元スレキョン「世界でたった一人だ」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★
251 = 191 :
俺が必死に古泉を引き剥がしているうちに、腹をすかした宇宙人コンビによって「合掌」が執り行われちまい、俺たちは後手に回りながら昼食にありついた。
世界が終わり掛けているなんて少しも感じさせない、和やかな食事会だった。
―― 一歩間違えたら、これが人生最期の食事になることも有り得るんだよな。
野菜のスープに入っていた星型のニンジンを眺めてそんなことを思いもするが、――いや。今は考えまい。
ハルヒを連れ帰り、皆で同じ食卓を囲おう。俺の目指すところはそれだけだ。
「……あ」
朝比奈さんが、長門のおかわりコールに応じて、鍋に追加分を盛り付けに立ったときだった。スリッパを履いた足が床を擦り、逡巡する。
――闖入者だった。
253 = 172 :
あれ、らしくない表現だな
浮いた かと思ってた
疲れてたら休むのもいいかも支援
254 = 191 :
>>253
何かおかしかったですかね
指摘あったらお願いします
もうじき夕飯になるので、一旦止まります
色々立て込むので二時間ほど空くかと思います
255 = 190 :
>>254
了解
保守はまかせろい
256 = 124 :
ほ
257 = 190 :
ほっしゅん
258 = 124 :
ほ
260 = 125 :
おお!残ってたか
保守乙!
261 = 124 :
ほ
263 = 117 :
ゅ
264 = 190 :
ほっしゅ
266 = 124 :
ほほ
267 :
視線が一斉に集中する。一気に形成された気まずい空気を取り成そうと、朝比奈さんが健気にも声を上げた。
「あ、あの。藤原さんも、食べませんか? もう一人分、残ってるんですけど……」
「こんにちは」もなければ「お邪魔します」もなく、勝手に室内に上がりこんでいた未来人・藤原は、朝比奈さんの台詞に虚を突かれたように瞬いた。
そうして、それなりに秀麗な男の容貌に影が過ぎる。何かを堪えるような――それは、苦悩のような、憤りのような、複雑な感情の入り混じったものだった。
一瞬のことで、注視していなければ見逃すだろう男の変化を目の当たりにした俺は、悪辣なイメージしかない藤原の抱え込んだ「なにか」を、意外に感じた。
――こいつ、こんな顔もするんだな。
それは例えるなら、地元で名の知れた暴走族の頭が実は小動物に目がなくて、河原に捨てられていた犬猫に遭遇しては連れ帰ってしまう、なんてエピソードを聞いたときのような驚嘆だ。
理解不能だと感じていた相手に、人間らしさや、共感の叶う部分を見出し、親近感を得る。
何にせよ、それは藤原が初めて露出した、敵意や悪意や嘲笑以外の感情だった。
268 = 124 :
しえん
269 :
.
270 = 124 :
ほ
272 = 267 :
藤原は己がしてみせた微細な感情の表出に自覚があるのかないのか、あっさりと普段の態度に戻り、「和気藹々」という単語を親の仇とするように、あからさまに顔を顰めてみせた。
「呑気なものだ。それとも、現地に倣ってはこれを豪胆と感服してみせなければならないのか? 過去の慣習は僕には理解できない」
「英気を養ってんだ。こうなったら、慌てたって仕様がないだろ。俺たちは出来ることをするだけだ。――朝比奈さんのせっかくの勧めを無駄にするんじゃねえぞ、藤原」
スープを啜りながら言う俺の前で、朝比奈さんが残り物のサンドイッチの包みを、そっと藤原に手渡す。跳ね除けるかと思ったが、藤原は無言でそれを受け取った。
珍奇なものを見るように、ラッピングされたそれを眇める。……流石に、この場で食べようという気は起きないらしい。
まあ、捨てるなんて無礼を起こさない限りは、何処で食おうが構わないさ。朝比奈さんの手製をこいつが味わえるのは、これが最後の機会だろうしな。
274 = 267 :
「……準備は出来ているんだろうな」
サンドイッチから目を離した藤原が、何処か疲れたような声で確認する。スープの最後の一滴までを飲み干した俺は、器をテーブルに戻し、「ああ」と応えた。
「――行くか、長門」
「わかった」
長門も俺も手を合わせ、「ご馳走様でした」を宣し、椅子から立ち上がる。周防九曜も、たゆたう黒髪を宙に浮かせて、俺たちに倣った。
「そういうわけなんで。……留守番お願いします、朝比奈さん」
朝比奈さんはきゅっと唇を噛み締めると、「はい」、と俯き呟く。
「あたし、待ってますから。……きっと皆で、帰ってきて」
「勿論ですよ」
275 :
完結すればどう考えても「抹消」 「微笑」 「軌跡」クラスの名作になるとおもう
276 = 267 :
明確に帰る場所が規定されてるってのはいいものだ。朝比奈さんの淹れてくれるお茶が、いつだって俺たちの日常の指標である。
ハルヒ団長を天頂に据えた、栄えあるSOS団を取り戻すために――行こう。
「出発日和ですね。――今日は桜が綺麗でしょう」
暑い夏の空を窓越しに仰いで、古泉一樹が笑った。
277 = 124 :
しえーん
278 = 124 :
ほ
281 = 267 :
・ ・ ・
「外側の閉鎖空間」は既に日本列島を覆いつくしているため、閉鎖空間に侵入すること自体は何処からでも可能であるらしい。
だが、防壁の持続時間が一時間未満であることを考えると、「内側の閉鎖空間」に出来るだけ近い距離から侵入することが望ましい、という長門の弁により、俺たちは坂を上っている。
俺たちの母校、県立北高校に続く、急勾配の坂道だ。
「ここ」
集団登校の引率の先生のように、先方を進んでいた長門が、坂の中途で立ち止まった。やけに半端な位置だが、上りきった場所からの方が近いんじゃないのか?
