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    元スレエリカ「あなたが勝つって、信じていますから」

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    301 = 296 :

    >>1です。
    本日もお休みします。明日はできる……と思う。

    302 :

    今日もお休みです。申し訳ない。

    303 :

    待ってるぜ

    304 :

     マサラタウンの草原はひたすらにのどかだった。天気は快晴、大型のポケモンがおらず、騒がしい動物の鳴き声もない。

     レッドはかつてこの場所が好きだった。静かで安全で、グリーンに負けた悔しさを冷めさせるにはもってこいの場所。

     今もこの場所が好きだ。理由は変わった。あの日、エリカと出会えた場所だから。

     レッドはフシギバナを出して、その頬に手を当てて語りかける。

    「覚えてるかフシギバナ。ここで、初めてお前にポケモンフードあげたな。あの時は俺がしゃがんでたのに、今じゃ俺がお前を見上げてる」

     微笑みと共にフシギバナの頬を撫でると、フシギバナは気持ちよさそうに声を漏らした。

     レッドは再び腰のモンスターボールを放っていく。現れたのはピジョット、ラッタ、バタフリー、ガラガラ。

    「ギャラドスはごめんな。ここに小川があったらよかったんだけど……。皆、遊んでおいで」

     レッドがそう言うと、ピジョットとラッタは嬉しそうな鳴き声を上げて久しぶりの故郷に飛び出していく。

     バタフリーはフシギバナの花の蜜が気になるのか、レッドとフシギバナの近くをゆっくり旋回していく。

     ガラガラは適当にホネこんぼうをいじったりブーメランにして遊んだあと、飽きてしまったのかフシギバナの体を背もたれにして座り込み、寝息をたててしまった。

     レッドはそれを見て静かに笑ったあと、ガラガラの隣に座り、同じようにフシギバナを背もたれにする。

     フシギバナの大きな葉っぱと花が日陰になって以外と涼しい。

     今までカントー地方を全力で駆けて来た。ここまでのんびりするのは何時ぶりだろうか。

    (少し、寝てしまおうか)

     そう思った時にはレッドはもう瞼を閉じている。耳を澄ますと草が風で擦れる音、ガラガラとフシギバナの静かな呼吸。遠くでポッポ達の羽ばたきと鳴き声が聞こえる。

     夢を見た。淡い桃色と黄色が混ざった花畑の中、遠くに誰かの後ろ姿。ボブカットの黒髪に和服姿の女性。名前を呼びたい。

     花の香りがした。レッドはまどろみのまま目を開ける。目の前に和傘を差した桃色の袴姿、その女性の微笑む口元までが見える。着物に散りばめられた白い牡丹の意匠がはっきりとわかる距離。

     瞼を完全に開くと、一瞬の驚きと、ゆっくりと広がる喜び。

    「こんなところで眠っていると、風邪を引いてしまいますよ?」

     どうしてこんなところに? とは聞かない。
     
    「会いたかった、夢みたいだ」

    305 = 304 :

    本日はここまで。すいません、今週は大分ペース落ちます。
    書き終わり次第少しずつ投下していきます。

    308 :

    >>1です。
    次回は来週の月曜に更新します。うーむ。間に合わなかった。

    309 :

    舞ってる

    310 :

    もう一月だ
    感慨深い

    311 :

    そうか、もう一月か・・・
    作品の完走を祈ろう

    312 :

