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    元スレP「アイドルたちでブラスバンドですか?」

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    451 = 115 :

    (そしてCメロからラスト! 曲が最高潮に、盛り上がるシーンだ!)

    千早「《誰も 明日に向かって生まれたよ 朝に気づいて 目を開け》――」

    (楽団の全員がフォルティッシモで激しく音をかき鳴らし、ヒートアップ……!)

    伊織「―――ッ!」
    貴音「―――――」
    雪歩「――っ! っ!」

    (……という場面なんだが、まあ、初日はまだこのあたりの音量の移り変わりは難しいよな)

    真美「―ッ!!! ッ!!!!」
    「―――――~~~~~ッ!!!!!」
    亜美「~~~~~ッ! ~~~ッ!」

    (あいつらは、許しを得たものと思って、Cメロに入る前からすでに最大出力だったしな……もう少し『音量落とせ』は現役だな)

    454 = 115 :

    小鳥「 ……――――ッ! 」

    小鳥「……どうでしたか、プロデューサー」

    「……すごくよかったです。まだ甘いところもいくつかありますが……とても、最初に合奏をした時と、同じメンバーとは思えません」

    亜美「おおーっ!」

    真美「兄ちゃんがデレた! いおりん二世の誕生じゃーっ!」

    伊織「だーれが一世よっ! コラッァ!」

    「あとは……千早、俺の代弁を頼む」

    千早「……はい」

    千早「ありがとう。みんな……!」

    (【眠り姫】。これを選んで本当によかったと思える。千早はそれだけ、満たされたような顔だった)

    456 = 115 :

    (そして【自転車】だ)

    (真がそのための衣装に着替えるということで、わずかばかりながら、休憩時間ができた……のだが)

    律子「あっ……」

    「ん、どうしたんだ、律子」

    律子「いえ……肝心の、真のパフォーマンス、まださっぱり決まってないんじゃないですか?」

    「あ」

    伊織「ちょっとあんた……」

    「い、いや! いける! 真ならいけるさ! 午前中に、自分でいい動きを考えてきてくれてるはず!」

    「おっまたせしましたーっ!」 バァーン!

    458 = 115 :

    律子「 」

    伊織「 」

    「 」

    雪歩「…」

    「えっへへ~! プロデューサー、この衣装すっごく可愛いと思いませんか!? いやー、ガードができるって決まった日から、ちょくちょく合間を縫って作ってたんですけど……」

    (足首まであるドレスにフリルを144個ぐらいつけたガードを、俺は未だ知らない)

    雪歩「……」ガタッ

    「ん? どうしたのさ雪歩?」

    雪歩「違う……」

    雪歩「違うよ! 違うよ真ちゃん!! そんなの誰も望んでないよ!!!!」

    「あ、あの、雪歩?」

    雪歩「プロデューサー! 衣装庫をお借りします!」

    「え、あ、はい」

    雪歩「さあこっちだよ真ちゃん」ツカツカツカ

    「え? ちょ、雪歩!? 雪歩ぉ~~~!?」

    460 = 115 :

    「……休憩時間が、延びましたね」

    社長「……うむ」

    「……あ、そうだ。真のチューバがなくなった分、頼みは社長のコントラバスですから……お願いしますね」

    社長「ん? ああ、うむ。任せておきたまえ」

    「お願いします」

    社長「…………」

    「…………」

    社長「…………時間の経過が遅くないかね?」

    「……いえ、この漂う微妙な空気のせいですよ」

    461 = 438 :

    しえん

    463 = 115 :

    (雪歩によってもたらされた(?)奇妙な空白の時間も過ぎ去り、いよいよ曲の練習だ)

    小鳥「 ♪ー♪ー♪ー♪ー 」

    「 ♪ー♪ー♪ー♪ー 」

    あずさ「 えっと……♪ー~~……♪_―~~……? 」

    (イントロは響の軽快なビブラフォンと、フルートによる旋律で始まる)

    (……が、美希がいないため、ハモりであるあずささんが迷走している……どうやら、ハモる対象がいないとうまく発動しないスキルのようだった)

    (そしてっ!)

    「《ちょっと待って! ボクは君を… ぎゅっと抱きしめたクッション》――」

    (Aメロの歌い出しと同時に、舞台袖から真が登場だ!)

