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    元スレキョン「世界でたった一人だ」

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    みんなの評価 : ★★
    タグ : - ゆがんだ + - キョン + - シリアス + - 涼宮ハルヒの憂鬱 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    452 = 432 :



    きっかけは何だ。佐々木たちの言っていた通り、俺がハルヒを庇って刺されたことなのか?

    ――分からない。


    「……ハルヒ、起きろ、起きてくれ!――俺の声が聞こえるか!」

    声を教室いっぱいに張り上げ、俺はハルヒに叫んだ。

    どうにかハルヒを叩き起こしてやろうと思っていたのに、接触どころか言葉すら交わせない状況では、説得しようにも他に手段がない。
    俺のタイムトライアルは60分で強制終了なんだ。それ以上は一秒の延長も有り得ない。

    ハルヒは目前だというのに、ハルヒに触れることすらままならずに立ち尽くす俺は、無力を通り越して役立たずの木偶の坊だ。

    ――どうしたら、ハルヒの瞼を抉じ開けることが出来る?

    453 = 432 :



    一つでも二つでもいい、とにかく何か思いつけよ俺の頭。学業ではちっとも冴えねえんだから、こういう窮地にくらい役に立ってくれてもいいだろうが……!

    俺が諦めたら、其処で何もかも終わりになる。世界が転覆しニューワールドが誕生しちまったら、その新世界に俺や朝比奈さんや長門や古泉が居合わせるかどうか、俺は疑わしく思う。

    総てが俺達にとってのかけがえのない記憶たちだ。失くしたくはない。ハルヒだって、本音はその筈なんだ。力に精神を食い荒らされてさえなければ、こんなことを涼宮ハルヒが望むわけがないのに。



    俺はハルヒの名をひたすら呼びながら考え抜いた。そうだ、ヒントはなかったか? ハルヒが俺に望むような、何か――――

    454 :

    がんばれ

    455 = 432 :





    『ここであたしを手伝ったら、あんたの人生はその瞬間に決まるわ』



    『……あたしを手伝うことで、あんたは途方もない事件に巻き込まれ、命を狙われ、非日常を日常に収めるために奔走することになるってことよ。望む望まないに関わらずにね。
    ――ねえ、キョン。今なら、後戻りできるのよ。最初っからね。あんたが、あたしを手伝わなければいい。あんたが、あの教室で、あたしに声を掛けなければいい』




    『キョン。あたしを―――』


    456 = 432 :




    呼吸を、いつのまにか止めていた。



    あの夢、あのハルヒのメッセージ。……顕然と回顧してみれば、あの夢は不自然極まりない。
    俺が命を狙われ、非日常に追われ、舞台裏で東奔西走していたことを、ハルヒは何一つ知らない筈だからだ。知らない筈のことを題材にして、あのハルヒは俺に問い質した。あんたはそれでいいのか、と。

    あんな台詞が現実のハルヒから飛び出してくるわけがなく、だから俺は、あれをただの夢の出来事として片付けた。


    ……だが、それが違ったのだとしたら?

    ハルヒが、俺が朝倉に刺されて死に掛けたことや、ハルヒに内緒で映画撮影の裏にややこしく立ち回っていたことや、知らぬうちに何度も古泉達と会議を開いていたことや―――否、
    長門が宇宙人であること、朝比奈さんが未来人であること、古泉が超能力者であること……もしかしたら、俺がジョン・スミスであることまで、総て知っていたのだとしたら。


    信頼していた仲間たちが、己を観察対象として集っていた事実を察知したのだとしたら。

    457 :

    保守の間隔はどれくらいがいいんだ?

    459 = 432 :





    初めて出来た親しい友人たちや、恋仲であると想っている人間が、実は揃って自分の持つ特殊能力目当てに近づいていたのだと知ったときの心境はどうだろう。

    自分の能力が、無意識のうちに閉鎖空間なるものを生み出し、超能力者を苦しめ続けているのだと知ったら。自分の能力を求めて、様々な組織が集い、血みどろの抗争を繰り広げているのだと知ったならば。


    波風を立てることのないように、ストレスを溜め込むことがないように、彼らは自分に従っていてくれただけで。
    そこに好意などありはせず、仲間たちは仮初の共同体であっただけなのだと――そんな風に、もし、解釈してしまったら。


    想像を絶する。俺にはとても思い描けない。そんな境遇に置かれたとき、俺は一体何を想うだろう。誰に詫び、何に遣り切れなさをぶつければいい?

