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    元スレ京太郎「虹の見方を覚えてますか?」

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    151 = 1 :


    ――11月下旬 大阪




    時が流れるのは早く、11月の終りが見えてきた

    しかし、特に事態は進展していない

    だけど、別に諦めたというわけではなく、ただ待つことにした

    押して駄目なら引いてみろ、というが…アプローチの仕方を変えてみるのも一つの手だろう

    そして、これでも駄目ならまた別の方法を採ればいい


    さて、今日は土曜日

    俺は居間でテレビを見さしてもらっているのだが、他のみんなはというと


    雅枝「それや、ロン」

    絹恵「あちゃ~…」

    洋榎「絹はまだまだやなぁ」


    三麻にいそしんでいた

    俺は参加することができないので、テレビで映画を鑑賞しながら、家族麻雀の雰囲気を味わっている

    贅沢な休日の過ごし方だ

    152 = 1 :


    洋榎「絹の仇はうちがとる。たまには、おかんをギャフンと言わしたるわ!」

    絹恵「お姉ちゃん…」

    雅恵「ギャフン」

    タン

    洋榎「京橋はっ♪ええとこだっせ~♪グランシャトーが、おまっせ~♪」

    京橋グランシャトー…

    雅枝「おお、えらく余裕やなぁ」

    洋榎「……うーん、これやな」



    京太郎「洋榎さん、それは切らない方がいいですよ」

    タン

    洋榎「え」

    雅枝「ロン」

    洋榎「うそ…やろ…」カタカタ

    雅枝「洋榎もまだまだやなぁ、そんなんでプロやってけるのかいな」

    洋榎「そんなん考慮しとらんよ…」

    京太郎「……」

    153 :

    このまま光の碁みたいに守護神やってけばいいんじゃないかな?

    154 = 1 :


    洋榎「おっ、もうこんな時間か。ちょっとテレビ見てくる」

    絹恵「麻雀は?」

    洋榎「とりあえずしまいや」

    雅枝「勝手なやっちゃなぁ…」


    洋榎「リモコン借りるでー」

    京太郎「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。今いいところなんですから」

    洋榎「それは聞けへんなぁ…なにせこれからコマンドーの吹き替え版がやるんやから」ウキウキ

    京太郎「はぁ…」

    洋榎「し・か・も、玄田哲章版なんやで!」

    京太郎「コマンドーなんか、しょちゅうやってるじゃないですか?」

    洋榎「な、なんか…やと!?」

    京太郎「確かにユーモアのセンスは認めますが、正直勢いだけでおもしろくはないでしょう」

    京太郎「最後の銃撃戦なんて何ですかあれ?被弾ゼロとかジャック・バウアーも真っ青ですよ」

    155 = 153 :

    京ちゃん……コマンドーはアクションやない、アクションコメディなんや……!そういう目線で見るんとおもろないんや!

    156 = 1 :


    洋榎「き、きさま…言うてはならんことを」

    洋榎「自分こそ、薬中・パロディ・お下劣テディベアのクソ映画なんか見てるやないか!」

    京太郎「ク、クソぉ!?」

    洋榎「せやせや」

    京太郎「洋榎さん筋肉モリモリマッチョマンの変態に殴られて、頭おかしくなっちゃたんじゃないんですか?」

    洋榎「はぁ!?」

    京太郎「……」

    洋榎「……」

    洋榎「はは、もうえええわ…久しぶりにキレちまった」

    京太郎「それはこっちの台詞ですよ…」


    京太郎「こいよ洋榎ット!リモコンなんか捨ててかかって来い!!」

    洋榎「野郎、ぶっ殺してやらぁ!!」


    雅枝「何が始まるんや?」

    絹恵「第三次愛宕大戦や…」


    京太郎・洋榎「うおおおおおーーーー!!!!!!」

    157 = 1 :


    ________

    _____

    __



    洋榎「ずみまぜんでじだー」ドゲザー

    雅枝「分かればよろしい」

    洋榎「さすが、おかん。話の分かる!」

    雅枝「まったく調子のいい…ちょけてばっかしなんやから」ハァ

    雅枝「最近よう食べるわ、独り言多いわ、挙句に一人芝居まで…ほんま大丈夫か、洋榎?」

    洋榎「」

    雅枝「ま、ええわ。そんだけ元気有り余ってるなら、外で遊んできなさい」

    洋榎「…はい」

    158 = 150 :

    ひとり上手ネキ

    159 = 1 :


    洋榎「はぁ…家追い出されてもうた」

    洋榎「せっかく、楽しみにしとったのに。最悪やわ…」

    洋榎「ま、ええか。どこ行こかなぁ。久々にゆーこと遊びに行こうか、それとも――」

    京太郎「それとも?」

    洋榎「…なんで、おんねん」

    京太郎「さっきのあれは俺にも責任がありますから。付き合いますよ」

    洋榎「律儀なやっちゃなぁ」

    京太郎「そのくらいしか、取柄がありませんからね」


    洋榎「うーん……!!、そや、須賀はまだ大阪のことよう知らんのやろ?」

    京太郎「そうですね、洋榎さんの家の周辺と、あと千里山の方をちょこっと見たくらいですね」

    京太郎「一応、大阪駅と梅田駅の周辺は最初着いたときブラブラしましたけど、なにせ上の空でしたから」

    京太郎「生活圏が洋榎さんの家の周りくらいですし、まだ知らない所はたくさんあると思いますよ」

    洋榎「ほうか…せやったらうちと大阪観光と洒落込もうか!」

    160 = 1 :



