元スレ久「あんたが三年生で良かった」京太郎「……お別れだな」
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551 = 1 :
京太郎「……るせぇ」
京太郎「うるせぇうるせぇうるせぇ!」
京太郎「どうしてこんなとこまで来るんだよ! ずっと日本にいればいいのによ!」
京太郎「綺麗で輝いてるんだよ! 日本での思い出は! だから汚したくないし帰れないんだよ!」
京太郎「それなのにわざわざ俺のとこまで来やがって……!」グイッ
久「ちょっ、なにするのよ……!」
照「京ちゃん、痛い」
京太郎「そこまで言うんだったら二人まとめて食い物にしてやるよ」
京太郎「――だから、蹴るなり殴るなり刺すなり抵抗してくれよ」
京太郎「お願いだからさ……」
久「京太郎……」
照「京ちゃん……」
552 = 1 :
久「ん……」
照「きょう、ちゃん……」
京太郎「バカだよ、二人とも」
京太郎「なんで抵抗しなかったんだよ」
京太郎「怪我人に二人がかりで勝てないはずないだろ」
京太郎「なんで俺に、一番辛いことやらせるんだよ……」
京太郎「……ダメだ。この二人と一緒にいたら」
京太郎「あの頃の自分に、どうしようもなく戻りたくなる」
京太郎「もう戻れやしないのに……」
京太郎「だから……今度こそさよならだ」
553 = 1 :
久「んんっ……あれ、京太郎?」
照「クリームは植物性より動物性の方が……」ムニャムニャ
久「起きろっ!」グニィ
照「痛いっ」
久「京太郎がいない!」
照「京ちゃんならさっきまでケーキを……」
久「それはあんたの夢の中!」
554 = 1 :
久「あーもう、あいつどこ行ったのよ……!」
照「……匂いもわからない」クンクン
久「あんたは犬か!」
照「とりあえず、手分けして探したほうが――」
「よう、探しものかい?」
照「あなたは……」
久「ごめんなさい、今日は本当に付き合ってる時間がないの」
「その前に、アンタらはキョウの知り合いってことでいいのかい?」
久「そうよ、だから探してるの。これ以上時間を取らせないで」
照「……待って、何か知ってるの?」
「ああ、キョウとはそれなりの付き合いだからな」
照「教えて」
「案内してやるよ。車に乗りな」
照「わかった」
久「ちょっと待った、これって――」
555 = 1 :
――カチッ
「リボルバーだ。古いが、当たれば痛いどころじゃないってのはわかるだろ?」
久「これだから銃社会は……!」
「乗るのか? 乗らねぇのか?」
照「……この場で私たちを撃ったら、それこそあなたもただでは済まない」
「そう、オレはお縄について、下手すりゃ死刑であの世行きだ」
「だけどよ、それがどうした?」
「アンタらが死ねば、あの野郎への最高のプレゼントになるってもんだ」
「オレの第一希望はもちろん、自分の手でアイツをぶちのめすことだけどよ」
久「……ダメね、こっちの話は通じそうにない」
照「……わかった」
「もう一度聞くぜ……乗るのか? 乗らねぇのか?」
556 = 1 :
京太郎「シャツと飯代でほとんど消えたな……」
京太郎「まぁ、移動は最悪ヒッチハイクでなんとかなるか」
京太郎「……怒ってるだろうな」
京太郎「いや、俺にはもう関係ない」
京太郎「今は少しでも遠くに――」
「よう、乗ってくかい?」
京太郎「あんたは……」
「ただし代金はいただくぜ」
京太郎「あいにく持ち合わせがないんだよ」
「そうか……なら、こんなのに興味はねぇか?」ピラッ
京太郎「……趣味が悪い写真だな」
「今はまだ縛られてるだけだ。時間が経てばどうなるかは保証できないけどよ」
京太郎「赤の他人がどうなろうと関係ない」
「……そうかい。気が変わったんならいつものとこに遊びに来な」
557 = 1 :
京太郎「……」
京太郎(俺はもうどのみちあの二人と会うことはない)
京太郎(だからどうなろうと関係ない……そうだろ)
京太郎(だけど、考えれば考えるほど……)
『京太郎』
『京ちゃん』
京太郎「ダメだこりゃ」
