元スレP「アイドルたちでブラスバンドですか?」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
402 = 115 :
貴音「先ほどから気になってきたのですが、ずっと抱えているその封筒は?」
P「! おっと、つい抱えたままだったな」
貴音「……なるほど。ふふっ」
P「……わかるか。皆にはまだナイショな。驚かせてやりたいから」
貴音「ええ、構いませんよ……まったく、あなた様はいけずです」
伊織「おはよう」
やよい「おはようございますー!」
P「お」
403 = 373 :
モンキー
404 = 115 :
貴音「おはようございます。水瀬伊織、よろしければ、本日、私の音程のちぇっくに付き合ってはいただけませんか?」
伊織「貴音の? ふーん、別にいいわよ。でも、もう貴音はだいぶ直ってきてると思うけどね」
貴音「ふふ、どうせでしたら、より高みを目指したいですから……」
P「やよい」
やよい「おはようございますっ、プロデューサー。昨日はありがとうございましたー!」
P「ああ、どういたしまして。……それよりやよい、ちょっといいか」
P「後でお前にプレゼントがある」
やよい「ぷ、プレゼントですか?」
P「そうだ。あとで渡すから、それを覚えておいてくれ」
やよい「???」
P「よしっ。おおーい! ちょっとみんな、すまないが一度集まってくれー!」
407 = 115 :
亜美「どしたの兄ちゃん?」
真美「真美たち、ウォームアップも終わって練習し始めたところなのにー」
P「そいつはすまなかった。しかし、大事なことなんでな」
貴音「ふふ」
響「? たかね、何笑ってんの?」
律子「どういう要件ですか?」
あずさ「あらあら、何かしら」
やよい「???」
P「今日! 新しく楽譜を配る!」
409 = 115 :
春香「おおおっ!」
真「ついに着ましたか!」
P「ああ。4曲構成のうち、残りの2曲がついに届いた! ようやくだ!」
律子「できますかね? 確かにもともと4曲ってことで局に通した話ですけど」
P「完璧にとは言わないさ。それでも、形にはなると思ってる」
響「新しい曲は何になったの!?」
雪歩「き、気になりますぅ!」
社長「私も聞いていないからな、うーむ、早く発表してくれたまえ!」
P「わかりました。まずひとつ、三曲目は……」
412 = 115 :
【眠り姫 (吹奏楽アレンジver)】
千早「!」
春香「千早ちゃんの!」
P「ああ。千早にはティンパニばっかりさせてきてたが……歌がメインだと約束したしな」
P「千早の歌を、最も活かせる歌はなんだろう……とずっと考えてきてな。結果、これになった」
千早「私の、ために……」
P「ああ。しっかり頼むぞ。この曲の主役はお前だ」
千早「…っはい! あ、あの! 必ず! 必ず最高のものにしてみせます!」
P「いい返事だ」
P「それと……この曲にした理由は他にもあってな」
伊織「他の理由?」
P「律子なら、わかるかもな」
律子「? ………………―――! ああ、なるほど! 考えましたね、プロデューサー」
414 :
吹奏楽いいぞ
音感良くなるし彼女もできる
415 = 115 :
亜美「えっ、りっちゃんわかったの?」
律子「あんたらよ。亜美、真美」
真美「え"っ、真美たち?」
P「【眠り姫】の魅力は、ボーカルの高いトーンと、それに対となって響き渡る重低音にある」
P「お前たちベーストリオには、音量抑えろと言ってきたが……しかし、その迫力のある音量は同時に、活かしてもみたかったんだよ」
真美「やったーぃ!」
亜美「マジかっ! うっひょー、テンションあがってきたぜえぇーいぇぁっ!」
真「有難うございますっ! プロデューサー!」
P「おっと……真。お前はまだ、礼を言うには早い」
真「へ?」
P「そして2つめ! トリを飾る曲がこれだ!」
416 = 115 :
【自転車 (吹奏楽アレンジver)】
