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    元スレ都城王土「ほう…学園都市か。 なるほどこの俺を迎えるに相応しい」

    SS覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★★×5
    タグ : - 都城王土 + - めだかボックス + - ポケモン + - 億泰 + - 古賀いたみ + - 学園都市 + - 布束砥信 + - 球磨川禊 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    51 = 30 :

    (…今のは一体どういうことなのかしら? まるでこちらの胸の内を見透かしたようだったなタイミング…)

    退屈そうに椅子の上で足をぷらぷらと揺らせているあどけない顔をした行橋未造が何を思ってこちらを見て笑ったのか。
    解を求めるにはあまりにも情報が少なすぎる。
    出口のない思考の迷路にはまった布束砥信は授業が終わったチャイムの音にも気付かず一人で思索にふけっていた。

    「えっと☆ 布束さんでいーんだよね?」

    だから気付かなかったのだ。
    声をかけられていると気がついてハッと我に返った布束砥信の前には満面の笑みを浮かべた行橋未造がいた。

    「……何の御用かしら?」

    思わず身を固くし、冷たい声を出してしまう布束砥信だが、同級生とは思えないほどのあどけなく幼い顔をした行橋未造はそんな態度を気にすることもなく口を開いた。

    「えへへ! ボク達ってこの街初めてだからさ。 今度でいいから放課後学園都市の散策に付き合ってよ! できればついでに案内もね☆」

    それは布束砥信にとっても願ったり叶ったりである。
    この転校生たちの本質がどのようなものか判断するには出来る限り情報を集めておくに越したことはない。

    だが、このタイミングでそれを言われるとなると新たな疑念が尽きないのもまた確かである。

    52 = 30 :

    「…構わないけれども。 何故私なのかしら?」

    どの様な表情も見落とさまいと行橋未造の顔を注視するも、悪意やそれに類する感情は見当たらない。

    「えー? 何故って言われてもなぁ… 仲良くしたいからじゃダメなのかな?」

    行橋未造の可愛らしい笑顔を見て、布束砥信はフゥと小さな息をつく。
    少なくとも自分では彼等がどのような人間であるか理解は出来ないということを理解したのだ。

    「…わかったわ。 今日はまだ体調的に無理だけれども、明後日くらいになれば可能なはずよ。 それでいいのならば案内しましょう」

    布束砥信の返事を聞いてニッコリと笑う行橋未造。

    「えへへっ! 約束だよー☆」

    そう言うと、トテトテと軽やかな足音をたてながら都城王土のもとに駆け寄っていく。

    都城王土に擦り寄る行橋未造を見て。

    (…まるで主人が大好きでたまらない仔犬のようね)

    気がつけば布束砥信は心のなかで苦笑いをしていた。

    53 :

    しえん

    面白いな

    54 = 30 :

    ■数日後・学園都市・路上

    行橋未造と交わした約束通り、学園都市を案内する布束砥信。

    これは思ったよりも厳しいものだった。

    良かれ悪しかれ自分が他人の目を集める容姿ではあると自覚している布束砥信だったが、都城王土はそんな彼女の想像を遥かに超えていたのだ。
    道行く人の目が集中するもそれを全く気にしようとしない都城王土と共に歩くのはかなり精神的にきつい。クルものがある。

    「next ここがセブンスミストね。 学園都市の中でかなりの規模を誇る総合ショッピングモールよ」

    それでも頑張って案内を続ける布束砥信に向かってふいに都城王土が口を開いた。
    視線の先には微かな駆動音をたてながらのんびりと巡回している警備ロボ。

    「布束とやら。 案内もいいがこの都市の治安はどうなっているのだ? まさか警備ロボなどでまかなえる筈はあるまい」

    そう都城王土に問われ、布束砥信の頭に名案が閃いた。

    「indeed 忘れていたわ。 風紀委員《ジャッジメント》ってご存知かしら? もしかしたらあなたに向いているのかもしれないけれど」

    「ほぅ? [風紀委員]…だと?」

    聞き覚えのある言葉を聞いてピクリと都城王土の眉が動いた。

    55 :