京太郎「来るなって思ってるのに流れ込んでくる」
京太郎「まったく、ホントにあの二人はどうしようもないな……」
京太郎「……一番どうしようもないのは俺だけどな」
558 = 1 :
久「いたたたた……絶対これ跡残る」
照「んっ……全然解けない」
久「あんた、あのギュルギュルってやつでどうにかならないの?」
照「無理。こんな状況じゃ使えない」
久「……こんな状況じゃなかったら使えるってことが驚きね」
久「あいつ、来ると思う?」
照「あなたはどう思うの?」
久「そうねぇ……あ、せっかくだし賭けてみない?」
照「京ちゃんが来るか来ないか?」
久「負けた方は大人しく身を引くってことで」
照「うん、それで構わない」
久「じゃあ、同時に言うわよ」
照「わかった」
久「京太郎は――」
照「京ちゃんは――」
「「――絶対来る!」」
久「……不成立じゃない」
照「あなたが変えればいい」
久「変えるわけないでしょ」
559 = 1 :
「……来ねぇ」
「せっかく舞台を整えてやったってのに……来やがらねぇ」
「~~っ、舐めやがってクソがぁっ!!」ガンッ
京太郎「お邪魔するぜ」
「はぁ、はぁ……遅いお出ましじゃねェか」
京太郎「ああ、別にあんたと遊ぶ気はない。忘れ物を取りに来ただけだ」
「……そうかよ。じゃああのジャップの女どもは好きにさせてもらうぜ」
京太郎「待てよ」
「なんだぁ? さっきは関係ねぇって言ってたよな?」
京太郎「ああ、さっきはな……だけど今は違う」
京太郎「二人とも俺の女だ。手を出すっていうなら覚悟しとけ」
560 = 1 :
「ほぉ? ……言うじゃねえか、このクソジャップがよぉっ!」
京太郎「騒ぐなよ。おとなしく返すなら俺もおとなしく帰る」
「テメェをぶちのめすか、あの女どもをいたぶってやんなきゃコッチの気がすまねぇんだよ!!」
京太郎「だったらどうする? 怪我人相手に殴り合いか?」
「ハッ、そんな結果が見えた勝負はしねぇよ……これだ」ゴトッ
京太郎「リボルバー……ロシアンルーレットか?」
「六発入りで一発だけ実弾だ。先にくたばった方が負けっていうわかりやすいルールだ」
京太郎「……ちょっといいか?」
「あぁ? 平和ボケしたジャップにはヘヴィか?」
京太郎「いいや、軽すぎる」
京太郎「俺が先に五回引く」
「……正気か、テメェ」
京太郎「俺の勝ち筋は一本、あんたの勝ち筋は五本。有利なのはどっちかは考えなくてもわかるよな?」
「……」
京太郎「それとも、俺がビビって逃げるのに期待してたのか?」
「――ッ、いいじゃねぇか、乗ってやるよ!」
京太郎「じゃあ、行くぜ」カラカラカラ
561 = 1 :
――カチッ
「チッ、ハズレか」
京太郎「慌てんなよ。まだ一発目だ」
――カチッ
「運の良い野郎だぜ」
京太郎「あんたも知ってるだろ。今の俺の取り柄はそれぐらいだってな」
――カチッ
「お、おい……もう引けねぇってんなら、そこでやめてもいいんだぜ?」
京太郎「やめる? 冗談だろ」
――カチッ
「やめろ、やめろやめろやめろぉ……!」
京太郎「今の俺には――」
――カチッ
京太郎「――幸運の女神が、二人もついてるんだから」
562 = 1 :
京太郎「さぁ、今度はあんたの番だ」ゴトッ
「あ、ああ……」カタカタ
京太郎「どうした、震えてるぞ? 引く度胸がないなら、ここで終わりにしたっていいんだけどな」
「――っ、ふざけるなっ!!」グイッ
京太郎「……結果の見えた勝負はしないんじゃないのか?」
「今はテメェをブチのめせればそれで十分なんだよぉ!」ブンッ
京太郎「――っ」
――ドサッ
「あ、が……な、なんで」
京太郎「たしかに結果の見えた勝負だったな」
「な、なにしやがった……」
京太郎「あんたみたいな力任せが、たとえ怪我してようが執事殺法に勝てるわけないだろ」
「なんだそりゃ……」
京太郎「せめて岩を素手で砕けるようになってから出直してこい」
「ふざけたことぬかしやがって――がっ」
京太郎「ほら、二人はどこだ」
「……奥の部屋だ」
京太郎「どーも」
「……」
563 = 1 :
(チクショウ……!)
