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    元スレ【らき☆すた】新ジャンル?「ヤンデレこなた」Part11【(=ω=.)】

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    301 : 蟹は鳶に襲われる - 2009/03/03(火) 00:27:15.55 ID:a0Qp2kAO (+29,+29,-49)
    昼ぐらいにまた投下するよていです

    それと、長崎に旅行中に山でマンゴーアイスを鳶?に奪われた俺に一言……
    302 : 蟹と有名な - 2009/03/03(火) 14:23:47.97 ID:a0Qp2kAO (+24,+29,-3)
    また、投下は夜に成りそうだ
    303 : 以下、VIPにか - 2009/03/03(火) 23:20:30.97 ID:2gF0Tek0 (+19,+29,-3)
    よろしい、ならば全裸待機だ
    304 : 蟹はエロスが書け - 2009/03/04(水) 00:57:11.24 ID:1Yr8/IAO (+27,+29,-35)
    柊に位置を教えてもらい、売店目指してレッツゴー!

    「二足イニシャルドリフトーーー!」ズザー

    この叫びに別に意味は無い
    只、言いたかっただけだ…



    305 : 蟹はエロスが書け - 2009/03/04(水) 00:57:30.80 ID:1Yr8/IAO (+33,+30,-129)
    売店に着いたのは良いが…

    「…ココは戦場か?」

    売店に群がる人の群れ

    皆に踏み潰される細目の男子生徒
    ……たしか同じクラス…だったよな?

    …無視しよう、昼飯の方が大事だ

    「特攻!」

    くっ、人の壁が厚い―――

    こなた「こちらコナーク、コレよりこの戦争に武力介入を開始する!」


    ―――!―――

    こいつは、朝の遅刻したやつ!

    たしかコイツの今、コナークって言わなかったか?

    こなた「おばちゃん、チョココロネちょうだい」

    ―――早!

    もう到達しやがった!

    こなた「ふっはは、楽勝だね☆」

    羨ましい

    306 : 蟹はエロスが書け - 2009/03/04(水) 00:58:10.90 ID:1Yr8/IAO (+33,+30,-139)
    「なあ…」

    こなた「なに?」

    「随分人の壁を突破するのが美味いな」

    こなた「甘いね、この私を止めたくばあと三倍は持ってこい!」

    …どこぞの金ピカみたいなセリフを吐きやがった

    「ところでさっきコナークって名乗ってたけどもしかして、オンゲーでその名前使って剣士やってない?」

    こなた「いかにも、やってるけど……それがなにか?」

    「オトーコって名乗れば解るか?」




    307 : 蟹と小児科と精神 - 2009/03/04(水) 01:01:02.70 ID:1Yr8/IAO (+22,+29,-6)
    終了

    就寝

    閉幕

    服を着ろ
    308 : 以下、VIPにか - 2009/03/04(水) 23:47:42.07 ID:QXgSLsk0 (+8,+13,-18)
    >>蟹の人
    これは乙じゃなくてなんたらかんたら
    309 : 以下、VIPにか - 2009/03/05(木) 21:15:04.56 ID:k0Sl0Cco (-8,+6,-5)
    310 : 以下、VIPにか - 2009/03/05(木) 23:42:02.58 ID:vePlczoo (+29,+29,-5)
    こないだ初恋クレイジーっていうの投下した者です
    続きいきます
    311 : 初恋クレイジー  - 2009/03/05(木) 23:43:11.67 ID:vePlczoo (+35,+30,+0)


    先日かがみに誘われて以来、かがみ、つかさとその友人達の勉強会に参加させてもらっている。
    その縁で二人の友人であるという泉さん、高翌良さんという人達と知り合いになった。
    二人共かがみとつかさの話によく出てきていたので、名前だけは以前から知っていた人達だ。
    高翌良さんはかがみ達から聞いた話以外にも、容姿端麗文武両道、
    おまけに品行方正という絵に描いたような完璧な人物という噂は聞いたことがあったが、実際にそのとおりの人だった。
    丁寧な言葉遣いに常に人をたてる穏やかで気配りのできる性格、そして進路希望は全て医学部だとか。
    いるところにはいるんだな、こんな凄い人。
    泉さんは体が小さく足元まで届くような長い髪が印象的な、飄々とした、猫のような人だ。
    初めて会った時、かがみとつかさとの関係を物凄い勢いで問い質されて困った。
    どうやら俺が二人のどちらかと、
    もしくは両方と(…それは人として駄目だろう)恋人関係である事を期待していたらしい。
    残念な事にそんな事実は全くないのできっぱり否定しておいたが。
    ちなみに泉さんは民放の野球中継の延長に困っているらしいので、野球に関わる者の端くれとして一応謝っておいた。
    いやもちろん俺が謝ったところで意味なんて全くないわけだが。

    そんなわけで高翌良さん、泉さんにかがみ、つかさの仲良し四人組に、俺が加わらせてもらい、
    最近はもっぱらこの五人で図書館なり柊家なりに集まって勉強会を開いている。



    ――――――――――――



    ということで今日は五人集まり図書館にて勉強会、午前一杯勉強を続け昼飯時を迎えた。

    「はい、泉さん。お弁当」

    昨夜電話で頼まれたとおり、泉さんに弁当を渡す。
    午前中から図書館で勉強する場合は、昼食は各々弁当持参の形をとる事が多いのだが、
    泉さんはほとんどの場合コンビニで買った適当な物で済ませているので、
    部外者が参加させてもらっているお礼を兼ねて俺が弁当をつくる事を申し出たのだ。
    泉さんは家で昼食をとり昼過ぎからの参加というケースも多いので、
    必要な時は前日に電話で連絡してもらっている

    「おおー、ありがとうね男君」

    「あー、こなちゃんまた男君にお弁当頼んだんだ。いいなぁ」

    「もう、こなたってば……こいつにそういう事あまり頼まないでって言ってるでしょ」

    「言ってくれれば二人の分もつくるぞ? 高翌良さんも、必要なら遠慮なく言ってください」
    312 : 初恋クレイジー  - 2009/03/05(木) 23:44:17.56 ID:vePlczoo (+35,+30,+0)

    「いえ、お気持ちは嬉しいですが、ご迷惑でしょうし。
    初めてお会いした日にお弁当を用意していただいただけでも十分ですよ」

    「初対面でいきなり、弁当つくってきたから遠慮なく食べてくれ、だもんね。
    正直ちょっと驚いたよあの時は」

    「う……やっぱりあれおかしかったな?」

    初めてこのメンバーの勉強会に参加させてもらった日、
    挨拶とお礼の意味を込めて俺は全員分の弁当を用意していった。
    かがみとつかさはともかく、泉さんと高翌良さんからしたら見ず知らずの得体の知れない男の手料理をいきなり、
    さあ食べてくれ、なんて差し出されたわけで。
    大多数の女の子は見知らぬ男にいきなりそんなことされたら普通ありがた迷惑と感じるだろう。
    結果的に快く食べてもらえたからいいが、今思うとあれは失敗だった。
    食事を振舞うにしても、いきなり自分で作ったりせずに
    コンビニなりファミレスなりで奢るという形にした方がよかったんだろうな。
    かがみやつかさに女心がわかってない、とよく言われるが、
    俺のこういう辺りがそう言われる由縁なんだろう。
    自分でも直したくはあるけど、結局後になって初めて気付くようなことばかりだ。
    嫌がらず弁当を食べてくれた泉さんと高翌良さんの懐の深さに感謝するしかない。

