のくす牧場
コンテンツ
牧場内検索
カウンタ
総計:127,062,785人
昨日:no data人
今日:
最近の注目
人気の最安値情報

    元スレ久「あんたが三年生で良かった」京太郎「……お別れだな」

    SS+覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : - 京太郎 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
    ←前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitter

    551 = 1 :



    京太郎「……るせぇ」

    京太郎「うるせぇうるせぇうるせぇ!」

    京太郎「どうしてこんなとこまで来るんだよ! ずっと日本にいればいいのによ!」

    京太郎「綺麗で輝いてるんだよ! 日本での思い出は! だから汚したくないし帰れないんだよ!」

    京太郎「それなのにわざわざ俺のとこまで来やがって……!」グイッ


    「ちょっ、なにするのよ……!」

    「京ちゃん、痛い」

    京太郎「そこまで言うんだったら二人まとめて食い物にしてやるよ」


    京太郎「――だから、蹴るなり殴るなり刺すなり抵抗してくれよ」

    京太郎「お願いだからさ……」


    「京太郎……」

    「京ちゃん……」


    552 = 1 :




    「ん……」

    「きょう、ちゃん……」


    京太郎「バカだよ、二人とも」

    京太郎「なんで抵抗しなかったんだよ」

    京太郎「怪我人に二人がかりで勝てないはずないだろ」

    京太郎「なんで俺に、一番辛いことやらせるんだよ……」

    京太郎「……ダメだ。この二人と一緒にいたら」

    京太郎「あの頃の自分に、どうしようもなく戻りたくなる」

    京太郎「もう戻れやしないのに……」


    京太郎「だから……今度こそさよならだ」


    553 = 1 :




    「んんっ……あれ、京太郎?」

    「クリームは植物性より動物性の方が……」ムニャムニャ

    「起きろっ!」グニィ

    「痛いっ」

    「京太郎がいない!」

    「京ちゃんならさっきまでケーキを……」

    「それはあんたの夢の中!」


    554 = 1 :




    「あーもう、あいつどこ行ったのよ……!」

    「……匂いもわからない」クンクン

    「あんたは犬か!」

    「とりあえず、手分けして探したほうが――」


    「よう、探しものかい?」


    「あなたは……」

    「ごめんなさい、今日は本当に付き合ってる時間がないの」

    「その前に、アンタらはキョウの知り合いってことでいいのかい?」

    「そうよ、だから探してるの。これ以上時間を取らせないで」

    「……待って、何か知ってるの?」

    「ああ、キョウとはそれなりの付き合いだからな」

    「教えて」

    「案内してやるよ。車に乗りな」

    「わかった」

    「ちょっと待った、これって――」

    555 = 1 :



    ――カチッ


    「リボルバーだ。古いが、当たれば痛いどころじゃないってのはわかるだろ?」

    「これだから銃社会は……!」

    「乗るのか? 乗らねぇのか?」

    「……この場で私たちを撃ったら、それこそあなたもただでは済まない」

    「そう、オレはお縄について、下手すりゃ死刑であの世行きだ」


    「だけどよ、それがどうした?」


    「アンタらが死ねば、あの野郎への最高のプレゼントになるってもんだ」

    「オレの第一希望はもちろん、自分の手でアイツをぶちのめすことだけどよ」


    「……ダメね、こっちの話は通じそうにない」

    「……わかった」


    「もう一度聞くぜ……乗るのか? 乗らねぇのか?」


    556 = 1 :




    京太郎「シャツと飯代でほとんど消えたな……」

    京太郎「まぁ、移動は最悪ヒッチハイクでなんとかなるか」

    京太郎「……怒ってるだろうな」

    京太郎「いや、俺にはもう関係ない」

    京太郎「今は少しでも遠くに――」


    「よう、乗ってくかい?」


    京太郎「あんたは……」

    「ただし代金はいただくぜ」

    京太郎「あいにく持ち合わせがないんだよ」

    「そうか……なら、こんなのに興味はねぇか?」ピラッ

    京太郎「……趣味が悪い写真だな」

    「今はまだ縛られてるだけだ。時間が経てばどうなるかは保証できないけどよ」

    京太郎「赤の他人がどうなろうと関係ない」

    「……そうかい。気が変わったんならいつものとこに遊びに来な」

    557 = 1 :



