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元スレ阿良々木「今日は暇だけどさ」

みんなの評価 : ★★★
レスフィルター : (試験中)
快晴ではないにしてもそこそこに晴れ間が見える空を
一人見上げるようにしていた月火は僕の言葉を聞いてこちらを見る。
それは怒り溢れる目でも、無感情な目でもなく。
むしろその逆、迷子になった子供が親を見つけた時の様な
「やっと会えた」と言った感じの安堵の表情だった。
「……お兄ちゃん」
「あぁ、お兄ちゃんだ」
失格かも知れないけど、
月火がそう呼んでくれるなら
僕はお兄ちゃんだ。
「随分久しぶりな気がするな」
「そうだね。もう二度と会えないんじゃないかと思った、
お兄ちゃんとも、火憐ちゃんとも、誰とも会えずに終わるんじゃないかと、思った」
ほんの一瞬で消えた安堵の代わりに
今月火の顔を覆っているのは寂しさと切なさ。
見ていて痛ましく思う位の痛切な表情。
「すぐ近くでずっとお兄ちゃんや火憐ちゃんの声が聞こえるのに、
その場に行けない、行っても居ないし会えない」
ぽつぽつと、月火は回想するように呟く。
僕は月火の言葉を意識的に聞きつつ、
周囲にそれらしい気配がないか探ってみる。
「最初は、ただの喧嘩の延長だと思ってたし
会わない事にべつになにも思わなかった」
十四年間月火の兄をしてきた僕の見る限り、
月火自体に異常や異変は見られない。
なにかがとり憑いていたり、操られてるような様子もない。
忍が言っていた通り、連絡も取れたし、こうして会うこともできた。
「いつもみたいに、すぐに仲直りできる。
お兄ちゃんがごめんねって言って、
私がちょっと怒って、それで終わると思ってたのに」
けれど僕の月火への興味は以前と薄れ掠れ消えかかったままだ。
目の前に居るのに、今にも忘れそうな程
さて、どうしたものか。
会って、話して、存在を認識しろと忍は言っていた。
そして今、月火と会い、話して、目の前に居ることを認識している。
なのにどうしてなにも変わらないのだろうか、
どうして月火を妹と認識し、どうにか彼女を救わなくては思っているのにも関わらず、
同時にあまり仲の良くない知り合いの友人と会っているような
そんな白けた感触が僕の中に蔓延っているのだろうか。
「お兄ちゃん」
「うん? なんだよ」
「私は悪い子? いらない子?」
「そんなこと……」
「あるよね」
ないと言おうとして、
でも何故か言いきれなくて。
月火は今にも泣きそうな笑みを浮かべて続きを引き取る。
「お兄ちゃんにも、火憐ちゃんにも迷惑一杯かけたもん。
家族でなきゃ許せない事、一杯。
兄妹でも、許せないこと、一杯」
なにを言ってんだ。
迷惑? そりゃかけられたよ。
嫌になるほど、逃げたくなるほど、思い切りかけられた。
元の数字がわからなくなるくらい掛けられて、積った。
でももうそんなの今更だろ?
全身隅なくかけられてびしょ濡れになっちまったらさ、
もうそれ以上いくら掛けられても堪えない。
「だから嫌われても仕方ないよね。
みんな私の前から消えちゃっても仕方ないのかな」
なにも知らず、この原因も知らない月火は。
多分、自分の意識をきっちり保ったまま、
阿良々木月火として、この数日孤独になってしまったのだろう。
月火ちゃんがいらない子だったら
あのラスボス(笑)の存在なんて
産業廃棄物以下だろ
あのラスボス(笑)の存在なんて
産業廃棄物以下だろ
気配はするけど会えないと
火憐はそう口にしていた。
いまとなっては本当に火憐が月火に会おうとしたのかどうかはわからない。
僕みたいにもしかしたら口だけで向かい合っていなかったのかも知れないけど、
とにかく僕等にとってそうなったのは月火だけだった。
けれど、事の中心の月火は違う。
まとものままで、怪異の存在も知らずに、
突然ぽつんと独りぼっちになってしまった。
僕等が月火に会えなかったのは、単に会おうとしてないからだった。
自分達から離れていって、遠ざかって、勝手に見失ってるだけだった。
でも、月火は多分会おうとしたのだろう。
何度も何度も、誰かと触れ合おうとしたのだろう。
そして、いままで誰とも会えなかったのだろう。
そんな、そんなことって。
「そんなことって、あるかよ……」
それはどれほどの絶望だろう。
どれだけ悲しい出来事だろう。
想像するだけで、悲しくて、悲しくて。
そんな残酷な事があっていいのかよ。
そんな可哀想な事があって、いいのか。
たった14歳の女の子に、辛辣すぎるだろ。
思えば思うほど、悲しくなって、辛くなる。
同時に、怪異への怒りも呼応して高まる。
「どうせ私は、いらない子なんだ」
「ふざけんなっ!」
だから、怒鳴ってしまった。
この場に居る筈の肩耳豚に向かって、
僕の怒りをぶつけるかのように。
「いらない訳なんかねえだろ!
