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    元スレ京太郎「虹の見方を覚えてますか?」

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    みんなの評価 : ★★★
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    251 = 1 :


    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




    絹恵「ただいまー…」ソローリ

    雅枝「おう、おかえり。絹」

    絹恵「ななな、なんでお母さんおるの!?」

    雅枝「絹やって、今日は帰ってこないはずやったやろ?」

    絹恵「せやねんけど、やっぱお姉ちゃん心配やったし…」

    雅枝「まったく…似たもの親子やなぁ」

    絹恵「じゃあ、お母さんも?」

    雅枝「そゆこと」


    絹恵「お姉ちゃんは?どう?」

    雅枝「ああ、帰ってきたばっかりやから、まだ見てへん。ちょっと覗いてみよか?」

    絹恵「うん」

    252 = 1 :


    ガチャ

    雅枝「寝てるな」

    絹恵「寝てるね」

    雅枝「大丈夫そうやな」

    絹恵「大丈夫そうやね」


    雅枝・絹恵「ふぅー…よかったぁ」


    雅枝「しかしあれやなぁ」

    絹恵「ん?」

    雅枝「ええ顔してる」

    絹恵「そうやね」



    洋榎「ふふ……京太郎……」ムニャムニャ



    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    253 = 1 :

    限界です。寝ます
    では、木曜日の夜11時ごろまた投下します
    おやすみなさい

    255 :

    乙でした

    256 :

    乙ー
    ネキマジ天使、こんなハイスペックで何もしてこなかったはないだろう京太郎

    261 :

    乙! これは面白い
    ネキマジかわいいぜ

    262 :

    いやぁ、面白いわ

    263 :

    乙~
    すげえな、こんな可愛いネキ初めてだ

    264 :


    なにもしてないって事もなかろうに、結構思い詰めてる感じだな京太郎

    266 :

    乙です
    ここまでハイスペックになったのはこの状態になってからなんじゃない?
    やる事が無いから勉強してたとかあったし

    267 :

    透明になる前は何もしてこなかった、だから正しい

    268 :

    たまの「電車かもしれない」がメインテーマになりそう(KONAMI)

    269 :

    阪神の選手ばっかでワロタ
    マットが当たり前のように居るけどマウロくんはいないんですかね・・・

    あとネキかわいい

    270 :

    神戸の件ってもしかしてハーバーランドでつかまえて?
    懐かしい……あれって結構有名なのかな

    271 :

    知名度は高いと思う

    272 = 1 :

    >>270
    神戸愛に溢れたいいゲームでしたね
    なかなかトゥルーエンドに行けなくて、選択肢の組み合わせ表を作って総当たりしたのが懐かしいです
    あそこは当時とは違い、今は結構様変わりしたようですが…時代の流れを感じます

    273 = 1 :


    ――1月上旬 大阪




    憎きクリスマスが終わりを迎え、新年1月あけましておめでとう、と言ったところ

    さて正月、大阪の雑煮は丸餅白味噌仕立てとは聞いていたが…


    京太郎「意外とおいしかったです。正直侮ってました」

    洋榎「せやろー」

    絹恵「なにが?」

    洋榎「なーんでも」

    雅枝「ほいじゃ、そろそろ行こか」

    洋榎・絹恵「はーい!」


    今日は初詣に行く日だ

    クリスマスが終ったと思ったら、今度は神社にお参りに

    まったく、日本人というものは節操がなく素晴らしい

    寛容さに満ち溢れている


    俺達は元旦を避け、少し日を置いてから行くことになっていた

    混雑は勘弁だし、松の内までに参拝すれば歳神様も俺達の祈りも聞いてくれるだろう、たぶん

    さて、俺は何をお願いしようかな?

    274 = 1 :


    ―住吉大社



    京太郎「思ったより人いますね」

    洋榎「まぁ、すみよっさんやしなー。しゃあない」


    俺達は、住吉大社こと『すみよっさん』までやってきた

    愛宕家は初詣には毎年ここに来ているらしい。近いしね


    住吉大社は住吉神社の総本社であり、その参拝者の数も膨大だ

    特に、大晦日の夜から元日にかけての人だかりはものすごく、身動きが取れないくらいらしい

    それに比べれば、人がまばらな今日の参拝はスムーズに進むだろう



    京太郎「俺は観光がてらに不審者よろしくうろついてるんで、洋榎さんは皆と一緒に行ってきてください」

    京太郎「俺といると会話しずらいでしょうし」

    洋榎「え、せやけど…うーん」

    京太郎「?」

    洋榎「そや!」

    洋榎「ねえ、おかんおかん。ちょっとその辺ぶらぶらしてきても、ええかな?」

    雅枝「まぁ、別に…でも一緒におればええやん?」

    洋榎「ふふ、乙女心は複雑なんやで」

    雅枝「何言ってんだか……ええよ。時間には戻ってくるんやで?」

    洋榎「うん」

    275 = 1 :


