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    元スレ上条「二人で一緒に逃げよう」 美琴「………うん」

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    みんなの評価 : ★★★×5
    タグ : - 銀時 + - インデックス + - ブラインド・エスケープ読んでみ + - ヤンデレ + - 上条「二人で一緒に逃げよう」 + - 上琴 + - 上琴二人で一緒に逃げよう + - 御坂美琴 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    51 = 41 :

    小萌「酷い?」

    ジロリと小萌は青髪ピアスを横目で見た。

    小萌「まさか上条ちゃんが傷つくようなこと言ったのですか?」

    青髪ピアス「ちゃうちゃう! ちゃうて! ただ僕はカミやんのためにと」

    上条「何が俺のためだ! お前、あろうことか俺の知り合い馬鹿にして……」

    小萌「まあまあそれは聞き捨てならないですね?」

    青髪ピアス「だって、相手はあの御坂美琴やで? あんな外道女に何言っても構わんやろ?」

    小萌「え?」

    上条「こいつ…また……」

    小萌「御坂……美琴?」

    その名前を聞いた途端、小萌が眉をひそめた。

    上条「そうなんです! あろうことか青ピのやつ、常盤台のレベル5の……」



    小萌「どういうことですか上条ちゃん!!!!!」



    上条「!!!!」ビクッ

    52 = 41 :

    突如、小萌が鬼のような形相で上条を怒鳴った。

    小萌「今の話聞いた限り、上条ちゃんは御坂美琴のこと庇ったようですが……」

    上条「え? え??」

    青髪ピアス「そうやねん、先生。カミやんのやつ、毎日のように御坂美琴と会ってるって言うから、これ以上近付かないように忠告してやったのに、何でか突然キレて御坂美琴のこと庇いだしてん」

    小萌「なっ!? 上条ちゃん! 先生は上条ちゃんを、御坂美琴を庇うような人間に育てた覚えはありません!!!」

    腰に手を当て小萌は言う。彼女の表情を見るに、本気で怒っているようだった。

    上条「……先生? 何言って……」

    小萌「御坂美琴と言えば、世界最低最悪の人間……いえ、人間とも思えないような女じゃないですか!!」

    上条「は……ぁ……?」

    小萌「なのに上条ちゃんはそんな御坂美琴と毎日のように会って……なおかつ庇うだなんて……先生は……先生は……悲しいです……」

    顔を両手で覆う小萌。

    青髪ピアス「先生、大丈夫かぁ?」

    心配そうに彼女の顔を覗き込む青髪ピアス。

    小萌「でも……でも……先生は……上条ちゃんが無事で安心でした……」



    上条「(……何だ……これ?)」



    その状況は、理解不能以外に形容し難かった。
    確かに、御坂美琴は出会い頭に電撃を浴びせてくるような女の子だ。だがそれも、上条の右手の力の存在を知っているからこそ敢えてやっていること。それ以外で、彼女が無実の人を、一般人を襲うことなんて絶対に有り得ない。自分の妹達が殺されるのを止めるために、命を投げ出してでも助けようとする女の子なのだ。
    なのに、何故、青髪ピアスと小萌は、まるで親の仇のように彼女を罵るのか。彼らは上条以上に美琴のことは知らないはずなのに。何を根拠にそこまで言えるのか。上条には全くもって理解出来なかった。

    上条「…………………」

    53 = 41 :

    青髪ピアス「ほらカミやん、先生に謝りや」

    上条「え?」

    小萌「謝らなくてもいいです……。ただ、先生と誓って下さい。これ以上、御坂美琴には絶対に会わないと……」

    潤んだ目で小萌は上条を見据えた。

    上条「(何だこれ? 何で? あいつが2人に悪いことでもしたのか?)」

    青髪ピアス「大体カミやんもカミやんやで。何で世間であんなにも嫌われてる御坂美琴を庇うんや?」

    上条「は? 世間?」

    青髪ピアス「カミやん、知らんなら覚えときや。御坂美琴ほど、外道で畜生以下の人間はおらん。あいつは危険や。危険なんや。まったく、あんなクソヤロウ、はよう死ねばええのに。僕が学園都市第1位の超能力者だったら、御坂美琴なんて進んで殺してその後、鬱憤晴らすようにその憎い身体を好き勝手してやるのに。はぁ~、どっかの誰かさんが、僕の望んでることしてくれんかなぁ? あ、そうやカミやんの右手はどうや? カミやん、何でも右手で能力打ち消せるんやろ? だったら、今度奴をおびき出して隙をついて」




    ドガッ!!!!!!




