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    元スレ仗助「艦隊これくしょんンンン~~~~?」

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    401 = 1 :



    「要するに、間違いなく索敵性能はオレたちが上って事だぜ。そんで、航空戦力もな」

    「っていうと……」

    「一撃一撃での着弾の精密さは察知能力や範囲は、こちらが上位です。いい?」


     つまりは、遠距離から殴り付ける分には仗助達の方が有利。

     そのまま敵の探知領域ギリギリから殴り付ける事こそが、判りやすい勝ち筋だ。

     後は、視界不純か。レーダーの差が大きく現れる。


    「その辺も昔と一緒だな。結局電探の強さっめのが大切になるぜ」

    「ただ、雨などには注意が必要なんです。電波が上手く伝わらなくなるし、雨雲がレーダー画面に映っちゃいますから」

    「はぁ~」


     感心した風に頷く仗助。

     やはり出自が軍艦そのものという事もあり、そういう科学技術はお手の物であった。

     一介の高校生が太刀打ち出来る知識ではない。

    402 = 1 :


    「でもよぉ~、その利点は承太郎さんにはバレてるって思っても良さそうだぜ」

    「さっき、見せちまったからな……彗星の甲」

    「装備の質がいい、くらいには思われてるかも」


     うんうん、と一同は頷く。

     天龍・大井共に承太郎の人となりは判らぬ(とりあえず不良だという事ぐらい)が、仗助をして最強のスタンド使い。

     その能力も高水準にあるだろう、とは想定していた。


    「じゃあ……利点ってわざわざ言うからには、こっちには欠点があるって事だよなぁ~?」

    「ええ、そうです。よく判りましたね」

    「そりゃあ……、……、……なんかさっきから大井さん違くね~ッスか?」

    「ぎくっ」

    403 :

    仗助とフフ怖見てるとほっこりするww

    404 :

    ちゃんと天龍って呼んであげなよwwww

    405 :


     ナンノコトデスカー、と目を逸らす大井に天龍が破顔。

     くつくつと笑いながら、大井を指差した。


    「こっちが素なんだよな、素」

    「素ゥ~?」

    「……チッ、この軽巡」

    「きっとよー、いきなり提督の前だったから緊張してたんだぜ、緊張」


     にやにやと指差し笑う天龍を尻目に、大井は嘆息。

     この軽巡が馬鹿でよかったと呟きつつ――なんでもなかったかのような笑顔。

     しかしそこでもう一発、天龍がかました。


    「本当はそーとー気性が荒くて、戦艦どついたり学生ブン泣かせたりしてんだよ」

    「ちょっと!? あれは事故――」

    「……事故って事は、噛ましたのはマジになんスね」

    「はっ!? ち、違うんですよ提督!?」

    「多分キレたら髪型貶された提督並にやべーぜ? フフ、怖――」

    「怖え~~~~っスね~!」

    「こいつら……!」

    406 :

    そういやまるゆいびってたのも大井っちだっけ

    407 :

    もう本当に仗助と億泰のやりとりだこれwwww
    流石フフ怖、仗助の事分かってるwwww

    408 = 1 :


     顔を渋くし、こめかみをひくつかせる大井。

     既に、この艦隊に来てから行った大井の顔パターンを超えるほどの表情変化。

     もしも厚塗りした面の皮や、被りに被った猫のマスクがあるなら顔面表情筋の動きに剥がされ落ちているだろうそれ。

     しかし盛り上がる二人は、絶好調にまだ続ける。


    「じゃあよぉ~、うっかり大井さんを怒らせちまったら……」

    「スタンドも月までブッ飛ぶくらいに魚雷喰らわせられっかも……なんつってなー!」


     そのまま、手を叩いて二人笑い合う。

     二人とも初めはこれを機に大井も壁を無くして輪に入ってくれたらいいな――程度だったが。

     いつの間にか本気で、片腹大激痛なレベルで笑みを浮かべ合う。

     不良二人、恐るべし。

     加賀がその場に居たなら(居るがシャドーボクシングならぬシャドーアーチェリング中だ)、思わず目を逸らしてぷるぷるするほど。

     卯月は仲間に入りたそうに見ていたが、駆逐艦の彼女からすると軽巡は直属で本気で怖い人たち。

     なお、仗助は駆逐艦としての彼女からしなくても怖い人なので遠巻き止まり。

     そのまま更に二人は言葉を続けようとし――


    「……魚雷、撃っていいですか? 急に撃ちたく……そういえば重雷装巡洋艦になってからまだなので、試し撃ちを」

    「は、はい……っス」

    「フフフフフフフ、フフ、怖い」

    409 = 1 :