    >>12
    悪いこと言ったらごめんなさいだろ

    56 = 30 :

    ■風紀委員第一七七支部

    「あーもー! なんですのいったい!」

    ツインテールが乱れるのも構わず頭をグシグシとかきむしった白井黒子が耐え切れないといった声をあげた。

    「そりゃもう確かに? 風紀委員《ジャッジメント》は学生たちの治安維持機関ですもの? そりゃ当然学生たちの情報提供も受け付けておりますけども?」

    憤懣やる方なしといった表情のままカチリとマウスを一回クリックする。
    モニターに浮かび上がるテキストボックスを見て白井黒子はさらに頭を抱える。

    「ですけど! 風紀委員の情報提供フォームは“目安箱”でも“目高箱”でも“妖怪ポスト”でもないんですの!」

    もう耐えられない!といった先輩の叫びを聞いて初春飾利がホンワカとした声をあげる。

    「はぁー また“アレ”ですかー?」

    “アレ”とは学園都市に住まう学生たちからの報告。

    曰く…学校帰り、ふと見上げると垂直に壁を歩く影を見た
    曰く…早朝、気象飛行船のてっぺんに仁王立ちをする影があった
    曰く…不気味な仮面が暗闇の中を通り抜けていった
    曰く…ゲームセンターで99連勝をする子供がいた

    オカルトじみたそんな噂話のような報告がここ最近風紀委員のメールボックスにあふれんばかりに届いてくるのだ。

    57 = 30 :

    「面白いですよねー でもきっと噂話とかですよー 
     そうだ、随分と疲れてるようですし紅茶でも淹れましょうか? 私一生懸命紅茶の本を読んで勉強したんですよー!」

    お嬢様といえば紅茶ですものねー、と言いたげに笑う初春飾利の気遣いを察して白井黒子はフゥと小さな溜息をついた。

    「…そうですわね。 では特別美味しいのをお願いしますの」

    「まっかせてください!」

    腕まくりをして小さな給湯室に向かおうとした初春飾利だったが、ちょうどその時来客を知らせるブザーが鳴った。

    「あらまぁ… どなたでしょう? 今日は来客の予定は無かったはずですけども」

    そう言いながら白井黒子が来客用のドアフォンモニターのスイッチを入れる。


    そこには何ともアンバランスな高校生とおぼしき三人組が立っていた。

    59 = 44 :

    本当、たまにこういう質の高い俺得SSが転がってるからVIPは侮れない
    中身も面白いし
    支援

    60 = 30 :



    来客用のティーカップにコポコポと心地良い音を立てて琥珀色の液体が満たされていく。

    「あ、あのー 紅茶なんですけども、よかったらどうぞ」

    お盆の上に5つの紅茶を載せて緊張した初春飾利がそれを奇妙な来客達に差し出した。

    「わーいっ! ありがと☆」

    遠慮無くカップを両手で掴みフーフーと息を吹いて熱を冷ましているのは行橋未造と名乗ったどう見ても小さな子供。

    「あら、すまないわね」

    軽く視線で会釈をすると静かにカップを手元に引き寄せるギョロ目の少女は布束砥信。

    「ふむ…中々いい茶葉を使っているようだな」

    そして。
    偉そうにそう評価しながらクイとその紅茶を口に含む金髪の男は都城王土。
    そのままゴクリと一口喉に流すと、都城王土は優雅な態度を崩さずに初春飾利に文句をつける。

    「ふむ… マイカイ油が少々多いな。 それにミルクを冷えたまま使ったな?」

    「えっ? あ、はい…そうですけど…」

    香料として使用するほんの僅かな油の量、急いで造ったためミルクピッチャーで温め忘れたムサシノ牛乳。

    それらをことごとく指摘され驚く初春飾利。

    61 :

    支援しえん

    62 = 30 :

