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    元スレ京太郎「虹の見方を覚えてますか?」

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    みんなの評価 : ★★★
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    351 = 315 :

    噴火は神の怒りだからそれを鎮めるため、ってのは火山地帯ではよくある信仰。
    噴火して焼失しまうのは信仰が足りないからって理屈。
    大体そんな噴火は数百年に一度ってサイクルだがら、上手くできてる。

    352 = 1 :

    >>351
    へえ、そうなんですか。よく知ってますね、勉強になります

    353 = 1 :



    「?」

    石戸さんは国の宝、人間国宝クラスのおもちの持ち主だ。洒落ではない

    もはや言葉で語る必要すら感じないほどの、その圧倒的存在感。まさに鹿児島の、いや世界の至宝

    彼女の纏う雰囲気と相まって、そこから母性すら溢れているよう。女神だ


    小蒔「何がですか?」

    石戸さんと比べればサイズこそ劣るが、大きさと形、そしてそのサイズからは想像できない張り

    言うまでもなく、ワールドクラスのおもち

    間違いなく今年のおもち界のサイヤング・バロンドール賞の最有力候補とみていいだろう


    「……」ポリポリ

    上の二人の陰に隠れてはいるが、彼女も相当のポテンシャルを秘めている

    恐らく黒糖から得たエネルギーは全ておもちのために使われているのだろう

    洋榎さん、滝見さんから黒糖をいただいては如何だろうか?


    「どうかしました?」

    狩宿さん。あなたを見ていると、おもちは大きさだけじゃないということを我々おもちマイスターに思い出させてくれる

    サイズはどうしても、上の三人に劣る。これは間違いない

    しかし、指通りのよさそうな艶のあるビロードのような赤みがかった髪の毛

    思わず守ってあげたくなるような繊細で華奢な身体つき

    身体のラインはまるで黄金比のような普遍性をもち、巫女服との組み合わせは細部においてもほころびが見えない

    眼鏡は大人の知的さを演出し、髪に結ったリボンは少女のあどけなさをさりげなく残している

    我々はそこに一種の完成された美を見る。あなたにはそのおもちこそが相応しい!

    美しさという言葉はあなたのためにあるようなものだ

    354 = 1 :


    京太郎「イイ…」

    洋榎「……」ジロリ

    京太郎「近ごーろ私たーちは♪イイ~感じ♪」

    洋榎「……」

    よし、振り付けも完璧、ごまかせた。たぶん

    しかし、イカンイカン。四人の美女を前に思考がオバーロードしてしまった

    俺も修業が足らんな。反省せねば。イキねば。

    間違えた

    生きねば。

    まだ見ぬおもちのために!!

    355 = 1 :


    洋榎「むぅ…」

    京太郎「?」

    洋榎「う、うちかて、おかんの遺伝子が半分あるんやからいつか絹みたいに…」ボソボソ

    京太郎「叶わない夢を見るのは止めましょう」ポン

    洋榎「くっ」

    京太郎「それに、洋榎さんにはそれ以外に、素敵なところがたくさんあるんだから気にしない方がいいです」

    洋榎「ほんまに…?」

    京太郎「半年近く、洋榎さんのそばにいた俺が言うんだから間違いないです。保証します」

    洋榎「そ、そう…?そうか、そんなんや…ふふ、えへへ//」

    かわいい

    356 = 1 :


    「さあ、そろそろ練習始めましょう。時間が無くなっちゃうわ」

    洋榎「よっしゃ!」

    小蒔「私、頑張ります!」

    「力になれるか分かりませんが、お手伝いしますよ」

    「うん」


    洋榎「あれ、何か忘れているような気ぃするけど?」

    京太郎「そうですか?気のせいだと思いますよ」















    初美「あれー?」

    357 = 1 :

    疲れたので寝ます。やっと、半分以上を投下できました
    金曜日ですが、いつものように夜11時に投下できるか分かりません
    おそらく、12時ごろになるかと思います
    では、おやすみなさい

    358 :


    訴訟も辞さない………のですよー

    359 :