「接近し過ぎると、侵入を果たした瞬間に神人の猛攻に遭う可能性がある」
「……なるほど」
入った瞬間に、常駐しているという神人の巨躯に踏み潰されたりするかもしれんわけか。そう言われると、ある程度の距離は残した方がいいような気がしてくる。
282 = 130 :
しえん
283 = 204 :
なるほど
284 = 124 :
ほ
285 = 115 :
しえん
286 = 267 :
「手順を確認する」
長門が俺と古泉を交互に見据えた。
「まず、わたしと周防九曜が防壁をあなたに展開する。展開中、我々は他のいかなる動作も出来なくなる。その後のことは、あなたと古泉一樹に任せるしかない」
「わかってる」
俺は深く頷き、古泉は微笑みながら首を傾げる。……まあ、俺が分かってさえいりゃ、平気だろう。
「……次に、『外側の閉鎖空間』へホールを作り、あなたと古泉一樹が共に閉鎖空間に侵入する。古泉一樹の能力で、神人の攻撃を掻い潜り、『内側の閉鎖空間』へあなたのみが侵入を試みる。
侵入に成功してからは、あなたの動き次第。涼宮ハルヒの説得が叶えば、閉鎖空間は自然消滅すると期待される。万が一侵入自体に失敗した場合は、閉鎖空間に待機している古泉一樹と共に帰還。古泉一樹が長期滞在の難しい場合は、わたしがあなたを救助する」
「ああ」
予め話し合っていた段取りはそんなところだ。一発限りの出たとこ勝負だが、これ以上は思いつかなかった。
再確認を済ませると、長門と周防が互いに目配せをしあうように見つめあい、瞬きを増やした。
その瞬きにリンクするように、鈍い光が明滅し、波状となって地に浮かび上がる。
――『防壁』の展開が始まったのだ。
289 = 124 :
ほ
290 = 267 :
傍目には特撮映画の特殊効果か何かのような青い光だった。波状の光はフラフープのような細い輪となって、俺の身を徐々に包み込んでいく。
ちょっとした変身ヒーロー気分だな、これは。
俺がどうやれば神人に見つからずに北校舎内へ速やかに移動できるかを考えていると、「僕は見届け役だ」と言い張って旅の道連れとなっていた男が、俺の目の前にすっと進み出た。
沈黙したっきりだから、どっかではぐれたのかと思ったぜ。作戦間近になんだ、いつもの悪態なら俺が閉鎖空間から帰ったときに聞かせてくれ。その時なら幾らか心の余裕もあるだろうしさ。
俺の精神的拒否を、藤原は丸っきり無視した。
「……あんた達の段取りには、必要な部分が欠けている。これを持っていけ」
「人の話を聞けよ。……なんだ、これ」
291 = 267 :
藤原流ジョークか何かか? お前の冗談のセンスは、俺にはさっぱり理解不能だ。それともこれが未来風ってやつなのか。流石にブラックにもほどがあるだろうよ。
俺は藤原の差し出したものを見た。
――大振りの、バタフライナイフだった。
294 = 117 :
ナイフといえば…
295 = 124 :
消失映画まだやってるかな
見たくなってきた
296 = 134 :
>>295
つい最近見てきたぜ
信じられないくらい面白かった
297 = 117 :
地方だと最近になってやっと上映が始まったところもあるよ
298 = 129 :
うむ。消失は本当にすばらしい。
作画も話のテンポも演出もすべてが。
299 = 130 :
もう上映終わってるところもあるぞ
300 :
お前らは誰といってきたの?一人で行けるつわものなの?
みんなの評価 : ★★
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