あずさ「まあ!」
雪歩「真ちゃんのっ!」
真「じ、自転車っ! ホントですか!? ホントなんですね!?」
P「ああ、本当だ! これをトリに持ってくる! 真には、ここでカラーガードをしてもらうぞ!」
真「やっ――……」
真「……ったぁ――っ! めちゃくちゃ嬉しいですよ! プロデューサー!」
春香「むむ、ちょっと悔しいけど、でも【自転車】なら……」
響「確かに、最後を賑やかに終わるにぴったりかもね!」
社長「いい選曲をしたねえ、キミィ」
P「ははは、ありがとうございます……それと、これも、真のためだけというわけじゃない」
417 = 271 :
くやしがるん
418 = 115 :
貴音「と、おっしゃいますと?」
P「やよい」
やよい「は、はいっ」
P「この選曲は、お前を見て決まったんだ」
やよい「――えっ? ええっ?」
律子「どういうことですか? プロデューサー。いまいち要領を得ないんですが……」
雪歩「私も、ちょっとよく……」
P「雪歩。【自転車】の、ラストを飾る部分が、どういう風かわかるか?」
雪歩「真ちゃんがとびきり爽やかに『好きだァー!』って叫ぶ、ですよね」
P「そうだな。最後だけ、とびきり高らかに叫んで終わる」
P「これが、その部分のスコア(総譜)だ……」
小鳥「…………」
小鳥「ええっ!」
419 = 115 :
響「ピヨ子、どうなってるの?」
小鳥「えっと……」
小鳥「……『好きだー!』の部分は、トランペットが担当してるわ」
貴音「! なんと!」
やよい「……っ!」
千早「……音階は? どのぐらいの高さなんですか?」
小鳥「いつもチューニングの時に使ってる、B♭の、1オクターブ上……」
小鳥「……hiB♭よ」
やよい「い、1オクターブ上!?」
亜美「hiB♭?って、どのぐらい大変なの?」
P「そうだな……亜美のトロンボーンで、最初に出すドの音の、2オクターブ上を出すのと同じぐらいの大変さかな」
亜美「Oh……」
420 = 271 :
安価なのによく考えてあるなぁ
421 = 115 :
伊織「ちょっとアンタ! どう考えてこの編曲にOK出したの!」
P「落ち着いてくれ、伊織」
伊織「でもっ……!」
やよい「ぷ、プロデューサー……」
P「やよいも。何も、さらし者にしようとして、選んだわけじゃない」
P「俺は、やよいなら、このハイトーンを当てることができると、そう踏んだうえでこの結論を出したんだ」
伊織「はあっ?」
やよい「ど、どういう……?」
P「……先に謝っておく、やよい。すまん。お前が苦しんでいる原因は、俺にあった……」
422 :
>>103
変えるじゃん
423 = 115 :
プロデューサーは説明したッ!!!
やよいの使っているマウスピースは、初心者が使うには不向きなものであったことッ!!!
そして謝罪したッ!!! それは自分のチェック不足から来たことであるとッ!!!
P「……そういうわけなんだ! 本当にすまなかった!」
やよい「 」ポカーン
律子「1ハーフのマウスピース……やよい、あんた、そんなもの使って最初から練習してたのね……」
貴音「なんということ……」
春香「私にはよくわからないけど……ようするに、最初からハンデがあった、っていう認識であってます?」
千早「まあ、そういうことになるのかしら……」
伊織「……はあ。あんたって、ホント、肝心なところで抜けてるのね……」
P「言い返す言葉もない……」
424 = 115 :
やよい「えっと、その、まだよくわかんないですけど、プロデューサー」
やよい「と、とりあえず、そんな頭を下げるのやめてくださいっ!」
P「でも、謝らせてくれ! 俺は結果的に、やよいを無意味に苦しませてしまったんだよ、二か月近くも」
やよい「そんなのおかしいですっ! プロデューサーはずっとわたしが練習するのを助けてくれました!」
やよい「頭を下げてお礼を言いたいのは、こっちのほうですっ!」
P「やよい……」