    麻雀以外ハイスペックかと思ったら打つ機会がないだけで麻雀もスペック上がってるんだな

    360 :

    乙ー。ネキ可愛いけど京太郎がこの先どうなるのか気になる

    362 :


    初美は犠牲になったのだ……

    363 :


    そろそろ京太郎回復に向けた取っ掛かりくらいは見つけたいところ
    しかし京ちゃんのお友達は京ちゃんに会えない大会でも遊びに来るのか……

    364 :

    この>>1清澄の雑用だが何だがのスレの>>1だったのか
    あのスレも確か似たような質問に回答だった気がする

    365 :

    トリップ検索したけどタイムリープの人だったんだね
    京健の描写や伏線回収が見事だったから今回も楽しみ

    366 :

    この静かな雰囲気見覚えがあると思ったらタイムリープの人か
    期待して舞ってる

    367 :

    タイムスリープ見てみたい
    誰かリンク貼ってください

    368 :

    >>1でもないのにurlはるのはちょっと…
    ぐぐってみたらいかが?

    369 :

    >>367
    http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1390033543/

    370 = 367 :

    見てきた
    すごく良かったわ

    371 = 1 :

    急な用事が入りましたので、今日の夜は投下しません
    もし待っていた人がいるなら、申し訳なく思います
    では、また

    372 :

    把握

    タイムリープなんの事かと思ったらあれか、良いSSだった

    373 :

    同じ人だったのか面白いわけだわ

    374 = 359 :

    デートの描写が似てるなとは思っていたけど同じ人だったとは

    375 :

    訂正。見直していたら気付きました

    >>336 上から三行目
    京太郎「俺が未来から来たって言ったら、笑う?」

    京太郎「俺、未来から来たって言ったら、笑う?」

    以上でお願いします

    376 = 1 :

    今日は夜11時とはいきませんが、12時過ぎには投下できると思います
    では

    378 :


    ________

    _____

    __




    練習が終わると、(俺と)洋榎さんは神社の境内から少し離れたところに、客間を用意された

    木造の建物で落ち着きがある。大阪ではこういうものは中々無かったので新鮮さを感じる


    京太郎・洋榎「ふぃー、疲れたー」

    洋榎さんにその場その場の危険を伝えるだけの簡単なお仕事のはずなのだが

    これは思っていた以上に集中力を使う


    京太郎「くっ…これが『能力』の使い過ぎの『代償』なのかっ…!」

    京太郎「だめだ、これ以上意識が……」

    洋榎「京太郎、京太郎っ!?だめや、目を閉じたらアカン!」

    洋榎「うちの目を見るんや!!アイズ・オン・ミーや!!」

    京太郎「どうやら俺は……ここまでのようです」ゴホッ

    洋榎「京太郎っ…」ポロポロ

    京太郎「洋榎さん…お願いだから…泣かないでください」

    京太郎「せっかくの綺麗な顔が台無しだ」

    洋榎「……」ゴシゴシ

    京太郎「最後に一つだけ……いいですか?」

    洋榎「……」コクリ

    京太郎「家族に……愛していると…つた……え」

    京太郎「……」ガク

    洋榎「京太郎ーーーっっ!!」

    379 = 1 :


    コンコン

    初美「ご飯できましたよー」

    京太郎「……」ムクリ

    京太郎・洋榎「はーい」


    洋榎「メニューなんやろなぁ。今から楽しみや!」ウキウキ

    京太郎「俺一回、鹿児島奄美の鶏飯ってのを食べてみたかったんですよ」

    京太郎「後で誰かに作り方聞いてもらえません?隣でメモするんで」

    洋榎「ええよええよ」

    京太郎「よしっ!帰ったら雅恵さんと絹恵さんにも、ぜひ食べてもらいましょう」

    洋榎「おっ、それええな」

    京太郎「さあ、行きましょうか」

    380 = 1 :


    永水の皆と食事を済ませた

    九州男児もびっくりの量の料理が用意されていたので、洋榎さんの分を少しいただいた

    どの料理も素晴らしかったが、特に豚骨料理がめっちゃ美味しかった。大阪に帰っても作ってみようと思う

    あと、食後に出された餡の入っていない軽羹(かるかん)も、素朴な郷土料理といった風情で楽しむことができた


    約束通り、洋榎さんに頼んで鹿児島料理のレシピを教えてもらった

    驚いたのは、石戸さんや狩宿さんよりも薄墨さんが最も料理に詳しかったことだ

    ただの露出ロリ枠と思って侮っていたが……大変申し訳ありませんでしたっ!!