    青髪ピアス「!!!!!?????」

    小萌「キャーーーーーー!!!!!」

    ガタガタと青髪ピアスが床に崩れ落ちる。

    上条「ふざけんなよてめぇ……」

    54 = 41 :

    青髪ピアス「な、何をするんやカミやん!!??」

    左頬を押さえ、青髪ピアスが上条を見上げる。
    上条は右拳を握り、本気で切れた表情で青髪ピアスを睨んでいた。

    上条「何の恨みがあんのか知らねぇが、御坂のことそれ以上貶してみろ。絶対に許さねぇ!!!」

    青髪ピアス「きょ、今日のカミやんおかしいで!! 何で御坂美琴を庇うんや!!!」

    上条「おかしいのはお前だろ!! 本人の前じゃなくてもいい。今ここで、さっき言ったこと全て撤回しろ!!!」

    青髪ピアス「なぁっ!?」

    上条「出来なきゃ絶交だ!!! レベル5と言えど、1人の女の子をそこまで罵る奴と友達でなんかいられるか!!!!」

    青髪ピアス「か、カミやん……」

    怯えるような顔を向ける青髪ピアスに対し、上条は今にも頭から湯気が出そうなほど怒っていた。

    小萌「もう止めてください上条ちゃん!!」

    上条「!!」

    青髪ピアス「先生!!」

    と、青髪ピアスを庇うように小萌が前に躍り出た。

    55 = 41 :

    小萌「今日ここであったことは特別に見逃してあげます。補習ももう終わりです。だから今すぐに帰宅して1日頭を冷やしてください!!」

    上条「せ、先生! 俺はただ、御坂のことを馬鹿にされたから……」

    小萌「帰りなさい!!!」

    まるで悪いのは上条の方だと言うように、小萌は叱っていた。

    青髪ピアス「…………………」

    小萌「……………………」

    上条「………っ」
    上条「分かりました」

    名残り惜しそうにそれだけ言い放ち、学生鞄を手に取ると上条は教室から出て行った。
    僅かにだが、教室内の青髪ピアスと小萌の会話が聞こえてきた。

    小萌「大丈夫ですか? 保健室行きますか?」

    青髪ピアス「いや、僕は大丈夫や。でも驚いたわ。あのカミやんが御坂美琴を庇うなんて……」

    小萌「確かに、それはとても信じられません。もしかしたら御坂美琴に洗脳されてるのかもしれません……」

    青髪ピアス「カミやん、むっちゃ心配やわー」

    上条「…………………」

    何かおかしなことが起こっている。上条が分かったのはそれだけだった。
    そしてこの時、上条はまだ、今御坂の身に何が起きているのか、知る由もなかった。

    56 = 41 :

    今日はここまで。
    次は明日ぐらいに。

    58 :

    乙!
    続きが滅茶苦茶気になるじゃないか……。

    59 = 39 :

    乙!
    やべーよ。ドキドキしっぱなしだよ。

    60 :

    上条さんのそげぶでも元に戻らないのか

    61 :

    この上条さんになら掘られても……いや、掘られるのはやだな
    上条さんの説教喰らって立ち上がった(反抗した)……だと……?

    62 :

    まぁまだ“そげぶ”って程じゃなかったからな
    “そっ”だないいとこ

    63 :

    これ上条さんが頭触れば元に戻るんじゃね?