     やれ、お前が煽り過ぎだ。

     やれ、お前がバラし過ぎだ。

     魚雷片手に氷の微笑を浮かべた大井を尻目に二人で小突きあえば――


    「……何か?」

    「い、いやー……向こうに大きな鯨がいたって……そうだよなぁ~、天龍?」

    「お、おう。大井く…………いやー、大きくて怖いな、って」

    「……」

    「……」

    「……」

    「……まあいいわ」


     (よしっ!)(あぶねえ!)と胸を撫で下ろす二人。

     流石に模擬弾とはいえ、船の装甲の薄い箇所を狙う――といっても一撃で船を沈めうる魚雷である。

     連続して叩き込まれたら艦娘の天龍と言えどもただでは済まされないし、生身の仗助なら尚更だ。

     これ以上は洒落にならないと、二人は沈黙の協定を結んだ。

    410 = 1 :


    「ところで、なんスけど……」

    「どうしました、提督?」

    「そっちが素なのはいーとして……どーしてそっちを見せてくれるようになったんスか?」


     ポリポリと、頬を掻く仗助。

     何となく――本当に何となくだが、大井には何かあるな……とは仗助とて思っていた。

     だが、本人が伏せようとしているなら特に踏み込む必要はないか……とも考えていたのだ。

     それがどうしてこの段階になって、というのは自然な疑問だ。

     ……天龍の言っていた事は鵜呑みにしないにしても。


    「う……」

    「いや、言いたくないなら別に構わねーっすよ。ちょっとした疑問なだけなんで」

    「……」

    「……」

    「……対した事じゃないですけど、昔練習艦――提督みたいに何も判らない人たちに教えてたんで、その」

    「あー、昔の血が騒いだ……つー事っスかね」

    「まあ……」

    411 = 1 :


     複雑な想いがあるのか。

     歯切れ悪く視線を外にやった大井に、仗助もまたはっきりと答えられずに口を閉ざした。

     だが、この場にいるのは仗助だけだろうか。

     答えは否ッ! この艦隊に着任してから間違いなく新密度が最高の軽巡洋艦がこの場にはいた!


    「つまり……大井先生だよなー」

    「は……?」

    「お、それいいぜ天龍! 丁度俺、素人だもんなぁ~!」

    「へ……?」

    「こりゃあ大井先生に頼るべきなんじゃねーか、提督よー」

    「おう、やっぱりここは大井先生に――」


     何となく、冷たくなった場の空気をどうにかしよう――。

     二人はそんな考えから、またお互い言葉を交わし合ったのだが。

     どうやら、


    「……撃ちますね? 撃っていいですよね? そうですよね?」


     ひょっとしたら冷たくなるのは、場ではなく彼ら二人の身体になるかも知れないのだった。

    412 = 1 :


     一方……。


    「……そう、五航戦はまだ未熟。だから私たちがしっかりしないと。そう……強くならないと。よく食べて強くなる……気分が高揚します」


     未だに加賀は空中に浮かんだ五航戦のヴィジョンに対して呟きを漏らし、


    「大丈夫です、ねーさま……山城はやればできる子……大丈夫、大丈夫です…………この口癖高速戦艦じゃない……不幸だわ」


     山城は周囲の植物も平穏な心を失うほどに呪詛とも愚痴ともつかぬものを垂れ流し、


    「……うさぎは寂しいと死んじゃうっぴょん」


     卯月は体育座りで、いじいじと砂浜を指で弄んでいた。

     そして、


    「ちょ、大井さん……魚雷はマジに反則っスよ流石にそいつぁ――――!」

    「フフ……、って、お、おい! 提督! おい! オレまで巻き込むなよ!」

    「演習の前に……教育が必要ね♪」

    「巻き込むも何も元はと言えば『そっち』じゃねーかよ、天龍おめーよぉ~~~~~~ッ」

    「提督がノってくるから――お、おい!?」

    「『死』と『恐怖』の教育……いえ、間違えました。これはダメージコントロールの教育です♪」

    「に……」

    「逃げるんだよぉぉお――――――ッ!」


    ←To be continued...

