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    元スレ咲「クク…是非に及ばず…」

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    401 = 374 :

    「ペーポンペーポン」

    (迂闊――!我としたことが風越の猫女に気を取られて…!)

    ゆみ(…アシストすら出来ないまま山が削れていく…)

    ゆみ(――嶺上二回に比べれば、海底などさして珍しくも無い)

    ゆみ(…だが。こちらも二回連続となれば――)

    402 = 374 :

    「ツモ――海底撈月」

    華菜(二連続…海底のみ…)

    華菜(いや…カンドラ三枚――!)

    華菜(あたしがカンしなければ…防げた…?)

    ゆみ(風越の…池田といったか。天江衣の海底を警戒しているようだが…)

    ゆみ(前局の私は聴牌を焦り天江に海底を回してしまい…然れど海底を防ごうと足掻いても結局は天江の手の内…これではまるで――)

    403 = 374 :


    透華「衣の特質が海底だけだと思ったら痛い目見ましてよ」フフン

    「そうだね。ボクもそれにやられたんだった。あれはもう必殺技とかそういうんじゃなくて、なんていうか」

    智紀「支配」

    「そう!」

    (えらい食い気味に反応したな今)

    「あの時ボクが対峙し…今も彼女らの前に屹然と立ち開かるそれは、只の女の子なんかじゃなくて――逃れられない運命そのものなんだ――」

    404 = 374 :


    華菜(状況はかなり酷いな…そういえば去年も終始こんな感じだったっけ…鳴いて天江を海底から遠ざけて、自分は勝負手を張って…その捨て牌で、天江の倍満に振り込んだんだ)

    華菜(大きな別れ道が二つとも死に繋がっていた――)

    華菜(誰も鳴かなきゃ親の天江に海底は回らない…)

    華菜(…お?なんだ、今までと違って…)

    ゆみ「……」タンッ

    華菜「チー!」

    華菜(鳴けるじゃないか!)

    405 = 374 :

    華菜(そうだ!要は天江に海底を回さないようにすればいいだけのことだし!)

    「……」チャッ タンッ

    華菜「ポンっ!」

    「……」ニヤリ

    華菜(あ…れ?今のポン…もしかして無意味…?)

    (さいごのおとーふ♪)

    「……」スッ

    「ポン!」


    透華「トップ親がヤミピンフを捨てて役無しに…デジタル打ちならば考えられないような打ち方ですわ」

    「でもこれで海底をツモるのは衣だね」

    406 = 374 :

    (…軌道に入ったか。こちらは…通常のツモでは手が進まん…それならばこれで――)

    「カン!」

    (…手が進んだ!これで軌道もずれた、が…)

    ゆみ(清澄、手が進んだようだが嶺上開花ではないのか…しかしこれでは新ドラが天江の副露に乗る…!)


    (関係ないんだ。そう、衣にそういった小細工は関係ない…――)


    「チー」

    華菜(ぐっ…またコースに戻った…!)

    ゆみ(仮に風越と天江衣の手が同じ程度ならば風越に差し込む方が断然マシ…だが、現状ではどちらが高いかなど知る術もないしそもそも萬子がない…)

    407 = 374 :

    華菜(やばい…)

    ゆみ(不味いな…海の底が見えてくる――!)

    (…成程な。此は正しく支配と呼ぶに相応しい――天江衣、貴様は正真正銘の魔物だ、認めよう)

    (なればこそ!益々以て逸る!)

    408 = 374 :

    ゆみ(ラスヅモで聴牌…しかし天江衣が海底を和了るのならば意味は無い…)スッ

    ゆみ「――っ」ゾクッ

    ゆみ(この感覚…怖気とでも言うべき、背筋を這うモノ…!まさかこれが…)チラッ

    「……」ズズズ

    ゆみ(…どうせこのまま指を咥えて見ていても、龍門渕の独壇場、か。ならば)

    ゆみ(もう一匹の怪物と戯れてみるのも悪くない!)パシィ!