    .
    「まぁ俺の口にあわん、とまで言うつもりはない。 むしろ中々のものだ。 これからは今言ったことを忘れずに精進すれば尚良くなるだろうさ」

    そう言いながら再度紅茶に口をつける都城王土。

    「はぁ…えっと…ありがとうございます?」

    思わずそう感謝の言葉を口にしてから初春飾利が白井黒子の耳元に口を近づけた。

    「す、凄いですよ白井さん! さすがは長点上機学園の学生さんです!
     なんかもう見るからに上流階級のお偉いさんみたいな空気がビンビンですよ! あと私の紅茶が褒められちゃいました!」

    ヒソヒソと甘ったるい声に鼓膜を揺らされてくすぐったいような顔をする白井黒子。

    「まったくあなたは… 少々褒められたからと言ってそう頬を緩ませてどうするんですの… しかも合格点ではなくて及第点だったじゃないですの」

    そんな他愛も無い内緒話を二言三言交わして、ようやく白井黒子が来訪者達に向き直る。


    「それでは…お話をまとめさせていただきますの」

    63 = 49 :

    あぁそういえば初春上流階級に憧れてたな
    原作だとあんま出ないから忘れてた

    64 = 30 :

    この中では一番まともそうな人間、ウェーブ髪を無造作に肩に流している布束砥信に向かい先程聞いた話の確認をとる白井黒子。

    「つまり、転校生であるそちらのお二方、都城王土さんと行橋未造さんが私達風紀委員《ジャッジメント》に興味をお持ちになられた…と?」

    「sure その通りよ」

    布束砥信がそう言うと当然のように都城王土がその後を引き継いだ。

    「うむ。 なにせこの俺が暮らす街となるのだからな。
     治安がどれほどのものか、治安を守るという者たちがどれほどのものか確かめておくのも悪くはないだろう」

    そう言いながら空のカップを掲げ、初春飾利に二杯目を要求する都城王土。

    まるでメイドのようにパタパタと給湯室に駆けていく後輩に内心溜息を突きながらも白井黒子が口を開く。

    「……そうですわね。 そりゃ外部からの転校生ならばそういった不安があるのも当然でしょうし。
     ちょうど今から諸用で買出し兼パトロールに行くつもりだったんですけども、ついてきたいというなら構いませんですのよ?」

    こういう手合いは退屈な風紀委員の日常を見せればさっさと飽きてくれるだろう、それが白井黒子の考えだった。

    紅茶に砂糖を一匙足しながら行橋未造が王土の顔を見上げる。

    「だってさ☆ どうするの王土?」

    その未造の言葉を聞き、僅かな時間考えたような風を見せた都城王土はこう言った。

    「そうだな。 雲仙二年生の苦労を味わうのも一興か」

    そう言って立ち上がった都城王土だったが、その背に飴玉を転がすような甘い声がかかる。

    65 = 39 :

    この>>1禁書とかめだか読み込んでるな…

    66 = 30 :

    「あ、あのすいません。 都城さんと行橋さん? あの、もしよかったらでいいんですけど能力と強度《レベル》を教えてもらえたら嬉しいなーって…」

    振り向くとそこにはモニターに向かった初春飾利がいた。

    珍しく眉を潜めた都城王土がそのままオウム返しで問を発する。

    「レベルだと?」

    「そうですー。 やっぱり転校生だからなのかまだ全然[書庫《バンク》]に情報が無いんですよー。 ですので、どうせならここで登録しちゃおうかなーと思いまして」

    そう説明しながらふにゃりと笑う初春飾利。
    確かにこれは大事なことである。 誰がどのような能力を持っているのかという情報は有事の際の重要な手掛かりとなる。
    出来る限り集めておくに越したことはないのだ。

    そんな緩んだ顔で大事なことを聞いてどうするんですの…と心中で溜息をつく白井黒子。
    だが、そんな初春飾利や白井黒子の思惑を都城王土はフンと笑い飛ばした。


    「くだらんな。 俺の資質を図るなどこの俺ですら出来るわけがないのだ。 ましてやレベルなどという小さな括りで俺を推し量るなど不可能に決まってるだろうが」


    「えっと…なるほど… そ、そうですよねー…」

    「あの…都城先輩? そういうことじゃないんですの」

    うむ、と頷く都城王土に呆れる白井黒子に助け舟を出したのは行橋未造だった。

    67 = 30 :