     レッドがエリカを見上げて微笑む。

    「一緒に隣に座らない? エリカさん」

     するとエリカは苦笑して、

    「せっかくですけど、服が汚れてしまいます」

     やんわりと断った。レッドも「しまった」と言いながら苦笑する。しかし、薄目を空けたフシギバナが助け舟を出す。

     フシギバナの背中の茂みから無数の葉っぱが放出され、レッドの横に降り積もっていく。ほどなくちょうど二人分座れる広さの葉っぱのベンチが出来上がる。

     レッドが立ち上がってそのベンチをぽんぽんと叩いて具合を確かめ、今度は無言で笑みを浮かべながらエリカを手招きする。

    「ふふ。では……」

     エリカもつられて微笑んで了承した。傘をたたみ、レッドの手を取って二人並び座る。手を繋いだままレッドはエリカに顔を向けた。

     互いの瞳の色がはっきりとわかる。レッドは言葉を紡ぎ出す。

    「ちょうどエリカさんに会いたかったんだ。来てくれて本当に嬉しい」

    「ええ。私も……。なぜ来たかは、聞いてくれないんですか?」

    「ええと、オーキド博士になにか? でも、俺に会いに来てくれたなら、すごく嬉しいな」

     二人の距離が、少しずつ縮まる。

    「あなたに会いに、ここまで来ちゃいました。手紙の状況から、そろそろかなって」

     レッドの頬がわかりやすく紅潮する。エリカはそんなレッドの反応を楽しんでるようだった。

     しばらく雑談した。ポケモンのこと、手紙に書けなかった旅の細やかな事。タマムシシティとジム、エリカの近況。

     しばらくして言葉が止まった。レッドが、なにか言いたそうだった。エリカも敏感にそれを感じて、レッドが言葉を紡ぎだすのを待つ。

    「……今まで色んな事があって、俺自身強くなれたかどうかは、正直分からない。でもあの時、この場所から、ちゃんと自分が進みたい道を進めてる。皆が助けてくれたから」

    「……」

     エリカは黙って聞いてくれている。レッド自身、言葉の整理がついていない。だけど、エリカに伝えたい想いがあるのは確かだった。

    (うまく、言えるだろうか)

    313 = 312 :

    「バッジを7つ手にして、あとひとつでポケモンリーグに行ける。なんでここまで来れたんだろうって考えると、どうもリーグ優勝が夢だからだとか、そういうことじゃ、ない気がする」

    (俺が頑張れた理由……)

    「目の前の一つ一つのことに、全力になれたから。フシギバナ達と一緒に一生懸命になれたから、今の自分がいる。仲間と一緒に一つの事に全力になる、その大切さと素晴らしさを、エリカさんが気づかせてくれたから……」

    「……そこまで言ってもらえて、光栄の極みです。でも、レッドさん自身の頑張りが一番大きいですよ。だからここにいるポケモン達も皆、あなたが大好きなんです」

     言葉を繋げて誤魔化す事で、エリカはレッドへ自身の好意を発した。エリカは土壇場ではっきりと言えなかった自分を少しだけ嫌悪する。

    「それでも、ありがとう。エリカさんにあの日出会えて、本当によかった」

     心よりの感謝からくるレッドの微笑みを、エリカは至近距離で受けた。

    (あっ……)

     エリカの心が高鳴る。今まで生きてきた中で、ここまで心が繋がった思える人、一緒にいたいと思う人、手をつなぎ、言葉を交わし、微笑み合ってドキドキする異性なんて、レッド以外、いない。

    「俺はあの日を忘れない。これからどんな生き方をしようとも、あの日の暖かい想いを胸に生きていきます。そしてその未来には、ずっと一緒にいたい人がいる」

     エリカの頬にレッドの手が添えられる。エリカは一瞬戸惑ったが、その意味を悟ると体中に嬉しさがほとばしり、薄く口を開けてレッドへ言葉を発しようとする。

    「好きです。エリカさん」

     エリカの返答を待たず、レッドの顔がエリカへ近づく。エリカは驚きと喜びの中、目を閉じてレッドに身を任せた。

     レッドがエリカを抱き寄せ、エリカもまた、レッドの服を掴んで自身へ心持ちよせる。

     互いの唇の感触をゆっくりと確かなものにしながら、二人そよ風の中、幸福だけに酔いしれた。

    314 = 312 :

    短いですが今日はここまで。待っていてくださった方々ありがとうございます。
    明日からトキワジム編です。

    315 :

    やったぜ!

