元スレほむら「思い出せない…私は何者だ?」3
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351 = 342 :
ほむら「……私には、奴を倒せる“奇跡”なんて無かったんだ」
ほむら「私は皆を騙していたんだ」
ほむら「私の独善で、私が救うもの、見放すものを取捨選択したんだ」
ほむら「……私だけの意志で」
でもこの行いに後悔は無い。
私は自らの信じる最善を行った。
この素晴らしい結果を覆したいとは思わない。
ほむら「……すまない、みんな」
私は瓦礫から下りて、ハットを手に持ち、深く頭を下げた。
この結果は覆すことはできない。だから私は、ただ頭を下げるしかなかった。
承知の上で皆を裏切った。その罪がどれほどのものか、私はわかっているつもりだから。
まどか「……ほむらちゃんは、悪くないよ」
ほむら「……」
まどか「だって、街の人を沢山救ってくれたんでしょ?」
ほむら「……」
まどか「ワルプルギスの夜に勝てないのなら…仕方ないんだよ」
マミ「鹿目さん……」
まどか「……ずるいのは、やっぱり私の方」
杏子「!」
まどか「私、こんな見滝原を見てもね、まだ願い事を叶えたいって……踏ん切りがつかないんだ」
まどか「私なら叶えることができるのに、ズルいよね」
さやか「ちょ、ちょっとやめてよ二人とも!」
杏子「そうだよ!まるでアタシらが責めてるみたいじゃんか!」
352 = 342 :
さやか「ワルプルギスの夜とは戦わないって、それをずっと隠しとおされてたのはムッと来る所はあるけど……ほむらのやったこと、間違いではないとは思うよ」
ほむら「!」
さやか「だってそうじゃん、ほむらでも勝てないんでしょ?だったらまどかにしか勝てない相手ってことじゃん」
杏子「で、まどかに戦わすなんてもっての他だからな……そうくりゃ、ほむらのやった人を救うってのは一番正しいように、アタシも思う」
ほむら「…さやか…杏子」
二人に言われ、私はかなり救われた気がした。
マミ「……」
それだけに、三人の中で沈黙を守っていたマミの難しそうな顔が怖かった。
じっと口を結び、目線を動かさず、ただどこでもない瓦礫の山の尾根を見つめている。
まどか「…あ、あの…マミさん…ほむらちゃんは悪くなくて…」
マミ「わかっているわよ、鹿目さん」
口調だけ優しくマミは言った。
マミ「私たちにずっと嘘をついてたこと、少しショックだっただけ」
ほむら「……本当に、ごめん」
マミ「でもそれは暁美さんの、とても優しい嘘なんでしょ?」
マミ「…なら、それだけ。私も暁美さんのやったことは正しいって思えるわ」
ほむら「…マミ」
彼女はやっぱり大らかで、優しい人だ。
354 :
マミは正義の味方だからなあ
355 :
乙
顔で笑って心で泣いて、道化者をやるのも中々に大変だな
356 :
ワルプルと戦わない二次創作なんて初めて見た
斬新
358 :
乙マム
乙ほむ
乙暁美ほむら
359 :
ワルプルギスの夜ってどんなんなの?
倒さない限り常に現界してるの?
それとも100年に一度現界するの?
前者なら年中世界中で巨大ハリケーンのニュースやることになるけど。
360 :
じゃあ後者なんじゃね
361 :
100年に一度かは分からんが時折気まぐれに現れるって感じなんじゃね?
362 :
>>356
そんなあなたにこれなんかもお勧め
ほむら「はぁーい転校生の暁美ほむらでーす!ヨロシク!」
363 :
本編のほむらも皆を地下シェルターに避難させればよかったのに!
とか考えてしまった。
本編にそんな都合の良い避難場所はない。
364 :
地下工事がそもそも無いだろうしなあ
365 :
ところで、地下シェルターって何千万程度で何個も作れるもんなの?
366 :
理詰めすんなっつうの。無粋な。
367 :
そこは美国議員の遺産に感謝する所だな。いや明言はされてないけど。
放置されたガラを拡張するだけなら安く上がるでしょ。
368 :
こまけえこたあ良いんだよ!