    64 :

    究極の愛っつったら自己犠牲のバットエンド+輪廻転生しかおもいつかねぇんだぜJK

    65 :

    上条「世界を敵に回してもお前を守る!!」

    美琴「何この人、かっこい(ry」

    66 :

    妹達の登場が怖いな
    直前まで仲良くしてたから余計に怖い

    67 :

    一方通行が敵に回ってたらやばいんじゃね

    68 :

    番外個体みたくおかしくなっちゃうかも

    69 :

    一方通行さんは変わらないと信じている

    70 :

    一方通行さんなら反射して大丈夫だと信じてる

    71 = 66 :

    一方さん今は常時反射じゃねーし魔術サイドの力みたいだからな…
    覚悟はしとこう

    72 :

    妹達はネットワークあるから大丈夫なんじゃない?
    その関係で一方通行も

    73 :

    妹達は狙われたりしないのかな

    74 :

    物理的に一番怖いのは一方さんだけど、精神的に一番キツそうなのは上条さん以外なら美鈴さんだろうな

    75 :

    >>74この魔術の効果範囲って、学園都市内じゃないのか?

    76 :

    あれか、御坂が見た悪夢が正夢になる、と…
     
    あれ、マジで絶望じゃん

    77 :

    学園都市に来る前の上条さんってこんなふうに嫌われていたんだろ・・・・

    78 :

    では今日の投下分
    続きいきまーす

    79 = 78 :

    その頃――。

    第7学区のとある路地裏。
    相変わらず素足とパジャマ姿のまま、美琴は表通りを覗くようにして立っていた。

    美琴「………お腹すいたな……。朝から走りっぱなしで何も食べてないんだもん……」

    彼女の視線の先にはコンビニが1軒あった。

    美琴「でも、財布も持ってないし……。それにまた表へ出たら、追いかけられちゃう。もう一般人に電撃なんて浴びせたくないのに……」

    彼女は午前にあったことを思い出す。何故か、みんな美琴の顔を見ると、慄き、怯え、怒り、震え、敵意を見せてくるのだ。そして、少しでも自分の能力に自信のある者はすぐに追いかけてこようとする。美琴はそんな彼らを振り切るために、微かながら電撃を使っていた。

    美琴「もうやだよ……。私が何したって言うの……?」

    美琴は頭を抱え込む。
    彼女は今、果てしない孤独感と恐怖感に苛まれていた。

    美琴「グスッ……黒子も、佐天さんも、初春さんも、みんな何故か私を怖い目で見るし……」

    美琴は地面に蹲り嗚咽を漏らした。

    美琴「誰か……助けて……」

    80 = 78 :

    上条「はぁ~、何か気分悪いぜ」

    まだ正午から1時間ほどしか経っていない頃、上条はいつもより早く家路に着いていた。

    上条「しっかし、何で青ピと小萌先生は御坂のことあんなに嫌ってるんだ?」

    本来ならまだ授業中の時間だからか、通りにいる人の数は少ない。いるとすれば、学校をサボっている学生ぐらいのものだった。

    上条「あー明日どうしようかな? 青ピと顔を合わせるの気まずいしな。怒りに任せて絶交宣言もしちゃったし……。いや、あれはあいつが悪いんだ。大して知りもしないくせに御坂のこと貶すから……」

    ふと、上条の脳裏に美琴の顔が蘇った。
    記憶の中でも彼女は、明るく、元気に、歳相応の笑顔を浮かべていた。

    上条「あいつが、世界最悪の人間なわけないだろうが……」




    「何が世界最悪の人間なんですか?」




    上条「え?」

    突如、声を掛けられ上条は辺りを見回した。すると、ある1点で1人のさわやかそうな少年と目が合った。

    上条「あ、お前は……」





    海原「お久しぶりです上条さん」





    上条「海原!? 何でこの時間帯にここに!?」
    上条「いや、違うな。アステカの魔術師の方か……」

    海原「フフ」

    不気味でいてどこか他人を惹きつける笑顔を見せる海原。
    その正体は、かつて上条と対決したアステカの魔術師・エツァリだった。

    81 = 78 :