    京太郎「……」


    京太郎(俺はもうどのみちあの二人と会うことはない)

    京太郎(だからどうなろうと関係ない……そうだろ)

    京太郎(だけど、考えれば考えるほど……)


    『京太郎』

    『京ちゃん』


    京太郎「ダメだこりゃ」

    京太郎「来るなって思ってるのに流れ込んでくる」

    京太郎「まったく、ホントにあの二人はどうしようもないな……」

    京太郎「……一番どうしようもないのは俺だけどな」


    558 = 1 :




    「いたたたた……絶対これ跡残る」

    「んっ……全然解けない」

    「あんた、あのギュルギュルってやつでどうにかならないの?」

    「無理。こんな状況じゃ使えない」

    「……こんな状況じゃなかったら使えるってことが驚きね」


    「あいつ、来ると思う?」

    「あなたはどう思うの?」

    「そうねぇ……あ、せっかくだし賭けてみない?」

    「京ちゃんが来るか来ないか?」

    「負けた方は大人しく身を引くってことで」

    「うん、それで構わない」

    「じゃあ、同時に言うわよ」

    「わかった」


    「京太郎は――」

    「京ちゃんは――」


    「「――絶対来る!」」


    「……不成立じゃない」

    「あなたが変えればいい」

    「変えるわけないでしょ」


    559 = 1 :




    「……来ねぇ」

    「せっかく舞台を整えてやったってのに……来やがらねぇ」

    「~~っ、舐めやがってクソがぁっ!!」ガンッ


    京太郎「お邪魔するぜ」


    「はぁ、はぁ……遅いお出ましじゃねェか」

    京太郎「ああ、別にあんたと遊ぶ気はない。忘れ物を取りに来ただけだ」

    「……そうかよ。じゃああのジャップの女どもは好きにさせてもらうぜ」

    京太郎「待てよ」

    「なんだぁ? さっきは関係ねぇって言ってたよな?」

    京太郎「ああ、さっきはな……だけど今は違う」


    京太郎「二人とも俺の女だ。手を出すっていうなら覚悟しとけ」

    560 = 1 :



    「ほぉ? ……言うじゃねえか、このクソジャップがよぉっ!」

    京太郎「騒ぐなよ。おとなしく返すなら俺もおとなしく帰る」

    「テメェをぶちのめすか、あの女どもをいたぶってやんなきゃコッチの気がすまねぇんだよ!!」

    京太郎「だったらどうする? 怪我人相手に殴り合いか?」

    「ハッ、そんな結果が見えた勝負はしねぇよ……これだ」ゴトッ

    京太郎「リボルバー……ロシアンルーレットか?」

    「六発入りで一発だけ実弾だ。先にくたばった方が負けっていうわかりやすいルールだ」

    京太郎「……ちょっといいか?」

    「あぁ? 平和ボケしたジャップにはヘヴィか?」

    京太郎「いいや、軽すぎる」


    京太郎「俺が先に五回引く」


    「……正気か、テメェ」

    京太郎「俺の勝ち筋は一本、あんたの勝ち筋は五本。有利なのはどっちかは考えなくてもわかるよな?」

    「……」

    京太郎「それとも、俺がビビって逃げるのに期待してたのか?」

    「――ッ、いいじゃねぇか、乗ってやるよ!」

    京太郎「じゃあ、行くぜ」カラカラカラ

    561 = 1 :



    ――カチッ


    「チッ、ハズレか」

    京太郎「慌てんなよ。まだ一発目だ」


    ――カチッ


    「運の良い野郎だぜ」

    京太郎「あんたも知ってるだろ。今の俺の取り柄はそれぐらいだってな」


    ――カチッ


    「お、おい……もう引けねぇってんなら、そこでやめてもいいんだぜ?」

    京太郎「やめる? 冗談だろ」


    ――カチッ


    「やめろ、やめろやめろやめろぉ……!」

    京太郎「今の俺には――」


    ――カチッ


    京太郎「――幸運の女神が、二人もついてるんだから」

    562 = 1 :



