私的良スレ書庫
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元スレ阿良々木「今日は暇だけどさ」
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千石撫子から電話がかかってきたのは土曜日の午前中のことだった。
それは僕が部屋でお宝本を眺めていたときだったので、
お宝本を隠すべく咄嗟に布団に潜りこんでから携帯が鳴っていることを遅れて認識した。
なんだ電話か。こんなときに。
本と煩悩の一つを中に残して布団から這い出ると、
鳴り止まない携帯の着信音に終止符を打ってやる。
「もしもし、千石か」
電話の相手、千石撫子。
僕の妹の同級生。
怪異に遭った少女。
「あ、あのね、暦お兄ちゃん」
それは僕が部屋でお宝本を眺めていたときだったので、
お宝本を隠すべく咄嗟に布団に潜りこんでから携帯が鳴っていることを遅れて認識した。
なんだ電話か。こんなときに。
本と煩悩の一つを中に残して布団から這い出ると、
鳴り止まない携帯の着信音に終止符を打ってやる。
「もしもし、千石か」
電話の相手、千石撫子。
僕の妹の同級生。
怪異に遭った少女。
「あ、あのね、暦お兄ちゃん」
>>8
待ってたぜ
待ってたぜ
01.
阿良々木月火は、阿良々木暦にとって大事な妹であると同時に
僕の中で最も身近で、最も恐怖する対象である。
それは戦場ヶ原の性格が穏やかになる以前から変わらない、
いやそれどころか、彼女と出会う前から、月火が物心ついた頃から、
ずっと何年も変っていない一つの固定観念みたいな物だ。
実際僕は月火に千枚通しで風穴を開けられそうになったり、
包丁でナマス切りにされそうになったり、
五寸釘を体内に幾つも埋め込まれそうになったりと
その過去の事例を挙げるに暇が無く、切りが無く、事欠かない。
僕は日常生活を送る中でなにに気をつけると言ったら、
第一にここであると言って過言で無いほどに
阿良々木暦の下の妹、阿良々木月火は親愛の対象であると同時に恐怖の対象だった。
ただ、勘違いはして欲しくない。
上記のような経歴を見てからではやや遅いかも知れないが、
しかし阿良々木月火が単なる暴力魔やそれに類する何かであるような
そういった誤解はして欲しくない。
僕の下の妹は、思うに不器用なのだ。
感情を表現することが、人と触れ合うことが、
そしてなによりも生きることそのものに対して、不器用なのだ。
不器用だから。器用じゃないから。
細かいことが苦手で、迂遠な物は不得手で、
だからどこまでも真っ直ぐで、実直で、そして素直。
自分の感情を隠したり、誤魔化したりできず、
遠回りに伝えることなんてどうにも難しい。
僕と月火は仲が良くない、むしろ悪いと言って問題ではないが。
けれど兄弟だ。アリバイが成立しないほどに、近しい。
だからこんな甘い評価を下すのだ、と思われるかもしれない、
なにを戯言をと一笑に伏されるかもしれない。
実際、月火がなにか問題を起こしてフォローをする僕に、
大抵の大人はそういって欠片も僕が言う月火像に関心を持たなかった。
兄の欲目、想う故の盲目。
好きに言うが良い。
どうぞ御自由にだ、妹の名誉のために汚名を受ける。
兄としてそれこそが最高の名誉じゃないか、
諸手を挙げて受け入れてやろう。
けれど僕は、それでも言い続けよう。
声高に叫び続けよう。
阿良々木月火はどこまでも不器用で、真っ直ぐで、だからこそ美しいのだと。
限りなく純粋な少女なだけなのだと。
無論、美しいだけで正しいわけじゃない。
美しくあっても正しくは無い、多数の人に、理解されない行動原理。
どこかしら歪で、どこかしこと不安定。
真っ直ぐで、歪。それはやっぱり、どうしようもなく怖い物なのだと想う。
まるで、いつかの僕のように。
周りのもの全てを傷つけるのではないかと、思ってしまう。
きっと月火は否定するだろう、
自分が僕に似ているだなんてそんな事実を全て否定しつくすだろう。
けれど、月火。お前は妹で、僕は兄なんだから。
きっと似ていて当然なんだ。
だから、結果も、きっと似てしまう。
どうしたって、僕達は兄妹なんだから。
>>16
はい
はい
02.