    上条「相変わらずその顔のままか。で、お前一体何やってんだこんな所で?」

    海原「さぁ。それを貴方に答える必要があるでしょうか」

    上条「つーか、普段からどこで何をやってんだ? アステカには帰らないのかよ?」

    海原「そこらへんはあまり深く聞かない方がいいですよ」

    ニヤリと海原は上条を見据える。

    上条「ま、プライベートのことまで深く突っ込むつもりはないけどさ」

    海原「浮かない顔をしていたので声を掛けてみましたが、相変わらずのようですね。では、僕も忙しいのでこれで失礼します」

    上条「いや、浮かない顔してるのは色々と……ってちょっと待て」

    踵を返した海原を呼び止めるように、上条は彼の肩を後ろから掴んだ。

    海原「はい? 何でしょう?」

    上条「お前に聞きたいことがある」

    海原「?」

    上条「いいか?」

    海原「構いませんが……中には答えられないこともありますよ?」

    上条「いや、ある人物についてのことだけど……お前、まだあいつのこと好きなのか?」

    海原「あいつ? ……とは?」

    キョトンとした表情を浮かべる海原。

    上条「いや、自分で言ってたじゃねぇか。御坂のこと好きだって」




    海原「ああ、御坂美琴ですか」




    上条「!!!???」

    つまらなさそうに海原は答えた。

    82 = 78 :

    海原「あれは過去のことですよ。と言うか、今更ながら後悔しています。何故僕が、あんな  人  間  の  風  上  に  も  置  け  な  い  女  を好きになっていたのか」

    上条「な、何言ってんだ!? お前、あんなにあいつのこと……」

    彼女の話をすることすら億劫であるように言った海原に、上条は驚きの表情を浮かべて詰め寄った。

    海原「だからあれは過去のことですって。正直、あの女の名前や顔を思い出すだけで反吐が出るんですよ」

    上条「はぁ!? だって、お前俺に約束取り付かせたよな? 『御坂と御坂の世界を守る』って」

    海原「ああ、そのこと」

    上条「!」

    馬鹿にするように海原は答えた。

    海原「そんなこと、もうどうでもいいですよ。今言ったでしょう。僕はもうあの女の顔や名前も思い出したくないんです」

    上条「なっ……」

    海原「つまらない話をさせないでください。これ以上、無駄な話をする必要も無いと思うので僕は帰らせて頂きますね」

    それだけ残し適当に手を振ると、海原は歩き始めた。

    上条「待てよ!」

    海原「ああ、あと1つ」

    1度立ち止まり振り返ったかと思うと、海原は最後に一言だけ付け足した。

    海原「僕はもうあの  最  っ  低  な  女  に興味無いんで正式に譲ってあげますよ。まあ1度戦った仲として忠告しておきますが、なるべくあの女とは会わないほうがいいと思いますよ?」

    上条「…………何だよそれ……」

    海原「ではまた」

    呆然とする上条を尻目に、海原は足早に去っていった。

    83 = 78 :

    第7学区・公園――。

    人も大していない、小さな公園。そこに、美琴はいた。

    美琴「……………誰もいないかな?」

    街中の路地裏を行ったり来たりしている内に、美琴はその公園に辿り着いたのだったが、相変わらず人前に出られなかったためか、彼女は物陰に隠れながら園内を移動していた。

    美琴「………走り疲れちゃった。でも、これからどうしよう……」

    ふと、視界の端に自動販売機が目に入った。

    美琴「喉も渇いたけど、財布持ってないし……。だけど、このままだと喉がカラカラで死んじゃう……」

    ゴクリ、と喉が鳴った。

    美琴「(電撃を自販機に流せば、何本かは缶ジュースが出てくるかも……)」

    もちろんそれは無銭飲食にあたる。

    美琴「だけど……」

    恐らく、また誰かに見つかれば追われることになる。美琴はレベル5の超能力者だったため、能力を使えば追っ手を簡単に退けることも出来た。だが、一般人に向けてはなるべく能力を使いたくなかったのだ。

    美琴「………………」

    意を決し、辺りを1度見回すと彼女はソロソロと物陰から出、自動販売機に向かった。

    美琴「誰もいないわよね?」

    自動販売機の前に来ると、美琴はもう1度辺りを見回した。
    人はいない。警備ロボットもいない。大丈夫そうだった。

    84 = 78 :

    美琴「ごめんなさい」

    ビリビリッ

    自動販売機に手を触れ、美琴は電撃を流した。

    ガコン!