    「い、いえ。確かに驚きはしましたけど、おかしくはないと思いますよ?
    お弁当、美味しかったですし。」

    「お手製弁当くらいギャルゲーではよくある事だよ。
    まあ男の子がやってもそこに萌えが生まれるかは微妙だけど」

    フォローしてくれる泉さんと高翌良さん、いい人達だ。
    泉さんの言ってる内容は正直よくわからなかったけど。
    かがみとつかさはいい友人に恵まれたな。

    「そっか、そう言ってもらえると助かるよ。
    で、つかさとかがみはいいのか? 弁当」

    「うう……男君のお弁当……欲しいなあ……。
    で、でも駄目だよ、男君も忙しいでしょ?」

    「ていうかあんたは人の世話してる暇があったら自分の事に時間使いなさいよね。
    こなたもあんまり男に頼み事しないでよ、こいつそういうの断るって事を知らないんだから」

    「いやあ、正直自分でもちょっと図々しいかな~と思わなくもないんだけど、
    自分で弁当つくるのは面倒だし、外で買うにしてもコミケに向けて節約しなきゃならないし、
    それに男君の弁当ってつくってもらう度に上手くなってくから楽しみでさ」

    「ほ、ほんとか? 泉さん。質上がってるかな?」

    「うん、最初の時も十分美味しかったけど、最近は更に味付けから盛り付けまで洗練されてる感じ。
    って作ってもらってる立場で偉そうに品評するのもなんだけどね」
    313 : 初恋クレイジー  - 2009/03/05(木) 23:46:03.72 ID:vePlczoo (+35,+30,+0)

    よし、と見えない所で小さくガッツポーズをとる

    「いや、こっちとしても忌憚ない意見をもらえるとありがたい」

    泉さんはこう見えて……なんて言っては失礼だが、家事万能らしく、料理の腕も相当なものだ。
    一度泉さんが自作の弁当を持ってきたことがあったが素晴らしい出来だった。
    つかさも、元々料理上手なのは知っていたが少し見ない間に更に上達していて、二人共明らかに俺より数段上手い。
    ここ数年忙しさにかまけて適当料理ばかり作っていた俺は、そんな二人に対抗心が湧いてしまったわけだ。
    一人暮らしになると食事の用意が自分の分だけで済むのでついつい手を抜きがちになってしまうが、
    人のために作る場合は気合の入り方からして変わってくる。
    泉さんの弁当を作る事で大分勘が戻ってきた。
    食べてる本人であり、さらに目下の目標でもある泉さんのお墨付きをもらえたのは嬉しい。
    いやまあ受験生がそんな事に熱を上げてどうするって話ではあるが、料理人目指してるわけでもないし。
    でも人に食べてもらう以上なるべく旨い物を作りたいと思うのは自然なことだろう、うん。

    「あんたそんな事してる場合じゃないでしょうに……」

    「あ、じゃあさ、男君のお弁当は私がつくるっていうのはどうかな?」

    「つかさが?」

    そりゃつかさの料理は美味しいし、食べたいとは思うけど

    「いや、いいよ。部活があった時ならまだしも今は時間にもそれなりに余裕があるしな。
    つかさに迷惑はかけられない、気持ちだけありがたく受け取っておくよ」

    「も~……迷惑なんかじゃないのに……」

    「迷惑はかけられないって、そう言われると男君に弁当作ってもらってる私めの立場がないんですが……」

    「い、いや、俺が泉さんの分作るのが迷惑ってわけじゃなくてっ」

    いかん、誤解させてしまったか。

    「社交辞令で言ってるだけよ、わざわざ人の弁当まで作るなんて面倒に決まってるんだからこなたは自重しなさい、
    ……って言いたいとこだけど男の場合はその限りじゃないからなぁ……」

    「とにかく遠慮せずに必要ならどんどん申し付けてくれてかまわないよ、泉さん。
    本当に迷惑なんかじゃないし、こっちもいい練習になるからさ」

    「じゃあ私も何かお礼考えとこうかね、さすがに作ってもらってばかりじゃ悪いしさ」

    「そんな気を遣わなくてもいいぞ?」

    こっちも好きでやってる事なんだし、それでお礼をもらうというのも心苦しい。
    314 : 初恋クレイジー  - 2009/03/05(木) 23:47:43.56 ID:vePlczoo (+35,+30,+0)

    「いやいや、毎回手の込んだ物作ってもらっちゃってるしお礼の一つもしないと。
    どれ今日のは……ミニサイズのエビフライに
    牛肉と野菜の炒め物、そしてシイタケと茄子の煮物に、しっかり生サラダもついてる、と。
    揚げ物焼き物煮物と揃ってるとは、手間かかってるなぁ。
    時間かかるだろうに朝からこんな物作ってくれるなんて、ありがたやありがたや」

    「仕込みは昨日の夜に済ましておいたからそんなに大変でもないよ」

    今日のメニューは女の子には少々重い物が並んだが、その分一つ一つの量を少なめにしてある。
    ただ見た目的にあまり女の子向きじゃないと言うか、色合いが地味な感じになってしまった。
    つかさはもっと上手く華やかな彩りに仕上げられるんだが、
    この辺りが生まれ持った美的感覚の差なんだろうか。

    「男君お料理上手だもんね、わたしも教えてもらったことあるもん」

    「うーむ、こりゃ私も負けてられないねえ。また自分でお弁当つくってこようかな。
    今度は本気出しちゃうよ!」

    「いや別に勝負してるわけじゃないんだし」

    前に見た泉さんの弁当を見る限り本気でこられたらそれこそ勝ち目なさそうだ。
    つかさも俺が教えたのなんて遥か昔の事、あっというまに追いつかれ今は俺より大分上手くなっている。
    いや、俺だって最近は忙しさにかまけて栄養だけ気遣った安さ速さ重視の手抜き料理ばかりつくっていたが、泉さんのおかげもあり最近勘が戻ってきた。
    今までつくった事のない料理にも挑戦しているし、勝負となればただで負けはしない……って何本気で張り合おうとしてんだ俺は

    「そだね、ていうか料理勝負なんてしたらかがみんに悪いしねぇ」

    からかうような笑顔でかがみに話をふる泉さん

    「な、なによ。私だって少しはできるわよ」

    「ああ、かがみも上手くなったよな、昔は全くだめだったけど」

    「全くってどのくらい?」

    「えっと…インスタントの生ラーメンあるじゃないか。
    生めん茹でてスープつくって――ってやつ。
    あれを作る時に、本当なら麺を沸騰した湯に五分つけるところを
    水に火をかけた時点で麺を入れて、そこから五分数えてたりってことがあったな」

    「いやいやかがみん、それはさすがにひどいよ……」

    「あー、あったよねえ、そんなこと」

    「う、うるさい! ちょっと作り方勘違いしちゃっただけだってば! お、男も変な話すんな!」

    「もちろん出来上がったラーメンは生煮えでとても食べられたもんじゃなかったな。
    結局俺がその後また煮なおしたけど。だから最初から俺がやるって言ったのに、あの時」
    315 : 初恋クレイジー  - 2009/03/05(木) 23:48:43.71 ID:vePlczoo (+35,+30,+0)

    しっかりしてて基本的に苦手なものがなくなんでもそつなくこなすかがみだが、
    長く付き合ってると意外に抜けたところが見えてきたりもするのだ。

    「あーそっかあ、それから考えれば今のかがみんは大層進歩したんだねぇ……
    がんばったんだね、かがみん☆」

    「その生暖かい目はやめて……今はもうそんな失敗しないわよ。
    あんた達程うまくはないけど、簡単な料理ならつくれるし…」

    「かがみさんのお料理もお上手ですし、気になさることではないと思いますよ」

    「それにかがみは他にいいところたくさんあるんだから問題ないだろ」

    「たとえばどんなとこよ」

    「む、そう改めて聞かれても困るが…」

    たとえば、と言われてもな。かがみの良い所なんてそれこそいくらでもあるだろう。
    一つ一つ上げていっても後から後から出てきてキリがないくらいに。
    少なくとも俺にとっては本当にいい幼馴染だ