放課後の教室。
クラスメートの女の子と二人きり。
窓の外は橙に染まり始める空が広がり、
時折吹奏楽部の練習する音や、運動部のかけ声が聞こえる。
と、現在の状況を軽く挙げていけば
成る程まるで青春真っ只中、
たとえ教室に居る理由がストレートに手紙で呼び出されたりした訳じゃなくても
甘酸っぱい匂いの一つでもしても良いと思う。
思うのだけれど。
「はい、残り十分だよ~?」
ストップウォッチ片手に時間の残高を告げる羽川。
それを受けて僕はまだ手付かずのまま残る設問に取り掛かる。
僕が現在放課後の教室で取り組んでいるのは、
学校行事の出し物や女の子との青春ではなく
羽川先生作の実力テストだった。
制限時間まで律儀に設けられ、普段の中間試験などより
よほど難しい問題が連なる問題用紙と向き合い
答えを自分の大学ノートに順番に書き出している。
羽川が僕の為に作り、そしてその本人の前で解く。
いまやっているのは比較的得意な数学なのだが、
それでもそのプレッシャーにケアレスミスを多発させ
予想外に時間が削り取られる。
正直、これで無様な点数を取ったらと思うと気が気でない。
この所の羽川さんはとても怖いのだ。
「ていっ」
「いたっ! えぇ、なに? なんで僕いま消しゴムぶつけられたんだ?」
「不穏な思考を感知しました」
そんな無茶な……。
羽川さんお茶目にも程があるぞ、
もう迷走しすぎだよ。いめちぇん以降若干キャラが不安定だ、
きっちり固めていただきたい。なるべく早急に。
「はいはい、考えるのは問題の事だけにしてね阿良々木君」
と言う台詞と同時に突きつけられる
ストップウォッチに表示された五分を切った数字。
僕はちょっとだけ心にあった不満を雲散霧消させて
残り二問を慌ててノートに書き、解くのだった。
「ん~……」
ギリギリで全問題の答えを書き終え
羽川にノートを提出すると、早速羽川は赤いマッキーで
なにを見ることも無く僕の答えの採点を取り始めた。
羽川が作った問題だから当然一般の問題集の様に
答えが全て載っている紙などありはしないのだけれど、
それでもなにも見ずに淀みなく採点をしていく羽川を見ると
やはりなんとも言えない気分になる。
「ん? う、うぅん?」
しかし先程から赤ペンをノート走らせる度に
首を傾げたり唸ったりとピンポイントに不安になる様なアクションばかりを起こす。
……手応え、結構合ったんだけど、
まさかそんなに酷い点数なのだろうか?
や、やべぇ。見捨てられたらどうしよう。
とかなんとか、先程僕が妄想していた
青春のどきどきとは懸け離れたドキドキを感じている間に
あっさりと採点は終了したようで。
「うん、お終い」
答えを書いたノートをパタンと両手で閉じて
羽川は笑顔でそう言った。
おしまいってなにが? 僕の進学の道がか?
「違うよ。むしろ逆かな?」
「逆?」
「よくできましたって所かな、花丸を阿良々木君にあげちゃおう」
採点に使用したマッキーでノートの表紙にくるくると
綺麗な花丸を咲かせる羽川。
なんか小学生の頃少しやってた自宅学習系の赤ペン先生を思い出した。
「いやぁ、思わせぶりな態度取るからてっきりもうダメかと思ったよ」
安堵すると同時に脱力して
座っていた椅子に凭れながら言う僕。
「ちゃんと自分に自身持たなくちゃダメだよ?