    京太郎「さぁ、今度はあんたの番だ」ゴトッ

    「あ、ああ……」カタカタ

    京太郎「どうした、震えてるぞ? 引く度胸がないなら、ここで終わりにしたっていいんだけどな」

    「――っ、ふざけるなっ!!」グイッ


    京太郎「……結果の見えた勝負はしないんじゃないのか?」

    「今はテメェをブチのめせればそれで十分なんだよぉ!」ブンッ

    京太郎「――っ」


    ――ドサッ


    「あ、が……な、なんで」

    京太郎「たしかに結果の見えた勝負だったな」

    「な、なにしやがった……」

    京太郎「あんたみたいな力任せが、たとえ怪我してようが執事殺法に勝てるわけないだろ」

    「なんだそりゃ……」

    京太郎「せめて岩を素手で砕けるようになってから出直してこい」

    「ふざけたことぬかしやがって――がっ」

    京太郎「ほら、二人はどこだ」

    「……奥の部屋だ」

    京太郎「どーも」

    「……」

    563 = 1 :



    (チクショウ……!)

    (あんな、ちょっとツイてるだけのクソジャップに!)

    (許せねぇ、ぶっ殺してやる……!)


    「ヘイ、キョウ!」

    京太郎「あん?」

    「最後の一発、受け取りやがれ……!」


    ――カチッ


    「ふ、不発……?」

    京太郎「言ったろ、幸運の女神が二人もいるって……よぉ!」ゴスッ

    「ぐぁっ……」

    京太郎「しばらく寝てろ」


    564 = 1 :




    京太郎「大丈夫だったか、二人とも」

    「平気、京ちゃんが助けてくれたから」

    「縛られてた腕が痛いくらいかな」

    京太郎「言っておくけど、自業自得だ。俺は帰れって言ったんだからな」

    「でも、ちゃんと来てくれた……違う?」

    京太郎「……これっきりだ」

    「うん、それはウソだって私にはわかってるから」

    京太郎「チッ……途中まで送ってくから、後は勝手にしてくれ」


    565 = 1 :




    京太郎「……」


    「すごい広い」

    「見渡す限りの荒野って、日本じゃまず見られないんじゃない?」

    京太郎「……どこまでついてくるんだよ」

    「どこまでも」

    「あんたが諦めるまで」

    京太郎「ついてくるなよ」

    「イヤ」

    「それより車ないの? 絶対徒歩で移動する距離じゃないでしょ」

    京太郎「知るかよ。疲れたんならいい加減日本に帰れ」

    「帰れだって。帰ったら?」

    「それよりお菓子の備蓄尽きてるんじゃないの?」

    「あ……」

    「どこかで補充してきたら? 待たないけど」

    「むっ」

    566 = 1 :



    京太郎「やかましいな……帰れよもう」

    「京ちゃんが帰るなら」

    「というかさ、そう言って帰ると本当に思ってるの?」

    京太郎「俺とは違って向こうでの生活があるだろ」

    「そんなの知らない」

    京太郎「知らないってな……」

    「わからない? 全部かなぐり捨ててきたって言ってるの」

    京太郎「……バカだよ、二人とも」


    京太郎「俺は、きっと地獄に落ちるぞ」

    「じゃあ私もついてく」

    「しかたないから付き合ってあげるわよ」

    京太郎「……勝手にしろよ」

    567 = 1 :



    「ねぇ、どこ向かってるの?」

    京太郎「どこだっていいだろ」

    「うん、京ちゃんがいれば」

    「それであんたがいなければ最高ね」

    「それはこっちのセリフ」

    「良く言うわね。一人で来るの怖がってたくせに」

    「全部諦めようとしてた人に言われたくない」

    京太郎「……二人とも、見ない間にちょっと仲良くなったか?」


    「「そんなわけない(でしょ)!」」


    京太郎「はいはい、そーかい」




    『エンディング――追い風と太陽と、幸運の女神』

    568 = 1 :

    長い、というか長すぎる……!
    下手したら今までで最長の可能性すらありますね
    長すぎてもはや眠気とかを超越してしまいました

    ともあれ次の怜竜でひとまず最後です
    今回ほどは長くならないと思いますが

    それでは、これから朝ごはんを食べるので失礼します

    569 :



    この3人で話が始まったから、終わるのも又3人でって感じでしっくりきた

    571 :

    乙でした

    572 :


    最後の怜竜どうなる?

    573 :

    乙ですのだ!

    574 :

    へへへ。
    追いついたじぇ

    575 :

    タコス喰おうじぇ!