369 :
375 = 372 :
キマシタワー
376 = 370 :
さやか「……でも、これからどうすればいいの?」
杏子「どうって」
さやか「見滝原、もう無くなっちゃったよ……家も学校も、病院も……みんな壊されてさ」
その言葉を待っていたのかもしれない。
私はハットを被り直して言う。
ほむら「当然だろう、さやか」
さやか「え?」
大多数の人命が助かったとはいえ、被害はあまりにも大きすぎた。
その被害の大きさは、後々の命にも関わるはずだ。
いつかの自殺しそうになっていた工場長。また、実際に自殺してしまった夕時のOLのように。
ほむら「これから、現状に絶望して、魔女の口づけに対して抵抗を持たない人々が多く増える程だろう」
マミ「……そうね、増えるわね……間違いないわ」
ほむら「そうなれば必然的に魔女も増えるだろう」
ほむら「ワルプルギスの夜をやり過ごした我々に出来ることは、これからさ」
青い空を見上げる。白い鳥が高く飛ぶ。
ほむら「見滝原を建て直すために頑張る人々を裏で支え、助け……全てはこれから始まるんだ」
まどか「ほむらちゃん……」
それは暁美ほむらが辿り着けなかった未来。
377 = 370 :
ほむら「ワルプルギスの夜は倒せなくとも、私達に出来る事はたくさんあるはずだよ、さやか」
さやか「……そうかな」
ほむら「ああ、まだこの瓦礫の惨状の中にだって、逃げそびれてしまって……しかし、その中で生き残っている人はいるかもしれない」
さやか「!」
マミ「そ、そうね!避難できなかった人も当然、いるかもしれないのよね…」
さやか「なら、早く助けにいかないと!」
杏子「……ならアタシも行く!」
さやか「え、杏子も!?」
杏子「ったりめえだ!アタシだって回復魔法くらい出来る!」
さやかとマミは素早く変身すると、血相を変えて走り出した。
正義心に燃える彼女達は、きっと日が暮れても捜索を続けるだろう。
杏子「アタシもいかないと…!」
ほむら「杏子、行くなら二人にこれを分けてあげてほしい」
杏子「え……?」
左手を差し出す。
私の全ての指の上には、未使用のグリーフシードが器用に直立して乗せられている。
これら全て、みんなから貰ったグリーフシードだった。
378 = 370 :
杏子「……これって」
ほむら「君達の努力はここで発揮される……そしてどうか、頼む、私のかわりに、助けられる人々を探して欲しい」
杏子「え?…要りようかもしれないから貰ってはおくけど…ほむらは一緒に探さないのか?」
ほむら「ああ、私にはもうその力はない」
左腕の時計を愛おしく撫で擦る。
ほむら「私の奇跡は最後の一粒まで使い果たした…今の私が行った所で、燃費の悪いブルドーザーのような働きしかできないからね」
杏子「魔法が使えない……?」
まどか「え?」
ほむら「ああ、私はもう、基礎的な魔法しか使えない最弱の魔法少女となってしまった」
杏子「!」
ほむら「これからは魔法を使わずに、工夫で魔女を倒す算段を立てなくてはならない、はは」
まどか「そんな!」
それはどうしようもない事だ。
ワルプルギスの夜と一戦を交えなくとも、私の力はここで消える運命だったのだから。
揺らぎようの無い因果というものだ。
ほむら「でもね杏子、それでも私は良いのさ」
杏子「……なんでだよ?」
ほむら「全てを失っても、一からやっていくのも悪く無い」
さやか達が走っていった方向に背を向けて歩きだす。
一旦、避難所へ戻らなくてはならない。
私にしかできないことは、そこにたくさんある。
ほむら「見滝原も、私の奇跡の力も、……なぁに、また記憶を失ったようなものだと思えばさ?」
杏子とまどかに向き返って笑いかける。
ほむら「これまでの日々のように、色々と事件もあった毎日だけれど」
ほむら「それはそれで、面白い事が待っているかもしれないだろう?」
記憶を失っても、それこそ奇跡のようにみんなと出会うことができた。
そんな素敵な出来事が、見滝原の何もない荒野の上で花開くかもしれない。
この先にある希望に、私は期待するばかりだ。
379 = 370 :
避難所の奥まった場所にある、私専用の制御室。
ほむら「さて、見滝原復興に向けて頑張ろうか?」
パソコンに向き合う。
モニターに映し出される、極々最近に立ちあがった慈善組織の質素なホームページ。
“募金はこちらへ”の可愛らしい画像は私のお気に入りだ。
黒猫と白い鳩がじゃれている、とてもファンシーなイラスト。
「にゃ」
ほむら「お、ワトソン!無事だった~?」
足下に忍び寄ってきたワトソンの頭を片手で撫でてやる。
ワトソンとの再会を喜びたいところだが、先にやらなくてはならないことも数多くある。
ほむら「入金、っと」
ボタンひとつで投下される、世界中の宝くじと為替の流れを掌握した、私の奇跡の結晶。
“ご支援、ありがとうございました!”