    京太郎「おっ、いいですね。府民自ら案内してくれるなんて」

    洋榎「せやろー、感謝するんやで」

    京太郎「で、どこ行くんですか?」

    洋榎「そうやなぁ、あんましたくさん見るのも疲れるし」

    洋榎「今日はミナミ行ってから、その後天王寺案内したるわ」

    京太郎「ここから南っていうと、堺ですね!!」

    洋榎「……もしかして、ツッコミ待ち?」

    京太郎「…慣れない事はするもんじゃないですね」


    洋榎「ほな行こかー」

    京太郎「ああ、待ってー」

    161 :

    地下街はアカン

    162 = 1 :


    ―心斎橋駅



    洋榎「まずは、こっからやな」

    京太郎「心斎橋をブラブラすること…いわゆる『心ブラ』ってやつですね」

    洋榎「おっ、よう知ってるな」

    京太郎「説明書は熟読するタイプなもんで。観光ガイドを少し読みました」

    洋榎「まぁ、今では死語になってるけどな」

    京太郎「時代ですねー」


    洋榎「心斎橋筋はほっとんど商店街になってるんやで」

    洋榎「けど流石に全部回ってたら時間なくなるから、今日はとりあえず心斎橋筋商店街だけやな」

    京太郎「ラジャー」

    163 = 1 :


    ―心斎橋筋商店街



    京太郎「結構混んでるものですね」

    洋榎「休日やしなぁ」

    京太郎「いちいち話するのにも気を遣いそうです」

    洋榎「まぁ、周り見て話すから平気や」


    京太郎「そういや、この商店街の特徴とかないんですか?」

    洋榎「特徴~?んー、そうやなぁ……」

    洋榎「あっ!服屋が多いな、それに靴とかアクセサリーとかの店も」

    京太郎「ファッション関連のお店が多いってことですか?」

    洋榎「それやそれ。ここに来れば、大体揃うような気ぃするわ」

    洋榎「うちも絹とかと一緒に来ることあるし」

    京太郎「じゃあせっかくなんで服買ってもいいですか?冬服のストックが少ないんで、もうちょい欲しいんですよね」

    洋榎「ええで」

    164 = 1 :


    ―服屋



    洋榎「そういや、買い物っていつもどないしてるんや?」

    京太郎「それを聞いちゃいますか…」ハァ

    洋榎「な、なんや…まさか!?ぬ、盗――」


    京太郎「商品選んで、自分でレジ打つだけです」


    洋榎「そのまんまやん!」

    京太郎「盗みなんてくだらないこと、するわけないでしょう」

    京太郎「今ではかなりの種類のレジを扱えますよ。長野が誇るレジ打ちの京ちゃんとは俺のことです」

    洋榎「かっこわるっ」



    京太郎「でも、今日は洋榎さんがいるんで会計の方お願いしますね」

    洋榎「ええよ」

    京太郎「ありがとうございます。洋榎さんもついでに何か買っていきません?」

    洋榎「せっかくやけど遠慮しとくわ」

    京太郎「なんでです?」

    洋榎「考えてもみ。ただでさえ男物の服ばかり買う変な客なのに」

    京太郎「なのに?」

    洋榎「さらに…例えばな試着室出た後、須賀に『どう?似おてる?』、なーんて間違って言った日には…」

    京太郎「男子としては憧れるシチュエーションですけど、間違いなく危ない人認定されますね」

    洋榎「せやろ、だから今日はよしとくわ」

    京太郎「なんかすみません…」

    165 = 1 :


    ________

    _____

    __



    京太郎「おっ、やっと商店街抜けましたね」

    洋榎「結構長かったやろ?心斎橋筋の店全部見とったら、1日あっても足らんかもな」

    京太郎「流石商人の町、大阪ですね」

    洋榎「せやろー」


    京太郎「ん、あれは橋ですかね?」

    洋榎「戎(えびす)橋やな」

    京太郎「あー!これってアレですよねアレ、グリコのアレ!!」

    洋榎「アレアレ言うな!まあ、確かにそやねんけど」

    京太郎「テレビとかでもよく映ってるから、見覚えありますよ」

    京太郎「と、思ったら今度はかに道楽ですね!」

    洋榎「よう知ってるなぁ」

    京太郎「これぞ大阪って感じですね。というこは、ここはもう?」

    洋榎「ご存知、道頓堀や」

    京太郎「なるほどなるほど。じゃあ阪神が優勝したとき、かつてはみんなここに飛び込んだんですねぇ」シミジミ

    洋榎「いやいや、そんなんごく一部やからな!念のため」

    166 = 1 :


