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    元スレ村娘「勇者様ですよね!」勇者?「……違うが」

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    551 = 543 :



    錬師「ど、どうしよう……お兄ちゃん……」オロオロ

    < 「レン……人気の無い所に移動して下さい」

    錬師「?」

    < 「私です、エイボンです」

    錬師「? ……あ、そっかこの本…」

    < 「マスターなら平気です、問題なのは貴女がここにいる事ですよ」

    錬師「?」

    552 = 543 :



    < 「早く運べ! まずは止血を……」

    < 「確か魔石の予備があった筈だ、あれで切断された筋を……」



    騎士「……」チャキッ

    騎士(……何か、不自然だ)

    騎士(確かに王女様の言う通り、あれだけ『本気の決闘』を見たら感動の1つもするだろう)


    騎士(だが、私は傷1つ負っていないのに……何故誰もそこに不審を抱かないのか?)


    553 = 543 :



    騎士(勇者、と名乗っていたかあの男)チラッ


    騎士(…)

    騎士(不思議な男だ、他人のような気がしない)

    騎士(王女様の隣にいた少女も恐らく、只者ではないな)

    騎士(これは後で勇者に会うのが楽しみだ)スタスタ


    554 = 543 :




    錬師「『血の呪い』?」

    Eibon「そうです、マスターが撒いていた血の『ような』赤い液体には特殊な魔術が働いていました」

    Eibon「匂いを僅かに嗅ぎ、深紅の赤を目に焼き付けてしまえばどんな人間も呪いの術者に操られる事になります」


    錬師「……えっと、つまり?」

    Eibon「もうあの決闘を見ていたレジスタンスの人間は全員マスターに深層心理を操作されています」

    Eibon「言ってみれば、もうこの村でマスターがもめ事に絡まれる事は無いでしょう」

    錬師「そうなんだ、やっぱりお兄ちゃんは凄いね」

    Eibon「貴女や王女様も充分凄いですよ」

    錬師「え、どうして」


    555 = 543 :



    Eibon「あの血の呪いの効果が全く及んでいなかったのは3人」

    Eibon「まず、最後までマスターの『知り得る限りでの本来の実力』を期待していた王女様」

    Eibon「彼女は対魔法の素質があったのか、最後まで呪いの効果はありませんでした」

    錬師「そうなのかな、お姉ちゃん慌ててたけど……」

    Eibon「えぇ、普通にマスターの仮の姿に騙されてましたね」くすっ


    Eibon「……次に、あの女騎士と名乗る女性です」

    Eibon「マスターはどんな見解をお持ちかは知りませんが、彼女は人間でしょうね」

    Eibon「にも関わらず彼女は対魔法の素質に、超人的な身体能力を持ち、『魔眼』にも似た観察眼を有している」

    錬師「や、やっぱりあの女騎士さん…強いんだ」

    Eibon「私が生まれた世界なら、死徒に匹敵する怪物でしょう」


    556 = 543 :



    錬師「あれ、3人目は私だよね」

    Eibon「はい」

    錬師「ぼくってそんなに呪いに耐性あるのかな」

    Eibon「正直に答えますと耐性なんてありませんよ」

    錬師「え、対魔法の素質とかも?」

    Eibon「はい」

    Eibon「しかし今こうしてあの場所から離れたのは、貴女の持つ力が原因なのは否定出来ませんね」

    錬師「……?、?」


    Eibon「もし……貴女が、マスターの呪いを『否定』したとしましょうか」

    557 = 543 :



    錬師「否定、って『だめ』~とか『嫌』~って?」

    Eibon「それです、貴女が否定した場合」



    Eibon「マスターの施した魔術は全て粉砕されてしまいます」



    錬師「……………」

    錬師「……えっ」

    Eibon「意味は分かりますか」

    錬師「壊れるんだよね?」

    Eibon「粉々に」

    錬師「……ぼく、そんな凄い力を持ってたの?」

    Eibon「気づいたのはさっき私が貴女から漂う魔力を何となく眺めていたからでしょう」


    558 = 543 :



    Eibon「それに凄いとは言い難いです」

    錬師「な、なんで」

    Eibon「場合によっては……貴女はとてもマスターにとって邪魔かもしれませんから」

    錬師「!」

    Eibon「……」



    Eibon「さすがに冗談ですよ、貴女を連れて来ておいて捨てるなんてマスターはしません」くすっ



    錬師「~~っ!!」


    559 = 543 :



