私的良スレ書庫
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元スレ阿良々木「今日は暇だけどさ」

みんなの評価 : ★★★
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「まぁ……な」
痛みと同様、感情や思考も
全てが全て忍には筒抜けで駄々漏れで明け透けで、
忍が僕にする分には問題ないけれど、
僕は忍に対して隠し事をすることは不可能なのだ。
するつもりも、そもそもないけれど。
今だって、話が早いくらいにしか思っちゃいない。
……できれば一番隠したいと思ってるものも、
つい最近思いっきり見られたしな。
「わかってるだろうけどさ、その妹が暴走して逃走しちゃってさ。
今の僕が一人で探すにはちょいと時間がかかりそうで忍の手を借りたいんだ」
「ふむ、しかしのうお前様よ。儂は見ての通りか弱い幼女でのう
失せ物探し物の人員にはならんぞ?」
「あぁ、僕もお前に探すのを手伝ってくれって訳じゃない」
そもそもとして忍は基本的に僕の影にしばられている。
例え今が太陽が落ちた夜の時間帯だとしても、
範囲が多少広がるだけで結局は僕からあまり離れられない。
仮にこの街全部を一人で歩きまわれる程度に範囲が広がったところで、
忍が自分で言った様にその機動力は八歳の少女の物。
正直戦力として数えられる物ではない。
「……成る程のう」
忍も僕の思考を理解したのか
なんともつまらなそうに頷いてみせる。
「今の僕じゃ、一人で探すのは難しい」
だから、今よりももっと夜に強く、
遠くまではっきりと見渡せる視力と、どこまで探しても疲れない体力と、
ついでに見つけた後に凶器で持って抵抗してくるであろう月火の攻撃に
怯むことの無い耐久力を持つ僕にならないといけない。
つまりは、今よりももっと吸血鬼に。
「忍、僕の血を吸ってくれ」
―――
結論を言うと、僕は月火を見つけられなかった。
あんなにも格好をつけて忍に血を吸わせ、
人間離れした身体能力を駆使してまで探したにも関わらずだ。
――あの後、公園で上半身裸になり
金髪幼女と抱き合って自分の首を噛ませるという
なんかもうどうにも言い訳の聞かない体勢になりながら
忍に血をたっぷり吸ってもらい吸血鬼性を格段に上げ
月火探しを再開したのだが。
小一時間も探さないうちに火憐から電話がかかってきて、
月火が自発的に帰ってきたっぽいとの報告を受け
僕はすごすごと家に帰った。一人で。
「うわぁ……。冷静に振り返るとすげえ馬鹿だ僕」
自室で一人唸る僕。
昨日の発言や行動の全てが全て恥ずかしくて仕方が無い、
つーかあんだけ怒って家をでて行った癖に
ほんの二時間もしないで自発的にすんなり帰ってくるって……。
「無しだろ……」
勿論何事も無く帰ってきてくれたのは非常に安心する話なのだが、
こんな肩透かし、拍子抜けみたいな結末は基本的にダメだろ。
「儂はいつもより早めに血を吸えて満足じゃがのう」
「お前はそうだろうな」
ベッドで懊悩している僕を醒めためで見る忍に
嘆息を付いて答えつつ起き上がる。
「なんじゃ、お前様は妹御が無事に帰ってきたことに不服なのかの?」
「そうじゃないよ、ただ腑に落ちないというかさ」
僕が一人で黒歴史を増やそうが
誰に迷惑をかける訳でもない。
精々僕のこの小恥ずかしい感情を共有する羽目になる忍が不快に思うくらいだ、
それ位は我慢してもらおう。