(あんな、ちょっとツイてるだけのクソジャップに!)
(許せねぇ、ぶっ殺してやる……!)
「ヘイ、キョウ!」
京太郎「あん?」
「最後の一発、受け取りやがれ……!」
――カチッ
「ふ、不発……?」
京太郎「言ったろ、幸運の女神が二人もいるって……よぉ!」ゴスッ
「ぐぁっ……」
京太郎「しばらく寝てろ」
564 = 1 :
京太郎「大丈夫だったか、二人とも」
照「平気、京ちゃんが助けてくれたから」
久「縛られてた腕が痛いくらいかな」
京太郎「言っておくけど、自業自得だ。俺は帰れって言ったんだからな」
久「でも、ちゃんと来てくれた……違う?」
京太郎「……これっきりだ」
照「うん、それはウソだって私にはわかってるから」
京太郎「チッ……途中まで送ってくから、後は勝手にしてくれ」
565 = 1 :
京太郎「……」
照「すごい広い」
久「見渡す限りの荒野って、日本じゃまず見られないんじゃない?」
京太郎「……どこまでついてくるんだよ」
照「どこまでも」
久「あんたが諦めるまで」
京太郎「ついてくるなよ」
照「イヤ」
久「それより車ないの? 絶対徒歩で移動する距離じゃないでしょ」
京太郎「知るかよ。疲れたんならいい加減日本に帰れ」
照「帰れだって。帰ったら?」
久「それよりお菓子の備蓄尽きてるんじゃないの?」
照「あ……」
久「どこかで補充してきたら? 待たないけど」
照「むっ」
566 = 1 :
京太郎「やかましいな……帰れよもう」
照「京ちゃんが帰るなら」
久「というかさ、そう言って帰ると本当に思ってるの?」
京太郎「俺とは違って向こうでの生活があるだろ」
照「そんなの知らない」
京太郎「知らないってな……」
久「わからない? 全部かなぐり捨ててきたって言ってるの」
京太郎「……バカだよ、二人とも」
京太郎「俺は、きっと地獄に落ちるぞ」
照「じゃあ私もついてく」
久「しかたないから付き合ってあげるわよ」
京太郎「……勝手にしろよ」
567 = 1 :
久「ねぇ、どこ向かってるの?」
京太郎「どこだっていいだろ」
照「うん、京ちゃんがいれば」
久「それであんたがいなければ最高ね」
照「それはこっちのセリフ」
久「良く言うわね。一人で来るの怖がってたくせに」
照「全部諦めようとしてた人に言われたくない」
京太郎「……二人とも、見ない間にちょっと仲良くなったか?」
「「そんなわけない(でしょ)!」」
京太郎「はいはい、そーかい」
『エンディング――追い風と太陽と、幸運の女神』
568 = 1 :
長い、というか長すぎる……!
下手したら今までで最長の可能性すらありますね
長すぎてもはや眠気とかを超越してしまいました
ともあれ次の怜竜でひとまず最後です
今回ほどは長くならないと思いますが
それでは、これから朝ごはんを食べるので失礼します
569 :
乙
この3人で話が始まったから、終わるのも又3人でって感じでしっくりきた
571 :
乙でした
572 :
乙
最後の怜竜どうなる?
573 :
乙ですのだ!
574 :
へへへ。
追いついたじぇ
575 :
タコス喰おうじぇ!