    京太郎「しっかし、こうやって道頓堀の看板見てると本当にドギツイですよね」

    洋榎「そうか?別に普通やと思うけど」

    京太郎「単なる平らな看板じゃなくて、わざわざこう立体にしてくるところとか、えげつないですよね」

    京太郎「かに道楽とかくいだおれ太郎とか、牛とか龍とか」

    京太郎「色も赤と白とかですし、くいだおれ太郎なんか完全にトリコロールじゃないですか」

    京太郎「フランスに訴えられても文句言えないですよ」

    洋榎「やめーや」




    京太郎「それにしても、そろそろお腹空いてきませんか?」

    洋榎「うーん、そやな。どっか適当なところで済ますか」

    洋榎「おっ、あの店でええやん」

    京太郎「本当に適当ですね…」

    洋榎「今日は休日やし、わざわざ行列並んだりしとないからな」

    洋榎「それに、知らない店行くのも悪くないやろ」

    京太郎「そうですけど。それにしても、ひと気ののないお店ですね……嫌な予感がする」ブルッ

    167 = 1 :


    ―食事処『男専用』



    店長「あら~、いらっしゃ~い」ニコリ

    女性だ。おもちはあまり無いが、容姿は整っており儚げな美人と言ったところか

    でも、なぜか俺の中の防衛本能が、この人物に対してヤバイと警報を鳴らしている


    店長「お嬢さん、一人かなー。うふふ」

    洋榎「はぁ…」

    店長「ごめんなさ~い。うちはその名の通り女人禁制の定食屋なの」

    店長「だから、お帰りは、あ・ち・ら・よ」ニコッ

    どんな店だ

    店長「あら、でも変ねぇ……何だか男の子の香りがするような…」クンクン

    京太郎「!!」ビクッ

    店長「いや、気のせいみたいね」

    びっくりさせてくれる…

    店長「……」

    洋榎「……」

    店長「うふふ、どうやら引くつもりはないみたいね」

    洋榎「残念やけどわが家の家訓は、引かぬ!媚びぬ!省みぬ!、なんや」

    京太郎「いや、反省はしましょうよ」

    168 = 1 :


    店長「あら~、言うわねぇ。私、そういう男気のある人好きよ」

    店長「気に入ったわ、あなた。席についてちょうだい、料理を出すわ」

    洋榎「!!」

    店長「た・だ・し、ペナルティーは設けようかしらね~」

    洋榎「?」

    店長「もし、出した料理を残したりしたら…」

    洋榎「したら…」ゴクリ

    店長「活きのいい、ノンケの男を一人差し出してもらおうかしらね。あっ、大事なのはノンケであることだから」

    洋榎「……」

    洋榎「おい、須賀。ノンケってなんや?」ボソ

    京太郎「洋榎さんは知らないほうがいい業界用語です」

    洋榎「そうか…よし、その話のった!!」

    京太郎「やめてー!どうせ俺のこと差し出すつもりでしょう!?」

    洋榎「すまんな、須賀」

    169 = 1 :


    店長「その返事待ってたわ。少し待っていてちょうだい。すぐに用意するわね」

    洋榎「…ちょいと待った。せっかくやから大盛りにしてもらおうか」ニヤリ

    店長「やめときなさい、お嬢さん。きっとあなたの小さな胃袋には収まりきらないわ」

    店長「それでもやるの?」

    洋榎「能書きはええで。早よしてもらおか」

    店長「あら、ますます気に入っちゃった。あなたが、わたし好みのイイ男だったらもっと良かったんだけどね」





    ゴトッ

    店長「じゃあ、はい。うちの自慢の定食。男日照り定食~私の愛と肉欲と汗を添えて~、よ」

    京太郎「どことなくフランス料理風っ!?」

    店長「ああ、そうそう。汗は塩の隠語よ」

    京太郎「なんて嫌な隠語なんだ!?」

    洋榎「おお…」

    すごい量だ、とても一人で食べきれるものじゃない

    でもそれだけじゃない…見た目、香りから食器に至るまで

    高級料理のもつ繊細さと、下町料理の大胆さを見事なバランスで備えている

    これほど完成度の高い料理をこんな定食屋でお目にかかれるとは

    この女、できる!!

    洋榎「ほな、行くで!たかが定食なんかに、負けたりせん!!」

    170 = 1 :


    _________

    ______

    __



    洋榎「男日照りには勝てなかったよ…」グフッ

    京太郎「洋榎さーーん!!!」

    洋榎「後のこと、頼んだで須、賀……」ガクッ

    店長「どうやらここまでのようね。女にしては頑張った方よ」

    京太郎「……」

    京太郎「いや、まだだ!俺の大事な貞操は、俺が守るっ!!」

    京太郎「うおおおおおお!!!!」ガツガツ

    な、なんだ、このうまさは…

    うまい、うますぎる!某埼玉銘菓に匹敵するこのうまさ!!

    店長「な、なにこの娘!?気を失ってもまだ食べる気なのっ!?」

    ごめんなさい、洋榎さん。また大食いキャラにしてしまいそうです

    でも今回ばかりは、自業自得ですよね?