    (……白のズボンに黒のブーツ、そして赤いジャケット……。うわ、軽く引くぐらいキマってるな……無茶苦茶格好いい)

    雪歩「♪♪♪♪♪ーッ! ♪ッ、♪♪♪♪♪ーッ! ♪♪♪♪♪♪♪♪ーッ!」

    (雪歩のテンションの上がり方がおかしい)

    (……あ、でもリズム面はきちんと改善されてるな。千早との特訓の成果がしっかり出たみたいだ)

    465 = 438 :

    しえん

    466 = 115 :

    「《どんな 道でだって 負けないで進んで見せる》――ッ!」

    (真……動きのキレがすごいな。まだ迷いながら踊ってるから、完成度としては全然だが……これは、相当ハードな振りつけをしても答えてくれそうだとも思える)

    「《好きだよ! 心こめて 好きだよ! 力こめて》――-!」

    (そしてサビ。もう、ここまで来たら、あとは、皆が感じるままに弾ける。こういう曲のいいところは、演奏者も楽しいという、そこにある)

    真美「~♪」

    雪歩「♪♪♪~~~!!!」

    春香「♪~♪~」

    千早「♪、♪、♪、♪~」

    伊織「♪~~~~~~~~~~~~♪」

    (皆がいきいきと、楽しそうに演奏をしている)

    (ほとんど、初見で弾いているようなものだ。上手いといえるものじゃない……でも、なんて楽しそうなんだ)

    (音"学"、じゃない。これは、まさに音"楽"だ。誰に言われてするものでもない。苦しんでするものでもない。流れるメロディに身を委ねることを、心から楽しんでいる……!)

    467 = 438 :

    このP、アイドルのプロデュースよりこういう吹奏楽に関わる仕事の方が向いてるんじゃね

    468 = 115 :

    「《好きなとこへ! 連れていくよ! どこまででも!》――っ!」

    (そして……)

    やよい「…………っ」

    (力むな、やよい)チラッ

    やよい「っ!」

    「《だってキミが――》」

    小鳥(……っ!)

    (………ッ!)

    ―――
    ――

    469 = 123 :

    まだやってたのか
    すごいな

    470 = 115 :

    「まあやよい、何度も言うようだが、本番まであと一か月ある。それだけあれば、高音だって安定するようになるさ」

    やよい「うう……悔しいですっ! この悔しさをバネに、頑張りますっ!」

    「そうそう、その意気だ。それまでは、俺もしっかり練習に付き合うからさ」

    小鳥「でも、やよいちゃん、あの時出てたFの音、ものすごい音量だったわね。前で歌ってた真ちゃんがびっくりしてたわよ」

    (結果、やよいは最初の合奏でhiB♭を当てることはできなかった。まあ、そりゃ今のところGまでしか出していないのだから当然なのだけど。これでやよいが気を落とさないかと、少しだけ心配だったのだが)

    (やよいもそこはきっちり理解しているようで、「ドンマイ」の一言で立ち直ってくれた。まあ、ここで引きずられても困るので、これは俺の側が助かったともいえる)

    やよい「わたしっ、音をひとつずつ高いのを出せるように頑張っていきますねっ!」

    「ああ、お疲れさま、やよい」

    やよい「はいっ! それじゃあ、失礼しまーすっ!」

    「……小鳥さんの言ってたことは、やっぱりホントでしたね」

    小鳥「え?」

    「やよいは強い子だって」

    小鳥「ふふっ、そんなの、もう皆知ってることですよ。私の手柄にはなりませんよ」

    471 = 438 :

    しえん

    472 = 115 :

    (その後の一か月は、とにかく練習に次ぐ練習だった)

    (とはいえ俺は、最大の課題・見せ場であるやよいにほぼつきっきりで、他のメンバーの様子を見ることはほとんどできなかった)

    美希「ただいまなのー、ハニー♪」

    (語るべきことがあるとすれば、新楽譜の初合奏の翌日に来た美希のリアクションだろうか)

    「おう、仕事、お疲れさま。美希」

    美希「ありがとうなの♪ ……でもね、美希、ちょっーと聞き捨てならない報告も受けてるんだけど……」

    「報告? 誰から?」

    美希「春香から」

    (あ、嫌な予感)

    美希「ハニー……金色のマウスピースを、誰かに譲ったって聞いたの」

    473 = 115 :

    「……ああ、そうだなー。まあ俺のもったいない精神が働いたというか」

    美希「まあ相手がだれかはもちろんわかるけど」

    「お、おう、そうか。美希は賢いなあ」

    美希「ありがとうなの♪」

    「ははは」

    美希「で、ハニーは喜んでるんだ。やよいに自分のおさがりを使って貰えて」

    「え」

    美希「自分の唇跡地にやよいの唇を訪問させて」

    「なんだよその言い方は!?」

    美希「間接キッスさせて」

    「……ぐ、むむむむむむ」

    474 = 438 :