    413 = 1 :

    ここまで

    承太郎との温度差は一体

    414 :


    凄みが違うからちかたないね

    415 :


    いちおー人間賛歌っちゃあ人間賛歌か
    ゲテモノに見える大井も山城もデレたら滅茶苦茶カワイイからなぁ
    デレが待ち遠しい

    416 :

    おつですー

    418 :



    「いちおー、念のため聞いときてーんすけどぉ~」


     桟橋に腰掛ける仗助が、タブレットに話しかける。

     完全に海域に出撃してしまえば(鎮守府から離れてしまえば)、通信に用いる電波の波長の関係で、

     それなりに通信料の多く正確ささが求められるリアルタイムな会話というのが困難となり、

     それのおかげか予め定められたサインによって陣形を選択するか、戦闘続行か撤退かの判断程度しか行えない。

     だが、近場なら超短波による無線通信が問題なく可能だ。

     そして、仗助の相手は大井。

     いつの間にかすっかり(主に天龍によって)打ち解けた、重雷装巡洋艦である。


    「ほんとーにこの演習って……危険はねーんスか? 不発弾とかそーゆー感じの」

    『……不発弾は火薬があるのに何故か爆発しない弾よ』

    「そーなんスか? なんか危ねーイコール不発弾みたいな印象があってよぉ~」

    『……はぁ』


     聞こえさせる風な、露骨な溜め息。

     大井も随分打ち解けたというか、遠慮がなくなった。手加減なく辛辣さをぶつけてくる。

     或いはそれは仗助の温厚さを見込んでの事なのかも知れないが、それは当の大井本人にしか判らぬだろう。

     首を傾げる仗助を無線越しに察した大井が、冷たく漏らす。

    419 = 1 :



    『火薬や爆薬を制限した武装を使っているから問題ありません』

    「積み間違いとかそーゆーのはどーなんスか?」

    『妖精さんが間違えたらそうなるけど……あると思いますか?』

    「いや、そこらへんはキッチリしてるだろうし……」

    『だから安心なのよ。いい?』

    「安心なんすね」

    『……至近距離で撃たれでもしない限りは』

    「うおおおおおい!?」

    『そこまで近寄られたら、どちらにしても負けよ。負け』


     「確かにそーっスけど……」と仗助は回想する。

     艦種による特徴のレクチャーは受けていた。

     それなりの速度と小回りの良さを持つ駆逐艦。ただし、火力は弱く装甲も貧弱。

     速度と駆逐艦より強力な主砲の持ち主の軽巡洋艦。それの主砲の口径と装甲が増したのが重巡洋艦。

     言うまでもなく圧倒的な火力と装甲を持ち合わせる反面、回避性能が頭打ちな戦艦。

     そして、航空戦力を運用でき、攻撃や索敵に使用できる空母。

     他には隠密性の高い潜水艦や、航空戦力が運用可能な戦艦などがいるが……。

    420 = 1 :


    「島風……でしたっけ?」

    『ええ。私は重雷装巡洋艦だけれど……あれは言うなれば、重雷装駆逐艦』


     確かに駆逐艦は火力に乏しいが――しかし戦艦その他を倒せないかと言えば、そうではない。

     それが魚雷。

     どんな船も、上方向から着弾する攻撃には耐えられるが……海中の装甲というのは然程強力ではない。

     そこに突き刺さり、その後爆裂するのが魚雷――当たってしまえば一撃必殺にほど近い武器。

     それを多数運用するというコンセプトで大日本帝国海軍が生み出したのが、重雷装巡洋艦。

     そして――島風である。


    (確か……最強の速力と、駆逐艦最大の雷撃能力だったよなぁ)


     大井が言った。天龍と仗助を交えたそこでの、仗助らの艦隊の弱点。

     それは――性能。

     組み合わせるなら、山城と――比叡。加賀と――瑞鶴。卯月と――島風。天龍と――那珂。大井と――利根。

     高速戦艦・比叡、正規空母・瑞鶴、駆逐艦・島風、軽巡洋艦・那珂、重巡洋艦・利根。

     それが空条承太郎の艦隊を構成する艦娘。

    421 :


     火力が勝る山城に対し、速力が上の比叡。

     加賀と瑞鶴でも、瑞鶴の方が速さは上。しかし艦上機搭載能力なら加賀。

     島風は最新型なのに対し、卯月は初期の駆逐艦。全性能は島風に軍配。

     天龍も――また、古い型の軽巡洋艦。那珂に勝てるのは燃費のみ。

     大井と利根は比べるのも不思議であるが……敢えて比べるとすれば、


    「頼みますよ大井さん……あんたの雷撃に掛かってるんスからね」


     雷撃の性能は大井が上。

     しかしながら装甲、火力ともに利根に優が。

     船としての基本性能では、仗助たちが些かに不利である。

     そして――ここで諸氏に説明しよう。

     船には戦闘速度というものがある。第一から第五、そして最大戦速というものが用意されている。

     この最大戦闘速度というのは――その艦隊で、全ての船が出せる機関に必要以上の負担をかけない最高速度である。

     つまりッ!