    171 = 1 :



    京太郎「うおおおおおりゃあああ!!!!」ガツガツガツ

    京太郎「どうだっ!!」

    カチャン

    京太郎「ご馳走、様でした…」ガクッ

    店長「か、完食しちゃったわ。信じられない……」

    洋榎「…ん、あれ?いつの間に終ってる?」ムクリ

    店長「負けたわ、お嬢さん。そんな細い身体のどこにそんなに入っているのかしら?」

    洋榎「なんやよう知らんが、こういう時は――」


    洋榎「うちの胃袋は宇宙や」ドヤ


    フードファイト……中途半端に終わったのが悔やまれる

    店長「ふっ、どうやらそのようね」

    172 = 1 :


    _________

    ______

    __



    店長「完敗よ、私が間違っていたわ。今度からは女性も受け入れることにするわ」

    洋榎「そうした方がいいですよ、なんせあんだけうまいんやから」

    店長「で・も、今度来るときはイイ男、連れて来てちょうだいね」

    洋榎「はは、考えときます」チラッ

    京太郎「あの、こっち見ないでくれます」


    洋榎「あの、でも、なんでここ男だけって…」

    店長「ああ、それを話すと長くなるわね…」

    いきなり、声のトーンが低くなった。何か複雑な事情でもあるのだろうか

    店長「あれは、私があなたようにまだ若くてピチピチでお肌の張りがすごかった、世の中の汚さをまだ知らない花の十代だった頃よ…」

    なげえよ

    洋榎「……」

    店長「私の大好きだった高校の先輩、もちろん男の人よ?、が卒業する少し前だったかしら」

    店長「あの頃の私は、まだ若くてね。自分に全く自信が持てていなかったわ」

    店長「だから、私。告白するべきか、しないべきか…とても悩んだのよ」

    洋榎「店長…」

    京太郎「店長…」

    店長「そんな時、いつも通っていた定食屋の人が私に言ってくれたの」

    173 = 1 :


    店長「『確かにお前さんの理想とそいつの理想は違うかもしれねえ』」

    店長「『だからってなんだ、お前に魅力が無いわけじゃねえ』」

    店長「『自分らしくなんて言葉、俺は信じちゃいねえが、その男に合わせて無理してかっこつけても疲れるだけよ』」

    店長「『だが、元気がないのだけはいけねえ。だから、さっ、そいつさっさと食べな』」


    店長「そうやって、ただで料理を出してくれたわ」

    洋榎「うっ…」ウルッ

    京太郎「うっ…」ウルッ

    店長「で、告白したんだけど、呆気なく玉砕。まぁ、物語みたいにうまくはいかないわね」

    店長「でも、あの人の言葉がどうしても忘れられなくて、こうやって定食屋をしているの」

    174 = 1 :


    洋榎「ひどい男や…」

    店長「そんなこと無いわ。彼、私の話を最後まで真剣に聞いてくれて、こう言ってくれたの」

    店長「『ありがとう。でも、俺にはやりたいことがあるんだ。だから君の気持ちは受け取れない』、って」

    店長「彼、すごい超然とした人だったんだけど、映画に情熱を傾けていてね」

    店長「そのまま単身渡米。それっきり。今は何しているのやら…」

    店長「初恋なんて実らないものなのかもね」

    洋榎「うぅ~、泣ける話やぁ~…」ウルウル

    店長「バカな女の昔話よ」

    洋榎「でも、どうして男専用なんですか?」

    店長「ぶっちゃけ、男目当てよ」

    洋榎「台無しやぁ!!」

    京太郎「煩悩全開だ、この人!!」

    175 = 1 :


    店を後にした俺たちは、次の目的地に向かうべく駅の方に歩いていた


    京太郎「お代を無料にしてくれたのは助かりましたね」

    洋榎「せやなー、ちょっとアレやったけど話の分かるいい人やったわ」

    京太郎「量はすごかったですけど、料理の完成度は抜けてましたからね」

    洋榎「今日一番の収穫やな、また来ーな」

    京太郎「そうですね」



    京太郎「まだ昼過ぎたくらいですけど、次はどこ行くんですか?」

    洋榎「次で最後。キタ、ミナミに並ぶ今や第3の繁華街――」

    京太郎「天王寺・阿倍野ですね」

    洋榎「それ、うちの台詞!」

    176 = 1 :


    ―恵美須町駅



    なんとか無事に昼食を食べ終えた俺達は、日本橋駅から恵美須町駅まで来ていた


    京太郎「あれ、天王寺駅じゃないんですね」

    洋榎「ここからなら、うまいこと回れて最後に上町線に乗れるからな」

    京太郎「なるほど、洋榎さんも意外と考えて生きてるんですね」

    洋榎「馬鹿にしてる?」


    京太郎「おっ、あれが噂の通天閣ってやつですね」

    洋榎「せや、めっちゃ大きいやろ?」

    京太郎「何メートルくらいなんですかね?」

    洋榎「えーと、たしかー…100mくらいやったかな?」

    京太郎「東京タワーの3分の1以下…」

    洋榎「……」

    京太郎「スカイツリーの6分の1以下…」

    洋榎「べ、別に電波塔やないから。展望台やから!」

    京太郎「そう、ですね」アワレミ

    洋榎「これやから東京もんは!」

    京太郎「長野県民です」

    177 = 1 :