    「えへへ それ身体検査《システムスキャン》ってやつでしょ? ボクも王土も[無能力者《レベル0》]相当の[発電使い]なんだってさ☆」

    そう言ってピラピラと薄っぺらい紙を背負った大きな籠のような鞄から取り出す行橋未造。

    「ほう? そうなのか?」

    今知った、と言わんばかりの態度で僅かに片眉をあげる都城王土。

    「うん! ほら、なんだかやたら時間のかかった模試があったじゃない☆ あれがテストだったらしいよ?」

    はいこれ、と言って身体検査《システムスキャン》の結果票を白井黒子に渡す行橋未造。


    [無能力者《レベル0》] は測定不能や効果の薄い力を持つものに振り分けられる区分である。
    測定の基準が違うのならばどれほど強大でデタラメな力を持っていようと問答無用で[無能力]と括られてしまうのだ。

    都城王土は指先から電磁波を発する程度。
    行橋未造は皮膚で電磁波を受信する程度。

    確かに言葉にしてしまえばそれだけなのだから、機械的な身体検査《システムスキャン》ではレベル0と判定されるのも致し方無いのだろう。

    そして当然。 白井黒子は、初春飾利は、布束砥信すら都城王土と行橋未造の真の力を知らない。

    「無能力…ですの? まぁ長点上機学園は能力以外でも突出した一芸があれば入学できるって聞き及んでますけども…」

    幾度も読み返してみるが、確かにそれは公式で使われている結果票である。
    だが、どこか納得がいかず額にシワを寄せる白井黒子に、都城王土の憮然とした声がかかった。

    68 = 61 :

    「理不尽な重税」は有効なのかな

    69 = 30 :

    「おいおまえ。 この俺をいつまで待たせるつもりだ? 行くと言ったのはおまえなのだからさっさとせんか」

    お嬢様である白井黒子にとってここまで無礼で厚かましい男などそう出会いはしない。
    生来の気の強さもあって思わず白井黒子は文句を口にした。

    「なっ? いくら年上だとは言えレディに向かっておまえ呼ばわりはあんまりじゃないですの? そもそも私には白井黒子という立派な名前があるんですの!」

    だが、そんな白井の抗議もこの男にとっては無意味である。

    「シライ…クロコ? 白いのだか黒いのだかはっきりせんか。 …まぁいい。行くぞ白黒」

    そう言うとドアに向かい歩みを進める都城王土。
    だが白井黒子は動かない。
    呆けた顔で硬直していたかと思えばプルプルと身体が小刻みに震え出す。

    「しろくろ…? 白黒!? ちょっと! その呼び名はあんまりじゃないですの! 発言の撤回を要求するですの!」

    ツインテールを逆立て、ギャーギャーと文句を言う白井黒子を華麗にスルーして都城王土が初春飾利に向き直った。

    72 = 36 :

    そうかデスノも中学生なんだよな
    男気ありすぎてつい忘れちまう

    つか掛け合いがツボすぎてたまらんwwwwwwwww

    73 :

    王土の生体電気介入とか行橋のテレパス的能力はそりゃ簡易スキャンじゃ測れないだろうなw

    74 = 30 :

    ■学園都市・路地裏

    (最ッ悪…超ツイてない…)

    心のなかでそう佐天涙子が愚痴をこぼす。

    事の始まりは偶然だった。
    初春飾利が食べていたジャンボ王様パフェに惹かれ、今日はひとりでそれを買って学園都市の大通りを食べ歩いていたのが発端。

    大通りに面する裏道から急に飛び出てきた数人のスキルアウトとおぼしきガラの悪い男と正面衝突してしまったのだ。
    その名に恥じぬ超弩級のアイスと生クリームは男のジャケットにぶちまけられ、今こうして詰め寄られている。