    そして、お風呂も済ませ、歯磨きを終わらせると、いよいよ寝るだけとなった

    このまま床に就くのも悪くはないが、それでは味がなさすぎる

    洋榎さんも見当たらないし、外をブラブラしますか

    381 = 1 :


    外に出ると満点の星空。大阪では中々お目にかかることができなかった光景だ

    山奥の夜ということもあり、空気が澄みきっている

    神社が近いので、雰囲気も抜群に良い


    見晴らしのよい場所を求めてさまよっていると、二人の女性の後ろ姿を発見した

    洋榎さんと狩宿さんである

    二人の赤みがかった髪の色を後ろから眺めると、本物の姉妹よりもよっぽど姉妹らしい

    もちろん、狩宿さんのほうがお姉さんだ

    二人は霧島山の方を向いて、何か喋っているようだ



    「ここからの眺め、綺麗でしょう?」

    「今はまだ雪化粧してますけど、春になると緑が顔を出してくるんですよ」

    「5月の終わり頃になるとミヤマキリシマ(深山霧島)も咲き始めて、それはもう綺麗で」

    洋榎「ミヤマキリシマ…?」

    「ツツジの一種で、ピンクの花がとても綺麗なんですよ。それこそ一面に咲いて」

    洋榎「ツツジ…?」

    だめだこりゃ

    382 = 1 :


    京太郎「ほら、よく道路脇に植えてあって、春頃に咲く花のことです」

    洋榎「!」ピクッ

    京太郎「子供のころ、よくその花の蜜を吸ったことがあると思いますよ」

    洋榎「ああ…」

    「?」

    「今度来る時があったら友達と一緒に、その頃来るといいですよ。みんなで案内しますから」

    洋榎「うん、そん時は頼むわ」

    「ええ」


    「じゃあ、私はそろそろ行きますね。愛宕さんはまだここに?」

    洋榎「もうちょっとだけ」

    「分かりました。身体が冷えないように気を付けてくださいね。お休みなさい」

    洋榎「うん、おやすみ」

    「……」

    「あと、頑張ってください。愛宕さんはそのままでも十分すぎるほど魅力的だから、大丈夫ですよ」

    洋榎「あ、ありがとう…//」

    京太郎「?」

    383 = 1 :


    洋榎「行ったか…」

    洋榎「さて、乙女の会話を盗み聞きするとはええ度胸してるなぁ」

    京太郎「すみません。プライベートな会話をしているようではなかったのでつい」

    洋榎「そ、そうか…?なら最初の会話は──」ゴニョゴニョ

    京太郎「はい?」

    洋榎「いや、なんでもあれへん。気にせんといて」

    京太郎「はぁ」


    洋榎「何しにここへ?」

    京太郎「外に出たら星が綺麗だったので、眺めのいいところを探してたんです」

    洋榎「せやったん」

    京太郎「大阪ではここまで星がよく見えないんで、ここで見溜めしとこうと思いまして」

    洋榎「見溜め、ねぇ」


    京太郎「さっき狩宿さんも話してましたけど、星だけじゃなく霧島山も綺麗ですよね」

    洋榎「むっ。お、大阪にだって天保山あるし!」

    京太郎「天保山ってあーた…せめて愛宕山ぐらいは挙げときましょうよ」

    洋榎「はは、うちだけに愛宕ってか!こら一本取られたなー!」

    京太郎・洋榎「あっはっはっはー!!」

    洋榎「って、やかましいわ!!」ビシッ

    京太郎「……」

    洋榎「……」

    384 = 1 :



    洋榎「なぁ、京太郎」

    京太郎「なんです?」

    洋榎「…こんなとこまで来て、牌遊びに夢中になって、アホみたいやな」

    どうしたんだ、急にそんな。らしくない

    京太郎「そう、ですね」

    そうなのだろうか?