    「人の良い部分しか見ないあんたに言われてもなあ…」

    「そんなことないって」

    かがみはよくこんな事を言う。
    そんなんじゃいつか騙されたり、俺が損する事になるだろうから直せ、とも。
    そう言われても自分じゃそういう見方をしているつもりはないので直しようがない。
    というか騙されそうってことなら俺よりつかさの方が心配だと思うぞ

    「いいじゃないお姉ちゃん、そこが男君の良い所だよ。
    あ、もちろんそれだけじゃなくて他にも良い所いっぱいいっぱいあるよね、男君は」

    「そ、そうか。ありがとな、つかさ」

    俺はそんなふうに言ってもらえるような大した人間ではないが、つかさの裏表のない純粋な笑顔でそう言われると、
    分不相応だとわかっていても嬉しくなってしまう

    「えへへ、どういたしまして。ねえねえ、男君のエビフライ一つもらっていいかな?」

    泉さんの分も作る時はその余り物を自分の弁当に詰めるので
    大体メニューは泉さんの物と同じになる

    「ああ。いいぞ」

    「ありがと、あーん」
    316 : 初恋クレイジー  - 2009/03/05(木) 23:50:17.64 ID:vePlczoo (+35,+30,+0)

    「ん、あーん…」

    「って待てこらー!!」

    いきなり顔を赤くして叫ぶかがみ、
    つかさがあーんと開けた口にエビフライを持っていこうとした俺の手も驚いて止まってしまい……って何やってんだ俺は!?

    「いやいやつかさ! あーんは駄目だろ! 俺もつられそうになったけど!」

    「え? え? だ、駄目かな?」

    「駄目よ!」

    「いやあ、流れが自然すぎておかしい事だと思えなかったよわたしゃ。さーすがかがみん、よくぞ流されずに突っ込んだ!」

    「こ、ここは周りに他のお客さんもいますし、少々問題があるのでは…」

    ちなみに今みんなで弁当をつついているこの場所は図書館の裏口付近にある休憩スペースだ。
    ベンチがいくつか用意されてあり、高翌良さんが言ったように他のお客さんの姿もちらほある。
    別にその人達がこちらを見てたりするわけではないが……やっぱりあーんは問題あるだろ。
    そもそも泉さんと高翌良さんが目の前にいるわけだし

    「むー……男君昔はよくやってくれたのにぃ……」

    いや確かにそういう事したこともあるけどさ……

    「……あのな、つかさ。つかさももうお年頃なんだから、男相手に気軽にそういう事させちゃいけません。
    相手に変なふうに勘違いされて困ることになるかもしれないんだからな。
    やるならおじさんとか、あとつかさに好きな人ができたらそいつにしてもらうといい。きっと相手も喜ぶから。
    それ以外の男、特に若いやつ相手に軽々しくそういう事せがんじゃ駄目だ」

    全く、昔からそうだったがつかさは少し無防備にすぎる所がある。
    子供の頃はただ微笑ましいだけで済んでいたが、この年になると相手次第じゃよくない事態を招きかねない。
    今のところそういう気配はないようだが、顔立ちも纏う雰囲気もかわいいつかさには、いずれ好意を持った男が近づいてくることがあるだろう。
    それがいい男なら喜ばしい事だが、その中に悪いやつがいないとも限らない。
    そういう時のために少しは警戒心という物を持って欲しいものだ。

    「え……う、うん」

    「うわー、男君てばお父さんっぽいっていうか……保護者みたいなこと言うね」

    「もう子供じゃないんだから、気をつけなきゃ駄目よ、つかさ」

    「かがみも普段からその辺ちゃんと注意してやんなきゃ駄目だぞ」

    「つられてやりそうになったあんたが言うなっ」

    「う……すまん、気をつけます」
    317 : 初恋クレイジー  - 2009/03/05(木) 23:51:59.06 ID:vePlczoo (+35,+30,-271)

    「よろしい」

    「おおぅ、なんか娘の教育について揉める父母の図って感じ?」

    「そ、そんなんじゃない!」」

    せめて長男長女が次女の心配を、ぐらいにしてくれ泉さん

    「息がピッタリですね、羨ましいです」

    「もう、みゆきまで……」

    「ね、ねえ男君……」

    「ん?」

    「あのね、す、好きな人が相手ならいいんでしょ? ……だったら……。
    ………ううん、なんでもない。ごめんね」

    「? ああ」

    「じゃ、じゃあエビフライもらうね、はむっ……おいし~い! 
    やっぱり男君料理上手だね、時間たっても衣がサクサクしてるよぉ」

    「あ、私ももらうわよ。ラーメンの事ばらした罰ね。……ん、まあさすがね、いい出来だわ」

    「そうか、よかった」

    自分のつくった料理を美味しいと言ってもらえると嬉しいものだ。
    泉さんや高翌良さんも食べ始めてるし、俺も食うか。
    ……って、もうないじゃん、エビフライ。かがみのやつ何気に三つも食べてやんの。
    しゅ、主菜だったのに……

    318 : 初恋クレイジー  - 2009/03/05(木) 23:53:06.94 ID:vePlczoo (+35,+30,-95)

    「……太るぞ」

    「う、うるさい!ほらっ」

    「むぐっ!」

    いきなり俺の口に自分のおかずの唐翌揚げを突っ込んでくるかがみ、これがお返しってことか。全く乱暴な。

    「ん……旨い」

    「そ」

    突っ込まれた時箸が軽く刺さって口の中が痛いんだが……まあそれはいいか

    「お、お姉ちゃん……ずるい……」

    「……どうした?つかさ」

    「……別に……」


    319 : 初恋クレイジー  - 2009/03/05(木) 23:55:26.40 ID:vePlczoo (+30,+30,-41)
    以上です、続きます。
    話進んでないですが、後何回かはこんな感じで男周りの状況説明兼ねた
    日常的な交流の話になりますので、本格的に病みだすのはもう少し先になっちゃいます、すいません
    320 : 以下、VIPにか - 2009/03/06(金) 00:10:04.98 ID:Oxpu5Awo (+19,+29,-5)

    楽しませてもらってます
    321 : 蟹は羨ましがって - 2009/03/06(金) 01:39:34.66 ID:NbhgYcAO (-11,+3,-3)
    乙なんだぜ☆
    322 : 以下、VIPにか - 2009/03/06(金) 12:08:03.99 ID:6/iNNCQ0 (+14,+29,-4)
    乙だってヴぁ
    323 : 以下、VIPにか - 2009/03/10(火) 00:50:26.95 ID:XVtIcbo0 (+24,+29,-9)
    活気が無くて寂しいから
    久しぶりにやるか

