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元スレ響「貴音!?」たかね「めんような!」
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【計画倒れ】
たかね「『いちねんのけいは、がんたんにあり』…… たいへん、よいことばです」
響「昔の人はためになること言うよね」
たかね「それにまなび、わたくし、ことしのもくひょうをたてることにします!」
響「ほほー。まさかと思うけどラーメン何杯食べるとか、そういうのじゃないよね?」
たかね「ふっ…… わたくしをあまくみないでください、ひびき。もちろん、ちがいます」
響「へえ、じゃあ、どんなの?」
たかね「ことしは…… たくさんたべて、わたくし、ひびきよりもおおきくなってみせます!」
響「……たかね、目標って、一般的には努力でなんとかなるものにするんだよ?」
たかね「やってみないで、あきらめるのはよくありませんよ」
響「何事にも限度ってあると思うぞ、自分」
【昔は大人ももらえました】
たかね「ときに、ひびき。なにかわすれていることがございませんか?」
響「え? ……あれ、自分、なにか約束とかしてたっけ?」
たかね「おやおや、そのようなことでは、かんぺきのながないてしまいますよ」
響「えーっと…… ごめん、まだ思い出せないや。なあに?」
たかね「いたしかたありませんね、おしえてさしあげます。わたくしの、おとしだまですよ」
響「えっ」
たかね「おとしだま、です。 ……ま、まさか、しらないのですか!?」
響「いやもちろん自分は知ってるぞ。じゃなくて、なんでたかねが知ってるのかなぁ、って」
響「やっぱりこれも亜美と真美が元凶かー…… ほんと、ロクなこと教えないんだから」
たかね「それはさておき、わたくしにも、もらうけんりがあるはずです」
響「ちょっと待ってよ。むしろ、自分だってまだもらってておかしくない立場なんだからね?」
たかね「ですが、いまのわたくしのほごしゃは、ひびきでしょう?」
響「そりゃそうだけどさー」
たかね「ならば、まずはひびき、ほごしゃとしてのせきむをはたしてください!」
響「お年玉あげるのが保護者の義務だなんて話、初めて聞いたぞ、自分……」
響「はい、じゃあ、たかねにはこれあげる」ペラッ
たかね「まっておりました!」
たかね「…… はて、これは? きっぷ、ですか?」ピラピラ
響「できたてのほやほや、しかも自分のお手製で、ほかじゃ手に入らない超レアものさー」
たかね「しかし、ひびき。おとしだまとは、おもに、おかねだとききましたが」
響「たぶんそれ、たかねにとってはお金よりよっぽど嬉しいと思うよ」
たかね「そうなのですか? なぜですか?」
響「そこに使い方も書いといたから、まずはちゃんと読んでみて」
たかね「む。そのようにてまをかけずとも、ひびきがせつめいしてくれれば、すむのでは?」
響「たかねももう5歳のりっぱな淑女なんだし、たまにはお勉強しなくっちゃ」
たかね「…… いわれてみれば、たしかにそうです」
響「ん、がんばってねー」
たかね「ひ、ひびき! ひびき!!」タタタッ
響(おっ、きたきた)
たかね「このきっぷにかいてあることは、まことなのですか!?」
響「もちろん、まことだよー」
たかね「では、これをだせば…… しゅうにふたつめのかっぷめんをしょくしても、よいのですね!?」
響「うん、自分も大人として、アイドルとして、二言はないぞ」
たかね「なんと……、なんとすばらしいのでしょう!! ゆめのようなきっぷです!」キラキラ
響「でも使えるのは週に一枚限り、全部で七枚だけだから、タイミングはよーく考えるんだよ?」
たかね「む、むむむ…… たしかにこれは、いつつかうか、はんだんがじゅうように……!」