    京太郎「いいんですか?せっかくの家族水入らずなのに」

    洋榎「今年はおとんがおらんし、たまにはこういうのもええんやない?」

    京太郎「そういうもんですかねぇ」


    京太郎「そういえば、洋榎さんのお父さんってどんな人なんですか?」

    洋榎「うーん……」

    洋榎「いっつもおかんの尻に敷かれてる普通のサラリーマン、かなぁ?」

    京太郎「ああ、なんかそれ容易に想像できます」

    洋榎「たまに喧嘩なんかしても、おかんが毎回言い負かしてすぐ涙目になるし」

    京太郎「うわぁ…羨ましい」

    洋榎「……」

    洋榎「そんで絹がおとんを慰めるのが、いつものパターンなんや」

    京太郎「うわぁ…羨ましい」

    洋榎「……」

    276 = 1 :


    京太郎「しかし、いいところですね。住吉大社」

    洋榎「そうか?」

    京太郎「ほら、大阪って緑が少ないじゃないですか」

    京太郎「だから余計に、落ち着けるというか」

    洋榎「ふーん」

    京太郎「俺の住んでたところは田舎でしたんで、そういうのもあるのかもしれません」

    京太郎「それに俺、神社ってなんか好きなんですよね」

    洋榎「なんで?」

    京太郎「子供の頃、こういうところでよく遊んでいたんで愛着ありますし」

    京太郎「それに、雰囲気がいいですよね。おどろおどろしいんですけど、妙な神聖さみたいなのがあって」

    洋榎「それはあるな」

    京太郎「夜に行った時なんか、このままどこか別の世界にでも行けるんじゃないか、って思ってたくらいです」

    洋榎「意外とかわいいとこあるやん。このこの~」グイグイ

    277 = 1 :


    京太郎「おっ、あれが有名な太鼓橋ですね。写真で見たとおりだ」

    洋榎「あれって有名なん?」

    京太郎「住吉大社で画像検索したら、間違いなく出てくるくらいには有名です」


    京太郎「作った当時は、この近くにまだ海岸線があったんです」

    京太郎「だから、この辺まで波が打ち寄せてきてたらしいですよ」

    洋榎「今じゃ考えられんなぁ」

    京太郎「それに、この橋上向きに反ってるでしょう?」

    京太郎「そのせいか、虹に例えられたこともあったようです。要は『虹の架け橋』、ってやつですね」

    洋榎「ん?」

    京太郎「つまり、虹っていうのは俺達人間が住む地上と、神様達が住む天上との架け橋、と考えられていたんですよ」

    洋榎「へぇー、昔の人はえらいロマンチストやったんやなぁ」

    京太郎「他にも、虹は多様性の象徴としてもよく使われていますね。色が多いからでしょうか?」


    京太郎「確かにそこにあるはずなのに、決して触れることはできない」

    京太郎「ロマンの塊ですね、虹は。昔の人が神話の中に登場させたがったのもよく分かりますよ」

    278 = 1 :


    京太郎「あ、拝殿が見えてきましたね」

    京太郎「でもその前に、手水舎で清めないと。柄杓に直接口つけたらダメですよ?」

    洋榎「さすがにそんくらい分かるわ…」

    洋榎「でも、こういうのほんと面倒やなぁ。そう思わへん?」

    京太郎「確かに面倒ですけど、昔はこれにもちゃんと意味があったはずですよ」

    洋榎「今は?」

    京太郎「ないかもしれません。けど、無駄を楽しむのも案外悪くないものです」

    洋榎「定年後のおっちゃんみたいなこと言うなぁ」

    京太郎「ふぉふぉっふぉ……きょうじいじゃ」

    洋榎「さしづめ、『虚空(そら)から大阪を見てみよう』、ってところやな」

    京太郎「何それかっこいい!中二心がくすぐられるぅ!!」

    京太郎「でも、やめてくださいよ。これでもまだピチピチの高校1年生なんですから」

    洋榎「!?」


    洋榎「とーれとれ♪ビーチピチ?」

    京太郎「カニ料理ー♪」


    京太郎「はっ…!?」

    かに道楽…

    洋榎「やーい、つられてやんのー」ケラケラ

    京太郎「うがー!!一生の不覚っ!!」

    279 = 1 :