    と、小気味良い音が聞こえると、受け取り口に3本ほど缶ジュースが勢い良く落ちてきた。
    美琴はすぐさまそれを拾い上げる。

    美琴「缶コーヒーに、お茶に、オレンジジュースか……。この後どうなるか分からないし、一応全部持っとこうかな?」

    缶の中身を確かめ、美琴がその場を離れようとした時だった。



    「何やってるのお姉ちゃん?」



    美琴「!!!!!!!」ビクゥッ

    突如、後ろから声を掛けられた。
    咄嗟に振り返る美琴。
    そこには、男の子3人、女の子1人の計4人の子供たちが不思議そうな顔をして美琴を見上げていた。

    美琴「あ……えっと……その……」

    突然の出来事に上手く対処出来ず、美琴はあたふたする。

    美琴「そ、そうだ、ジュースいる? お姉ちゃん3本持ってるから、どれかあげるよ?」

    中腰になり、缶ジュースを差し出した美琴だったが、それがアダとなった。





    の子「きゃああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」





    美琴「え?」

    85 = 78 :

    何の前触れも無く、女の子が叫んでいた。

    美琴「な、なに!?」

    の子「この人……御坂美琴だ!!!!」

    美琴「!!!!!!」

    の子「先生が言ってた……あの……きょうあくな人間の御坂美琴だって……」

    怯えながら女の子が美琴の顔を見た。

    の子1「ええっ!?」

    の子2「あ、本当だ! こいつ御坂美琴だ!!!」

    女の子の言葉を聞き、2人の男の子が驚きの声を上げる。

    美琴「なっ…ちょ、ちょっと待って……」

    の子2「近寄るんじゃねぇ!」

    の子1「悪い奴は俺が倒してやる!!」

    ランドセルからリコーダーを取り出し、2人の男の子が女の子を庇うように前に躍り出た。

    美琴「ね、ねえ聞いて? お姉ちゃん、ちょっとジュース飲みたかっただけなの」

    の子1「しね!! 悪のじょうおう御坂美琴め!!」

    の子2「ころしてやるぅ!!」

    美琴「きゃっ!!」

    同時に、2人の男の子がリコーダーで美琴を殴ってきた。

    美琴「ちょっ……」

    の子1「くらえ!! くらえ!!」

    の子2「街のへいわをみだす悪は俺がゆるさん!!」

    頭を庇う美琴を、2人の男の子はボカボカと容赦なく殴る。
    小学生用のリコーダーとは言え、殴られれば地味に痛かった。

    美琴「痛い!! やめて!! お願い!!」

    の子1「しね!! しね!!」

    86 = 78 :

    の子2「正義のてっつい受けてみろ!!」

    美琴「や、やめて……お願いだからっ……!!」

    の子「誰かああああああああああ!!!!!! 来てええええええええ!!!!!! 御坂美琴に襲われてるの!!!!!!」

    美琴「!!!???」

    片目を開けた美琴の目に、必死に叫ぶ女の子の姿が映った。

    の子「誰かあああああああああああああああ!!!!!!!!」

    美琴「(まずい)」

    次いで美琴は自分を殴る2人の男の子を見た。彼らは、本当に悪の組織の首魁を前にしたような顔をしている。一瞬、美琴は電撃で彼らを止めようと思ったが………

    美琴「(それだけはダメ!)」

    一度伸ばしかけた手を引っ込めた。

    美琴「(子供にはそんなこと出来ない!!)」

    の子「誰かああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

    美琴が悩んでいる間にも、女の子は人を呼ぼうと叫んでいる。

    美琴「ごめん!!」

    何とか2人の男の子を振り払い、立ち上がると美琴は急いで逃げ出した。

    の子1「あ、待て!!」

    の子2「逃げるな!! 戦え!!」

    の子「誰かああああああああああああああ!!!!!」

    リコーダーを振り回し、男の子たちが追いかけてくる。

    美琴「…………っ」

    だが、彼らの速度では追いつけそうになかった。

    ガラン ガラン

    美琴の手から緑茶とオレンジジュースが落ちたが、彼女は気にせずに走り続けた。

    美琴「(もう……嫌………)」

    振り返りもせず、彼女はただ人前から隠れられる場所を探し走った。

    87 :

