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元スレ提督「おかえりなさい」
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そう言って遠征から帰ってきた私達を優しく微笑んで迎えてくれるのは、私達の鎮守府を統括する提督だ。
艦娘の存在が一般に広く知られるようになり、艦娘一人一人に感情があることも当然のものとして認識されている今日。
それでも艦娘を単なる兵器として扱う提督、体の良い性欲の捌け口として扱う提督は少なくない。
そんな中で私達の提督は私達を人並みに扱ってくれる。
いや、人並み以上に愛情深く接してくださっていると言っても過言ではないだろう。
SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1451854525
長時間の遠征にから戻ってきた翌日は必ずお休みを与える。
出撃で大破した時は体に負担が掛かるからと高速修復剤を使わない。
入渠を終えた艦娘一人一人に労いの言葉と、自分の指揮の至らなさを詫びる。
これは劣悪な環境下で過酷な軍務についている艦娘が少なくない中、過保護とも言えるものだろう。
私達艦娘は人々の悪意に敏感だ。
人から人ならざる者へと姿を変えた私達への差別意識は今なお消えない。
むしろ、私達艦娘の出自が知れ渡るほどにそれは強くなっていく。
私達艦娘は人から向けられる視線にとても敏感で、そして視線に秘められた感情にも敏感だ。
道具を効率よく扱うための口先だけの褒め言葉なんてすぐに見抜ける。
そして、だからこそわかるのだ。
提督の言葉にも、その優しい瞳にも、一片の嫌悪感も浮かんではいないということに。
提督は人並み以上に、それこそ娘のように私達を愛してくれている。
そのことが一つ一つの言葉や表情からわかるのだ。
だから、私達は提督を深く尊敬し、そして強くお慕いしている。
提督が尊敬を集めているのは、優しいお心だけが理由ではない。
私達は遊びで艦娘をしているのではない。
愛国の志の下、お国に尽くすことを決意し己が身を一個の兵器へと変えた者も多い。
艦娘によっては、人権を尊重するよりも優れた采配を揮うことを望む者もいる。
優しくとも無能であるより、冷血であっても有能な提督を望む、そんな艦娘達にとっても提督は尊敬の対象だ。
私達の鎮守府の提督は士官学校を主席で卒業されている。
若くして戦績のみならず、艦娘達の効率の良い練度の向上にも定評があるとのことだ。
つまり、私達の提督能力、素行、人柄、すべてにおいて秀でた方なのだ。
それと、これは提督の素晴らしさにおいては、些細な要因にすぎない。
決して重要な要因というわけではない。
これが数多ある提督の美点の一つでしかない。
そう、その優れている点の一つとして上げるだけなのだが。
提督はとても容姿が優れていらっしゃる。
・「脂ぎった顔がキモい」(某鎮守府 S谷さん)
・「髭の剃り残しが汚らしい」(某鎮守府 O井さん)
・「ニヤニヤ笑ってこっちを見てくる時に黄色い歯が見えると気絶しそうになるネ」(某鎮守府 K剛さん)
・「アイツ何か臭ぇんだよ」(某鎮守府 M耶さん)
そんな演習の時に他所の鎮守府の艦娘達から聞かされるような陰口なんて一つも該当しない。
180を超える長身。
すらりと伸びた脚。
細身ながらも、軍服の上からでも確認できる鍛え抜かれた肉体。
そして、凛々しくも美しいお顔。
黒曜石のような黒い瞳は時にに優しく、時に悲しげにその輝きを変える。
私達の事を常に第一に考えてくださる提督。
本当に素晴らしく、それ故に艦娘と提督という関係を超えて愛してしまう娘達も多い。
私はもちろん、あくまでも尊敬すべき素晴らしい上官として忠誠を誓っているだけだ。
もっとも、求められれば応じることはやぶさかではないが、それは些細なことだ。
けれども、私達艦娘にとって、一つだけ、一つだけであるが、最大の悩みがある。
それは……
「どうしたの朝潮ちゃん?」
提督はそう言ってそっと私の頭を撫でてくださる。
「あら?髪が傷んでるじゃないの。ダメよ?髪は女の命なんですもの。綺麗にしないと。後で執務室にいらっしゃい。私の使ってるシャンプー分けてあげる」
黒曜石のような大きな瞳をパチリとウインクする。
ふわりと長い睫毛がうっとりする程華麗に揺れる。
とても素晴らしく、とても魅力的な私達の敬愛する提督。
私達を娘のように慈しんでくださる優しい提督。
けれどもその瞳は父親というよりも母親のもの。
私達を守り育てる母であろうとする提督。
なぜでしょう、それを素直に喜べない自分がいます。
提督、どうして貴方はオネエなのですか?