    洋榎「さっ、遊んでないでとっととお祈り済ませよか」

    京太郎「そっちが先に仕掛けた癖に…」

    洋榎「あれ、せやったっけ?忘れてもうたわ」

    京太郎「はぁー…まったく。ちなみに、二拝二拍手一拝ですから気をつけてください」

    洋榎「なんやそれ?」

    京太郎「2回おじぎして、2回拍手して、祈った後にまた1回おじぎするんです」

    洋榎「アカン、いつも適当にやってたわ…」

    京太郎「いいんじゃないですか?気持ちが伝われば」

    洋榎「そんなもんか?」

    京太郎「それに、みんなと少し違えば神様の印象も強くて、祈りが届きやすくなるかもしれませんよ」

    洋榎「懸賞ハガキみたいやな」

    京太郎「じゃあ、やりますね」


    洋榎「おじぎするのだ!」

    京太郎「……」

    洋榎「おじぎするのだ!」

    京太郎「……」

    洋榎「……」シュン

    かわいい

    280 = 1 :


    馬鹿やってないで、賽銭箱にお金を投げ入れ、鈴を3回鳴らす

    2回お辞儀、2回拍手

    さて、何を祈ればよいのだろう?

    健康?交通安全?家内安全?人々の幸せ?世界平和?どうもしっくりこない

    俺が元の状態に戻ること?それも違う気がする、なんとなくだけど


    隣を見ると、一生懸命に祈りを捧げている洋榎さん。何やらブツブツ言っている

    合わせた手に熱がこもるのを感じた

    うん、そうだな




    ________

    _____

    __

    281 = 1 :


    京太郎「そろそろ、雅枝さんと絹恵さんのところに戻りましょうか」

    洋榎「そうやな。あんま待たしても悪いし」

    京太郎「……」

    京太郎「ねえ、洋榎さんはあんなに一生懸命、何をお願いしていたんですか?」

    洋榎「うーん…知りたい?」

    京太郎「言いたくないならいいですけど、その……気にはなりますね//」ポリポリ

    洋榎「ふふ」


    そう笑みをこぼした洋榎さんは、飛び跳ねるようにして2、3歩前に出ると、くるりとこちらを振り返った

    そのなんとも言えない色をした髪がふわりと宙を舞い、持ち主と一緒にダンスをした

    ああ、なるほど…やっと分かった。これは寒緋桜だ

    だけど、その花は上向きで、開ききっていて、数も多く、他の何よりも輝いている

    ありえないものが、確かにそこに見えた

    そして、まさに満開の笑顔で――




    洋榎「京太郎が早く元の姿に戻れますように、って」

    282 = 1 :



    京太郎「……」

    京太郎「……」

    京太郎「……ぁ、う///」

    洋榎「ん、どないしたん?」

    京太郎「い、いえ…なんでもないです。なんでも、ははは、は…//」

    はぁ…無自覚にこういうこと言うんだから、この人は…

    そんな綺麗な笑顔で、そんなこと言われるこっちの身にもなってもらいたい

    洋榎「?」

    洋榎さんには悪いけど、今日の今ほど俺の姿が他人に見られなくてよかったと思った日はない

    洋榎「そういう京太郎は、なんてお願いしたんや?」

    京太郎「うーん……内緒です」

    洋榎「あー!うち言うたやんかぁ、この卑怯者ぉ!」

    京太郎「なんとでも言ってください」

    洋榎「京太郎は、あかんたれのへたれの骨なしいかれぽんちや!!」

    京太郎「古い言葉を…ほんとに言いたい放題ですね」


    流石に、このことを正直に言うのは恥ずかしい

    だって、洋榎さん。あなたのことを願ったんだから

    283 = 1 :


    ――1月下旬 大阪




    1月下旬、洋榎さんにとって運命の日とも言える日が迫ってきた

    皆さんもうお忘れだと思うが、洋榎さんのプロテストを兼ねた大会が近いのだ

    だから、最近は家にいる時間も短く、ほとんど学校で麻雀をしているらしい

    家にいる時も牌譜を眺めたり、雅枝さんから指導を受けたりしている

    本当に熱心だと感心する

    まあ、洋榎さんの場合、もし受からなかった場合を考えると……


    京太郎「ニート……」ボソ

    洋榎「ん、何か言うた?」

    京太郎「いえ、何でもないです。邪魔してすみません」

    洋榎「別にええけど」

    284 = 1 :