    通天閣を通り過ぎ、少し歩くと商店街が見えてきた


    京太郎「あれが、有名なジャンジャン横丁ですか?」

    洋榎「せやな。昔は新世界とか西成は、危ないから近づいたらアカン言われてらしいで」

    洋榎「今では、そないなことないけどな」

    京太郎「へぇー」

    洋榎「ジャンジャン横丁南に抜けると、西成区や」

    洋榎「動物園前商店街やら飛田本通商店街があるんやけど…」

    京太郎「?」

    洋榎「まあ、もっと大阪のことが知りたい言うんやったら行ってみるのもええかもな」

    京太郎「はぁ」

    178 = 1 :


    ―天王寺公園


    洋榎「天王寺公園やけど、どこ行く?」

    京太郎「動物園!」

    洋榎「え」

    京太郎「動物園っ!!」

    洋榎「お、おう…」


    京太郎「いやー、実は前からここには来てみたかったんですよね」

    洋榎「結構かわいいところあるやん」

    京太郎「洋榎さんほどじゃないですよ」

    洋榎「おっ、須賀もやっとうちの魅力に気付いたみたいやなー」

    京太郎「そういうことにしといてください」

    179 = 1 :


    ―天王寺動物園



    京太郎「ない!?ないですよ、洋榎さん!!」

    洋榎「なにが?」

    京太郎「『カミマス』の看板ですよ!!」

    洋榎「動物園に何見に来てんの!?」

    京太郎「おのれ、天王寺動物園!責任者をだせい!!」

    洋榎「アホやなぁ。動物園にわざわざ看板見に来るやつなんか、初めて見たわ…」

    京太郎「何言ってるんですか、洋榎さん」

    京太郎「関東の動物園とかじゃあ、長ったらしく説明するのが常ですが」

    京太郎「大阪では『カミマス』の一言で済ませる、とこの本に書いてあるんですよ」

    京太郎「これぞ大阪の文化だ、って。なのに…」

    洋榎「んなもん、知らんわ」

    京太郎「これが、グローバリズムの弊害か…こんなところにも東京の魔の手が、くっ…!」

    洋榎「どっちの味方やねん」

    京太郎「はぁ……………あっ!」

    京太郎「見てください、洋榎さん!」

    洋榎「今度はなんや」

    京太郎「あの看板『ツッツキマス!』、って書いてありますよ。すごい!」

    洋榎「さよか」

    京太郎「あっ、あっちの看板なんか『アブナイ!』、ですって」

    京太郎「いやー、よかったー。大阪文化は死んでいませんでしたね」

    洋榎「ま、まあ、須賀が楽しそうならそれでええんやけど…」ヒキ

    180 = 1 :



    看板を見つけて上機嫌になった俺(達)は、その後も園内を回った

    トラやライオン、ペンギンに羊などみんなに人気の動物がかわいかった

    ただ、やはり一番印象に残ったのは


    みんな大好き、マレーグマ


    独特のアンバランス感、カラスにも似た艶のある黒の体毛、異様に長い舌

    愛嬌のある内股にどことなくおっさん臭い仕草

    奇跡的なバランスで、不気味さと可愛らしさを体現している

    洋榎さんも最初こそ、「気味悪いなぁ…」とか言っていたのだか

    しばらくすると、「なにあれ、めっちゃかわいいやん!」とあの可愛さに気付いたようだった

    マレーグマ、恐るべし

    しかも、あれだけ気味悪い風貌なのに、実は大人しい性格ときている

    なんてキュートな奴なんだ!




    京太郎「動物園も堪能したことですし、そろそろ帰りますか?まだ3時くらいですけど」

    洋榎「うーん、そやなぁ……阿倍野に映画でも見に行くか」

    京太郎「アベノというと……魔法商店街ですね」

    洋榎「ん?残念やけど、商店街はもうあれへんで」

    京太郎「ですよねー」


    洋榎「まあ、今日は誰かさんのせいで映画見れなかったし、ちょうどええやろ」

    京太郎「意外と根に持ちますね…」

    181 = 1 :


    天王寺から阿倍野方面に歩いていき、あべの筋までやってきた


    京太郎「どこにあるんですか?」

    洋榎「うちに着いてくれば分かる。今日行くところは特別なんや、他のに教えたらあかんよ」

    京太郎「できませんけどね」

    洋榎「まぁ、一回行ったくらいで、この道覚えられるとは思わへんけど」


    そう言った洋榎さんに、俺はひたすらついていく

    あべの筋から横に逸れ、右へ左へ、昇り降り

    古びたアパートとマンションの間、猫も通らないような細い道

    民家と民家の間にあった石畳を歩き、意味不明で錆付いた看板を何回も見た

    そして…


    洋榎「ここや」

    京太郎「おお…」

    言い方は悪いかもしれないが、随分寂れた映画館だ

    だが、その古臭さがアクセントになって、逆にある種の荘厳さがそこにあった

    うーん、なんというか

    京太郎「ラストアクションヒーローに出てきそうな映画館ですね」

    洋榎「言われてみれば…。さっ、入ろか」

    182 = 1 :