    460 = 432 :


    これは勿論俺の直感からなる想像でしかなく、論拠はない。


    だが、ハルヒがSOS団の文芸部室でなく、俺と出会ったこの1年5組の教室を選んだ理由が、この仮説から説明付けられるような気がするのだ。



    やり直したいなら、やり直せるとハルヒは言った。

    ―――やり直したいのは、本当は、ハルヒの方なのだ。

    多分今度は、俺と会話すらしないつもりなのだろう。俺に何を言われようと無視し、SOS団を作ることもなく、誰一人として寄せ付けない学生生活を送る。

    そうすれば俺と恋人になることもまずないだろうし、長門や朝比奈さんや古泉と親しくする機会だってないだろう。

    そうやって孤独に閉じ篭りさえすれば、誰かを己の力のために傷つけることもないと、ハルヒは信じたのだ。ハルヒらしからぬ稚拙な思い込みで、それでも、ハルヒが縋ることの出来る唯一の望みがそれだった。

    463 = 432 :





    だが、俺はハルヒの望みを拒んだ。

    あの夢で、やり直したいなんて思っていないからいらん心配をするなと、あいつの離反する欲求を否定してのけた。


    ハルヒは迷って、それならばと俺に何もかもを委ねて。暴走を止められない力の狭間で苦しみながら、願ったのだ。
    やり直すことも出来ず、ただ無法な力に呑み込まれて世界を終わらせるくらいなら、いっそのこと。




    “――――――あたしを殺して。”

    465 :




    ……今更に思い出す。藤原が言っていた、「敢えて知らないフリをしているのか、それとも本当に気付いていないだけか」という言葉。

    俺のみがハルヒに近付くことを赦されるのだとしたら、それはハルヒが俺の手によって終わりたがっているからなのだと、あいつは悟った上で告げていたんだろう。

    だからこそ殺傷用にナイフを寄越そうとした。世界のためにハルヒを殺せと、別の大義名分まで拵えて詰め寄った。……にも関わらず、俺はあの時、何ら聞く耳を持たなかった。

    奴はただ、ハルヒの願望を伝授していたに過ぎなかったというのにだ。視野が狭かったのは俺の方であり、だが世界のために好きな女の子を手に掛けるくらいなら、死んだ方がどれだけマシだろうとも思っていた。


    「お前は俺をバカってよく小突いたが、お前の方がよっぽどバカだ。――俺にそんなことが出来ると、本気で思ってんのかよ……!」

    466 = 465 :

    >>465
    己が死んだ方がどれだけマシ

    469 = 465 :

    なんという進みの遅さ
    すみません、米とぐので少し空きます

    472 = 415 :

    保守は30分おきくらいで大丈夫だぞ

    473 = 465 :




    ハルヒは応えない。




    唇を噛み、顔を掌で覆う。

    残り時間は僅かしかなく、あと数分あるかどうか。見通しは絶望的だ。突破口がまるで見つからん。



    ―――やるしかないのか?

    ―――藤原の言うとおり、世界を救い、ハルヒの心を救うためにはこれしかないのか?

    474 = 465 :




    俺は、無防備に晒されたハルヒの白い頸部を見た。ハルヒに触れたら、あの憎悪と怨恨に塗れた声をまたダイレクトに食らうことになる。

    あの細い首筋に手を押し当てたとして、俺が先に狂うのが先か、ハルヒが息絶えるのが先か。



    「やらなくて後悔するよりより、やって後悔する方がいい……か」


    古泉も言っていた。――あなたの思うままに、と。

    思い浮かべたのはSOS団で過ごした破天荒だが痛快な日々で、俺に刃物のトラウマを植え付けやがった朝倉涼子の格言であり、俺の自宅で眠りについているらしい両親と妹の寝顔で、

    「待ってる」と俺に訴えかけていた朝比奈さん、世界よりも俺の身を案じてると言い放った佐々木、今も俺を信じて防壁に力を注いでくれているのだろう長門と周防の姿。



    「……畜生」


    どうしてもどちらかを選ぶしかないなら、―――俺が、やるしかねえじゃねえか!