    あーいまーい↓
    325 : 以下、VIPにか - 2009/03/10(火) 20:38:16.71 ID:4N/KLXMo (+19,+29,-7)
    そりゃぷにってコトかい?
    326 : 以下、VIPにか - 2009/03/11(水) 16:52:24.64 ID:S724ODA0 (+6,+21,-2)
    ちょっ!
    327 : なすーん - なすーん (+0,+0,+0)
                         __        、]l./⌒ヽ、 `ヽ、     ,r'7'"´Z__
                          `ヽ `ヽ、-v‐'`ヾミ| |/三ミヽ   `iーr=<    ─フ
                         <   /´  r'´   `   ` \  `| ノ     ∠_
                         `ヽ、__//  /   |/| ヽ __\ \ヽ  |く   ___彡'′
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                       r|__     ト、,-<"´´          /ト、
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    328 : 以下、VIPにか - 2009/03/11(水) 23:15:29.95 ID:pnPc54Uo (+29,+29,-44)
    初恋クレイジーの続きいきます
    今回からSide○○という表現が出ますが、
    ここから○○に入るキャラの一人称で進むという視点変更の意味です
    329 : 以下、VIPにか - 2009/03/11(水) 23:16:30.12 ID:pnPc54Uo (+35,+30,-307)


    Side かがみ


    「ちょっとゲーセン寄ってかない?」


    図書館からの帰り道、こなたのその一言で私達は駅前のゲームセンターに来ている。
    今日は館内整理だとかで図書館が2時に閉館してしまい時間には余裕がある。
    みゆきは用事があるらしく帰ってしまい、男、私、こなた、つかさの四人だ。
    今は男とこなたが格ゲーで対戦してるんだけど――


    「い、泉さん強すぎ……」

    男ボロ負け。まあそうなるわな。
    男のゲームの腕は部活の友達や私に付き合って覚えたってぐらいのもので、私ととんとん程度だ。
    全くの素人ってわけではないけど、さすがにこなたに勝てるわけはない

    「むっふっふ~、まだまだ修行が足りないねえ」

    「男じゃ無理だって、私結構こなたに付き合ってゲーセン来てるけど、
    この子が負けたとこ見た事ないもん」

    「こなちゃんいつも勝ってるもんね」

    「むむ……」

    あ、なんか悔しそう。
    特にやり込んでるわけでもなし、上級者相手じゃ負けて当然ってのは本人もわかってるだろうに、
    勝負事には熱くなるというか…結構負けず嫌いなとこがあるのだ、こいつは。
    体はすくすく大きくなり、精神的にも同年代の男の子に比べるとしっかりしてて、
    どんどん大人に近づいていってように見えるけど、まだまだ子供っぽいところも残ってたりする。

    「も、もう一回いいかな泉さん」

    「いいよ~、どんどんかかってきたまへ!
    誰に喧嘩売ったか教えてあげる! byヨーコ・Y!」

    「もうやめときなって…」
    330 : 初恋クレイジー  - 2009/03/11(水) 23:20:11.18 ID:pnPc54Uo (+35,+30,+0)

    「男君ファイト!」

    つかさ、いくら応援しても無理なもんは無理だと思うよ



    ――やっぱり勝てるわけもなく、連敗数が10を越えたところで男はギブアップしましたとさ



    ――――――――



    「そういやこないだ久しぶりに対戦した時かがみが妙に強くなってたけど、
    あれ泉さんのおかげだったのか」

    「あー、まあそうね」

    こなたと友達になってから、あいつに付き合ってゲームをする機会が増えたので
    私の腕も多少は上がっている。
    こなたには何度やっても勝てないけど。

    「通りで勝った方が何か奢る、なんて賭けを自信満々で持ちかけてきたわけだ。
    ハーゲンダッツだったっけ? 普通のアイスより高いんだなあれ。あの時はじめて知ったよ」

    「高い分おいしいのよ、あんたにも一口あげたじゃない。おいしかったでしょ?」

    「む……ああ、まあ」

    ? 何やら男の顔が赤くなった……。
    ああ、あの時私が自分の使ってたスプーンでそのまま食べさせたの思い出したのか。
    昔はお互い普通にやってたことなのに、最近こいつもそういうの意識するようになったらしい。
    ……まあよく考えたらあれって、こないだ私と男が二人してつかさに
    やっちゃ駄目、なんて注意した「あーん」そのものだったわけで、男女の役割こそ逆転してたけど。
    そりゃ意識もするか。
    私はその程度で赤くなったりなんかしないけどね。
    十年以上気持ちを隠し続け幼馴染のポジションに甘んじているんだ。
    男の前でのポーカーフェイスには慣れっこなのである。

    ……つかさにはダメと言っておきながら自分はやってるなんてのはダブルスタンダードにも程があるとは思う。
    でもあの時、男がつかさに言われるまま「あーん」をしそうになったのを、私は黙って見てはいられなかった。
    少し前までなら内心はともかく止めようとまではしなかったのに。
    もう子供じゃない、あの時つかさに言った言葉。まさにそのとおりだ。
    胸に秘め続けた男への想いは年を重ねるごとにどんどん大きくなり、
    思春期真っ只中を迎えた今の私は、つかさと男のふれ合いにすら嫉妬するようになってしまっている。

    「……どうした? かがみ」
    331 : 初恋クレイジー  - 2009/03/11(水) 23:21:58.43 ID:pnPc54Uo (+35,+30,+0)

    怪訝な顔でたずねてくる男。
    いけない、男の顔を見つめながら考えに没頭しちゃってた。

    「あ、ううん、何でもない」

    慌てて視線を逸らす。
    ……男は私の事、どう思ってるんだろう。
    さっきの話で赤くなるくらいなんだから、私の事を女として全く意識してないってことはないはずだけど。
    こいつのクソ真面目な性格を考えると、意識しているとは言っても
    単に年頃の男女として親しき仲にも礼儀あり程度に考えてるというのも十分以上にあり得る。
    私はそれだけじゃ嫌だ。
    特別な相手として意識してほしい、男にとっての一番になりたい、それ以外じゃ意味がない。
    考えたくもないけど、男がこの先私以外の女の子と付き合うようになり、やがて家庭を持つようになったとする。
    そうなっても私はきっと男にとっての二番ではいられると思う。
    男にとってまず家族のみんなが一番、そして私やつかさが同率で二番。
    男が他の誰かを愛するようになっても、最悪二番手の位置だけはキープできるはず。
    今までの男との付き合いはそれだけの自信を持つに値するものだ。
    きっと男は私じゃない誰かを愛しながらも、幼馴染の親友として私の事も大切に思い続けてくれるだろう。

    ――でも、そんなんじゃ足りない。幼馴染のまま終わるなんて絶対嫌だ。

    子供の頃は、ただ一緒にいられるだけで無邪気な幸せに浸っていられた。
    少し成長して、男が幸せなら私が男と結ばれない未来も受け入れられると思えた時期もあった。
    ――――更に成長した今、もうそんな我慢はできないであろう自分がいる。
    男が私以外の女と結ばれるなんて耐えられない。
    他の子なんか見ないで、私だけを見て、と、心の底からそう思う。
    ……これじゃ成長なのか退化なのかわかんないや。
    純粋に男の幸せだけを願うなら、私じゃない誰かが相手でも、男がその人を好きになったなら祝福すべきなんだろう。
    でも今の私にはそれができない、絶対に。



    ――ごめんね、男。私、凄い我侭な女だ――



    「男くーん、道こっちで言いの?」

    私達の少し前をこなたと並んで歩いているつかさが訊ねてくる

    「ああ、そこを左だ」

    「は~い、バッティングセンターなんて初めてだよ私」

    「私も初めてだよ、お金払ってまでスポーツするなんて考えた事もなかったし。
    それでねつかさ、その漫画の主人公が手をこうパンって合わせて魔法みたいな錬金術を……」