    入口を通ると、外観とは打って変わって清潔感に溢れた綺麗な造りだ

    通りにはルージュの絨毯が敷かれており、歴史的な建造物を彷彿とさせる

    天井には大きさは控えめながらも、煌びやかなシャンデリア

    頭を横に向ければ、和・洋・中様々な調度品が所狭しと並べられている

    一見するとちぐはぐな印象だが、全体として見れば調和がそこを支配している

    それら全てが、異様な雰囲気を漂わせ、まるで白昼夢を見ているかのような気分になる


    カウンターには、一人の若い男性がいた

    その若さは、年季の入ったこの場からは明らかに浮いており、ミスマッチにさえ思える

    しかし、それでもやはり、不思議とここに馴染んでいた

    183 = 1 :


    洋榎「お久しぶりです。元気にしてはりました?」

    館長「ええ、おかげさまで」

    洋榎「チケット2枚お願いします」

    いや、それは

    館長「かしこまりました。はい、こちらをどうぞ」

    洋榎「ありがとうございます」

    洋榎「今日は、どんなのやってます?面白いですか?」

    館長「見てからのお楽しみです」

    館長「それに…面白いか、面白くないかはあなた次第です」

    館長「しかし、絶対に後悔はしないと思いますよ」

    洋榎「はは、楽しみしときます」

    京太郎「……」

    184 = 1 :


    京太郎「あの人…」

    洋榎「ん、どないしたん?」

    京太郎「…いえ、なんでもありません」


    京太郎「しかし、見てからのお楽しみって…随分変わってますね」

    洋榎「せやろ。でもあの人のチョイスなかなかのもんやで」

    洋榎「見たことある映画は、なぜか上映されへんし。やるのは面白いのばっかやし」

    洋榎「まぁ、ごくたまーにしょうもないのもやるけど、ご愛嬌やな」

    京太郎「へぇ、それは楽しみですね」

    京太郎「それにしても、さっきの人はどういう人なんでしょうか?」

    洋榎「さぁ…よう知らんけど。映画の情熱だけなら誰にも負けへんと思うわ」

    京太郎「へぇ…」

    185 = 1 :


    洋榎「じゃあ、適当に座ってええで」

    京太郎「え、いいんですか?座席指定なんじゃ…」

    洋榎「ええのええの、館長さんに前聞いたら、『かまわないですよ』言うてたし」

    洋榎「それに、他に客が来ることほとんどあれへん」

    京太郎「では、お言葉に甘えて」


    スタスタ…

    ボスン


    洋榎「…なんで、うちの隣に座るんや」

    京太郎「だって、ここがベストポジションなんですもん」

    洋榎「いやいやいや、もっと席空いてるやん」

    洋榎「なんで、わざわざ隣り合って座らなあかんねん」

    京太郎「そう思うなら、洋榎さんこそ別の所行けばいいじゃないですか」

    京太郎「俺にだけ譲歩を求めるのは、公平じゃないですよ」

    洋榎「ぐぬぬ…」

    洋榎「はぁ…まあええか。勝手なこと言うてすまんかったな」

    京太郎「…洋榎さんのそういうところ結構好きですよ」

    洋榎「あほか」


    京太郎「あっ、始まるみたいですね」

    186 = 1 :


    _________

    ______

    __



    映画を見終わった俺達は、上町線に乗り帰路についていた

    しかし俺達は、映画館出てから一言も言葉を交わしていなかった

    電車から降り、しばらくすると洋榎さんの方から話しかけてきた


    洋榎「どやった?」

    京太郎「そうですね…うまく言えないんですけど、とにかくよかったです」

    京太郎「あんなに感動したのは、本当に久しぶりかもしれません」

    京太郎「洋榎さんですら、今の今まで黙らせいたんですから相当なもんですよ」

    洋榎「おい」

    京太郎「俺だって、見終わった後しばらく誰とも話したくありませんでしたし」

    洋榎「せやろ。それにしても、今回のは大当たりやったなぁ」

    京太郎「ですね」

    洋榎「また一緒に来ーな」ニコッ

    素敵な人だな

    京太郎「ぜひお供します。正直まだ道がよく分からないんで」

    187 = 1 :


    洋榎「なぁ、須賀。今日の大阪観光どやった?」

    京太郎「買いたいものは買えましたし、見たいものも見れました」

    京太郎「ハプニングはありましたけど、とてもおいしい食事も食べられました」

    京太郎「もちろん映画の方はは言うまでもないですね」

    京太郎「最高に楽しかったです」

    洋榎「そ、そうか…?自分の好きなもん褒められるちゅうのは、なんちゅーか……こそばいな//」

    京太郎「洋榎さんが自慢したくなるのも、よく分かります」

    京太郎「大阪って良い街ですね」

    洋榎「せやろ!」

    188 = 1 :