それより問題なのはやっぱりどこまで行っても月火の事だ。
一人で帰ってきたのも、過去に事例が無いとは言えありえない事じゃない、
それならそれで受け止めるしかないだろう。
少しは月火も大人になったのだと前向きに考える他無い。
ただ、その理由が不明瞭なのだ。
夜風に当たって頭を冷やし、怒りが収まって帰ってきたのなら
全然それは理解の範疇だし、気にしない。
けれど僕が昨日一人で消沈しながら帰った後、
一応僕にも非があったと謝った時の月火は
決してそんな風には見えなかった。
圧力釜の中身のように、沸点はより下がり
見えないだけでぐつぐつと煮えたぎっているようにしか、思えなかった。
そんな月火が、まさか補導とかそんな物を気にして
自分の意思で帰ってくるとは思えない。
仮に僕が月火を見つけていたとしても、
連れ帰るには相当な時間と根気を要するだろうにだ。
「ま、いいか」
頬を二回叩いて意識を切り替える。
いつまでも月火の事を考えていてもしょうがない、
本人が口を割らない以上わからないものはわからない。
人の考え方、思考や思想なんてものは、特に。
「む、どこかに行くのか?」
「それも良いかな。どうせ今日土曜日だし」
月火のことがなくても居心地が悪い曜日だ、
ちょっと遠出するのも悪くない。
ほとんど無意味になったけど予定外に血を吸ってもらった礼に
忍をミスタードーナツに連れて行くのもいい。
確か今はなんかのイベントをやっていた気がするし。
「いべんと?」
「あぁ、確か先着何百人かに無料でドーナツを一個くれるとか」
「それは本当かお前様!?」
「CMでやってたし、多分いつものミスドでもやってるだろ」
「あんなに美味しいドーナツをただでくれるとは、ミスドぱないのー」
「そうだな、ぱないな」
と、話がまとまった所で忍を影に詰め込み直し
さっさと着替え、財布と携帯だけを持って部屋の扉をそっと開ける。
廊下に僕がでてくるのを待って抱きつこうとしてくる
火憐の姿がない事を確認して一階に降りる。
「ん」
できるだけ音を立てないように居間に降りていくと、
まるで昨日の事がなかったかの様に自然な態度で月火が居た。
休日の朝にやっている定番の子供向けアニメが流れるテレビを
ただただ眺めながら普段どおりの服装で朝食を食べている月火。
僕が降りてきたことにも目を向けず、
呆けたようなその態度は本当にいつも通りで、逆に違和感があった。
あと、もう一つ。
そんな違和感が些細に感じるほどにおかしい点が。
「……そんなに食うのか? 豚になるぞ」
机に並ぶ朝食、いや仮にそれが夕食だとしても
かなり重たいであろう沢山の料理。
それが比較的少食の筈の月火の前にずらりと置かれ、
月火はそれをなんということもなく黙々と食べている。
「うるさい」
僕の台詞に対しても非常に抑揚の無い一言だけ口にして、
すぐに料理を言葉の代わりに口にする。
僕のその態度から自棄食いの類だろうと
適当に自分の中で答えをだし、
ここは放っておいた方が身のためだと
それ以上なにも言わず背を向けた。
「……お兄ちゃん、どこか出かけるの?」
アニメを流しているテレビが発生源だろうと思われる
爆発音が場違いに居間に響き、
それと同時に発した月火の言葉は僕の耳に届く前にその音にかき消される。
「え? なんだって?」
「だから、お兄ちゃんどこか――」
足を止めて月火の台詞を聞き返すと
月火は苛立った様子でこちらを向き、
そして僕の視界からフェードアウトした。
「おいおい兄ちゃん私を置いてどっかでかけんのかよー!