    このフシギバナさんトトロみたいっすね

    317 :

    トキワジム・・・ということは因縁の対決か!

    318 :

     レッドとエリカ、二人手をつなぎながらレッドの家へと戻るとレッドの母親が二人を茶化す。

     エリカは少しいたたまれない気分になりながらも、レッドが手を離さず嬉しげな表情を向けてくるがためにまんざらでもなくなり、結局レッドの自宅でご飯を共にした。

    「あら、手紙よレッド」

     と、食事を終えたところにレッドの母が一枚の手紙を手渡した。見ると宛先人不明、これといった装飾もない。

     手紙にはこう書いてあった。

    『あの時の決着をつけよう。トキワジムで待つ』

    「……」

    「レッドさん?」

     レッドが手紙を見ながら固まっていると、エリカが不思議そうにレッドの顔を覗き込む。

     レッドは顔を上げた。

    「ねえエリカさん。トキワジムのジムリーダーってどんな人なの?」

    「トキワジム、実は私も実態をよく知らないのです。ジムリーダーの会合でも欠席で、なおかつジムリーダー代理の人間が多い所。最近までムサシとコジロウというお二方が代理をされていたそうで、本当のジムリーダーを知っている人がはたしてどれだけいるか……」

    「そう……。ちなみに、ジムのタイプは?」

    「地面、ですね」

     その言葉を聞いてレッドの中で一つの確信が生まれる。

    (……なんで、納得してるんだろ)
     
     レッド自身不思議な感覚だった。崩しきれなかった巨悪、その体現者がエリカ達と同じジムリーダーという肩書を背負って自分を待ち構えている。

    319 = 318 :


    「なにか、心配事でも?」

     笑顔をなくし引き締まった顔をしたレッドを見かねて、エリカが至近距離でレッドの瞳を覗き込む。心底心配しているようだった。

    「……大丈夫、ありがとう」

     レッドはエリカを心配させまいと微笑みで返し、エリカの左の頬を手のひらで包む。

    「無理をなさらないでくださいね……本当に……」

     自身の頬に添えられたレッドの手の上に自分の手を重ねながら、柔らかな笑みを浮かべるエリカ。お互いに甘い雰囲気が流れ、見かねたレッドの母が一つ咳払いして二人をびくりとさせた。

     数刻後にはレッドは母親に出立を告げ、エリカもマサラタウンの端まで見送りにきた。 

    「お気をつけて……と、なんだか見送ってばかりですね」

    「幸運に思うよ。好きな人に笑顔で見送ってもらえるんだから」

     レッドはこと好意を告げることに関して羞恥を知らないらしい。エリカもレッドが冗談やこちらの反応を面白がるために言っていないことがわかるから、余計に嬉しさやら恥ずかしさやらで顔を俯かせてしまう。

     エリカの顔は赤い。口が嬉しさで妙に歪んでしまうのをなんとか耐える。

     表情と気持ちを整えると、エリカはレッドに真摯な面持ちで声かけた。

    「先に行って待っていますね。そう日を置かずあなたが来るって、信じていますから」

    「はい……。行ってきます」

     レッドは帽子を脱いで一礼した。そして振り返らずにトキワシティへの歩みを進めていく。

     二人想いが通じあった仲だからこそ、今はこれでよかった。エリカはレッドを信じている。

     レッドは自分が進む道を見失っていない。

     カントージムバッチ最後の難関がこの先で待っている。

    320 = 318 :

    今日はここまで。また明日更新します。

    321 :



    いよいよサカキの本気か

    322 :

    ムサシとコジロウ、代理を任されるなんて出世したんやなあ…ホロリ

    323 :

    >>322
    それだけサカキがジム連を軽く見ているともとれる

    324 :