響(……苦しまぎれの思いつきだったけど、喜んでるみたいでなによりだぞ。ふふふ)
【Waxing Gibbous】
たかね「あっ、そうです! ひびき、ことしさいしょのおつきさまをみましょう!」
響「初日の出見に行くかわりの、初お月見かー。うん、風流でいいかもね」
たかね「もうそろそろ、まんげつになっているでしょうか?」
響「んーと、ちょっとタイミングが早いかなぁ。でも、あと一週間もしないくらいのはずだよ」
たかね「そうですか、わたくし、はやくみてみたいです」
響「そっか、そういえば、たかねはまだ満月見たことないんだったっけ」
響「おおー。もう、半月よりけっこう大きくなってるなー」
たかね「こんばんも、おつきさまはきんいろで、あかるくて…… とてもうつくしいです!」
響「うん、ホントに。今日は雲もないからよく見えるね」
たかね「まんげつのばんは、あれがまんまるになるのですね?」
響「そうだよ。この感じなら一週間もかかんないかな、あと三、四日くらいだと思うぞ」
たかね「そういえばひびき、しっていますか? おつきさまには、うさぎさんがいるのですよ」
響「へえー、たかね、それは誰に教えてもらったの?」
たかね「むっ…… だれでもありません。これはわたくしのはっそうです!」
響「そうだったんだ。ごめんごめん、その言い伝え、もともと有名なんだよ」
たかね「おや、そうだったのですか? ざんねんです」
響「それにしても、どうしてうさぎさんがいると思ったの?」
たかね「せんじつのゆきうさぎさんが、きっと、おつきさまへいったとおもいまして」
響「なるほど。じゃあ、お友達も一緒に、かな?」
たかね「もちろんです!」
たかね「それより、そのいいつたえは、なぜできたのでしょうか?」
響「満月じゃなくても、これだけ大きかったらわかるかな。ほら、あのお月様の模様がさ」
たかね「もよう?」
響「そう、影みたいになってるでしょ。あれがうさぎに見えるって、昔から――」
響「――ね! たかね? たかね、ねえ、たかねってば、聞こえてる!?」
たかね「……おや、ひびき? どうしました?」
響「あ…… もうっ、『どうしました?』じゃないぞ!? 急に黙り込んで、ぼーっとしちゃってさ」
たかね「…… ……わたくしが、ですか? ぼおっと?」
響「気になったから声かけても全然返事もしないし。自分、心配したんだからね?」
たかね「こえをかけていたのですか? ひびきが、ずっと?」
響「…… ちょっとたかね、ホントに大丈夫なの? 自覚もなかったなんて……」
たかね「い、いえ、なにもないのです。だいじょうぶ、ですよ」
響「まぁ、今なんともないならいいんだけどさ」
響「さ、もう十分見たでしょ? まだまだ寒いし、お部屋に戻ろうよ」
たかね「…… そう、ですね」
たかね「ひびき。さきほどの、おはなしなのですが」
響「先ほどの? どの話?」
たかね「あとどれくらいたてば、まんげつになるのか、というおはなしです」
響「あはは、そんなに楽しみなんだ。ちょっと待っててね、ちゃんと調べてみるから」
響「えーっとね…… うん、自分の見立てで合ってるみたい。あと四日ってところかな?」
たかね「よっか…… まんげつは、よっかごなのですね?」
響「うん、そしたら真ん丸なお月様が見られるぞ! もちろん晴れてれば、だけど」
たかね「きっと、はれますよ。そんなきがいたします」
響「だといいね。そうだ、前の日になったらてるてる坊主とか作ろっか!」
乙
なんだか物語が終盤へ向かっているような気配がして気になるような寂しいような……
なんだか物語が終盤へ向かっているような気配がして気になるような寂しいような……
まさか…まさかとは思うがフラグなのか?たかねが戻ってしまうのか?