    夕方・上条宅――。

    上条「ただいまー」

    扉を開け、上条が部屋に入ってきた。

    上条「って、インデックスとスフィンクスは今、いないんだっけか」

    靴を適当に脱ぎ、学生鞄をベッドの上に放ると、彼は冷蔵庫の扉を開けた。

    上条「麦茶麦茶、っと……」

    冷蔵庫から麦茶を取り出し、足で扉を閉めると、上条は居間に座りテレビを点けてみた。

    上条「はぁ……今日は何かみんな変だったなあ」

    コップに入れた麦茶をあおる上条。

    上条「ムカつくことばっかで、久しぶりにゲーセン行っちまった……ったく、貴重な金なのに……」
    上条「ま、今はインデックスとスフィンクスがいないからいいけどさ……」

    昼に海原と分かれてからというもの、上条は溜まった鬱憤を晴らすために今までゲームセンターに入り浸り遊んでいたのだった。

    上条「つか何でみんなしていきなり御坂を嫌いになってるのか訳分からん。ドッキリか? ……いや、御坂本人ならともかく俺をそんなことで騙して何のメリットがあるのやら……」

    テレビ画面を見つめたまま、上条は今日1日あったことを思い出してみる。

    上条「このこと…御坂には黙っててあげたほうがいいかもな……」

    そう結論付け、飲み干した麦茶を机の上に置いた時だった。





    Prrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!





    突如、電話が鳴った。

    88 = 87 :

    上条「ああ? 電話ぁ? 何か出るの面倒くさいな……」

    よっこらしょ、と年寄りくさい言葉を呟きながら上条は立ち上がる。

    上条「せめて携帯にしてくれよ……って、今携帯は修理に出してるんだった」

    ガチャッ

    上条「はいもしもし上条ですけど」

    『カミやんか!!??』

    上条「え? そうだけど、お宅誰?」

    土御門『俺だ!! 土御門だ!!!』

    上条「ああ何だ土御門か。確か今、イギリスに行ってるんだっけか?」

    電話の相手が誰だか分かった途端、上条はのん気な声で答えていた。
    対して、土御門はどこか慌てているようだった。

    土御門『ずっと携帯に連絡してたんだぞ!! 何故出なかった!?』

    上条「え? ああ、だって携帯は不幸にも踏んづけて壊れたから修理に出してる最中で……」

    土御門『あーもう、そんなことはどうでもいいんだ!!』

    上条「そんなことって……。あ、そういやインデックスもそっちにいるんだよな? 元気してるか?」

    土御門『こっちのこと気にしてる場合か!!』

    上条「はぁ?」

    やけに怒り気味の土御門の様子に、上条は少し苛立った声を上げた。
    インデックスのことを聞いてるだけなのに。何で土御門はこんなに怒ってるのだろうか。

    89 = 87 :

    上条「一体どうしたんだよお前?」

    土御門『カミやん、よく聞け』

    上条「?」



    土御門『カミやんは常盤台中学の『超電磁砲(レールガン)』御坂美琴と仲が良かったよな?』



    上条「!!!!!!」

    土御門『どうだ?』

    上条「…………………」

    その名前を聞き、上条は眉をひそめた。
    と言うのも、今日1日で、青髪ピアス、小萌、海原の3人から美琴に対する罵詈雑言を聞いていたのだ。彼らが何故美琴を悪く言ったのかはさっぱり分からなかったが、いずれにせよこれ以上、知り合いから彼女の悪口を聞きたくはなかった。
    だから上条は、土御門も美琴を悪く言うのではと身構えたのだが……