    576 :

    タコスよりもおもちが食べたい

    577 :

    約三週間ぶりにこんばんはー
    久しぶりにやろうかと

    それじゃあ、もうちょっとしたら始めます

    578 :

    これで最後か
    待ってる

    579 :

    んじゃ、そろそろスタートします

    580 = 1 :



    京太郎「ん~……太陽が眩しいぜ」


    「夜勤おつかれさん」

    京太郎「お、今日は早いね」

    「ちょっと早起きしちまっただけだ」

    京太郎「はは、それで出勤早めるなんて真面目だな」

    「どうせやることもないつまらない人間だよ」

    京太郎「そう言うなよ。恋人とかいねーの?」

    「生憎、遠距離だよ」

    京太郎「おいそれと会いにも行けないな」

    「お前は?」

    京太郎「毎日会ってるよ」

    「チッ、自慢かよ」

    京太郎「まぁ、毎回病院じゃムードもへったくれもないけどな」

    「病院?」

    京太郎「ああ……俺のツレ、ちょっと体悪いんだ」


    581 = 1 :




    京太郎「おはようさん」

    「んー、おそーい」

    京太郎「そう言うなって。こちとら夜勤明けだ」

    「今日のおみやげは?」

    京太郎「べったら漬」

    「なんでやねん」

    京太郎「いや、近所のおばさんから東京土産だからってもらって」

    「浮気?」

    京太郎「うちの母親より年上だぞ。どんだけストライクゾーンが広いんだよ」

    「はやりんは?」

    京太郎「全然いける」

    「ふんふん……ギルティやな」

    京太郎「夢を見るだけならタダだろっ」

    582 = 1 :



    京太郎「……それで、具合は?」

    「可もなく不可もなく?」

    京太郎「なんで疑問系よ」

    「見解の相違みたいな?」

    京太郎「つまりあれか、大丈夫って言ってるのは自分だけと」

    「や、実際問題あらへんし」

    京太郎「やっぱり自己申告は信用ならねーな」

    「じゃあ確かめて、どうぞ」

    京太郎「えー、悪いのはここですかー?」モミモミ

    「やーん、すけべー」

    583 = 1 :



    ――コンコン


    竜華「そろそろええかな?」

    「もうちょい」

    京太郎「おしまいだ」

    「えー?」

    京太郎「おとなしくしとけ。入院中だろ」

    「む~」プクー

    竜華「あはは、フグみたい。突っついてもいい?」

    「ハリセンボンやねん。触ると怪我するで」

    竜華「はいはい、お土産持ってきたから機嫌直してなー」

    「待ってました! ――って、なんでべったら漬やねん!」

    竜華「近所のおばちゃんにもらって」

    「ネタ被り!」


    京太郎(というか、出処が同じなんだよなぁ)

    584 = 1 :



    「2セットももらってどないせいっちゅーねん」

    京太郎「そりゃあ、ご飯のお供だよ。朝昼晩って」

    「まさかのべったら漬漬けかい」

    京太郎「ズケズケと言ってくれるな」

    「んー、あんまおもろくないなぁ……やり直しで」

    京太郎「なにぃ?」

    竜華「……」プルプル

    「竜華、お花摘みなら我慢せぇへんほうがええで?」

    竜華「ち、ちがっ……」

    「ならトイレ?」

    京太郎「それどっちも同じな」

    「言わぬが花」

    京太郎「お花摘みだけに?」

    「う~ん……座布団一枚っ」

    京太郎「よっしゃ」

    585 = 1 :



    竜華「ごめん、診察あるからそろそろ」

    京太郎「ん、そうか」

    「次は甘いのがええな」

    京太郎「リクエストとは生意気な」

    竜華「あはは……うん、次はケーキ買ってくる」

    「おおっ、じゃあ楽しみにしとる」

    竜華「先生の言うこと、ちゃんと聞いておとなしくしとること……ええ?」

    「べったら漬を食べるぐらいならええやんな」

    竜華「多分、それぐらいなら」

    京太郎「それじゃ俺も……」

    「えー? もう帰るん?」

    京太郎「いや、お花摘み」

    「その隠語はレディース専用やねん」

    京太郎「んー……山へ芝刈りに、とか?」

    「はい座布団没収ー」


    竜華「……」


    586 = 1 :