このままずっとたかねと我那覇くんの掛け合いを見てたい気もするし、完結させて欲しい気もする
終わっちゃいそうなのは寂しいけどね
終わっちゃいそうなのは寂しいけどね
生存報告です。
相も変わらずお待たせしてしまっており申し訳ありません。
今月中には更新できる予定ですので、どうかもう少々お待ちください。
相も変わらずお待たせしてしまっており申し訳ありません。
今月中には更新できる予定ですので、どうかもう少々お待ちください。
乙
考えたらまだクリスマス近くから新年の期間しか経ってないんだもんな…月の満ち欠け一周も巡ってない
考えたらまだクリスマス近くから新年の期間しか経ってないんだもんな…月の満ち欠け一周も巡ってない
読み返して思ったが貴音はワニは平気でヘビだけが苦手なんじゃ…
うーん…なんだろ、この続きが読みたいけどこのままだと終わっちゃいそうで読みたくないから、このまま終わってほしい感
生存報告です。
少々立て込んでしまっており、まだ時間をいただきます。
先月のうちには更新を、などと言っておきながら、すみません。
今少しお待ちくださると幸いです。
少々立て込んでしまっており、まだ時間をいただきます。
先月のうちには更新を、などと言っておきながら、すみません。
今少しお待ちくださると幸いです。
響「じゃあみんな、おつかれー! 自分たちはお先に失礼するぞー」
雪歩「あれっ…… 響ちゃん、もう帰っちゃうの?」
響「うん、冬休みもそろそろ終わっちゃうし、今日はたかねのことかまってあげるつもり!」
伊織「なるほど、そういうこと。よかったじゃないの、たかね」
たかね「……ええ、そうですね」
伊織(あら……? てっきり大喜びしてると思ったのに、意外と反応薄いわね……)
律子「正月休み終わりがけで交通量も増えてきてるし、気をつけて帰りなさいよー」
小鳥「今日もお疲れさまでした、響ちゃん」
あずさ「また明日ね~、響ちゃん。たかねちゃんも、ばいばい」
響「うん、また明日! たかねもほら、ちゃんとあいさつしよう?」
たかね「あ…… そうでした。みな、おつかれさまでした」
響「はーっ、寒い寒い……! こんな日は急いで帰って、こたつであったかいもの食べなきゃね」
たかね「……そう、ですね。それがよいでしょう」
響「あれ…… ねえたかね、具合でも悪いの?」
たかね「はい? いえ、とくには…… なぜですか?」
響「だっていつもなら『ほんじつのめにゅーはなんですか!?』って、すぐ食いついてくるのに」
たかね「…… じつは、すこし、かんがえごとがございまして……」
響「考え事?」
たかね「あの…… ひびき。こんばんが、まんげつなのでしたね?」
響「そうだよ。よく晴れてるし、きっときれいに見えるぞー。たかねがいい子にしてたからさー」
たかね「そこでわたくし、おりいって、おねがいがあるのですが……」
響「あはは、今日はまたえらく神妙だなぁ。なに、どうしたの?」
たかね「またてんたいかんそくをしたいのです。あのおかへ、つれていってくれませんか?」
響「え…… えぇ!? こんな寒い日に、わざわざ? たかね、また風邪引いちゃうよ」
たかね「わたくしなら、だいじょうぶです」
響「今日はベランダから見ればいいでしょ。あそこに行くのはもっと暖かい日にしない?」
たかね「どうか、おねがいします、ひびき。わたくし…… どうしてもこんやは、あのばしょがよいのです」
響「……もーっ、しょうがないなぁ。それじゃ、しっかり寒さ対策してかなくっちゃ」
響「よーし、とうちゃーく、っと! ……ううー、わかってたけど、すっごい冷えてるなー……」
たかね「…… ……」
響「たかねは大丈夫? ホントに寒くない?」
たかね「ひびき」
響「ん? なあに?」
たかね「いつも、わたくしのわがままをきいてくれて、ありがとうございました」
響「……ちょっと、今日はどうしちゃったのさ? たかね、ずいぶんおとなしいじゃないか」
たかね「そう、でしょうか」
響「間違いないぞ、口数も少ない感じだし。なにかあったの?」
たかね「…… ……ひびき、じつは、わたくしは……」
響「うん、たかねが?」
たかね「ひびきと、おわかれせねばなりません」
響「……え?」
響「お別れ、って…… えっ、たかね、なんの話してるの?」
たかね「てんたいかんそくがしたいのは、ほんしんですが…… ここにきたのは、べつのりゆうです」
響「な、なに言ってるのさ。あのね、そういう冗談ってぜんぜんおもしろくないぞ」
たかね「きょう、このよる、おむかえがある、とれんらくがありました」