今日はここまで。
艦これを初めてまだ3ヶ月の新米提督ですが、どハマりする余りスレ立てしてしまいました。
こんな感じにちょろちょろ書いていこうと思っています。
それではノシ
*行間空きすぎ、もしくは狭すぎるなど、ご指摘がございましたらよろしくお願いいたします。
艦これを初めてまだ3ヶ月の新米提督ですが、どハマりする余りスレ立てしてしまいました。
こんな感じにちょろちょろ書いていこうと思っています。
それではノシ
*行間空きすぎ、もしくは狭すぎるなど、ご指摘がございましたらよろしくお願いいたします。
艦むすの身の安全は保障されてるなw
国所有のモノに手を出すわけにはいかないからね、仕方ないね
国所有のモノに手を出すわけにはいかないからね、仕方ないね
期待乙
まだ新規さんて増えてるのな…そろそろ落ち着いてるのかと思ってた
まだ新規さんて増えてるのな…そろそろ落ち着いてるのかと思ってた
オネェキャラは結構恵まれてる印象
いい見せ場用意されたりかなり優秀だったり
いい見せ場用意されたりかなり優秀だったり
深夜の方にも立ててるけどまさか反応なかったからこっちに立てたの?
>>18
こちらにスレ立てするつもりで間違えて立ててしまいました。
当方の勉強不足の為深夜板というものがある事を知らなかった事が原因です。
なので、更新はこちらのスレで行います。
帰宅次第削除申請が可能であれば深夜板を削除させて頂きます。
当方の不手際により混乱させてしまい申し訳ございません。
こちらにスレ立てするつもりで間違えて立ててしまいました。
当方の勉強不足の為深夜板というものがある事を知らなかった事が原因です。
なので、更新はこちらのスレで行います。
帰宅次第削除申請が可能であれば深夜板を削除させて頂きます。
当方の不手際により混乱させてしまい申し訳ございません。
>>15
大体人格者で人間出来てるよな
大体人格者で人間出来てるよな
私達の提督はとても優しい。
演習から帰って来た子達のために、お菓子を焼いてくれるのだ。
提督の作ってくださるお菓子は絶品で、買い出しに行く時など渡された買い物リストから提督がどんなお菓子を作ってくださるのかを想像してしまう。
もっとも艦娘の中には練度向上よりも演習後のお菓子が楽しみで演習に参加したがる子もいることは些か嘆かわしい。
そして、駆逐艦の子達だけのご褒美もある。
お菓子よりもそれを期待する子達は決して少なくない。
提督「演習お疲れ様。疲れたでしょう?食堂にお茶を用意してあるからお風呂入った子から行きなさい。お菓子もあるわよ」
雷「お菓子ですか!あ、あの」
提督「ふふふ、雷ちゃん達の好きなホットケーキもちゃんと用意してあるわよ」
響「ハラショー」
暁「ホットケーキで喜ぶなんて、まったくいつまでも子供なんだから」
雷「でも司令官のホットケーキお店で食べるのより美味しいもん」
響「暁もこの前食べ過ぎたって言ってたよね」
暁「う…」
電「あ、あの、司令官」クイクイ
提督「どうしたの?電ちゃん?」
電「えっと、その、あの…」
提督「ダメよ、はっきり言わなくちゃ?遠慮せず言いなさい」
電「い、電の頭を…なでなでしてほしいです」
提督「はい、よく出来ました」ナデナデ
電「はわわわわッ…はわぁ」ポワーン
提督「ワンちゃんみたいね」クスッ
響「むぅ…電ばっかりずるい」クイクイ
雷「私も頑張ったわよ司令官!」グイグイ
提督「あらあら、甘えん坊さん達ね」ナデナデ
暁「……」ジッ
提督「暁ちゃんもいらっしゃい」
暁「れ、レディはむやみに頭なんて撫でさせないんだから!」
提督「あらまぁ」ナデナデナデナデ
電「はわぁ」ポワーン
雷「ほわぁ」ポワワーン
響「はらしょー」ムフー
暁「うぅうぅ…」
提督「……ねぇ暁ちゃん?」
暁「は、はい」