置いてけぼりなんてそりゃないぜ、一緒に連れてってくれよ!」
正確には僕がぶっとび月火を視界に納めていられなくなった。
「おい、火憐ちゃん。いい加減にしないと僕も怒るぞ」
しこたま廊下にぶつけた頭を庇いつつ
すりつく火憐のポニーテイルを掴んでそのでかい図体を引っぺがす。
「抱きつくな引っ付くなしがみ付くな絡み付くな」
「ぶー」
こいつはなにが原因で月火がぷっつんしてるかわかってるのか本当に、
変に腫れ物を触る様な態度を取るよりかは普段通りに接するというのは
こういう場合のセオリーではあるけど逆撫でするような行為位は慎めよ。
「あれ?」
と、火憐を全力で押さえ付けながら
先程まで月火が居た場所に目を向けると
既にその姿は無く、放置されたテレビと料理だけが虚しく
自己主張しているだけだった。
「どうしたんだ兄ちゃん」
「さっきまで月火ちゃんがそこに居たんだけどさ」
「ふ~ん」
「ふ~んって、お前興味示さなすぎだろ……」
「そう言われてもなぁ、部屋にでも戻ったんじゃねえの?」
「そりゃ人間が急に消える訳ないからな、常識で考えたらそうなるだろうけど」
「私の目には兄ちゃんしか映ってないぜ!」
「はいはいわかったわかった」
「冷てえ!」
「毎日の様にそんな事言われてりゃあ慣れるっつーか飽きるっつーか」
「べ、べつに兄ちゃんの事なんか好きでもなんでもないんだからね!」
「それが普通の兄妹としての姿だ」
あとキャラを変えろと言った訳じゃねえよ。
お前にツンデレとか死ぬほど似合わない。
「兄ちゃん。私は米が好きだ」
「また変な所に着地したな……」
そんなんわかる奴いねえよ。
「にしても火憐ちゃん最近月火ちゃんにやたら素っ気無いよな」
ついこの間まで5W1Hを共にしていた
兄の僕ですら引くくらいの仲の良さはどこに行った。
「なんつーかさ、私が素っ気無いっつーより
月火ちゃんの方が私に対して素っ気無いから私もそうなっちゃうって感じなんだよ」
「月火ちゃんが素っ気無い?」
「素っ気無い、じゃねーかな。どっか醒めてんだよ、
なんか一歩引いちゃったみてーな。白けた感じ。
んでそんな目で見られるもんだから私まで、みてーなさ」
「ふぅん。お前等にも色々あんだな」
「そりゃ当たり前だろ。兄ちゃんが私や月火ちゃんと色々あるのと同じくらいには
私と月火ちゃんにも色々あんのさ。ってか兄ちゃんまだ返事聞いてないけど
どこにでかけるんだ?」
「ん? あぁ、ちょっとミスドまで行ってこようかなって。
ほらなんかイベントやってるだろ今」
「そういやそんなこと言ってたっけ……、ってあれ?
それ、今日が最終日だよな?」
「うん」
「月火ちゃんと一緒に行くって、前言ってなかったっけ?」
いや起きてます
保守も自分でしますから
眠かったら寝た方がいいと思います
保守も自分でしますから
眠かったら寝た方がいいと思います
そういえば、そんな話をしたっけかな
火憐が格闘技の練習に行ってる時に。
僕と月火の二人でテレビを見ているという比較的レアな
状況になったときに件のCMが流れて、
月火が久しぶりに食べたいみたいな事を言い出したから
じゃあ今度行くか見たいな返事をした覚えが微妙にある。
あれを約束といって良いのかどうかはわからないが、
確かに行くとは言ったな。
「でもなんで火憐ちゃんがそんなこと知ってるんだ?」
「月火ちゃんが自分で言ってた、
今度兄ちゃんと二人ででかけるって嬉しそうにしてたぜ」
「マジでか」
「あんま覚えてないから曖昧だけどな、
だから行くなら月火ちゃん誘ったほうが良いんじゃねーの?」
「いやいや、無理だろそりゃ。
仮に誘っても来るとは思えないし」
女の子と甘いものが相性いいのは知ってるけど、
流石に現状の月火がミスドに食いついてくるとは思えない。
それに月火がいると忍が顔を出せないしな。
どうせ嬉しそうってのも火憐目線の補正だろうし、
一々気にする必要もない。
月火と二人でどこかに行くなんて何年前にしたきりかも覚えてないのだ、