響「お迎え……? だから、いったい、なんのことなのか――」
たかね「…… ……きた、ようです」
響「えっ?」
響「……なに、あれ?」
響「え…… え、ええ!? ゆ、UFO!?」
たかね「こちらでは、そのようによぶことがおおいようですね」
響「なに平然としてるの、たかね!? 早くここから――」
たかね「だいじょうぶです。ひびきに、もちろんわたくしにも、きけんはありません」
響「…… ……ねえ、待って、『こちらでは』ってどういうこと?」
たかね「あれが、わたくしのおむかえです」
響「さっきからさっぱり意味がわかんないよっ! たかねのお迎えって、なんなのさ!?」
たかね「わたくしが…… "くに"へかえるときがきた、ということです、ひびき」
響「くに? くに…… って、かえる、ってそれ、どういう意味……?」
響「…… なんだあれ、今度は、人が出てきて…… どうなってるの、これ……」
たかね「……」
響「夢、きっと、夢だ…… 早く覚めてよ、こんな意味のわかんない夢なんかうんざりだぞ……!」
???「お久しゅうございます、姫君。先般お伝えしました通り、お迎えに上がりました」
たかね「…… ……おやくめ、ごくろうにぞんじます」
響「だ、誰なんだ、あんた! たかねのこと、どうするつもり!?」
???「姫君。これは?」
たかね「こちらでの、わたくしのかぞくで、ともです」
???「…… ご家族で、かつご友人…… ですか?」
たかね「はて。それになにか、おかしなことがありますか」
???「いえ、これは失礼を。承知仕りました」
たかね「ひびき。こちらは――」
使者「そのようなお気遣いは無用です、姫君。いずれにせよこの方とは二度とお会いしませんゆえ」
響「だから、自分を残して勝手に話を進めないでってばっ!!」
たかね「あの…… どうか、どうかおちついてください、ひびき……」
響「これが落ち着いてられる!? それよりたかね、自分から離れるんじゃないぞ!」
使者「……ご友人、ということですので大目に見ますが、あまり気安い口をおききになりませんように」
響「うるさい! さっきも聞いたけど、姫君うんぬんより前にまずあんた誰なの!?」
使者「私は、姫君にお仕えする家臣がひとりに過ぎませぬ」
響「家臣だの姫君だのって…… まるで、たかねが本当にお姫さまかなんかみたいな、」
使者「実際に姫君であらせられるとしたら?」
響「……え?」
使者「この方こそ、月世界の第一王女である姫君でございます」
響「月……? 月、って、あの…… あそこで空に浮かんでる、あの月?」
使者「いかにもその通りです」
響「……はは、あはは、は! 冗談、冗談だよね? ドッキリとか…… そういうの、でしょ……?」
使者「お信じになるかどうかは、ご随意に。こちらとしては事実をお伝えするのみですゆえ」
響「…… ……じゃあ、その、月の人、が…… なんで急にたかねを迎えに来るの?」
使者「所定の期間が経過したゆえにございます」
響「期間? 所定の、って……」
使者「姫君がこのたび地球に参りましたのは、王族の子女としての試練をお受けになるためでした」
響「し…… 試練? はは、ははっ、アイドルやるのがなんの試練だっていうのさ!?」
使者「そうではありません。地球を訪れること、それ自体が試練でございます」
響「…… つまり、大事に育ててきた子に、あえて一人で旅させる…… みたいな?」
使者「概ね、そのようなものと捉えていただいて結構です」
響「一応…… 理屈としてはわかるよ。でも、なら、なんで貴音はちっちゃくなっちゃったの?」
使者「ああ、そうでした。その点で大きな認識の齟齬があるのですね」
響「そご? ……どんな勘違いがあるっていうんだ?」
使者「姫君は "小さくなってしまった" のではございません。"元にお戻りになった" のです」
響「…… ……はっ?」
響「な、なに言ってるの……? 小さくなったんじゃない、って、でも現にいま、こんなちっちゃい子に――」
使者「おわかりになりませんか。現在のそのお姿こそが、姫君本来の風采である、ということですよ」
たかね「……」
響「えっ、ま…… 待って! どういうこと!? 自分、意味がわかんないよ!」
使者「そのままの意味でございます。一時的に成長しておられたのが、こうして元に戻られただけのこと」
響「バカ言わないでよ!! そもそも一時的に成長だなんて、そんなこと、できるわけが……」
使者「我々の技術をもってすれば、さほど困難なことでもありません」