提督「一人前のレディーの要素ってわかるかしら?」
暁「え?」
提督「それはね、甘え上手なことなのよ」
提督「上手な甘え方を知る人は、上手な甘えさせ方もわかるのよ。いい女はそうやって男を上手に転がす女のことを言うの」
暁「…れ」
暁「レディーの勉強をするだけなんだからね!」テテテ
提督「そうね、暁ちゃんならきっと立派なレディーになれるわよ」ナデナデナデ
暁「えへへへへ/////」
提督「暁ちゃんは今日のMVPだったわね。訓練の成果がしっかり出てたわよ。本当に頑張ったわね」ナデナデナデナデ
暁「うん////」ハニャーン
演習から帰って来た駆逐艦の子達に対して、提督は親が子供にするように褒めて頭を撫でてくれる。
私達は軍人であると、兵器であると教えられている。
女であろうと子供であろうと、それは関係ないと。
けれども戦場を離れた時までそうある必要は無いと提督はおっしゃる。
それ以上のことを語らない提督が、駆逐艦の子達を撫でる時の瞳は何処までも優しく、そして少し悲しげだ。
提督、貴方はその胸の内に一体何を秘めていらっしゃるのですか?
その悲しい瞳の訳を、お話してはいただけないのですか?
提督はお気づきではないかもしれない、駆逐艦の子達が本当に好きなのは、撫でられることそのものではないことに。
自分の頭を撫でる時、自分に向けられる提督のそんな瞳を独占しているような気がして、それが本当は一番好きなのだということに。
天龍「お、おい朝潮…お前凄い顔してるぞ…?」
朝潮「いたんですか天龍さん」
天龍「血涙流しそうな目で見てるなよ。そんなに羨ましいのかよ」
朝潮「はらわたが捩じ切れそうなくらいに羨ましいです」ギリギリギリ
天龍「怖いよ!?」
以上で本日の投下を終えます。
何かございましたら、ご指摘ください。それではノシ
何かございましたら、ご指摘ください。それではノシ
>>22 そして過去に何かあって、怒らせると怖い
乙
壮絶な人生を歩んでる人は多い印象だな、オネエの知り合いはいないけど。
悪意も優しさも多く体験してるイメージ
壮絶な人生を歩んでる人は多い印象だな、オネエの知り合いはいないけど。
悪意も優しさも多く体験してるイメージ
乙
このおねえは女っぽいだけなのかゲイなのかバイなのかで全然違う展開になるな
このおねえは女っぽいだけなのかゲイなのかバイなのかで全然違う展開になるな
バイって聞くとオネエ系って印象あんまり無いな
あって相手が男らしいとかかも
あって相手が男らしいとかかも
吐く息が白い。
空を見上げると青白い月が柔らかな光を放っている。
春とはいえども日の出前は身体の芯前で冷え込む。
空気は冷たく清廉で、深く吸い込むと体の隅々まで透き通る心地がする。
冷たい空気が漂うこの時間が彼女は好きだ。
もっとも、好きな理由はそれだけではない。
「今日も早いのね吹雪ちゃん」
振り返るとネイビーのジャージに身を包んだ長身の男が歩いてきた。
その手にはバスケットが握らている。
「おはようございます司令官!」
「おはよう。良い挨拶、今日も元気いっぱいね」
小柄な吹雪が見上げると、長身の男はにっこりとほほ笑む。
吹雪の鎮守府の提督だ。
成人の、それも軍人を職業としている男としては柔らか過ぎる微笑みは、端正な顔立ちと相まって中性的に吹雪の目には映る。
彼の言葉づかいや仕草は柔らかであるが、鍛え抜かれた肉体がそれを必要以上に女性的には見せていない。
「あら、そのヘアゴム新しいのでしょう?」
「あ、はい!おかしくないでしょうか?」
「全然。素敵だわ。うん、とっても可愛らしいわよ」
頬に手を当てて嬉しそうに笑う。
この提督は吹雪達艦娘がおしゃれをしたり、楽しそうに歓談している姿を目にすると、こうして我が事のように喜ぶ。