    「嬢ちゃんよぉ~ いったい何処見て歩いてんだぁ~!?」

    「だ、だって… そっちからぶつかってきたんじゃないですか」

    必死になって言い返すも、正当な主張などやはり通るはずがなかった。

    「なぁ~にぃ~!? 人の服汚しといてイチャモンつけるたぁ~生意気じゃあねえかぁ! あ? どう思うよおめえら!」

    「「「へいっ! アニキの言うとおりでさぁ!」」」

    汚れたジャケットを見せびらかすようにして子分らしきチンピラに同意をとるスキルアウト。

    (あぁもうホントまじで最悪…)

    自分はなにか不運な星の下にでも生まれているんだろうか。

    どこかのツンツン頭のようなことを考えながら佐天涙子はがっくりと肩を落とす。

    75 :

    行橋はテレパシストってわけじゃないのか。あれはあくまで受信能力の応用なんだな。

    76 :

    心理掌握は生体電気とか関係ないんだよな
    まぁ、学園都市の能力はだいたい生物の能力から離れた、魔術と似たりよったりなもんだし仕方ないけど

    77 = 30 :

    ■学園都市・大通り

    「おい白黒。 退屈すぎてたまらんが」

    生欠伸を今にも噛み殺しそうな気怠くつまらなさそうな言葉がかかる。

    「ハァ… もう呼び名の件に関しては諦めましたの」

    頭痛を抑えるようにこめかみを押さえて頭を振る白井黒子。

    「ですけど。 退屈なのがいいんですの。 事件なんて起こらないほうがいいに決まってるじゃありませんの」

    買出しの事務用品をブラブラと揺らせながらそう白井黒子が声をかける。

    このまま何事も無く終わってくれれば、きっとこの無礼な男達と関わることなど二度とないだろう。
    澄ました顔しながら街を歩く白井黒子だったが内心はグヘヘとほくそ笑んでいる。

    その時だった。

    「ね☆ 王土!」

    クイクイと都城王土の袖を引っ張ってどこか遠くのほうを指差す行橋未造。

    その指の先を見て、何かを察した都城王土の口元がニイと笑みを形作る。

    78 :

    王土能力つかっていいんだっけ

    79 = 30 :

    「あぁそうだ。 白黒。 ひとつ聞いておきたいのだが」

    前を歩く小さな少女の背中に声をかける都城王土。

    「あぁもう…今度はなんですの?」

    ピョコピョコとツインテールを揺らしながら白井黒子が背中を向けたまま返事をする。

    「例えばだ。 暴漢に襲われている少女がいたとしたらおまえはどうする?」

    「そんなの当然止めるに決まってますの」

    何をいうんですの?と白井黒子は訝しみもせず即答で応える。


    「ほう。 それを止めるのが風紀委員とやらじゃなかったのならば?」


    そう問われ、白井黒子の脳裏に映ったのは片時も忘れたことのない最愛のお姉様。

    「あまり…褒められた話ではありませんが。 わたくしも一般人であるお姉様に頼ってる部分も多々ありますし…正直言いますと助かるというのが本音ですわね」

    あぁ、一緒に歩いているのがこんな粗暴で無礼な男ではなくて美しきお姉様だったらどんなにか素敵で百合百合なんでしょう…と妄想に浸り出す白井黒子。
    あぁもうたまりませんの!お姉様分が不足してますの! 肩を自らで抱えイヤンイヤンと悶える白井黒子だったが。


    そんな妄想も一瞬で冷めてしまう言葉を都城王土が口にした。

    80 = 30 :

    .