ほむら「……ふふ、よし、じゃあワトソン、私はしばらく寝るから、ゆたんぽごっこして遊ぼうか?」
「にゃー!」
ほむら「よしよし」
私は布団の中にもぐりこんだ。
ほむら「……ふー」
「にゃ?」
ほむら「ん?……いーや、なんでもないよ、ワトソン」
「にゃぁ」
覚悟を決めて眠りに落ちる。
380 = 370 :
―――――――――――――――
そして、缶コーヒーを打ち鳴らして祝杯が上がる。
ほむら『乾杯、ほむら』
『……』
二人とも黙ってコーヒーを流し込んだ。
例によって、夢の中では何の味も無い。
だからこそ、向かいに座る彼女の無表情は、この時ばかりはしっくりきていた。
ほむら『こういう結末、きっと君にとってのベストではなかったんだろうね』
『……』
ほむら『私は知っているよ、君のやりたかった事を』
ワルプルギスを倒し。見滝原を救う。
けどそれは、最初のうちは力の差を見誤るばかりで失敗し続け。
力の差を知った後も、その目的を自分の存在意義として、縋り続けるために失敗し続けた。
きっと無理なことなのだろう。
ワルプルギスの夜を倒すということは。
『……ベストだと思ってしまうからこそ、今の私は後悔しているわ』
ほむら『ふむ』
悲しげな言葉とはやや相反するように、暁美ほむらの口元はわずかに微笑んでいた。
自嘲だけではない、そこには真の喜びも混ざっている。
『街を一切壊さず、人を一人も殺さず……あいつを相手にして、そんなこと…無理な話だったのよね』
『私は甘かったのよ、妥協ができなかった……馬鹿だったのね』
『でも貴女のおかげよ、あなたのおかげでまどかは…やっと前に進める事が出来た』
ほむら『……ふふ』
暁美ほむらは微笑んでいた。
朗らかに。きっといつかの、彼女が幸せだった頃のように。
381 = 370 :
ほむら『前に進むのはまどかだけじゃない、君も前に進むことができるよ』
『……え?』
ほむら『当然だろう、全て終わったんだ、これからは君だって、暁美ほむらの人生を楽しまなくちゃ!』
『む、無理よそんなの』
ほむら『何故?』
戸惑う暁美ほむらの表情は、自身の無かった頃のそれにそっくりだった。
『無理よ……私、胸を張ってまどかと向き合えないもの』
ほむら『そんなことはない、君が努力したからこそ今があるんだぞ?』
『無理よ、無理だもの…』
ほむら『……ほう、ならば、胸を張った未来に導くことができれば、君の心は解放されると?』
『?』
我ながら頑固な人間だ、暁美ほむら。
けど私は、そんな弱気な君を引っ張れるくらいには強くできている。
ほむら『さあ、暁美ほむら……どっちか一枚だけ、引いてごらん』
彼女の前に2枚のトランプを差し出す。
『……?どういうつもり?私にどうしろっていうの?』
ほむら『簡単だよ、選ぶだけさ』
382 = 370 :
ほむら『こっちのスペードの10を選ぶなら、再び砂時計をひっくり返そう』
『っ! 嫌よそんな…!』
ほむら『また全ての人間関係が元に戻り、ワルプルギスの夜は来襲するだろう』
ほむら『だが今回の時間で、私は実に面白い、様々なプランを思いついたものだよ』
『プラン……』
ほむら『何をどうすれば上手くいくのか、どうすればよかったのか……』
ほむら『きっと次に時間を巻き戻した時、見滝原への損害を限りなくゼロにまで抑え、死者だって完璧にゼロにできるかもしれない』
『!』
ほむら『妥協せず、まどかに胸を張って生きるならば、この選択肢も悪くは無い……私は君の選択に全て従うつもりだ』
ほむら『もう一枚、こっちのジョーカーを引いたなら……この世界に骨を埋める覚悟で、皆と手を取りあって生きていくんだ』