    京太郎「そういえば、洋榎さんはどうしてプロを目指そうと思ったんですか?」

    洋榎「うーん、そやなぁ……よう分かれへんけど、やっぱ子供ん時から打ってるし」

    洋榎「おかんの活躍もテレビとかで見とったから、憧れてたのはあるなぁ」

    洋榎「あっ、今のはおかんに言うたらアカンからな!オフレコ、オフレコ」

    京太郎「この恥ずかしがり屋さんめ」

    洋榎「う、うっさい//」


    洋榎「でもやっぱし、チャンスが転がり込んできた、っていうのがいっちゃん大きいかなぁ」

    洋榎「あれが無かったら、本気で目指そうなんて考えてなかったと思うわ」

    京太郎「うーん、なるほど」

    洋榎「なんで、そないなこと聞くのん?」

    なんでだろ?俺にもよく分からん

    京太郎「今のうちから進路のことを考えておこうと思いまして」

    洋榎「ふーん、真面目やなぁ」

    京太郎「とにかく、何でもいいです。陰ながら応援してますよ」

    洋榎「おう!」

    285 = 1 :


    ――1月下旬 大阪 大会会場




    そして、ついに大会当日

    俺は洋榎さんと共に会場まで来ていた

    俺の他には、真瀬さんと雅枝さんが応援に駆けつけに来てくれていた

    残念だが、末原さんは大学受験があり、絹恵さんは部活でここにはいない

    少し寂しい気もするが、仕方ないだろう


    洋榎「んじゃ、行ってくるわ」

    由子「観客席からやけど、応援してるのよー」

    洋榎「しっかり頼むでー」

    雅枝「まぁ、そのー…気張ってな」

    洋榎「うん!」

    286 = 1 :


    なぜか、俺も洋榎さんに付いていき、控え室まで来てしまった

    この人口密集地で洋榎さんと会話するのは少々気が引けるので、辺りをを見回してみる

    洋榎さんと同じように学生服を着た人からスーツ姿の社会人、テレビで見たこともあるプロの姿もある


    ここにいる人間が、どのような思惑を抱いてここにいるかは分からない

    洋榎さんのようにプロを目指すため、腕試し、遊び半分、さらなるランキングアップを目指して

    それぞれの思いが交錯し、ある種の異様な雰囲気がこの部屋を満たしている

    だが、それでもこの場にはたった一つの明確な目的意識が見て取れた

    ただ勝つこと……そのためだけに、これだけの人間が集まったのだ


    「では、選手の皆さん。準備ができましたので会場にお入りください!」


    いよいよだ


    洋榎「ほな、行くで!」

    287 :


    この大会のルールは単純だ

    参加者全員と当たる総当りの東南戦型式で、最終的に一番ポイントの高い人が1位優勝

    トーナメント形式よりかは、幾分平等かもしれない


    洋榎さんの場合、テストについては明確な基準がないらしい

    つまり、たとえ決勝まで残っても、見込みなしと判断されてしまえばそこで終わり、ということもありえるのだろう

    逆に、たとえ結果が伴わなくても、素質ありとなれば採用される可能性がある

    まさに実力主義、厳しい世界だ

    つーか、試験官とかどこにいるんだろ?客席か?

    288 = 1 :


    洋榎さんの様子を控え室から見守る

    まだ1回戦ということ、テスト本番であること、などから少し緊張しているのか表情もどこか堅い

    いつものトラッシュトーク気味のアレも封印しているようだ

    かといって、そこは洋榎さん。元々の実力もあり、1位から1500点差の2位で悪くない位置にいる


    中に一人プロが混じっているようだが、気怖じせず果敢に攻めている

    聞いたところによると、姫松くらいの強豪校は練習でプロとも打ったりしているらしい

    清澄では考えられないようなことだが、プロとも打ち慣れているのだろう

    うちでも、藤田プロとは打っていたらしいが


    とか考えているうちに、いつの間にか洋榎さんがあがって1位に

    この調子で行けば大丈夫そうだな

    289 = 1 :