    つかさとこなたは何かの漫画の話で盛り上がっているみたい。
    ゲームセンターで一通り遊んだあと、男がバッティングセンターに寄るというので
    みんなでついていく事にしたのだ
    332 : 初恋クレイジー  - 2009/03/11(水) 23:23:03.51 ID:pnPc54Uo (+39,+30,+0)

    「でもいいのか?バッティングセンターなんか女の子が行ってもあまり面白くないんじゃ……」

    今更何を言うかこいつは、ついてくって言ったのは私達の方だってのに

    「たまにはいいわよ、私はあんたが打つとこ見てるだけでいいから遠慮なく楽しんできなさいって」

    男は今のところ大学で野球をするつもりはないらしい。私はもったいないと思うけど。
    それなのにバッティングセンターに行くっていうのは、純粋に楽しむためなんだろう。
    基本的に人に誘われなきゃ「遊び」というものをしないこいつが自分から
    そういう事をするのは珍しい。
    私はそれを見るだけでも楽しい、というか男が遊びにしろなんにしろ楽しんでると私も嬉しい。
    それに、男が一番かっこいいのは野球をしてる時なのだ。



    ――――――――――



    バッティングセンターにつくと、男は早速打ちだした。
    まあ軽々と打つ事、140kって相当速いはずなのに。さすがに野球推薦で陵桜にきただけのことはある。

    「おー、景気よく飛ばすねぇ。
    私は野球よくわかんないけど、ウチでレギュラーになるくらいだしやっぱ上手いみたいだね、男君」

    「ふふん、あったりまえじゃない。
    あいつ元々の運動神経もいいけど、何より誰にも負けないくらい努力してきたからね」

    「男君中学の時はピッチャーもやってたんだよ。
    球がすぱあん!って速くて凄かったんだから!」

    「いやなんでかがみんとつかさが自慢げ?」

    中学に上がった時に友達に誘われて始めた野球。
    あいつ自身は元々特に野球が好きだったわけじゃない、友達に一緒に野球部に入ってくれと頼まれたから始めただけ。
    多分最初に誘われたのがサッカー部ならサッカー部に、茶道部なら茶道部に入っていただろう。
    うちの中学に茶道部なんてなかったけど。

    そんなふうにただ誘われるままに始めた野球だけど、その野球に男は誰より真剣に取り組んだ。
    団体競技だから自分が下手なことでチームメイトに迷惑かけられない、とか言って。
    ほんっと真面目なんだから、まあ男のこういう部分はただ真面目なだけってのとも違うんだけど。
    男が野球を始めてからは一緒にいられる時間が激減して、正直不満に思った事もある。
    でも今思うとあいつが野球始めたのはやっぱりいい事だったんだなって思える。
    野球してる時や、野球の話をしてる時、男は凄く楽しそうだから。

    ……などと考えてるうちに、とりあえず一回分を打ち終え男がケージから出てくる

    「お疲れ、さすがじゃない。ゲームセンターでの汚名挽回ってとこね」

    「やっぱり男君凄いね! 私なんか外で見てるだけでも球の速さにびっくりしちゃったよ」
    333 : 初恋クレイジー  - 2009/03/11(水) 23:24:50.33 ID:pnPc54Uo (+35,+30,+0)

    「さすが野球部って感じだね」

    「い、いや。ここは変化球も球速ミックスもないからな、当然全部ストライクでくるし。
    高校で野球やってたら誰でもあれくらい打てるよ。別に凄くはないって」

    三人揃って褒められて照れてるな男。
    確かに他の人も男と同じスピードのとこで結構打ってるみたいだけど……
    男は自己評価が常にマイナスな奴なので事実なのか謙遜で言ってるだけなのか
    野球にそこまで詳しくない私じゃ判断がつかない。

    「私は野球やっててもあんな速いの絶対打てないと思うなぁ。
    あ、こなちゃんだったらもしかしたら打てるかな?」

    「へ? 私?」

    「うん、こなちゃん運動凄い得意だし」

    うーん、確かにこなたなら打てるかもしんないけど。
    でもあんな小さい球を棒で打ち返すなんて、
    ちゃんと練習したならともかくいきなりやってできることじゃないと思う

    「じゃあ泉さんやってみる? 野球とかやったことは?」

    「授業でソフトやったから一応やり方はわかるよ」

    「いくらこなたでもいきなり速いとこでってのはきついでしょ、やるにしてもまずは一番遅いとこにしたら?」

    「ん~、じゃあちょっとやってみようかな。
    サンデーの某野球漫画もアニメ化に続いて映画化ゲーム化と頑張ってるしねー」



    ―――――とかいう感じでこなたが打席に立つ事になったわけなんだけど―――――



    「す、凄いじゃないか泉さん!」

    「こなちゃんすっごーい!」

    「うっそ…」

    まず90kmのケージではじめたこなたは初球から難なくジャストミート。
    その後ほとんどの球を軽々とはじき返し、なんとホームラン賞の的にまで当ててしまった。
    それどころかその後入ったさっき男がやっていた140kmのケージでも、
    さすがに男がやった時程ではないが見た感じいいっぽい打球を何度か飛ばし、結局空振りは一度もなし。
    フォームも素人目にみてもわかるほど綺麗だ。
    ……こなたの運動神経の良さは知ってたけどここまでとは……。
    これで本人の志向は完全にインドアなんだから持ち腐れにもほどがある。
    334 : 初恋クレイジー  - 2009/03/11(水) 23:26:40.41 ID:pnPc54Uo (+35,+30,+0)

    「うーん、さすがに140kmはあんま打てなかったね、男君はポンポン打ってたのに」

    「な、なに言ってるのさ! いい打球多かったし、
    ソフト部でもない女の子が140kmで空振りなしなんて時点で凄すぎだよ!
    しかも90でやったあとすぐに140でなんて、目が遅い方に慣れちゃうから
    経験者でも球速の差に初球から対応するのは結構難しいってのに……
    いやそもそも90kmだろうと普通未経験者の女の子があんな簡単に打てるもんじゃないっていうか……!
    ああもうなんか凄すぎてどこから褒めたらいいかわからない!」

    「あうう、男君や、そこまで褒められるとさすがの私も照れちゃうんだぜ」

    「いや本当に凄いよ泉さん! なんで運動部に入ってないのさ!?」

    「部活なんてやったらアニメ見れなくなるもん、そもそも運動自体好きってわけじゃないんだよねぇ」

    「もったいなさすぎだよ!」

    ……男のテンションがえらいことになってる

    「男君凄い興奮してるね、あんなとこ見たの久しぶり」

    「……そうね」

    本当に久しぶりだ、特にあいつどっちかというと人見知り……とは違うけど、
    基本的に人に対して踏み込もうとしない奴だし。
    こんなに感情を露わにして接するのは、最近じゃ私達柊家の面々以外だと野球部仲間くらいのものだ。
    まして知り合って間もない女の子が相手でこんなふうになるなんて、それこそ初めてと言ってもいいかもしれない。

    「ちょっと男、いい加減落ち着きなさいよ」

    「落ち着いてらんないだろ! 極上の才能が磨かれもせず埋もれてるんだぞ!」

    む……な、なによ。こなたばっかり褒めちゃって。
    大体あんた最近こなたにお弁当作ったりしちゃってさ……
    野球部の男友達にも似たような感じで世話焼いてたのは知ってるし、
    あんたはそういう奴だって、こなたに対して何か思う所があってやってるわけじゃないって、
    頭ではわかってる。
    わかってるけど……感情まで納得させられるほど私は大人じゃないんだ。
    それを見てる私がどういう思いでいるかわかってんの……!?
    ってこいつがわかってるわけなんかないんだけど。

    私だって、こなた程じゃないけどスポーツは得意な方だし……私だって……!