    コジロウはガチになれば結構強そうだけどなあ

    ノクタス
    マタドガス
    ウツボット
    カラマネロ
    モロバレル
    ウィンディ

    325 :

    ニャースとソーナンスは……

    326 :

    >>325
    ニャースは手持ちとはまた別だし、ソーナンスはそもそもムサシのだから…

    327 :

    >>324
    デスマス、マネネ「」

    328 :

    チリーン…は戦闘に出したがらないか

    329 :

    >>1です
    本日はお休みします。

    331 :

    >>330
    ブーメラン

    332 :

    >>1です。
    今日もお休みします。明日は書けると思いたい……

    333 :

    ゆったりな

    334 :

    >>1です。
    今日もお休み……明日の昼間に投稿します。

    335 :


    (グリーンと戦った場所)

     かつてレッドとポッポが初めてグリーンに勝利したトキワシティの外れ。レッドがカントー地方を一回りして来ても、快晴のこの景観は少しも変わってはいない。

     マサラもそうだった。レッドは自分がエリカと出会った日から劇的に変わる事ができたと己を誇りに思っていたが、ふと変わっていない故郷の景色を見ると、また違った疑念が心の奥底から沸き上がってくる。

    (そういえば、俺の中で変わっていないものってあるのかな)

     仲間と助け合い、一つの事に一生懸命になることは素晴らしいことだ。しかし、レッドはそのことを知ったのはポケモンを手にしてからだ。なぜ自分はポケモンを手にする前から、グリーンに勝ちたいと頑張ったのだろう。

     強さとはなにか。今レッドが問われたら、一緒に旅をしてきたポケモン達と様々な熱い戦いを繰り広げたトレーナー達が頭に浮かぶ。じゃあ、フシギダネとエリカに出会う前のレッドだったら?

    『よう! 泣き虫レッド!』

     レッドはふと振り返った。遠くにトキワシティ、そしてトキワジムが見える。

    (俺はこの旅でずっと、皆に助けられてきた。俺一人じゃ絶対に、ここまで辿りつけなかっただろう)

     レッドはトキワジムへ向かう。トキワジムに電気は点いておらず、人の気配もなさそう。しかし構わずに向かう。

    (グリーンもそうなのだろうか。そしてこの先に待つあの人は……)

     レッドがトキワジムの扉を開ける。ジムでは恒例の挑戦者を迎える受付の元気な声は聞こえてこない。

     ジム内は天窓が多く、日が差し込んで以外に明るい。

     その陽射を見上げるように、一人の男がバトルスペースに佇んでいた。

    336 = 335 :


     レッドと男、お互いに無言。レッドはバトルスペースに歩き出すが、男、サカキはレッドを気にした様子もなく天窓を見上げている。

    「ロケット団の由来はな」

     サカキはレッドを見ずに、突如語りだす。顔は感情の起伏が見えず、声色も平坦だった。

    「"Raid On the City. Knock out Evil Tusks."。町を襲いつくせ、撃ちのめせ、悪の牙たちよ。故に"ROCKET"。随分と好き放題やらせてもらったよ」

    「あんたはこれからも、ロケット団の活動を続けるのか?」

     レッドの語気はそれほど強くなかった。今のサカキの纏う闘気が、今まで戦ってきたジムリーダー達に似ている。

    「……金も地位も名誉もいらない。自らのポケモントレーナーとしての力、カリスマ、知力、全てをもって構築した、正義も法も縛ることができない悪の自由。君には理解できないだろうがね」

     サカキは目線を落とし、レッドの対面に位置するバトルスペースへと歩いて行きながら言葉と続ける。

    「矮小な正義などさえずる羽虫でしかない。ジムリーダーやジュンサーが束になろうが、自身のポケモンたちの力をもってすれば些細な問題にもなりはしない」
     
     サカキはいついかなる時でもそう確信していたし、事実そうだった。タマムシ、ヤマブキで捕らえられたロケット団員も一兵卒の一部でしかない。

     サカキがバトルスペースに着くと、今度は笑みを浮かべながら大きく口を開けて叫んだ。

    「痛快だ! 正義と夢を謳った扇動者が消えていく! 力があればどんな悪意でもまかり通る! 私の様な悪の親玉がジムリーダーに就いているように、君が思っているほど世界は正道を歩んではいない」