「海のように深い優しさを持った方です」というのは朝潮の談。
「口うるさいオカンみたいだ」とは摩耶の談だ。
「いいわねぇ可愛い女の子は可愛いものが似合っちゃうんだもの。妬けちゃうわ」
「そんな、司令官もとっても凛々しくて、その新しいジャージの色もお似合いで」
「本当はピンクが良かったのよ。でも胸がきつくてね」
提督が溜息を吐く。胸というか胸筋というのが正しいのだろう。
可愛いものが好きと言うのに、鍛錬を怠らない提督を吹雪は不思議に思う。
「それなら鍛えなければ良いのにって思ってる?」
「あ、いえ」
その通りだった。心の内をズバリと言い当てられ、不快にさせただろうかと吹雪は焦る。
慌てる吹雪の頭をそっと触れるものがあった。
無骨な、けれども細くしなやかな指をした手が彼女の頭を撫でていた。
「ふふ、ごめんなさい。意地悪言っちゃったわね」
僅かに眉を寄せて提督が笑う。
「そりゃあね、気ままにおしゃれして、いい男侍らせていられたら楽しんでしょうけど、やっぱりねぇ…」
吹雪の髪を長い指が櫛のように梳いて行く。
「吹雪ちゃん達みたいな可愛い女の子達を戦場に送っておいて、男がそれを見てるだけっていうのもカッコ悪いじゃない?」
鎮守府の前に広がるグランド。提督はトラックから離れた場所へとバスケットを置く。
「さぁ、走りましょうか?」
「はい!!」
吹雪は元々別の鎮守府にいた。
吹雪だけではなく、この鎮守府には他所から転属してきた艦娘が多い。
命令違反など素行に問題がある者、劣悪な環境から逃げだした者、見込みが無いと見放された者。
同じ鎮守府に同じ艦娘を所属させることは可能だ。
同じ艦隊に同じ艦娘を編成することは出来ない。
それは何処の鎮守府においても常識とされている。
もっとも大きな理由は「同じ魂」を持つからだと言われている。
艦娘とは、戦艦の魂を持つ存在だ。
元となった憑代は魂に引きずられるようにその姿を変える。
同じ魂を用いているのだから、姿は同じになる。正確には同じに見えている。
同じ艦が近しい場所で存在し続けると、艦娘達の魂は強く共鳴を引き起こすと言われている。
そして、反応は二通り起こる。
一つに戻ろうとする強い「執着」か、或いは強い「同族嫌悪」だ。
故に、提督は同じ艦娘を保持する場合、引き離すか片方を解体、もしくは改修の材料にする。
吹雪は、以前所属していた鎮守府において後者を目の当たりにした。
彼女は「吹雪」から強い虐めを受けていた。
吹雪の不運は二つ。
一つは彼女が拾われた時、既にそこには彼女よりも遥かに高練度の吹雪がいたこと。
もう一つは、その鎮守府の提督が艦娘達のケアに対して非常に無関心であったことだ。
「吹雪」は彼女を嫌悪し、そして弱さを軽蔑し虐げた。
訓練と称して加えられる暴力と悪罵。
それは地獄の日々であった。
ヘアゴムは捨てられ、伸ばした髪は無理やり切られ、艤装は整備した傍から破壊され続けた。
提督も弱い吹雪に資材を費やすのが勿体ないと思っていたのか、彼女は自分自身の拙い手でもってどうにかそれを使えるように直すことしか出来なかった。
気付けば心は挫け、自信と呼べるものは消え去り、吹雪は艦娘と言うには余りにも弱く、いじけた少女へとなっていた。
「吹雪ちゃん、改二の艤装の調子はどう?」
鎮守府のグラウンドを何周走っただろうか、走りながら提督は隣で走る吹雪に話かける。
「はい!最初は正直振り回されてる感覚でしたけど、明石さんのメンテのおかげで今は問題無く」
「それだけじゃないでしょ?」
「え?」
その言葉の意味を問う前に、提督は走る足を止める。
気付けば練習メニューの周回を走り終えていた。
バスケットから提督は二枚のタオルを出すと青色を吹雪に渡す。
ふわふわと柔らかいタオルからは清潔な石鹸の香りがする。