     その艦隊で『最も遅い船』の最大の速力が、最大戦速なのである。

     これは――速力がニガテな山城を有する仗助らの方が、圧倒的に不利。

    422 = 1 :


    『私が作戦を考えたんだから、言われなくても……』


     速力を合わせなければ、艦隊の隊としての動きはできなくなる。

     突出したどこかだけが狙われたり、或いは置いてきぼりになった誰かに攻撃が集中。

     船と名がついているが、実態としては洋上を進む歩兵のような彼女たちにとって、部隊行動というのは重要である。

     とは言っても。

     個々人が狙われたのなら、それぞれの持つ限界――速力一杯などで回避するだろうが……。

     ――空条承太郎は、そこを狙ってくるのではないか。

     大井はそう提案した。

     全体への攻撃を行い回避行動を取らせる。そして分断させる。

     あとは各個撃破を狙ってもいいし、集団で一隻を叩いてもいい。

     艦娘の個体の性能が上であり、そして足並みを仗助のそれよりも揃えられる承太郎には選ぶ余地があるのだ。


    「それにしても……」

    『なに?』

    「やっぱそっちの話し方の方が、『らしい』感じがしていいよなぁ~」

    『……言われなくても』

    423 = 1 :


     対する仗助たちの持つ利点は装備の性能が上。

     いかにして空条承太郎の艦娘を、彼らの有効射程距離まで近づけず――。

     そして、装備の性能を活かせぬ乱戦に持ち込まれずに倒しきるか――にかかっている。

     加賀の初撃での制空権の確保。

     そして、大井の持つ特殊船艇での開幕雷撃。

     その二つの成否によって、その後の戦闘の難易度というのは大きく変わる。


    (つっても承太郎さんだから……こっちが『アッ』っと驚くような何かをしてくる可能性も否定できねーけどよぉ~)


     搭載火器の性能が上と言っても、長距離で百発百中という意味ではない。

     火線を集中して、なるべく命中率を高めて近寄られるまでに敵の数を減らす。

     仗助たちに求められている行動は、それである。


    (何をされても、マヌケに『アッ』と驚くのだけはする訳がね~~~~~ぜ!)


     タブレット上に表示される、加賀たちのアイコン。

     前面には卯月。そして中核には主砲である加賀と山城。左右を大井と天龍が固める。

     まだ、承太郎の艦隊の発見報告は届かないが――

    424 = 1 :


    「加賀さん、一発『バシッ』っと決めちまってくださいよ」

    『……ええ』


     既に、航空戦の射程距離だ。

     きっとあちらも飛ばしてきているであろう。

     艦載機は、矢として射る事で速力と揚力を得て、実体化して飛来する。

     基本的な操作は、それぞれに搭乗する妖精さん任せであるが……目の届く範囲なら本体である艦娘にも操作が可能。

     そんな、スタンドに直すなら遠隔操作型なのが『艦上機』。

     まずは一太刀浴びせんと、加賀が番えた矢を引き絞り――


    『……そう言えば、提督』

    「ど~したんスか? なんかトラブルとか……そーゆーのがあったり――」

    『……いえ』

    「?」

    『私たちの戦闘を間近で見せるのは、これが初めてだと……そう思っただけよ』


     そうとだけ呟いて。

     風上目掛けて、髪を棚引かせた向こう――加賀は親指を放した。

    425 = 1 :