嫌いになる理由なんか欠片もないだろ!」
突然怒声を上げる僕に月火は一瞬だけ肩を震わせて、
けれどすぐに僕を強く睨んで怒鳴り返してくる。
「お兄ちゃんの嘘吐き!」
「嘘じゃねえよ! どれだけ喧嘩しようが仲違いしようが
僕は月火ちゃんの事が大好きだよ!」
「ずっと避けてたくせに!」
怪異の事など知らない月火は、
ただただ自分が怒鳴られていると勘違いを起こし、
そして反抗するように怒り、怒鳴る。
僕もまた、それに答えるように言葉を重ねる。
まるでただの口喧嘩の様で、
その実、互いに違って、ずれて擦れている。
「避けてた訳じゃない、すれ違ってただけだ!」
「なにそれ無茶苦茶!」
「無茶苦茶だよ! 滅茶苦茶だしわやくちゃだよ!
でも嘘じゃないし誤魔化しでもねえぞ!」
「うっ、うるさいうるさいうるさい! お兄ちゃんなんか――」
そんな応酬の最後。
月火は一瞬躊躇った後、大きく息を吸い込んで叫ぶ。
「死んじゃえ!」
その言葉を言い終わった瞬間、
月火は僕に向かって駆け出した。
否、駆けたなどという言葉じゃその速度を表現できていない。
飛んでくる。否々、ぶっ飛んでくるとでもいう速度。
地に足が着くたびにまるで足裏で爆発が起きてるかのように
地面が抉れ、土煙が舞い、踏まれた小石が砕けて散る。
およそ人間の脚力とは思えないダッシュで。
僕がぶっ飛んできた事を認識した時には
月火は僕の目の前で深く腰を沈めていて。
「これはヤバイ」と思う頃には、
その人外の筋力から生み出される強烈な拳が
僕の顎を完全に捕らえていた。
「ぐがぁっ!?」
声にならない声が喉から漏れ、
僕は殴られた勢いで地面と引き剥がされ。
重力に逆らうような動きで数メートル離れた
公園の名前が書いてある石造りの柱に激突した。
顎を打ち抜かれた所為で頭がふら付く、
背中を強打した所為で呼吸も乱れる。
「……マジかよ。大乱闘みてえなぶっ飛び方したぞ」
多分顎の骨に皹が入ったのだろう
喋ったら顎に違和感と鈍い痛みが走る。
けれどそれも一瞬のこと、
他のダメージと一緒にすぐに消えて無くなり完治する。
いくら一週間前に飲ませたきりとはいえ、
こういう日常でありえるレベルの怪我ならそこまで時間をかけずに治ってしまう。
「え……。なに、今の」
内臓である脳が受けた衝撃の所為で、
身体は完治しても残るふら付きに足をよろめかせつつ立ち上がると
月火は今の感情的な行動の結果に困惑し、呆けている。
もしそうでなかったらすぐに追撃を受けていただろう。
もし今の破壊力で追撃を受けたら
今の治癒力じゃまるで間に合わない。
相手は毎ターン竜の怒り、
自分は毎ターンキズぐすりみたいな物だ。
「月火ちゃん」
動揺して、混乱してる月火に僕は話しかけながら
ふら付きの収まった足で立ち上がり、
わけがわからないと言った様子の月火に歩み寄っていく。
「こないでよお兄ちゃん」
月火は言いながら一歩後ずさるが、
僕はその間に三歩近づく。
そうして吹っ飛ばされたことで空いた距離を生めて
月火の肩をつかむ。
「やめて!」
胸の、丁度肺の辺りに月火の突き出した両手がぶつかり
再び三メートル程吹き飛ばされしばし絶息する。
「がっ!」
呼吸が止まり、目の奥で光が瞬く。
それでも僕は回復を待たずに立ち上がり、
月火にまた近づいて行き、そして吹き飛ばされる。
殴られてぶっ飛び、鉄の柵や街灯、
果ては公園を越え、道路を挟んだ向かい側のブロック塀にと
様々な物に叩きつけられ、その度頭や、背中を中心に
全身をしこたまぶつけ鈍痛が走る。
それでも僕は月火に歩み寄る。
何度突き飛ばされても
どれだけ遠くに吹き飛ばされても。
>>424のあたりが怪異のせいか他人について心配してるような描写になってるね
おいコラ
今日でもうすぐ終わると聞いてポケダンやりながら待ってたのに
今日でもうすぐ終わると聞いてポケダンやりながら待ってたのに
ゴミ出しとトイレまで済ませてきたというのに…
風呂入ってくるか
風呂入ってくるか
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