    < レジスタンスの隠れ村・治療所 >


    勇者?(やれやれ、暗示の真似事なんてするものじゃないな)スタスタ

    < 「おう、怪我はどうだ王女様の護衛さん」

    勇者?「問題ない、王女はどこだ」

    < 「王女様ならレジスタンスを仕切る幹部と女騎士様のいる本部にいるよ」

    < 「ここを出て右の壁沿いに進めばわかるさ」


    勇者?「そうか」スタスタ

    勇者?(当面は問題ないな)


    560 = 543 :



    < スタスタ


    勇者?「……」スタスタ

    勇者?「…!」


    騎士「随分早い回復じゃないか、人間なら普通半月はかかる怪我だが?」

    勇者?「……やはり効果無しか」

    騎士「貴女こそやはりただの人間じゃないな」


    561 = 543 :



    勇者?「王女は何をしている」スタスタ

    騎士「彼女なら戦術に長けた元軍師達と会議をしてる」スタスタ


    騎士「今まではレジスタンスとは名ばかりの『反逆者』だったが、王位正当後継者である王女が来れば状況は変わる」

    騎士「王女の声、そして意志があれば国の民や多少の貴族はどうにか出来る」

    騎士「後は我々レジスタンスが教皇の首を取れば……」

    勇者?「大勝利、か」

    騎士「間違いなくな」


    勇者?(……頭と筋は良い、だが……)

    騎士「……」スタスタ


    562 = 543 :



    勇者?「騎士団の力を理解してるんだろうな」

    騎士「……そこを突かれると痛いな」

    勇者?「あの集団が銃火器を手にしてる以上、『白騎士』でない相手も驚異的な筈だ」

    騎士「だろう、私もそれは考えている」

    騎士「試しに銃に対抗出来る盾や防具を作った事もあった」


    勇者?「…あの口径に対抗するには」

    騎士「ふふ、身動き出来ない程の重量の防具しか作れないさ」

    563 = 543 :



    騎士「……だから、レジスタンスが出来るのはなるべく死なないように時間を稼ぐ事だよ」

    騎士「私が教皇の所へ辿り着ければ、レジスタンスの勝利」

    騎士「辿り着けなければ、レジスタンスの敗北……王女の努力も水の泡だ」

    勇者?「そうか、お前がレジスタンス内で重要視されてるのは……」

    騎士「唯一教皇を殺せる、白騎士の護衛共と戦える秘密兵器という訳だな」


    騎士「まあ最も、昼間のように仲間も救えないのでは話にならないか」

    勇者?「何故そんなに制約があり気な言い回しなんだ」

    騎士「制約、という程のものじゃない、私が未熟なんだ

    564 = 543 :



    勇者?「未熟、か?」

    騎士「未熟、だ」


    勇者?「……」スタスタ

    騎士「……」スタスタ

    勇者?「…」

    騎士「王女の近くにいた少女を宿に預けているが、会うか?」

    勇者?「いや明日でいい」

    騎士「……そうか」くすっ


    565 = 543 :




    勇者?「何がおかしい」スタスタ

    騎士「なに、忘れて欲しい」スタスタ

    勇者?「……」

    騎士「いい加減、聞かないのか」

    勇者?「何を」

    騎士「どこに向かっているか、聞きたくないのか」

    勇者?「……さあな」


    騎士「私を本気で倒してみてくれないか」チャキッ


    566 = 543 :



    勇者?「……剣士としての誇りか、何かか?」

    騎士「いや、私としては照れ隠しみたいなものさ」

    勇者?「物騒な照れ隠しだ」


    騎士「………」チャキッ

    騎士「決闘の申し出を受けるか、否か」

    勇者?「然り……でいいか?」

    騎士「ふ、先程の決闘より余裕があるな」


    勇者?「本気でいいと言ったのはそっちだからな」スッ


    < シュルッ


    騎士(糸……ワイヤーか、なかなかエグい戦術を使――――






    <  シュルッ……ズニュルルルルルルルッッッ


    騎士「 ―――― っっ!!? 」

    567 = 543 :



    <女騎士宅>


    騎士「……ん」

    騎士「…」

    < ガバッ

    騎士「!! こ、ここは?」

    勇者?「お前の家だろう? 多分な」

    騎士(……たしかに、だが)

    騎士「決闘は、私はどうなったんだ……何時間寝ていた」


    勇者?「決闘は俺の勝ちだ、お前はあの時気絶させた」

    勇者?「ちなみにまだ2時間も寝てない、安心しろ」スッ


    騎士「……」

    568 = 543 :