    「カン!」

    「!」

    409 = 374 :

    「――折角の狂宴だ、独りで踊ってないで相手をしろ」ズアッ

    (清澄――ッ!!)

    「ツモ――嶺上開花ッ!」カッ

    華菜(もー…わけわかんないしもー…)

    ゆみ(清澄の宮永咲…やはりこいつも間違いなく、天江衣と同じ人種――!)

    ゆみ(さて…眠れる虎は竜を喰らってこちらに与するか…それとも総てを喰らい暴虐の限りを尽くすか、はたまた天翔ける竜の前に臥すのみか…。乾坤一擲、既に賽は投げられた。後は私次第だな)

    410 = 374 :

    (衣は子より親の方が好きなのに…!清澄の大将…よくも衣の親を!)プンプン

    (呉越同舟とでも?…いや、鶴賀の様子を見るに、ただ手に手を取って戮力一心というわけでもなさそうだが…)

    (孰れにせよ生猪口才!)ボゥッ


    「カンで手が進む清澄と鶴賀の一点読みがあってこそだな」

    透華「まったく、ムダなあがきをしくさりますわねぇ」

    「……」スッ

    (…あぁ――夜の帳が降りてくる――…)

    411 = 374 :

    ゆみ(この配牌…もし『天江衣の支配』と呼べるものが真に存在するのならば、自然に進んでもまた一向聴の袋小路か…ならば)

    ゆみ(いっそ戯れてみよう。その運命とやらと――!)ピシッ


    睦月「む…いきなりセオリー外…」

    智美「まーユミちんなりに何か考えがあるんだろう」ワハハ

    智美「うちらがここまで来れたのも一重にユミちんの作戦と指導のおかげ…あとはもう、ユミちんが好きなように楽しんでここに帰ってくるのを待つだけだ!」

    睦月「うむ」

    佳織「そうだね」

    モモ「部長さんいいこと言うっす」

    412 = 374 :


    ゆみ(よし、聴牌!できるじゃないか…!これで奴の支配が完全ではないことを知らしめる…!)

    ゆみ「リーチ!」

    華菜「なっ!?」

    華菜(次はこっちか!?捨て牌キモッ!こちとらこの点差をひっくり返さなきゃなんないってのに…!)チャッ

    413 = 374 :

    華菜(くっ…迷ってる場合か!)パシッ

    ゆみ「ロン。リーチ一発七対子…裏裏、12000だ」

    華菜(なんでこのタイミングで一発掴まされんだよぉ…ふざけんなし…)ジワッ

    ゆみ(すまんな…本来なら天江衣から取りたい点だが…こちらも見逃すほどの余裕がないのだよ)

    ゆみ(この親番…大事に扱いたい…)

     ゾクッ…!

    ゆみ(なっ――…)ゾゾゾ

    414 = 374 :

    「……」ニコニコ

    ゆみ(なんだ…今の圧迫感は…!?)タンッ

    「――ポン」

    ゆみ(…まさか…先程の私の和了りは天江衣の支配に逆らったからではないのか?ただ…嵐の前に海面が凪ぐかのように…天江衣が動いていなかっただけとでも…?)

    「ポン」

    ゆみ(これで二副露…ならばこの局は…)

    415 = 374 :

    華菜(鶴賀のやつ、いきなり青褪めてどうしたっていうんだ…?)タンッ

    「――昏鐘鳴の音が聞こえるか?」

    華菜「!?」

    「ロン――」ドンッ

    ゆみ(やはり出和了りもある、か…!)

    華菜(は!?)

    「世界が喰れ塞がると共に――おまえたちの命脈も尽き果てる!」ユラリ

    「清澄の…おまえも戯言を遺して逝くがいい!」

    「ホゥ…」

    416 = 374 :


    華菜(なんだこれ…めちゃくちゃじゃないか…)

    華菜(キャプテンがいつだか言ってたっけ…どんなつらい状況もそれはそれとして前向きに愉しんでいこうって…でもこんなの、無理!)