    「ふむ。 喜べ白黒。 俺がお前の仕事を助けてやろう」


    「……え?」

    嫌な予感がした。

    ザッと背筋に走ったのは形容しがたい冷や汗のような悪寒。
    慌てて振り向くも、既にそこに都城王土と行橋未造の影も形もない。

    「ちょ、ちょっと…今のはいったいなんですの?」

    ヒクヒクと笑いながら、そこに一人残っていた布束砥信に問いかける。

    「さぁ? 私には彼等が何を考えているかなんて分からないけども、とりあえずあっちの方に向かったのは確かよ」

    肩をすくめ、オーバーなジェスチャーをしながらも白井黒子が今最も欲しいであろう情報を伝える布束砥信。

    「ま…まさかとは思いますけども…厄介なことに首を突っ込んだんじゃないですわよね!?」

    布束砥信が指さした方向に向かって慌てて駆け出しながら白井黒子が悲鳴のような怒声のような声をあげる。

    そんな白井の後ろ姿を見ながら、冷静に布束砥信が独り言を呟いた。


    「thought どう考えても厄介なことになりそうだけれど…」

    81 = 76 :

    どうなるのやら

    82 = 30 :

    ■学園都市・路地裏

    「よお! よおよおよお! 俺たちゃあ何か間違ってること言ってるかぁ~? 人のものを汚したら弁償するのが人の道ってもんだろぉ?」

    見栄を切って中学生の少女を囲むスキルアウト。
    傍から見れば恥ずかしいにも程があるが、彼等はそんなことは気にしない。

    詰め寄られ、しぶしぶ佐天涙子が財布を出した。
    確か、今月の仕送りがまだだいぶ残っているはずだ。

    痛い出費である。
    今月は買い食いもオシャレもCDも諦めることになる。 
    だがそれでこの場が収まるのならば。
    そう思ってこれ以上彼等の気を逆立てないように佐天涙子は恐る恐るスキルアウトに向かって口を開いた。

    「べ、弁償って… 幾らですか?」

    それを聞いたスキルアウトのリーダー格は両手を広げ、トントントンと片足でリズムを取った。

    「おっととと! そうきたか! チューボーの嬢ちゃんにゃあ! あ! 判んないかもしれないが! こいつぁ学園都市外の高級輸入品!
     名高いスキルアウトの俺様に相応しすぎる超有名ブランド! その名も[ゼロプラス]限定生産の! あ! 一着30万もするジャケットよ!」

    生クリームでベトベトになったそのジャケットを歌舞伎役者の見栄のように広げたスキルアウトがポーズをとる。

    「さ、30万!? 無理ですそんなお金払えませんって!」

    「なぁにぃ~!? 御免ですんだら警察はいらねえってんだぁ~! とっとと30万耳揃えて払うかぁ! あ! さもなきゃあ俺等の言い分聞いてもらうとすんぜぇ!!」

    歌舞伎役者のようなポーズをとったままの男の言葉と同時に周りの男達がジリジリと佐天涙子ににじり寄りだした。

    83 = 30 :

    その時だった。


    「えへへ! 嘘ばーっか☆ その服ってファッションセンターしましまで買った徳用セール三着1980円のジャケットのくせに☆」


    あどけなく可愛らしい声が路地裏に響き渡る。

    「なっ!? 俺が墓場まで持って行こうと決心した秘密を!? どっどこのどいつだぁ! あ! 出てきやがれぇ!」

    そう叫んだ男の声に応えるように、ピョンと音を立てて小さな子供が姿を現した。

    「えへへっ! 出てきたよ☆」

    それは何処からどう見ても小さな子供である。

    「…ヘッ! ヘヘヘッ! 何処の誰かと思えばなんだよガキかぁ!」

    心底驚いたというふうに胸をなで下ろすスキルアウト達。

    「えへへ☆ 三着1980円っていうのは否定しないんだね?」

    「…ッ! そりゃああれだ! 偶然似ていただけだろうよぉ!」

    そう言いながらもまじまじと見られないように慌ててジャケットを脱ぎ、丸めて路上に放り投げるスキルアウト。

    「まったく…いくらガキとはいえ推測や憶測でものを言っちゃあいけねえだろうがぁ! いやほんと…いけねえだろうがぁ…」

    どことなく悲しげな声でそう呟くも…すぐに頭の中身を切り替えたのだろう、両の手を広げて佐天涙子に再度にじり寄る。

    84 = 73 :