    ――12月上旬 大阪
     



    さて、12月

    いよいよ1年の終わりが近づいてきて、あちこち忙しくなる頃だ


    雅枝「おーい、洋榎ー。ちょいと話があんねんけど」

    洋榎「んー、なに?」

    雅枝「今度、期末テストあるやろ。調子どない?」

    洋榎「そんなん余裕過ぎて、あくびが出るくらいや。なーんてな!」

    雅枝「ほう…実はな、さっき学校の先生から電話があってな」

    洋榎「へ、へぇ…ななななんの用やろなあ」ビクビク

    雅枝「いっつも冗談ばっかし言うてる先生やけど、めっちゃ深刻な感じでな」


    雅枝「『娘さん、期末テストの成績次第では最悪留年です…』、って」


    雅枝「どういうこっちゃ」

    洋榎「あわわわわ…ちゃ、ちゃうねん…」

    雅枝「地面すれすれの超低空飛行だったのは知っとったけど……なにがアカンのや?」

    189 = 1 :


    洋榎「物理…」

    雅枝「他は?」

    洋榎「英語とか化学とか生物とか現国とか……でも、たぶん、なんとか大丈夫…です」

    雅枝「はぁ…ほとんど全部やないか……まだ2週間あるらしいから大丈夫やとは思うけど」

    雅枝「ちゃんと勉強しとかなあかんよ?」

    洋榎「はい…」



    京太郎「洋榎さんって、そういうのは卒なくこなすタイプかと思ってましたけど」

    洋榎「勉強なんかしとないのに…」

    京太郎「麻雀ばっかりやってるからこうなるんですよ」

    洋榎「どないしよう…」

    京太郎「勉強すればいいんじゃないですかね?」

    洋榎「……ほな、自分の部屋行くわ」

    ガチャ

    そう言うと、洋榎さんは部屋に引っ込んでしまった

    大丈夫かなぁ

    190 = 1 :


    ―30分後



    ガチャ

    洋榎「アカン」

    京太郎「どうしたんですか教科書持って。休憩ですか?」

    洋榎「物理の教科書開いたと思ってたら、いつの間にか漫画読んでた…」

    京太郎「救いようが無いですね」

    洋榎「だからリビングでやることにするわ」

    京太郎「そうですね、人目があった方が洋榎さんにはいいかもしれません」

    洋榎「よっしゃ、やったるで!」


    京太郎「……」ペラペラ

    洋榎「うーん…」

    京太郎「……」ペラペラ

    洋榎「あっ、こうか!……いや、ちゃうな」

    京太郎「……」

    洋榎「うがー、答え合わんやんか!」

    京太郎「…そこの右辺の第2項の符号を逆にしてみてください」

    洋榎「えっ、こ、こう?」

    京太郎「あとは、そのまま計算すれば値が出るはずです」

    洋榎「そうなん?」

    191 = 1 :


    洋榎「……」

    洋榎「おっ、できた!」

    京太郎「計算速いですね」

    洋榎「これでも雀士やで。数学はけっこう得意なんや」

    洋榎「それにしても、よう分かったなぁ」

    京太郎「物理はそこそこやってるんで」

    洋榎「確か1年生やろ?そういや、いっつも本読んでる言うてたな」

    京太郎「まあ、数学やら物理やらの勉強してるんです」

    洋榎「変わったやっちゃなぁ」

    京太郎「勉強するのも案外楽しいものですよ」

    洋榎「へぇー……そうや!ならうちに教えてくれへん?」

    京太郎「えっ?……まぁ、いいですけど。あまり期待はしないでくださいね」

    洋榎「やた!」



    京太郎「そうと決まれば、明日にでも洋榎さんの高校に行っときたいんですけど」

    洋榎「なんで?」

    京太郎「範囲とか、先生の特徴とか、洋榎さんの現在の学力がどんなものかとか知りたいんで」

    洋榎「りょーかいりょーかい。なら今日はここでしまいということで…」コソコソ

    京太郎「だめですよ。あと3時間はみっちりやりましょうね」ニコリ

    洋榎「ぅ…はい」

    京太郎「先行き不安過ぎますね…」

    192 = 1 :


    ――12月上旬 大阪 姫松高校



    ―数学


    先生「じゃあここで問題な。この関数のグラフを描いてくれ。時間はまあ7、8分くらいやな」

    「「はーい」」

    洋榎「……」カキカキ

    洋榎「……」カキカキ

    洋榎「はい、できました!」

    京太郎「早すぎません!?これ結構複雑な関数ですよ」

    先生「おお、愛宕か。どれどれ……おう、ええな完璧や」

    洋榎「へへー」

    ほんとうに数学は得意みたいだな


    193 = 1 :


    ―物理


    先生「だからこういう問題の場合は、力学的エネルギーの保存則を利用して――」

    洋榎「……」ウトウト

    先生「空気と水の屈折率の違いから、光はこのように曲がり――」

    洋榎「…っ!」ビクッ

    先生「一様電界中の運動は放物運動。一様磁界中の運動は円運動で考えて――」

    洋榎「……」ウトウト

    京太郎「いや、起きましょうよ」

    洋榎「っ…??」ビクッ

    京太郎「重症だなこれは」

    194 = 1 :