    華菜(ココは私だけの場所じゃない…キャプテンが、風越のみんなが頑張って辿り着いた場所…このままじゃ――)

    華菜(みんなの全国への夢が、私のせいで…!)ジワッ

    「――ツモ!」ガカッ!!

    華菜(…そん、な)ガクッ

    417 = 374 :


    「前半戦終了――!!」

    「大きく沈んだ風越と独走状態の龍門渕――!清澄、鶴賀もなんとか食らいつきたいがどうなるか!」

    「残すはあと半荘一回――!!」


    「フン…」

    (あっ)ブルッ

    「…催した。しばし嶺の上まで花を摘みにいってくる」ガタッ

    華菜(…やかましーし)グスグス

    418 = 374 :

    華菜(どーしてこんなことになっちゃったんだろ…今年こそはって思ってたはずなのに…)

    美穂子「――…華菜」

    華菜「!」

    美穂子「来るなって言われてたけれど…来てしまったわ…」

    華菜「キャプテン…」

    美穂子「でも…何を言えばいいのか、言葉が見つからないの。それでも…傍に居てあげたい。それじゃ…駄目かしら?」ツツ…

    華菜「…はい。お願いします」

    華菜(また…また、泣かせてしまった…この人を…――)

    419 = 374 :


    「……」ヂュー

    藤田「やァ衣。今年も調子良さそうじゃないか」

    「にゅ。フジタ…調子の良し悪しなど関係あるか。あと小半時もすれば日降ちだ、尚更に衣が負けるわけがない」

    藤田「日没とか関係あんの?やっぱお前おもしろいわ」

    420 = 374 :

    「なんならこの後にフジタも相手してや…」

    藤田「……」スッ ナデナデ

    「ふわっ!…って撫でんなセクハラ雀士!」ババッ

    藤田「…そろそろ、麻雀を打てよ衣」

    「は?麻雀ならまさに今打ってるぞ?」

    藤田「ばか。お前のは打ってるって言わないんだよ。――打たされてるんだ…――」


    421 = 374 :


    (宮永さん…どこにもいない…どこに行ってしまったの?)タタタッ ポヨヨン

    (終わり際…なんだかなっさけない顔をしてたように見えたし…まさか相手が怖くて戻ってこれなくてどっかすみっこで頭を抱えて震えながら大泣きしてるなんてことは…)

    「……」

    「……」ゾクゾクッ

    (いいえ!宮永さんに限ってそんなこと!……………………ありえません!)

    422 = 374 :


    「……」

    (不味いな…)

    (――彷徨える仔羊……ッ!!)

    (いやいやそれどころじゃないよ…結局こっちにトイレなかったし…このまま後半戦に間に合わなかったら部長や原村さんにおこられちゃう…やばいよそれだけはなんとしても回避しないと…)

    (うすうす感づいてはいたけど、私ってもしかしてちょっと迷子癖がある…?いやそんなまさか)

    423 = 374 :

    (…我が魂魄よ、今一度我をラグナレク-終末の日-に約束されし戦場へと引き合わせよ!後生だ!おねがいっ!)

    「宮永さんっ」タタタ

    「! おお、戦乙女よっ!」パァァ

    「何してるんですかっ!」

    「っ」ビククッ

    424 = 374 :

    「大将戦の途中なんですよ?」ズズイ

    「うぅ…催したのだから致し方なし…」

    「…また迷子ですか」ハァ

    「迷子じゃないっ!天地神明に誓って!」

    「…魔王様ともあろう者が天地神明に誓っちゃうんですか?」ジトー

    「うっ」タラリ

    「…ふぅ」ヤレヤレ

    「ぐぬぬ…」

    425 = 374 :

    「――絶対勝つって…約束しましたよね?」

    「…ウム」

    「破ったら私の言うことなんでも聞く、とも」

    「…ウム。……ウム?」

    (言ったかな…?)