    しえん

    476 = 115 :

    美希「……はあ。ハニーいじめても楽しくないから、このへんでやめるの」

    「……いやまあ、年頃の娘相手に軽率だったとは思ってるよ」

    「ただ、マウスピースは洗っていればおさがりもできるものみたいな風潮は、普通にあるもので……」

    美希「もー! そんなみみっちく釈明しないでほしいの!」

    美希「ミキ、そんなことで怒ったりしないもん。直接じゃないと意味なんてないと思うな」

    「そ、そうか。とてもありがとう(?)」

    美希「……ま、もちろん諦めるつもりにもならないけど」

    「え?」

    美希「なーんでもないの♪ じゃあねっ! あずさー、一緒に練習しようなのー!」

    (美希はそう言っていつも通りに練習を始めた。何かを再確認したような、そんな表情だったが……本当によくわからない奴だ)

    477 = 115 :

    (そして、俺は、やよいの本番を成功させるべく、全てを注いだ)

    (俺の現役時代のテクニック、ノウハウ、心構え、休憩の仕方……そして、音楽への想い。文字通り、全てをだ)

    「やよい」

    やよい「はいっ」

    「いいか。やよいは、今から一か月で、あと三つ上(半音数え)の音を出せるようになり、なおかつそれを本番で成功させなきゃいけない」

    やよい「……はいっ」

    「そのためのステップとして、俺はこのように計画を立てた」

     1.高音域を開発する
     2.高音域を安定させる
     3.本番のコンディションを最高に整える

    やよい「3つのステップですね」

    「そうだ。お前は、このスリーステップを、4週間のうちに完走するんだ」

    478 :

    マウスピースて中古のおんなじ奴手当たり次第買い集めて選別したりするよな

    479 = 115 :

     ステップ1.高音域を開発する

    ~ボイトレ室~

    「いいか、やよい。高い音を出すとき、お前はどうする?」

    やよい「えっと……上半身の力を抜いて、下半身で音を支えます!」

    「うん。よく覚えてるな。えらいぞ」

    やよい「いっつも意識してることですから!」

    「じゃあ、力を抜いて、お腹で支えて、吹いた……でも、まだ高音に足りない。どうする?」

    やよい「え? えっっと……」

    「よーく考えてみろ」

    やよい「ううーーん…………マウスピースを、唇に押し付ける?」

    「それはダメだ。確かに一時的に音が出ることはあるが、長続きしないし、綺麗な音でなくなってしまうんだ」

    481 = 123 :

     1.貴音を開発する
     2.貴音を安定させる
     3.貴音と本番のコンディションを最高に整える

    482 = 115 :

    やよい「うーん」

    「ヒントをやろう。やよい、演奏する前に、しっかり息を吸うのはどうしてだ?」

    やよい「え、えっと……しっかり息を吐くため?」

    「そうだ。『息を吐いて音を出す』ということを、高音の壁にぶつかった頃のラッパ吹きは、意外と忘れてしまったりするんだ」

    「唇の形の作り方がよくないんじゃないかとか、マウスピースを当てる角度がおかしいんじゃないかとか、そういうことに気を使い始めるとな。」

    やよい「へえ……」

    「やよい。俺の立てたこの人差し指を、ロウソクだと思え」ピッ

    やよい「ロウソクですか?」

    「そうだ。ロウソクの上では火がついている。それを、吹いて消すつもりで、息を吹いてみろ」

    483 = 123 :

    「……」クンカクンカ

    484 = 115 :

    やよい「すううう……」

    やよい「ふーっ! ふーっ!」

    「それじゃあダメだ。たくさん息を吹きかけても、それがゆっくりとした息じゃ、炎は揺れるだけで消えないぞ」

    やよい「は、はいっ!」

    やよい「すううううっ……」

    やよい「――――ッフッ!」

    「ストップ! そう、今の感じだ! やよい、そのまま聞け。今、舌の形はどうなってる?」

    やよい「えっ? 舌の形ですか?」

    「あっ、こら! 喋ったら舌の形がわかんなくなるだろうが!」

    やよい「はわっ!? す、すみませんー!」

    「もう一回だ、やよい!」

    やよい「はいっ! ――すううう……」

    485 = 259 :

    やよかわ

    486 = 115 :

