても邪魔ですし。うん、それがいい」
早苗「逃がすとでも?」
八幡「いや逃げるとかそういうんじゃ痛い痛い痛い。痛いですよ早苗さんんんんんん! 分かりました! 分かりましたから!」
「分かればよろしい」と笑顔で関節技を外してくれる早苗さん。危ねぇ……もう少しで本来曲がっちゃいけない方向に腕が曲がる所だった。
つーかこれ完全にパワハラですよね? 絶対にそうですよね? 畜生覚えてやがれよ、今回は許してやる。おっぱいの感触に免じてな!
レナ「大丈夫よ。そんなに遅くならない内に解放してあげるから」
八幡「正直あまり信用出来ないんですが……」
諭すように言う兵藤さん。だが兵藤さんはともかく楓さんや早苗さんの人となりを知ってる俺からすれば、その言葉は何とも信じ難い。八幡知ってるよ、大人はそうやって僕らを騙すんだ。
しかし、そんな俺に兵藤さんは苦笑して言う。
レナ「本当よ。明日は撮影もあるし、さすがに未成年をそこまで付き合わせないわ」
うんうんと頷く楓さんに早苗さん。
そうか、そういやこの人たちはまだ撮影が延期になったの知らなかったんだな。丁度いいから説明して……
と、そこで向かい側の列が目に入る。
向かって左から鷺沢さん、凛、莉嘉。三人が仲良く談笑している。しかし、莉嘉の右隣。そこが一つ空いていた。
八幡「あの、あいつはまだ来てないんすか?」
レナ「え? ああ、そう言えばまだ来ていないわね」
早苗「たしか、準備が終わったらすぐに向かいますーって言ってたと思うけど」
思い出すように言う早苗さん。
そんならもう少しで来るか。全員が揃ってから説明した方が手間もかからないし、そっちのが楽ではあるな。
あんまり遅くなるようなら迎えに呼びに行く事も考えておこう。
早苗「ねぇ、それよりも比企谷くん」
八幡「はい?」
早苗「あたしはその包みがさっきから気になって仕方ないんだけど……」
ジーッと目線を向けるその先。
そこには俺が来る時に持ってきた例の包みが置いてある。さすが早苗さんめざとい。
八幡「ああ。これはちひろさんからの餞別です。詳しくは後で説明しますけど、お三方で頂いてください」
包みから桐箱を取り出し、早苗さんへと差し出す。
すると気になったのか、楓さんや兵藤さんも興味深そうに近づいて来た。いや近いな三人とも……
早苗「この大きさ、重さからして中身は……!」
ゆっくりと箱を開けて、中を確認する早苗さん。もちろん中身はお察しである。
早苗「だ、『大吟醸 剣聖武蔵』!?」
思わず驚愕の表情。アイドルがしちゃいけない顔してますよ。
レナ「文句のつけようのない高級酒ね。驚いたわ」
楓「本当に頂いて良いんですか……?」
八幡「いいっすよ。お礼ならちひろさんに言ってください」
本当に嬉しそうな様子の三人。
俺はあまり酒には詳しくないが、そんなに良い酒なんかね。
早苗「こりゃテンション上がるわね! 早いとこ始めましょ!」
楓「うふふ……どんな味がするのかしら」
八幡「もう少し待ってくださいよ。まだ全員揃ってないですし、料理もそろそろ運ばれてくるはずですから」
早苗「えー!」
俺が落ち着かせようとするも、ぶーぶーと抗議をする大人組。全然大人じゃねぇ。向かい側を見てみろ、まだあっちのが落ち着きがあるよ?
仕方ねぇな。めんどくさいがもう一人を呼んでくるか。
よっこらせと、渋々座布団から立ち上がる。
八幡「ちょっと俺、あいつを呼んでーー」
その時。
カッ、と。一瞬視界が真っ白になった。
莉嘉「きゃぁぁああああ!!」
凛「な、なに? 雷?」
耳がキーンとなる程の騒音に、外から見えた眩い光。恐らくはかなり近くへの落雷だろう。
音と光がほぼ一緒だった事から、すぐそこだったのが分かる。
しかしそれよりも……
早苗「ちょっ、ちょっと! 電気が消えたわよ!?」
文香「停電……でしょうか……?」
あちこちからアイドルたちの声が聞こえるが、何も見えない。
一面が真っ暗。正直俺もおっかなびっくりだった。
八幡「たぶん、さっきの雷でブレーカーが落ちたんだろうな」
ケータイのライトをつけて天井を照らす。こうする事で僅かだが光が反射して辺りがぼんやりと見えるようになる。
凛「でも、こういう施設なら予備電源? とかあるんじゃないの?」
同じように凛もケータイのライトで照らしてくれた。
こんな時でも落ち着いているとは流石だな。凛らしいっちゃ凛らしい。
八幡「あるかもしれんが、言っちゃ悪いが結構古い旅館だ。切り替わるのに時間がかかる事もある」
それに見た感じ非常灯も無さそうだし、あまり期待は出来ないな。
莉嘉「うう……怖いよぉ……」
文香「大丈夫です……もう少しすれば、旅館の人が…何とかしてくれますから……」
怯えるようにする莉嘉を宥める鷺沢さん。
そりゃこんな山の奥の旅館でこんな目にあえば怖くもなる。ぶっちゃけ俺だって一人だったら泣きわめいてた可能性高いぞマジで。
楓「比企谷くんの言う通り、ブレーカーが落ちただけなら良いんですけど……」
早苗「安心して! 武蔵はあたしが守ってるから!」
誰もそんな事は心配しちゃいねぇ。
凛「とりあえず、旅館の人が来るまでこうしてるしかないか……」
八幡「…………」
凛「? プロデューサー?」
俺が黙っていたのが気になったのか、心配そうに声をかけてくる凛。
凛「どうかしたの?」
八幡「いや、確かにこのまま待機してるのが一番だとは思うんだが……」
心配している事が一つ。
そしてそれを察したのか、兵藤さんが気付いたように声を上げる。
レナ「そ、そう言えば、あの子はーー」
と、言い終える前だった。
ドタドタドタと、何者かが駆けてくるような物音。
その様子に余裕は無く、まるで獣のようにここへと近づいて来る。
その音に自然と皆は声を潜め、莉嘉だけが小さく悲鳴を上げた。
そして騒音がすぐ近くまで来た時。
戸は開け放たれた。
幸子「なななななななんで誰もボクの所まで来てくれないんですかぁーーー!!?」
闇の中で、つんざくような少女の叫びが一つ。
……心配無かったみたいだな。
* 登場人物紹介 *
高垣楓 主人公
渋谷凛 助手
比企谷八幡 狂言回し
片桐早苗 元警官
鷺沢文香 文学部学生
城ヶ崎莉嘉 現役女子中学生
兵藤レナ 元ディーラー
輿水幸子 自称・女優
安斎都 探偵
今夜はここまで! 短くてごめんなさいね。ようやく役者が揃いました。
それにしてもセカンドシーズンの凛ちゃん主人公感ぱない。
それにしてもセカンドシーズンの凛ちゃん主人公感ぱない。
乙乙
幸子は多分自分で明かりは点けずに来たよね
多分間違えて他の部屋を空けたりもしたよね
幸子は多分自分で明かりは点けずに来たよね
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