     レッドは聞いているだけ。しかし決してひるんではいない。

     サカキの脳裏に、シルフカンパニーでポケモンを庇ったレッド、そして強大なる闘気を纏ってサカキに対峙したレッドとそのポケモン達が浮かぶ。

    「ポケモントレーナーレッドの正道は、私の邪道に真っ向から対峙している。……邪を突き進むものとして、君を真正面から叩き潰す。必ずな」

    「その考えが既に正道に半歩足を踏み入れていることに、あんたは気づいているんじゃないか?」

     レッドのその言葉にサカキは目を見開く。しかし、ふっと笑みを零すといつもの余裕たっぷりの貫禄を取り戻す。

    337 = 335 :

    「ならばそのまま引き込めるか? ポケモントレーナー!」

     レッドが初めて笑ってサカキに対峙した。悪の巨人、レッドにとって大切な人を傷つけた相手。しかし、この胸の高鳴りだけはどうしようもない。

     ポケモントレーナーとしての高鳴りだけは。

    「あんたの今の肩書を考えれば、その必要はない。トキワジムリーダー!」

     互いにモンスターボールを構える。

    「大地を司どるジムリーダー、サカキ」

    「マサラタウンのレッド!」

     バトル開始。

    「行け!! ギャラドス!!」

    「行け、ダグトリオ!」

     レッドの闘志にのったギャラドスの咆哮。対してサカキの貫禄を引くダグトリオ。

    「ギャラドス! バブルこうせん!」

    「ダグトリオ、あなをほる」

     当たれば一撃。しかしダグトリオはすぐさま地中に潜ってバブルこうせんをかわす。

    (穴から出てきた所を狙えば……!)

     ダグトリオが地中から顔を出す瞬間を狙うため、ギャラドスは口内に泡をためながら尻尾を丸める。レッドから来る指示、バブルこうせんとたたきつけるどちらでもすぐに反応できるよう攻撃の体勢を整えている。

    「ポケモンがトレーナーが繰り出す指示を予測しているとは。それは見事。だが、足りない!」

     サカキが手を掲げる。

    「じしん!」

    「うわ!?」

     ダグトリオが起こした地震にジムが揺れる。レッドは少し体勢くずしたが、元々少し空中に浮いているギャラドスには効果が無い。

    (サカキは何をする気だ……あ!?)

     レッドは気づいた。ダグトリオが起こした地震によってバトルスペースの地面割れ、所々大きく隆起している。体の小さいダグトリオは地面に現れても容易に姿を隠すことができるだろう。

    「今だダグトリオ、すなかけ!」

    「!?」

     地面が隆起してフィールドの岩と化した場所、その物陰からギャラドスの目に砂が飛ぶ。

    338 = 335 :

    「くっ! バブルこうせん!」

     目に砂が入ったギャラドスのバブルこうせんは明後日の方向に飛んで行く。

    「無駄だ。ダグトリオ、切り裂く!」

     ダグトリオがギャラドスに突貫する。レッドは気づく。

    (あのダグトリオがギャラドスに攻撃するためには肉迫するしかない! ならば!)