     その直後に。


    『電探ニ感アリ……左右から艦載機!』


     大井が叫ぶ。

     丁度加賀が放った正面を避けて、回り込むかの如き機動で押し寄せた航空機の群れ。

     その全てが、プロペラ翼のその胴体に魚雷を携えた――攻撃機。

     制空権を確保しないうちに、空戦能力の低い攻撃機や爆撃機を出す事はそれらの破壊を意味するが。

     そんなものを捨てて――しかも、加賀の航空機が左右に翼を翻すよりも先に。

     放たれる雷撃。無数に着水する魚雷の群体。


    『こんな距離でブッ放しても……命中率なんて――!』

    『まずは分断、ですか。いいでしょう』


     僅かながらに口角を吊り上げる加賀。

     本人は至って動じず、正面――母艦たる瑞鶴へと向けた艦上戦闘機と艦上爆撃機の編隊を。

     そして左右には、放った戦闘機が機種を翻す。

     水面に直角になる翼と、引き上げられて左右を目掛けて旋回を開始する機首。

    426 :

    やべえワクワクしてきたぞ

    427 = 1 :


     艤装として、衣服に一体化した対空機銃が天に照準。

     しかし攻撃機は、その射程に収まらない。

     あくまでもギリギリの圏内から大量の魚雷を投下し、牽制するのが狙いなのか。

     さりとて放置など出来ない。

     一発でもいいのが入ってしまえば、それだけで戦闘不能に追い込まれる代物なのだ。


    『主砲……よく狙って……!』


     仗助(と妖精)が開発した対空弾を主砲に収めた山城が、逃げ去ろうとする攻撃機に照準。

     その間加賀は、考えていた。

     これだけ攻撃機に割合を裂いているということは、制空権を得るための戦闘機が少ないという事。

     それならば制空権を収められるだろう、という事。

     そして――何を思って瑞鶴が、そんな行為に打って出たのかという事。

     制空権を捨てるのは博打だ。

     それから先――戦闘の最中、常に上空への警戒の必要が生まれる。水上以外からも敵の攻撃が来る。

     それでも、自分の艦隊の速力なら回避できると判断したのか。

    428 = 1 :


     そして、航空機からの観測情報を元にすれば長大砲撃の照準の精密さも増す。

     言うなれば、加賀たちに理がある行為。

     近付かれる前に撃つ弾の命中精度が上がるのである。

     そうまでして分断を行い――――行えば勝てると思っているのか。

     碌に戦闘機を出さぬなら、初邂逅でそのまま空母が沈められかねない。艦隊が被害を蒙りかねない。

     そんな使い捨てのような手法で。


    (五航戦……)


     何が何でも、分断に掛かった。

     命中率が碌にない――されど全く対処を行わずという訳にもいかない、魚雷を放って。

     母艦から切り離されたら、あとは発射時に打ちこんだ諸元を元に進む魚雷。

     切り放し投下さえすれば、攻撃機がどうなろうと一撃だけは放てる。

     しかしそれは、空母が取る手法ではない。

     いくら演習と言っても。いくら人間が搭乗しないと言っても。

     『一発打ち切りの鉄砲玉として使って』『後は鴨撃ちを受けろ』――などというのは、空母のすべき事ではない。


    (……叩きのめしてから事情を聞きます。頭にきました)

    429 = 1 :


     心中で吊り上がる加賀の眦。

     彼女の怒りに呼応するように、烈風が主翼後部のフラップを降ろす。

     途端に得た空気抵抗で速度を落とした機体が、急速旋回。

     早ければ早いだけ、旋回には半径を要する。それを防ぐためには速度を落とす必要性。

     低速でも揚力を得るための仕組みがフラップ。この場合のそれは、空気抵抗を生み出すための装置。

     猛烈な憤怒に呼応し機首を返した戦闘機が、母艦への帰投を目指す攻撃機の尻を猛追する。

     そして並んで、正面から瑞鶴を目指した爆撃機と戦闘機。

     その場を押さえてしまえば、母艦へ戻ろうとする攻撃機を挟み撃ちにする手立て。

     視界の端で空戦を見やりつつ、すぐさま報じられる筈の制空権確保の報を待つ加賀は――


    『……そんな』


     呆然と、呟く。

     制空権の奪取が出来ぬ訳ではない。ただそれだけに驚いた訳ではない。

     少なくない数の爆撃機が姿を消した事に、加賀は驚いていた。


    「どうしたんスか、加賀さんッ!」

    『どういう理屈か判らないけど……やられました』

    430 = 1 :