春香「もうっ、プロデューサーさん。そのまま謝ってたら、やよいが困るだけですよ」
P「……ありがとう。春香。そうだな。こちらこそありがとう、やよい」
P「お前は、苦しんでも、くじけなかったんだ」
P「くじけずいてくれて、ありがとう。やよい。とても嬉しく思うよ」
やよい「えへへっ! ど、どういたしまして?」
427 = 115 :
貴音「しかし、お待ちを。プロデューサー」
貴音「高槻やよいが、適正でない用具を使用していたことはわかりました」
貴音「それがなぜ、大任を果たせるという結論に繋がるのです?」
P「簡単だよ。適切な道具が使えていなかったということは、だ」
P「適切な道具を使えば、今からさらに伸びる余地があるということでもある」
響「! あっ、なるほど! つまり……」
千早「高槻さんに、改めて別のマウスピースを贈ろうという、そういうことですね?」
やよい「――! あっ! じゃ、じゃあ、朝にプロデューサーが言ってた、『贈り物』っていうのは」
P「そういうことだ。……昨日、大急ぎで見つけ出してきたんだ」
P「……これだ、やよい」
428 :
まだ残ってたか支援
429 = 115 :
やよい「……金色の、マウスピース……」
亜美「うわっ……金ぴかだね」
真美「綺麗だねー……」
P「ま、まあ別に高価なものということじゃないけどな。よくあるんだ、こういう色のマウスピース自体は」
律子「サイズは……へえ、5Cですか。いままでが1ハーフだったことを考えれば、ちょうどいいぐらいですね」
やよい「ぷ、プロデューサー。わたしを送ってくれた後、これを買いに行ったんですか?」
P「いや、さすがにもう楽器店も閉まっててな。だからそれは俺が昔使っていたお古なんだが……」
春香「!?」 千早「!?」 雪歩「!?」 真「!?」 伊織「!?」 響「!?」
あずさ「!?」 貴音「!?」 小鳥「!?」 亜美「なっ!?」 真美「なんだってー!?」
431 = 115 :
やよい「ぷっ、ぷっ、プロデューサーのお古、ですか!?」
社長「ほほお」
P「あー、やっぱりイヤか? 一応、保存する前には消毒もしてるし、今朝もしっかり洗ってから持ってきたんだが……」
やよい「うっ、わ、わたしは別に、そういうの気にならないかなーって!」
P「ああ、それならよかった。実は新しいマウスピースを買うのもちょっと出費が痛いと思ってたんだよ。すまないなやよい」
やよい「い、いえっ! ありがとうございますっ! うっうー!」
春香「」
千早「春香。息をして」
あずさ「あらあら……あらあらあらあら……」
響「あ、あずさ……目の焦点が合ってないぞー……? あっ、貴音は笑顔のまま倒れてる……」
真「うわあー……やよい、やるなあ」
雪歩「今日は美希ちゃんが休みでよかった……本当に……」
真美「時間の問題だと思うけどねー……」
432 = 116 :
ほ
434 = 115 :
P(そういうわけで、謎の体調不良者が数人出たものの、皆が新しく配られた楽譜を、夢中になって練習した)
P(俺は、やよいの新しいマウスピースの調子を確かめるべく、付き添った)
やよい「 ♪ー ♪ー ♪ー ――――♪ー! 」
P「どうだ、やよい」
やよい「……す、すごいですー! 今までミの音までしか出なかったのに、こっちだとソの音までらくらく出ます!」
P「おお、そうか! 相性はよかったみたいだな。うむうむ」
やよい「あ、相性がいい、って……プロデューサーの……と……」
P「それじゃあ次の音にも――って、やよい? どうした、ぼーっとしてるぞ」
やよい「! い、いえっ! なんでもないですっ! ええっと、新しい音ですね! 指はどうすればいいですか?」
P「お、おう。1と2だ」
やよい「はいっ!」
435 = 433 :
ほ
436 = 182 :
マウスピースってわりとそういうこと気にされないよね
437 = 115 :
……D―♪ D-♪ ――――ッ~~ D――――!