    「ギャラぁ!?」

     ダグトリオの不可視の爪がギャラドスを切り裂く。しかし、ギャラドスはレッドの指示にすぐさま反応した。

    「ギャラドス、ハイドロポンプ!」

    「かわせダグトリオ!」

     狙いの甘い攻撃はまたも外れる、かに思われた。ギャラドスはハイドロポンプを、ダグトリオが潜った穴に直接注ぎ込む。

    「む!?」

     サカキの顔が歪む。いくらダグトリオが早くても、移動できるのは地中のみ。張り巡らされた穴に高出力のハイドロポンプが注がれれば……。

    「ダ……グ……」

     水浸しのダグトリオが地表から力なく顔を出し、動かなくなった。

    「よし! よくやったギャラドス!」

    339 = 335 :

    「もどれダグトリオ。行け、ペルシアン!」

     次に現れたのは地面タイプではない、高い敏捷性と鋭き爪を持つノーマルタイプのペルシアン。

     レッドがペルシアンの出始めを狙うようギャラドスに指示するが、狙いの甘いバブルこうせんをペルシアンは悠々とかわした。

    「ペルシアン、かげぶんしん」

     ペルシアンの姿が分身し、地面から突き出た岩から岩へ飛び移りながらギャラドスに迫る。

    「ギャラドス、たたきつける!」

     ギャラドスがペルシアン達を一斉に尻尾で薙ぎ払おうとするが、ペルシアン達はすぐさま飛び上がりギャラドスの体をその爪で散々に切り裂いた。

    「ギャラぁ……」

     ギャラドスの巨体が沈む。ペルシアンの攻撃は素早く、また的確に相手の急所を突いた。

    「戻れギャラドス。行け、ラッタ!」

     繰り出されたラッタは一回り大きいペルシアンに怯まずに真正面から近づいていく。

    「ふっ慢心したか。今のペルシアンは一体ではないぞ!」

    「慢心なんてしていないさ。かげぶんしんはあくまで回避用の実体のない分身」

    「……!!」

     サカキは驚く。ラッタは複数のペルシアンの中から本体のペルシアンへ迷いなく走っている。

    「ギャラドスを攻撃した時についたギャラドスの泡が、爪に残っているぞ! ラッタ、ひっさつまえば!」

    「ちいっ! ペルシアン切り裂く!」

     ラッタの前歯とペルシアンの爪が真っ向からぶつかる。吹き飛んだのはラッタ、しかしペルシアンの爪が割れ、ラッタの前歯は傷ひとつついていない。

    (真っ向からの衝突はペルシアンが不利、ならば!)

    「ペルシアン、いやなおと」

     ペルシアンが岩を割れていない爪で引っかき、名状しがたい音をかき鳴らす。ラッタは構わず突貫した。

    「ひっさつまえば!」

     ペルシアンの喉元にクリーンヒットし、ペルシアンはうめき声を上げて倒れる。

     しかし、サカキはペルシアンを戻して笑う。

    「前座は終わりだ。さあ行け、ニドクイン!」

    340 = 335 :


    (なぜ俺は戦っている)

    「ニドクイン! にどげり!」

    「ラッタ! いかりのまえば!」

     サカキには今、二人の自分がいる。戦いに集中する戦士のサカキ、そしてこの戦いの意味を見出せない悪のサカキ。

     レッドを邪魔と感じるならばわざわざこんな一対一の戦いなど意味は無い。レッドを消す方法等、ロケット団の力を持ってすればいくらでもある。

    (この血が滾るから、そんな感じか?)

     レッドのラッタを仕留めたニドクインを見ながらサカキは自嘲した。

    「行け、バタフリー!」

    (いや、そんな単純なことではないな)

     サカキはレッドを見る。レッドは決してサカキを恐れてなどいない。勝利を信じ、闘気のこもった瞳でポケモンへ指示を飛ばしている。

     サカキは思い出す。こんな風にサカキに立ち向かってきたトレーナーはいただろうか。サカキが戦ってきた相手といえば、サカキを悪と断じ、ただポケモンと共に正義の鉄槌をくらわそうとしてきた者ばかりだった。

     その全てを地に伏せてきた。じゃあレッドは? 今まで戦ってきた者達と同じじゃない。レッドはただ、サカキに勝ちたいのだ。なぜレッドはサカキに勝ちたい?