たっぷりと温まった身体からは白い湯気が立ち上り、薄暗い空気へと溶けていく。
提督に視線を向ければ既にシャツを汗ですっかりと濡らしてしまっている吹雪に対して、提督は額にうっすら汗を浮かべている程度だ。
提督は吹雪を微笑ましそうに見つめていた。
「初めて一緒に走った時はついてくるどころか途中でダウンしちゃってたのにね」
「そ、それは昔のことで…」
「さっき不思議そうな顔してたでしょ?艤装の話。それが答えよ。
改二になるには練度が必要。艤装を使いこなせるだけの心身が揃わなければ扱えない。
いくら明石ちゃんが頑張ってメンテをしても、扱う子がダメっ子さんなら意味が無いのよ」
「そんな、私なんてまだまだ ―― 」
言いかけた吹雪の言葉は唇にそっと当てられた人差し指によって掻き消えた。
眉をわずかに寄せて提督が吹雪を見下ろす。
聞き分けのない子供を叱る親のような表情だ。
「そんな事言っちゃダメよ。吹雪ちゃんは頑張ったって自分に自信を持っても良いのよ。じゃないとお姉さん怒るから?」
頬を染めながら吹雪は頷いた。
永遠とも思えた地獄はある日転機を迎えた。
それは指令室に呼ばれた日のことだった。
初めての指令室。
彼女に無関心だった提督は彼女を叱責しない代わりに激励することもなかった。
故に、最初に思ったのは「遂にこの日が来たか」というものだ。
解体される、役立たずの駆逐艦をいつまでも保有しておく理由は無い。
指令室に入ると、そこには机に腰掛けた提督と、もう一人男がいた。
すらりと姿勢の良い男だ。
綺麗な立ち姿の人、それが吹雪の抱いた第一印象だった。
提督は吹雪を微笑ましそうに見つめていた。
「初めて一緒に走った時はついてくるどころか途中でダウンしちゃってたのにね」
「そ、それは昔のことで…」
「さっき不思議そうな顔してたでしょ?艤装の話。それが答えよ。
改二になるには練度が必要。艤装を使いこなせるだけの心身が揃わなければ扱えない。
いくら明石ちゃんが頑張ってメンテをしても、扱う子がダメっ子さんなら意味が無いのよ」
「そんな、私なんてまだまだ ―― 」
言いかけた吹雪の言葉は唇にそっと当てられた人差し指によって掻き消えた。
眉をわずかに寄せて提督が吹雪を見下ろす。
聞き分けのない子供を叱る親のような表情だ。
「そんな事言っちゃダメよ。吹雪ちゃんは頑張ったって自分に自信を持っても良いのよ。じゃないとお姉さん怒るから?」
頬を染めながら吹雪は頷いた。
永遠とも思えた地獄はある日転機を迎えた。
それは指令室に呼ばれた日のことだった。
初めての指令室。
彼女に無関心だった提督は彼女を叱責しない代わりに激励することもなかった。
故に、最初に思ったのは「遂にこの日が来たか」というものだ。
解体される、役立たずの駆逐艦をいつまでも保有しておく理由は無い。
指令室に入ると、そこには机に腰掛けた提督と、もう一人男がいた。
すらりと姿勢の良い男だ。
綺麗な立ち姿の人、それが吹雪の抱いた第一印象だった。
『彼女が吹雪だ…』
『そうそう、この子だわ』
容姿は吹雪のいた鎮守府の提督とは比べ物にならない程に優れているのに、奇妙な言葉遣いの男だった。
軍服から彼が軍人、それも提督であることがわかる。
しかし、吹雪が演習で目にしてきた提督とは少し異なる。
丸刈りが多い軍人なのに、髪は最上よりも長い。
微かに香る甘い香りは香水だろうか。
その提督と思わしき男は、吹雪のボサボサの髪を痛ましげに見つめると、そっと撫でる。
その優しい手つきと、ほのかに伝わる温もりに思わず声が出た。
叩かれる以外で誰かに触れられるのが随分久しぶりだと思った。
『貴女、可愛いのに勿体ないわ。ウチにいらっしゃい』
何と言われたのか、すぐには理解できなかった。