    「……私もやる」

    「え?」

    「私も、そこでやる」
    335 : 初恋クレイジー  - 2009/03/11(水) 23:29:03.52 ID:pnPc54Uo (+35,+30,+0)

    「そこって140でか? ……正直厳しいと思うぞ。かがみ、前やった時90のとこでもろくに当たらなかったじゃないか」

    「え、お姉ちゃんバッティングセンター来たことあるの? ……男君と?」

    「ああ、前たまたま帰りが一緒になった時にな……ってかがみ、だから待てって」

    「いいから、あんたはそこで見てなさい! やってやるわよ! 私だって…!」

    「ど、どったの? かがみん。目が怖いよ……?」

    見てなさいよ男!



    ――――まあ、どれだけ意気込んだところで無理なものは無理なわけで
    結局私の挑戦は一球もバットにかすることすらなく終わったのだった。
    まぐれでもいいから一回くらい当たれっての!

    「しょ、しょうがないよお姉ちゃん、こんな速いの打てない方が普通だって」

    「そ、そうそうかがみん。私が打てたのはたまたまだよ」

    「いいよ……慰めてくれなくても……」

    つかさに続きこなたまでもが、らしくもなく本気で心配した様子でフォローしてくる。
    そんな落ち込んでるように見えるんだろうか私……見えるんだろうな。
    都合20球、一度も当たることなく延々と空振りを繰り返し続けたのだ。
    外から見た私はどれだけ哀れに映ったことか。
    最初は茶化してたこなたや、応援してくれてたつかさも段々静かになって
    徐々に空気がなんとも言えない微妙なものになってくし……。
    そしてその空気の中扇風機の真似事を続ける私、途中でちょっと泣きそうになったわよ。
    ――まあ、それでもなんで最後まで続けたかって言うと――

    「残念だったな、でもいいセンいってたよ。かがみ昔から運動も得意だもんな」

    微妙な空気をものともせずこいつが色々アドバイスとばしてきたからで。
    最初はやめとけなんて言っておきながら、
    いざ私が打席に入ったらなんとか打たせようと男は頑張ってくれて。
    後ろからとんでくる男の声を聴いてると
    なんか男の意識の全てが私に向いてるって感じられて、やめるにやめられなかった。
    というかやめたくなかった。

    「しかしかがみが野球に興味あったとは驚いたな、上手くなりたいならいつでも教えるぞ」

    んー……それはちょっと違うかな、まああんたの野球話に付き合うために少しは勉強してるけど。

    「いいって、そういうわけじゃないから」
    336 : 初恋クレイジー  - 2009/03/11(水) 23:30:30.80 ID:pnPc54Uo (+35,+30,+0)

    野球自体に特別興味があるわけじゃない、あんたがやってる時は別だけど。
    今だって上手くなりたくてやったわけじゃない、
    ただあんたに褒められてるこなたが羨ましくて、黙ってられなかっただけ

    ……とか言ったら、こいつはどんな顔するんだろう

    「そうか、残念。…じゃあそろそろ帰るか」

    ぽん、と頭に手を乗せてくる男。
    む……こいつ最近これよくやるのよね。高さがちょうどいいとか言って。
    ちょっと大きくなったからって生意気な、昔は私のほうがしてたことなのに。
    ……まあ嬉しいからいいんだけどさ

    「ん、行きますか。こなたもつかさも、もういいでしょ?」

    「う、うん。私はいいよ」

    「私も。……かがみんも機嫌直ったみたいだしねぇ~」

    ……なにか含みのありそうな顔で言ってくるこなたはスルースルー

    「ああそうだ、泉さん、さっきホームラン賞の的に当てただろ。景品もらえるよ」

    「へ、そうなの?」

    「ああ、前来た時男も当ててもらってたわね。あまり期待しないほうがいいわよこなた。
    景品っていってもそんなにいい物ないから」

    ちなみに男はどこにでもあるようなキーホルダーをもらって、……それを私にくれてたりする。
    男がくれたっていうだけで「どこにでもあるようなキーホルダー」が
    輝いて見えてしまう辺り、私も単純というかなんというか。
    私やつかさは、そういう突発的な物にしろきちんとした物にしろ、
    割と頻繁に男から贈り物をもらっていて、部屋にはそれらの物が溢れている。
    まあプレゼントをくれるっていっても、男の場合色めいた意図なんかなく
    純然たる感謝の気持ちしか込められてないんだろうけどさ……。



    わかってるけど、ちょっとぐらいは期待してもいいよね、男――


    337 : 以下、VIPにか - 2009/03/11(水) 23:36:48.75 ID:NoBx1tco (+36,+29,-18)
    >>332の汚名挽回ってとこ、名誉挽回か汚名返上の誤植かな
    とりあえず投下乙
    338 : 初恋クレイジー  - 2009/03/11(水) 23:44:31.62 ID:pnPc54Uo (+39,+30,-78)
    以上です、続きます。
    今回の話は同じ日の中でこの後跨って続くので一応前編としました。
    あと今後視点変更が多くなります。
    かがみんの一人称での語りに違和感感じられた方おりましたらすいませんです。

    >>337
    感想どもです。
    終了宣言遅れて申し訳ないです。
    汚名挽回は素でミスりましたww
    マジ恥ずかしいです、顔真っ赤です。二度とやらんように気をつけます
    339 : 以下、VIPにか - 2009/03/12(木) 00:20:08.55 ID:on5UjeM0 (+24,+29,-10)
    乙カレー

    既に少し病んでる感じが堪らない
    かがみんかわいいよかがみん
    340 : 以下、VIPにか - 2009/03/12(木) 07:54:53.25 ID:4aD59IEo (+24,+29,-12)
    乙です
    前半読んでると病むのはつかさかと思ってたけど
    かがみが怪しくなってきてるな・・
    341 : 以下、VIPにか - 2009/03/12(木) 16:38:52.46 ID:xaSHyos0 (+19,+29,-5)

    二人とも病んだりしてww
    342 : 以下、VIPにか - 2009/03/12(木) 22:13:09.48 ID:Q29sX2Uo (+24,+29,-12)
    乙!
    かがみんいじらしい
    それと、つかさが静かなのがとても怖いww
    楽しみにしてます
    343 : 以下、VIPにか - 2009/03/21(土) 00:28:54.92 ID:OtKS5kco (+24,+29,-2)
    初恋クレイジー続きいきます。
    344 : 初恋クレイジーそ - 2009/03/21(土) 00:30:28.17 ID:OtKS5kco (+33,+30,+0)


    Side男


    バッティングセンターを出た俺達はそのまま帰路につき、今は電車の中だ。
    今日は結構遊んじゃったし、この後は気合入れて勉強しないとな。

    「ねえねえ男君、今日はどうするの? うちくる? 
    お母さん達には今日男君くるかもって言ってあるから大丈夫だよ」

    最近バイトのない日は、図書館が閉まったあとも、
    柊家にお邪魔してかがみとつかさと一緒に遅くまで勉強をしている。

    ただ、勉強するだけならまだしもその度なんだかんだで夕飯までご馳走になってしまっているのだ。
    正直それはいい加減どうかと思う。
    いくら付き合いが長くおじさん達とも仲良くさせてもらっているとはいえ、
    あまり頻繁に夕飯の席にお邪魔するのはさすがに迷惑だろう。
    一人分の食費というのも長く続けば馬鹿にならないし