576 :
タコスよりもおもちが食べたい
577 :
約三週間ぶりにこんばんはー
久しぶりにやろうかと
それじゃあ、もうちょっとしたら始めます
578 :
これで最後か
待ってる
579 :
んじゃ、そろそろスタートします
580 = 1 :
京太郎「ん~……太陽が眩しいぜ」
「夜勤おつかれさん」
京太郎「お、今日は早いね」
「ちょっと早起きしちまっただけだ」
京太郎「はは、それで出勤早めるなんて真面目だな」
「どうせやることもないつまらない人間だよ」
京太郎「そう言うなよ。恋人とかいねーの?」
「生憎、遠距離だよ」
京太郎「おいそれと会いにも行けないな」
「お前は?」
京太郎「毎日会ってるよ」
「チッ、自慢かよ」
京太郎「まぁ、毎回病院じゃムードもへったくれもないけどな」
「病院?」
京太郎「ああ……俺のツレ、ちょっと体悪いんだ」
581 = 1 :
京太郎「おはようさん」
怜「んー、おそーい」
京太郎「そう言うなって。こちとら夜勤明けだ」
怜「今日のおみやげは?」
京太郎「べったら漬」
怜「なんでやねん」
京太郎「いや、近所のおばさんから東京土産だからってもらって」
怜「浮気?」
京太郎「うちの母親より年上だぞ。どんだけストライクゾーンが広いんだよ」
怜「はやりんは?」
京太郎「全然いける」
怜「ふんふん……ギルティやな」
京太郎「夢を見るだけならタダだろっ」
582 = 1 :
京太郎「……それで、具合は?」
怜「可もなく不可もなく?」
京太郎「なんで疑問系よ」
怜「見解の相違みたいな?」
京太郎「つまりあれか、大丈夫って言ってるのは自分だけと」
怜「や、実際問題あらへんし」
京太郎「やっぱり自己申告は信用ならねーな」
怜「じゃあ確かめて、どうぞ」
京太郎「えー、悪いのはここですかー?」モミモミ
怜「やーん、すけべー」
583 = 1 :
――コンコン
竜華「そろそろええかな?」
怜「もうちょい」
京太郎「おしまいだ」
怜「えー?」
京太郎「おとなしくしとけ。入院中だろ」
怜「む~」プクー
竜華「あはは、フグみたい。突っついてもいい?」
怜「ハリセンボンやねん。触ると怪我するで」
竜華「はいはい、お土産持ってきたから機嫌直してなー」
怜「待ってました! ――って、なんでべったら漬やねん!」
竜華「近所のおばちゃんにもらって」
怜「ネタ被り!」
京太郎(というか、出処が同じなんだよなぁ)
584 = 1 :
怜「2セットももらってどないせいっちゅーねん」
京太郎「そりゃあ、ご飯のお供だよ。朝昼晩って」
怜「まさかのべったら漬漬けかい」
京太郎「ズケズケと言ってくれるな」
怜「んー、あんまおもろくないなぁ……やり直しで」
京太郎「なにぃ?」
竜華「……」プルプル
怜「竜華、お花摘みなら我慢せぇへんほうがええで?」
竜華「ち、ちがっ……」
怜「ならトイレ?」
京太郎「それどっちも同じな」
怜「言わぬが花」
京太郎「お花摘みだけに?」
怜「う~ん……座布団一枚っ」
京太郎「よっしゃ」
585 = 1 :
竜華「ごめん、診察あるからそろそろ」
京太郎「ん、そうか」
怜「次は甘いのがええな」
京太郎「リクエストとは生意気な」