    土御門『今、彼女が大変なことになってるんだ!!』

    上条「え!?」

    土御門『早く彼女を助けないと、取り返しのつかないことになるぞ!!』

    帰ってきたのは予想外の言葉だった。
    上条は今日あったことを思い出す。

    上条「そ、その話、詳しく聞かせてくれ!」

    受話器を強く耳に押し付けるように、上条は訊ねていた。

    90 = 87 :

    夜――。

    美琴「………もう、夜か…」

    街から少し離れた場所にある小さな川の土手。美琴は今、その草村の中に姿を隠していた。
    長い草が生えた斜面に埋もれるように、彼女は仰向けに転がっている。空には星が見え始めた。

    美琴「………12時間以上、ずっと逃げ回ってた……。こんなに走ったのって、あいつを追っかけてた時以来か……」

    ゆっくりと独り言を紡ぐ美琴。
    彼女の顔は疲れ切っており、ほとんど生気が感じられないほどだった。

    美琴「今は、夕食の時間ね。今頃黒子は寮の食堂で夕飯食べてるんだろうな……。私も昨日は黒子と一緒にご飯食べてたのに……」

    と、そこで美琴は言葉を切った。

    美琴「…………………」

    何気なく見つめた視線の先に、群青色の空と白く光る星が見える。すぐ近くからは川のせせらぎが聞こえてきた。

    92 = 87 :

    美琴「………うっ」

    急に、美琴の顔が歪んだ。

    美琴「………グスッ」
    美琴「………………ヒグッ……」
    美琴「エグッ………グズッ………」

    次いで、口から嗚咽が漏れ出した。

    美琴「ううう」

    溢れ出す涙。

    美琴「うぁぁぁ……」

    彼女は両手で目を覆う。

    美琴「………何で……こんなことに……グズッ……ヒッグ……」

    美琴は何とか泣き止もうとするが、今日1日のことを思い出すと余計に涙が出てくるのだった。

    美琴「………昨日までは……普通に暮らしてたのに………私が……何をしたって……言うの? …グスッ」

    頭を抱え、身体を丸めるように美琴は泣き続ける。

    美琴「……何で……こんなことになったのよ!!!!!」

    ぶつけどころのない悲しみを発散するように彼女は叫ぶ。

    美琴「……………ヒグッ…グスッ」

    しばらくすると、再びその場には美琴の嗚咽だけが響いていた。

    美琴「これは何かの悪い夢なのよ……。そうよ、きっとそう……」

    額に腕を乗せて彼女は呟く。

    美琴「今日は早いけど、寝よう……。きっと明日には、何事も無かったように全てが元通りになってるはず……」

    そう言って美琴は無理矢理に目を閉じた。しかしそれでも、涙だけは流れ続けていた。

    93 = 87 :

    その頃――。

    上条「ハァ……ゼェ……ハッ……ゼッ」

    上条は、夜の街を駆け抜けていた。

    上条「チクショウ!!」

    通行人が道を塞ぐたび、上条は彼らの間を無理矢理割るように通り抜けた。
    もう、どれだけの距離を、どれだけの時間を走ったのかは分からなかった。今、自分がどの学区にいるのか。それすらも意識の外にして彼は絶え間なく足を動かし続けていた。

    上条「ハァ……ハァ…」

    上条は風車のポールに片手をつき、うなだれるように一息つく。

    上条「どうして……こんなことに……」

    上条は思い出す。土御門から電話を受けた時のことを。そして彼から聞かされた衝撃の事実を。



    3時間ほど前――。





    土御門『もう時間も無いから単刀直入に言う。超電磁砲こと御坂美琴が危ない」





    上条「!!!!!!!!」

    魔術の事件の際に見せる時以上に、土御門は真剣な声で言った。

    上条「ど、どういう……。まさか今日俺が学校であったことと関係があるのか?」

    上条にとってすぐ思いつけることと言えば、昼のことだった。

    土御門『何かあったのか?』

    上条「今日の昼休み、学校で青ピと補習受けてた時なんだ。何気ない会話をしている途中、急に青ピの奴が俺に『超電磁砲とこれ以上会わないほうがいい』って言ったんだ」

    土御門『……やっぱりか』

    上条『やっぱりって!?』

    94 = 87 :