やよい「ううー、ラはちょっと難しいですー……」
P「いや、たぶんいけるはずだ。唇をあまり押し付けるな、すぐに疲れるだけだ」
P「身体の力を抜いて、リラックス。そして、お腹から下にだけ力を込めて、音の土台をつくれ」
やよい「……」スーッ グッ
P「そうだ。そのまま、大きく息を吸う。吐くためには、まず吸うことが大事だ」
やよい「はぁーっ」
P「そこから、ドの音から、半音ずつ、滑らかに上がっていこう」
やよい「 B♭― H― C― C#― D― D#― E― F― ……」
P「途中で息を吸ってもいいぞ」
やよい「ぷはあっ! ……E― F― F#― ……っG―♪」
P「よっし!」
やよい「ぷっ、プロデューサー! 出ました! ラの音まで出ました!」
438 :
しえん
439 = 261 :
こーゆーのを見ると、管楽器やりたくなるなぁ
ヴィオリストだけど…
440 = 116 :
次の人生ではブラスバンドやるわ
441 = 115 :
P(抑圧されていたやよいのポテンシャルを、ようやく引きだしてやることができたようだった。俺はとても嬉しかった)
P(だが、それ以上に、久々に見せてくれた、ヒマワリのような笑顔。引きだしてやれて嬉しかったのは、こっちのほうだったかも知れない)
P「……っ!」
P(い、いかん、つい涙が)
やよい「? プロデューサー? どうしたんですかっ?」
P「い、いや! ちょっと、ちょっと楽器に太陽の光が反射して眩しかっただけだ」
やよい「?」
P(やよいは「変なプロデューサー」と一言、可笑しそうに言った)
P(俺には、それが楽器に映った、もう一つの太陽のようだと感じられた)
442 = 115 :
そしてその日の合奏!
小鳥「それじゃあ、まずは『眠り姫』のほうから」
小鳥「千早ちゃん、大丈夫かしら?」
千早「ええ」
春香「がんばってっ、千早ちゃん!」
千早「……ふふっ、頑張るわ」
P(千早はまあ、この曲を歌うこと自体は何度も経験している)
P(なのでむしろ、頑張るのは、イントロでピアノソロがある春香のほうなのだが)
千早「――っ」
P(こんなに嬉しそうに、小鳥さんの指揮台の隣に立つ千早を見れば、そんな声をかけたくなるのもわかるというものだ)
444 = 438 :
しえん
445 = 433 :
ほ
446 = 115 :
P(【眠り姫】は非常に表情がよくわかる曲だ)
春香「 ―――― 」 ポロロポロロポロロポロロ……
P(イントロの春香のピアノソロ。何気に非常に難しい場面だ。今日配られたばかりだというのにずいぶんできている……集中して練習したようだ)
千早「――《ずっと眠っていられたら この悲しみを忘れられる》――」
P(Aメロは静かだ。千早の歌唱力が一番浮き彫りになるところは、実はこの最初だ)
P(だが、さすがの安定感だ。ティンパニを練習している間も、どうやらボイストレーニングは欠かさなかったみたいだな)
千早「《悪い夢ならいい そう願ってみたけど》――」
亜美「 ♪ッ! ♪♪ッ! ♪――――、♪ッ! ♪♪ッ! 」
P(Bメロに入ってくると、トロンボーンを中心とした低音がだんだんと出てくる。曲の転換点だ)
P(リズムにも乗っている……いいぞ、問題ないようだな)
447 = 438 :
しえん
448 = 115 :
千早「《眠り姫――・・・! 目覚める 私は今――》」
響「 ♪ッ!!! ♪♪ッ!!! ♪ッ、♪ッ!!! ♪♪ッ!!!」
P(そしてサビに入ると、低音グループにティンパニが積極的に加わってくるようになる)
P(千早の抜けた穴をしっかりカバーできているな、響……おそらく、千早がよく頼んでおいたんだろう)
P(それと……)
あずさ「 ♪_―~~―_♪―_―~~♪~~~~ 」
P(あずささん、主旋律のハモり無茶苦茶うまいな……こんな短期間でよくまあそんな完璧に……!)
P(……って、あれ? よく聞いてみたら、なんかスコア(総譜)と微妙に違うような……!? でも調和している……)
小鳥「 ……? ♪ ♪ ♪ ♪ 」
P(小鳥さんもどうやら気づいているみたいだ。じゃあ、あれはあずささんが感覚的にハモってるのか!? 隠された才能だな……)
449 = 438 :
しえん
450 = 422 :
高校時代を思い出す支援
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