阿良々木君は自分が思ってるよりできてるんだから」
「そうだと良いんだけどね」
「もう、ちゃんと自分でも確認しなさい」
いままでの緊張の反動で全身を弛緩させ
適当に相槌を打つ僕に羽川は軽く頬を膨らませて
花丸で装飾されたノートを返却してきた。
それを受け取り、先程まで僕が集中して見詰め合っていた
ページを開いてみれば、八割がたの答えは赤い丸で囲まれていた。
「まるで僕、できる奴みたいだな」
沢山の丸、ページを捲ると同じく沢山の丸。
多分、中学の頃でもここまで丸の出番が多いテストは
早々なかったように思う。
「みたいじゃないんだってば」
「そういわれても、急には実感沸かないしな……」
パタンと再びノートを閉じて机にしまう。
「ふぅん」
「なんだよ、含みありげだな」
「いや、ちょっと気になったんだけどね」
「うん?」
「阿良々木君、どうしてこんなに勉強できるのにいままでしなかったの?」
「……あ~」
突然の質問に言葉が詰まる。
――勿論、僕は今まで勉強をしてこなかった訳じゃない、
入学当初は頑張って勉強をしていた時期だってあった。
ただそれでもついていけなくなって落ちて、零れたのだ。
できるのにやってこなかった訳じゃなく、
できないからやれなかっただけなのだから。
きっとそれは羽川にはわからない。
「どうして、だったかな……」
でもそれを嫌味にならない様に伝えるのは難しいから、
僕は適当にお茶を濁した。
「入学した頃はまだ真面目だったと思うんだけどな、
上の妹が同時に中学に上がって色々あったからかな」
妹の所為にしてみた。
でもまぁ、嘘も言ってない。
あの頃から段々エスカレートしていったんだよなあいつ等、
その度に部外者の僕が一番疲れてた。
「そっか、そうだね。うん、家族は大事にしなくちゃいけないもんね」
「そういう事だ。勉強したかったけどさ、うん。家族はそれより優先する物だからな」
「やっぱり阿良々木君は妹さん想いだね」
「それは違うと思うけど」
「素直じゃない」
「僕はこの上なく素直だ」
「ふぅん」
一ミリも信じてない様子の羽川。
「というか家族で思い出したんだけどさ」
「なにかな?」
「昔に社会かなにかの教科書でサザエさんか何か載ってなかったっけ」
確か家族構成の説明で、ちびまる子ちゃんだったっけかな。
「え? あ、うん。あったねそういうの」
突然の話題変更に羽川は少しばかり困惑して見せたが、
すぐにいつもの表情に戻って僕の言葉を肯定した。
「親等とかの説明にでてきたりね」
「そう、それそれ」
大家族みたいなのでサザエさんとかでて、
確か核家族の説明には野原一家が居たりした覚えもある。
「でもさ、あれ。確かにわかりやすいけど、僕あまり好きじゃなかったんだよな」
「なんで? あぁいう遊び心みたいなの私は好きだよ?
ただの『祖母』とか『息子』見たいに関係だけを並べたのよりはよっぽど良いと思うけど」
「いや、僕もやり方自体が嫌いなんじゃない。
サザエさんが嫌いなんだよ、ぶっちゃけると」
「サザエさんが嫌いって……珍しいね。なんで?」
「サザエさんのオープニングあるだろ?」
「うん。お魚くわえたドラ猫って奴でしょ」
「それが嫌いなんだよ」
「えっ、どうして?」
「魚持ってかれてさ、取り返した所でその魚はもう食えない訳だ、
だから諦めるか、もう盗られないようにするしかないじゃん?
なのに追いかけるって、もう盗られた腹いせに猫を痛めつけようって
そういう意思しか感じられないんだよね僕は」
子供心にそんな感情を抱いてしまって、
それ以降どうにもサザエさんにそんな先入観を持っている。
単に歌なのだからそんなに気にする必要などないのだけれど、
子供の頃に抱いた感情というのはどうにも消しにくいのだ。
「阿良々木君は相変わらず歪んでるね」
「正面から言われたら返す言葉がないな……」
「子供向けのアニメにそんな歪んだ感情を向けちゃダメだよ」
「と、言われてもな。子供の感性ってそんなモンだろ」
理屈も、道理も、関係ない。
ただただ思うが侭、感じるが侭。
そんなものは操作できる訳が無い。
「まったく……」
悪戯をした園児に呆れる保母さんみたいな羽川。
“しょうがないなぁ”みたいな、そんな雰囲気。
こういう時の羽川が、僕は結構好きだったりする。
「しかしアレだよな。サザエさんじゃなくてもさ、
子供向けのアニメってのはやっぱり家族団欒の場面が多いよな」
さっき挙げたちびまる子ちゃんやクレヨンしんちゃんとか、
子供向けなんだから当たり前だけれど。
そこには温かみがあって、みんな和気藹々としている家族の風景がある。
「そうだね、喧嘩する場面があったりもするけど
基本的にはみんな仲良しで、想いあってて、阿良々木君と妹さん達みたいだね」
「だからそこで僕の家族を出すなよな」
「はいはい、阿良々木君と火憐ちゃん月火ちゃんはとっっても仲が悪いんだもんね~、
毎日ちゅーする位仲悪いんだものね~」
「うぐっ……」
ニヤニヤと意地悪げな笑みを浮かべて痛いところを付く羽川。
既に羽川には色々家庭の事も知られてるからなぁ、
もう僕がなにをどう言っても羽川の中での僕等兄妹の見方を覆す事は不可能っぽい。
――まぁ、無理があるよな。
ついこの間妹達とドロドロしたばかりだしなぁ……。
「本当、羨ましいよね……」
「え?」
「ううん、なんでもない。それより阿良々木君。
家族、大事にしなくちゃダメだよ?」
「……あぁ、わかってる」
03.