いまさらそんなものに月火が喜ぶとも思えない。
現に今も月火の部屋から何かがぶっ倒れるような音が聞こえている、
あんな荒れてる月火に正面から話しかけようと思うほど
月火との付き合いは短くない。
「ってもうこんな時間じゃねえか。
先着なんだからなくなっちまうし僕はそろそろ行くから
とっととその手を離せ火憐ちゃん」
「うぇーい」
「家でちゃんと大人しくしてるんだぞ」
「応、セールスとか来ても全部私が力づくで追い返すから安心しろ兄ちゃん」
「それは大人しくとは言わない」
そんなやり取りを交わして、家をでる瞬間。
そこまでが、日常だった。
月火の暴走を含めて、まだ、日常だった。
誰も彼もが正常の中でふざけたり暴れたりしていただけで、
そのどれもこれもが、どこかで誰かが似たような事をしているレベルの
他愛の無い出来事でしかなく、他意の無い物事でしかなかった。
筈なのに。
“それ”はいつも突然やってくる、
小さな偶然や大きな天災のように、突発的に。
――いや、兆候はあった。
いくらでもあったし、気づけた筈だった。
でも、“それ”は気づかせない事に長けた事象で、
隠れ、隠し、消して、潰し、殺してしまう類の事態で、
だから気づけた筈だけど、気づける訳が無くて。
僕はなんの違和感もなく過ごしてしまっていた、
小さな間違いに気が付いても、大きな変化に気づけないトリックアートの様に。
身近な異変を見逃していた。
見逃して、見過ごして、そして見放して見捨ててしまった。
見えない振りをしていた自分そのものを見えない振りしていた。
いままでも、ずっとそうだった。
いつでもいつも遅きに失してばかりで、
全てが終わった後にやっと気づく。
先回りできたことなんて一度も無くて、
一番最後に追いつくことで精一杯、それすら侭ならない時もある。
そういうものだってわかっていても、
そういう現象だって、事象だって、理解していても。
悔やんでしまう、どうしていつも僕はこうなんだ、と。
せめてもう少し早く、せめて後一歩先に、
そんなことばかり“それ”と出会う度、出遭う度に思わされる。
非力さを、無力さを、突きつけられる。
あの軽薄なアロハの専門家なら、
きっとこんな小さな出来事なんて
起こる前に終わらせてしまうのだろう。
他の誰もが存在に気づかないうちに、
隠密裏に全てを処理することも可能だったろう。
「おはようございます。アララキ……コヨーテさん」
「僕の名前は阿良義々木暦で、絶滅しそうな犬科と一緒にするな」
「失礼、噛みました」
「うそだ」
「噛みます、えいっ!」
こよみは まよいのはを ひだりくびにあてた。
・・・ドクドクと ちが わきでてくる!!
ああ!! なんて おろかなのだ。
じぶんの いのちを じぶんで たってしまうとは!!
・・・ぼくなきあとの せかいは やみに つつまれて しまうであろう・・・
ざんねん!!
こよみの かいいたんは これで おわってしまった!!
「って、なんで私が阿良々木さんの所有物扱いなんですか
保守
「僕の名前は阿良義々木暦で、絶滅しそうな犬科と一緒にするな」
「失礼、噛みました」
「うそだ」
「噛みます、えいっ!」
こよみは まよいのはを ひだりくびにあてた。
・・・ドクドクと ちが わきでてくる!!
ああ!! なんて おろかなのだ。
じぶんの いのちを じぶんで たってしまうとは!!
・・・ぼくなきあとの せかいは やみに つつまれて しまうであろう・・・
ざんねん!!
こよみの かいいたんは これで おわってしまった!!
「って、なんで私が阿良々木さんの所有物扱いなんですか
保守
あれぇ?化物語のときの西尾ってこんなにくどかったっけ?
ってか火憐はバタフライで普通に戻ったんじゃなかった?
ってか火憐はバタフライで普通に戻ったんじゃなかった?
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