    今日はここで

    569 :


    瞬殺レベルっすか女騎士…

    573 :

    乙でした

    574 :


    わざと血まみれになって洗脳させるとはエグいやり方を…

    575 :

    シュルッ……ズニュルルルルルルルッッッ

    おっきおっき

    576 :



    < ……チュン…チュン…


    「…ん」パチ

    「……」もぞもぞ

    (朝……起きなきゃ)


    「っ……」クラッ


    「……」フラフラ

    「…」

    < ドサッ
    < ガシャーンッ


    577 = 576 :



    < ガチャッ

    銃士「ふわぁ……おはようございます王女様ぁ」

    銃士「って、あれ? 王女様?」


    銃士「ちょっと、やだ……しっかりして下さい! 大丈夫ですか王女様!!」バッ

    「…」ツゥゥ

    銃士「嘘、鼻血……どうしよう、誰か! 誰か来て下さい!!」

    銃士「王女様!! 王女様っ!!」ユサユサ


    578 = 576 :



    勇者?「……王女が倒れたのか」

    騎士「らしい、昏睡状態に加えて鼻血が出ている事もあって村の医者達が診てる」

    勇者?「病気か」

    騎士「分からないな、少なくとも暫くは動かす訳には行かない」

    騎士「……私個人の考えとしては、慣れない数日の旅による疲労だとは思うんだがな」


    勇者?「可能性としては有り得るな」

    579 = 576 :



    騎士「何にせよ、王女様が戻っただけでも我々には幸運だったのだ……ゆっくり休んで貰いたい」

    勇者?「……」

    騎士「どうかしたか」

    勇者?「今更だがな、なぜ自然に俺の部屋にいる」

    騎士「貴方の部屋じゃない、宿の部屋だ」

    勇者?「……なるほど」


    騎士(しかし昨夜の決闘は驚かされたなぁ……)


    580 = 576 :



    < ガチャッ


    錬師「お兄ちゃん、大変だよ!!」

    勇者?「王女が倒れたか」

    錬師「あれ、知ってたの」

    騎士「ふふ、一足遅かったな」

    錬師「あ……おはようございます!」

    騎士「おはよう」くすっ


    581 = 576 :



    <レジスタンスの隠れ村・治療所>


    騎士「王女様はどのお部屋に?」

    医者「これは女騎士様、王女様ならば二階奥の個室で休まれていますよ」

    騎士「では、症状はどんなものなんだ? 何かの病気なのか」

    医者「いえ、恐らく疲労が原因ではないかと……」

    騎士「やはりそうか、ありがとう」スタスタ


    騎士「やはりだな、疲れや無理が祟ったのだ」

    勇者?「面倒な病でない分マシだな」


    582 = 576 :



    < ガチャッ


    騎士「失礼します」

    勇者?「……」


    「…」


    騎士「…ふむ」

    勇者?「まだ寝ているようだな」

    騎士「眠る必要があるなら寝かせてやろう、彼女の体はそれを望んでいるんだ」

    勇者?「そうだな、『置き土産』でもして行くか」

    583 = 576 :



    < キィン……


    騎士「?」

    勇者?「夢見が良くなるようにしただけだ、少しはマシになる」スタスタ

    騎士(夢見が良くなるって、どんな魔法なのだ……)

    騎士「だが……」チラッ



    騎士(……貴女が羨ましいよ、王女)



    < スタスタ

    < ガチャッ

    584 = 576 :




    ―――― 【 どうしてあんな女に王は寵愛を捧げたのかしらねぇ 】

    「それは……お母様が村長だから…」

    ―――― 【 ただの辺境村の村長一族なのに、私が選ばれないなんて…… 】

    「そんなこと……いわれても」

    ―――― 【 あんたなんて生まれない方がみんなが幸せになれたんじゃないの 】

    「…!」


    ―――― 【 だって、貴女が生まれたから母親が死んだようなものじゃなぁい? 】


    「……やめて」

    「もうやめてよ、いつまでつづけるの」

    「ほっといてよ!! どうしてお母様が死んだ事に悲しむ暇も与えてくれないの!!」

    585 = 576 :