    京太郎「しかし医者かぁ……あらためてすごいよな」

    竜華「うん、頑張ったから」

    京太郎「勉強も運動も麻雀も強くてすごい……というかやばいってのはよく聞いたけどな」

    竜華「やばいって」

    京太郎「安心しろ。やばいやつならなんでか知り合いによくいるから」

    竜華「……須賀くん、トイレは?」

    京太郎「お前を送ってからでもいいだろ」

    竜華「別にうちは……」

    京太郎「さっき、泣きそうだったろ」

    竜華「――っ」

    京太郎「勘違いだったら悪いけどな……俺には辛そうに見えた」

    竜華「うっ、うぅ……」ポロポロ

    京太郎「……もしあいつのことなら、話してくれないか?」


    587 = 1 :




    京太郎「……」


    『……もうダメかもしれへんって』

    『治療で進行を遅らせることはできても、改善はしてへんって……』

    『入院も長いし、このままやったら……』


    「大丈夫? 胸揉む?」

    京太郎「それよりもギュってしていいか?」

    「もち。スキンシップならウェルカム」

    京太郎「ああ……」ギュッ

    「んっ」


    京太郎(俺になにができる?)

    京太郎(もう先が長くないかもしれないこいつに、なにをしてやれる?)

    京太郎(……いや、まだダメだって決まったわけじゃない)

    588 = 1 :



    「今日は情熱的やん」

    京太郎「いつも心の中ではこんなもんだよ」

    「やぁん、もしかしてケダモノになっちゃう?」

    京太郎「ここが病室じゃなきゃな」

    「じゃあお持ち帰りしてもよし」

    京太郎「良くなったらな」

    「はよ良くなれー、はよ良くなれー」

    京太郎「よし、その意気だ」

    「うーん、ニケツしたい!」

    京太郎「退院したらな」

    「じゃあ……結婚したい」

    京太郎「……退院したら、盛大に式挙げようぜ」

    「指輪は?」

    京太郎「頑張って用意する」

    「ならうちも頑張って治す」

    京太郎「ちょっと飲み物買ってくるわ」

    「ん……ふわぁ、うちはもう一眠りしとこかな」

    京太郎「ああ、おやすみ」


    589 = 1 :




    京太郎「……くそっ」ガンッ


    京太郎(何が退院したらだ……!)

    京太郎(あんな言葉、ただの逃げじゃねぇかよ!)

    京太郎(でもダメだ……あんなに辛いなんて)

    京太郎(……泣けるなら俺が泣きてぇよ)


    「あら、京太郎さん」


    京太郎「……どうも、園城寺さん」

    「そんな他人行儀な呼び方しなくてもいいんですよ?」

    京太郎「はは……お義母さんはまだ早いですから」

    「そんなことない……だってあなたは、もう何年もあの子の傍にいてくれたじゃない」

    京太郎「俺は……なにもできないですから」

    「いてくれるだけで十分ですよ」

    京太郎「……」


    京太郎(それでも、俺は……!)


    京太郎「すみません、夜勤明けなんで失礼します」

    「ごめんなさい、眠いところを引き止めてしまって」

    京太郎「いえ。それよりも、今は寝てるんでそっとしといてやってください」


    590 = 1 :




    「よう、お疲れか?」

    京太郎「ん、ああ……」

    「今日も見舞い行ってたんだろ?」

    京太郎「まあな……」


    京太郎(ここ最近、あいつの前でちゃんと笑えてるか怪しい)

    京太郎(ぎこちなくないだろうか……あいつに、心配をかけてないだろうか)

    京太郎(知らないのなら、気取られるわけには……)


    「ほら、飲めよ」

    京太郎「悪いな……えっと」

    「リュージでいい」

    京太郎「あれ、そんな名前だったっけ?」

    リュージ「昔から仲がいいやつからはそう呼ばれてんだよ」

    京太郎「……ああ、苗字と名前から取ってるのか」


    京太郎(なんか、ハギヨシさんみたいだな)

    591 = 1 :