     淡々と――されど震えた声で漏らす加賀に、仗助は駆けだした。

     彼が位置する島の、高台であれば。

     遠く、水平線の外で起きている事態の認識も出来る。高さに応じて、視野が増すからだ。

     そして、


    「アッ」

    『……どうしました、提督』


     飲まれた息と、思わず口から洩れた言葉。

     無線越しの加賀たちが異変を感じ取るには、あまりにも十分すぎるほどの仗助の驚愕。


    「ま、まさか……あの人……ッ」

    『どうしたの、提督――?』

    「まさか……ま、マジかよ……! マジでそーゆー事やるのかよォォォ――――ッ」

    『提督……!』


     仗助の顔から、血の気が引く。

     高台に上り、【クレイジー・ダイヤモンド】に双眼鏡を預けて限界ギリギリを睨むその目に映ったのは。

     加賀の戦闘機と比べたら、型落ちもいいところのゼロ戦。

     そして――


    「そ、操縦してるのが……【スタープラチナ】だとぉ~~~~~~~~~~~~~~ッ」

    431 = 1 :


     ふう、と帽子を押さえる男――空条承太郎。

     目の前で繰り広げられる空戦を、静かに瞳に映す。

     その先では、まるで来ると判っているかのように、ホンの僅かに翼を捻っただけで機銃を躱すゼロ戦。

     余りにも精密すぎる動き。

     敵の攻撃を見切るのも、機体の操作にしても――そのどちらも。


    「スタンドはこーゆー使い方も出来る」


     コックピットに乗り込んだのは、妖精ではなく――同じほどにサイズの縮まった【スタープラチナ】。

     ミニチュアの兵士の如く操縦桿を握り、時にはラダーを踏み込み空戦に興じる。

     爆撃機が大量に姿を消したのも、簡単な理屈。

     機銃で爆弾を撃ちぬいて、その爆発に巻き込んだのだ。周囲を。


    「実際自分で試してみるのはこれが初めてだが……どーにかなるもんだな」


     更に一機、烈風を喰う。

     流石に数の差が故に優勢とは行かぬが、それでも何とか辛うじて劣勢にならぬ程度に留めていた。

    432 :

    こりゃ、落とした烈風が蘇るわ

    433 = 426 :

    ラバーズ戦を経験してるかしてないかの差だな
    だがこっからクレイジーダイヤモンドも参戦したら艦隊戦ではマジチート

    434 = 1 :


     余計に能力を持たぬ、単純明快シンプルであるスタンドならば。

     複雑さを持たぬなら。

     その精神を反映して――精神そのものの現れであるヴィジョンそれ自体を変貌させられる。

     時にはスタンドの像の一部を伸ばして刃物が如く使う。或いはその甲冑を脱ぎ捨てる。

     能力がシンプル故に――承太郎やその仲間には、そのような芸当が出来た。

     これを利用して、体内に立てこもりその主を人質にしたスタンドと戦った事もある。


    (……遠くに行けないのが、難点だがな)


     故に、彼の隣に立つ瑞鶴という母艦の周囲までしか制御できない。

     そしてその瑞鶴は、不満顔。

     確かに――確かに航空機の性能が違った。明らかに加賀に水を開けられた。

     その実力にだって、開きがあるだろう。

     だが、戦うのは自分だ。自分でありたかった。そうあって欲しかった。


    「……こんな風なイカサマで勝って、提督さんは嬉しいの?」


     故に口を尖らせる。それは道理である。

    435 :

    エアロスミス風スタプラかな?

    436 = 1 :


    「バレなければ、イカサマじゃあねえ」


     静かに呟く承太郎に、瑞鶴の顔が朱に染まる。

     自分の腕が信頼されていない事。そして、艦娘の戦いに割りこまれた事。

     承太郎は気に喰わない言動の持ち主ではあるが――そこまで無礼だとは思ってはいなかったから。

     怒りと驚きと、失望。裏切られたという気持ちになる。

     ひょっとして、あの少年に一杯喰わされたから――それが許せずに一泡吹かせようとしているのか。

     その為に、瑞鶴から航空機の支配を奪ったのか。

     そんな己の苛立ちや鬱憤を、ただ晴らすために――その為に。

     しかしそんな瑞鶴には構わず、小さく一言。


    「……それに、ただ勝つつもりでやってる訳じゃあないぜ」

    「え?」


     承太郎としても、余り乗り気ではない――そう感じさせる声。

     思わず問い返す瑞鶴だったが、承太郎は構わずに顎を向ける。

     観ろ、という視線のその向こう。水上戦が開始されていた。

     上がる砲火。煙と爆音が、遠雷の如く響く――。

    437 = 1 :