    「なら、合宿の時の…いえ。初めて私たちが出会ったあの日のような、自信に満ち溢れた苛烈なあなたを見せてください」

    「…是非に及ばず!」

    426 = 374 :

    「さぁ、いきますよ!もう始まっちゃいます!」グイッ

    「ええっ?私まだトイレ済ましてない…!」タタタッ

    「試合前に行かなかったんですか!?」タタタ

    「だって…原村さんの試合見てたし…」

    「っ」ドキッ

    「クッ…疼く…」

    「とっ、とにかく!急いで終わらせればいい話です!だから急ぎましょう!」ダッ

    「あ、ちょっと…!せめてもちょっと小走りで…っ!」タタタ

    427 = 374 :

    「県予選、最後の決勝戦の、さらに最後の後半戦――!この半荘が最終決戦になります!」

    「全国に行けるのはこの中で一校のみ…!さぁ、運命の後半戦…開始です――!!」



    (――…不思議だ。こんな状況なのに。相手は今まで打ってきた中でも文句なしにトップクラスの強さだっていうのに…)

    (いつもの調子とは関係無く――どうしようもなく、滾る!!)ボッ

    (これは、そう…久し振りに牌に触れた『あの日』に近い感覚…)

    (もっと…もっと麻雀を愉しみたい!)バッ

    428 = 374 :

    華菜(清澄の、眼帯取ったのか…だけどそれが何になるっていうんだ…)

    ゆみ(……?清澄の様子が前半戦と違う…?前半はどこか調子外れた雰囲気を残していたが、今はやけに――静かだ…)

    「……」チャッ

    「……」ズズ…

    429 = 374 :

    (為すべきことは変わらない…衣は衣の麻雀で勝つ!フジタめ、戯けたことを抜かしおって…)

     チャプ…ザザァ…

    ゆみ(…くっ)

    華菜(このままじゃ…前半戦と同じ…海底を天江衣にツモられる…)

    「――リーチ」

    ゆみ(これが…)

    華菜(全国レベルの力だって言うのかよ――!)

    「ツモ、海底撈月――」

    430 = 374 :

    「これで三回目の海底撈月ですね…正直異常ですよ」

    藤田「海底だけじゃないさ、すべてが異常すぎる」

    藤田「天江以外の三人の配牌とツモすべてを合わせても聴牌できない、完全に近い一向聴地獄…――だが、それでも防げる手はあった」

    「…清澄の四索、ですか…?清澄が四索を鶴賀に鳴かせれば潰せたと」

    藤田「ああ。だが、清澄はそれをしなかった」

    「しなかったって…そもそもわからないでしょう?そんなこと」

    藤田「…まぁな」

    藤田(清澄からしたら嶺上開花の可能性が残ってはいた。普通ならばそんな無に近い可能性を信じるやつはいない…)

    藤田(『普通ならば』…か。――気を付けろ、衣。そいつはお前に届き得る――!)

    431 = 374 :


    「わぁーい!衣の親番だーっ!さいっ、ころっ、まわれ~」ポチ カラカラ

    (畢竟するに――衣の支配を抜け得なければ、そも衣と土俵を同じくすることさえ叶わぬ。勝つだの負けるだのは其の次になって初めて考慮すべき事柄。そして何より、衣の支配は実に実に堅如磐石――)

    (フジタの烏滸言など一考の価値も無し!さぁ…闇の現を見せてやろう…)ズ…

    432 = 374 :

    華菜(…ツモや配牌を呪うのは弱者の思考だけど…これはもう呪うしかない…まるで悪夢だし)タン

    「ロン」

    華菜(…え?)

    「12000」

    華菜「……っ」クラッ

    ゆみ(不味いな…風越が危うすぎる…)

    ゆみ(この点差と残りの局数だ、退く事も妥協も許されず、故に天江衣からしてみれば与し易い…)

    ゆみ(このままでは搾り殺されるぞ――池田!)

    433 = 374 :

    華菜(東…鶴賀が一巡前に捨ててるし天江は二巡前から手変わりしてない…これは通るはず)タン

    「ロン!!」

    華菜(なっ…なんで…!?)ジワッ

    ゆみ(風越を狙い打ちだと…!?トバすためか?いや、奴は敢えて安い手にして…一体何がしたい…?)