    洋榎「そや!せっかくやから、星のこと教えてくれへん?」

    京太郎「ん…ああ、もちろん構わないですよ」

    京太郎「今は見頃なんで、ネタはたくさんありますから」


    京太郎「この時期は、一年でも最も多い数の1等星を見ることができるんです」

    洋榎「1等星?」

    京太郎「特に明るい星のことをそう言うんです」

    京太郎「オリオン座は分かりますね?」

    洋榎「そんくらいなら」

    京太郎「例えば、今見えているオリオン座の、あの左上の星はベテルギウスっていうんですが、あれも1等星です」

    洋榎「ふーん」

    385 = 1 :


    京太郎「それでオリオン座の真ん中に、三つの星が並んでいるベルトがあるじゃないですか」

    洋榎「うん」

    京太郎「その少し下にぼんやりと光る雲みたいなもの見えません?」

    洋榎「うーん…うっすらとあるような、ないような」

    京太郎「大阪では見えませんでしたけど、それオリオン大星雲っていう星の赤ちゃんみたいなものなんですよ」

    洋榎「星の赤ちゃん?」

    京太郎「ええ」


    京太郎「初期の宇宙に存在した元素はほとんどが水素で、ごくわずかにヘリウムがあったと言われています」

    京太郎「水素はとても軽い元素ですが、質量があるので重力を及ぼします」

    京太郎「なので、長い時間をかけると水素の集団ができてくるんですよ」

    京太郎「オリオン大星雲もそうやってできた、水素の大集団なんです」

    洋榎「なるほど」

    386 = 1 :


    京太郎「もちろん、水素が集まってはい終わり、というわけじゃありません」

    京太郎「さらに水素が集まって重力が増していくと温度が上昇して、ついには核融合が起こります」

    洋榎「核融合?」

    京太郎「この場合は、より重い元素を作る過程と思ってもらって結構です」

    京太郎「つまり、水素を元にして、炭素や酸素などのより重い元素が核融合でどんどん作られていくんですね」

    洋榎「星も料理をするんやな。えらいやっちゃ」

    京太郎「おもしろい例えですね。まさにそんな感じです」

    京太郎「だけど、この核融合は鉄を作ったところで止まってしまうんですよ」

    洋榎「なんで?」

    京太郎「鉄はとても安定な元素なんで、この条件下ではそれ以上核融合が起こってくれないんです」

    洋榎「ふむ」

    387 = 1 :


    京太郎「けど、ここで疑問が湧きません?」

    洋榎「何が?」

    京太郎「例えば、洋榎さんが今持ってるスマートフォンなんか鉄より重い元素たくさん使ってますよね?」

    京太郎「それだけじゃありません。金・銀・銅などはもとより、ウランなんか鉄よりはるかに重い元素ですよ」

    京太郎「世の中に鉄より軽い元素が存在する理由は、さっきの説明でなんとなくは納得できます」

    京太郎「では、それよりも重い元素は一体どうやって作られたんでしょうか?」

    洋榎「う~ん…ギューン、バーン!、てな感じで?」

    京太郎「適当ですけど、かなりいい線いってますよそれ」

    洋榎「マジ?」

    京太郎「大マジです」


    京太郎「実は、ある質量以上の星は鉄の核融合が終わったあと、超新星爆発ってのを起こすんです」

    京太郎「この爆発、まるで新しく星が誕生するように見えるんで、爆発するのに『新星』なんて名前が付いているんです」

    京太郎「おもしろいでしょう?」

    洋榎「矛盾してるやん」

    京太郎「いえ、必ずしもそうとは言えません。この爆発の後には中性子星やブラックホールなどの新しい『星』が残るからです」

    京太郎「これらの星は、それ単体でも非常におもしろい性質を持ったものなんですけど、ここではその話は横に置いておきますね」

    洋榎「ええー」

    京太郎「今度暇なときにでも、話しますよ」

    388 = 1 :