    上条「あ、ああ……それで、俺がその理由を訊ねたら、あいつ、ボロクソに御坂のこと罵ったから……俺ぶち切れて……」

    土御門『………………』

    上条「そこに小萌先生が来て、俺と青ピの喧嘩の仲裁を始めたんだけど、事情を話したら小萌先生まで御坂のこと罵り始めて、挙句には青ピと同じく『御坂美琴とは会うな。今まで御坂と会ってた俺が無事で安心した』とか言い出して……。で、俺は訳も分からないまま混乱してたら青ピの奴がまた御坂を酷く言ったから………」

    そこで上条は続きを言うのを躊躇うように声が小さくなった。

    上条「………だから、青ピ殴って絶交宣言して帰ってきちまった………」

    そこまで言って上条は黙った。

    上条「……………………」

    土御門『…………どうやら悪い予感が的中したようだな』

    上条「え?」

    土御門『やはり魔術は既に発動していたか』

    上条「……………魔術?」

    聞き慣れた単語が受話器の向こうから聞こえてきた。

    上条「ちょっと待て、魔術だと!!??」

    土御門『………そうだ。御坂美琴。彼女はその標的にされた』

    上条「なっ………」

    脳天を叩かれたような衝撃が走った。土御門の言葉に、上条は一瞬、手から受話器を滑り落としそうになった。

    上条「どういうことだそれは!!!!」

    何も考えることなく、上条は怒鳴っていた。

    土御門『落ち着けカミやん。今から何があったか全て話す』

    上条「ふざけるなよ!!! 何で御坂が魔術の標的にされなきゃいけないんだよ!!??」

    まるで土御門が当の犯人であるように上条は声を荒らげる。

    土御門『冷静になれカミやん。感情的になれば、助けられるものも助けられなくなるぞ』

    上条「………っ」

    土御門『だが、その前に1つだけ聞いておくことがある』

    上条「? な、何だよ?」

    95 = 87 :

    さっさと先を話さない土御門に、上条は多少もどかしさを覚えた。

    土御門『御坂美琴がとある魔術の標的にされてるのは事実だ。その上で聞く』

    上条「あ、ああ……」

    土御門『もし彼女を助ける気なら、カミやんは学園都市230万全ての学生を敵に回すことになる』

    上条「…………え?」

    一瞬、何を言われたのかさっぱり分からなかった。

    土御門『それでもカミやんは、御坂美琴を助けるつもりか?』

    上条「…………………」

    だが、これだけは分かった。土御門は上条をよく知る人物として、1人の人間として上条に質問しているのが。

    土御門『全ての能力者、風紀委員(ジャッジメント)、警備員(アンチスキル)。それら全てから追われる羽目になる』

    上条「……………、」

    土御門『もう1回訊ねるぞ。学園都市という1つの巨大な街を敵に回すリスクを背負っても、カミやんは御坂美琴を助けるつもりか?』

    今までに無い口調で土御門は上条に質す。それはまるで、人生を左右する選択を迫るように。

    上条「…………………」

    土御門『…………………』

    2人の間に沈黙が流れる。
    土御門は敢えて何も言わず上条の返答を待っている。土御門はもう分かっていた。上条がどのような返答をするのかを。だからこそ彼は、答えを促すような野暮な真似はしなかった。

    土御門『(カミやん……)』

    そして、数秒後、1つの溜めを置き………





    上条「当然だ!!!!!!」





    上条はきっぱりと断言していた。

    96 = 87 :

    今日はこれで終わり。
    次は多分明日。

    97 :

    乙です!
    続きが気になって仕方がない…

    98 :

    ぐあぁぁぁぁぁぁぁ

    乙!
    美琴が可哀相過ぎて涙が止まらない・・・

    99 = 91 :

    上やんかっこいい

    100 :

    乙!
    上条さんにヒーローフラグが立ったわけだが、同時に一通さんの敵フラグも成立しちゃったっぽいね


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