響「でも、じ、自分のよく知ってる貴音は…… 自分より2歳も年上で、背だってずーっと高くって!」
使者「ですから、それらはすべて、この姫君の仮の姿であった、ということですよ」
響「見た目だけの話じゃないよっ! 態度とか知識とか、話の内容とかも…… 貴音は!」
使者「当然でしょう。身体の成長に合わせ、精神年齢を引き上げない理由などありますでしょうか?」
響「そ……、んな! じゃあ…… 貴音と、自分が、初めて会ったときから、ずっと……?」
使者「左様でございます。貴女が知っていたとお思いの"四条貴音"なる存在は、幻想に過ぎません」
響「…… なんで、なんでそんなことしたの!? たかねを無理やり成長させて、なんの意味があるのさ!?」
使者「先ほども申しました、試練をお受けいただくための準備のひとつです」
響「こんなちっちゃい子を、大人に見せかけて…… それでよそにひとりぼっちで放り出すのがあんたのいう試練なの!?」
使者「ああ、ようやくご理解いただけましたか。その通りですよ」
響「ふざけてるのか!? そんな危ないことやらせるなんて、いったいなに考えてるんだ!」
使者「どんなものであれ、試練というからには相応の危険が伴うものだと存じますが」
響「そういう問題!? それに、あんたの話だとたかねは月のお姫様なんでしょ!? なのに!」
使者「王族だからこそ、この程度も乗り越えられぬようでは到底務まらない、ということでございます」
響「それで―― それで、もし万が一のことでもあったら、取り返しつかないじゃないか……!」
使者「ええ。間引き…… とまでは申しませんが、ふるいにかけるような面もございまして」
響「…… ……なんだって?」
使者「過去には、政治的に対立する者らが試練の機会を利用し、王族を亡き者にした例もあったとか」
響「…… おかしいよ、そんなの…… 絶対おかしい、間違ってるぞ……!」
たかね「いままで、なにもおつたえできなくて…… ごめんなさい、ひびき」
響「…… たかねも、このこと…… 初めから、全部、知ってたの……?」
たかね「いいえ!! ちがいます! それだけはぜったいにちがいます、しんじてくだ――」
使者「姫君は本当にご存知ありませんでしたよ。少なくとも、四日前の晩までは」
響「なんであんたがそんなこと言い切れるのさ?」
使者「その時点でようやく、我々と姫君との間で連絡が取れたからでございます」
響「は!?」
使者「お迎えにあがる旨、その日時…… 同時に、姫君がお忘れだった情報もお伝えした次第でして」
響「忘れてた……?」
使者「……致し方ありませんね。ここまでお話しした手前、もう少しご説明して差し上げましょう」
使者「まずそもそも、試練に臨むにあたり、対象者は月の民としての記憶を一時的に抹消されます」
響「えっ…… どうして?」
使者「地球の民として溶け込めるように、ですね。その際、地球人としての仮の記憶も与えられます」
響「それじゃ、貴音の名前なんかのプロフィールも、全部うそっぱちだってことなのか……」
使者「苗字に関してはその通りです。『四条』という姓は、月の民が代々名乗ってきた仮の苗字でして」
響「! つまり、貴音って名前だけは本名だってこと?」
使者「はい。少なくとも音としては、もっとも近い表記と言って差し支えないでしょう」
響「……そう、なんだ。少なくとも自分、貴音のこと、全然知らなかったわけじゃないんだね」
使者「まあ、そういうことである、としておきましょうか」
使者「ただ問題は、我々の有する地球についての記録がいささか現状に即していないことにあります」
響「…… もしかして、貴音の言葉づかいがやたら時代がかってたのって……」
使者「そういうことです。数十年、部分的には数百年単位での乖離が生じてしまっていたようですね」
響「なるほど、ね…… さもそれが普通みたいな感じで喋ってたけど、そんな理由があったのか」
使者「また、当然ですが、年齢を成長させる施術の維持にはそれなりの熱量を必要と致しまして」
響「つまり、なに? 貴音が食いしん坊だったのも実はそこが原因だってこと?」
使者「仰る通りです。もちろん、姫君にその意識はありませんので、無自覚だったはずですが」
響「なんだか話が急すぎて、現実味はぜんぜんないけど…… 確かに、理にはかなってるね」
使者「さて…… では改めて、私が今回姫君をお迎えに参るまでの経緯をご説明しておきましょう」
響「うん。聞かせてもらうぞ」
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