    京太郎「さて、話が少し逸れましたけど、この超新星爆発が起こる時に、実は鉄より重い元素ができるんです」

    京太郎「そして、その爆発と共に今まで作られてきた様々な元素も宇宙にバーンとばら撒かれるわけですね」

    京太郎「こうやってばら撒かれた星の欠片が、何十億年かけて巡り巡って、今の地球に様々な元素をもたらしたんです」

    洋榎「宇宙の営み、壮大すぎるで…」

    京太郎「そうですね」

    京太郎「数十億年以上かけて、これらのことが起こっているって言うんですから」

    京太郎「もはや人間の100年なんて短すぎて、宇宙の欠伸にも満たないですよ」


    京太郎「あのオリオン大星雲もいつかは核融合が起こして、超新星になって、新たな星の元になるのかもしれません」

    京太郎「そして、オリオン座を形作っているベテルギウスは近いうちに超新星になると言われています」

    京太郎「まぁ、近い内といっても明日かもしれませんし、数万年後かもしれませんし、よく分かりません」

    京太郎「ただ、生きているうちに見ることができないかもってのは、ちょっと悔しいですね」

    洋榎「オリオン座なくなってまうん?」

    京太郎「星座といえど、不変じゃないんですよ」

    京太郎「……」

    389 = 1 :


    ああ、なるほど。このモヤモヤとした感じ、分かったぞ


    京太郎「さっき洋榎さんが、"牌遊び"って言って、俺もそれに同意しましたけど」

    洋榎「うん」

    京太郎「その台詞、取り消します」

    洋榎「は」

    京太郎「確かに、麻雀なんか星の歴史に比べれば、それこそ地球から見た軌道上のデブリのようなものかもしれません」

    洋榎「……」

    京太郎「けど、俺はそうは思いません」


    京太郎「麻雀は単なる牌を使ったルールの集合で、その牌にしたってただの樹脂の塊です」

    京太郎「それ自体には何の意味もありません」

    洋榎「……」

    京太郎「最初は大した戦略もない、運任せのゲームだったのかもしれません」

    京太郎「しかし、勝ち方が分かってくれば、戦略や戦術が生まれていきます」

    京太郎「勝ち方分かるなら、それはもはやゲームの枠を超えて競技なります」

    京太郎「けど、いくら技術的なことが幅を利かせても、運の要素を排除することはできません」

    京太郎「これこそ、勝負事の妙ですね。野球なんかもそうですが」

    390 = 1 :


    京太郎「今まで、洋榎さんや雅恵さんの対局を何度も間近で見ていて、気付いたことがあるんです」

    京太郎「"流れ"とかいうオカルト的なものが、その場を支配しているように見える時がありましたし」

    京太郎「数学的な統計上の判断が、命運を分けることがありましたし」

    京太郎「ミスとさえ言えないようなわずかなズレが、驚くほど明確に優劣を分けることがありました」

    京太郎「洋榎さんは、長いこと打ってるからこんなこと既にご存知ですよね?」

    洋榎「……」

    京太郎「けど俺は、こんな身体になって初めて実感することができたんです」

    京太郎「今まで真剣に、麻雀に取り組んだことがなかったからでしょう」

    京太郎「悪いことも、悪いばっかりじゃありません」

    洋榎「……うん」


    京太郎「あの、たった70センチ四方程度の卓上に、これまで数えきれないほど様々な思惑が駆け巡ったに違いありません」

    京太郎「賭け事として使われることもあったでしょうし、単に自身の矜持のためだったのかもしれません」

    京太郎「その中には人生を左右するようなこともあって、中には将来や夢を決定づけることも…」

    洋榎「……」

    京太郎「現代ではあれほどの競技人口があるんです」

    京太郎「長い歴史の中には、表に出ることもなく忘れ去られた人の数の方が多いのでしょう」

    391 = 1 :