    __________

    ______

    __




    京太郎「お疲れ様です。なんとか1位で終れましたね」

    洋榎「はっはっは!まぁ、うちにかかればこんなんもんやなっ」ドヤッ

    京太郎「最後ぎりっぎりでしたけどね」

    洋榎「なぁに言うてんや。あれも計算の内に決まってるやんかー」

    京太郎「えっ!?そうだったんですか?やっぱり全国クラスの打ち手は違うなぁ…」シミジミ

    洋榎「……すみません、嘘です。正直捲くられると思いました」

    京太郎「変な嘘つかないでくださいよ。なんかものすごい戦術でもあったのかと思っちゃったじゃないですか…」

    洋榎「てへへ」

    290 = 1 :



    京太郎「あっ、掲示板に次の対戦相手が表示されましたね」

    洋榎「せやな。ほな、行ってくるわ」

    京太郎「……」

    京太郎「……」

    京太郎「あ」

    洋榎「ん、どないしたん?」

    京太郎「……洋榎さん、気を付けてください。次の対戦相手は―――危険です」

    洋榎「え、知ってる人でもおったん?」

    京太郎「いえ、そういうわけでは……とにかく……いえ、頑張ってください」

    京太郎「だけど、いつも通りにやっているようではおそらく……」

    洋榎「は、はぁ…」



















    「死ねば助かるのに……」

    「ふっ、勝てば生負ければ死…ただそれだけのこと…あンた賭けるかい!?命を」

    「お嬢さん……帰りそびれましたね?」

    291 = 1 :


    _________

    ______

    __



    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



    なんやこいつら……

    プロとは違うみたいやけど…せやかて、明らかに一般人のそれとはちゃう

    てゆうか、カタギの人間には見えへんわ

    宮永照、天江衣なんかも常人離れしとったけど、こいつらの雰囲気はそれよりもさらに異質や

    一つの油断が命取りになる


    タン

    よし、早くも聴牌

    高くはないけど様子見にリーチしてみよか

    洋榎「リーチ」

    「ふっ…」

    洋榎「な、なんや!?」

    「リーチは天才を凡夫に変える……あんたはどっちかな?」

    洋榎「……」

    人をコケにして…まぁ、ええわ

    292 = 1 :



    タン

    タン

    タン

    タン

    こーへんなぁ…せっかく一発でかっこよく上がろう思うてたのに

    そしたら、この白髪のやつもびびったに違いないで

    「リーチ…!」

    と思ったら、この人もリーチかいな

    洋榎「んー、これやな」

    タン

    「それだ、ロン……!リーチ、一発――」

    洋榎「なっ」

    一発で、さらにうちに直撃っ!?

    狙った!?まさかな…

    ま、まあ今のは運が悪かった。狙って一発なんて無理やし…

    「ククク……」

    293 = 1 :


    次の局に入ったけど、なかなか聴牌する気配がなぁ…

    白髪の人もそやけど、この真っ黒の服きた兄ちゃんも何考えてるかさっぱりやし

    七三分けの人は、何も仕掛けてけえへんし

    一体なんなんや?まるで、なんか観察されてるような…


    「リーチ…!」

    また、白髪の人がリーチ、か

    さっきは一発もろたから、慎重に、慎重に、っと

    洋榎「これや」タン

    「ククク……」ニヤリ

    ま、まさか…!?

    「それだ、ロン……!またしても、一発……」

    こ、こいつ…狙って!?

    「だから、言ったろう……リーチは天才を凡夫変える、と……!」

    洋榎「ぐっ」

    それに引っかかったうちは、凡夫以下ちゅうことかっ…!?







    雅枝「またソクかいな…」

    由子「一発直撃なのよー。まさか、狙って…?」

    雅枝「いや、それはちゃうと思うわ」

    雅枝「あれは――」



    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    294 = 1 :


    京太郎「あれは、恐らく偶然だ」

    でも、あの白髪の男には、その偶然を手繰り寄せることができるだけの何かがある

    少なくとも、洋榎さんはそれを感じたはずだ

    運、流れを読む力、勘。そんなチャチな言葉では到底言い表すことのできない何かが


    だからこそ、洋榎さんがあれほど動揺している

    偶然には違いない、けどそれ以外にあの男から感じるものがあったのだ

    同じ卓に身を預けているなら尚のこと


    全国大会で見た化け物どもすごかったが、この男はそれとはまた違う

    勝利のためなら、自らの危険すら顧みず勝負に徹することのできる、真正のギャンブラー、博徒

    あえて古典的な言い方をすれば、今の洋榎さんとは次元が違う


    しかし、この三人からは何か違和感を感じる

    あの挑発的な一発もそうだけど、序盤の様子見の仕方など明らかに変な部分が多い

    試合をしにきたというよりも、もっと別の目的があるような、何かを試すような…

    まあ、考えても仕方のないことか

    とにかく、この試合を何とかしないと


    洋榎さん……

    295 = 1 :