    「――気付かぬか?点数を見よ塵芥共」

    ゆみ(風越…0点、だと!?)

    「汝等に生路無し!」

    435 = 374 :

    優希「すごいことになったじょ」

    「そうね、これはまずいわ…風越以外がツモ和了りをした瞬間に龍門渕の勝ちが決まるわ。…もちろん、もう嶺上開花もできない」


    (一筒を残していたら優勝が決まっていた。でも、衣はああやって、わざと相手を生殺しにして力の差を解らせるんだ…)

    (それはそう、敗者が自らの手で敗北の烙印を押すように仕向けて、心を折るために…。――ボクが見た絶望が、あそこにある…)

    436 = 374 :


    (…随分とまァ好き放題にやってくれる。人が開けた視界を慣らしている間に…)

    (傲り昂ぶり、何処までも傲慢に、何処までも傲岸に、不遜で尊大で、驕傲極まりないその姿勢――)

    (――嫌いではないぞ)ニヤリ


    「…今」

    優希「んー?」

    「宮永さんが…笑ってたような…」


    (思えば花天月地――我らは並び立つ宿命に在るのやもしれんな…)

    (ならばこそ!此処で終わらせるには勿体無い――!)

    437 = 374 :


    華菜「……」レイプメ

    華菜(…さむい)

    華菜(奴に生死を握られてる感覚…あたしは生かされてるだけ…惨めだな)

    華菜(あ…聴牌…今更かよ、はは…しかもリーチをかける点棒もないし…)

    華菜(でもこれでノーテン罰符でトぶこともなくなったかな…ツモれたら一番だけど――)

    「……」タンッ

    華菜「!!」

    438 = 374 :

    「……」チラッ ニヤリ

    華菜(天江…!くそっ、役がないから和了れないし…!でもまだ三枚…――)


    「――貴様が月を撈うというならば…我はまァ、取り敢えず死にかけの猫でも救っておくかな――」


    「?」

    「ポン、だ」カッ

    華菜(なっ――!これで残り一枚…!お願いします…あたしのツモる所にいて――!)

    439 = 374 :

    「カン」

    (フン…和了形になったか。だが和了れまい。然為ればお前は即敗滅!)

    「もいっこカン」

    (連槓 …?――小明槓っ!?)

    華菜「あっ…ろ、ロン!搶槓ドラ7…!」

    「ウム」

    (こいつ――!)

    「ン?」ニヤリ

    「……!」ゾクリ

    (清澄の…嶺上使い…!今のを故意にやってのけたのか…?)

    440 = 374 :

    華菜(…なんとか0点脱出…でもまだ絶望的な差があることは変わらないし、局数も残り少ない。親番もあと一度だけ…)

    華菜(…大きな手を狙いつつ、無理そうなら親の連荘支援か…でもそれでいいのか…――?)

    華菜(キャプテン…――!)

    441 = 374 :


    華菜『福路先輩っ!』

    美穂子『あら…池田さん』

    華菜『やっと追いついたし』

    美穂子『…いつも一緒に帰ってくれてありがとうね。私、こうして誰かと一緒に帰るのって小学生以来だわ』

    華菜『そーなんですか?』

    美穂子『ええ。私、よくうざいとか言われるから…』

    華菜『そんな…』


    442 = 374 :


    華菜『……』

    華菜『それなら!』

    美穂子『?』

    華菜『あたしだってうざさじゃ負けませんよ!図々しさなら負けません!だからあたしがキャプテンよりもっともっとうざくなってそれでキャプテンのそばにいれば、キャプテンよりあたしがうざがられるはずですっ!』

    美穂子『…やさしいのね、あなた』

    華菜『そんな、こと…』

    華菜『…あたし、図々しいので、ひとつお願いしてもいいですか?』

    美穂子『なぁに?』

    華菜『あたしのこと下の名前で呼んで、これからもずっと一緒に帰ってください――』


    443 = 374 :


    華菜(――…そうだ。あたしは図々しいんだ…!)