    >>76
    テレパスには電撃使いタイプもいる
    作中で実際に出て来たのは空気伝播タイプと佐天さんを救ったサイコメトラーくらいか

    85 = 30 :

    「あ、さて! さてさて嬢ちゃん! 気を取りなおして始めるぜ! 準備はいいかぁ!? こっちの準備は万端だぁ! さぁてリテイクシーンワンアックション!!」

    伝統芸能のような物言いをしながら、改めて佐天涙子に飛び掛ろうとするスキルアウトだったが…その言葉は完全に無視されていた。

    「…あれ? おーい嬢ちゃん? いいの? …襲っちゃうよ? キャー!とか無いの?」

    許可をとるようにそう佐天涙子に確認をとるスキルアウトだったが、そこでようやく少女の視線が中空に固定されていることに気が付いた。。

    「えーっと… フヘヘヘヘヘ! どうした嬢ちゃん! あまりの恐怖に棒立ちかぁ?」

    なんだかもういろんな意味で酷すぎるスキルアウトがニヤリと笑う。

    だがそれも即座に否定された。

    「えっと…そういうんじゃなくて… アレ」

    そう言って空を指差す佐天涙子。

    「…えっ? どれ? どこ?」

    腰をかがめ、佐天涙子の指の先を追ったスキルアウトの目が驚きで見開かれる。

    「…って!ハアアァァァァ!? なんだぁありゃあ!?」

    そこには。

    そびえ立つビルの壁に“垂直に立っている”金髪紅眼の男がいた。

    86 = 35 :

    王土△

    87 = 36 :

    スキルアウト可愛すぎるだろwwwwwwwww
    友達になりてえwwwwwwwww

    88 = 44 :

    さっすが王土さんやでぇ

    掛け合いは西尾節に近くて、地の文はところどころ禁書節になるのがいいなw

    89 = 61 :

    なんでわざわざ垂直立ちするんだよw

    90 = 30 :

    .

    「まったく。 無粋なことをするなよ女。 俺はもう少しその道化っぷりを楽しみたかったのだが」


    ビルの壁に立っているのはもちろん都城王土である。
    頭上で腕を組みながらニヤニヤ笑っている都城王土に向かい、スキルアウトが声を張り上げた。

    「おっおめー能力者だな!? まさか催眠術!? もしかしたら念動力…いやいや重力操作の使い手かっ!?」

    だが、そんなスキルアウトの叫びを聞いて肩をすくめる都城王土。


    「ハッ! まったく催眠術とか念動力とか重力操作とか…お前たちバトル漫画やライトノベルの読み過ぎだよ」


    「…いやいや。 あんたがそれ言うの?」

    おかしなことを言う、と含み笑いをしながら壁に立つ見覚えのある金髪の男に、たまらず佐天涙子は小声で突っ込みをいれる。

    「んだとぉ!? 壁に立っておきながらなに寝言ほざいてやがる!!」

    思わず佐天涙子が頷きたくなるような、当然の反論を口にするスキルアウトだったが。


    「なに、地球は俺にとって小さすぎるのだ ならば地球の重力如きではこの俺を縛ることなど出来るはずがないのが道理だろう?」


    返ってきたのはさらに途方も無い大言壮語だった。

    91 = 73 :

    壁に立つくらいなら学園都市じゃ日常・・・かと思ったけど王土みたいな大男がいたらそりゃ驚くわな

    92 = 44 :

    ここで原作反芻とはwww
    王土さんマジぶれねえwwwwww

    93 = 30 :