    「あ、ああ。お邪魔しようと思ってるけど。一度帰って夕飯食べてから―――」

    「晩御飯はうちで食べるよね、私つくるから!」

    輝くような笑顔で言うつかさ。まずい、このままだといつもみたいに押し切られる

    「あー、つかさ? いいって、迷惑だろうし夕飯は自分で……」

    「何がいい? こないだはお魚だったから今日はお肉にしようと思ってるんだけど。
    ひき肉あるからハンバーグとかどうかな?」

    「いやだからつかさ……」

    「もう、今更遠慮なんかすんな。うちの誰も男がきて迷惑だなんて思ってないから。
    ていうかあんた、高校入ってからあんまうちに顔出さなくなってたから心配してたのよ、お父さんたち。
    最近またよく来るようになったんで元気なとこ見れて安心したって言ってたわ」

    「そっか、それは嬉しいな。
    でも甘えすぎるのはやっぱよくないような…」

    「男君…うちでご飯食べるの嫌なのかな…?」

    う、つかさが悲しげな表情で見上げてくる。
    ……つかさにそんな顔をされてしまうと断るに断れない。
    はぁ…意思弱いな、俺

    「…じゃあ、悪いが頼む、面倒かけてごめんな」

    「うん、任せて!」
    345 : 初恋クレイジーそ - 2009/03/21(土) 00:31:53.01 ID:OtKS5kco (+35,+30,+0)

    「なになに男君。これからかがみ達の家いくの?」

    「ああ、勉強しにね。教えてもらえる相手がいると効率が違うし」

    「はー、遊んだあとなのに元気だねぇ。さすが受験生」

    「遊んじゃったからこそ、な。進学希望の身としては頑張らないとさ」

    「ていうかなにがさすが受験生、よ。あんたも同じでしょーに。
    こなたもいい加減進路どうするのか決めといた方がいいわよ、進学するつもりあるなら私も勉強手伝うからさ。
    せっかくみんなで集まって勉強してるんだから、宿題だけじゃなく受験勉強もやっときなさいよ」

    「むぅ、進路についてはまだなんともねぇ」

    「いやさすがにまだとか言ってられる時期じゃないわよ……?」

    「泉さんなら今からでもスポーツ系の道に進めるんじゃないか?
    専門的にやるならさすがに種目は限られそうだけど、体格的に」

    「ほほぅ、男君。それはサイズのミニマムさを気にしている私への挑戦かな…?」

    「いっ!? あ、いや、そういうんじゃなくてさ……。ごめん、無神経だった」

    しまった、傷つけてしまったか、
    俺は人の心中を察するのがどうも苦手なので
    発言にはなるべく気をつけているのだが…悪いことをしてしまった。

    「あっはっは、冗談だからそんなマジになって謝んなくてもいいよ~。
    悪気ないのはわかってるし、そもそも体小さいことそんな深刻に悩んでるわけでもないからさ。
    むしろ今の世の中こういうニーズが急速拡大中なんだZE!」

    ビシっと親指立てて誇らしげに言う泉さん、こういうニーズってなんだろう

    「しかしあれだね、妙に生真面目だったり、かと思えばバッティングセンターでの意外なはしゃぎっぷりといい、
    男君てば体大きくて顔もいかにも体育会系って感じなのに、
    見かけによらずイジリ甲斐があるというか、意外にかわいいとこもあるんだねぇ、」

    「ぶっ……か、かわいい? そ、そうかな」

    柊家の面々にはたまにそう言われるが、知り合って間もない相手、しかも女の子に言われるとは…。
    俺みたいなうすらでかい若い男がかわいいってのは、正直気持ち悪いだけじゃないだろうか

    「でしょーこなちゃん。男君ってばこう見えて結構かわいいとこあるんだよ」

    正直つかさにそう言われると複雑極まりないわけだが、色んな意味で…。
    というか、かわいいと言うならつかさにかがみに泉さん、高翌良さんと、
    みんなの方が余程かわいいだろうに、真っ当な意味で。
    346 : 初恋クレイジーそ - 2009/03/21(土) 00:32:36.31 ID:OtKS5kco (+35,+30,+0)

    「うむ、男君が女の子なら外見と中身のギャップ萌えとして十分成立するかも。
    あ、今のままでもアブノーマルな性癖の漢(おとこ)達にはウケたりして。
    男君後ろには気をつけた方がいいかもね」

    「男に萌えって言葉は似あわなすぎると思うわよー」

    「なんかよくわかんないけど、つかさも泉さんもかわいいってのは勘弁してくれ……」

    「あ、そだ。その泉さん、ってのさ、いい加減やめない?」

    「……? やめるって?」

    「そろそろそんなよそよそしい呼び方やめよう、って事。こなた、でいいよ
    私も男って呼び捨てにさせてもらうし」

    「え、そ、そうか?」

    こなた、って名前を呼び捨てか。
    今までかがみとつかさ以外の女の子をそう呼んだことないからな。
    少し躊躇してしまうというか……

    「えっと…どう思う? かがみ」

    「…なんで私にふる」

    「…確かに」

    なんでかがみにきいてんだ俺は。
    なぜかとっさにかがみの許可を得なければ、という考えが頭に浮かんだ

    「やっぱマジメくんだねえ、男ってば。
    そんな深く考えることじゃないって、ほれほれ、こ・な・た。復唱要求!」

    「こ、こなた」

    「よしよし、よくできました男!」

    慣れない事なので少し恥ずかしさはあるが、
    泉さん…じゃなくてこなたがそうするよう言ってるんだし、これでいいか

    「お、駅ついた。んじゃーね、かがみ、つかさ、男、また明日―!」

    「……ん、じゃあね」

    「ま、またね。こなちゃん」

    「気をつけてな」
    347 : 初恋クレイジーそ - 2009/03/21(土) 00:33:32.73 ID:OtKS5kco (+35,+30,+0)

    挨拶を残し軽やかな足取りで去っていくこなた。
    俺は人付き合いを上手くこなせる方ではないので、
    ああやって向こうから踏み込んできてくれる人はありがたいな。

    「……と、そうだ、つかさ。結局夕飯何にするんだ?」

    「――――え? あ、えと。
    ハ、ハンバーグにしようかなって。男君もいいかな?」

    「もちろん文句なんてないよ、ハンバーグなら俺も全工程手伝えるしな」

    柊家で夕飯を頂く時は支度の手伝いをしている。
    しかし俺とつかさだと腕に差があるので
    俺が得意じゃないメニューだとあまり出番がなかったりもするのだ。
    つかさの方が美味しい物を作れるのに、俺が出しゃばる事で
    ランクの落ちる物をおじさん達に食べさせるような事になっちゃ本末転倒なのである。
    俺が作り慣れてる料理なら一応おじさん達に出しても恥ずかしくない程度には仕上げられるのだが。
    その点ハンバーグなら問題なしだ。
    肉料理は特に好きなので、自分でもよく作るから十分な慣れがある。

    「あ、今日は私一人に任せてくれないかな?
    男君はゆっくりしてて」

    「え? いやでも」

    「いいからいいから」

    む、これは譲ってくれない時の目だな。

    「う…ん、でもなぁ、よそ様の夕食にお邪魔するというのに何も手伝わないってわけにも――。
    あたっ」

    いきなり脳天にチョップをかましてくるかがみ、わざわざ背伸びしてまで何してくれてんだ

    「こーら、誰がよそ様かっ、よりによって私達に対して。
    水臭いこと言ってんじゃないの、殴るわよ」

    「な、殴ってから言うな」

    一応突っ込んでみるけど―――。
    うん、今のは俺が悪かったか。

    「お姉ちゃんの言う通りだよ、男君。お願いだからそんな寂しいこと言わないでほしいな」

    つかさも、穏やかで優しい彼女にしては珍しい、厳しさを含んだ表情でそう言ってくる。
    ―――二人の言う通りだな、こんな俺に何年も付き合ってくれる柊家をよそ様扱いなんて失礼だった。
    348 : 初恋クレイジーそ - 2009/03/21(土) 00:35:05.65 ID:OtKS5kco (+35,+30,-132)