    「みんな死んじゃえばいい!! 伯母様達なんて死んでしまえばいい!!」


    「醜い嫉妬にまみれて、優しさの欠片も見出せずに地獄に落ちてしまえばいい!!」

    「貴女達がお父様に愛される訳ない!!」

    「貴女達とお母様は違う、同じであってたまるか!!」


    「いつか見届けてやる!! お母様を蔑み、辱め、私をここまで痛めつけたお前達の死に様を!!」


    白服α「その前にお前が先だがな」ザシュッ

    「  」ドシャッ


    「お父様……!?」


    586 = 576 :



    白服α「特に恨みは無いがな、お前達には死んで貰うよ」スタスタ


    「ひっ……嫌、こないで!」

    「なんで、なんで私ばかりこんな目に……」


    白服α「逆に考えたら良いじゃないか?」スタスタ

    白服α「お前は誰にも救われる事無く、幸せになれず、母親を殺され自分も殺される」

    白服α「そのために、生まれて来たんじゃないかってな」


    「…………」


    白服α「哀れな事だな、さよならだよ王女」ヴンッ


    587 = 576 :




    「ッッ」ガバッ


    「はぁ……はぁ……っ」


    (今のは…夢?)

    < わなわな……

    (……憎しみだけ、生々しく残ってる)

    (……)ギリッ


    「……」スッ


    588 = 576 :



    < ガチャッ


    「…」スタスタ

    勇者?「良い夢は見れたか」スッ

    「っ!」びくっ

    勇者?「お前の睡眠中に見る夢の内容を弄った、どうだった」

    (……!!)

    「…」ギロッ

    勇者?「……!」


    < バシィッ


    勇者?「…」

    「二度と悪夢を見せないで下さい、そしてしばらく話しかけないで下さい」スタスタ


    589 = 576 :



    勇者?「……」

    勇者?(……………『悪夢』?)

    勇者?(……)

    勇者?(……)


    勇者?「有り得ない」


    590 = 576 :



    < 港・宿屋 >


    シスターβ「おかえり、神父α」

    神父α「ただいまシスターβ」

    シスターβ「どうだったの」

    神父α「教皇様の言っていた通りだったよ、『こっちの大陸』に第4夫人派の軍が潜伏していた」

    シスターβ「それで?」

    神父β「……分かるだろう? 『いつも通り』だった」


    591 = 576 :



    神父α「シスターβこそ、何か収穫はあったかい?」

    シスターβ「あったわよ? すごーく大収穫♪」ごろん

    神父α「ふぅん、聞きたいですね」

    シスターβ「教皇様から頂いた力を利用して、検索スキルを作り上げたの」

    神父α「検索スキル?」


    シスターβ「簡単よ、顔と名前を思い浮かべながらそいつの心を見るの」

    シスターβ「すると不思議! 居場所も周りの様子も見れちゃう!」

    神父α「凄いなぁ、そんなのは私には真似出来ませんね」

    シスターβ「まあ些細な副作用があるんだけどね、それも工夫次第では楽しいわ」

    神父α「副作用?」

    シスターβ「そ、検索した相手を悪夢に似た幻想世界に精神だけ飛ばしてしまうのだけれど……」


    シスターβ「……その幻想世界も操れる私には、検索相手を人形みたいに弄べるから楽しいのよ♪」


    592 = 576 :

    今日はここで

    598 :



    騎士「おはようございます王女様、具合は如何でしょう」

    「お気になさらず、それよりも再び会議を開くために幹部を招集して頂けますか」

    騎士「・・・」

    騎士「お言葉ですが、まずは貴女の体の回復を待つべきではないでしょうか?」


    「女騎士さん、残念ながら私一人の都合で先延ばしにするわけには……」

    騎士「いいえ貴女が万全であるからこそ、我々レジスタンスは機能するのですよ」

    騎士「ですから王女様、どうかここはお体を休めて……」

    「……」


    「わかりました」


    599 = 598 :



    勇者?「王女の様子がおかしい?」

    騎士「ああ、どうも何か焦っているようなのだが」

    勇者?「だが?」

    騎士「…これは勘の域を出ないが、目が昨夜までの彼女と違う気がした」

    勇者?「目か」

    騎士「・・・」コクン


    600 = 598 :



    騎士「単に私の恥ずかしい思い込みと決めつけなら良いんだ、だが彼女にもしものことがあれば不味い」

    勇者?「どうしろと?」

    騎士「貴方が王女様を見てくれないか」

    勇者?「悪いが医者じゃあないぞ」

    騎士「ふふ……貴方がさっきかけた魔法のせいでないとは言い切れまい」


    勇者?「・・・なるほどな」

    騎士「では頼んだ、私は少し外を見て来る」スタスタ



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