    「…いやいやいや それこそさ」

    「ねーよ!!!! あ! おまえは一体何を言っていやがるんだぁ!?」

    思わずハモって突っ込みをいれてしまうスキルアウトと佐天涙子。

    どことなく白けたような空気に都城王土は微かに眉をひそめて前言を撤回した。

    「…なに、勿論今のは冗談だぞ?
     こんなものは足の握力で壁にしがみつき腹筋で上体を起こしているだけに過ぎない 訓練すれば誰でもできることだ」

    「…いやいやいやいや」

    もはやどこから突っ込めばいいのかわからないほどの規格外。

    スキルアウトに絡まれていた時の数十倍の疲弊が佐天涙子の肩に伸し掛る。

    だが、それでもスキルアウトは一生懸命頑張って文句を言い続けていた。
    こいつ頑張るなぁと佐天涙子は冷めた目でスキルアウトを評価する。

    「うるせえぞ! なに人の上に立ってんだ! 見下してんじゃねえ! 降りてきやがれえ!」

    あ、こいつ顔に似合わず意外と上手いこと言った、と他人事のように佐天涙子は心のなかでまばらな拍手を送ってみたり。

    94 :

    『座布団一枚あげよう』

    95 = 30 :

    「む…なるほど。 俺もまだまだだな。 “王”を引退したとはいえ、つい人の上に立ってしまうという癖がまだ抜けんか」

    「…いやいやいやいやいやいや」

    誰か突っ込みの役目代わってくれないかなーと思いながら側にいるスキルアウト達を見るも皆一斉に佐天涙子から視線を逸らす。
    僕、一般人ですから…と言いたげに壁のシミを数えたり靴紐でもやい結びをして遊びだすスキルアウト達。

    そして…都城王土が気怠そうにこう言った。


    「さて…お前が降りろと言ったのだ。 心して受け止めろよ?」


    その言葉と同時に都城王土の足が軽く壁を蹴った。

    「おう! さっさと降りてきやがれ…って ええ?」

    当然、身体は重力に引っ張られ宙に浮いた王土の身体は真っ逆さまに落ちる。
    その先にあるのは上を見上げたままのスキルアウトの顔面だった。

    「グエエッ!」

    ドゴン!という音ともに土埃が舞い、その中から憮然とした都城王土の声が聞こえた。

    「……俺は受け止めろと言ったはずだが?」

    砂埃が収まるとそこには都城王土が仰向けに倒れたピクピクともがいているスキルアウトの上で仁王立ちをしていた。

    「す…すいまふぇん… 無理でした…」

    96 = 73 :

    >>93
    「うるせえぞ! なに人の上に立ってんだ! 見下してんじゃねえ! 降りてきやがれえ!」
    なんだっけこのセリフどっかで見たことある記憶が

    97 = 36 :

    スキルアウト萌えはじまったな

    98 = 49 :

    そういえば初春の声とか趣味細かく読んでそうなのに
    なぜに能力開発極秘扱いなんだ?なんかの伏線

    99 = 30 :

    数分後、そこにはピシッと背筋を伸ばして正座をしているスキルアウトの面々が!

    誰に言われるともなく正座をしてお叱りを待つ子供のように肩を震わせるスキルアウト達。

    その中を都城王土が悠然と闊歩しながら言葉を紡ぐ。

    「さてと 貴様等も男ならば汚れた服のことなど些事としろ。
     ましてや弁償など前方不注意で食事を中断させてしまったそこの女にするべきではないか?」

    「ハイッ! その通りでありますっ!」

    「…判ったのならばさっさと行かぬか。 時間の流れまでは流石の俺とてどうにもできぬ」

    「ハイッッ!!! 少々お待ちを!!!」

    佐天涙子に90°のお辞儀をしたかと思うと駆け出すスキルアウト。

    その背中に再度都城王土の声がかかった。

    「急げよ? なにせ俺は今、風紀委員《ジャッジメント》の仕事中に抜けだしてきたのだ あまり貴様等に時間を裂く余裕はないのだからな」

    「ハ、ハイィィィ!!!」

    ダッシュではなく猛ダッシュで路地裏から姿を消したスキルアウトを見てポツリと佐天涙子がこう呟いた。

    「えと…これさ、どっちが悪者なんだっけ?」

    そんな呟きにいつの間にか側にいた子供が笑いながらこう応えた。

    「えへへ! ボクに聞かれてもそんなのわかんないよ☆」

    100 = 44 :

    白黒ってネーミングはヒトキチと通じてたのかと今気づいた


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