    華菜「にゃ―――――――――――っ!!」ニャー

    (咆号…?)

    ゆみ(ついにイカれたか…)

    華菜(そうだ…キャプテンの傍に図々しくも居続けるために…)

    華菜(今こそ覚醒するんだし――!!)スッ

    444 = 374 :

    華菜(…あれ?)

    華菜「誰か牌いじった?」

    ゆみ「否」

    華菜(…覚醒ッ!)

    華菜(――想像するんだ。この手をどう導き――どんな和了形を創造するのかを――!!)

    華菜(前を行く奴等との開きが絶望的なまでに遠い時――俯いて心折れたままじゃ牌まで弱くなる気がする)

    華菜(――もし…もしも神なんて存在がいるとするのなら、きっと前に向かう者を好いてくれるはず――!)キュッ

    445 = 374 :

    華菜(張った!…でもこれじゃ足らない…)カッ チャッ

    華菜(これで一盃口…まだだ。…ドラ、これで4000。――来た!平和がついてフリテン解消、高目で三色もつく!)

    華菜(天江…)チラッ

    華菜(…は、清澄以外眼中に無し、か。点差に胡坐を掻いてのうのうとしている君に目に物を見せて進ぜよう――!)パシィ!

    華菜(先の機会にあたしを殺さなかった事を悔いるがいい…――!)ギュアッ

    446 = 374 :

    華菜「――リーチせずにはいられないな」

    華菜(さァ…間抜けた面を拝ませてみろ魔物め――)クッ

    華菜「――ツモ!」ダァン

    「なっ――」

    ゆみ(まさか…!)

    華菜「リーチ一発平和純全三色一盃口…ドラ――3…」

    ゆみ(数え役満…!)

    (先程まで青息吐息だった風越が息を吹き返した――!?)

    華菜「既に決めたつもりか?――そろそろ混ぜろよ」ニヤリ

    447 = 374 :

    ゆみ(…結果的に二位になったわけだが…点差は未だ縮まらず、残るはこの東ラスと南場だけ、か…)

    ゆみ(モモ――…あの時の問い…いや、何時だって私ははぐらかしてばかりだったか)

    ゆみ(それは卑怯なのか臆病なのか…)

    ゆみ「チー」

    華菜(親の鶴賀が二副露…しかし一通も三色も無いはず。ならダブ東か?)

    ゆみ「……」タンッ

    華菜(東切り…?ダブ東でもない…?となるとチャンタか筒子染めか?)

    「……」パシッ

    ゆみ「ロン。11600」

    「……!」

    ゆみ(――やはり卑怯者かもしれないな。それでも…私は私だ、私は『加治木ゆみ』のやり方で、前へ進んでみせる――!)

    448 = 374 :

    (…清澄ばかり瞻っていたら…――此は如何に…奴儕の貌に絶念の色が聊かもない…)

    (拉ぎ折ったはずの心が何かに繋ぎ留められている――!!)

    (清澄もあれから粛々としている…暗がりに鬼を繋ぐがごとく、か…)

    「……」

    449 = 374 :

    (――もう止めよう、ヘンな口調や言葉遣いは止めにしよう…大将戦の前まではそう思っていたはずなのに)

    (この卓を囲んでいる今は…今だけは、こっちが素の自分みたいな、そんな気さえしてくる…)

    (天江衣ちゃん…加治木ゆみさん…池田華菜さん…みんながいる。そして…私もきっと、此処にいていい)

    (それだけのことが…こんなにも嬉しい――愉しい!)

    (眼帯は外した。きっともうこの包帯も要らない)シュル

    (私が――宮永咲が、今麻雀をしている――!!)

    450 = 374 :

    「――ツモ」コトッ パタッ

    華菜「…は?」

    ゆみ「!?」

    華菜(な、なんだその手――!?)

    (安手…血迷ったか…?)


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