あっけらかんと言い放たれた言葉の意味をうまく呑みこむこともできず、目を丸くした吹雪を優しく見つめると、
その男は吹雪の鎮守府の提督へと視線を移す。
彼が吹雪のいた鎮守府の提督とどのような関係かはわからなかったが、執務机に両肘をついて手を組んだ提督は、脂汗を額に浮かべ顔を歪めている。
『これでいいだろ…だから…』
『もう、まずお茶ぐらい出しなさいよ。そういう気遣いが出来ないのかしら?ねぇ吹雪ちゃん』
『え、ええ!?』
急に振られて、吹雪は何と答えて良いかわからず言葉に窮する。
『そんなんだからお爺ちゃんに見放されるのよ』
提督の肩がビクリと揺れた。
顔を青くするとはこういうことを言うのだろうかと、状況がつかめないまま吹雪はぼんやりと思った。
『総司令は…』
『この鎮守府は提督はボンクラだけど憲兵は優秀ね。手遅れにならなくて良かったわ』
『そんな…俺は艦娘を虐待するような真似は…あれは艦娘達が勝手に…』
『子供の不始末は親の不始末って言葉、知らないの?』
『子供?馬鹿な艦娘なんぞ…』
『はーい、そこまで。それ以上続けるなら左遷じゃ済まないわよアンタ。艦娘ちゃん達だからこそでしょ。
私達提督は見守る存在でなければならない。憲兵がどうして組織されたのか理解していたらそんなセリフ出てこないわよ』
呆れたように男が溜息を吐くと、提督は露骨に身体を震わせる。
その姿を吹雪はよく知っていた。
いつもの、「吹雪」に虐げられている時の彼女の姿。怯えた負け犬の姿だ。
『さぁ、吹雪ちゃん。今日から私が貴女の提督よ?よろしくね』
そういって差し伸べられた手を、小さな白い手がおそるおそる取った。
男 ―― 新たな提督が吹雪の頬を優しく白いハンカチで拭われて初めて彼女は自分が泣いていることに気付いた。
『ダメよ、女の子が泣くのを我慢することを覚えたら』
そういって抱き寄せられた瞬間、堰を切ったように熱い涙が溢れた。
軍服が涙や鼻水で濡れるのも構わずに提督は吹雪を抱きしめる。
ぽんぽんと、母親が泣く幼子をあやすように彼女の背を優しく叩く。
指令室に吹雪の嗚咽が響いた。
転属早々に提督は自室に吹雪を呼び出した。
指令室ではなく、彼の自室だ。
用意されていたのは鋏と櫛。
ボサボサに痛んだ髪を彼は丁寧に整えた。
それから、熱いお茶を振る舞ってくれた。緑茶だった。
急須から湯呑にゆっくりとお茶を注ぐ姿を見て、またしても吹雪は綺麗だなと感じた。
艦娘は美女、美少女ぞろいだ。
彼がいくら端正な顔立ちをしているといっても、艦娘達には及ばない。
身体も鍛えられており、間違っても女性と見間違えることなどない。
それでも、なお吹雪の目には提督の所作がとても美しいものに見えた。
自分を母親と思いなさいと彼は言った。
母親とはどういうものなのかと尋ねると、彼は一言「貴女を守る者よ」とだけ言った。
柔らかな光を放つ黒い瞳は、理解より先に吹雪を納得させた。
吹雪はどうにかして恩を返そうと思った。
どうすれば良いのか、悩んだ末に彼の秘書艦である朝潮に尋ねると、彼女は何をわかりきったことをとでも言いたげな顔をした。
『強く、正しく、そして幸福に私達艦娘があることをあの方は何よりも喜んでくださいます』
指令室ではなく、彼の自室だ。
用意されていたのは鋏と櫛。
ボサボサに痛んだ髪を彼は丁寧に整えた。
それから、熱いお茶を振る舞ってくれた。緑茶だった。
急須から湯呑にゆっくりとお茶を注ぐ姿を見て、またしても吹雪は綺麗だなと感じた。
艦娘は美女、美少女ぞろいだ。
彼がいくら端正な顔立ちをしているといっても、艦娘達には及ばない。
身体も鍛えられており、間違っても女性と見間違えることなどない。
それでも、なお吹雪の目には提督の所作がとても美しいものに見えた。
自分を母親と思いなさいと彼は言った。