    _________

    _____

    __



    洋榎「ほな、帰ろか」

    京太郎「そうですね」

    洋榎「今日のうちの勉強っぷり、どやった?」

    京太郎「勉強っぷりって何ですか…洋榎さんが想像以上にダメってことは分かりました」

    洋榎「うっ…」


    ??「洋榎ー、一緒に帰るのよー」

    ??「はぁ、なんで私まで…」


    洋榎「ゆーこと恭子か、ええで」

    京太郎「えーと、すいません。どなたですか?」

    洋榎「あーそうやな…変わった髪型してるのが、真瀬由子」ヒソヒソ

    洋榎「ちょっとお堅そうなのが、末原恭子や」ヒソヒソ

    京太郎「ああ、末原さんは覚えてますよ。うちの咲が大変お世話になったみたいで…」

    洋榎「ああ、あの清澄の大将か…」

    由子「洋榎?」

    洋榎「い、いや。なんでもあれへん、行こか」

    195 = 1 :


    由子「久々にどっか寄っていかへん?」

    恭子「えー、はよ帰って勉強したいんやけど」

    洋榎「ええやん!行こ行こ!」

    京太郎「洋榎さんは、末原さんの爪の垢を煎じて飲んだほうがいいですね」

    由子「じゃあ、駅前の喫茶店に行くのよー」

    洋榎「おー!!」

    京太郎・恭子「はぁ…まったく」

    京太郎「……はっ」


    ああ、この人苦労人ぽいなあ

    ご苦労様です

    196 = 1 :


    ―喫茶店


    俺達は、4人掛けのテープル席に陣取った

    俺は洋榎さんの横に座り、前に真瀬さん末原さんがいる格好だ


    由子「注文決まった?」

    洋榎「うん」

    恭子「…」コクリ

    京太郎「決まりました」

    由子「じゃあ……すみませーん!」


    店員「はい、お待たせしました」

    由子「ええと、ブレンドとこのチーズケーキください」

    恭子「私はミルクティで」

    洋榎「なら、うちはドリップのアイスコーヒーとこのケーキもらおうかな」

    店員「はい、かしこましりました。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

    197 = 1 :


    京太郎「すみません、洋榎さん。ミックスジュースと…あとこの右下の頼んでもらえますか?」

    京太郎「小腹が空いてしまって」

    洋榎「しゃーないなぁ…」ヒソヒソ

    洋榎「あっ、すみません。追加でミックスジュースとこのサンドイッチお願いします」

    恭子「え゛」

    由子「そ、育ち盛りなのよー…」

    店員「か、かしこまりました。少々お待ちください」

    洋榎「……」

    京太郎「えーと……目指せ大食いキャラ!!」

    洋榎「正直この流れ予想してたし、別にええよ…はは」

    京太郎「目が死んでる!?」

    198 = 1 :


    少しすると、店員さんが注文した品を運んできてくれた

    俺がガールズトークに加わるのはいかがなものか、とも考えた

    でも、洋榎さんも特に何も言ってこなかったし別にいいのだろう


    由子「ちゃんとテスト勉強の方してる?」

    恭子「まぁ、ぼちぼち」

    洋榎「とか言うて、いつも5位以内には入ってるやんか。このこの~」

    由子「洋榎だって、いつも下から5位以内に入ってるやん」

    洋榎「それは、いらわんといてくれるかな?」ニコリ


    洋榎「ゆーこはええよなぁ。もう推薦決まってるし」

    由子「まぁねー」

    洋榎「恭子は受験勉強の方、どない?」

    199 = 1 :


    恭子「まあまあですかね。こないだの模試では一応A判定でしたけど」

    洋榎「A判定?」

    由子「合格する確率がかなり高いってことなのよー」

    洋榎「すごいやん!さっすが、姫松高校麻雀部の元ブレーンやな」

    恭子「本番はまだですからね、安心はできませんよ」

    洋榎「クールやなぁ」

    恭子「洋榎の方こそ、1月に大会あるんでしょう?」

    洋榎「まぁ、そやけど…」

    恭子「けど?」

    洋榎「いつも通り打って、勝つ。それだけや」

    恭子「ふふ、相変わらずですね」

    由子「かっこいいのよー」

    京太郎「……」

    危ないな、その思考

    200 = 1 :


    由子「そういえば最近気になってたんやけど、洋榎付き合い悪うなった?」

    洋榎「ないない」

    恭子「確かに以前よりかはそんな気ぃするわ」

    洋榎「そうかぁ?」

    由子「もしかして男でもできたんじゃ…」

    洋榎「お、おとこぉ!?ないない」

    恭子「洋榎に限ってそれはないか」

    由子「その通りなのよー」

    洋榎「なんやとー」

    洋榎「…あ、でも透明人間なら一人おるか」ボソ

    由子・恭子「?」

    洋榎「いや、なんでもあれへん」

    洋榎「あんま遅くなってもあれやし、ぼちぼち行こか」

    恭子「そうですね」


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