    475 = 368 :

    脳内再生ってのが初めて行なわれた俺の脳みそgj

    476 = 361 :

    しえん

    477 = 465 :




    俺は平身低頭謝った。時間はそれほど残っていなかったから、脳内で繰り返し唱えただけだったが、気持ちは土下座を百回は連発していた。


    こんな息子ですまんと両親に、俺をそれなりに兄貴として慕ってくれていたらしい妹に、ついでに親戚の従兄弟やばあちゃんに。古泉、朝比奈さん、長門は勿論、佐々木や橘、藤原の野郎を含めてやってもいい。

    鶴屋さんに谷口に国木田、阪中、学友たちにENOZ、森さん新川さん多丸兄弟、喜緑さんに傀儡政権の生徒会長、元コンピ研部長、ハカセくん。他には――誰がいたっけ?


    すまん。本当に申し訳ない。許してくれとは言わない、存分に罵って貰って構わない。


    ――ここまで来れば自覚している、俺は他人に説教する資格もない、単なるエゴの塊なんだ。
    いつだってそれなりにハルヒの侍従をやってたのは、俺がそういう生活を心の何処かで望んでたからだった。

    心底嫌だったら、指の一ミリくらいもハルヒのために、古泉たちのために動かしたりはしなかったろう。
    あのときのハルヒとのキスも、長門の改変世界ではない此方の世界を選んだのも、全部俺がやりたかったからやったことだった。

    478 :

    ほしゅっしゅ

    479 = 465 :




    「俺は、世界のためにお前にキスしたわけじゃない。……そんなわけがない……!」


    うつ伏せのハルヒの前に立ち、俺は吼える。


    聞いてるか、ハルヒ。俺は俺のエゴにより、世界を救う唯一解を放棄してやる。お前が幾ら死にたがってても殺してなんかやらん。俺はお前が思ってる以上に、我侭でどうしようもない男なんだ。


    お前を殺すくらいなら、俺は気が狂ったとしても、別のやり方で最期まで足掻く方を選ぶ。

    480 = 465 :





    「―――そういや、あの時は卑怯だったよな。お前ははっきり俺に告白してくれたのに、俺は『俺もだ』で返しちまった」


    桜の美しかった並木道、滑走する二人乗りの自転車。

    捧げられた三文字の告白には、俺も三文字で報いるべきだった。

    あの時の事は少し反省してるんだ。――だからさ。今、言ってもいいだろ?




    「好きだ、ハルヒ」




    神様なんかじゃなくったって、お前は俺にとって、世界でたった一人だ。

    俺はハルヒの肩を掴み、上体を無理やり上向かせた。閉ざされた瞳が見えた瞬間、頭を爆発させようと流れ込む怨嗟に、思考が捩れ澱み崩れていく。


    ―――既に意識はなかった。それでも身体は反射のように、唇を重ねた。

    481 = 465 :

    申し訳ありませんが、また二時間ほど空きます

    487 :

    いいところで・・・

    488 = 444 :

    この二時間はラストの詰めのための時間なんだ
    責めてやんなさんな。時間がかかればかかるほど良くなるさ

    489 :

    名作だね

    491 = 340 :

    >>489
    全くだ 

    待ってるぜ 保守

    492 = 457 :

    応援を込めてほっしゅ

    493 = 430 :

    ここ3日間このSSを楽しみに生きてる支援

    496 = 362 :

    >>493
    禿同

    497 = 409 :

    今日中に終わるのかこれ

    498 :

    1です、遅れて申し訳ありません
    いきなりネットが不通になって四苦八苦してました……
    再開します

    499 = 340 :

    ヒャッハー

    500 = 362 :

    よっしゃ


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