カラカラと自転車のタイヤがゆっくりと回る音を聞きながら、
僕は太陽がすっかり沈んで冷えてきた空気の中を一人帰路に着いていた。
羽川はあの後委員長らしく戸締りをして、鍵を職員室に返すと言って
途中で別れた。多分、今頃は僕と反対の方向へ歩いて帰っているのだろう。
「……家族を大事にしなさい、ね」
ダイジ オオゴト
大事に、っつーか大事だよな。
あの二人と普通に接し続けるっていうのは。
「あー、羽川にはあんなこと言われたけど。ぶっちゃけまだ帰りたくねえ……」
家について玄関を開けると同時にやってくる火憐の殺人タックル。
以前の事件以来完全に日課になってるんだよなアレ……。
避けたら玄関が吹き飛びそうだから受け止める、
というか代わりに僕が吹き飛ぶしかない。
自転車があるのにわざわざ押して自前の足で帰っているのも、
自宅に到着する時間を少しでも遅らせたいという意思の表れでもあったりする。
そんなことしてもいずれは家につくし、
むしろ遅れれば遅れるほど火憐のタックルは
その“待て”と命じられていた分だけ威力を増す。
幾らでも溜められるスマッシュ技みてーだ。
「でも、月火ちゃんがなぁ……」
そう、火憐のタックルだけで帰宅時のイベントが全て消化できるなら
さっさと帰った方が楽だしあっさり済むのだ。
元々火憐も僕に攻撃目的でタックルしてる訳じゃなく、
スキンシップが僕にとってそのまま攻撃になっているだけなのだから。
だから実際の問題はその後、
火憐のタックルを受けた僕にやってくるもう一つの日課の方だ。
火憐と違ってそっちは明確な攻撃的意思を持って行動してる、
以前なんか僕の眼前十数センチという位置でヘアスプレーとライターを使った
簡易火炎放射器をなんの躊躇もなくかましてきた。
幸い月火の腕が噴射口に近すぎた為、僕の顔面が焼かれる前に
月火が熱さに負けて手を離したから大した事にはならなかったけれど、
一歩間違えば大変な事になっていた。
妹達には、告白すると言っておいて
まだ自分の抱える問題について結局教えていないのだから。
こんな形で知られるのだけは避けなければならない。
「あ~、帰りたくねえ……」
そんな感じで、
妹との間にある不和やわだかまり。
そして僕の抱える色々とかが重なって、
ここ最近、僕が自宅に帰る時間はどんどん遅くなっている。
季節柄あっという間に日が沈むので余計に遅く感じるし。
いや、うん、建前って訳でもないが、
今回に限って妹達の事は正直言えば度外視している。
それよりも僕が考えていたのは別のことだ。
――本音を言うと羽川の事。
『家族は、大事にしなくちゃダメだよ』なんて台詞を羽川に言わせてしまった事、
それを僕はずっと悔やんでいた。
話の流れとはいえ、羽川と家族の事について話をするのは
最大にやっちゃいけない事だろう。
こんな風に、僕が悔やんだりする事すら羽川は嫌がるかも知れない。
でも、やってしまった、なんて風に想ってしまう。
そしてそんな話をした後に帰ったら、
きっと僕は思ってしまう。
「幸せだ」って。
「あら、おやらぎさん」
だからだろうか、
そんなマイナスの事ばっかり考えている僕の目の前に八九寺が現れたのは。
高さの合わない机でやってる所為か肩が痛い
しばらく休憩しますん
一時間経って帰ってこなかったら寝落ちです
しばらく休憩しますん
一時間経って帰ってこなかったら寝落ちです
>>49
おい
おい
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