    「ニドクイン、かみなり」

    「なっ!?」

     レッドが驚愕で目を見開く。ニドクインはバタフリーを見るやすぐに雷雲を呼び、バタフリーを光の柱で飲み込んで撃墜した。

    「……戻れバタフリー。さすがだサカキ。あんたはポケモンとの呼吸も、ポケモンの強さも、あんた自身の戦術も、俺のが身が震えるほどの物を持っている」

     そう言いながら、レッドは次のモンスターボールを手に取る。その瞳は燃えている。

    「だが、決して俺は諦めたりはしない。あなたが巨悪の首領だからじゃない。俺のポケモン達と俺自身のために、俺はあんたに勝ちたい」

    「ポケモンリーグに行くためか?」

     レッドは首をふる。

    「強くありたい。戦い続けてくれる皆と同じように。そのためにどこまでも進み続ける。それだけだ! 行け! ガラガラ!」

    (そうか)

     レッドはサカキに憧れている。一人で、何者をも寄せ付けない強さを持ったサカキを。

     サカキはレッドに憧れている。他者に助けられ、弱い自分を認め強くあろうとするレッドを。

    (私に燻っていた感情はそれか――)

     ニドクインがサカキの指示を待っている。サカキは命令ではなく、ニドクインに語りかける。

    「ふっ、文句ひとつ言わないなお前たちは。だが、俺の強さへの信頼と受け取ろう」

     ニドクインがサカキへ少しだけ振り返り、にやりと笑った。

    『どこまでもついていきます。ボス』

    「はは、ははははは! 行くぞレッド。我が配下とともに、全力で叩き潰す!」

    「望むところだ! ガラガラ、ホネこんぼう!」

    「ニドクイン! とっしん!」

    341 = 335 :

    とりあえずここまで。続きはできたら夜に。

    342 :

    乙カレーライス

    343 :

    ロケット団の由来ってこれマジ?

    344 = 343 :

    いや、後付けの意味なんだろうけど、上手いことこじつけるもんだな乙

    345 :

    ポケスペじゃね?

    346 :

    だね

    347 :

    レッドの残りはガラガラとピジョットとフシギバナか

    348 :

    やだ・・・二人ともカッコいい・・・

    349 :

    >>1です。
    また明日夕方ごろ更新します。

    350 = 349 :

     ガラガラのホネこんぼうとニドクインのショルダータックルが激突し、大きな鈍い音と共に空気が振動する。

     両者一歩も引かない。間髪入れずサカキの指示が飛んだ。

    「にどげり!」

     ニドクインがガラガラ目掛け足を跳ね上げ、ガラガラはもろに喰らい上空へと飛ばされた。いや、違った。

    (ニドクインの蹴り足に乗って自ら飛んだだと!?)

    「振り下ろせ! ホネこんぼう!!」

     太陽を背にしたガラガラが空中で身を翻して回転し、その勢いのままニドクインへホネこんぼうを振り降ろす。

    「カウンター!」

     ガラガラのホネこんぼうがニドクインの顔を吹き飛ばすのと同時に、ニドクインの拳がガラガラの腹部へ深くめり込んだ。

     一瞬の静寂。ガラガラの腹部からニドクインの拳が抜け、そのままガラガラが地に沈むと同時に、ニドクインがゆっくりと倒れ伏した。

    「よく当てた、ニドクイン。戻れ」

    「ありがとうガラガラ。戻れ」

     相棒を賞賛し、すぐに戦いへと思考を切り替える。

    「行け! ピジョット!」

    「行け! ニドキング!」

    (ニドキング! ここで来たか!)

     レッドは武者震いした。かつてフシギバナのソーラービームに真っ向から立ち向かい、倒しきれなかった相手。

    (だが、それがなんだ)

    「勝つぞ! ピジョット!」

    「ピジョォ!」


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