    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




    「あンた、俺達を忘れてしまっては困るぜ」


    こいつ一人でも、化け物やっちゅうのに……


    「ロン」

    「ツモ」

    「ツモ」

    「ロン」

    「ロン」




    洋榎「ぁ、あ……あ…」


    「御無礼、ロンです」


    洋榎「ぁ……」カタカタ




    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    296 = 1 :


    _______

    ____

    __





    「勝負の後は骨も残さない………!」

    「勝負は終った、もう話すことなどない」

    「ここが高レート雀荘でなくてよかったですね」







    洋榎「……」

    京太郎「洋榎さん…」

    洋榎「一人にしてもらってもええか?」

    京太郎「…はい」

    297 = 1 :


    その後の試合は酷かった

    らしくないベタオリ、俺でも分かるようなアタリ牌を打ってしまう、などとにかくおかしかった

    普段なら明らかに格下と思われる相手と最後まで競っては負ける

    原因は考えるまでもなく、あの三人との対局だろう


    一度も上がることも出来ずに、ロン・ツモ地獄の焼き鳥

    かといって、飛ばされることも許されず最後まで惨めに打たなければならなかった

    というより、わざとそういう風に打たされていとたと言うべきか

    舐めプと言うのがふさわしいそれは、洋榎さんの自信を打ち砕くには十分だったのだろう


    結局、その後思うような活躍を見せることは出来ずに、大会は終ってしまった

    これでは、プロテストの結果は言うまでもなく不合格だろう

    もはや、2月の大会に賭けるしかなくなった

    298 = 1 :


    ――2月上旬 大阪




    大会が終わり一週間が経過した

    完全にその自信を失った洋榎さんがどうなったかというと……


    コンコン

    雅枝「洋榎、ここに食事置いとくからな」コト

    雅枝「……」

    雅枝「あんなぁ、洋榎が今辛い思いしてるのはよう分かってる」

    雅枝「だから、今はゆっくり休むとええ」

    雅枝「だけど……もし、またおかん達と食べたくなったらいつでも来てくれてええんやで?」

    雅枝「……」

    雅枝「洋榎、初めて牌に触った時のこと覚えてるか?」

    雅枝「ルールも知らんと私の真似して卓に並べて、『国士無双!』なんて言うてな」

    雅枝「聴牌すらしてへんのに…ああ、懐かしいなぁ」

    雅枝「……」

    雅枝「はは…なに言うてんやろ」

    雅枝「じゃあ、またな」





    ガチャ

    洋榎「……」

    雅枝「ひ、洋榎…?」

    299 = 1 :


    洋榎「おかーんっ!!」ダキッ

    雅枝「ひろえーっ!!」ダキッ


    絹恵「さっきから、何やってんの…?」

    雅枝「え、引きこもりの親子ごっこやけど?何かおかしかった?」

    洋榎「なかなか堂に入ってたやろー。アカデミー賞の主演女優賞間違いなしやな!」

    京太郎「どっちかって言うと、ラジー賞かと」

    雅枝「ああ、そら大変や。何着てこうかなぁ」

    絹恵「はぁー…よう言わんわ」


    洋榎「ねえねえ、おかん。今日の夕飯なんなん?」

    雅枝「今日はなー、久しぶりにから揚げ作ったでー」

    洋榎「やったー!おかん、ほんま愛してるわ」

    雅枝「はいはい、私もやで」

    300 = 1 :


    案外いつも通りだった。ただし、表面上は、だが

    つぶさに観察していると分かるが、微妙にいつもと違うのは簡単に分かった

    食事中にボーっとして上の空だったり、テレビを見て笑ってたかと思うと次の瞬間何か考え込んでいたり

    麻雀の話題になるとすぐに話しを別の方向へ逸らしたり

    明らかに無理をして、普通に振舞っているのだ


    もちろん、雅枝さんや絹恵さんもそのことに気付いている

    だからこそ、さっきみたいにあえていつも通りに接しようとしているのだろう


    2月の大会で結果を残すことができなければ、今度こそ…

    今は正に正念場であり、洋榎さんは崖っぷち立っているのだ

    そして、その崖は酷く脆いらしい


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