ほむら『1から建て直す喜びが、希望がそこにはある……私としてはこの結果に満足しているつもりだよ、暁美ほむら』
『……私も、不満というわけではない』
ほむら『より貪欲に完璧な未来を生きたいのであれば、10を選ぶんだ』
ほむら『どの時間よりも苦悩し、事件が起きたこの世界で、少しずつ居場所を取り戻すならジョーカーを引いてほしい』
『……私は』
ほむら『私は暁美ほむら、君も暁美ほむらだ、私はどちらの選択でも、何の文句は無い……君の決定に全てを委ねるよ』
『……私が選ぶ、世界は』
暁美ほむらがカードを引いた。
ほむら『……それが君の選ぶ人生だね?』
『ええ』
ほむら『やっていけそうかい?』
『もちろんよ、やってやるわ』
『…私も、あなたのように……格好良くなるために、頑張ってみせる!』
ほむら『その調子だ、暁美ほむら!燃え上がれー!』
『ちょ、ちょっと、馬鹿にしないでよ、それはまどかだけが……』
ほむら『はっはっは!』
――――――――――――――
383 = 370 :
―――――
―――――――――
――――――――――――――
はてさて、そこはいつの青空の下か。
高くそびえるビルの下、整備されたアスファルトの上。
ここは見滝原。私が生きると決めた街だ。
期待のまなざしを向ける大勢の観客達の中心で、私は深く頭を下げる。
紫のシルクハットを被り、紫のステッキを持ち。
今日もまた、市民を楽しませる公演が始まろうとしている。
まどか『頑張って!』
ほむら『ありがとう、まどか』
今日はまどかが見に来てくれているようだ。
まだまだ低い背でも何度もジャンプし、私のマジックを見ようと頑張っている。
その姿は、かつて私が奔走した日々が遠い昔以上の、おとぎ話だったんじゃないか、と思えてしまうほど、微笑ましかった。
おっと、けれど笑ってはいけない。
マジシャンの笑いは不敵に。妖しくなくてはならないからね。
ほむら「お集まりいただき、ありがとうございます」
ん?
ここは過去か?未来か?どっちなんだ、って?
さあ、どっちの世界だろう?
思い出せないな。どっちだろうか。
でも間違いないから安心していただきたい。
過去でも未来でも、私は必ず輝かしい未来を手にするのだ。
ここはあの子が守ると決めた世界。その場所。
私はそれを信じている。それは覚えているとも。
だから私は、この場所で。自分の人生を全力で楽しむつもりだ。
ほむら「では!ショータイムと参りましょう!」
さあ、ステージにもっと光を。
384 :
完
387 :
お疲れ様でした。
388 :
お疲れ様でした。またの公演をお待ちしております。
390 :
さわやかな読後感だ
乙
392 :
乙
あえてその後はぼかすか
393 = 391 :
>ほむら『ありがとう、まどか』
>ほむら「お集まりいただき、ありがとうございます」
括弧を見るに、オリジナルほむも普通にまどかと話せるようになってるのか
394 :
Happy Endおつおつもぐもぐ!
いやあ、とてもいい読了感だよ
395 :
乙
オリジナルほむらもショータイムができるようになったのかwwwwww
396 :
ほむらがほむらを信じた世界にはハッピーエンドしかなかったんや。
おもろかったー。
398 :
なんかすごい爽やかで、この余白がたまらん!
乙でした!!
399 :
乙
やはりマジシャンは自信満々の顔をしているのが一番似合うな
400 :
ホームズじゃない方のほむらもまどかと向き合えたか
乙
みんなの評価 : ★★
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