竜華「あはは……うん、次はケーキ買ってくる」
怜「おおっ、じゃあ楽しみにしとる」
竜華「先生の言うこと、ちゃんと聞いておとなしくしとること……ええ?」
怜「べったら漬を食べるぐらいならええやんな」
竜華「多分、それぐらいなら」
京太郎「それじゃ俺も……」
怜「えー? もう帰るん?」
京太郎「いや、お花摘み」
怜「その隠語はレディース専用やねん」
京太郎「んー……山へ芝刈りに、とか?」
怜「はい座布団没収ー」
竜華「……」
586 = 1 :
京太郎「しかし医者かぁ……あらためてすごいよな」
竜華「うん、頑張ったから」
京太郎「勉強も運動も麻雀も強くてすごい……というかやばいってのはよく聞いたけどな」
竜華「やばいって」
京太郎「安心しろ。やばいやつならなんでか知り合いによくいるから」
竜華「……須賀くん、トイレは?」
京太郎「お前を送ってからでもいいだろ」
竜華「別にうちは……」
京太郎「さっき、泣きそうだったろ」
竜華「――っ」
京太郎「勘違いだったら悪いけどな……俺には辛そうに見えた」
竜華「うっ、うぅ……」ポロポロ
京太郎「……もしあいつのことなら、話してくれないか?」
587 = 1 :
京太郎「……」
『……もうダメかもしれへんって』
『治療で進行を遅らせることはできても、改善はしてへんって……』
『入院も長いし、このままやったら……』
怜「大丈夫? 胸揉む?」
京太郎「それよりもギュってしていいか?」
怜「もち。スキンシップならウェルカム」
京太郎「ああ……」ギュッ
怜「んっ」
京太郎(俺になにができる?)
京太郎(もう先が長くないかもしれないこいつに、なにをしてやれる?)
京太郎(……いや、まだダメだって決まったわけじゃない)
588 = 1 :
怜「今日は情熱的やん」
京太郎「いつも心の中ではこんなもんだよ」
怜「やぁん、もしかしてケダモノになっちゃう?」
京太郎「ここが病室じゃなきゃな」
怜「じゃあお持ち帰りしてもよし」
京太郎「良くなったらな」
怜「はよ良くなれー、はよ良くなれー」
京太郎「よし、その意気だ」
怜「うーん、ニケツしたい!」
京太郎「退院したらな」
怜「じゃあ……結婚したい」
京太郎「……退院したら、盛大に式挙げようぜ」
怜「指輪は?」
京太郎「頑張って用意する」
怜「ならうちも頑張って治す」
京太郎「ちょっと飲み物買ってくるわ」
怜「ん……ふわぁ、うちはもう一眠りしとこかな」
京太郎「ああ、おやすみ」
589 = 1 :
京太郎「……くそっ」ガンッ
京太郎(何が退院したらだ……!)
京太郎(あんな言葉、ただの逃げじゃねぇかよ!)
京太郎(でもダメだ……あんなに辛いなんて)
京太郎(……泣けるなら俺が泣きてぇよ)
「あら、京太郎さん」
京太郎「……どうも、園城寺さん」
「そんな他人行儀な呼び方しなくてもいいんですよ?」
京太郎「はは……お義母さんはまだ早いですから」
「そんなことない……だってあなたは、もう何年もあの子の傍にいてくれたじゃない」
京太郎「俺は……なにもできないですから」
「いてくれるだけで十分ですよ」
京太郎「……」
京太郎(それでも、俺は……!)