    京太郎「じゃあ俺のことも京ちゃんでいいぜ」

    リュージ「いや、気持ち悪い」

    京太郎「当たり前だ。俺も男からそんな呼び方されたら気持ち悪い」

    リュージ「はっ、今日も夜勤だろ? 居眠りしないようにな」

    京太郎「そっちこそ、早起きしすぎて夜中に出勤するなよ」

    リュージ「言ってろよ」


    京太郎(……こういうの、なんか久しぶりだな)

    京太郎(こっちに来てから、同年代のやつと付き合う機会が減ったしな)


    「須賀くん、ちょっといいかい?」

    京太郎「はい」

    「……彼に、なにかされなかったか?」

    京太郎「なにかって……コーヒーもらったぐらいですよ」

    「そうか、ならいいんだ」

    京太郎「なにかあるんですか?」

    「その、あまり大きな声では言えないんだけどね……」


    592 = 1 :




    京太郎「暴力団、ね」


    『あくまで噂なんだけど……暴力団と付き合いがあるって』

    『もちろん噂は噂だけどね。ほら、なにか問題があった時に困るじゃないか』


    京太郎「……だからなんだってんだよ」

    京太郎「それだったら俺だって、極道の娘と友人関係だっての」

    京太郎「まったく、つまんねーこと言いやがってよ」


    「んん……もう昼?」


    京太郎「なんだ、せっかく寝顔見てたのに」

    「あかんなぁ、女子のすっぴんのぞくとか犯罪行為やで?」

    京太郎「アホ、何回一緒に寝たと思ってるんだよ」

    「はい、セクハラ発言いただきましたー」

    京太郎「おっと、これは迂闊だったな」

    「ふふん、出るとこ出たら大変なことになるやろな?」

    京太郎「マジか……見逃してくれっ、なんでもするから!」

    「ん? 今なんでもするって――けほっ、けほっ」

    京太郎「おい、大丈夫かよ」

    「けほっ……ちょい休めば――げほっ、げほっ!」

    京太郎「明らかに酷くなってるだろ! 看護師さん呼ぶからなっ」


    593 = 1 :




    京太郎「……まだか」


    『治療で進行を遅らせることはできても、改善はしてへんって……』


    京太郎(あれじゃあ、改善するどころか……)


    ――ガラッ


    京太郎「――っ、先生、あいつはっ?」

    「容態は落ち着いて、今は寝ています」

    京太郎「そうですか……」

    「ただ、徐々にですが病状は悪化の傾向にあります」

    京太郎「……やっぱり、そうなんですね」

    「……清水谷先生から聞いていましたか」

    京太郎「俺が無理に聞き出したんです」

    「彼女は園城寺さんのために医師を志したそうですね……気の毒な話だ」

    京太郎「なんで、もうダメみたいに言うんですか」

    「入院してもう数年……投薬を続けていますが、病は徐々に進行している」

    京太郎「じゃあ打つ手はないって言うんですか!?」

    「ゼロとは言えません。しかし……」

    京太郎「お金の問題だったらなんとかするし、俺にできることならなんだって……!」

    「……金銭の問題でも、あなたにどうにかできることでもないんです」


    「病気の完治の芽があるとすれば、それは……心臓の移植しかないんですよ」


    594 = 1 :




    京太郎「……なあ、清水谷」

    竜華「なに?」

    京太郎「心臓の移植って、難しいのか?」

    竜華「……先生から聞いたんやね」

    京太郎「まるで、移植には期待できないみたいな言い方だった」

    竜華「正直、難しいと思う」

    京太郎「難しい手術なのか?」

    竜華「技術的にもやけど、まずドナーが見つからへん」

    京太郎「誰でもいいってわけじゃ、ないんだよな」

    竜華「うん……合わん臓器を移植しても、ダメになるだけやから」

    京太郎「そうか……」フラッ

    竜華「帰るん?」

    京太郎「悪い、一人にしてくれ」


    595 = 1 :

    眠し……沈みます

    596 = 578 :

    寝乙

    597 :

    良い夢を見るのよ!乙!

    598 :

    ここまでのヒロイン二人エンドはハッピーエンドにはならないからこれから先もと思うと読んでて辛い

    599 :

    なんでや前回の久と照は割とハッピーだったやろが
    京太郎が自身の何かを犠牲にする傾向が高いが


    ←前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitterで / SS+一覧へ
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : - 京太郎 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。

    類似してるかもしれないスレッド


    トップメニューへ / →のくす牧場書庫について