    京太郎「俺には、もはやあの牌はただの樹脂の塊には見えません」

    京太郎「麻雀はルールの集合で、プレイヤーはそれに従っているだけなのだ、とは口が裂けても言えません」

    京太郎「"牌遊び"、と言うにはあまりにも勿体ない何かが、そこにあるように思えます」

    洋榎「……」


    京太郎「あっ、偉そうにしてすみません。話が長すぎました。最近俺、こんなんばっかですね」

    京太郎「イラチな洋榎さんにはきつかったでしょう?」

    洋榎「はっ、なに言うてんだか」

    京太郎「……」

    京太郎「俺は洋榎さんが麻雀しているとこ見るの、好きですよ」

    京太郎「だから、そんなこと言う必要はないです」

    京太郎「惚れ惚れするくらい、かっこいいんですから」

    洋榎「…うん」


    392 = 1 :


    しばらく沈黙が続いた後、それとなく視線を少し上げてみる

    本当に星が綺麗だ。それに比べて人間とはなんとちっぽけなことか

    でも、それでいいんだ。うん、それで


    洋榎「ハー…」

    京太郎「手、寒いですか?」

    洋榎「少し」

    京太郎「ちょっと待ってください。確かコートの中に予備のカイロがあったはず」

    京太郎「……」ゴソゴソ

    京太郎「……」

    京太郎「あー、洋榎さん。ボビー・オロゴンの出身地は?」

    洋榎「ナイジェリア」

    京太郎「現在セリエAのローマに所属していて、ベルギー代表歴もあるサッカー選手と言えば?」

    洋榎「ナインゴラン」

    京太郎「ナイジェ♪ナイン♪」

    洋榎「…なかったんやな」

    京太郎「人生なかなか、ままならないものですね」

    洋榎「せやな」

    393 = 1 :


    洋榎「あ」

    突然、何か気付いたような素振りをみせた

    洋榎「あー……//」モジモジ

    京太郎「……」

    洋榎「あ、あんなぁ……その…///」チラチラ

    京太郎「……」

    視線をあちこちに漂わせながら、手と手を合わせてモジモジさせている

    もしかして、ナックルカーブの練習だろうか?

    京太郎「洋榎さん、ボールの変化については流体力学でいうところのマグヌス効果の理解が重要でして──」

    洋榎「変化球の練習ちゃうわ!」

    京太郎「はは、冗談です。少しからかいすぎましたね、ごめんなさい」

    洋榎「もう、知らんっ!」プイッ

    うーむ、怒らせてしまったようだ。これはこれで、かわいいのだが……困ったぞ

    こうなれば、実力行使しかあるまい

    394 = 1 :



    京太郎「すみません、失礼します」

    ギュ

    洋榎「えっ」

    洋榎「~~っ!?///」

    京太郎「どう、でしょうか?」

    洋榎「……ま、まままままぁ、悪くはない、な///」ゴニョゴニョ

    京太郎「ならよかったです」

    洋榎「う、うん」

    京太郎「これなら温かいですね」

    洋榎「うん///」

    顔を赤らめながら、少し俯いたその姿はあまりにも可憐で健気だった

    それこそ、抱き締めたくなるほどに

    だが、急にそんなことしたりはしない。俺は紳士なのだ





    ほのかな温かさをその手に感じながら、二人でしばらく天球に張り付く星々を眺め続けた

    不覚にも、顔に熱がこもるのを感じてしまったが、これは洋榎さんには内緒だ

    男子といえど、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ

    395 = 1 :


    ──2月上旬 鹿児島




    2日目の練習も終わり、俺たち二人は境内の外を歩いていた

    今日はこのまま帰途に着くことはせず、このまま福岡の新道寺女子高校に行く予定だ

    時間と経費の削減だ


    京太郎「どうでした?」

    洋榎「なにが?」

    京太郎「収穫ありました?」

    洋榎「うーん……まだよう分かれへん」

    京太郎「そうですか」

    洋榎「でも、手ごたえってわけやないんやけど、何というか…」

    京太郎「?」

    洋榎「変わったような、変わらんような…」

    京太郎「どっちですか?」

    洋榎「言うたやん、分からんって」

    396 = 1 :