母親とはどういうものなのかと尋ねると、彼は一言「貴女を守る者よ」とだけ言った。
柔らかな光を放つ黒い瞳は、理解より先に吹雪を納得させた。
吹雪はどうにかして恩を返そうと思った。
どうすれば良いのか、悩んだ末に彼の秘書艦である朝潮に尋ねると、彼女は何をわかりきったことをとでも言いたげな顔をした。
『強く、正しく、そして幸福に私達艦娘があることをあの方は何よりも喜んでくださいます』
そんな単純な事で良いのかとも思ったが、そもそも自分に出来ることなど数える程しかないと思いいたる。
吹雪はまず弱い自分を変えようと考えた。
他の艦娘よりも弱い彼女は、他の艦娘よりも努力をしなければならない。
少しでも強くなって、提督を喜ばせたい。
それは吹雪にとって恩返しでもあり、彼女の望みでもあった。
早朝トレーニングを決意した吹雪は、そこで人知れず早朝トレーニングを行っている提督を知った。
彼は、まず吹雪が無理をしていないかと気遣った。
これは自分に対してが自分の意志で課したことなのだと言うと彼はようやく納得をした。
自分の意思をはっきりと伝えるのは吹雪にとって初めてのことだった。
それから早朝のトレーニングを共にするようになった。
未熟な彼女は実戦はおろか、遠征に出されることも無かった。
それが結果として、二人だけの早朝トレーニングとなったのだ。
ひたむきに努力し、少しずつ成長を見せる吹雪に提督は眩しいものを見るような眼差しを向ける。
それが嬉しくて、いつしか吹雪にとって早朝のトレーニングは己に課した恩返しという義務から意味合いを変えていった。
「恩返しというかご褒美になってしまっているような…」
「どうかしたの?」
「い、いえ何でもありません!」
「そ、そう?」
日の出前。
冷たい空気が漂うこの時間が彼女は好きだ。
提督と同じ時間を共有し、提督を独占できるこの時間が、吹雪はとても好きだ。
◇
「おはようございます吹雪さん」
「あ、おはよう朝潮ちゃん」
「早朝トレーニングは終わったんですか?」
「うん、今からお風呂なの」
「提督と二人で?」
「うん…えへへへへ」
「……そうですか。ところで吹雪さん。私もトレーニングをしようと思いまして」
「朝早いよ?朝潮ちゃん8時間は睡眠を取らないと起きれないよね?」
「ええ。なの今からおつきあいいただけますか?」
「え…私今からお風呂に…」
「スパーリングをしましょう。吹雪さんはサンドバッグ役で」
「それスパーリングじゃない!?」
以上で投下を終わります。
艦これは色々な本が出ているようですが、未読ですので艦娘を始め私の勝手な妄想です。
今後もちょくちょく勝手な妄想を出していく予定ですので、あしからず。
また、投下後に描写が拙いためかなりわかりにくかった点の補足です。
ネグレクト提督のネグレクトっぷりを憲兵さんは調査し、詳細に報告をしておりました。
結果、オネエ提督は吹雪等同僚から虐めを受けているのに放置されている艦娘達が取り返しのつかなくなるギリギリで
追い込まれる直前に保護に成功したというそんな感じです。
以上補足説明でした。それではノシ
艦これは色々な本が出ているようですが、未読ですので艦娘を始め私の勝手な妄想です。
今後もちょくちょく勝手な妄想を出していく予定ですので、あしからず。
また、投下後に描写が拙いためかなりわかりにくかった点の補足です。
ネグレクト提督のネグレクトっぷりを憲兵さんは調査し、詳細に報告をしておりました。
結果、オネエ提督は吹雪等同僚から虐めを受けているのに放置されている艦娘達が取り返しのつかなくなるギリギリで
追い込まれる直前に保護に成功したというそんな感じです。
以上補足説明でした。それではノシ
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