京太郎「すみません、夜勤明けなんで失礼します」
「ごめんなさい、眠いところを引き止めてしまって」
京太郎「いえ。それよりも、今は寝てるんでそっとしといてやってください」
590 = 1 :
「よう、お疲れか?」
京太郎「ん、ああ……」
「今日も見舞い行ってたんだろ?」
京太郎「まあな……」
京太郎(ここ最近、あいつの前でちゃんと笑えてるか怪しい)
京太郎(ぎこちなくないだろうか……あいつに、心配をかけてないだろうか)
京太郎(知らないのなら、気取られるわけには……)
「ほら、飲めよ」
京太郎「悪いな……えっと」
「リュージでいい」
京太郎「あれ、そんな名前だったっけ?」
リュージ「昔から仲がいいやつからはそう呼ばれてんだよ」
京太郎「……ああ、苗字と名前から取ってるのか」
京太郎(なんか、ハギヨシさんみたいだな)
591 = 1 :
京太郎「じゃあ俺のことも京ちゃんでいいぜ」
リュージ「いや、気持ち悪い」
京太郎「当たり前だ。俺も男からそんな呼び方されたら気持ち悪い」
リュージ「はっ、今日も夜勤だろ? 居眠りしないようにな」
京太郎「そっちこそ、早起きしすぎて夜中に出勤するなよ」
リュージ「言ってろよ」
京太郎(……こういうの、なんか久しぶりだな)
京太郎(こっちに来てから、同年代のやつと付き合う機会が減ったしな)
「須賀くん、ちょっといいかい?」
京太郎「はい」
「……彼に、なにかされなかったか?」
京太郎「なにかって……コーヒーもらったぐらいですよ」
「そうか、ならいいんだ」
京太郎「なにかあるんですか?」
「その、あまり大きな声では言えないんだけどね……」
592 = 1 :
京太郎「暴力団、ね」
『あくまで噂なんだけど……暴力団と付き合いがあるって』
『もちろん噂は噂だけどね。ほら、なにか問題があった時に困るじゃないか』
京太郎「……だからなんだってんだよ」
京太郎「それだったら俺だって、極道の娘と友人関係だっての」
京太郎「まったく、つまんねーこと言いやがってよ」
怜「んん……もう昼?」
京太郎「なんだ、せっかく寝顔見てたのに」
怜「あかんなぁ、女子のすっぴんのぞくとか犯罪行為やで?」
京太郎「アホ、何回一緒に寝たと思ってるんだよ」
怜「はい、セクハラ発言いただきましたー」
京太郎「おっと、これは迂闊だったな」
怜「ふふん、出るとこ出たら大変なことになるやろな?」
京太郎「マジか……見逃してくれっ、なんでもするから!」
怜「ん? 今なんでもするって――けほっ、けほっ」
京太郎「おい、大丈夫かよ」
怜「けほっ……ちょい休めば――げほっ、げほっ!」
京太郎「明らかに酷くなってるだろ! 看護師さん呼ぶからなっ」
593 = 1 :
京太郎「……まだか」
『治療で進行を遅らせることはできても、改善はしてへんって……』
京太郎(あれじゃあ、改善するどころか……)
――ガラッ
京太郎「――っ、先生、あいつはっ?」
「容態は落ち着いて、今は寝ています」
京太郎「そうですか……」
「ただ、徐々にですが病状は悪化の傾向にあります」
京太郎「……やっぱり、そうなんですね」
「……清水谷先生から聞いていましたか」
京太郎「俺が無理に聞き出したんです」
「彼女は園城寺さんのために医師を志したそうですね……気の毒な話だ」
京太郎「なんで、もうダメみたいに言うんですか」
「入院してもう数年……投薬を続けていますが、病は徐々に進行している」
京太郎「じゃあ打つ手はないって言うんですか!?」
「ゼロとは言えません。しかし……」
京太郎「お金の問題だったらなんとかするし、俺にできることならなんだって……!」
「……金銭の問題でも、あなたにどうにかできることでもないんです」
「病気の完治の芽があるとすれば、それは……心臓の移植しかないんですよ」
594 = 1 :
京太郎「……なあ、清水谷」
竜華「なに?」
京太郎「心臓の移植って、難しいのか?」
竜華「……先生から聞いたんやね」
京太郎「まるで、移植には期待できないみたいな言い方だった」
竜華「正直、難しいと思う」
京太郎「難しい手術なのか?」
竜華「技術的にもやけど、まずドナーが見つからへん」
京太郎「誰でもいいってわけじゃ、ないんだよな」
竜華「うん……合わん臓器を移植しても、ダメになるだけやから」
京太郎「そうか……」フラッ
竜華「帰るん?」
京太郎「悪い、一人にしてくれ」
595 = 1 :
眠し……沈みます
596 = 578 :
寝乙
597 :
良い夢を見るのよ!乙!
598 :
ここまでのヒロイン二人エンドはハッピーエンドにはならないからこれから先もと思うと読んでて辛い
599 :
なんでや前回の久と照は割とハッピーだったやろが
京太郎が自身の何かを犠牲にする傾向が高いが
みんなの評価 : ○
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