     水上。

     左右から挟み込むかの如く、格子状にせんと放たれた魚雷。

     その場に止まれば無論攻撃を受け、かといって前進すればそこも餌食となる。

     魚雷が着水してから着弾までにかかる時間に、加賀たちがどれだけ移動するかを考えた雷撃。

     それだけでやはり、瑞鶴もかなりの腕前の持ち主と推して知るべきであるが――。


    「そ、それでこれ……どうするっぴょん!?」


     顔を青くしたのは、卯月。

     同じく忌々しげに眉を寄せた山城と、迫りくる魚雷の群れを睨む天龍。

     しかし、残る二人は違った。


    「提督……【クレイジー・ダイヤモンド】は、この戦いで使える?」

    『こう離れてちゃあ難しいし……落ちちまった艦載機には直接触れないと……』

    「そう」


     逆に満足げに頷く加賀と、目くばせする大井。

     二人にあったのは、驚愕でもなければましてや恐怖でもない。

     寧ろ獰猛に、頬を吊り上げた。


    「重雷装艦の私の前で……こんなお粗末な雷撃なんて」

    「なら、提督にお見せします。空母の実力を」

    438 = 1 :


     寧ろ好都合であると、嗤った。

     スタンドという特殊能力の陰に隠れがちだが――海上を自在に航行して、深海棲艦と戦える艦娘もまた超常の神秘。

     海域に出撃して無傷で勝利して返るという事が如何に凄まじいか。

     素人である仗助にはイマイチ通じぬが……。

     ここで、逆に彼の視界で間近に行えるのである。そんな自分たちのお披露目を。


    (別に北上さん以外に興味はない。興味はないけど……ちゃんと評価して貰わないと。ええ、そう。それだけ)

    (最初に助けられただけ……なら、見せる必要があるわ)


     大井は握り拳で。

     加賀は不敵な微笑。

     一瞬だけ視線を交わし合い、すぐさま二人のそれは別々の方向へ。

     加賀は空を見た。大井は海を見た。


    「そこの駆逐艦」

    「うーちゃんには卯月って名前があるっぴょ――」

    「魚雷に魚雷を当てなさい。いい?」

    「――ひぇ?」

    「海原は広いわ。問題ない」

    「いやいやいやいや、無理無理無理無理。無理だっぴょん!」

    439 = 1 :


     魚雷攻撃が、艦隊に与える影響は線だ。

     その延長線上にいると雷撃を喰らってしまう為、線の攻撃として対処が迫られる。

     だが、魚雷に魚雷を当てるというのは――点と点の攻撃になる。

     最早、無謀を通り越した神業だ。

     まだ、主砲を海に撃って魚雷を破壊する方が現実的だ。それにこれは、現実として行った船がいる。

     そんな神業を出来る訳がないと、卯月は首を振った。


    「冗談です、冗談」

    「なんだぁ……うーちゃんてっきり、本気かなーって」

    「私がやるわ」

    「なっ!?」

    「オレもやるぜ」

    「ひぇぇっ!?」


     事も無げに言う天龍と大井。

     いつの間に二人はそんな神業に目覚めたというのか。新手のスタンド使いか。

     目を白黒させる卯月を前に、天龍が言い聞かせるように腰を落とした。

    440 = 1 :


    「横からよぉー、こっち狙ってくるんなら……向こう目掛けて撃ちゃいいだけだろ」

    「そ、そんな簡単に……」

    「だってよー、……というかお前忘れてないか?」

    「忘れる……? 何を……?」

    「オレら、今は軍艦の大きさじゃないんだぜ」

    「あっ」


     軍艦ほど長大なら、その面積のどこかに当たれば死を免れぬが。

     人間大になった今なら、カバーに必要な面積は最小限になる。

     実に簡単でシンプルな理屈だと、天龍は嗤う。

     尤もこれは、敵が余りに遥か遠くで魚雷を放ち対処までに余裕があればこその芸当だ。

     敵の目的が分かっているのも大きい。

     即ち命中を主としている訳ではなく、分断を目的としているのだと。


    「片側二十門……酸素魚雷が火を噴くわ……!」


     そして、それをカバーできるだけの魚雷の数。何よりもそれが一番大きい。

     また、互いが砲撃戦となっていないというのもあるだろう。


    「甲標的からの観測も加えて……と。うん、いけるわね」

    441 = 1 :