    「……うん、俺が悪かった。ごめんな。あと、ありがとう。二人共」

    「ん、わかればよろしい」

    「ふふ、反省してね、男君」

    一転まばゆい笑顔でそう言ってくれるかがみとつかさ。
    ―――本当に眩しいな。
    いつだってそうだった。
    かがみとつかさは、こんな俺を本当の家族のように扱ってくれる。
    物心ついた頃からずっと傍にいてくれた二人にどれだけ助けられたことか。
    二人がいなかったら俺はどうなってたんだろう、と思う。

    「じゃあお詫びに今日は私一人に任せてね、
    期待しててね男君、すっごく美味しいハンバーグ作っちゃうんだから!」

    「お詫びに手伝いをやめるってのもおかしい話だな」

    思わず苦笑する、まあつかさが任せてほしいと言ってるんだから何か理由があるのだろう。
    ……あ、もしかして手伝いながらつかさの技術盗もうとしてるのバレたかな。
    349 : 初恋クレイジーそ - 2009/03/21(土) 00:36:31.77 ID:OtKS5kco (+35,+30,+0)


    Side つかさ


    家についた私はさっそく晩御飯の支度に取り掛かった。
    男君がうちに来る日は、私が夕食当番。
    いつもは男君も手伝ってくれて、二人並んで台所に立つんだけど、
    今日は私一人に任せてもらった。
    肩が触れ合うような距離で男君と一緒に料理を作る時間はとてもとても幸せで、
    そっちも捨てがたいんだけど……。
    今日は久しぶりに、最初から最後まで私が一人で作る、私の料理を男君に食べてもらいたくなった。
    手伝ってもらうと、男君てば「自分の分は自分で作るよ」なんて言ってぱぱっと作っちゃうから
    私の料理を食べてもらえない事も多いんだよね。
    しかも男君遠慮して自分の分は少なめにつくるし。
    今日は私が男君の分も作るんだからたくさん用意してあげなきゃ。
    男君ほんとはいっぱい食べるんだから。
    いっぱい食べていっぱい運動してるからあんなに大きくなったのかな?

    ――――こなちゃん、今日はとうとう男君と名前で呼び合うようになってたなぁ。
    まだ会って一月も経ってないのに。
    今まで男君に名前を呼び捨てにされる女の子は、私とお姉ちゃんだけだったんだけどな。
    それにこなちゃん、最近よく男君にお弁当作ってもらってもいるし……。
    ――――でも、こなちゃんに関しては大丈夫かな。
    こなちゃんが男の子を好きになるっていうのも正直想像つかないし、
    なにより、お弁当作ったりしてるとはいえ男君にそういう気はないはず。
    男君は誰にでもあれくらい親切にする、下心とか一切なく。
    男君の場合親切っていうのももしかしたらちょっと違うのかもしれない。
    そうするのが当然、むしろそうしなきゃいけないって思ってるから。

    やっぱり、気になるのはこなちゃんとの事よりお姉ちゃんとの事だ。

    夕食作りの手伝いを遠慮してもらったので、今男君は料理ができるまでの間
    お姉ちゃんの部屋で勉強してる―――お姉ちゃんと、二人っきりで。
    そんな状況が生まれたのは私が男君の手伝いを断ったからで、自業自得。
    わかってはいるけど、お姉ちゃんを羨ましく思う。


    私もお姉ちゃんも、男君が好き。
    でも私もお姉ちゃんも、暗黙の了解でそのことにはお互い一切触れずに今まで過ごしてきた。
    私とお姉ちゃんに男君を加えた、三つ子の兄妹みたいに、三人仲良く。
    男君への、ただの兄妹に対するものをとっくに越えた気持ちを抱えながら、
    男君を、独り占めしたいという想いを隠しながら。

    私はそのままでもいいと思っていた、たとえいつかお姉ちゃんが気持ちを打ち明けて、
    ……男君がそれを受け入れることがあっても……私は、自分の気持ちは胸にしまったままでいようって、
    それでいいんだって、思おうとし続けてきた。

    だって私は、自慢できるものなんて何も持ってないから。せいぜいお料理が人よりできるくらい。
    比べてお姉ちゃんは運動もお勉強も得意で、そのうえ真面目でしっかりしてる。
    どっちが男君に相応しいかなんて、考えるまでもないこと。
    350 : 初恋クレイジーそ - 2009/03/21(土) 00:37:40.76 ID:OtKS5kco (+35,+30,+0)

    ……それに、まだ小さかった時、一度だけお姉ちゃんの気持ちを垣間見た事がある。
    あれは確か小学校にあがったばかりの頃、当時私はお兄ちゃんのような存在である男君が、
    本当のお兄ちゃんになってくれたらな、と思っていて、
    そのことをよくお姉ちゃんに話してた。
    そんな時、ある日お姉ちゃんは

    「私と男が結婚したら、つかさは正式に男の妹になれるわよ」

    って言った。
    ―――その言葉を無邪気に喜んだ私に「つかさは……それでいいの?」とも。
    その後お姉ちゃんはすぐに、冗談よ、って付け足したけど、
    その時は、お姉ちゃんがなんで「それでいいの?」なんてきいてきたのかわからなかった。
    男の子を好きになる事の意味を知らなかった私は、
    大好きなお姉ちゃんと大好きな男君が結婚して、私は二人の妹になる、
    それは私にとっても幸せなことなんだって、ただ素直にそう思ってた。

    私が男君のことを、男の子として好きになっているということにはっきり気付いたのは
    もう少しあとのこと。
    そしてその時初めて、お姉ちゃんの男君への想いも正確に理解できた。

    ―――でも、お姉ちゃんはあの頃から、私の「好き」が幼すぎた頃から
    君のことが「好き」だった。

    ……他の何でも勝てないのに、男君への気持ちでまで負けてる私が、お姉ちゃんに勝てるはずがない。
    だから私は今のままでいい。少なくともお姉ちゃんが男君を好きでい続ける限りは、私は妹のままでいい。
    そう自分に言い聞かせ続けてきた、


    ―――はずだったのに。


    年を重ねるごとに、体と共に心も成長していく。
    私の「好き」も、どんどん大きくなっていく。
    大きくなりすぎた「好き」は、私に我慢を許さない。
    今だって男君とお姉ちゃんが二人きりでいることを考えるだけで、胸が痛い。

    ―――そういえば、男君こなちゃんを名前で呼ぶかどうかについて、お姉ちゃんに意見を求めてた。
    なんでお姉ちゃんに聞いたんだろう。
    男君本人も理由はわかってない様子で、ふと出ただけの言葉だったみたいだけど。
    ――――もしかして、もしかしてだけど、
    好きな女の子の前で、他の女の子と必要以上に親しくする事に対する抵抗、
    そんなものを、あの時無意識のうちに男君は感じたのかもしれない。

    今の時点で男君がお姉ちゃんの事を異性として明確に好きになっているとは思わない。
    長い付き合いだもん、そうじゃないことくらい見ていればわかる。
    でも、完全に自覚してるわけじゃなくても、男君の心のどこかにお姉ちゃんへの「好き」が、
    とうとう生まれだしてるのかも……。
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