    確かに、対局を見ていても、前より打ち筋が変わってきているとは思う

    もちろん、良いか悪いかは別にして。というか、俺には雀士の繊細な機微などよく分からないのだが

    調子もだんだん取り戻してきているし、前の状態に戻るのは時間の問題だろう

    だが、前の状態に戻ったところで、あの大会で出会った彼らのような人間に勝てるわけではない

    俺の見立てでは、彼らを最初に見たときに感じたような危険な雰囲気を、洋榎さんからはまだ感じ取れない


    まあ、それはいいや。今は次の新道寺でどう成長できるかだ

    けど、あそこの人達、あんまりおもちがなかったんだよなぁ…残念


    京太郎「さぁ、行きますか」

    洋榎「りょーかい」

    397 = 1 :


    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




    「行ってしまいましたね」

    「あっという間だったわね。少し寂しいわ」

    初美「光陰矢の如し、ですねー」

    「うん……」ポリポリ

    小蒔「私、今日の対局中の記憶、ほとんどありません…」

    「神様降ろしちゃったから、仕方がないわね」

    初美「ですねー」


    小蒔「愛宕さん、大丈夫でしょうか?」

    「確かに心配ですね。全国大会のときに比べて、らしくありませんでしたし」

    「まるで、メジャーの固いマウンドにまだ慣れていない状態で、新しい変化球を試しているようなものだったわね」

    「「……」」

    「…ごめんなさい、分かりずらかったわね」

    初美「まるで、適正ポジションは左サイドバックなのに、急遽ボランチを任されてしまったかのような状態でしたよー」

    「「……」」

    初美「…ごめんなさい、分かりずらかったですねー」

    398 = 1 :


    小蒔「あっ、私それ知ってます。『天丼』って言うんですよね」

    「姫様、どこでそれを?」

    小蒔「愛宕さんから直接教えてもらいました」ドヤッ

    「姫様、よかったですね」

    小蒔「えへへ」




    「そういえば、小蒔ちゃんが今日降ろした神様は…?」

    「えーと、確か。ニニギの──」

    「え」

    「どうかしました?」

    「い、いえ……私てっきり一番弱い神様だったのかと思ってて」

    「どうしてですか?」

    「あら、見てなかった?だって彼女、危うく姫様を完──」




    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    399 = 1 :


    ──2月中旬 長野




    鹿児島の後は、福岡の新道寺女子

    その後も全国各地を飛び回り、奈良、広島、東京などどこにでも行った

    そして、いよいよ全国(ほぼ)女子高巡りも最終目的地


    洋榎「うーん、なーんもあれへんなぁ」

    京太郎「何もない、があるんですよ!!」

    洋榎「べ、別にムキにならんでもええやん…」

    京太郎「まぁ、ほんとに何もないんですけどねー」


    俺たちは今、長野県の清澄高校

    言わずもがな、俺の母校に向かって歩いている



    洋榎「……」キョロキョロ

    京太郎「どうしたんですか、キョロキョロして」

    京太郎「そんなことしてると、県警にマークされますよ」

    洋榎「いやな、京太郎はここで育ったんやなぁ思て」

    京太郎「それはそうですけど、楽しいですか?」

    洋榎「楽しいっちゅうか、興味深い」

    京太郎「……」

    どうしよう。かなり嬉しいぞ、これ

    400 = 1 :


    ________

    _____

    __




    ─清澄高校


    半年ぶりくらいか、ここに来るのは

    みんな元気にしているだろうか?

    あれからもっと強くなることはできたのだろうか?

    早く会いたいような、でもそうでもないような。変な気分だ


    手に汗が溜まるのを感じる。だめだ、なんだか緊張している

    洋榎さんが部室の扉をノックしようとしている。しかし、止めてはいけない



    コンコン

    洋榎「失礼します」

    京太郎「……」


    ガチャ


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