     自信に満ちた大井の声。

     その一方での加賀は、もう既に水面に目を向けようとはしなかった。

     興味を失ったのではない。ただ、仲間に任せていいのだと思っただけだ。


    (さて……一つ思いついた事があるけど)


     言いつつ加賀は、仗助を回想した。

     相手が提督の力を利用するのなら、加賀もまたそれに合わせればいいだけ。

     この出会いに意味はあるのだ。提督との出会いには。

     意識を、瑞鶴へと差し向けた艦載機に集中する。次弾を放つ余裕はない。

     また艦載機を生み出していたら、時間を喰ってしまう。ひょっとすればあの奇策は、時間稼ぎかもしれない。

     ならば――


    (見せてあげるわ。空母……一航戦の力を)


     そう、静かに牙を剥く。

     相手はきっと素人ではあるまい。予め、航空機に対しての知識を持つものだ。

     即ち、生前の加賀や瑞鶴を知っている。

     なればこそ、艦娘としての戦い方をすればいい。

    442 = 1 :


     そんなときに、起きる反応。

     内心で一つ舌打ち。それから切り替える。ついでに、並んで航行する仲間に一言。


    「左右、艦載機がやられました。……対空砲火ね」

    「つまり……」

    「魚雷に紛れて、艦娘も来ます」


     攻撃機を叩き潰さんと向かったはずの戦闘機が、飲まれた。

     つまりこれも初めから罠。

     魚雷攻撃を行った側から――一度攻撃した側から二度攻める筈はない。

     そんな、ミステリーでの死体トリック……一度死んだと思わせて容疑者から外すトリックにも似た手法。


    (分散して左右からの挟撃……面白いわ)


     なるほど油断ならないと頷きつつ、やはり集中するのは正面だ。

     加賀は空母である。

     ならまず第一は、この空中戦に勝つ事だ。


    ←To be continued...

    443 = 1 :


    「なにしてるのよ、このクズ!」

    「オメー、提督に向かってクズってなんだクズって!」

    「執務」

    「ぐ……」

    「任務」

    「ぐぐ……」

    「開発」

    「うぐぐ……」

    「クズはクズだからよ。何か文句あるの?」

    「やかましい! それ以上どーこー言うなら舌を突っ込んだキスすんぞッ」

    「ふん! 口では敵わないからセクハラ? あんた本当にクズね!」

    「にゃにぃ~~~~~~~~~~~~~~~~!?」

    「そんな事してる暇があったら、もっと勉強しなさい!」

    「うるせーッ! おれは努力とか頑張るって言葉が嫌いなんだよぉー!」

    「このッ……クズ提督!」

    「へっ、クズ駆逐艦!」

    444 = 1 :


    「後で後悔して貰うぜ……おめーなんか他の艦娘が来たら解体だ、解体!」

    「後にするから後悔よ」

    「あぁん?」

    「二度も被せる必要はないわ。もっとちゃんと考えて物を言いなさいな」

    「やかましい――ッ! 国語の教師かおめーはよぉぉぉ~~~~~!」

    「それに解体? したいならすれば。言い返せないから暴力を振るう……この負け犬ッ」

    (こ、このガキぃぃぃ~~~~~~~~~~~ッ)

    「悔しかったらもっとちゃんと仕事したら? 言葉や暴力で見返そうなんて考えずに……ね」

    「フッフッフッ……」

    「……?」

    「確かに聞いたぜ……!」

    「なによ」

    「『解体をしたいならしても構わねー』ってな! これで他の艦娘が来てから泣いて謝っても遅いって事よぉーッ」

    「あっそ」

    「……」

    「……さ、執務にしなさい。このクズ」

    (うぐぐ……スカートずりおろしたろーか、このちんちくりん……!)

    445 = 1 :

    ここまで

    なるべく皆に見せ場を与えたいスタイル

    446 = 1 :

    「クズ提督」じゃあなくて……「クズ司令官」の間違いだった

    大人はうそつきではないのです。ただ、誤植されてしまうだけなのです

    447 :

    乙乙! なんつうか承太郎、せこいんだけど3部らしい戦い方って感じwwww
    そしてナランチャきたか…?

    448 :


    バレてるからイカサマということに……?
    まあ反則とかあるわけじゃないけど

    449 :

    >>447
    どう見てもジョセフだろ

    450 = 448 :

    努力とか頑張るって言葉が嫌いだからね


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