    やよい「―――ッフッ!」

    「よし! そのまま聞け。舌の形が、『吐き出される空気の通り道』を作ってないか?」

    やよい「?」

    やよい「……」

    やよい「!」コクコク

    「そうだ。吐く息を、より鋭いものにすることで、高音域はグッと出やすくなるものだ」

    「そして、そのためには舌を使って、空気の通り道を自分で作ってやるのが一番なんだ」

    やよい「 」コクコク

    「その舌の形をよーく覚えて、楽器をつけても再現できるようにしていこう」

    やよい「 」コクコク

    「もう喋っていいぞ」

    やよい「はいっ!!!」

    487 = 115 :

    ~本番まであと22日~

    ~ボイトレ室~

    「……よし。唇の疲れは残ってないな?」

    やよい「はいっ! プロデューサーの言った通り、毎日早く寝てますから!」

    「よし。睡眠時間を確保することは演奏者の基本だ。忘れてないな」

    「それじゃあ、今日こそhiB♭に届かせるぞ、やよい」

    やよい「わっかりました! 全力で頑張ります!」

    「力は抜け」

    やよい「そうでした」

    488 = 259 :

    やよかわ

    489 = 115 :

    「立って吹くぞ。座るより、立ったほうが下半身が安心しやすい」

    やよい「こうですか?」

    「そうだ。足は肩幅に開いて、上体はリラックス。特に肩の力は抜ききれ」

    やよい「――――」スッ

    「そして、トランペットを構える……脇はしめるなよ。二の腕が、ちょうど地面と水平になるぐらいの角度に持ち上げるんだ」

    やよい「――――」グッ

    「マウスピースは、唇を無理させず、触れるぐらいでいい。押し付けるのはダメだ」

    やよい「――――」ピトッ

    「……準備ができたら、お腹にいっぱい息を吸って、吹くんだ。あの時みたいに、ドの音から一つずつ上がっていく」

    「やよいの好きなタイミングで入るってくれ」

    やよい「…………」

    やよい「…………」

    やよい「………すううううっ――――!」

    490 = 222 :

    しえん

    491 = 273 :

    安価からよくここまで書けるよな
    支援よ

    492 = 115 :

    やよい「――!」


    ド―――……  ド#―――……  レ―――……  レ#―――……

    (……よし、いい出だしだ。無理のない音。チューニングのドが出せずに困っていた面影は、もうない)


    ミ―――……  ファ―――…… ファ#―――……  ソ―――……

    (ここまではいいんだ……ソまでは、比較的、安定して出る音域。ここからだ……っ!」

    やよい「っ! すうううう――――!」

    ソ#―――……  ラ―――…………

    (Gまでいった! この上! 今なら出る!)


    シ♭――――――……………………

    (いける! あと2音!)


    …ッシ―――――――――――…………………

    (突っかかった、が、行けるっ! 行けっ! 行けっ! 行けッ! 届けっ! 届かせろッ! 行けっ! 行けッ! やよいっ、やよいッ―――――!!!)

    やよい「~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」

    493 = 115 :

     …………………………ッド―――~~……………………

    494 = 115 :

    やよい「…………」

    「………………」

    「聞こえた……」

    やよい「出た……」

    「ほんと小さな音……かすれていた……」

    やよい「すぐに消えちゃった……」

    「でも……!」

    やよい「けど――ッ!」



    P・やよい『――~~ぃやったあああああぁあぁぁあああ~~~~~~っ!!!!!』

    495 = 259 :

    やったー!

    496 = 222 :

    おお

    497 = 438 :

    こういう練習風景を丁寧に書くSSは良作

    498 = 115 :

    やよい「出たっ! やった! できたっ、ぷ、プロデューサー~!!」

    「やったっ! やったぞっ! 出たんだっ! ついにっ!! hiB♭がっ!!!!」

    やよい「わ、わたしっ! もうっ、嬉しくてっ! ううっ、嬉しいですっ! うっ、ううっ……!」

    「泣くなっ! 笑えっ! ほ~らたかいたか~いっ!!」

    やよい「うっ、グスッ……ってうわああああああああんっ! 高いですーっ!? 怖いですーっ!」

    「お、おおおっとしまったぁっ!? ご、ごめん忘れてたよやよいの高所恐怖症!!」

    やよい「エグッ、んっスン……ぅ、ぅああっ……!」

    「泣くな!? やよい、泣くなー!?」

    やよい「うわああああああああああああああん」

    「泣くなーッ!! や、やよいーっ!!」

    499 :

    良かった残っていたか

    500 :

    よかったまだ続いてた支援


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